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2020. 78 12 1 調13 14 16 18 95 96 2 31 10 14 3 10 4 カンキツ 担当 JA香川県 営農部園芸課 上原 佑介 7 8 来年産の 結果母枝 花芽分化期に この付近に着 果していると 結果母枝に着 果しない 図1 カンキツ類の着果習性

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2020. 7 8 122020. 7 8

1

令和2年産の作柄状況について

令和2年産は、前年産がややうら

作傾向であったため全国的におもて

年まわりとなっています。本年の香

川県下カンキツ類定点調査園におけ

る満開日の平均は極早生ミカンは5

月13日、早生温州ミカンは5月14日、

普通温州ミカンは5月16日、中晩柑

は5月18日で全体的に平年並みから

やや遅い傾向となりました。開花時

点の作柄は、前年比で極早生温州ミ

カンは103%、早生温州ミカンは

95%、普通温州ミカンは96%、中晩柑

は100%となっています。前年は、

開花時点において、樹上に結果母枝

数も多く、着花も多く見られました

が、生理落果の多発によってやや不

作傾向となりました。この影響で、本

年産は着花量は十分ありましたが、

新梢の発生も多く見られました。た

だ、圃場の条件にもよりますが、園地

内での豊作不作樹のバラツキも大き

い傾向です。また、開花期以降の長期

的な乾燥で一次生理落果は多い傾向

で、二次生理落果も長く続いていま

す。生理落果終了後は着果状況に応

じた摘果を行い、連年安定生産への

誘導を行いましょう。

2

病害虫防除について

本年は、5月31日ごろに梅雨入り

が発表されましたが、概ね乾燥傾向

で推移しています。急な気象変動に

備え、早めの防除を心掛けましょう。

黒点病は枯れ枝を伝染源として発生

しますので、早めに切除し、園外で処

理しておきましょう。黒点病は幼果

期から収穫前まで長期にわたって発

生する上、貯蔵病害(貯蔵中での軸腐

病)を誘発しますので、徹底した防除

が必要です。夏期のハダニ、サビダニ

にも注意が必要です。

また、不作樹や育成樹、隔年結果を

是正するための樹冠上部摘果や枝別

摘果を行い夏梢が発生した樹では、

アブラムシ類やミカンハモグリガを

対象とした防除を10~14日間隔で2

~3回実施し、結果母枝の充実に努

めましょう。

3

摘果の前に・・・カンキツ類の着

果習性

カンキツ類は、本年発生した無着

花新梢に翌年着花します。無着花の

春梢には有葉花が、夏梢や秋梢には

直花が着花しやすい傾向にありま

す。しかし、花芽分化期である10月に

新梢の近傍に着果していると養分が

果実に奪われるため翌年の着果は見

込めません。来年着果させたい部位

は忘れずに摘果しましょう(図1)。

4

温州ミカンの摘果

◆摘果の基本方針

着果が多い樹では、早期摘果によ

り果実肥大を促すとともに、翌年の

着花部位を確保しましょう(部分全

摘果等による予備枝の確保)。高品質

な果実を目指す条件は樹冠外周部、

葉数2~4枚の有葉果等です。

着果がやや多いまたは中庸な樹で

は、着果部は着果負担をかけて品質

を高めるとともに翌年の着花部位も

確保する枝別摘果か、後期重点摘果

の導入を検討しましょう。

着果の少ない樹では、大玉化、糖度

上昇不良等品質低下が懸念されます

ので、粗摘果は行わず、仕上げ摘果で

対応しましょう。

隔年結果を直すためには、豊作時

での摘果が非常に重要です。樹冠上部

摘果等の技術を活用し、連年安定生産

が可能な着果管理を行いましょう。

着果量に応じた間引き摘果の方法

表のように、着果状況に応じた摘

果方法を採用します(表1)。間引き

摘果は、1樹全体をまばらに摘果す

カンキツ

担当

JA香川県営農部園芸課

上原 佑介

7▶8月

樹園

来年産の結果母枝 花芽分化期に

この付近に着果していると結果母枝に着果しない

図1 カンキツ類の着果習性

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る方法で、残した果実の肥大が促進

されますが、隔年結果を軽減する効

果は低くなります。

隔年結果を是正するための摘果

豊作不作を繰り返す「隔年結果樹」

は、樹冠上部摘果や主枝・亜主枝単位

のいずれかで全摘果を行い、翌年の

結果母枝を確保します(表2、図2、

3、4)。作業効率や果実品質を考え

た場合、樹冠上部摘果が望ましいと

思います。摘果程度は大枝単位で樹

全体の1/2~1/3程度、処理時

期は6月下旬から7月上旬としま

す。芽揃いのため短期間で行うこと

が効果的です。夏梢発生以降、秋芽が

発生すると着色遅れや糖度不足とな

るため、マルチ被覆等により品質の

低下を抑制します。摘果処理後、10~

14日後に新梢が発生しますので、ミ

カンハモグリガ等の防除も忘れずに

行います。

後期重点摘果

着果負担がかかることで、葉の光

合成が活発になり、その後、果汁に光

合成生産物が多く蓄積し始める時期

に摘果を徹底することで残した果実

に多く分配し、品質を向上させる技

術です。着果量がやや多い~中庸な

樹では粗摘果を行わず、9月中~下

旬での仕上げ摘果で最終葉果比(約

20~25枚)まで一気に落とします。着

表1 品種ごとの間引き摘果の基準着果量

品 種 多 やや多 中 やや少 少

早  生①早め、強めの粗摘果(枝別、後期重点摘果)②仕上げ摘果(9月)

①遅め、弱めの粗摘果  ②仕上げ摘果(9月)

①仕上げ摘果

②樹上選果①樹上選果のみ

青  島大津四号

(連年結果樹)

①粗摘果②仕上げ摘果(10月)

