オランダ園芸産業における 最先端技術の現状調査 - …...flora holland は、2008...

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〔海外調査資料61〕 オランダ園芸産業における 最先端技術の現状調査 平 成 26 年 2 月

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Page 1: オランダ園芸産業における 最先端技術の現状調査 - …...Flora Holland は、2008 º1 月にBloemenveiling Aalsmeer とFlora Holland 市場が合併し、世界一の

〔海外調査資料61〕

オランダ園芸産業における

最先端技術の現状調査

平 成 26 年 2 月

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表紙の写真

上:Air So Pure(観葉植物の生産・販売グループ)の商品展示の様子

下:Tomato World で展示されている 80種のトマト

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目次

1 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2 調査期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

3 調査実施者と行程及びその他参加者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

4 調査内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

① オランダ経済省 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

② Rijk Zwaan(ライク・ズワーン)社 ・・・・・・・・・・・・・・・ 4

③ Air So Pure ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

④ Flora Holland(Flower Auction) ・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

⑤ Tomato World ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

⑥ WUR Bleiswijk(ワーゲニンゲン大学) ・・・・・・・・・・・・・・ 10

⑦ Haluco BV ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

⑧ International Floriculture Trade Fair ・・・・・・・・・・・・・ 12

5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

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1.目的

農林水産技術会議事務局の委託プロジェクト研究「地域資源を活用した再生可能エネルギーの利活用技

術」の中で、「施設園芸における熱エネルギーの効率的利用技術の開発」を推進している。本研究は、化石

燃料に依存した我が国の施設園芸のエネルギー効率向上による経営収支改善を目標としている。また、生

産局では、「次世代施設園芸導入加速化支援事業」を概算要求する等、エネルギー供給から流通までを見据

えた大規模・効率化を進めており、諸外国の情報を入手し、活用することは重要である。

このため、施設園芸の先進国であるオランダにおいて、研究開発、園芸施設の現場及び流通市場まで多

岐にわたる調査が必要であり、世界でも技術水準が高いと言われるオランダ(施設園芸)の主要な研究機

関、園芸施設現場及び流通市場等を訪問し、広く園芸産業界の実態を調査した。なお、行程については、

オランダの経済省が主催する「Decision Makers Programme」に参加した。

2.調査期間 2013 年 11 月 4 日~9 日(4 泊 6 日)

3.調査実施者と行程及びその他参加者

調査実施者 農林水産技術会議事務局 研究開発官(環境)室 研究専門官 山﨑 竜

Decision Makers Programme 4 – 8 November 2013

Date Region Remarks

4/11/13(Mon) Narita Dep.11:40 KL0862

Schiphol Arr.15:15

5/11/13(Tue)

Ministry of Economic Affairs

Den Haag stay Rijk Zwaan

Air So Pure

6/11/13(Wed)

Flora Holland(Flower Auction)

Den Haag stay Tomatoworld

WUR Bleiswijk

7/11/13(Thu) Haluco

Den Haag stay International Floriculture Trade Fair

8/11/13(Fri) Schiphol Dep.14:25 KL0861

9/11/13(sat) Narita Arr.09:55

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Guest list International Week Dutch Ministry of Economic Affairs

Name Function Organisation Country

Sahraoui Benallal Director General Office National Interprofessionnel des Legumes et

des Viandes

Algeria

Karin Weigel Chief clerk Federal Association of Austrian Horticulturists Austria

Guy Lambrechts Director-engineer, head of unit

Market Policy

Department for Agriculture and Fisheries, Division

Agricultural and Fisheries Policy – Flanders

Belgium

M.B. Naqvi Media Media Today Group India

Ryu Yamazaki Research Project Coordinator Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries Japan

Zakaria Moatamid Agricultural Engineer Ministry of Agriculture Morocco

Marta Szyperek Editor Hortpress Poland

Arion Felix General Manager Agrotransilvania Cluster Romania

Noël Bastiaan Agribusiness Manager African Farmer Association of South Africa South Africa

