gap導入農場における農場管理の実態と経営改善効果gap導入農場における農場管理の実態と経営改善効果-gap導入による経営改善効果に関するアンケート調査結果ー...

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GAP導入農場における農場管理の実態と経営改善効果 誌名 誌名 北海道農業研究センター農業経営研究 ISSN ISSN 13471821 著者 著者 若林, 勝史 田口, 光弘 巻/号 巻/号 109号 掲載ページ 掲載ページ p. 1-25 発行年月 発行年月 2013年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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  • GAP導入農場における農場管理の実態と経営改善効果

    誌名誌名 北海道農業研究センター農業経営研究

    ISSNISSN 13471821

    著者著者若林, 勝史田口, 光弘

    巻/号巻/号 109号

    掲載ページ掲載ページ p. 1-25

    発行年月発行年月 2013年3月

    農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

  • GAP導入農場における農場管理の実態と経営改善効果

    -GAP導入による経営改善効果に関するアンケート調査結果ー

    1.はじめに

    2.国内外におけるGAPの展開

    3. アンケート調査の概要

    4. 回答農場の特徴

    1 .はじめに

    2010年 3月じ閣議決定された「食料・農

    業・農村基本計画j詑 1)では、 iW品質』と『安

    全・安心』といったニーズに適った生産体制

    への転換j をひとつの基本理念として掲げて

    いる。そして、そのための具体的取り組みと

    して、「トレーサビリティ・システム」や rH

    ACCP(危害分析・重要管理点)Jとともに、

    「農業生産工程管理JIt 2 )、いわゆる GAP

    CGood Agricul tural Pract ice)の普及定着

    の必要性を挙げている。

    同時に、農林水産省では、「食品安全、環境

    保全や労働安全に関する法体系や諸制度等を

    術撤して、我が国の農業生産活動において、

    特に実践を奨励すべき取組を明確化Jするこ

    とを目的として、 2010年4月に「農業生産工

    程管理 (GAP)の共通基盤に関するガイド

    ラインJit3)を策定・公表している。

    このように、食の安全・安心確保 (Food

    Safety)のための取り組みとして、政策的にG

    APの導入・普及が推進され、 GAP導入産

    北海道農業研究センター・若林勝史

    農研機構本部・田口光弘

    5. GAP導入農場における農場管理の実態

    6. GAP導入による経営改善効果と課題

    7. まとめ

    地は 2007年 7月の 439産地から 2,194産地

    (2011年3月)注41へと大幅に増加している。

    こうした動きを背景として、農業経営研究

    分野でも、 GAPの導入・普及に関する調査

    研究が進められている。

    GAP導入に関する研究のひとつとして、

    田上ら (2009)、西ら (2010)、南石 (2011)

    の一連の研究が挙げられる。

    田上ら (2009)は、栃木県のGAP導入事

    例 (4農協の生産部会会員)の実態調査、お

    よびアンケート調査(一次集計結果)から、

    GAPの組織的取り組みとその推進上の課題

    を明らかにしている。具体的には、日本GA

    P協会作成のチェックリスト(事務局チェッ

    クリスト 128項目、農場チェックリスト 128

    項目)について農協毎の適合率を算出・比較

    し、事務局の適合率が全般的に低いこと、事

    務局の管理のあり方と農場の適合率に相闘が

    見られること等を示し、 GAPに対する事務

    局の理解と管理・推進体制整備の重要性を指

    摘している。

    -1-

  • また、西ら (2010)は、田上ら (2009)の

    アンケート調査をベースに、農家属性とGA

    Pの実施状況(自己評価)の関連性について

    分析を行っている。そこでは、年齢や農外就

    業年数等による差異を示した上で、農家にあ

    わせた啓蒙や段階的導入の必要性が指摘され

    ている。

    さらに、南石 (2011)では、田上ら (2009)

    や西ら (2010)の調査分析を踏まえながら、

    評価項目による適合率の違いを整理し、「表

    記」・「文書」・「記録」・「一覧・地図」など情

    報の記録と表示に関する項目の適合率が低い

    こと課題として指摘している。

    その他、堀田 (2011)は、九州の酪農経営

    を対象としたアンケート調査や事例調査をも

    とに、安全衛生管理に関する経営内での役割

    分担と安全衛生チェックの実態について分析

    を行っている。そのなかで、法人経営におい

    ては役割分担が明確化されているのに対し、

    家族経営ではあいまいになっていること、さ

    らに、役割分担が明確なほど、農薬や肥料の

    記帳・保管が実践されていることを明らかに

    している出}。

    また、福田 (2011)は、長崎県のレタス栽

    培農家を対象に、 GAPのチェック項目 (36

    項目)に対する意識と実施状況に関する調査

    を行い、農家意識とその実施状況との関係性

    を分析している。具体的には、農薬を除く資

    材管理や廃棄物処理、適期防除、適切な施肥

    等については、重要性が認識され、かつ実践

    されているものの、農薬散布や施肥の具体的

    記録、農薬の保管方法、 ドリフト対策、農薬

    -2-

    使用に関する研修、残留農薬検査など金銭的

    コストや手間のかかる項目については、重要

    と認識されつつも、実践度が低い傾向にある

    ことが指摘されている。さらに、水質に関す

    る項目や農薬の在庫管理記録などは、重要性

    があまり認識されず、その実践度も低い傾向

    にあることが示されている。

    以上のように、既存研究では、 GAPの導

    入や実践における阻害要因を、農家属性や農

    家意識、また管理に係る手間やコストといっ

    た視点で明らかにしている。しかし、いくつ

    か重要な課題が示されているものの、それら

    をいかに克服するかについて、具体的方策は

    示されていない。とくに、管理に係る手間や

    コストは重要な問題点であると考えられる。

    実際、営農現場においては、 GAPのみなら

    ず、食品安全や環境保全に関するさまざまな

    対応、記帳が求められており、金銭的コスト

    や手間等の負担感のみが募る状況にある削}。

    したがって、 GAPの普及定着を図るには、

    GAPに取り組む経営の負担感をいかに軽減

    するかが重要である。そのとき、単に手間や

    コストといった負担を軽減するだけなく、 G

    APを経営改善に活かしていくこと、すなわ

    ちGAPの導入によるメリットを増大させる

    こともひとつの方向として考えられる。実際

    に、 GAPの取り組みでは、生産工程の点検、

    記帳、さらに改善検討を行うことが求められ

    ており、そうした取り組みは、食品安全や環

    境保全等だけでなく、経営の効率化や改善に

    も大きく寄与する可能性がある山)。

    しかしながら、既存研究では rGAP=食

  • 品安全、環境保全の取り組みj という図式を

    前提に調査・分析が行われており、 GAPの

    取り組みにより派生する経営改善効果につい

    ては、ほとんど把握されていない。

    以上のような問題意識のもと、本稿では、

    GAPに先進的に取り組む JGAP認証農場

    へのアンケート調査をもとに、 GAP導入農

    場における農場管理の実態と、それら取り組

    みが農場の効率化や経営改善に及ぼす効果を

    明らかにする。

    まず、 2節では国内外におけるGAPの展

    開について概説する。その上で、 3節および

    4節において、アンケート調査の概要と回答

    農場の特徴について説明する。第 5節ではア

    ンケート結果をもとに、 GAP導入農場にお

    ける農場管理の実態、とくに農場管理体制や

    データの記録・管理・活用について明らかに

    する。第6節では、本稿の中心課題であるG

    AP導入の経営改善効果、およびその要因に

    ついて分析を行う。第7節では、本報告の要

    約と結論について示す。

    2.圏内外における GAPの展開

    農林水産省「農業生産工程管理 (GAP)