①仕上げ摘果(10月)②樹上選果

①樹上選果のみ

表2 摘果タイプごとの時期の目安

7月8月 9月 10月

上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬

園地別全摘果 補正摘果 秋肥の施用  

樹冠上部全摘果 上部 仕上げ摘果 樹上選果

枝 別 全 摘 果 枝別 仕上げ摘果 樹上選果

後期重点摘果 粗もぎ 1回目 粗もぎ2回目 仕上げ摘果 樹上選果

図2 樹冠上部全摘果 図3 主枝単位全摘果 図4 亜主枝単位全摘果

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果過多の樹では粗摘果が必要です。

しかし、この技術は仕上げ摘果の適

期が短いため実施面積にも限りがあ

ります。仕上げ摘果が遅れると小玉

となるうえ、隔年結果が助長される

場合がありますので、小原紅早生ミ

カンなど手間が価格に反映できる品

種で取り組みましょう。

◆後期重点摘果の方法とポイント

①着果が多い樹での粗摘果

着花量が極端に多い樹やマルチ栽

培の園地は生理落果終了後7月中旬

頃から粗摘果を開始し、極小果や内

なり果、軸太果など摘果量の半分程

度を摘果します。

②�

着果のやや多い~中庸な樹での粗

摘果

着果が適度にあり新梢の発生もあ

る樹は、8月頃から樹冠外周部の上

向きの大玉果や側枝に直接着生した

軸太果、着果量の多い部分の内なり

果を中心に摘果量の20~30%程度を

粗摘果します。また、肥大の良好な樹

や着果量がやや少ない樹は、着果負

担をかけるため摘果量を制限し夏芽

を発生させないようにしましょう。

③仕上げ摘果(後期重点摘果)

果実に光沢が見られる9月中下旬

ころから開始し、商品性の低い大玉

果、極小果、キズ果、内なり果、病害虫

被害果等を徹底して最終葉果比まで

摘果します(図5)。マルチ被覆園は

果実肥大が劣るため早め(9月中旬

頃)に行います。

5

中晩柑の摘果および潅水

中晩柑は、商品性の高い大玉生産

のため、生理落果がほぼ終了した6

月下旬から摘果を開始し、最終摘果

量の70~80%を粗摘果します。

粗摘果、仕上げ摘果

粗摘果では、直花果や4枚以下の

有葉果を優先的に摘果、次に上向き

の有葉果も摘果します。「いよかん」

や「不知火」、「はるみ」は、樹勢が低下

しやすいので、主枝先端の3分の1

を全摘果することで新梢の発生を促

しましょう。こうすることで、高所で

の袋かけや収穫等の作業労力の軽減

も図れます。仕上げ摘果では、8月下

旬~9月上旬で葉果比約100枚に

1果とし、キズ果、小玉果、遅花果、日

焼け果等を摘果します。

不知火の摘果(図6)

初期肥大が良好なため、摘果後に

新梢を発生させて樹勢を維持、新根

の発生を促すため、7月中の早期摘

果を主体とします。粗摘果で摘果目

標の70%程度を摘果し、夏枝の発生

を促します。着果させる結果枝は長

さ10~20㎝、葉数6~10枚で枝径が

やや大きい結果枝を選びましょう。

不知火は、摘果が遅れると、肥大期後

半から肥大量が鈍化しますので、必

ず早期摘果を行い、大玉生産に努め

ましょう。

潅水

特に「不知火」や「はるみ」は、夏場

の潅水が重要となります。夏場に根

を傷めると樹勢低下に繋がるだけで

なく、肥大不良で小玉果率が高くな

り、酸高果となりやすく高品質果実

の生産は望めないので、梅雨明け後

も十分な潅水を行いましょう。

6

苗木の管理

本年春に植えつけた苗木は、春芽

が緑化し、6月下旬頃から夏芽が発

芽します。発芽後は、春芽と同様に1

腋芽1新梢になるよう芽かぎを行い

残す新梢の伸長・充実を促し、勢いの

ある強い枝を主枝候補として2から

3本誘引します。また、ミカンハモ

グリガやアブラムシの防除を10~14

上向き果、元なりの軸太果、日焼け果を摘果

夏季は上向きで、日光に良く当たり

秋季に垂れ下がる果実を残す

垂れ下がらない枝は秋季に全摘果を!小玉、内なり果を摘果

スソなり果・内なり果・天なり果の果実は早朝に摘果する

天なり果

内なり果

斜線の部分へ間隔をあけて単一的に結果させる

スソなり果

上部 70~80枚に1果中部 80~85枚に1果下部及び内部   90~100枚に1果

図5 仕上げ摘果(後期重点摘果)のイメージ

図6 不知火の摘果程度と方法

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日間隔で2~3回実施しましょう。

(図7)