Marta Cainzos García Veterinarian Ministry of Agriculture, Food and Environment Spain

Supanee Na Songkhla Journalist Kehakaset Magazine Thailand

Natalla Kiluchnikova Columnist Agrarika Ltd. Ukraine

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4.調査内容

①オランダ経済省 11 月 5 日 8:45~10:30

本プログラム「Decision Makers programme」を主催するオランダの経済省(【写1】)を訪問した。経済

省は 2012 年に設立された新しい省で、Integrated chain management を促進することを 1 つの目的とし

ている。そこで、本プログラムにより各国から施設園芸関係者を招待し、オランダの技術・仕組み・事業

者等を紹介する場として提供している。(今回は 12 人、12 カ国から参加)

同時に、招待された各国間でのビジネスの契機となることを願うとの発言もあった。

続いて、オランダの農業事情についてのプレゼンがあった。現在、世界 2 位の農産物輸出国(101 億 US

$)、農業は GNP の 10%を占めている。輸出大国ではあるが、作物を絞った輸出であり、輸出品目以外の

作物は輸入に頼っているのも実情である。

政策としては EU の「Energy2020」により 1)1990 年比で CO2 を 50%削減、2)商品単位でエネルギー投

入量を毎年 2%ずつ削減、3)施設園芸のエネルギー20%を再生可能エネルギーであることを目標としている。

そこで、「Kas als Energiebron」(エネルギー源としてのグリーンハウス)を掲げ、これまでのエネルギー

を消費するだけの産業から、創出することを視野に入れた技術開発がなされている。2050 年には、栽培に

使用する水の量を 70%に低減し、耕作放棄地も 50%にまで削減することも目標としている。

また、対応にあたった 3 名は、いずれも女性(【写2】)で、 ヨーロッパの女性活躍の様を実感した。

<オランダ経済省メンバー>

Sara Knijff Deputy director European Agricultural Policy and Food security, Ministry

of Economic Affairs

Monique de Muynck Project manager Ministry of Economic Affairs

Sabine Hoff Ministry of Economic Affairs

【写1】 オランダ経済省 【写2】経済省でのミーティングの様子

オランダ経済省は 2012 年に新設された省で、国際

競争力の強化を目的とし、研究施設と民間企業の協

力促進、農・工・サービス・エネルギーの連携に重

点を置いている。

左端が Sara Knijff Deputy director

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②Rijk Zwaan(ライク・ズワーン)社 11 月 5 日 11:00~12:30

