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Gard Insight
チッタゴン錨地での事故の増加について
こちらは、英文記事「Difficult conditions at
Chittagong anchorage」(2017 年 8 月 11 日付)の和
訳です。
チッタゴン(Chittagong)港沖での航海事故
の件数が再び増加しています。以下に示すの
は、最近の事故からの教訓です。
最近、Gard では、チッタゴン(バングラデシ
ュ)港の進入路と錨地での衝突・座礁の報告を
数件受けました。チッタゴン港湾当局(CPA)の港外錨地は、河川部へ進入する前にはしけ運搬を行う
ために錨泊する船舶で非常に混みあっています。河川部への進入自体も、特に気象条件が事前警告なし
に突如悪化するモンスーン季(6 月から 11 月)には、強い潮流によって困難となる可能性があります。
2012 年 10 月付の Gard Alert「Chittagong, Bangladesh- risk of collision and grounding (チッタゴン
(バングラデシュ) - 衝突と座礁のリスク)」(英語版のみ)には、チッタゴン港への進入時または錨地
において講じるべき様々な対策が記載されています。
BA チャート 84 のチッタゴン港の進入路を示した箇所
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十分な距離を取る
最近、事故を目撃したある船長から寄せられた報告書には、港外錨地エリアにおける混雑した状況が記
されていました。その事故は、喫水 10 メートルを超える船舶向けに指定された A 錨地で発生したもの
です。錨地エリアの周辺は水深の浅い水域で囲まれており、喫水10メートルを超える船舶が利用可能
なエリアが制限されていました。また、通航量が多く、潮流も強いという問題も重なっていました。
事故を起こした船舶は、喫水が 11.5 メートルで、A 錨地で錨泊中の他船からおよそ 0.4 海里(740 メー
トル)離れた場所で錨泊しており、海中の錨鎖の長さは 9 シャックル分(260.3 メートル)でした。0.4
海里という距離は状況によっては十分であるとも考えられますが、同水域は把駐力が弱く、潮流が強い
ことで知られており、錨泊時には船舶間の距離がもっと必要かもしれません。当該船は、引き潮時に隣
接した船舶に向かって走錨し始め、その後すぐにその相手船と接触し、当該船の舵が相手船の錨鎖と絡
まり、主機が停止しました。その後、両船は同水域の別船に向かって走錨し始めました。両船は自船の
制御がほとんど効かない状況に陥り、さらに 4~5 隻の船舶と衝突していた可能性がありました。チッ
タゴンの港湾管理者は、付近の全船に対して主機を始動させ、走錨してくる船舶の進行方向から移動す
るよう警告しました。
錨鎖が絡まって巻き込まれた被害船は、最初に走錨し始めた船舶から逃れるために錨鎖を切り離さざる
を得ませんでした。被害船は船体に重大な損傷を負い、第 5 貨物倉が浸水しました。
推奨事項
錨泊時の他船との距離
他船の付近に錨泊する際には、万一走錨した場合に他船と接触するまでの時間を考慮するようにし
てください。この計算は、回転円(swinging circle)の計算と同じくらい重要です。なぜなら、こ
れによって当直航海士が本船位置を確認する頻度が決まるからです。走錨中に接触や座礁するまで
の時間を様々な対地速度で計算することは、この錨地での停泊当直の重要な業務の一部です。
主機の始動準備
混雑した錨地で錨泊する際には、主機を始動できる準備をしておくことが重要です。主機の始動が
間に合わず衝突あるいは座礁してしまった事故の例はいくつもあります。報告によると、チッタゴ
ン錨地における典型的な走錨方向は 160 度から 340 度で、漂流速度は、大潮時には 8 ノット以上に
もなります。
河川の増水が見込まれる時には潮流の影響はより深刻になる可能性があります。増水は、集水地域
から河川に流れ込む追加的な水量の流れによって増大した、引き潮時の波の位相速度によって引き
起こされます。
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そうした状況下では、船舶は錨の把駐力のみを当てにすることはできません。過去には、水深 12.4
メートルに届くまで把駐力の高い錨を付けた錨鎖を 9 シャックル分伸ばした状態の排水量 49,184
トンの船舶が、大潮の引き潮時に、自船が流されないようにするためにエンジンを微速力前進(8
ノット)にせざるを得なかったことがあります。
はしけ運搬
チッタゴンに寄港する船舶の多くは、喫水制限により、事前にはしけによる貨物の運搬を行わなけ
れば入港することができません。
母船に横付けするはしけ船は、はしけ船の係留ロープを使用して母船に固定されます。はしけ運搬
作業中に、はしけ船と母船のいずれの船体にも損傷を生じさせないようにするためには、両船の間
に十分な防舷材を設置する必要があります。はしけ船の多くは、木製の円材の周囲に古くなった係
留ロープを巻くか、中古タイヤを防舷材にしています。防舷材が不十分であると判断した場合に
は、船長ははしけ船の横付けを拒否するべきです。あるいは、はしけ船ではなく自船側に防舷材を
使用することを検討すべきです。
また、緊急時にはしけ船を切り離す手順を乗組員が理解しておくことも重要です。この点につい
て、はしけ船の船長と事前に話し合いをし、切り離し作業に関与する乗組員全員がその手順を理解
しておかなければなりません。船の安全を確保するには、正しい知識と、現地の状況に関する知見
が必要です。
上記の推奨事項は、同様の状況にある港全般に当てはまるものです。
本稿は、バングラデシュの Coast to Coast P&I Services Ltd.からの情報に基づいて作成したものです。
本文中の海図は BA の厚意により掲載したものです。
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