fuji xerox sustainability report 2012€¦ · お客様の感動と笑顔...

4
Fuji Xerox Sustainability Report 2012

Upload: others

Post on 02-Aug-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Fuji Xerox Sustainability Report 2012€¦ · お客様の感動と笑顔 より精度の高い復元を求めて 開発技術者の参画 古文書復元のきっかけとなった「歳中覚」の原本と復元本

Fuji Xerox Sustainability Report 2012

Page 2: Fuji Xerox Sustainability Report 2012€¦ · お客様の感動と笑顔 より精度の高い復元を求めて 開発技術者の参画 古文書復元のきっかけとなった「歳中覚」の原本と復元本

日本の歴史と文化が集約され、約1200年の歴史を持つ京都。富士

ゼロックス京都は、自社商品の複合機を使って、旧家や神社仏閣に

眠る古文書を現代でも活用できるように本物そっくりに再現してい

る。この「時を超えたコミュニケーション」支援によって、お客様に感

動が生まれ、地域の方々との心の交流が深まる。それを支える富士

ゼロックス開発技術者の熱意。これまでにないお客様のニーズに触

れてモチベーションも高まった。商品開発のヒントにもつながった

富士ゼロックス京都ならではの地域貢献活動を紹介する。

● 復元した古文書の数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 60冊

● 復元した一番古い文書 . . . . . . . . . . . . . . 約788年前(鎌倉時代)

● 復元に関わる開発技術者の数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10人

● 復元に関わる大学生インターンの数 . . . . . . . . . . 15人(2011年度)

京都の伝統がよみがえる

〜富士ゼロックスらしい地域貢献を求めて〜

ハイライト 2

● 京都の歴史 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 約1200年

18Fuji Xerox Sustainability Report 2017Fuji Xerox Sustainability Report 2012

Page 3: Fuji Xerox Sustainability Report 2012€¦ · お客様の感動と笑顔 より精度の高い復元を求めて 開発技術者の参画 古文書復元のきっかけとなった「歳中覚」の原本と復元本

世界遺産である京都・賀茂御祖神社(下鴨神社)が明治三年(1870年)に制作した「御

おん祭

まつり神しん

寶ぽう

神しん

器き

絵え

図ず

」。この古文書には、下鴨神社で毎年行われる葵祭や御蔭祭で使用される数多くの道具や衣装装束が美しい図柄で事細かに綴られている。同神社の権

ごん禰ね

宜ぎ

杉田潤氏は富士ゼロックス京都が制作した復元本を手にし、「この古文書は、100年後、200年後も実用される記録資料。破損を気にせず、安心感をもって本来の使い方ができるようになりました。その一言につきます」と笑顔で語る。「さらに嬉しいのが、A3サイズ大の見開き型の復元本も、富士ゼロックス京都の発案で作っていただいたことです。これまで見にくかった頁と頁の間にある絵柄が、現代の技術で一枚につながって全体像がつかみやすくなりました。貴重な原本を綴じている紐を切って開くわけにはいかないですから」と話しは尽きない。

英国駐在を経験し、歴史的資産を大事に守る文化を体験してきた富士ゼロックス京都社長の浜田英敏は、公家や寺院の本山などを中心とする伝統ある京都の社会に溶け込み、その伝統を継承している地元の方々のお役に立てる富士ゼロックスらしい地域貢献とはなにかを模索してきた。

古文書復元のきっかけは、2008年10月、国指定重要文化財の京町屋「奈良屋杉本家」に江戸時代より伝わる京都のしきたりや食事の献立などを書き留めた「歳

さい中

ちゅう覚おぼえ

」のカラー複写を依頼されたことにある。「歳中覚」の原本を手にした浜田に一つのアイデアがひらめいた。

「このような市井の古文書こそ、京都1200年の歴史を支えてきた文化財だ。ここには先人の工夫や美意識が詰まっている。後世にしっかり伝承されるよう、当社の商品・技術を駆使して本物そっくりの3次元のコピーを作ろう。それこそ、この京都に密着した当社ならではの地域貢献になる」。浜田は、当時管理本部長であった間澤孝公を責任者に指名した。しかし、間澤は「和紙を使うと複合機が故障する」と難色を示した。浜田は「絶対に喜んでいただける」と間澤を説得し、外部の力も借りながら、復元古文書第一号として「歳中覚」の復元本を独自に制作し、奈良屋記念杉本家保存会に贈呈した。

浜田はその過程で古文書復元は内製化できると判断し、2010年4月には、「時を超えたコミュニケーション」の名のもと社内に文化推進室を開設した。作業スペースを確保するため自らの社長室を開放し、貴重な原本保存のために大型の耐火金庫も購入した。

間澤は文化推進室の責任者となり、メンバーも増員された。古文書復元の依頼は口コミで広がり、メンバーも復元の経験を重ね、依頼者の感動に触れるにつれて、より精度の高い復元本を作りたいと考えるようになった。しかし精度を高めようとすればするほど、大きな課題に突き当たった。たとえば、白黒二色の古文書を復元することはできるようになったものの、白や金といったこれまでにない色の再現ができない。オフィスでの利用を前提とした複合機の通常の設定では、古文書に固有の色彩、特に中間色の再現は難しく、原本とそっくりに映る色調整は、販売会社の従業員だけではハードルが高かった。