ライク・ズワーン社(【写3、4】)は種苗会社で、野菜の品種開発、野菜種子の生産・販売に特化してい

る。日本国内ではあまりその名を知られていないが、世界的に名前を知られた会社である。ライク・ズワ

ーン社の主たる品目としては、トマト、ピーマン、キュウリ等があげられ、中でもキュウリ種子の販売額

ではヨーロッパ第 1 位とのこと。また、葉菜類にも強く、特にレタス、ホウレンソウ品種は世界各国で使

われている。レタス種子の販売額でもヨーロッパ第 1 位。

市場規模は 35 億€でそのうちの 91%シェアを持っている。また、海外の 9 社と提携しており、そこからの

収入も 1 億€に上る。研究開発に注力しており、利益の 25%程度を計上している。研究開発分野は、耐病

性、天敵、DNA マーカー育種等に注力している。また、世界人口 90 億人時代に向けて、Snack Vegetable,

Convenient Vegetable にも注目している。

従業員は、オランダ国内 1,000 名弱、海外 1,000 名強の計約 2,000 名。商品は 27 品目、1,000 品種以上

の野菜種子、有機(オーガニック)種子を扱っている。

品種開発拠点は、オランダ、ドイツ、スペイン、フランス、トルコ、オーストラリア、ハンガリー、中国、

メキシコの 9 カ国。種子生産国は、アメリカ、ギリシャ、オランダ、デンマーク、フランス、イタリア等

を含む世界 15 カ国。種子販売国は世界 100 カ国以上に及ぶ。28 の子会社を持つ。

社内は、見学者にも対応できるよう見学通路には商品展示コーナーも設置されており(【写5】)、商品の品

質の高さをアピールしていた。また、場内は、各ラインに仕切られた工場のような造りになっており、前

室(【写6】)、パッケージライン(【写7】)、立体倉庫(【写8】)がエリアに分かれて配置されていた。

【写3】Rijk Zwaan 社 受付の様子 【写4】プレゼンの様子

【写5】見学通路の様子 【写6】前室の様子(野菜の種子)

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【写7】パッケージラインの様子 【写8】立体倉庫の様子

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③Air So Pure 11 月 5 日 14:30~16:30

観葉植物に特化して、生産・販売を行っている生産者のグループ。現在、約 20 の生産者が参加している。

観葉植物の光合成により、①有害なガスの無効化②住環境における湿度調節③空気の清浄化を掲げ、販売

促進している。これらの学術的調査(2011 年 6 月)も行っており、学校の教室に観葉植物を置いた場合と

置かない場合での比較をしている。その結果、10~20%の CO2 削減効果、45 分でホルムアルデヒドを検

出限界以下に低減、20%の学力向上が示されたとのこと。

これら学術的な知見と白い帯を特徴としたブランディング(【写12】)で、見学者の対応(【写9、10】)

も積極的に行い、オランダ国内はもとより、海外へも販売を行っている。

また、取り扱っている 7 品種について、「air-purifying effects」の認証(民間)を得ている。

栽培技術としては、トリジェネレーションシステムを利用した温度管理と CO2 施用を行っていた。CO2

濃度は 700ppm とのこと。広い施設をブロックごとに分けた生産体制(【写11】)を取っているが、栽培

ステージによる環境制御をしているわけでもなく、一律に環境をコントロールしていた。

【写9】プレゼンの様子 【写10】商品展示の様子

【写11】ハウス内の様子 【写12】Air So Pure 社の商品

白を基調とした特徴のある外装フィルムを使用

し、ブランディングの意識が明確に表現されている。

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④Flora Holland(Flower Auction) 11 月 6 日 7:00~9:00

オランダ国内最大級のアールスメア市場を視察した。

アールスメア市場(【写13、14】)は、Flora Holland が経営する 6 市場(オランダ国内 5 市場)の中

でも最大の市場で、スキポール空港に近いことから、輸出にも大きく寄与している。場内には、5 つのオ

ークションルームと 13 の clock(時計型のセリ機で、セリ下げ方式の入札がリアルタイムに表示される(【写

17】)があり、入庫(【写15】)からセリ、出荷までコールドチェーン(低温流通管理)(【写16、18】)

が維持されている。

Flora Holland は、2008 年 1 月に Bloemenveiling Aalsmeer と Flora Holland 市場が合併し、世界一の

売上高となった。オークションルームは全 14 カ所 50 台の clock があり、セリ下げ方式を採用。最低価格

に満たない物は廃棄処分される。近年では、ネットによる購入も盛んで、全体の 30%程度は市場外での取

引になっている。

また、見学者への対応も充実しており、見学用の通路の完備や商品展示ブース(【写19、20】)が併設

されていた。調査当日も、小学生から高校生、アジア系の団体等、多岐にわたる大勢の見学者が来場して

いた。

花生産者から消費者までの流れはおおよそ以下の通り。

pm5:00 出荷 →pm8:00~10:00 市場到着 →pm10:30 冷蔵エリア

am4:00 品質検査 →am6:00~7:00 オークション →am7:00 分配 →am11:00 配送 →pm4:00 販売

このように、夕方、生産者から出荷された花は、当日の夜には低温下で管理される市場へ入り、品質検査

を受けた後、オークションにかかり、翌日の昼には出荷されて行く。低温管理もさることながら、速やか

な流通も品質維持に大きく貢献している。

【写13】市場の外観 【写14】市場の入口(ゲスト用)

