guideline for katakana usage カタカナ(外来語)表記ガイドライン
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Guideline for Katakana usage of expressing foreign words.TRANSCRIPT
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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外来語(カタカナ)表記ガイドライン
第 2版
制定:2008 年 3月
テクニカルコミュニケーター協会
カタカナ表記検討ワーキンググループ
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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はじめに
カタカナ表記検討ワーキンググループ(WG)は 2000 年に結成され、使用者が直接見聞きする
商品上に表記される外来語(カタカナ)の表記の統一のための調査検討を行ってきました。最初
に、もっとも表記上のゆれが多い「語尾の長音表記」に関するガイドラインをまとめて 2004 年
12 月に公開し、関連する企業や業界団体への賛同を呼びかけてきました。
今回は「語尾の長音符号」以外で揺れの大きい表記について、ガイドライン化の検討のため、
2006 年 7月にまず TC協会会員(製作者サイド)の皆様を対象に現状調査を実施し、その結果を
踏まえ一般の商品使用者の方にアンケート調査を行いました。(注1)
これらの結果をもとに、内閣告示(注2)や各メディアが規定する表記ルール等(注3)とも比較検討
を行い、第 1版で規定した「語尾の長音符号表記」の見直しと新たに 6つの規定追加により、ガ
イドラインを改訂し、第 2版を公開することになりました。
●カタカナ表記検討ワーキンググループ発足の背景
テクニカルコミュニケーター協会(以下 TC 協会)では、「コンピューター/コンピュータ」な
ど外来語表記における長音の揺らぎをはじめとしたカタカナの表記をテーマに、平成 12 年度
(2000 年度)からワーキンググループを設置し、カタカナ表記ガイドラインの検討を進めてきま
した。
この活動には、2つの大きな要因があります。ひとつは、つくり手の都合や理屈本位ではなく、
あくまでも利用者側の視点から用語を見直すこと。もうひとつは、昨今、業界や製品分類の枠を
越えた大きな標準化の波が押し寄せていることです。つまり、家電製品、コンピューターといっ
た業界特有の用語や表記は、今後利用者をますます混乱させていくことになるという大きな懸念
が、今回のガイドライン策定プロジェクトの発端といえます。
●カタカナ表記の揺れがもたらす問題
本ガイドライン策定にあたっては、実際に製品を利用するユーザー、そして製品のつくり手で
あるメーカーやマニュアル制作者への実態調査を実施し、現状の不具合とガイドラインがもたら
すメリットを抽出しました。
メーカー、マニュアル制作者への調査(2001.6~7)からは、以下の問題が明確になりました。
<利用者の立場で>
・製品分野、メーカーの違い、カタログやマニュアルと製品本体、などで表記が異なり違和感
がある
<例> 工具はドライバー、PC のソフトはドライバ、とするのだという誤解
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・アクセシビリティーに対応した読み上げソフトで(視覚障害者が聞いたときに)同じモノと
認識できない恐れがある
<例> メモリーとメモリ(目盛)など
<極端な例> タイマーとタイマ(大麻)、メーカーとメーカ(銘菓)など
<つくり手の立場で>
・クライアント毎に表記が異なり業務効率が悪い(例:マニュアル制作会社において発生)
<例> OS とアプリケーションの表記が異なる(コンピュータとコンピューター等)
(同じ製品上で2通りの表記が出てくる)
・業界によって表記基準がばらついている(例:インキとインク等)
<例> 同じメーカーでも家電とコンピューター関連の製品で表記が異なる。
詳細はカタカナ用語表記に関するアンケート報告書(2003 年 10 月実施)を参照下さい。
●カタカナ表記ガイドラインのメリット
ガイドラインを策定することで、以下のようなメリットがあると考えられます。
<利用者の立場で>
・世の中で日常的に使っている用語(表記)なので、理解しやすい
・生活や文化の変化に対応できる
<つくり手の立場で>
・表記の揺らぎがなくなり、使用者の裾野が広がり、製品需要の拡大が期待できる
・複数の表記をチェックする工数が削減できる
●利用者はどんな表記に馴染みを感じているか?