    の共通基盤に関するガイドラインj で示され

    ているように、国内外のGAPの取り組みは

    多様に存在し、「農業者・産地の混乱と負担が

    懸念される状況Jとなっている。

    そうした多様なGAPが存在するなかで、

    JGAP認証農場を調査対象とすることの意

    味を明確にするため、本節では、国内外にお

    ける各種GAPの展開について整理する削)。

    1 )欧州におけるGAPの展開

    EUでは、農業による地下水汚染の深刻化

    を契機として、 1980年代後半以降、硝酸指令

    等の規制や環境支払等の農業環境政策が講じ

    られてきた。また、そうした流れのなかで、

    マクシャリー改革(1992年)やアジヱンダ

    2000 (1999年)、またその中間見直し (2003

    年)といった一連の農政改革(価格政策から

    直接支払への転換)が進められ、直接支払の

    給付条件としてGAPが義務化されるように

    なった(クロスコンブライアンス)。

    ここでのGAPは、農業生産活動が水、空

    気、土壌、生物多様性等に与える影響につい

    て農業者が最低限守るべき基準であるとされ、

    環境、人間・動物・植物の健康、動物福祉に

    関する 19の規則・指令を遵守することとして

    いるiIへとのように、今日の EUにおいては、

    環境保全等を目的としたGAPが農業政策の

    基本的柱のひとつとして位置づいている。

    こうした農業環境政策としてのGAPの他

    に、民間の流通関連団体が推進するGAP認

    証制度が存在する。その代表的なものがGL

    OBALGAPである。 GLOBALGAP

    (旧 EurepGAP)は、 1997年に欧州小

    売業協会 (Eurep)が創設したGAP認

    証制度で、食品安全、環境保全、労働者福祉、

    動物福祉に関する管理基準を定めるとともに、

    第三者機関による審査・認証が行われている。

    欧州小売業協会加盟の小売業者では、 GL

    OBALGAP認証を仕入れの基準としてい

    る。そのため、欧州の農場のみならず、欧州

    へ出荷・輸出を行う国や地域においてもGL

    -3-

  • OBALGAPや、その同等性認証を得たG

    APの普及が進み、事実上の国際規格として

    定着している。

    2 )日本における GAPの展開

    度重なる食中毒事件や産地偽装事件等によ

    り食品安全に対する消費者の信頼が揺らぐな

    かで、日本国内のGAPは、欧州のような環

    境保全よりも、食品安全に重点を置く傾向に

    ある。

    食中毒事件等への対応として、農林水産省

    では、 1990年代後半から、 HACCPの概念

    に基づいた各種衛生管理マニュアルやガイド

    を作成し、農業生産における衛生管理の啓蒙、

    普及活動を進めてきた。

    また、 2005年3月に閣議決定された食料・

    農業・農村基本計画注 10)には、食の安全と消

    費者の信頼確保のためのGAP策定・普及が

    盛り込まれ、「生産段階におけるリスク管理と

    してGAPを活用した農業者等による自主的

    な取組の促進」を図ることとした。そして、

    同年、産地での手順書となる rw食品安全のた

    めのGAP~ 策定・普及マニュアル(初版)J

    を作成するとともに、 2007年には全国的に汎

    用性の高いGAPモデルとして、作物毎の「基

    礎GAPJを作成・公表している。

    これを受けて、各都道府県や JA等では、

    地域の実情に応じて独自のGAPを作成する

    動きが進んでいる注 11)。これら地域の取り組み

    は、地域ブランド化の潮流とも相まって、農

    産物差別化の手段としての性格も帯びている。

    さらに、こうした行政や産地によるGAP

    -4-

    の他に、流通サイドでGAPを策定・推進す

    るケースもみられる(t山。

    イオン株式会社では、 2002年に「イオン農

    産物取引先様品質管理基準j を構築し、農業

    生産現場において独自のGAP (通称:イオ

    シGAP) を推進している。また、日本生活

    協同組合連合会も、 2004年に「青果物品質保

    証システム」を構築し、その一環として独自

    のGAP-(通称:生協版GAP)を定めてい

    る。これらは、 GLOBALGAPを参考に

    していること、さらにGAPのみならず、加

    工 (GMP)、流通 (GDP)、販売 CGRP)

