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CopyrightⒸ2018 一般社団法人 日本機械学会 [No.18-1] 日本機械学会 2018 年度年次大会 講演論文集 〔2018.9.9-12,吹田〕 G0500303 粉と粉の混合撹拌装置の開発 Development of Stirring Device for Powder and Powder 岩永正裕 *1 ,相澤 悠斗 *1 大江 翔平 *1 ,学〇田中将汰郎 Masahiro IWANAGA *1 , Yuto AIZAWA *1 Shouhei OE *1 and Shotaro TANAKA *1 *1 神奈川工科大学 Kanagawa Institute of Technology Potato starch powder and aluminum oxide powder was put in a cylindrical container and the container was rotated around the horizontal axis. Inside the container was inserted a device that removed particles adhering to the wall surface, and it rotated at the same rotation speed as the container, but it was braked for a short time at a frequency of once per revolution. Thereby, the two kinds of powder were sufficiently stirred. By means of image analysis, the average value of the center-to-center distances from the nearest particles to each particle was determined. The center-to-center distance when the same number of particles were arranged as in the checkerboard was calculated. The ratio of these two distances was used as an index of stirring state. On the other hand, the value of index of stirring state when particles were randomly distributed was clarified. The ratio of these two indexes of stirring state represented whether the stirring state had reached the ideal state. It was confirmed that an ideal stirring state was obtained by the stirring method described above. Key Words : Stirring Process, Powder, Index of Stirring State 1. 小麦粉とアルミ粉,片栗粉とアルミ粉,片栗粉と酸化アルミ粉と徐々に攪拌しにくい粉と粉の組み合わせに挑 戦しながら,攪拌方法を改良してきた (1)(7) .攪拌の状態を表す指標として,画像処理で粒子の位置を認定した後, 各粒子の最も近い粒子との中心間距離の平均値と粒子が碁盤の目のように並んだときの粒子間距離との比を考案 し提案している.攪拌方法を改良するごとに,その指標の値も改善されてきたが,色々と工夫をしてもその指標 の値の改善に結びつかない状況となった.そこでこれ以上は望めない理想的な攪拌状態に達しているか否かの判 断をする必要が生じた. 乱数分布を理想状態と考えて,乱数分布の指標の値がどのような要因で変化するかを明らかにした.次 に実験結果のサンプルを画像処理してその指標の値を求めて,乱数分布の指標の値と比較することによっ て,理想的な攪拌ができているか否かの判断を可能にした. 2. 指標の定義 面積 S の正方形を検査領域とし,この中に N 個の粒子が分布しているとき,1 つの粒子に与えられた平均面積 SN であり,この面積をもつ正方形の一辺の長さ L L=√ で与えられる.一方すべての粒子に対して,最も近い粒子との距離を求めてその平均値を とすると,の値が 大きいほど均一度が高いことになる.均一度を表す指標αを α=ℓ/L と定義する.

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CopyrightⒸ2018 一般社団法人 日本機械学会

[No.18-1] 日本機械学会 2018 年度年次大会 講演論文集 〔2018.9.9-12,吹田〕

G0500303 粉と粉の混合撹拌装置の開発

Development of Stirring Device for Powder and Powder

岩永正裕*1,相澤 悠斗*1

大江 翔平*1,学〇田中将汰郎

Masahiro IWANAGA*1, Yuto AIZAWA*1

Shouhei OE*1 and Shotaro TANAKA*1 *1 神奈川工科大学 Kanagawa Institute of Technology

Potato starch powder and aluminum oxide powder was put in a cylindrical container and the container was rotated

around the horizontal axis. Inside the container was inserted a device that removed particles adhering to the wall surface,

and it rotated at the same rotation speed as the container, but it was braked for a short time at a frequency of once per

revolution. Thereby, the two kinds of powder were sufficiently stirred. By means of image analysis, the average value of

the center-to-center distances from the nearest particles to each particle was determined. The center-to-center distance

when the same number of particles were arranged as in the checkerboard was calculated. The ratio of these two distances

was used as an index of stirring state. On the other hand, the value of index of stirring state when particles were randomly

distributed was clarified. The ratio of these two indexes of stirring state represented whether the stirring state had reached

the ideal state. It was confirmed that an ideal stirring state was obtained by the stirring method described above.