7

マルチ栽培

近年、特に秋季での多雨が影響し、

糖度不足や浮皮果の発生等果実品質

の低下が目立ちます。果実品質向上

(低下抑制)のために、早期からのマル

チ被覆によって果実肥大の抑制等対

策を講じておきましょう。特に県内

で育成された小原紅早生ミカン、高

糖系温州ミカンの交互結実など経営

の柱となる園地からマルチ栽培を導

入し品質向上に努めましょう。ただ

し、過乾燥は小玉、酸高果の発生を助

長しますので、落葉が見られる場合

は潅水を行う必要があります。また、

多雨年で、被覆後乾燥させたい時期

(8月上旬~9月中旬)に土壌が湿っ

ている場合はマルチを巻き上げるな

ど乾燥する条件を作りましょう。

8

品質向上対策

生理落果終了以降、果実に果汁が

集積し始めます。果汁集積が開始し

て以降(7月上旬頃以降)40から50日

間樹体へ水分ストレスを与えると果

実品質が向上します。エチクロゼー

ト(フィガロン乳剤)は、熟期促進を

目的に登録されている植物調整剤

で、7月上中旬頃(満開後50~90日)、

7月下旬~8月上旬頃(満開後70~

110日)の二回散布することで効

果が得られます。(表3)ただし、樹勢

が弱い樹に使用した場合、衰弱を促

し、枯死する場合がありますので、使

用する際は適正着果の健全樹を選択

しましょう。エチクロゼートを散布

することで極端に品質が向上すると

いうことではありませんので、品質

向上対策はマルチ被覆を基本とし、

使用する場合はマルチ被覆が困難な

園地や、雨が多く水分ストレスが十

分付与出来ない場合の補助としての

散布が望ましいでしょう。

発芽後は、1腋芽1新梢に芽かぎを実施します。

ミカンハモグリガなどの防除を2~3回実施します。

乾燥に注意し潅水を行います。

有機質肥料や緩効性被覆肥料を施します。

強い新梢2~3本を垂れないように誘引します。

図7 苗木の夏季管理

表3 熟期促進を目的としたエチクロゼート(フィガロン乳剤)の使用方法

使用目的 使用時期 使用回数 使用濃度 散布液量 使用方法 総使用回数

熟 期 促 進(熟期促進にだけ使用する場合)

1回目:�満開50~90日後2回目:�満開70~110日後ただし、収穫14日前まで

2回2,000~3,000倍

葉先からしたたりはじめる程度(250~500L/10a)

立木全面散布

4回以内(1,000倍希釈散布は2回以内

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令和2年産のビワは、豊作傾向と

なり、寒波の影響もなかったため、種

子形成も正常で果実もやや大きい傾

向となりました。成熟期が乾燥傾向

であったため、食味も良好な仕上が

りとなりました。収穫後は樹勢を回

復させ、夏枝の充実を図り、生理的な

花芽分化を促すために夏肥を施用し

ましょう。(通常栽培での施用例:燐硝

安有機S280を80㎏/10a)また、

9月中旬から蕾が出始め、冬期にか

けて開花し、春にかけて幼果になり

ます。この時期に必要な養分をまか

なうのが秋肥です。(施用例:ビワ配合

ペレット785を100㎏/10a)

また、生理的花芽分化期(果実収

穫期の直前、つまり春枝の新梢停止

期頃から生理的な花芽分化が始ま

り、収穫終了後からは夏枝が発生し

ます。夏枝の発生時期はかなり長期

間にわたり、収穫終了後だけでなく、

2回目の夏枝として発生することも

あります。1回目の夏枝が停止する

頃から形態的な花芽分化期に入りま

す)に苦土が欠乏すると花芽分化に

影響し、充実した結果枝や花蕾の発

生に対しても影響を与えます。苦土

石灰等苦土成分の補給を目的とした

施用がまだのところは、10a当たり

約100㎏を目安に施用します。た

だし、肥料成分との拮抗作用が起こ

るため、夏肥や秋肥施用から14~20

日程度間隔をあけて施用します。

ビワは浅根で乾燥に弱い傾向で

す。降雨が少ない場合は定期的に潅

水を行いましょう。

2

低樹高への樹形改造(図1)

ビワの管理作業の大部分は摘果、

袋かけ、収穫出荷等限られた時期に

集中しています。作業労力を軽減す

るため、樹高を低くして管理をしや

すくすることが重要です。

樹高を切り下げる場合、1年目に

は、一番下の主枝のすぐ上に発生して

いる主枝2~3本を間引き、樹のふと

ころに太陽光線を入れて新梢の発生

を促します。2年目には残した主枝の

葉数を増やしながらもう1段上の主

枝を間引きます。このように順次主枝

を間引きながら、4~5年くらいで主

幹を切り返します。また、主幹を間引

いたときに、残す主枝が日焼けを起こ

さないよう、陽が当たりやすい箇所に

ホワイトンパウダー等の石灰乳を塗

布しておきましょう。

ビワは根量が少なく、一度に強剪

定を行うと樹勢衰弱やがんしゅ病、紋

羽病の発生が助長され枯死すること

もありますので、剪定量を調整し、年

次での計画的な樹形改造が重要です。

3

剪定

7月上旬から8月中旬に太枝の間

引きや重なり合った側枝の短縮・間

引き等を中心に行います。その際、切

り口にはトップジンMペースト等の

癒合剤を必ず塗布します(図2)。

4

芽かき

収穫後に果梗枝から発生する夏

ビ ワ

担当

JA香川県営農部園芸課

上原 佑介

1年目 2年目 完成3~5年目

図1 ビワの年次計画剪定における低樹高化モデル

大きくなりすぎた側枝の短縮

かぶさり枝の除去

垂れ下がった枝の短縮

図2 ビワの剪定方法

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枝は、7月中旬~下旬に充実したも

のを1本残して芽かきします。残す

枝のほかに葉を1枚つけて外芽で切

り返しておくと予備枝ができます。

なお、手でもぎ取ると傷が付き、がん

しゅ病の原因となりますので、鋏を

使って剪除し傷を最小限にとどめて

癒合を促しましょう。(図3)。

5

防除

ビワキジラミの発生が多く、本年

産での果実にも排泄物(ロウ物質)

の付着やすす病の発生等による被害

が多くみられました。(写真1)ビワ

キジラミは、年間を通して新梢先端

部や花房の隙間など、おもに枝先に

多く生息しています。しかし例外的

に、盛夏(7月下旬から9月上旬頃)