製品利用者への調査(2003.9)では、総体的には、長音付きのカタカナ用語の方に馴染みを感じて
いる利用者が多いということがわかりました。
とくに、プリンタ、メモリ、タイマなど、一部業界では長音不付で浸透しているカタカナ用語に
ついては、長音付きのプリンター、メモリーの方が違和感がないとする回答が圧倒的多数を占め
た、という結果になり、業界により長音不付で標準的に使用されているカタカナ用語に、一般利
用者は違和感を覚え、それらの技術用語が決して支持されているものではないことが判明しまし
た。
●本ガイドラインの目指すところ
上記の実態を踏まえ、本ガイドライン策定の判断基準を以下のように決めました。
1)利用者が見聞きするときにわかりやすい表記であること
2)音声(Universal Design)対応にふさわしい表記である(読み上げたときに日本語とし
て聞き取れる、聞き間違いがない)こと
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3)見聞きする人のスキルを限定しない(製品の利用者が技術者だけではないことを考慮す
る)
4)製品(専門色の強い製品と大多数人が使う製品の)間の垣根がなくなることに対応する
(一般的な知識で複雑かつ高度な機能を使いこなせるように)
その結果、一般利用者の視点からはもちろんのこと、マニュアル制作、ユーザーインターフェ
ースデザイン、用語管理などの業務に携わる人たちの観点からも十分に検討されたガイドライン
ができあがりました。
注 1:規定事項等でダイヤモンド(diamond)[84.2%]、ダイヤル(dial)[88.0%]の[XX.X%]の
表記は 2006 年 12 月に実施したユーザー側(情報の受けて)の調査結果で表記を支持す
る人の割合を示しています。
注 2:「外来語(カタカナ)表記ガイドライン」で 「内閣告示」というのは、「平成 3年 6
月 28 日内閣告示第 2号外来語の表記」のことを意味しています。
注 3:第 2版検討時に参考にした各メディアが規定する表記ルール等は次の通りです。
書籍名 発行者 著者/編者 発行年月
1 記者ハンドブック第9版 株式会社共同通信社社団法人共同通信社 2002/4
2 記者ハンドブック第10版 株式会社共同通信社社団法人共同通信社 2006/4
3 新聞用語集 日本新聞協会 新聞用語懇談会 1996/10
4 最新版 朝日新聞の用語の手引 朝日新聞社 朝日新聞社用語幹事 2002/5
5 毎日新聞 用語集 毎日新聞社 毎日新聞社 2002/2
6 読売新聞 用字用語の手引 中央公論新社 読売新聞社 2005/2
7 NHK ことばのハンドブック 第2版 日本放送出版協会 NHK放送文化研究所 2005/11
8 NHK 日本語発音アクセント辞典〔新版〕 日本放送出版協会 NHK放送文化研究所 1998/7
9 基本外来語辞典 東京堂出版 石綿敏雄 1990/9
10 官公庁のカタカナ語辞典 第2版 三省堂 三省堂編修所 1998/3
11 Imidas 現代人のカタカナ語 欧文略語辞典集英社 イミダス編集部 2006/4
12 大辞林 第二版 三省堂 松村明 1995/11
13 JIS工業用語大辞典 第5版 日本規格協会 日本規格協会 2001/3
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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目次
■適用範囲 ............................................................................................................ 5 ■引用規格 ............................................................................................................ 6 ■用語の定義......................................................................................................... 7 ■規定事項 ............................................................................................................ 8 ■付属書
①表記と原語の一覧................................................................................... 10 ―解説― ■外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編に対する
学識者からの推薦のことば.......................................................................... 26 ■参考
①カタカナ表記(主に長音以外)に関する調査アンケート報告書 (制作者側:2006年7月) ..................................................................... 30