    といったフードチェーン全体の品質マネジメ

    ントシステムとして運用されているなどの特

    徴がある。

    3) J G A P

    JGAPは、 NPO法人日本GAP協会が

    普及・推進する民間のGAP認証制度である。

    日本GAP協会(任意団体GAI協会:Good

    Agricultural lnitiativeとして発足)は、

    農業生産者、 JA、小売業、生協関係者など、

    生産サイドと流通サイドの関係者がメンバー

    となり、日本の標準的なGAPを構築するこ

    とを目的に設立された。

    JGAPは、協会発足後、青果物用と穀物

    用に JGAP第 1版を発行、その後も改良を

    重ねながら、 JGAP第 2版 (2006年発行)、

    JGAP第 2.1版 (2007年発行)を策定して

    いる。現在はしさらに改良が進められ、青果

    物用として JG A P 2010 (2010年発行)が、

    また、穀物用および茶用として JG A P 2012

  • (2012年発行)が利用されている。

    現在の JGAP2010では、「農場運営と販

    売管理」、 I食の安全」、「環境保全型農業J、「労

    働安全」に関する管理点(合計 138項目)と

    その適合基準が定められている。さらに、そ

    れら項目は必須項目、重要項目、努力項目に

    分けられ、それぞれ認証に必要な適合率が定

    められている。なお、これら管理点は、農林

    水産省 '1農業生産工程管理 (GAP)の共通

    基盤に関するガイドラインj に対応したもの

    となっている。

    また、 JGAPの特徴のひとつとして、そ

    の認証方式が挙げられる。第一に、国内の多

    くのGAPが、第一者または第二者による審

    査・認証を行うのに対し、 JGAPでは第三

    者機関による審査・認証が行われている。第

    二に、 JGAP認証には、ひとつの経営体を

    認証する「個別認証j と、部会や生産者団体

    など複数の経営が集まった団体を認証する

    「団体認証」とがある。団体認証では、定め

    られた管理を団体事務局と各農場で分担する

    ことで、生産者の負担軽減や、組織・産地の

    信用力強化といったメリットを享受できるし

    くみとなっている。

    JGAPの認証を受ける農場数(団体認証

    はその農場数で換算)は、 2008年 3月の 236

    農場から 2013年 1月の 1,582農場へと大きく

    増加している。現在の認証農場数の内訳は、

    表 1のとおりである。認証数でみると、青果

    物が 59.8%、穀物が 33.1%、茶が 7.1%とな

    っているが、青果物や茶では団体認証を取得

    する農場が多い傾向にあり、農場数では青果

    物が 63.2%、穀物が 8.0%、茶が 28.8%とな

    っている。

    このように、 JGAPは、食品安全や環境

    保全、労働安全に対する細かな管理基準の設

    定や、第三者機関による審査・認証を行うな

    ど、圏内において厳格なGAPのひとつとし

    て、圏内に幅広く普及しつつある。

    3.アンケー卜調査の概要

    本研究では、 GAP導入農場における農業

    管理の実態とその経営改善効果を明らかにす

    るため、 GAPを先進的に取り組む JGAP

    認証農場を対象にアンケー卜調査を実施した。

    調査対象は、 JGAP認証農場のうち、青

    果物と穀物の個別認証農場(海外の農場を除

    く)とした。このように調査対象を限定した

    表, JGAP認証数および認証農場数の内訳

    青果物 穀物 茶

    実数 割合 実数 割合 実数 割合

    偶別認証 142 53.4克 81 30.5克 8 3.0%

    認証数同体認証 17 6.4克 7 2.6克 II 4. 1%

    合計 159 59.8克 88 33. 1克 19 7.1克

    個別認証 142 9.0克 81 5,1出 8 0.5克

    農場数同体認証 858 54.2克 45 2.8% 448 28.3出

    合計 1,000 63.2% 126 8.0% 456 28.8出

    資料:日本GAP協会HP、JGAP認証農場数 (2013年 l月 31日集計)、

    http://jgap.jp/noujo_kensaku/130IkenbetsllnolljollSU.pdf

    -5-

    合計

    実数 割合

    231 86.8%

    35 13.2%

    266 100.0克

    231 14.6児

    1,351 85.4%

    1, 582 100.0覧

  • のは、以下の理由による。

    第一に、団体認証の農場では、管理のあり

    方が個別認証の農場と大きく異なるb 前述の

    とおり、団体認証では事務局が管理の一部を

    担うため、 GAPが各農場の管理に対して与

    える影響は限定的であると考えられる。ここ

    では、そうした違いを考慮して、個別認証農

    場のみを調査対象とした。

    第二に、茶は、出荷までに荒茶工程や仕上

    茶工程を含み、青果物や穀物とは管理の範囲

    が異なる。 JGAPにおいても、茶の管理点

    は他のそれとは大きく異なっており、ここで

    は調査対象から除くこととした。

    なお、 2012年 8月時点において、茶のみの

    認証、および海外の農場を除く個別認証農場

    の数は 164農場であった。

    また、アンケー卜調査は、 2012年 10月27

    日から 11月7日の期間に、郵送調査により実

    施した。アンケート質問用紙は 164農場に配

    布し、 2012年 11月28日現在までに 89農場

    より回答を得た(回答率 54.2%)。

    4.回答麗場の特徴

    農場管理の実態やGAP導入による経営改

    善効果を検討する前に、回答農場の概要につ

    いて整理し、その経営的特徴を把握する。

    1 )経営概況

    ( 1 )営農類型・ JGAP導入年

    表2は回答農場の営農類型と JGAP導入

    年を示したものである。

    営農類型53IJ(売上高 I位の部門)について

    みると、水稲作経営が 38%と最も多く、次い

    で、露地野菜作経営と施設野菜作経営がとも

    に 19%となっている。 JGAP認証を取得し

    た品目(穀物・青果物)と売上高 1位の部門

    は正確に一致しないが、概ね表2の割合と同

    様の傾向を示している同山1:1

    また、 JGAP導入年についてみると、2010

    年以前に JGAPを導入した農場 (3年目以

    上取り組む農場)が、全体の6割近くを占め

    ている。

    表2 回答農場の営農類型と JGAP導入年

    営農類型別農場数 JGAP導入年

    実数 割合うち、複合経常 2008年以前 2009年 2010年 2011年 2012年 未回答

    実数割合 実数害IJ合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数

    水稲 34 38% 25 74% 6 18% 7 21出 6 18% 11 32克 4 12出 。

    畑作 8 9見 4 50出 2 25% 3 38児 13克 。 0% 2 25詰 。

    露地野菜 17 19% 10 59克 5 29首 3 18児 4 24克 2 12克 3 18% 。

    施設野菜 17 19% 9 53% 2 12% 3 18見 4 24見 2 12出 5 29%

    果樹 5 6出 20% 20% 20% 20% 2 40克 。 。克 。

    その他 8 9克 3 38克 3 38克 。 。百 13克 4 50% 。 0克 。

    合計 89 100克 52 58% L_19 21里L 17 19% 17 19% 21 24% 14 16% l

    資料・ IGAP導入による経営改善効果に関するアンケート調査j

    注 1)営農類型は、売上高 l位の部門で分類。複合経営は複数部門を生産販売する農場。

    2) J GAP認証品Hと売上高 l位の部門が必ずしもー致しないケースがある。

    3) i畑作1は、友類、豆類、いも類、て芸作物のうち、いずれかの品Hの売上高が l位の農場。

    4) rその他lには、きのこ等が含まれる。

    -6-

  • ( 2 )経営面積および売上高

    表 3は回答農場の経営面積および売上高を

    示したものである。

    回答農場全体でみると、平均経営面積は

    29.4haで、 20ha以上の経営が 40%程度を占

    めている。またJ農産物売上高は 5千万円以

    上が 47%と約半数を占め、さらに 1億円以上

    の農場も 28%を占めている。このように、回

    答農場は、比較的経営規模が大きいことが特

    徴である。

    なお、営農類型別の経営面積をみると、畑

    作経営が平均 73.6haと最も規模が大きく、

    50haを超える経営も半数を占めている。また、

    水稲作経営や露地野菜作経営においても、平

    均経営面積が 30haを超え、なかには 100ha

    を超える経営がいくつか確認される。

    その他、施設野菜作経営や果樹作経営の経

    営面積は、平均 10ha前後にとどまるが、売上

    高 1億円以上の農場は、水稲作や畑作よりも

    大きい割合を占めている。

    ( 3 )作付品目数および画場数

    表4は、作付品目数と圃場数をみたもので

    ある。

    まず、作付品目数についてみると、回答農

    場全体では、 2""-'5品目の回答が最も多くを

    占めているが、 11品目以上の農場も 17%程度

    みられ、平均品目数は 7.5作物を数える。営

    農類型別に比較すると、畑作経営や果樹作経

    営、その他経営は平均品目数が 5品目以下で

    あるのに対し、露地野菜作経営や施設野菜作

    経営は、平均 10作物を超え、 11品目以上の

    農場も 30%程度確認される。

    さらに、圃場数をみると、全体平均は 83.9

    枚と非常に多くの圃場を管理している様子が

    うかがえる。ただし、営農類型によってばら

    表3 回答農場の経営面積および売上高

    全体 水稲 :畑f1ヨ 露地野菜実数割合 実数割合 実数害IJ合 実数割合

    、農場数 89 100% 34 100% 8 100% 17 100%

    ~5ha 27 30克 3 9出 13克 3 18%

    5~20ha 24 27克 11 32出 。 0% 6 35克

    20~50ha 21 24克 12 35克 3 38見 3 18%

    経営面積 50~100ha 6 7首 3克 2 25克 3 18%

    100ha'" 8 9克 5 15克 2 25% 6%

    未凶答 3 3% 2 6克 。 0克 l 6% 平均面積 (ha) 29.4 38.6 73.6 30.6

    ~3千万円 31 35出 16 47兜 2 25% 8 47%

    農産物 3~5千万円 15 17出 6 18出 4 50% 6克売 k高 5千万~1{!意円 17 19克 8 24出 。 0克 2 12%

    l億円~ 25 28克 4 12出 2 25克 6 35克

    未凶答 1% 。 。見 。 0% 。 0克

    資料:表2に同じ。注 1)経営面積は 2012年度の値。また、農産物売上高は 2012年度見込額。

    2)経堂面積には、ハウス等の施設を含む。

    3) 平均面積は、未回答を除く平均値。

    施設野菜 果樹 その他

    実 数 害IJ合 実数割合 実数割合

    17 100% 5 100克 8 100克

    11 65% 2 40% 7 88克

    4 24% 2 40克 13出

    2 12出 20% 。 。克

    。 。克 。 0% 。 。克

    。 。克 。 0児 。 0克

    。 。克 。 0% 。 0%

    7.8 11. 9 2.3

    2 12% 3 60% 。 0児

    3 18克 。 0% 13%

    7 41出 .0 0出 。 0克

    5 29% 2 40覧 6 75出

    。 0出 。 。出 1 13出

    4) 農産物売上高は、自社生産による農産物のみの売上高とした。また、加て等関連事業の売上高は含まない。

    -7-

  • 表4 回答農場の作付品目数および圃場数

    全体 水稲 畑作 露地野菜 施設野菜 果樹 その他

    実 数 害IJ合 実数割合 実数割合 実数割合 実数割合 '夫数割合 うた数 割合

    農場数 89 100克 34 100% 8 100出 17 100出 17 100% 5 100% 8 100出

    1品目 20 22克 6 18出 3 38出 6出 3 18% 3 60克 4 50克

    2~5品目 33 37克 16 47出 2 25出 5 29% 5 29% 20出 4 50克

    作付6~10品目 19 21% 5 15出 3 38克 6 35克 4 24克 20百 。 0克

    品目数 11~20品目 10 11% 4 12克 。 0克 2 12克 4 24見 。 。克 。 。先

    21品目~ b 6百 3克 。 0百 3 18% 6出 。 。% 。 0出

    未回答 2 2出 2 6克 。 。克 。 0出 。 0出 。 0% 。 。出

    平均品目数 7.5 6.0 4.9 12.5 10.4 3.2 1.9

    平均岡場数 83.9 172.3 19.3 50.8 28.9 10.5 6.5

    資料・表2に同じ。

    注 1)岡場数において、ハウス等の施設 l棟は岡場 l枚として換算。

    2)平均品け数および平均同場数は、未回答を除く平均値。

    表5 回答農場の構成員および従業員数

    水稲 畑作 その他実数全{本割合

    実数割合 実 数割合実露数地野菜

    割合実施数設野菜

    割合 実数果樹割合 実 数 許IJ合

    農場数 89 100% 34 100克 8 100克 17 100首 17 100% 5 100% 8 100% ~5人 24 27% 15 44鬼 5 63克 3 18鬼 。 0% 20% 。 0百

    構成員 6~10人 23 26% 9 26克 13克 6 35克 4 24克 20出 2 25出および 11~20人 15 17% 5 15克 。 0% 4 24克 6 35克 。 。出 。 0出従業員 21人 ~ 24 27克 4 12% 2 25% 2 12克 7 41% 3 60百 6 75出の合計未凶作 3 3% l 3% 。 0% 2 12% 。 0% 。 0出 。 0克

    平均(人) 16.0 9.8 14.4 12.4 20.1 26.0 35.0 従業員ありの割合 80. 9出 67.6克 75.0出 82.4% 100.0詰 80.0百 100. 0出

    資料・表2に同じ。

    注:従業員には常時雇用(年間 7ぅ円以上雇用される者)のみを含む(臨時雇用を合めていなLリ。

    つきがみられ、作付品目数と同様、畑作経営、

    果樹作経営、その他経営は比較的少ない傾向

    にあるが、露地野菜作経営では平均 50.8枚、

    を雇用しており、回答農場のほとんどが雇用

    型経営であると特徴付けられる。

    さらに水田作経営では平均 172.3枚にも及ん 以上のように、 JGAP認証農場の多くは、

    でいる。 従業員を多く抱える雇用型経営で、経営規模

    (4 )構成員および従業員数

    表5は、構成員数および従業員数を示した

    ものである。ここで示した数値にはいくらか

    制約注 14)があるものの、回答農場では多くの

    構成員や従業員が農場経営に携わっていると

    考えられる(全体平均 16.0人)。

    さらに、約8割の農場で従業員(常時雇用)