には枝先にはほとんど見られず、日

陰が多く出来る樹冠内部の葉裏に生

息しています。収獲した果実にビワ

キジラミの被害が確認されていた場

合は、収穫後の防除により密度を低

下させておく必要があります。その

際には、樹冠内部を中心に丁寧に散

布することを心掛けましょう。収穫

終了後の防除は、スタークル顆粒水

溶剤(アルバリン顆粒水溶剤)(2,

000倍、収穫前日まで/2回)で

す。また、ビワは葉にも毛耳が多いの

で薬液の浸達を高める展着剤の加

用が必要です。新たに、ビワキジラ

ミに対し、スプラサイド乳剤40(1,

500倍、開花期まで/2回以内)が

登録されました。いずれかを選択し、

防除を徹底することでビワキジラミ

への対策を行いましょう。

1

生育状況

5月の気象状況(高松気象台デー

タ)は、平均気温は平年より高く、

日照時間も平年より長く推移しま

した。降雨量は、5月の1カ月間は

64.0㎜で平年(107.5㎜)と比

較しても少ない状況となりました。

そのため、果実肥大について小玉傾

向が懸念されます。

今後の天候については、5月25日

発表高松気象台の3か月予報によ

ると、7月の前半は平年と同様に曇

りや雨の日が多く、期間の後半は平

年と同様に晴れの日が多い見込みで

す。気温(平年:平均気温27.0℃)

は平年並みから高く、降水量(平年:

降水量144㎜)は平年並みの予想

となっています。

生育については、6月中旬現在前

年と同じペースの進捗なので、生育

状況に応じた管理をしましょう。県

内の極早生の出荷については、6月

12日の「はなよめ」から始まり前年と

ほぼ同じスタートとなりました。

2

二重袋の除袋

除袋は、遮光により果実の地色が

白っぽく抜けたところで除袋して日

光を当てることで、着色を鮮やかに

することを目的としています。

除袋時期⇒

着色しやすい品種は7日

前を目安に除袋します。着色が中程

度の品種は収穫14日前を目安に除袋

します。

果実縫合線と果梗部周辺以外の果

実周辺部の地色(緑色)が抜けた時期

芽かきで残す枝の充実を図ります。

予備枝は葉1枚残して、外芽で切り返します。

図3 芽かきの方法

写真1 ビワキジラミの    被害果(すす病)