悩む間澤に朗報が飛び込んできた。富士ゼロックスの開発技術者が「Go to Genba(現場)活動」の一環で富士ゼロックス京都にコンタクトし、古文書復元に興味を示してくれたのだ。「Go to Genba

(現場)活動」とは、開発技術者がお客様を訪問したり、販売会社との意見交換や協業を深めて本業に還元する、富士ゼロックスのCS

富士ゼロックス京都社長 浜田英敏

お客様の感動と笑顔

より精度の高い復元を求めて

開発技術者の参画

古文書復元のきっかけとなった「歳中覚」の原本と復元本

富士ゼロックス京都社長の熱い想い

富士ゼロックス京都間澤孝公

19Fuji Xerox Sustainability Report 2012

Page 4: Fuji Xerox Sustainability Report 2012€¦ · お客様の感動と笑顔 より精度の高い復元を求めて 開発技術者の参画 古文書復元のきっかけとなった「歳中覚」の原本と復元本

ハイライト2 ▶ 京都の伝統がよみがえる 〜富士ゼロックスらしい地域貢献を求めて〜

(カスタマー・サティスファクション)活動の一つである。間澤が、「色の再現」で困っていることを伝えると、開発技術者は

再度京都を訪れ、問題点を洗い出し、改善に向けた共同プロジェクトを提案した。その後も間澤と開発技術者とのやり取りは続き、2011年2月には10名の開発技術者と富士ゼロックス京都のメンバーによる「古文書タスク」が誕生した。「色のついた和紙に、花や武具といった白で描かれている部分を再現できない」「金箔や金絵の具で書かれた甲冑やその装飾部を金属色っぽく再現できない」といった相談を受けたタスクのリーダーであるイメージングプラットフォーム開発部の浅野和夫は、このチャレンジの価値を直観的に見抜いた。また他の開発技術者たちは、従来の技術では対応できないこの難しいチャレンジを「おもしろい」と感じていた。この課題の一部は、富士ゼロックスの正式な技術開発活動に組み込まれた。著名な寺院からは、有色の和紙に「従来のトナーにない色」の文

字で書かれた経文の復元を依頼された。現物に近い色ではなく、まさにそのままの色を出力したい。2012年5月、サンプルを見た富士ゼロックス京都のメンバー吉田謙一は「すごいわ、これ。お客さんすごい喜びはるわ」と目を見張った。どんな仕事でも慣れてくるほど、無意識のうちに制約や限界を置いてしまう。富士ゼロックス京都の地域貢献活動は、開発技術者たちに限界突破のきっかけを与えたのだ。

富士ゼロックス京都では以前から、大学コンソーシアム京都のインターンシップ・プログラムに協力している。そこで、古文書復元も研修に組み入れたところ、

日本画・版画・映像などを学んでいる地元の芸術大学の参加希望者が口コミで増加し、多忙時には最大9名の学生が活動するようになった。参加学生は、普段目にすることのない貴重な古文書に触れることにより、伝統文化への関心を高め、古文書の歴史的価値を高く評価できるようになった。昔の知恵を現代に蘇らせるこの活動は、伝統文化の伝承に貢献する人材の育成にもつながっている。

2012年6月、間澤は大学の特別講義で一連の活動を紹介した。講義では、古文書特有の和紙や綴じ紐などの素材が富士ゼロックス京都の半径2キロメートル以内で調達できたことを例に挙げて、京都ならではの文化的資源を活かした地域貢献活動であることを強調し、多くの文化伝承者と感動を共有したいと、その気持ちを述べた。さらなる活動の拡大に向けて、富士ゼロックス京都社長の浜

田は語る。「1200年の歴史に囲まれて仕事ができるご縁に感謝している。古文書復元は、当社のミッションである『知の創造と活用をすすめる環境の構築』に通じている。この活動を通じて、お客様の文化伝承にどう寄与できるか、これからも一緒に考えさせていただきたい」。富士ゼロックス京都と富士ゼロックス開発技術者の挑戦は終わらない。

広がる地域社会との絆古文書タスクリーダーの浅野(左)と富士ゼロックス京都の吉田

大学生に経験の場を提供

公益財団法人奈良屋記念 杉本家保存会学芸部長

杉本歌子様

古文書を通じて受け継いでいるのは、高い精神性です。復元本であれば、博物館ではなく、先人が手にした同じ部屋で頁を繰る体験ができます。この体験が感動を生み、感動があるからこそ、目に見えない精神を後世に伝えることができると考えます。現代のテクノロジーがそれを可能にしていることが面白いと思います。

大阪大谷大学文学部日本語日本文学科 教授

宇都宮啓吾様

復元本の価値は、これまで貴重すぎて触れることができなかった文化財が身近になるだけでなく、制作当時の臨場感を体感できることにあります。大学の書誌学や文献学の授業では、写本のイメージ化や巻物の巻き方の練習に復元本を活用しています。

京都精華大学芸術学部版画コース

中井仁美様

古文書復元は、原本を観察することから始まります。原本をよく見ると、書体や紙の種類の違いから、著者が違うことに気がつきます。復元を通して、古文書がこれまで様々な先人の手によって大切に伝承され、その内容を後世に伝えたいという共通の想いに溢れていることが分かります。

20Fuji Xerox Sustainability Report 2012