Key Words : Stirring Process, Powder, Index of Stirring State

1. 緒 言

小麦粉とアルミ粉,片栗粉とアルミ粉,片栗粉と酸化アルミ粉と徐々に攪拌しにくい粉と粉の組み合わせに挑

戦しながら,攪拌方法を改良してきた(1)~(7).攪拌の状態を表す指標として,画像処理で粒子の位置を認定した後,

各粒子の最も近い粒子との中心間距離の平均値と粒子が碁盤の目のように並んだときの粒子間距離との比を考案

し提案している.攪拌方法を改良するごとに,その指標の値も改善されてきたが,色々と工夫をしてもその指標

の値の改善に結びつかない状況となった.そこでこれ以上は望めない理想的な攪拌状態に達しているか否かの判

断をする必要が生じた.

乱数分布を理想状態と考えて,乱数分布の指標の値がどのような要因で変化するかを明らかにした.次

に実験結果のサンプルを画像処理してその指標の値を求めて,乱数分布の指標の値と比較することによっ

て,理想的な攪拌ができているか否かの判断を可能にした.

2. 指標の定義

面積 S の正方形を検査領域とし,この中に N 個の粒子が分布しているとき,1 つの粒子に与えられた平均面積

は S/N であり,この面積をもつ正方形の一辺の長さ L は

L = √𝑆

𝑁

で与えられる.一方すべての粒子に対して,最も近い粒子との距離を求めてその平均値を ℓ とすると,ℓ の値が

大きいほど均一度が高いことになる.均一度を表す指標αを

α=ℓ/L

と定義する.

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3. 乱数分布における指標の値

3・1 粒子数による変化

図 1 は正方形検査領域に x,y 座標を乱数で算出して点を分布させて,点の数を横軸に,縦軸に α の値をとった.

α の値はばらつくが,何百回も算出してその平均値を求めた.点の数が多いほど,α の値は減少して 0.5 の値に近

づく.青の点は一辺の長さが 1 の正方形を,赤の点は 2 の正方形を検査領域として用いたもので,検査領域の大

きさにはよらず,検査領域に存在する点の数 N だけで α の値は決まる.これらの計算点の近似値を表す式を求め

るとα = 0.5 + 0.28N−0.5445となり,図中に曲線で示した.

Fig.1 α and Number of Particles in Test Square Region

Fig.2 α and D/L

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3・2 粒子の大きさによる変化

粒子をランダムに配置するときに,粒子と粒子が重ならないように配慮しながら配置すると,α の値は図 1

の値に比べて増加する.図 2 は粒子数 200 と 400 の場合について,粒子の直径 D を変化させながら α の値を求め

て,その値と図 1 の値との比を縦軸にとり,D/L の値を横軸にとった.粒子数 200 と 400 の場合の計算点はほぼ

同一曲線上に分布することがわかる.図 2 の近似曲線は

α

α(N)= 1 + 0.2202 (

D

L) + 0.9096 (

D

L)

2

の式で表される.

以上のことより乱数分布の α の値は次式で近似できることがわかった.

α = (1 + 0.2202 (D

L) + 0.9096 (

D

L)

2)(0.5 + 0.28N−0.5445) (1)

4. 実験装置ならびに方法

図 3 に装置概略を示す.内径 50mm,長さ 127mm の円筒状のカプセルに片栗粉と酸化アルミ粉(約 90~

106μm 研磨剤)を入れ,水平軸回りに回転させた.カプセルの中には図 4 のような壁面の粉をそぎ落とす装

置が挿入してあり,摩擦車と連動してカプセルと一緒に回転している.ブレーキ用のモーターと偏心したカム

で,摩擦車に瞬間的にブレーキをかけて,壁面そぎ落とし装置が壁面に付着した粉をそぎ落すと同時に,粉に

振動を与える.攪拌後カプセルから粉を出し,3 か所からサンプリングしてプレパラート上に移して,その上

にカバーグラスをのせてデジタルカメラで撮影した.カバーグラスで覆われたほぼ全域を検査領域として画像

解析した.画像を二値化した後,つながっている領域を 1 つの粒子として認識して,粒子の面積と重心点の座

標を読みとった.粒子数と検査領域の面積から L の値を求め,粒子重心位置からそれぞれの粒子の最短距離

にある粒子との中心間距離を調べてその平均値 ℓ を求めた.粒子面積から粒子を円と考えて粒子直径 D を算

出し,α=ℓ/L の値と D/L の値を求めた.

検査領域に存在する粒子数 N と D/L の値がわかれば,式(1)より乱数分布をしたときの α の値 αtheoryを求

めることができる.画像解析で求めた α の値と αtheoryの比を調べてその値が 1 に近ければ,ほぼ理想な攪拌が

達成できていると考えた.