写真1 本年産収穫された「はなよめ」

モ モ

JA香川県営農部園芸課

担当近藤 直樹

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2020. 7 8 182020. 7 8

が適期となります。

早すぎる⇒

地色(緑色)が抜けていな

いうちに除袋すると、着色が冴えな

い。

遅すぎる⇒

収穫期までに十分着色し

ない。

※�

収穫の早い樹冠上部を数枚除袋

し、地色の抜け具合を確認しなが

ら、除袋時期を見極めましょう。昨

年着色の悪かった園では除袋をや

や早くしましょう。

3

新梢管理

若木等樹勢が強く、副梢が旺盛に

伸びて果実の上に被さっている場合

は果実に日が当たる程度の軽い剪定

をしますが、不要な枝でも基から切る

と、幹に直接日が当たり日焼けを起こ

すので、幹から発生している状況によ

り5~15㎝程度残して剪除します。

4

反射マルチの設置

樹冠上部や外周部に比べ、樹冠の

内部や下部の果実は日当たりが悪

く、着色は悪い果実は多いです。その

ため、日照を補うために反射マルチ

を設置することにより着色促進が期

待できます。

設置時期は、除袋後2~3日頃が

適期です。収穫後は除去します。

5

収穫

香川県農業試験場府中果樹研究所

の収穫盛日予測は、あかつきは7月

8日、なつおとめは7月20日となっ

ています。

収穫は、果実側面の地色(緑色)が

抜け、果梗部がやや緑から黄緑色で

収穫します。

収穫が早すぎる⇒

小玉で糖度が低く

酸味が強い果実となってしまいま

す。

収穫が遅すぎる⇒

過熟となってしま

い、日持ちしない果実となります。ま

た、「みつ症」の発生する確率が高く

なります。

通常は、主枝・亜主枝の先端部から

熟れてきますが、一斉に熟れる年もあ

れば、高温乾燥が続き、生育が遅れる

こともあるので注意してください。

モモの果実は収穫前だけでなく、

収穫後も呼吸しています。その呼吸

量は温度が高いほど多いので、温度

を低く保つことが収穫後の果実を長

持ちさせる条件です。果実の温度が

高まっていない午前の早い時期にで

きるだけ収穫し、収穫した果実も涼

しいところで出荷調整するようにし

ましょう。

※�

昨年は、早生品種の中心である日

川白鳳を中心に果実の熟度が進み

果実体質の悪い果実が見られたた

め、収穫時期が遅れないようにし

ましょう。

6

土壌管理、台風対策

収穫前に降雨が少なく乾燥しすぎ

ると渋みが出る場合があるので、少

量の潅水を行います。逆に降雨が多

い場合モモは滞水に弱い作物です。

特に近年は集中豪雨により滞水する

ため、園地の排水状況をチェックし、

明きょを設置するなど、長い間滞水

しないようにしましょう。

また、今月に入ると台風に伴う大

雨や強風によって、落果や枝の損傷、

樹の倒伏が発生することも予想さ

れます。そのため、倒伏防止対策とし

て、支柱などでしっかりと固定しま

しょう。また、圃場の排水溝や用水路

を点検し、滞水しないように注意し

ましょう。

写真2 二重袋除袋直後の日川白鳳

写真3 反射マルチの設置

写真4 昨年産の適期に収穫されたモモ

写真5 しっかりと枝を支柱で固定

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2020. 7 82020. 7 819

7病害虫防除

散布時期は、生育状況に応じて行

いましょう。

適期の防除で果実の外観や体質を

向上させ、収穫量を増加させましょ

う。

8カメムシ類

⑴発生状況

病害虫防除の共通害虫にも記載さ

れていますが、カメムシ類の発生が

急増しています。県内の栽培園でも

発生や被害果が確認されています。

モモに関しては、すでに収穫時期に

入っておりますが、引き続き注意し

ましょう。

⑵今後の対策

①圃場内をよく観察し、被害果実や

カメムシ類の発生が見られる場

合は、早急に防除しましょう。特

にスギ、ヒノキ等が周辺に多い圃

場や、過去に被害が認められる圃

場では注意しましょう。

②多発してからの防除は効果が劣

る場合があるので、発生初期の防

除を徹底しましょう。

③成虫は夕方に飛来し夜間加害す

るので、薬剤散布は夕方に広域か

つ一斉に行うと効果的です。

⑶防除

令和2年産 モモ病害虫防除暦香 川 県 監 修( 令 和 2 年 3 月 2 日 )香川県果樹研究同志会・JA

散布時期

病害虫名

基幹防除

病害虫名

応急防除

早生種 中生・晩生種 薬剤名 使用濃度

100ℓ当たりの薬量

使用時期(収穫前日数)/使用回数

10a当たり散布量

薬剤名 使用濃度100ℓ当たりの薬量

使用時期(収穫前日数)/使用回数

10a当たり散布量

− 7月1日頃

ア ブ ラ ム シ 類

モモハモグリガ

シ ン ク ム シ 類

○劇ハチハチ

 フロアブル2,000倍 50㎖ 前日/2回

500ℓ

ハ ダ ニ 類

( 発   生   時 )

ダニサラバフロアブル

または

ダニゲッターフロアブル

1,000倍

2,000倍

100㎖

50㎖

前日/2回

前日/1回

400ℓ

灰 星 病 ベルクート水和剤 1,500倍 66g 前日/3回

−7月15日頃

(収穫前)

ア ブ ラ ム シ 類

シ ン ク ム シ 類

○劇ロディー

 水和剤1,000倍 100g 前日/5回

500ℓ

灰 星 病トップジンM水和剤 1,500倍 66g 前日/6回

注意事項チオファネートメチルを含む農薬(トップジンMの成分)の総使用回数は10回以内(塗布は3回以内、休眠期の散布は

1回以内、生育期の散布は6回以内)

8月上旬

(収穫後)

8月下旬

(収穫後)

クワシロカイガラムシ

モ モ ハ モグリガ

モ モシンクムシ

ナシヒメシンクイ

○劇スプラサイド

 水和剤2,000倍 50g 21日/2回

500ℓ

モ モ ハ モグリガ

( 樹 勢 低 下 園 )

カスケード乳剤

または

スタークル顆粒水溶剤

2,000倍

2,000倍

50㎖

50g

14日/2回

前日/3回

500ℓ

ハ ダ ニ 類 カネマイトフロアブル 1,500倍 66㎖ 7日/1回

注意事項 スプラサイド水和剤は樹勢の衰えた樹では薬害の恐れがあるので使用しない。

病害虫名 薬剤名 使用濃度使用時期

(収穫前日数)/使用回数

カメムシ類

(発生時)

スタークル

顆粒水溶剤2,000倍 前日/3回

Page 9: カンキツkw-ja.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/07/09de2bc26b15b...2020/07/09  · 13 2020. 7 8 2020. 7 8 ⑵果は低くなります。されますが、隔年結果を軽減する効る方法で、残した果実の肥大が促進

2020. 7 8 202020. 7 8

1本年産概況

本年産の概況について暖冬の影

響により、発芽と展葉は平年に比べ

て1週間程度早まりました。しかし、

4月に気温が低く推移したことによ

り、開花期は平年並みとなりました。

7月、8月の天候を確認しながら、生

産対策を行っていきましょう。

2潅水管理

⑴無加温園地

成熟期の水分不足は早期落葉や細

根の痛みにつながります。また、収穫

開始頃には秋根の発生が始まりま

す。この時期の乾燥は秋根の発生を

鈍らせ、樹勢回復も進まず、翌年に影

響をもたらします。土壌を過剰に乾

燥させないよう、必要に応じて潅水

をします。

⑵トンネル園地

梅雨時期の土壌は過湿状態で、根

の活力が低下しています。梅雨明け

後、一気に気温が上昇すると、葉の蒸

散量が増えて、土壌は乾燥しやすく

なります。土壌水分の変化が激しい

この時期には、縮果症や裂果が発生

しやすくなります。土壌水分の急激

な変化を避けるためにも、梅雨明け

後、土壌、天候に応じて潅水を行いま

しょう。

3シャインマスカット

⑴無加温栽培

施設栽培は収穫期を迎えます。今

年度も引き続き、高品質で安全な出

荷をしましょう。

収穫の一つの目安としては、第

1回目ジベレリン処理から90日~

100日程度です。(果粒が小さい場

合はもっと早いこともあります)第

1回目ジベレリン処理が早い房から

糖度検査、食味をしていきます。(必

ずしも第1回目ジベレリン処理が早

い順から糖度が上昇するとは限りま

せん)糖度基準は肩部18度以上もし

くは房先17度以上とします。収穫時

は穂軸を持ち、未熟果(石ぶどう)、小

粒果が混在していないかを再度確認

して、極力果粒に触れず果粉を落と

さないようにします。荷造り時も脱

粒(写真1)しないように丁寧に扱

い、異物混入、病害虫被害果がないよ

うにします。早期にかすり症(写真

2)が見られたら糖度分析、食味をし

た上で販売担当者と協議して速やか

に収穫をしましょう。収穫は果実温

度の低い早朝に行います。

⑵トンネル栽培

硬核期中(満開後後30日から45日)

での房管理、芽かぎ、極端な潅水およ

び乾燥は縮果症の発生要因となる

ため行いません。縮果症の発生が見

られた被害果粒は果粒軟化後に摘粒

します。果粒軟化期に入ってから、房

数が依然多い園地は見直し摘房(1

m当たり両側6房)を行い、副梢等の

枝管理、見直し摘粒、玉直し(写真3)