【写15】入札待機中の商品 【写16】入札が終わった商品を配送先別に配置

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【写17】Clock と呼ばれるシステム 【写18】配荷待ちの商品

画面に商品情報・リアルタイムの入札額表示がされ

るシステム。画像の右手にある席で、卸業者が端末

から買い付けを行う。

競り落とされた商品は、出荷するためのスペースに

移動される。この間も温度管理されたスペースが確

保されている。

【写19】併設されている商品展示スペース 【写20】 同左

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⑤Tomato World 11 月 6 日 10:00~12:00

Tomato World はオランダのウエストランドの中心に位置し、2007 年に施設園芸関連の 40 社が集まって

創設された。参加している企業は、種苗(日本企業ではサカタ)、制御機器、資材、病害虫駆除等多岐にわ

たる。設立の目的の一つは、トマトの生産技術等に関する情報発信で、見学者の約 70%は生産関係者であ

り、その中には海外を含む政府関係者も多い。見学者用にゲストルーム(500 ㎡)及び 1,500 ㎡の試験圃

場を有し、常に 80 種のトマト(【写21】)、最新の栽培技術、環境制御システム、エネルギーシステム等

について紹介できる体制(【写22】)にある。ここに参加している企業は、試験圃場での実績を上げるこ

とで、自社商品の販売普及に役立てている。また、市場のトレンドを先読みし、新品種の開発を行うこと

で、速やかに市場導入できるよう総合的な栽培実証を行っている。

エネルギー関連の技術として、OCAP 社による CO2 パイプラインの紹介(【写23】)がされていた。北海

沿岸部の工場から CO2 を全長 230km におよぶパイプラインで 500 ヶ所に販売しているとのこと。環境制

御技術としては、ファン付きのエアダクト(【写24】)が配置されており、我が国の加温機からのビニー

ルダクトと比較すると設備投資にかける費用の差を目の当たりにした。一方で、高軒高ハウスに対応する

ため、マルハナバチ(【写25】)を利用する等、技術の融合がなされていると感じた。

さらに、先端技術を取り入れた栽培を身につけられる研修生の受け入れもしており、人材育成の場として

も成果をあげている。

【写21】展示されている 80 種のトマト 【写22】セミナースペース(食事も可)

【写23】CO2 パイプラインの様子【写24】ファン付きのエアダクト【写25】マルハナバチ利用の様子

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⑥WUR Bleiswijk(ワーゲニンゲン大学) 11 月 6 日 13:40~16:00

WUR(【写26】)は、農業系大学であったワーゲニンゲン大学を核として、1997 年にオランダの農業系

大学や研究機関を統廃合して、U(University)とR(Research center)が一体的になった。特徴的なこ

とは経済省の所管で、研究費は国からの補助金の他、企業や生産者団体が負担している。また、周辺には

生産者に加え、農業関連の企業が多数立地しており、名実共に連携した研究体制が敷かれている。

研究の中心は、労働費とエネルギー費の削減に寄与する技術開発で、これに関連して増収、品質向上に向

けた研究がなされている。

主な研究内容として、園芸施設の環境制御があげられる。空調ダクトをハウスの上部に配置(【写27】)

し、一元的に制御する試みや、LED 補光(【写28】)による栽培促進技術が数多くなされていた。LED

補光に関しては、滞在期間中、ほとんど太陽が出なかったことからもわかるように、冬季はほとんど日照

が期待できないオランダにおいては、重要な技術であることが理解できる。同時に、気温も低いため、保

温等も含めたエネルギーの有効活用技術にも重点を置いており、Kas(エネルギー源としてのグリーンハ

ウス)の方針に則った、太陽熱と地中熱を複合的に利用する研究(【写29】)もされていた。

また、WUR は、農家に対してひらかれた存在であり、技術相談や講演にも積極的に対応している。

【写26】WUR 圃場 【写27】空調ダクトが上部に配置された施設

【写28】LED による補光栽培の様子

【写29】エネルギー利用の模式図

Kas(エネルギー源としてのグリーンハウス)の方

針に則った、太陽熱、地中熱利用の研究模式図。

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⑦Haluco BV 11 月 7 日 9:30~11:30