    -8-

    が大きく、多くの品目や圃場を管理している

    点が特徴である。そのため、生産管理や従業

    員管理をはじめとする農場管理の領域は非常

    に複雑化しているものと考えられる。

    2) J G A Pの導入目的

    次に、 JGAPの導入目的を整理すると以

    下のような特徴を指摘することできる(表 6)。

  • 表 6 JGAPの導入目的

    合計 l位 2位 3位

    実数 割合 実数 割合 うた数 割合 実数 割合

    生産物の安全・安心修保 77 87% 41 46% 32 36克 4 4克

    環境の保全 14 16% 。 。% 3 3% 11 12鬼安全な労働環境の整備 24 27出 3 3克 12 13% 9 10指

    売 k・販路の維持・拡大 49 55出 31 35克 15 17% 3 3%

    生産性向 k 24 27% 3 3克 6 7克 15 17出

    作業の効ネ化 17 19% l出 9 10% 7 8見

    資材管理の効率化 13 15克 l克 4 4% 8 9見

    従業員管理の効率化 b 6% l 1% 2 2見 2 2見

    従業員の責任感の向上 22 25% 3 3% 4 4% 15 17出

    経営の効率化 19 21克 3 3克 2 2見 14 16百

    その他 3 3% 2 2克 。 0% l 1% 資料:表2に同じ。注:アンケートでは JGAP導入円的として、優先順位の高いl固に 3つ選択して回等。

    第一に、 GAPの目的のひとつである「生

    産物の安全・安心確保Jを導入目的とする農

    場は 87%と最も多くを占めている。さらに、

    その優先順位も高く、安全・安心確保を 1位

    とするケースは 46%、さらに 2位とするケー

    スも 36%を占めており、多くの農場でとくに

    重要視される目的となっている。

    第二に、 GAP本来の目的のなかでも、「環

    境の保全j や「安全な労働環境の整備」を導

    入目的とするケースは、それぞれ 16%、27%

    と低く、「生産物の安全・安心確保」に比べる

    と、あまり重要視されていないといえる。

    第三に、 GAP本来の目的以外でみると、

    「売上・販路の維持・拡大Jが 55%と高い割

    合を占めており(さらに 1位に挙げる農業は

    35%)、I生産物の安全・安心確保j に次いで

    重要視される導入目的となっている。この点

    から、多くの農場では、 GAP導入による「生

    産物の安全・安心確保Jを基礎として、自社

    農産物の差別化を図り、 I売上・販路の維持・

    拡大jを進めようという意図がうかがえるHへ

    第四に、食の安全・安心確保や販売改善と

    いった目的が重要視されるなか、経営そのも

    のの改善や効率化を導入目的とする農場もい

    くつかみられる。割合としては必ずしも多く

    はないが、「生産性の向上 (27%)J、「従業員

    の責任感の向上 (25%) J、「経営の効率化

    (21 %) J、「作業の効率化(l9%)J等は全体

    の2'"'-'3割程度を占めており、なかにはそれ

    らを l位の目的として挙げる農場も存在して

    いる。

    このように、多くの農場では、食の安全・

    安心確保や販売改善を目的としてGAPを導

    入しているが、一部の農場ではGAPを経営

    の改善や効率化を図る管理手法として捉え、

    その実践に取り組んでいる。

    5. GA P導入農場における農場管理の実

    以下では、農場管理体制と各種データの記

    録・管理・活用の側面から、農場管理の実態

    について整理する。

    -9-

  • 1 )農場管理体制

    (1) JGAPにおける各種管理責任者の

    配置状況

    まず、 JGAPの管理項目に定められた各

    種管理責任者の配置状況について確認する

    (表7)。

    JGAPでは、食品安全等の目的実現のた

    めに、農場全体の管理に責任をもっ「農場責

    任者Jをはじめ、「農薬使用責任者j、「農薬保

    管責任者j、「施肥管理責任者J、「労働安全責

    任者」、「商品管理責任者J、「精米工程責任者

    (精米工程を有する農場のみ)Jの設置を定め

    ている。

    上記責任者の担当者をみると、農場責任者

    や労働安全責任者は、経営者が担当するケー

    ス(1経営者のみ」と「経営者、及びその他構

    成員・従業員j の合計)が、それぞれ 73%、

    60%となっている。すなわち、農場運営全体

    に関わるような責任に関しては、経営者自ら

    がそれらの管理責任を負う場合が多い。しか

    し、その他の「農薬使用責任者 (48%)Jや「農

    薬保管責任者 (44%)J、「商品管理責任者

    (44%) Jについては、経営者自らが担当する

    ケースはいず、れも半数を下回っている。また、

    それら責任者を「従業員のみJで担当するケ

    Pースが全体の 3"'4割を占めている。

    このように、構成員や従業員を多く抱える

    JGAP認証農場では、 GAPの実践にあた

    って、経営者が必ずしも農場管理の全てを担

    当しでいるわけではなく、管理責任の範囲に

    応じて、経営主以外の構成員や従業員と役割

    を分担する体制をしいている。

    ( 2 )作業・生産管理に関わる責任者の配

    置状況

    JGAP認証農場のような雇用型経営では、

    農場内の作業管理や生産管理に関わって、独

    自の責任者を設置するケースがある。

    表8は、そうした作業・生産管理に関わる

    責任者の設置状況について示したものである。

    第一に、ほとんどの農場で、「部門別責任者」

    や「作物別責任者j、「作業別責任者j等を配

    置している点が注目される。各責任者とも設

    置していないケースは2割程度で、いずれの

    表 7 JGAPにおける各種管理責任者の配置状況

    経営者、及びその他 その他構成員

    該当 経営者のみ その他構成員 構成員ぬみ -従業員従業員のみ 未凶符

    農場数 -従業員

    実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数害IJ合 '夫数 割合

    農場責任者 89 50 56百 15 17百 7 8見 。 0百 17 19% 。 0百

    農薬使用責任者 84 29 35百 11 13% 14 17克 3 4見 27 32百 。 0見

    農薬保管責任者 84 28 33百 9 11百 16 19克 2 2克 29 35出 。 0百施肥管理責任者 84 30 36克 12 14百 14 17% 2 2% 26 31出 。 0% 労働安全責任者 89 41 46百 12 13児 15 17% 。 。克 21 24克 。 0克

    商品管理責任者 89 26 29克 13 15克 12 13克 。 。% 36 40百 2 2% 精米工程責任者 23 10 43出 2 9百 4 17% 。 。出 7 30百 。 。%

    資料:表2に同じ。注:1)無肥料、無農薬栽培の農場では、農薬や絡肥に関する管理者を配置しない。

    2)農外企業等を母体とする農場では、正社員のみで農場管理を行うケースがある。

    10-

  • 表8 作業・生産管理に関わる責任者の設置状況

    設置して 設置して該当 うち、 GAP うち、 GAP

    農場数いる

    導入前に設置 導入後に設置いない

    実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合

    部門別責任者 67 57 85% 38 67克 19 33% 10 15克作物別責任者 85 67 79見 48 72出 19 28% 18 21出作業別責任者 85 67 79克 41 61% 26 39% 18 21% 土記責任者 85 81 95克 51 63克 24 30克 4 5克

    資料:表2に同じ。注:1)部門別責任者は、「営農部(課)Jや「園芸部(課)J等、複数品目の生産に関わ

    る部門の責任者とし、回答を得た。なお、生産・販売作物が 1品Hの場合は、作物別・作業別責任者のみ回答することとした。

    2)作物別責任者は、うるち米、小麦、にんじん、ほうれんそう等、品H毎の責任者とし、作業別責任者は、播種、防除、収穫等、農作業毎の責任者とした。

    3)経営者 1人のみの農場は、集計から除いている。

    表9 作業・生産管理に関わる責任者の配置状況

    配置し経営者、及び

    その他 その他構成員経営者のみ その他構成員 従業員のみ 未回答ている -従業員

    構成員のみ -従業員農場数

    実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合

    部門別責任者 57 17 30出 12 21出 4 7% 3 5% 19 33出 2 4% 作物別責任者 67 15 22見 11 16出 10 15出 2 3% 28 42見 l克作業別責任者 67 11 16出 13 19出 9 13見 3 4出 31 46出 。0指資料:表2に同じ。注.表8に同じ。

    責任者も設置していないケースはわずか 5%

    にとどまっている。

    第二に、設置時期についてみると、 30%の

    農場がGAP導入後にいずれかの責任者を設

    置している。また、 GAP導入後に責任者を

    追加した農場も6農場 (7%)存在する(表

    省略)0GAP導入を機に、作業・生産管理の

    組織体制を整備・拡充する動きが確認できる。

    さらに、表 9はそれら責任者の配置状況に

    ついて整理したものである。

    経営者がそれぞれ責任者となるケースは、

    「部門別責任者Jで 51%、また、「作物別責

    任者Jや「作業別責任者」は 39%、36%とな

    っている。一方で、それら責任者を従業員の

    みで担当するケースは、「部門別責任者j で

    33%、また、「作物別責任者Jや「作業別責任

    者Jでは 42%、46%となっている。

    管理範囲の広い責任者(1部門別責任者J等)

    ほど経営者が担当する傾向にあるが、 JGA

    Pで定められた管理責任者よりも、全般的に

    従業員等との役割分担が図られている。

    (3) GA P導入前後でみた作業・生産管

    理における PDCAの取り組み状況

    次に、具体的な作業・生産管理における P

    DCAの取り組み状況を、 GAP導入前後で

    比較する(表 10)。

    まず、「月・週間の作業計画の作成Jを除き、

    ai--ム

  • 表 10 G A P導入前後でみた作業・生産管理における PDCAの取り組み状況

    経営者、及びその他構成員 特に担当者を 実施して

    匝答 経営者のみ その他構成員 -従業員 決めていない いない未恒11年

    農場数 -従業員

    実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合

    作付計画の作成導入前 89 47 53% 17 19見 20 22% 2 2克 2 2% 1%

    導入後 89 46 52% 22 25克 21 24覧 。 0克 。 0出 。 。%

    施肥設計・防除 両官 84 39 46出 13 15% 22 26百 3 4出 5 6出 2 2克

    計画の作成 f愛 84 35 42克 18 21% 29 35百 l見 。 0克 1%

    年間作業計画の 前 89 44 49出 16 18出 21 24出 2 2克 4 4克 2 2%

    作成 f愛 89 43 48% 18 20% 25 28% l克 i克 1 ~地

    月・週間の作業 自立 89 35 39% 12 13克 27 30克 3 3児 11 12克 I出

    計画の作成 後 89 26 29克 19 21克 31 35児 3 3克 9 10出 1%

    従業員への作業 前 86 37 43克 17 20% 27 31百 2 2克 1% 2 2克

    指示 後 86 25 29克 24 28% 35 41出 i克 。 0克 l見

    作業全体の進捗 前 89 42 47% 21 24克 17 19出 4 4克 4 4% I出

    確認と計画修正 後 89 33 37% 30 34% 22 25克 2 2% 2 2% 。 。出

    生育状況の確認 前 89 39 44克 23 26% 23 26克 2 2出 l克 l克

    -把握 後 89 27 30克 32 36% 28 31児 1 ~括 。 。克 1%

    農作業の効率化 前 89 39 44克 25 28% 16 18百 5 6覧 3 3克 l旬

    に関する検討 後 89 29 33% 34 38克 21 24出 4 4% l克 。 。%

    資料:表2に同じ。

    注:1) 無肥料、無農薬栽培の農場は、「施肥設計・防除計画の策定Jの回答なし。

    2)経営者 l人のみの農場は、「従業員への作業指示jの回答なし。

    いずれの取り組みも「実施していない」とす

    る農場は数%程度で、["(実施していても)特

    に担当者を決めていなし)J とする農場もごく

    少数である。また、 GAPの導入前と導入後

    で比較すると、わずかではあるが、「実施して

    いないJや「特に担当者を決めていなし)J と

    する農場が減少している。

    各種計画の策定や作業等の点検、改善検討

    は、多くの農場で取り組まれ、かつ、 GAP

    の導入にともなって、それら作業・生産管理

    に関する PDCAの実践・ルール化が進んで

    いるといえる。

    さらに、 PDCAに取り組む農場において、

    それぞれの担当者をみると、 GAP導入前は、

    「経営者のみ」が担当するケースが4"-'5割

    程度を占めるのに対し、 GAP導入後はそれ

    ら割合が減少している。すなわち、前述の責

    任者と同様、 GAP導入以降、経営主以外の

    構成員や従業員が農場のPDCAに関与する

    ケースが増えている。なお、そうした傾向は

    「作付計画の作成Jや「施肥設計・防除計画

    の作成」、「年間作業計画の作成Jといった農

    場の全体に関わる計画よりも、「月・週間の作

    業計画の作成」のような細部計画の策定や作

    業等の点検・改善検討において顕著である。

    以上のように、各種責任者の配置状況やP

    DCAの取り組み状況から、 JGAP認証農

    場における農場管理体制の特徴として、①農

    '場運営、とくにその細部において、従業員が

    さまざまな責任と役割を果たしており、さら

    に、②GAP導入ともなって、そうした責任

    や役割の明確化、分担化が進んでいる点を指

    摘できる。

    つ副司EA

  • 2)データの記録・管理

    JGAPでは、栽培履歴や資材の在庫記録、

    出荷記録など、食品安全や環境保全等の取り

    組みを裏付けるデータの記録と保管を行うこ

    ととしている。ここでは、それらの他にも、

    作業や生産管理に関連して記録されるデι タ

    の管理状況や活用状況について整理する。

    ( 1 )各種データの記録状況

    表"は、 JGAP認証農場における各種デ

    ータの記録状況を示したものである。

    まず、単収や品質は、ほとんどの農場で記

    録されている。さらに、それらを記録する単

    位についてみると、どちらも作物毎に記録す

    るケースが 40%と最も多くを占めているが、

    圃場毎に記録するケースもそれぞれ 30%、

    21%を占めている。

    また、原価(又は生産費)については、 82%

    の農場で記録されており、作物毎や経営全体

    で記録されるケースがほとんどを占めている。

    生育データについては、 66%の農場で記録

    されており、作物毎の記録と圃場毎の記録が

    それぞれ 25%となっている。さらに、デジタ

    ルカメラや携帯電話・スマートフォンの普及

    を背景に、生育状況を画像で記録するケース

    も40%を占めている。

    その他、作業時間や機械稼働時間は、 7割

    前後の農場で記録されている。これらは原価

    の計算にも用いられることから、多くの農場

    で記録される状況にあると考えられる。

    ( 2 )データ収集・管理方法

    表 12は、それらデータの収集・管理方法に

    ついて示したものである。

    まず、手書き帳票や野帳を利用するケース

    は82%と最も多いが、それらのみで収集・管

    理するケースは 20%にとどまる。一方、パソ

    コンを利用するケースは全体の 75%を占め

    ており、多くの農場で利用されている注 16)。ア.