を行い、房づくりを仕上げます。その

後、アザミウマ類等の防除をしてか

ら、袋掛けをします。

①副梢管理

目安として、房まで2葉、房先1葉

になるようにかぎ取ります。

②見直し摘粒

押し合っている粒、未熟果(石ぶど

う)、小粒果を除去します。未熟果は

濃い緑色の硬い粒です。

③玉直し

薄手の布手袋や塗り箸等を使っ

て、内向き果や横向き果を外に出し、

果房表面に果粒が並ぶようにしま

す。

④袋掛け

原則白色の果袋を使用します。葉

が小さい、少ない等で、直射日光があ

たるところは袋の上に、傘紙を掛け

るか緑色の果袋を使用します。

ブドウ

JA香川県営農部園芸課

担当松永 直也

写真1 脱粒 写真2 かすり症

写真3 玉直しを行い果面を整えた房

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2020. 7 82020. 7 821

4ピオーネ

⑴無加温栽培

施設栽培は収穫期を迎えます。着

色が良好であっても、酸が高い房が

あるので、収穫時は糖度検査だけで

はなく、食味をして糖度と酸度を確

認してから収穫します。

⑵トンネル栽培

ピオーネについても硬核期中の房

管理、芽かぎ、極端な潅水は縮果症の

発生につながります。果粒軟化期に

入ってから、副梢管理、見直し摘房等

の仕上げをします。その後、晩腐病等

の防除をしてから、袋掛けをします。

雨天時の袋掛けは避けます。

近年、気温が高く推移しているこ

とから、着色不良の房が多く見られ

ます。大房や1結果枝に2房ならす

と着色不良となります。

5デラウェア

⑴無加温栽培

ハウス内が35℃以上になると着色

不良の原因となりますので、換気と

潅水により高温を防ぎます。(成熟期

の過剰な潅水は裂果を助長するので

注意します)また、着房過多も着色不

良の要因となりますので、再度、見直

し摘房をします。

収穫後、新梢、副梢の伸長により、

棚面が暗くなると、次年度の結果母

枝の充実不良の原因となります。新

梢の先端および副梢の摘心を行い、

棚面の明るさを確保します。

⑵露地

遅くとも、梅雨明け前までに肩の

日焼け防止に傘かけを行います。

この時期の新梢管理は糖度上昇、

次年度の結果母枝確保のために重要

です。果粒軟化期(6月下旬~7月上

旬頃)から着色開始期にかけて急激

に新梢管理を行うと裂果、着色不良

を招く可能性があるので、数回に分

けて行います。

収穫時は糖度検査だけではなく、

食味をして糖度と酸度を確認してか

ら収穫します。

1本年産概況

本年産の概況について暖冬の影響

により、発芽と展葉は早まっていま

したが、4月に気温が低く推移した

ことにより満開日は平年並みとなり

ました。(表1)本年産の着蕾数は多

く、摘蕾が追いついていない園地が

見られました。摘蕾が不十分だった

園地は摘果に努めましょう。

2摘果

カキは6月から7月の梅雨期の日

照不足と養分競合から生理落果しま

す。特に、過剰に着果している園地は

カ キ

JA香川県営農部園芸課

担当松永 直也写真1 富有の摘果

表1 主要品種の生育ステージ(香川農試府中果樹研)

品種名2020年 2019年 平  年

発芽 展葉 満開 収穫盛 発芽 展葉 満開 収穫盛 発芽 展葉 満開 収穫盛

早 秋 3/6 3/25 5/16 ─ 3/8 3/29 5/17 10/2 3/17 3/30 5/18 9/27

太 秋 3/17 4/1 5/16 ─ 3/18 4/7 5/16 10/1 3/21 4/3 5/16 10/1

松本早生 3/17 3/30 5/19 ─ 3/15 4/5 5/17 11/5 3/21 4/3 5/19 10/26

富 有 3/18 4/1 5/20 ─ 3/20 4/7 5/19 11/22 3/22 4/4 5/20 11/14

※ 平年は過去10年間の平均。

摘果する果実○ 

残す果実○

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2020. 7 8 222020. 7 8

生理落果が多いです。摘果は生理落

果終了後の7月から行います。摘果

の目的は隔年結果の防止、果実肥大

の促進、品質向上、収穫期の省力化で

す。(写真1)

3残す果実

 

結果枝の中央部(基部の2~3番

目)の下向き、斜め下向き果

ヘタが大きい腰高果

傷の無い果実

4摘果する果実

発育不良果

傷果、汚染果、病害虫被害果、奇形果

葉が5枚以下の弱い結果枝の果実

下枝、下垂枝の日当たりの悪い果実

地面に接する果実

遅れ花果

枝に挟まる果実

隣接している果実の片方

上向き果

5結果部位と葉果比

基本として、上層部は10葉に1果

(早生は15葉)、中層部は15葉に1果

(早生は20葉)、下層部は20葉に1果

(早生は25葉)を目安に果実を残しま

しょう。(図1)