Haluco BV は、日本の農協と商社の機能を持つ会社で、各地から農産物を集荷するとともにパッケージン

グ(個包装も含む)をし、国内への配荷及び輸出を手がけている。発祥は、生産者組合で、産地の集約に

よって徐々に巨大化し、現在では、果物と野菜のマーケティングにおいて世界のマーケット・リーダーの

1 つになっている。本部は、アイルランドにあり、オランダの Haluco bv では 200 人のスタッフが働いて

いる。実際の農産物の輸送は、運送会社へのアウトソーシングで行われている。(【写30、31】)

ここでは、食品工場並みの衛生管理、環境管理が行われており、各セクションが衛生的に区切られた空間

で作業が行われていた。例としては、異物混入防止のため作業場内への入口の二重扉化による前室の設置、

前室には専用の作業服への着替えスペースや手洗い設備(【写32】)が設置されていた。見学者である我々

も専用の使い捨て白衣、帽子、靴カバーを装着して場内を視察した。

また、ロボット等による機械化(【写33】)も進んでおり、赤・黄・緑のカラーピーマンを1つずつ計3

つをパッケージングするラインが稼動していた。このように衛生的かつ省力化されたシステムで農産物が

大量に取り扱われているのが印象的であった。(【写34】)

【写30】オフィスの様子(物流拠点の機能を有す) 【写31】プレゼンの様子

【写32】場内入口の手洗い設備【写33】ロボットによるパッキング 【写34】出荷待ちの作物

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⑧International Floriculture Trade Fair 11 月 7 日 14:00~17:30

