アンカー工(ロータリーパーカッション式)...

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5 アンカー工(ロータリーパーカッション式)� 足場工・支保工� 施工技術の動向� 建設省建設経済局建設機械課� 図―施工フロー� アンカー工(ロータリーパーカッション式) 1. はじめに 本工法は,岩盤の亀裂,崩落,剥落から法面を 守るために用いられるグランドアンカー工法,そ の中でもロータリーパーカッション式削孔機械を 用いた一連のアンカー工法である。 ここでは,平成10年度に調査実施した「アンカ ー工(ロータリーパーカッション式)」につい て,その概要を紹介する。 2. 調査概要 調査は,建設省,農林水産省において132件実 54 マネジメ 2000 11

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アンカー工(ロータリーパーカッション式)�足場工・支保工�

施工技術の動向�

建設省建設経済局建設機械課�

ボーリングマシン据付�

 

 

アンカー鋼材加工・組立�

アンカー鋼材挿入�

グラウト材の注入打設�

ボーリングマシン移設・撤去�

緊張・定着・頭部処理�

図―1 施工フロー�

アンカー工(ロータリーパーカッション式)

1. はじめに

本工法は,岩盤の亀裂,崩落,剥落から法面を

守るために用いられるグランドアンカー工法,そ

の中でもロータリーパーカッション式削孔機械を

用いた一連のアンカー工法である。

ここでは,平成10年度に調査実施した「アンカ

ー工(ロータリーパーカッション式)」につい

て,その概要を紹介する。

2. 調査概要

調査は,建設省,農林水産省において132件実

54 建設マネジメント技術 2000年 11月号

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������図―3 使用目的� 図―4 工法名�図―2 アンカーの種類�

永久アンカー�90%�

プレキャスト板設置�17%�

土留�17%�

KTB�30%�

SEEE�26%�

VSL�22%�

鋼棒�10%�

FLO�5%�

SHS�3%�

SSL�2%�

その他�2%�

基礎�3%�

その他�25%�

仮設アンカー�10%�

場所打ち法枠�38%�

図―6 削孔径� 図―7 削孔長�図―5 削孔機械のタイプ�

クローラタイプ�79%�

90㎜�9%�

115㎜�43%�

0~10m�32%�

10~15m�33%�

15~20m�23%�

20~25m�7%�

25m超�5%�

135㎜�47%�

146㎜�1%�スキッドタイプ�

21%�

施し,施工フロー(図―1)の各工種に沿って作

業の傾向を調査した。アンカーの種類(図―2)

は,永久アンカーが119件,仮設アンカーが13件

と永久アンカーとしての使用が非常に多かった。

永久アンカーは場所打ち法枠やプレキャスト板の

設置に多く見られ,仮設アンカーは,仮設土留め

に多く見られた。また工法別では,KTB,SEEE,

VSL,鋼棒などが多く採用されていた(図―3,

4)。

3. 施工形態

ロータリーパーカッション(削孔機械)は,こ

写真―1 削孔機械(スキッドタイプ) 写真―2 削孔機械(クローラタイプ)

建設マネジメント技術 2000年 11月号 55

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図―8 定着方法�

くさび定着�59%�

ナット定着�41%�

図―9 頭部処理�

あり�96%�

なし 4%�

れまで足場上で使用するスキッドタイプ(写真―

1)が多く用いられてきたが,切り土法面工事な

ど足場設置が不要な現場の増加から,自走による

移動が可能なクローラタイプ(写真―2)のシェ

アが拡大した(図―5)。また,削孔径は,90~

135mm,挿入長については,10~20m程度が多

かった(図―6,7)。

アンカー鋼材の現地組立・加工は,スペーサ,

シース,防錆材,止水部の取付などが主な作業内

容であるが,複合 PC鋼線より線束では,ほとん

どの工程を工場で行うため,現地での作業はスペ

ーサの取付など省力化されたものであった。

緊張・定着では,くさび定着がナット定着に比

べ若干多く採用されていた。また,頭部処理につ

いては今回のデータの大多数が永久アンカーとい

うこともあり,ほとんどすべてについて実施され

ていた(図―8,9)。

スキッドタイプの削孔機械の移動には,手狭な

現場条件に適用したホイールクレーンが多く投入

されていた。

写真―3 アンカー鋼材組立・加工状況

写真―4 グラウト注入状況

写真―5 緊張・定着状況

写真―6 頭部処理状況

56 建設マネジメント技術 2000年 11月号

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図―3 枠組足場の幅� 図―4 支保種類�図―2 足場種類�

枠組足場�78%�

単管足場�10%�

単管傾斜足場�7%�

ブラケット足場�5%�

600㎜級�14%�

750㎜級�8%�

900㎜級�25%�

1,200㎜級�49%�

1,500㎜級�4%�

枠組支保�30%�

四角支柱支保�5%�

パイプサポート支保 28%�

くさび結合支保�37%�

図―1 施工フロー�

足場・支保設置�

足場・支保撤去�

�4. 技術動向

アンカー工事は,その目的から高所に加え,急

傾斜地での足場設置・撤去などの作業が強いられ

てきた。今回の調査データの中には,この問題を

解消する手段として,高所作業車のデッキに削孔

機械を設置し施工している事例が数件あった。

また,現場でのアンカー鋼材の組立・加工手間

を工場製作に移行することで,作業ヤードの問題

解決やアンカー鋼材の品質向上などに努める傾向

も多く見られるようになった。

これら事例は,工期短縮といったメリットを同

時に伴うものである。

5. おわりに

本工法は,作業条件の悪い現場で使用される工

法であることから,作業の安全性および施工性の

向上が今後も期待されるものである。このため,

新工法,新技術の導入が引き続き行われることや

使用される現場が多種・多様になることも予想さ

れる。

以上のことから,継続的な調査(モニタリング

調査)を実施し,施工実態を的確にとらえたうえ

で施工改善策についての検討を今後も行っていき

たいと考えている。

足場工・支保工

1. はじめに

足場とは,高所作業を行うための仮設の床およ

びその支持構造物をいい,その構造上の違いから

支柱足場と吊り足場に大別される。橋梁やダム工

事を除き一般的な土木構造物では支柱足場が広く

用いられている。

また,支保とは,コンクリートの床や梁の型枠

をコンクリート打設から硬化まで支持する構造物

であり,用途に応じパイプサポート支保,枠組支

保,くさび結合支保が用いられている。

ここでは,平成10年度に調査実施した「足場工

・支保工」について,その概要を紹介する。

2. 調査概要

調査は,建設省,農林水産省,運輸省で幅広く

建設マネジメント技術 2000年 11月号 57

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実施し306件(箇所ごとの延べ件数としては足場

工:473データ,支保工:244データ)の工事から

データを得ることができた。

調査した足場の種類は枠組足場,単管足場,単

管傾斜足場など(図―2)であり,支保の種類は

パイプサポート支保,枠組支保,くさび結合支保

など(図―4)である。

3. 施工形態

足場については,枠組足場が非常に多く,全体

の約8割を占めていた。また,約半数の枠組足場

が1,200mm幅を採用しており,作業の安全性に

対する改善が見られた(図―3)。単管足場は,

接地面に凹凸があったり,傾斜した現場で施工す

る場合に多く用いられていた。

一方支保については,設置高さ4mまでは,

写真―1 枠組足場設置状況 写真―4 安全ネット設置状況

写真―2 単管足場設置状況 写真―5 パイプサポート支保設置状況

写真―3 単管傾斜足場設置状況 写真―6 枠組支保設置状況

58 建設マネジメント技術 2000年 11月号

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図―6 足場工に用いたホイールクレーンの規格�

~20t吊�16%�~25t吊�

60%�

~10t吊�7%�

~4.9t吊�13%�

~45t吊�2%�~35t吊�

2%�

図―5 支保耐力�

~20t吊�19%�

~25t吊�53%�

~10t吊�10%�

~4.9t吊�11%�

~45t吊�4%�~35t吊�

3%�

~20

4035302520151050

~40 ~60(kN/m2)�

~80 ~100 100超�

件数�

パイプサポート�くさび結合�

図―7 支保工に用いたホイールクレーンの規格�

パイプサポート支保が多く用いられ,それ以上に

ついては枠組支保またはくさび結合支保が多く使

用されていた。従来は,枠組支保が一般的に用い

られてきたが,設置,撤去における作業性の向上

や高支保耐力に適用したくさび結合支保のシェア

が増大した(図―4,5)。

また,仮設材の荷役作業には,足場工,支保工

ともホイールクレーン25t吊が多く使われていた

(図―6,7)。

4. 技術動向

足場材,支保材は安全性および施工性に優れた

ものでなければならない。今回普及が目覚ましい

くさび結合支保は,部材と部材にくさびを打ち込

みながら繋ぎ込んでいくもので,従来の枠組支保

に比べ,設置・撤去に要する手間や日数を大幅に

向上できるうえ,構造をシンプルにすることも可

能であることから現在多く採用されている。

また,クレーン車については,狭い現場内での

操作が求められることから,機動性に富むホイー

ルクレーンが普及しているものと考えられる。

5. おわりに

足場工,支保工の過去の調査結果では,部材や

施工形態についての大きな変化は見られなかっ

た。しかし,今回の調査結果から足場幅の変化や

くさび結合支保の登場など施工形態に変化があっ

たことは,これまで目的構造物でないという理由

から軽視されがちであった仮設作業の安全性や施

工性の向上が,工事全体のメリットにつながると

いう認識を業界内に定着させた証でもある。

今後もこのような技術的改善策は引続き行われ

ていくことが予想されるため,継続的な調査(モ

ニタリング調査)を実施し,施工実態を的確にと

らえたうえで施工改善策についての検討を行いた

いと考えている。

写真―7 くさび結合支保設置状況

建設マネジメント技術 2000年 11月号 59