太秋は葉果比40葉以上に1果に摘

果すると条紋、汚染が広がるので20

~25葉に1果を目安に1結果母枝当

たり3~4果程度を着果目標としま

す。

早秋は早期落果終了後の7月中旬

と8月の2回に分けて、スジ果等の

障害果、奇形果を中心に摘果します。

1結果母枝当たり2~3果を着果目

標とします。

すでに、富有柿を1枝1蕾に摘蕾

し終えた園地は遅れ花果の見落とし

がないかを再度確認しましょう。

6新梢管理

徒長枝等の不要な新梢を放置して

おくと、通気性が悪くなることや薬

剤散布がうまくいかないことから、

病害虫による被害、汚染果の発生の

助長につながります。また、日照条件

が悪くなり、肥大不良になる恐れが

あります。次年産の結果母枝候補と

なる新梢(向き、角度を考慮)は残し

て、不要な徒長枝、混みあっている部

分は2~3回に分けて軽めに除去し

ましょう。新梢管理時に炭疽病の感

染が見られたら、発病枝の除去をし

て、より一層防除の徹底に努めます。

特に早秋での2次伸長した枝は炭疽

病にかかりやすいため、こまめな摘

心が必要となります。

7誘引・枝つり

果実が肥大するにつれて、枝が下

がってきたら、日当たりを勘案して、

側枝、結果母枝を誘引、枝つり、支柱

支えを行いましょう。

8摘葉

ヘタ部の着色を促進して、均一に

仕上げるため、8月下旬に果実にか

ぶさった葉を2~3枚摘葉しましょ

う。

9土壌水分管理

深根性で干害は受けにくいといわ

れていますが元来、耐干性は弱く、弱

樹勢園、有効土層の浅い園は、特に注

意が必要です。土壌水分不足は、熟期

の遅延や品質の低下を招きやすいの

で、早めの草刈や敷き草を行い、水分

の損失を抑えます。葉まきが見え始

めたら、2週間間隔で25~30ミリの

潅水を行いましょう。

�袋掛け栽培(富有柿)

富有柿の高品質生産、高単価販売、

収穫期の分散を目標とします。日当

たり良好で、大玉果が生産できる独

立樹に7月下旬頃から全量掛けしま

上層部 10葉に1果(早生系15葉)

中層部(幼木~若木も同様)

15葉に1果(早生系20葉)

下層部(成木~老木も同様)

※渋カキは果実を多めに残しても良い。

20葉に1果(早生系25葉)

図1 結果部位と葉果比

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2020. 7 82020. 7 823

す。カラスの被害防止対策としてテ

グス等を張りましょう。

�カメムシ類

病害虫防除のページに記載されて

おりますが、今年は5月の上中旬に

越冬世代のカメムシ類の発生が多数

確認されております。

今後、第一世代成虫の発生が多く

なることが予想され、圃場での被害

(写真2)も多くなることが懸念され

ます。

カメムシ類は主に夕方頃から活動

し始めるので、飛来状況の確認は夕

方に行い、薬剤散布も夕方に行うの

が効果的です。

発生の多い圃場では、令和2年産

カキ防除暦(図2)を参考に使用回数

に注意して、散布間隔を短めに防除

を行ってください。

令和2年産 カ キ 防 除 暦香 川 県 監 修( 令 和 2 年 3 月 2 日 )香川県果樹研究同志会・JA

生育状況月旬 重点

作業 病害虫名

基 幹 防 除 応 急 防 除

注意事項薬剤名 使用

濃度使用時期(収穫前日数)

使用回数

100ℓ当りの薬量

病害虫名 薬剤名および散布濃度

使用時期(収穫前日数)

使用回数

生理落果

上 炭 疽 病う ど ん こ 病

フジコナカイガラムシカ メ ム シ 類

ストロビードライフロアブル

○劇スプラサイド水和剤

3,000倍

1,500倍

14日

30日

3回

3回

33.3g

66.6g中

果 

実 

肥 

大 

仕上げ摘果

炭 疽 病う ど ん こ 病

カキノヘタムシガカ メ ム シ 類

オンリーワンフロアブル

キックオフ顆粒水和剤

2,000倍

2,000倍

前日

前日

3回

3回

50㎖

50g

カメムシ類※テルスター 水和剤��2,000倍

14日 2回

○�台風被害後には必ずトップジンM水和剤又はゲッター水和剤を散布する。

中炭 疽 病落 葉 病

カ メ ム シ 類

トップジンM水和剤

キラップフロアブル

1,500倍

2,000倍

前日

7日

6回

2回

66.6g

50㎖

炭 疽 病落 葉 病

ゲッター 水和剤��1,000倍

7日 3回

収 

穫 

上早生収穫開始

炭 疽 病

カ メ ム シ 類

ナリアWDG

スタークル顆粒水溶剤

2,000倍

2,000倍

前日

前日

2回

3回

50g

50g

ハ ス モ ンヨ ト ウ

サムコルフロアブル10��5,000倍

前日 3回

○�収穫時期の早い品種は、収穫前日数に注意する。

*�農薬散布の際には、近接圃場の栽培作物、学校などの公共施設や住宅地に農薬が飛散しないよう細心の注意を払いましょう。防除履歴を必ず記帳しましょう。※使用時期、使用回数は使用基準である。例:(14日、4回)→(収穫14日前まで、使用回数4回以内)ホーマイコート、トップジンM水和剤、ゲッター水和剤はチオファネートメチルの成分を含む薬剤であり、総使用回数は、塗布3回

以内、休眠期の散布1回以内、生育期の散布6回以内の合わせて10回以内である。スタークル顆粒水溶剤、キックオフ顆粒水和剤は、ジノテフランの成分を含む薬剤であり、総使用回数は、塗布1回以内、散布3回以

内の合わせて4回以内である。サムコルフロアブル10、キックオフ顆粒水和剤はクロラントラニリプロールの成分を含む薬剤であり、総使用回数は、散布3回以内

である。*�記載した農薬登録内容は令和2年3月2日現在のものです。それ以降に登録内容が変更される場合がありますので、農水省のホームページ(http://www.acis.famic.go.jp/index_kensaku.htm)等で最新の登録内容が掲載されています。農薬を使用する際には、ラベルに記載されている使用基準等を確認しましょう。*�養蜂が行われている地域では、養蜂関係者と情報交換等の連携を緊密に行うとともに、農薬使用に際しては、養蜂関係者に対し、事前に農薬使用の予定の情報提供を行い、危害防止対策を講じましょう。みつばちに影響がある農薬を使用する場合には養蜂農家に連絡をしましょう。