年に 1 回開催される花卉の国際展示会。世界各国から約 300 のブースが出展されていた(【写35】)。多く

は、中南米、アフリカから出展しており、ヨーロッパ市場への輸出を目的に品種・品質のアピールを行っ

ていた。日本からは昭和電工が人工光合成用のライト、システムを展示していた。

花卉専門の展示会であるが、非常に大規模(ビックサイト東ホール程度)で、アールスメア市場とのシャ

トルバス、飲食、Wi-Fi 接続、駐車場等のサービスがすべて無料で提供されていた。

【写35】世界各国から出展されているブースの様子 【写36】プレスルームで事務局長挨拶

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5.まとめ

生産者から流通まで広く視察することができ、オランダの農業政策の全体像を俯瞰することができた。そ

の中で特徴的なことは、以下の点であると感じた。

○戦略が明確であり、ヨーロッパ市場における分業が合理性を高めている。

○生産物、場所の選択と集中が進んでおり、合理的である。

○選択と集中にあたり、行政の方針立案とそれに伴う民間企業に対するサポートがなされている。

まず、ヨーロッパ市場において、オランダで何ができるかを考えた場合、周辺国への輸出を実現しなくて

は農業の拡大は限定的である。しかしながら、オランダの気候・土地は、少日照・低温・狭い国土・貧栄

養土等、決して農業に好適ではなく、これらをカバーする大規模集約型の施設園芸の拡大は必然であった

のだろう。そこで、現在では、ヨーロッパで大量に消費される作物に重点を置き、国内消費量をはるかに

上回る生産量を実現している。特にトマト、キュウリ、パプリカをドイツ、フランス、イギリスに輸出し

ているのが典型的な事例である。

しかし、これらの戦略は、最初から選択と集中が行われたわけではなく、立地条件から自然発生した密集

地を後発的にグリーンポートとして指定し、更なる発展を遂げたのが実情である。生産品目は、各ポート

で野菜、花卉、球根、苗木に特化され、このことにより生産者組合も効率化され拡大し、Haluco BV のよ

うな組織が台頭してきている。

ここにワーゲニンゲンURを中心に据えた技術開発、普及が生産者と一体になり、施設園芸のレベルアッ

プに貢献しており、業界全体を発展させる力になっている。

さらに、エネルギー供給の面では、元来、北海に豊富な天然ガス資源を有することに加え、集約された産

地に工場から CO2 を供給するパイプラインが敷設され、生産性を向上していることがオランダの施設園芸

を主たる産業に成しえていると感じた。

もちろんこれらの体制には、政府の方針(産地の集約化、研究開発の一元化、CO2 削減目標の設定や法規

制)やそれに基づく資金的な支援制度(補助金や金融緩和)が大きく貢献している。また、今回の「Decision

Makers Programme」に見られるような、行政が継続的に支援していることが特徴的であると感じた。

これらを我が国と比較し、競争力を高めるために何をするかが重要であると感じた。

以上

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海外調査資料既刊一覧

No.1 海外先進国の農林水産関係試験研究における技術情報システムに関する調査 (S62.3)

ヨーロッパ先進国の農林水産物の流通利用に関する試験研究動向調査

No.2 農林生態系に及ぼす酸性降下物の影響に関する研究動向調査 (S62.3)

作物育種へのバイオテクノロジー活用に関する研究動向調査

No.3 欧州における穀物多収栽培技術開発の動向調査 (S63.3)

No.4 アメリカ合衆国における動物分野のバイオテクノロジー研究の動向調査 (S63.3)

No.5 欧州における水産バイオテクノロジー研究動向調査 (H元.3)

No.6 欧州諸国における昆虫の生物機能解明と高度利用に関する研究動向調査 (H元.10)

No.7 欧州諸国の農山村地域における公益的機能の評価及び維持増進に関する調査 (H2.6)

No.8 欧州諸国における園芸作物の高品質化、高付加価値化に関する試験研究動向調査 (H3.1)

No.9 中南米における畑作物を中心とした遺伝資源の多面的な利用・加工に関する試験研究動向調査

(H3.3)

No.10 欧州諸国における機能性成分等の利用・加工技術に関する試験研究動向調査 (H3.10)

No.11 欧州諸国における水稲の低コスト・高品質化に関する機械化技術開発試験研究動向調査 (H4.1)

No.12 欧米諸国における生態系活用型農業技術の現状把握と研究動向調査 (H4.3)

No.13 欧州諸国における園芸作物の高能率・省力生産システムに関する試験研究動向調査 (H5.2)

No.14 林業が自然生態系と調和するための関連研究の動向調査 (H5.2)

No.15 農業先進諸国の主要畑作物における品種改良目標と育種システムの動向調査 (H6.1)

No.16 環境調和型エネルギー資源としての生物の高度活用に関する研究動向調査 (H6.1)

No.17 ヨーロッパにおける畜産研究の動向に関する調査 (H7.1)

No.18 北米東部沿岸等における貝毒被害及び対策研究の実態調査 (H7.2)

No.19 アメリカ合衆国における高品質米の生産と稲作試験研究動向に関する調査 (H8.3)

No.20 欧州諸国の農水・食品産業における膜利用及び非熱的エネルギー応用技術に関する試験研究動向調

査 (H8.3)

No.21 オセアニアの畜産における放牧、繁殖及び家畜衛生研究の現状並びに動向に関する調査 (H9.3)

No.22 北米の木材生産戦略と林産研究動向に関する調査 (H9.3)

No.23 地中海・ヨーロッパ諸国における養殖漁業の現状と研究動向に関する調査 (H10.3)

No.24 欧州における生育調節剤によらない野菜・花きの生育制御技術に関する研究動向調査 (H10.3)

No.25 欧州における先端的食品加工技術の開発とその国際的展開に関する状況調査 (H11.3)

No.26 オーストラリアの米輸出戦略と稲作関係研究動向調査 (H11.4)

No.27 ヨーロッパにおける環境研究の現状と動向に関する調査 (H11.4)

No.28 ヨーロッパにおける果樹のバイオテクノロジーの開発及び利用状況の調査 (H12.3)