③カタカナ表記(主に長音以外)に関する調査アンケート報告書 (ユーザー側:2007年 1月) ................................................................. 30
■補足 ①ガイドライン策定に至るまでの背景および活動経過 ............................... 31 ②「規定事項」に関する補足事項 ................................................................ 32 ③今後の課題................................................................................................. 33 ④カタカナ表記検討ワーキンググループ 「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編」メンバー一覧 . 33
⑤カタカナ表記検討ワーキンググループ 「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版」メンバー一覧......... 33
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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■適用範囲
本ガイドラインでは、次の表示媒体物に適用される。
「一般の使用者が直接、見る、聞く商品上に表記される、カタカナで表記される外来語」
具体的には、以下のものを指す。
・製品(ハードウェア、ソフトウェア、表示画面を含む)
・製品カタログ(Web サイト、メールマガジンなど電子情報を含む)
・ユーザーズマニュアル(印刷物、HTML マニュアル、PDF などの電子情報、ヘルプ、ガイダンス
を含む)
・ 製品パッケージ
なお、固有名詞、商標名等は適用外である。
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■引用規格
本ガイドラインは、次の規格に従い作成した。
「内閣告示第二号 『外来語の表記』」平成 3年 6月 28 日策定
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■用語の定義
「カタカナ表記」とは
『平成 3年(1991 年)に内閣告示された「外来語の表記」では、「外来語や外国の地名、人名
を片仮名で書き表す場合のことを扱う」とあります。
外来語を片仮名で表記する傾向は、明治時代から目立ちはじめ、第二次世界大戦後に一般的な
傾向として定着しました。その利点としては、原音に近く表記するために片仮名が適しているこ
と、漢字平仮名交じり文の中で語のまとまりを目立たせる効果があることが挙げられています。』
(平成 9年 文化庁発行 「言葉に関する問答集-外来語編-」より抜粋)
本規定では、外来語を日本語として表記するために使用する片仮名での表現を「カタカナ表記」
と定義します。すでにひらがな、または漢字で表記されている用語を目立たせるだけの目的で片
仮名で表現する場合はカタカナ表記から除きます。
(例:「ネジをしめる」)
「長音」とは
本規定では、「ー」(長音符号)を使用して表記された部分をさしています。
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■規定事項
(1)カタカナでの長音表記規定
内閣告示第二号(H3.6.28)「外来語の表記」に基づき、英語の語尾の-er、-or、-ar、 -*y な
どにあたるものは、原則として長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。用例については、添
付の付属書を参照すること。
●表記例
・語尾に、-er が付く語句
コンピューター(computer)
ドライバー(driver)
メーカー(maker)
プリンター(printer)
タイマー(timer)
ユーザー(user)
・語尾に、-or が付く語句:
エレベーター(elevator)
モーター(motor)
・語尾に、-ar が付く語句:
カレンダー(calendar)
レーダー(radar)
モジュラー(modular)
・語尾が、-*y でおわる語句
アクセサリー(accessory)
エネルギー(energy)
アイデンティティー(identity)
メロディー(melody)
メモリー(memory)
パーティー(party)
●例外
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語尾の母音の直前に、強勢(ストレス)のある別の母音がある場合、それをカタカナで表記し
たときは語尾の母音には長音符号を付けないで表記する。以下は、その一例である。
ケア(care)
ストア(store)
ウェア(wear)
●解説
外来語を本来の発音どおりに発声する場合、語尾に母音があってもそこに強勢(ストレス)
がないときは、語尾の音をのばして発音することはない(例 1参照)。しかし、日本人が日
常使用する外来語は、外来語本来のアクセントや発音とはかけ離れ、日本人特有の聴覚や
認知力で解釈されたものがほとんどである。たとえば、本来は語尾の母音が実際にのばし
て発音されない場合でも、他の音節の母音と同様に強勢(ストレス)をおき、のばして発
音する人が多い(例 2参照)。このため、長音符号「ー」を付けて表記するほうが日本人の