図2 令和2年産 カキ防除暦

写真2 カメムシ類による被害果

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2020. 7 8 242020. 7 8

1生産状況

本年産キウイフルーツの開花状況

については、各品種とも昨年とほぼ

同時期の開花となりましたが、平年

と比べると2日程度早い開花となり

ました。今後気温が上昇すると生育

が前進することも予想されるので、

管理作業や防除等は、生育や病害虫

の発生時期に合わせた適期管理を心

掛けましょう。

2土壌管理

本年産も発芽期以降乾燥傾向で推

移しています。前回の香川の果樹で

も書きましたが、園地によっては、乾

燥に伴う養分不足からの影響とみら

れる葉の黄変も見られたことから早

めからの潅水も園地条件によっては

必要となります。キウイフルーツは、

加湿と乾燥どちらにも弱い作物で

す。そのため、適正な水管理が必要と

なります。ただし、以前には7月の豪

雨により園地に水が滞留したことに

よる根腐れの発生やその後高温乾燥

が続き樹勢低下した園地が多く散見

されました。各園地の土壌条件に応

じた潅水を行い、樹勢維持に努めて

ください。

 

集中豪雨による根腐れを防ぐた

め、畝立てや排水溝の整備等排水対

策を行います。(傾斜のある園地内に

水筋をつけないよう園地上部での排

水対策)

状況に応じて、適宜潅水を行いま

す。(園地の条件に応じて、葉からの

蒸散をできるかぎり抑えて乾燥を穏

やかにするため、可能であれば夕方

以降涼しい時間に少量多潅水を行い

ます。)

令和2年産も一部園地で発生しま

した。潅水した園地や梅雨に入り降

雨が続いたことによって軽減されま

した。

3新梢管理

樹勢が良く、適度な潅水を行えて

いる園地では新梢が発生します。逆

に適切な潅水を行えず樹勢が低下し

た園地では、新梢が発生しません。そ

キウイフルーツ

JA香川県営農部園芸課

担当近藤 直樹

香川県農業試験場府中果樹研究所 開花日

品   種開花日(盛)

2020 平年値 2019K−12 5月 7日 5月 6日 5月 7日レインボーレッド 4月29日 4月30日 4月27日香緑 5月18日 5月20日 5月18日讃緑 5月14日 5月15日 5月15日さぬきゴールド 5月 9日 5月11日 5月 9日さぬきエンジェルスイート 5月 7日 5月 9日 5月 8日香粋 5月 8日 5月 7日 5月 4日キウイっこ1号 5月 8日 5月 6日 5月 7日キウイっこ2号 5月 8日 5月 6日 5月 7日キウイっこ3号 5月 4日 5月 6日 5月 5日キウイっこ4号 5月 4日 5月 5日 5月 4日キウイっこ5号 5月 7日 5月 6日 5月 6日ヘイワード 5月18日 5月20日 5月18日マツア 5月14日 5月17日 5月18日トムリ 5月25日 5月19日 5月16日チーフトン 5月24日 5月15日 5月14日さぬき花粉力 5月 6日 5月 7日 5月 8日 平年値は過去10年の平均値(リンクシート)

写真1 集中豪雨の前には排水対策を!! 写真2 葉の黄変

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2020. 7 82020. 7 825

のため、棚下の明るさを考えて管理

しましょう。過繁茂の園地では果実

品質が低下し、明るすぎる園地では

樹勢が低下します。そのため、園地の

明るさは、日が差したときに木漏れ

日が見える程度の明るさに管理しま

しょう。まずは、新梢の発生状況や発

生位置を確認しましょう。

ただし近年、高温干ばつ等による

樹勢の低下により新梢の発生が少な

く、主枝等の日焼けによりさらに樹

勢低下を招く場合があるので新梢管

理については棚下の明るさを考え管

理しましょう。

新梢で主枝や亜主枝から発生した

ものについては、なるべく翌年の亜

主枝や側枝として利用するため、捻

枝・誘引を行い翌年の結果枝として

利用しましょう。

太すぎる枝、長すぎる枝について

は更新用として利用できないため、

節を残して切り、再度新梢を発生さ

せて次年度の更新枝にしましょう。

樹勢低下⇒

新梢発生の減

少⇒

主枝や太枝の日焼け

さらなる樹勢低下

右記の悪いサイクルにならないよ

うにしましょう。

主枝や亜主枝等の太枝に直接日が

当たらないよう、捻枝や誘引を行い

写真3 太枝に日が直接当たらないようにしましょう。

写真6 適切な新梢の発生がみられる園地

写真4 新梢の発生が多い園地「次年度の更新枝や予備枝以外は、除去し棚下の明るさを確保しましょう。」 写真5 適切な棚下の明るさ

写真7 節を残し切り、次年度の更新枝として活用

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2020. 7 8 262020. 7 8

日陰にします。

日が当たっている部分を触ってみ

て熱くなってないか確認しましょう。

4病害虫防除

写真8 葉裏に潜む幼虫(キウイフルーツヒメヨコバイ) 写真9 葉の被害

時 期 対象病害虫 散布薬剤 使用基準(収穫前/総使用回数)

7月中旬 クワシロカイガラムシ ○劇スプラサイド水和剤 1,500倍 60日/3回7月中旬(さぬきエンジェルスイート) 果実軟腐病 トップジンM水和剤 1,000倍 前日、5回

8月上中旬 キウイヒメヨコバイカメムシ ○魚アグロスリン乳剤 2,000倍 7日/3回

8月上中旬(さぬきエンジェルスイート) 果実軟腐病 ベルクート水和剤 1,000倍 前日、5回

8月下旬~9月上旬

クワシロカイガラムシ・キウイヒメヨコバイ ○劇モスピラン顆粒水溶剤 2,000倍 7日/3回

貯蔵病害(灰色かび病) ストロビードライフロアブル 2,000倍 前日/3回