    のことから、各種データは、手書きの帳票や

    野帳に記録された後、パソコン上で入力・管

    理されているケースが多いと考えられる。

    なお、パソコンでの管理には、多くの場合、

    一般的なワープロソフトや表計算ソフトが使

    表 11 各種データの記録状況

    記録している

    経営全体 作物毎 品種・作型 地区毎 間場毎 記録なし 未回答で把握 に把握 毎に把握 に把握 に把握

    実数割合 実数割合 実数割合 実数割合 実数割合 実数割合 実数割合

    単収 36 40% 18 20% 3 3% 27 30克 4 4出 l児

    品質(等級・規格) 36 40% 23 26% 4 4% 19 21克 7 8百 。 0% 原価(メは生産費) 23 26出 31 35出 9 10克 。 。見 8 9% 16 18覧 2 2%

    生育データ(数値・文章) 22 25出 12 13% 2 2% 22 25出 29 33児 2 2指

    生育データ(画像) 14 16克 5 6克 1% 12 13出 53 60% 4 4出

    作業時間 26 29克 20 22% 5 6出 1% 13 15% 24 27克 。 。出

    機械稼働時間 26 29% 20 22出 2 2百 。 。克 13 15出 28 31% 。 0%

    資料・表2に同じ。注:表中の[ーJは、アシケー卜において選択肢を設定していないことを表す。

    qa tBム

  • 表 12 各種データの収集・管理方法 る。

    ν

    h

    o

    W仇

    u

    w

    h

    υ

    w

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    用されていると推察されるが、一部の農場で

    は、 GIS(9%)やWEB入力・閲覧(20%)、

    スケジュール管理 03%)等の機能を備えた

    専用ソフトを利用するケースがみられる。さ

    らに、パソコンのみならず、スマートフォン

    やデジタルカメラ、 GPS、葉緑素計など、

    各種モパイル端末やセンサ一等を利用するケ

    ースも確認される。

    多くの圃場や作物、さらに雇用を管理する

    農場では、 GAPや農場の作業・生産管理に

    おいて膨大なデータの収集・管理が必要とな

    る。そのため、 JGAP認証農場では、 IT

    機器等を活用してそれらデータの効率的な収

    集・管理に取り組んでいる。

    3)記録データの活用状況と GAP導入に

    ともなう活用変化

    次に、収集されたデータの活用状況につい

    て確認する。ここでは、農場の PDCAにお

    ける記録データの活用に焦点をあて、さらに、

    そうした活用状況をGAP導入前後で比較す

    A斗A'Eム

    表 13は、記録データの現在の活用状況につ

    いて示したものである。

    まず、記録データ毎に「活用なしj の割合

    をみると、「過去の単収・品質」や「過去の栽

    培履歴」はわずか 12%で、それらは多くの農

    場で利用されているといえる。また、「過去の

    原価j や「過去の生育データム「過去の作業

    時間Jについては、「活用なし jとする農場が

    約 3割を占めているが、表 11でみたように、

    「記録なしj とする割合が 18% (f原価J)'"

    33% (f生育データ J)であるため、記録して

    いる農場のほとんどは、それらを農場の PD

    CAに活用していると考えられる。

    次に、「活用あり jとする場合の活用場面を

    みると、「作付計画の作成Jや「作業計画の作

    成」など、計画策定場面で主に活用されてい

    ることがわかる。とくに、「過去の単収・品質

    (作付計画で 76%、作業計画で 48%)Jや「過

    去の栽培履歴(作付計画で 71%、作業計画で

    57%) Jは、とくにそうした場面で活用される

    ケースが多い。また、「作付計画の作成Jでは、

    「過去の原価 (46%)Jや「過去の生育データ

    (47%) Jが、「作業計画の作成Jでは、「過去

    の生育データ (35%)Jや「過去の作業時間

    (35%) J等も比較的活用されている。

    計画の策定以外では、「作業効率化の検討j

    'において、記録データの活用が多くみられる。

    具体的にみると、「過去の作業時間」を活用す

    るケースは 43%を占め、「過去の単収・品質」

    や「過去の原価J、「過去の栽培履歴J等も 2

    "'3割の農場で活用されている。

  • 表 13 記録データの活用状況

    活用あり

    作付計画 作業.計画 作業進捗 作業効率化 従業員 活用なし 未回答の作成 の作成 の管理 の検討 評価

    うた数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合

    過去の単収・品質 68 76克 43 48克 24 27克 26 29% 10 11% 11 12児 2 2%

    過去の原側 41 46% 21 24% 7 8克 23 26出 7 8見 31 35克 2 2出

    過去の生育データ 42 47% 31 35% 20 22出 13 15克 5 6出 29 33克 2 2見

    過去の栽培履歴 63 71% 51 57% 19 21先 20 22克 8 9出 11 12% 2 2出

    過去の作業時間 23 26% 31 35% 22 25出 38 43% 11 12克 29 33% 2 2出

    資料:表2に同じ。注:活用場面については復数回答。

    表 14 G A P導入前後における記録データの活用範囲の変化

    活用拡大 変化なし 活用縮小

    GAP導入前 GAP導入前GAP GAP

    GAP導入後 GAP導入後 米回答導入前後で 導入前後で

    の活用なし の活用あり活用あり 活用なし

    の活用あり の活用なし

    、実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合

    過去の単収・品質 13 15克 10 11 ~出 48 54% 9 10克 2 2% 2 2児 5 6克

    過去の原価 10 11% 7 8% 33 37% 29 33克 3 3% l児 6 7克

    過去の生育データ 9 10% 4 4% 40 45% 27 30克 4 4克 。0出 5 6% 過去の栽倍履歴 13 15% 10 11克 49 55% 9 10克 2 2% l克 5 6児

    過去の作業時間 15 17% 4 4% 34 38克 27 30% 3 3% 1% 5 6%

    資料・表2に同じ。

    注:1)符記録データについて、活用場面の数をGAP導入前後で比較した結果。

    2 )未回答は、 GAP導入前、導入後のいずれかにおいて未回答を含むもの。

    さらに、表 14はGAP導入前後における各

    種データの活用範囲の変化(表 13における活

    用場面の増減)を示したものである。

    これをみると、いずれの記録データについ

    ても、 GAP導入前後で活用範囲に「変化な

    し (GAP導入前後で活用していないケース

    も含む)Jとする農場が6""7割を占めるもの

    の、活用範囲を拡大させた農場も 22""33 %と

    一定程度みられる。さらに、拡大した農場の

    半分以上は、 GAP導入以前に全く活用して

    いなかった農場である。

    このように、 JGAP認証農場の多くは、

    パソコンや 1T機器等を活用して、作業・生

    産管理に関するさまざまなデータを収集・管

    理するとともに、それら記録したデータを計

    画の策定や作業効率化の検討といった農場の

    PDCAに積極的に活用している。さらに、

    一部の農場では、 GAP導入を契機として、

    それら記録データの活用をより積極的に進め

    ている。

    6. GA P導入による経営改善効果と課題

    前節では、 JGAP認証農場における農場

    管理の実態について整理し、 PDCAにおけ

    る従業員の関与や、記録データの積極的な活

    用が進んでいることを確認したム本節では、

    そうしたGAP導入にともなう農場管理を通

    -15-

  • じて、いかなる経営改善効果が発揮されてい

    るかを確認する。

    1) G A P導入による経営改善効果

    ( 1 )経営改善効果

    ここでは、 GAP導入の効果として、食品

    安全確保や環境保全といったGAP本来の効

    果よりも、販売面、収量・品質面、コスト面、

    さらに作業・生産管理や従業員管理といった

    経営的側面における改善効果を把握する。

    表 15は、それら経営改善効果について把握

    した結果である。

    順にみていくと、まず、販売面においては、

    I販売先への信頼」が改善された crかなり改

    善J"-' rやや改善J) とする農場が 56%を占

    めている。また、そうした主観的評価だけで

    なく、実質的な効果として「売上lや「販路

    拡大」が改善されたとする農場が3割超、さ

    らに「販売単価jが改善されたとする農場も

    2割近くみられる。

    収量・品質面においては、単収が改善され

    たとする農場が 30%を占めるとともに、品質

    が改善されたとする農場が 45%を占めてい

    る。

    コスト面では、「資材の不良在庫」が削減さ

    れたとする農場がら4%と最も多くを占めて

    いる。また、「農薬投入量の削減jが 36%、「肥

    料投入量の削減Jが 28%、「作業時間の短縮j

    が 29%の農場で改善されたとしており、「生

    産コストの削減Jについても 37%の農場で改

    表 15 G A P導入による経営改善効果

    凶?等 かなり改善 改善 やや改善 変化なし 悪化不明・未凶?キ

    農場数実数害rJ合 実数害rJ合 実数害rJ合 実数割合 実数割合 実数割合

    売 k 89 1% 13 15% 17 19% 47 53出 。 。克 11 12克販売面販路の拡太 89 4 4百 12 13克 13 15% 50 56出 。 。出 10 11鬼の改善販売先への信頼 89 9 10克 23 26克 18 20% 30 34児 。 。% 9 10克

