gd2 o 系高性能 シンチレータの開発とその応用 · 2019-09-10 · 185 エネルギー...

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185 エネルギー ■研究の内容 Gd 2 Si 2 O 7 :Ce(GPS)単結晶シンチレータは、広く使用されている NaI:Tl シンチレータの 1.4 倍 程度の大発光量、高エネルギー分解能、非潮解性、自己放射能無しといった優れた特長を持ち、さ らに 250℃以上の高温環境でも使用可能なため、石油探査の大深度化への貢献が期待されます。単 結晶合成については㈱オキサイドへの技術移転が完了し、SPECT 等各種アプリケーションに応用し ていただける状態になりました。 また GPS 焼結体プレートの開発を JST 先端計測機器開発事業で行い、5cm 角のプレートを安定し て製作する技術を確立しました。位置検出型光電子増倍管組み合わせることにより、福島第一原子力 発電所事故で放出されたα線を放出する核燃料物質を高感度で検出可能になりました。試作装置で は従来装置では 考えられなかっ た核燃料起因α 線放出核種:自 然放射能(ラド ン子孫核種)=1: 200 の 環 境 下 で 核燃料起因α線 放出核種の検出 に成功しました。 北海道大学大学院工学研究院 量子理工学部門 量子ビーム応用計測学研究室 研究室ホームページ:http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/higedon/ Gd2Si2O7 系高性能 シンチレータの開発とその応用 ─放射線検出器用大発光量シンチレータの開発─ 大学院工学研究院 量子理工学部門 金子 純一 准教授 Junichi H. Kaneko 博士(工学)・経営管理修士(専門職) シンチレータは放射線が入射すると発光する物質で医療診断装置や石油 探査用のγ線プローブとして使用されます。我々が開発している Gd 2 Si 2 O 7 (GPS)シンチレータは、高発光量、高エネルギー分解能、非潮解性等の 優れた特長をもち、単結晶と 5cm 角程度のセラミクスプレートが作れます。 ■本研究に関連する知的財産 特願 2014-029357 「単結晶、放射線検出器及び放射線検出器の使用方法」 特許第 5971866 号 「 シンチレータプレート、放射線計測装置、放射線イメージング装置および シンチレータプレート製造方法」 ■応用例 地下資源探査用γ線プローブとして、 250℃以上の高温環境で使用可能。 ・心臓、小動物用 SPECT・PET 装置 ・プルトニウムの現場検出 ■産業界へのアピールポイント ダイヤモンド、化合物半導体、酸化物シンチレータな どの新規放射線計測用材料開発から計測システム開発ま で放射線計測に関連したモノづくりを垂直統合的に行 なっています。福島の廃炉・復興事業にも協力しています。 GPSの高温環境下での発光量 温度依存性。GSO(従来品)を 遙かに凌駕 GPS プレートを用いた可搬型 α線検出装置の試作機 ラドン子孫核種:核燃料起 因α線放出核種= 50:1 環境における核燃料起因α 線放出核種の弁別例 ※お問い合わせは 北海道大学 産学 ・ 地域協働推進機構まで(最終ページ参照) N

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Page 1: Gd2 O 系高性能 シンチレータの開発とその応用 · 2019-09-10 · 185 エネルギー 研究の内容 Gd2Si2O7:Ce(GPS)単結晶シンチレータは、広く使用されているNaI:Tlシンチレータの1.4倍

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エネルギー

■研究の内容

 Gd2Si2O7:Ce(GPS)単結晶シンチレータは、広く使用されているNaI:Tlシンチレータの1.4 倍程度の大発光量、高エネルギー分解能、非潮解性、自己放射能無しといった優れた特長を持ち、さらに250℃以上の高温環境でも使用可能なため、石油探査の大深度化への貢献が期待されます。単結晶合成については㈱オキサイドへの技術移転が完了し、SPECT等各種アプリケーションに応用していただける状態になりました。 またGPS焼結体プレートの開発をJST先端計測機器開発事業で行い、5cm角のプレートを安定して製作する技術を確立しました。位置検出型光電子増倍管組み合わせることにより、福島第一原子力発電所事故で放出されたα線を放出する核燃料物質を高感度で検出可能になりました。試作装置では従来装置では考えられなかった核燃料起因α線放出核種:自然放射能(ラドン子孫核種)=1:200 の環境下で核燃料起因α線放出核種の検出に成功しました。

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北海道大学大学院工学研究院 量子理工学部門 量子ビーム応用計測学研究室研究室ホームページ:http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/higedon/

Gd2Si2O7 系高性能シンチレータの開発とその応用─放射線検出器用大発光量シンチレータの開発─

大学院工学研究院 量子理工学部門

金子 純一 准教授 Junichi H. Kaneko 博士(工学)・経営管理修士(専門職)

シンチレータは放射線が入射すると発光する物質で医療診断装置や石油探査用のγ線プローブとして使用されます。我々が開発しているGd2Si2O7(GPS)シンチレータは、高発光量、高エネルギー分解能、非潮解性等の優れた特長をもち、単結晶と5cm角程度のセラミクスプレートが作れます。

■本研究に関連する知的財産

特願 2014-029357� 「単結晶、放射線検出器及び放射線検出器の使用方法」特許第 5971866 号� 「�シンチレータプレート、放射線計測装置、放射線イメージング装置および

シンチレータプレート製造方法」

■応用例

・�地下資源探査用γ線プローブとして、250℃以上の高温環境で使用可能。・心臓、小動物用 SPECT・PET装置・プルトニウムの現場検出

■産業界へのアピールポイント

 ダイヤモンド、化合物半導体、酸化物シンチレータなどの新規放射線計測用材料開発から計測システム開発まで放射線計測に関連したモノづくりを垂直統合的に行なっています。福島の廃炉・復興事業にも協力しています。

GPS の高温環境下での発光量温度依存性。GSO(従来品)を遙かに凌駕

GPS プレートを用いた可搬型α線検出装置の試作機

ラドン子孫核種:核燃料起因α線放出核種= 50:1環境における核燃料起因α線放出核種の弁別例

※お問い合わせは 北海道大学 産学 ・ 地域協働推進機構まで(最終ページ参照)

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181_ 金子 純一先生