Fig4. Device Scraping off powder

Fig.3 Experimental Apparatus

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5. 実験結果

カプセルの水平軸回りの回転数,ブレーキの回数,粉の総量,酸化アルミと片栗粉の割合などを変化させて実

験を行った.しかし α の値は 0.55 付近を中心に分布していてある程度の変化はあるものの,変化させた量との関

連を明らかにすることが困難な状況となった.そこで理想的な攪拌状態の α の値を求めて,実験で得られたαの

値をその値と比較する必要が生じた.

図 5 はカバーグラスのほぼ全域を切り出したもので,図 6 は二値化して粒子位置を黄色で浮き立たせた.図 7

は画像解析ソフトが認識した粒子のうち,面積が 10 ドット以上の粒子の重心点位置を●で示した.認識領域は赤

枠で囲ったほぼ正方形の領域(482×500)である.粒子面積の下限の値を 10 ドットから増加させて,その下限値

以上の面積を持つ粒子について解析を行った.粒子数 N,各粒子の重心座標,平均粒子面積 S(ドット数)と各

粒子の最も近い粒子との中心間距離の平均値 ℓ を求めた.

L = √482 × 500

𝑁 , α =

𝐿 , D = √

4𝑆

𝜋

図 8 は粒子面積の下限値を横軸にとり,縦軸に α の値をとった.α の値は高い値を示してはいるが,理想的な攪

拌か否かを判定するのは難しい.粒子数 N と D/L の値を式(1)に代入して均一度の理論値 αTheoryの値を求めた.

図 9 は,横軸は図 8 と同様で,縦軸に α/αTheoryの値をとった.図 10 は,縦軸は図 9 と同様で,横軸に粒子数をと

った.図 9,図 10 において,縦軸の値が 1 付近に分布しており,ほぼ理想的な攪拌状態であることがわかる.

Fig.5 Original Photo Fig.6 Binary Representation of Photo

Fig.7 Result of recognition of particles

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Fig.8 α and Lower Limit of Particle Area Fig.9 α/αTheory and Lower Limit of Particle Area

Fig.10 α/αTheory and Number of Particles in Test Region

5. 結 言

水平軸回りに回転する円筒カプセル中に片栗粉と少量の酸化アルミ粉を入れて,ほぼ 1 回転に 1 回の頻度で回

転する偏心カムによってブレーキをかけることにより,十分に攪拌することが可能となる.それが理想的な攪拌

状態であるかどうかを判定するために,乱数分布による指標と比較した.乱数分布による指標の値は,検査領域

中に存在する粒子数と粒子直径に影響されることがわかった.これらの因子を加味した指標の値を表す式を求め

た.攪拌実験で得られたサンプルの画像解析により,検査領域中の粒子数と粒子の面積を求めることにより,乱

数分布における指標の値を予め知ることができる.画像解析で求めた粒子の座標から指標の値を求めて,その値

と乱数分布の指標の値との比を調べたところ,ほぼ 1 近傍に分布し,理想的な攪拌状態が得られていることが確

認された.

文 献

(1)岩永正裕,杉山博隆,野田祐貴 “コリオリ力を用いた撹拌・混合・洗濯装置の開発” 日本機械学会

論文集 B編 79(807), 2456-2466, 2013

(2) 岩永正裕,混合攪拌装置および方法,日本国特許出願 2012-67809(2012).

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[No.18-1] 日本機械学会 2018 年度年次大会 講演論文集 〔2018.9.9-12,吹田〕

(3) 岩永正裕:「混合攪拌装置」実願 2014-1419(2014)

(4) 岩永正裕 他 4名,コリオリ力を利用した混合攪拌装置の開発(粉と粉),日本機械学会流体工学部門

講演会講演論文集 (2014.10.25-26, 富山)

(5) 岩永正裕 他 4名,コリオリ力を利用した混合攪拌装置の開発(粉と粉),日本機械学会流体工学部門

講演会講演論文集 (2015.11.7-8, 東京)

(6) 岩永正裕 他 4名,コリオリ力を利用した混合攪拌装置の開発(粉と粉),日本機械学会流体工学部門

講演会講演論文集(2016.11.12-13, 宇部)

(7) 岩永正裕 他 4名,粉と粉の攪拌装置の開発,日本機械学会 2017年度年次大会講演論文集 (2017.9.3-

8, さいたま)