    販売単価 89 l 1 ~括 7 8施 9 10% 64 72% 。 0% 8 9克

    収量・ 単収の向上 89 1% 8 9克 18 20% 56 63出 。 。% 6 7百

    品質面 品質(等級・規格)の向上 89 3 3% 11 12克 26 29% 43 48覧 。 0% 6 7克の改善 クレーム数の減少 89 3 3% 7 8克 13 15克 53 60克 。 0克 13 15%

    農薬投入量の削減 80 4 5% 11 14覧 14 18克 47 59% 。 0克 4 5% 肥料投入京の削減 83 2 2% 8 10% 13 16% 55 66克 。 0% 5 6%

    コスト面 生産コストの削減 89 2 2出 6 7出 25 28克 46 52出 5 6児 5 6克の改善資材の不良在庫の削減 89 6 7% 16 18出 26 29克 34 38克 。 0% 7 8% 作業時間の短縮 89 3 3百 6 7出 17 19克 51 57% 4 4克 8 9克

    農作業事故件数の減少 89 3 3% 5 6克 19 21官 53 60出 。 0出 9 10克

    生作産業管・理 作業遅延や指示待ちの減少 89 2 2% 6 7出 16 18克 54 61百 。 0出 11 12見

    の改善 欠品や在庫の減少 89 3 3克 10 11% 23 26克 45 51出 。 0% 8 9先

    生産・販売計画の立て易さ 89 4 4克 18 20% 20 22% 41 46百 。 。% 6 7% 従業員の責任感の向上 86 12 14克 18 21胃 31 36% 20 23百 。 0% 5 6出

    従業員従業員の自主性の向 k 86 8 9% 16 19克 38 44兜 18 21覧 。 0% 6 7% 管理の 巾問管理職の育成 86 4 5% 11 13% 19 22% 40 47百 。 。克 12 14出改善 従業員聞の意思疎通 86 8 9% 13 15克 29 34児 28 33百 。 0% 8 9克

    従業員評価の適正化 86 3 3% 9 10克 21 24克 40 47児 。 0克 13 15%

    資料ー表2に同じ。注・ 1)無肥料、無農薬栽培の農場では、農薬投入量や肥料投入量の削減について回答なし。

    2)経営者 l人のみの農場では、「従業員管理lに関する回答なし。

    phU

    市Eム

  • 善されたとしている。

    作業・生産管理については、「生産・販売計

    画の立て易さ jが 47%、「欠品や在庫の減少I

    が 40%の農場で改善されたとしている。これ

    らは、 GAPに求められる販売記録の管理や、

    前節でみたような記録データに基づく計画策

    定によりもたらされた効果であると考えられ

    る。その他、作業管理おいては、 I農作業事故

    件数の減少 (30%)Jや「作業遅延や指示待ち

    の減少(27%)Jといった改善効果もみられる。

    従業員管理については、非常に高い改善効

    果がもたらされていることが確認できる。主

    観的な評価ではあるものの、「従業員の責任感

    の向上j や「従業員の自主性の向上j はとも

    に7割以上の農場で改善されたとしており、

    全てのなかで最も高い割合を示している。さ

    らに、 I従業員間の意思疎通Iでは 58%の農

    場が改善されたとし、「中間管理職の育成Jや

    「従業員評価の適正化」についても約4割の

    農場で改善されたとしている。

    以上のように、 GAPに取り組む農場では、

    食品安全や環境保全といったGAP本来の効

    果以外にも、生産性の向上や経営の効率化に

    関する数多くの効果がもたらされている。

    ( 2 )改善効果の関係

    表 16は、各改善効果の相関係数を示したも

    のである。これをみると、改善効果の発現に

    関して、以下のような関係をみることができ

    る。

    第一に、販売面の改善は、収量・品質面の

    改善と高い相関関係にあることが確認できる。

    とくに「品質の向上jや「クレーム数の減少」

    は、販売面の改善効果全てと密接に結びつい

    ている。また、コスト面に関する「農薬投入

    量の削減」や「肥料投入量の削減J、作業・生

    産管理に関する「生産・販売計画の立て易さ j

    等も販売面の効果と高い相関関係が確認され

    る。 GAP導入にともなう品質向上や計画的

    な生産が、販売面に改善効果をもたらされて

    いることが考えられる。

    第二に、コスト面の改善は、作業・生産管

    理の改善との間に高い相関がみられる。具体

    的には、「作業時間の短縮Jや「資材の不良在

    庫の削減J、「生産コストの削減Jが、「生産・

    販売計画の立て易さ jや「欠品や在庫の減少j、

    「作業遅延や指示待ち時間の減少j と高い相

    関関係にある。販売面の改善と同様、 GAP

    導入による計画的な生産の実現が、生産コス

    トの削減をもたらしていると推察される。

    第三に、作業・生産管理の改善は、従業員

    管理の改善とも相関関係が高い。とくに、「作

    業遅延や指示待ち時間の減少」や「欠品や在

    庫の減少J、「生産・販売計画の立て易さ jは、

    従業員管理の改善との関係が深く、なかでも、

    「従業員の責任感の向上」や「従業員聞の意

    思疎通」、「従業員評価の適正化」との間で高

    い相関関係にある。

    以上を整理すると、 GAPの導入による改

    善効果の背景には、従業員の意識向上や意思

    疎通の改善が、計画的な生産の実現をもたら

    し、さらにそのことが販売面やコスト面の改

    善をもたらすという関係が存在していると推

    測される。

    i'zム

  • 表 16 改善効果の相関係数行列

    販売面の改善収量・品質面

    コスト面の改善の改善

    (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12)

    (1)売上

    販売面 (2) 販路の拡大 」皇の改善 (3) 販売先への信頼 .48 ,__6fi

    (4) 販売単価 ~..Ji亘 .48

    収量・ (5) 単収の向上 ,__63_ .Jill • 31 .40 品質面 (6) 品質(等級・規格)のl白H. 」亘......4fi ,_4量~ ....6.l の改善 (7) クレーム数の減少 ...lil A 44 主主l .39 .....5.3

    (8) 農薬投入量の削減 」昼」生 .29 ...lil . 39 .Jill ...A2 (9) 肥料投入量の削減 」生 .47 .38 .50 A昼」皇 .48 .Jill

    コのス改ト善面 (10)生産コストの削減 .39 ....45 .30 .34 ー38 ,24 ,11 」基 .46(1l)資材の不良在庫の削減 .19 28 31 .23 .28 .15 。。 .18 ,35 .62 (12)作業時間の短縮 .37 .....5.3 .28 ....AQ .32 30 .20 .26 ,34 ,_4皇...lil

    (13)農作業事故件数の減少 ,37 ,29 .20 .25 .28 .27 .24 33 ..A3 .A3 • 34 .A3 生作産業管・理 (14)作業遅延や指示待ちの減少 冒 33 .A3 • 24 .Al .27 ,16 13 30 ,_4基」皇...li2よ1の改善 (15)欠品や在庫の減少 ,30 .38 .34 .31 .32 .31 .19 .34 .38 ..s! ...Ji皇...Jili

    (16)生産・販売計画の立て易さ ...13......4皇 .50 .37 .26 .29 .26 .30 . 36 . 46 ..A! . 43 (17)従業員の責任感の向上 .34 .33 .33 冒 32 .26 ー34 30 .23 .30 .Al 33 .36

    従業員 (18)従業員の自主性の向上 .24 .25 .35 .22 .17 .19 14 .12 .18 .40 ,31 .24

    管理の (19)中間管理職の育成 .Al 26 ,24 .29 .18 .19 23 。15 .21 .22 ,15 .26 改善 (20)従業員聞の意思疎通 .26 .31 ...A2 .26 .12 18 .23 .23 33 .Ali .A3 • 37

    (21)従業員評価の適正化 .38 .....4皇, 40 ...lil .18 .26 .32 ,30 .38 .36 31 ...Ji生

    作業・生産管理 従業員管理の改善 の改善

    (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)

    (13)農作業事政件数の減少

    生作産業管・理 (14)作業遅延や指示待ちの減少 .50

    の改善 (15)欠品や在庫の減少 ....AQ ...Ji昼

    (16)生産・販売計画の立て易さ .23 .....4皇...Ji2

    (17)従業員の責任感の向上 .16 ...Jil ..Al ...Ji2

    従業員 (18)従業員の自主性の向上 .11 .38 29 A A生管理の (19)中間管理職の育成 ー33 .Al 事 17 .26 ..Jil ....li皇改善 (20)従業員間の意思疎通 .30 .50 .50 ....li昼 」生 .72 ..Ji5