No.29 EU諸国における農村振興研究の動向 (H12.5)

No.30 米国における小麦・大豆の品種開発に関する基礎調査 (H12.6)

No.31 ヨーロッパ等における家畜ゲノム研究の現状調査 (H13.3)

No.32 ヨーロッパにおける森林の多様な機能の発揮に関する研究の動向調査 (H13.3)

No.33 欧米における食品品質評価手法及びナノテクノロジー研究推進状況の現地調査 (H13.12)

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No.34 ヨーロッパにおける遺伝子組換え作物を利用した有用物質生産システム構築に関する研究の現状

調査 (H14.6)

No.35 ヨーロッパにおけるBSE研究の現状調査 (H15.3)

No.36 水田の高度利用に関する作物研究の北米地域調査 (H15.3)

No.37 欧米における小麦赤かび病のかび毒対策研究開発の現状調査 (H15.3)

No.38 ニュージーランド・オーストラリアにおける温室効果ガス及び木質バイオマス利用技術に関する研

究調査 (H15.9)

No.39 諸外国の研究体制と研究計画に関する調査 (H16.3)

No.40 豪州における重要家畜感染症研究の現状と動向に関する調査 (H17.3)

No.41 欧州における半閉鎖性海域における有害化学物質・重金属類等の水産生物への影響評価の研究に関

する動向調査 (H17.3)

No.42 オセアニアにおける農業系研究者の人材マネージメントのあり方に関する動向調査 (H17.5)

No.43 西欧における有機農業研究の現状と動向に関する調査 (H17.6)

No.44 米国における植物比較ゲノム研究及び組換え作物を用いた物質生産に関する調査 (H17.12)

No.45 EUにおける家畜の免疫機能向上に関する飼養管理及びゲノム情報を利用した抗病性育種に関す

る研究状況調査 (H18.2)

No.46 米国におけるダイズゲノム研究の現状と動向調査 (H19.1)

No.47 ブラジルにおけるさとうきびの効率的生産技術に関わる研究動向調査 (H19.2)

No.48 欧州における木質バイオマス利用システムの現状と動向に関する現地調査 (H19.4)

No.49 欧米における食品分野のナノテクノロジー安全性確保に関する研究動向調査 (H19.11)

No.50 米国における生食用野菜食品に起因する微生物学的危害の発生防止技術に関する研究動向調査

(H19.12)

No.51 米国における有機農業研究の現状と動向調査 (H20.3)

No.52 欧州における生物の光応答メカニズムと利用技術に関する研究動向調査 (H20.11)

No.53 欧州における家畜の粘膜免疫ワクチン開発に関する研究動向調査 (H21.2)

No.54 北米におけるバイオエネルギーの実用化をサポートする技術の研究動向調査 (H21.3)

No.55 EUにおけるGMOの規制、一般作物との共存政策に関する状況調査 (H21.11)

No.56 オランダにおける藻類利用の技術開発と地域での実用化推進に関する状況調査 (H22.2)

No.57 カナダにおける木質バイオマス液化技術の現状と動向に関する現地調査 (H22.8)

No.58 ヨーロッパにおける動物用医薬品に適応可能な新技術の開発状況及び新技術を利用した動物用医

薬品の規制状況調査 (H22.12)

No.59 急速に普及しつつある高速シーケンサーによるゲノム解読技術の進展と、そこから

得られるゲノム情報の農業分野への応用に関する海外調査 (H24.3)

No.60 最先端の農林水産技術開発現場における産学官連携推進体制の現状調査 (H26.2)

Page 19: オランダ園芸産業における 最先端技術の現状調査 - …...Flora Holland は、2008 º1 月にBloemenveiling Aalsmeer とFlora Holland 市場が合併し、世界一の

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〔海外調査資料61〕

オランダ園芸産業における最先端技術の現状調査

2014年(平成26年)2月 発行

編集・発行 農林水産省 農林水産技術会議事務局

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