    (21)従業員評価の適正化 .42J生 J生」皇 ~ ...A9 . 58 ..Ji5

    資料:表2に同じ。注:1)相関係数は、 Iかなり改善lを3、「改善Iを2、「やや改善1をし「変化なしい「悪化」・「不明ー未回答lを

    0と得点化して求めた。

    2)表中では、相関係数 0.4以上の値を下線付きで示している。

    (3 )改善効果の差の要因

    次に、農場管理の取り組み方による改善効

    果の差を検討するため、改善ありとする農場

    の割合を、 GAPの取り組み年数、記録デー

    タの活用、および農場の管理体制により比較

    する(表 17)。

    GAPの取り組み年数 (3年以上/2年以

    -18-

    下)についてみると、改善効果によって差の

    有無に違いがあることが確認される。

    '改善ありとする農場の多かった「資材の不

    良在庫の削減Jや「生産・販売計画の立て易さ j、

    従業員管理の改善等については、取り組み年

    数による明確な差がみられない。一方、販売

    面や品質面、コスト面については、取り組み

  • 表 17 農場管理の取り組み方による経営改善効果の差

    計画、点検、改善のうち、

    CAP 生育データや栽I音履歴を取組年数 活用している項目数

    生育Tータ 栽培履歴3年 2年 2項H 1項目 2場面 l場面以 l二 以下 以上 以下 以1: 以下

    先卜 40% 29% 56% 29%奪 40克 32%

    販売面販路の拡大 42% 20%ホ 56% 26克輯 40% 29%

    の改善販売先への信頼 '64% 46克特 72% 51% 80克 45児科

    販売単価 23% 14克 22% 17% 20拡 18%

    収量・ 単収の向上 32% 29克 56克 23克骨 40克 26克

    品質面 品質(等級・規格)の|白J1: 49克 37拓事 72克 38%軸 60克 39克*

    の改善 クレーム数の減少 34% 14見帥 39克 20鬼 28克 23克

    農薬投入量の削減 45% 23克紳 38克 35% 23克 40克

    コスト面 肥料投入量の削減 37首 13出神 36拓 25出 30出 25克

    の改善 生産コストの削減 47% 2:3見本 56見 32%牟 48見 32施

    資材の不良住j輩の削減 53克 57克 61出 51見 60% 50克

    作業時間の短縮 28% 31% 44見 25克 40% 24見

    農作業事故件数の減少 38克 20%牌 39% 26% 36見 26% 作業・ 業 指一 32% 20%キ 44児 22克幸 40見 21出生産管理 作 遅 延や /],待ちの減少

    の改善 欠品や在j事の減少 43出 34% 56見 36克 52九 35%

    生産・販売計画の立て易さ 51出 43% 50出 46克 68見 39%特

    従業員の責任感の向上 71% 71克 88% 67克 91施 64旬材

    従業員従業員の自主性のI;'J1: 75% 68克 94見 67%件 91首 66拓特

    管理の 中間管理職の育成 45出 32克ホ 59% 33出 65出 28指林改善 従業員聞の意思疎通 4J% 35見 41施 36見 61% 28克特

    従業員評価の適正化 59見 59鬼 59% 57出 83% 48%特

    資料;表2に同じ。注 1)表中の数値は、[かなり改善J~ 1やや改善」の割合を示している。

    2 )料、*は、 Fisher'sExact Testにより、それぞれ 5%、10%有意水準で水準間に差がある

    ことを表す。

    3 )表頭の「計画j、f点検].1改善1は、 I月・週間の作業計画の作成j、f作業の進捗確認と言|

    画修正J、「農作業の効キt化に関する検討Iを指す。

    年数が長いほど改善したとする農場の割合が

    高い。

    したがって、従業員管理等の改善効果は、

    GAP導入後すぐさま発揮されるのに対し、

    販売面やコスト面等の改善効果は、 GAPの

    もと PDCAを継続的に取り組むことでもた

    らされるといえる。

    記録データ(生育データや栽培履歴)の活

    用については、その活用度による違いをみる

    ため、「月・週間の作業計画の作成(計画)J、

    「作業の進捗確認と計画修正(点検)J、「農作

    業の効率化に関する検討(改善)Jのうち、 2

    つ以上の項目で活用している場合と、 lつ、

    または全く活用がない場合とで比較している。

    これをみると、生育データを農場の PDC

    Aに積極的に活用(2つ以上の項目で活用)

    するケースほど、販売面や収量・品質面、「従

    業員の自主性の向上j等で高い効果が現れて

    いることが確認できる。また、「生産コストの

    削減j や I作業遅延や指示待ちの減少l等で

    も差がみられる。さらに、栽培履歴について

    は、積極的に活用するケースほど、|販売先へ

    の信頼」や「品質の向上」、「生産・販売計画

    の立て易さ j、そして従業員管理全般で、高い

    -19-

  • 表 17 農場管理の取り組み方による経営改善効果の差(つづき)

    計画・点検・改善のうち、 GAP導入後における

    経営主以外の従業員の新たな参画の有無

    計画への参画 点検への参画 改善への参画

    あり なし あり なし あり なし

    売上 50%

    販売面販路の拡大 50%

    の改善販売先への信頼 81克

    販売単価 31見

    収量・ 単収の向上 44克

    品質面品質(等級・規格)の向ト 56施

    の改善 クレーム数の減少 31%

    農薬投入量の削減 40克

    肥料投入量の削減 25弘

    コスト面 生産コストの削減 50克

    の改善 資材の不良在庫の削減 81克

    作業時間の短縮 56%

    農作業事故件数の減少 38%

    生作産業管・理 作業遅延や指示待ちの減少 50克

    の改善 欠品や在庫の減少 63百

    生産・販売計画の立て易さ 75%

    従業員の責任感の向上 94克

    従業員従業員の自主性の向上 100%

    管理の 中間管理職の育成 75% 改善 従業員聞の意思疎通 81先

    従業員評価の適正化 88%

    改善効果がもたらされている。

    これらの点から、 GAPで記帳したデータ

    を単なる記録にとどめず、農場の PDCAに

    積極的に利用することが重要であるといえる。

    農場の管理体制については、 GAP導入に

    ともなう管理体制の変更の有無、具体的には

    農場のPDCA cr月・週間の作業計画の作成

    (計画)J、「作業の進捗確認と計画修正(点

    検)J、「農作業の効率化に関する検討(改善)J)

    において、新たに経営主以外の従業員が参画

    したかどうかで比較している。

    その結果、 PDCAにおける従業員等の新

    たな参画は、さまざまな側面で高い改善効果

    をもたらしていることがわかる。とくに、他

    の効果に波及する従業員管理や作業・生産管

    -20-

    31克 53克 29克孝 56克 29百科

    28% 53首 26%林 56% 26克梓

    50克帥 68克 52% 69% 53施

    17% 37% 14白骨 38% 15見特

    26% 37覧 28% 44出 26百

    42% 58% 41% 63% 40%

    24克 26% 25% 31% 24見

    34% 35克 35児 40克 34%

    27% 22克 28% 25% 27克

    35出 47% 35克 56地 33克キ

    49施時 68% 51克 81% 49見梓

    24見神 53見 23主将巴 56見 24古林

    29% 42% 28% 50出 26克*

    22克梓 47% 22抱梓 56% 21%梓

    36出* 58出 36克 69% 35%梓

    40見料 74見 39%梓 75児 40見料

    65%神 89克 65%軸 94% 65百件

    65克柿 95% 65克梓 100克 65克特

    32括判 68出 32%帥 75% 32克材

    29%紳 74見 29見輔 81% 29%料

    51%枠 74克 53% 88覧 51%紳

    理の改善で明確な差が現れている。したがっ

    て、従業員を交えたPDCAの実践は、農場

    の経営改善に大きな効果をもたらすと考えら

    れる。

    2) G A Pに取り組む上での問題点

    最後に、 GAPに取り組む上での課題を整

    理する(表 18、19)。

    まず、表 18をみると、「消費者の理解が不

    十分j や「取引業者の理解が不十分Jが重要

    な問題として認識されていることが確認でき

    る。それらについて「かなり問題Jありとす

    る農場はそれぞれ 43%、35犯を占めており、

    「問題」、「やや問題」とする農場も含めると、

    ともに 7割を超えている。また、表 19をみて

  • 表 18 G A Pに取り組む上での問題点

    回答 かなり問題 問題 やや問題 問題でない 未回答農場数 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合

    各種データ取得に手聞がかかる 89 12 13% 13 15% 28 31% 33 37% 3 3克

    データ管理に手間がかかる 89 17 19克 11 12% 28 31% 30 34克 3 3克

    記帳データの活用範囲が限られる 89 1% 8 9% 25 28% 49 55% 6 7%

    農場の環境整備・改善が十分進まない 89 。0% 6 7% 28 31% 50 56克 5 6克管理組織体制の整備・改善が不十分 86 。0克 5 6% 27 31% 49 57克 5 6出管理者・責任者の養成が難しい 86 5, 6克 11 13% 27 31% 38 44% 5 6出

    従業員の意識・責任感が改善されない 86 1% 7 8% 26 30% 46 53出 6 7出

    消費者の理解が不十分 89 38 43% 15 17% 14 16% 18 20克 4 4児

    取引業者の理解が不十分 89 31 35克 20 22出 14 16% 21 24克 3 3克

    資料・表2に同じ。注:経営者 1人のみの農場では、 f管理組織体制の整備・改善が不|一分j、[管理者・責任者の養成が難しいj、「従業員の意

    識・責任感が改善されないJの回答なし。

    表 19 G A Pに取り組む上での問題点や各種GAP、施策等への要望(自由回答)

    問題点・要望

    GAP (J GAP)の認知度向上

    具体的回答例 件数

    流通業者の認知度不足等 15

    消費者への PR不 足 等 12

    行政担当者の理解不足等 5

    認証費用の負担等 8 残留農薬検査、水質検査費用の負担 等 6

    行政、 JAなど各機関への提出書類とのファーマット統一 等 2

    各種GAP、認証制度の乱立による混乱 等 3

    認証費用や各種検査費用の負担軽減

    各穐帳票等の標準化

    各積GAPの共通化

    資料:表2に同じ。

    も、消費者や流通業者、行政担当者の認知度

    不足が課題・要望として多く挙げられている。

    こうした回答の背景には、多くの農場がG

    APを販売改善の手段として捉え、 GAPの

    ブランド効果に大きな期待を寄せられている

    ことが影響していると考えられる。しかし、

    それと同時に、昨今、地域プランドや食品安

    全に関する多くの認証制度が整備され、消費

    者や流通業者に混乱を招いていることも一因

    であると考えられる。さまざまな認証制度の

    なかでGAPの目的や意義を明確にし、広く

    周知を図ることが重要であるといえる。

    そうした消費・流通サイドの認知度不足の

    問題に次いで、「各種データ取得に手間がかか

    るj や「データ管理に手間がかかるJに問題

    crかなり問題J""-' rやや問題J)があるとする農場が全体の約6割を占めている。

    また、「記録データの活用範囲が限られるJ

    を挙げる農場も約4割程度みられる。これに

    ついては、農場内での活用だけでなく、行政

    や JA、流通業者等によって求められる帳

    票・書類の書式が異なり、 GAPで蓄積した

    データをそのまま活用できないといったこと

    が背景にあると考えられる。現在、農場管理

    や栽培履歴管理に関するさまざまなアプリケ

    ーションの開発が進められているが、そうし

    た技術開発と同時に、社会的に必要なデータ

    の標準化を進めていくことが求められる。

    Eム

    ワ臼

  • その他、「管理者・責任者の養成」を問題と って、作業・生産管理における PDCAの実

    する農場が 49%、「従業員の意識・責任感が 践やルール化が進められ、新たに経営者以外

    改善されないJとする農場が39%を占めてい の構成員や従業員が農場のPDCAに関与す

    る。前述のとおり、 GAPの導入は従業員管 るケースもみられた。

    理に対して大きな改善効果をもたらしている。 第二に、各種記録データに基づいて農場の

    しかし、各農場ではさらなる改善を期待して PDCAが実践されている点である。

    いるものと考えられ、従業員の管理や育成に JGAP認証農場では、単収や栽培履歴だ

    関して、さらなる研究の蓄積が求められる。 けでなく、生育データや作業時間など、さま

    ざまなデータをパソコンや 1T機器等を活用

    しながら、細かく記録・管理していた。そし

    て、それら記録データを単なる記録にとどめ

    ず、計画策定や作業の効率化検討など農場の

    7. まとめ

    本研究では、 JGAP認証農場へのアンケ

    ート調査をもとに、 GAP導入による農場管

    理の実態とその経営改善効果について検討し

    た。その結果、以下の点が示された。

    まず、調査対象とした JGAP認証農場の

    多くは、経営規模が大きく、かつ、多くの構

    成員および、従業員を有する雇用型大規模経営

    であった。そして、多くはGAP本来の目的

    である生産物の安全・安心確保や、売上・販

    路の拡大を目的にGAPを導入するが、一部

    農場では経営の改善や効率化を目的にGAP

    に取り組んでいた。

    そうしたなか、 JGAP認証農場の農場管

    理の特徴として、以下のような点がみられた。

    第一に、 GAP導入にともなって、従業員

    を含めた管理体制や役割分担等のルール化が

    図られている点である。

    アンケートでは、 JGAPで定められた責

    任者以外にも、農場の作業・生産管理のため

    にさまざまな責任者を配置し、従業員がそれ

    ら責任者を担当するケースが多くみられた。

    また‘一部の農場では、 GAP導入にともな

    PDCAに積極的に活用していた。さらに、

    記録データの活用は、 GAP導入以降、より

    積極的に活用される傾向にあった。

    第三に、以上のような農場管理のもとで、

    多くの経営改善効果がもたらされていた。

    JGAP認証農場では、従業員管理をはじ

    めとして、作業・生産管理、コスト、単収・

    品質、さらに販売面などさまざまな側面で改

    善効果がもたらされていた。そして、それら

    は相互に関係性を有しており、従業員の意識

    向上や意思疎通といった従業員管理の改善が、

    計画的な生産の実現をもたらし、そのことが

    販売面やコスト面の改善に寄与していると考

    えられた。

    また、改善効果の発揮には、農場管理の取

    り組み方が影響していることが確認された。

    農場のPDCAにおける従業員の参画は、従

    業員管理や作業・生産管理の改善に大きく寄

    与し、記帳データの積極的な活用は、販売面

    や収量・品質面等で高い改善効果をもたらし

    円ノ“つ臼

  • ていた。そして、 GAPの取り組み年数が長

    いほど、販売や品質の改善、さらにコスト削

    減等に高い効果が発揮されていた。

    以上の結果を踏まえ、 GAP導入による農

    場管理のポイントとして、以下の点を指摘す

    ることができる。

    まず、 GAPの取り組みは、「食品安全JI環

    境保全JI労働安全Jの確保にとどまらず、「従

    業員の意識改善を通じた経営改善のための管

    理方策」としての側面がある。

    その上で、経営改善の基礎となる従業員の

    意識改善をより効果的に発揮するために、従

    業員にも「作業別責任者Jや「品目別責任者J

    等の役割を割り当てながら、農場全員でPD

    C Aに取り組むことが重要であるといえる。

    また、そうした管理体制のもと、経験や記

    憶のみを頼りにした管理ではなく、栽培履歴

    や生育データ等の記録データに基づきながら、

    計画と実績のズレを明確にし、農場全体でそ

    の要因と改善策を検討することが重要である。

    そして、最後に、そうしたPDCAの取り

    組みは、スポット的に行うのではなく、継続

    的に取り組んでこそ意味のあるものとなる。

    く注>

    1 )農林水産省 (2010a)。

    2) GAPは、「適正農業規範」や「適正農業管

    理」と称されることもあるが、本稿では、

    農林水産省に即して、「農業生産工程管理」

    という用語を用いている。

    3)農林水産省 (2010b)を参照。なお、「農業

    生産工程管理 (GAP)の共通基盤に関す

    るガイドラインJは、適用品目の拡大や関

    連法令・指針の策定・変更を受けて、これ

    までに 4度の改定が行われている(最終改

    訂版は平成24年3月:平成25年l月現在)。

    4)農林水産省調べ(平成 23年3月末現在)の

    数値。なお、農林水産省では、 GAPの推

    進の政策目標として、 GAP導入産地

    3,000産地(平成 27年度)、ガイドライン

    に即したGAP導入産地 1,600産地(同年

    度)を掲げている。

    5)堀田 (2011)は、 CHAID分析を用いて、

    安全衛生管理作業(投薬、飼料、飼料添加

    物、農薬・肥料)の記帳保管の有無に関す

    る規定要因を分析している。その結果、農

    薬・肥料については、規定要因が明確に示

    されたものの、その他の記帳保管の有無に

    ついては、「明確な規定要因が見つからなか

    った」としている。なお、それに先立つ分

    析として、未記録保管の理由を比較し、飼

    料や農薬・肥料を記帳しない理由として、

    「多忙のためJが多いことを指摘している。

    6 )橋本 (2012)は、北海道のGLOBALG

    AP認証産地の分析から、 GAPの導入が

    産地に認証、検査、管理等の費用負担を強

    いる一方で、市場における価格競争により

    それら費用が販売価格等に反映されていな

    いことを問題点として指摘している。さら

    に、量販庖による「安全性確保のアウトソ

    ーシング化」として、こうした実態に批判

    的意味づけを行っている。

    7 )農林水産省 (2010b)においても、 GAP

    の取り組みが、「結果として食品の安全性向

    上、環境の保全、労働安全の確保、競争力

    の強化、品質の向上、農業経営の改善や効

    率化に資する」としているが、「競争力の強

    化、品質の向上、農業経営の改善や効率化」

    に関する具体的根拠については、これまで

    qa つ臼

  • に示されていない。

    8 )国内外の GAPの展開については、椎名

    (2006)や南石 (2011)で詳細に整理され

    ている。

    9) EUにおける農業環境政策と GAP (クロ

    スコンブライアンス)については、蔦谷

    (2005)や森田 (2006) を参照。

    10)農林水産省 (2005)。

    11)埼玉県や鹿児島県などは、農林水産省の動

    きに先駆けて、独自のGAPを始めている。

    12) 日本GAP協会編 (2010)、5章を参照。

    13)表 1において、穀物の個別認証農場数は 81

    農場で、青果物の認証農場(142農場)と

    の合計に対する割合は 36.3%(81/223)と

    なる。したがって、水稲作経営の割合 38%

    とほぼ同じ割合を示している。

    14)アンケートでは、各種管理担当者の農場内

    におけるポジションを把握するため、構成

    員数と従業員数を質問した。ここではそれ

    らの合計人数を、一種の農業従事者数とい

    う意味合いで捉えているが、そのとき、以

    下の 2つの問題が生じる可能性がある。第

    一に、回答農場のなかには、集落営農組織

    や農外企業を母体とする農場、加工等関連

    事業を大規模に展開する農場がいくつかみ

    られる。そのため、構成員(役員)や従業

    員のすべてが実際に農業に従事しているか

    はあいまいな点として残っている。第二に、

    アンケートにおいて臨時雇用の数を正確に

    把握できなかったため、従業員を常時雇用

    のみとしている。そのため、実際の農業従

    事者数を過少に捉える可能性がある。

    15) JGAP認証農場のみならず、他のGAP

    の取り組み(都道府県GAPや各産地のG

    AP等)においても、 GAPを農産物の差

    別化やブランド化の手段として捉える傾向

    にある。しかし、 EU等では、 GAPは農

    業者が守るべき基準とされ、すべての農業

    生産者が共通して取り組むべき事項として

    認識されている。また、 JGAP認証も、

    「消費者向けの新しいブランド」ではない

    としJ企業間取引 (Bto B)を円滑にし、取引コストの軽減を図るために活用される

    べきもの」としている。こうしたコンセプ

    トについて、日本GAP協会 (2010)pp. 102

    の図 1が参考となる。

    16)パソコンの利用に関連して、ほぼ同時期に

    調査された農林水産省 (2012) をみると、

    1 T機器等を「経理事務や経営に関するデ

    ータ分析」に利用するケースは約 35%、「農

    作業履歴や出荷履歴の記録」に利用するケ

    ースは約 25%となっていることから、 JG

    AP認証農場は、一般的な農場に比べて、

    パソコンによるデータ管理が普及している

    ものと推察される(上記割合は 1(1T機器

    等を)これまでにも利用しており、