発音と一致し、自然と考えられる。
<内閣告示第 2号 抜粋> 内閣告示第二号「外来語の表記」から、長音表記に関する規格の一部を抜粋する。 出典:「外来語の表記」留意事項その2(細則的な事項)のⅢ 長音は、原則として長音記号「ー」を用いて書く。 [例]エネルギー オーバーコート グループ ゲーム ショー テーブル パーティー ウェールズ(地名) ポーランド(地名) ローマ(地名) ゲーテ(人名) ニュートン(人名) 注 1:長音符号の代わりに母音字を添えて書く慣用もある。 [例]バレエ(舞踊)、ミイラ 注 2:「エー」「オー」と書かず、「エイ」「オウ」と書くような慣用のある場合は、それによる。 [例]エイト、ペイント、レイアウト、スペイン(地名)、ケインズ(人名)、 サラダボウル、ボウリング 注 3:英語の語尾の-er、-or、-arなどにあたるものは、原則としてア列の長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。ただし、慣用に応じて「―」を省くことができる。 [例(長音符号使用)]エレベーター、ギター、コンピューター、マフラー [例(長音符号不使用)]エレベータ、コンピュータ、スリッパ
(例2) printer /prínt | -t / → 「プリンター」と発音する
(例1) computer /k mpjú:t | -t /の”t ”
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(2)原語の「V」音には「ヴァ」「ヴィ」「ヴ」「ヴェ」「ヴォ」ではなく、
「バ」「ビ」「ブ」「ベ」「ボ」を充てる
●表記例
アベレージ(average)
イベント(event)
オーバーコート(overcoat)
キャラバン(caravan)
サービス(service)
サーベイ(survey)
ネガティブ(negative)
バイオリン(violin)
バージョン(version)
バニラ(vanilla)
バリエーション(variation)
バルブ(valve)
ビデオ(video)
ベテラン(veteran)
ボーカル(vocal)
ボランティア(volunteer)
ボリューム(volume)
ユニバーサルデザイン(universal design)
リバイバル(revival)
レビュー(review)
レベル(level)
●例外
「なし」
●解説
固有名詞を除き、V 音に「ヴ」をあてるのは、近年ほとんど見られない。そのことは、今回の
アンケートで登場した canvas、telephone service、versionなど V音を含む語に対するカタカナ表
記が、調査したすべての辞書、用語集等において「バ、ビ、ブ、べ、ボ」が使用されていたことか
らもわかる。もはや「ヴ」は通常文では使用されなくなったと考えた。
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(3)「ti」「di」の表記は、「ティ」「ディ」を充てる
●表記例
アンティーク(antique)
オーディオ(audio)
クリエーティブ(creative)
コンディション(condition)
ディスカッション(discussion)
ディスプレー(display)
ディレクター(director)
ファンタスティック(fantastic)
●例外
アンチ(anti) イニシアチブ(initiative) オートマチック(automatic) チケット(ticket) チップ(tip) デジタル(digital) プラスチック(plastic) マルチ(multi) ラジオ(radio)
●解説
「チ」「ジ」、「テ」「デ」と書く慣用のある用語も多い。
<内閣告示第 2号 2Ⅰ4>
「ティ」「ディ」は、外来語ティ、ディに対応する仮名である。
〔例〕 ティーパーティー ボランティア ディーゼルエンジン
ビルディング アトランティックシティー(地)
ノルマンディー(地) ドニゼッティ(人) ディズニー(人)
注 1 「チ」「ジ」と書く慣用のある場合は、それによる。
〔例〕 エチケット スチーム プラスチック スタジアム
スタジオ ラジオ チロル(地) エジソン(人)
注 2「テ」「デ」と書く慣用のある場合は、それによる。
〔例〕 ステッキ キャンデー デザイン
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(4)「ai」「a+子音字+e」「o」など、発音記号が"ei"、"ou"などのアクセ
ントのある二重母音になる表記には長音を用い「ー」を充てる。
●表記例
アベレージ(average)
イミテーション(imitation)
インジケーター(indicator)
インフォメーション(information)
エスカレーター(escalator)
エレベーター(elevator)
オーディオ(audio)
オーナー(owner)
オーバーコート(overcoat)
クリエーティブ(creative)
ケース(case)
シェード(shade)
シミュレーション(simulation)
スケール(scale)
スペース(space)
セーフティー(safety)
チェーン(chain)
トレーナー(trainer)
ネーチャー(nature)
ネーム(name)
プレーヤー(player)
ページ(page)
メーカー(maker)
メッセージ(message)
メール(mail)
レーザー(laser)
●例外
インターフェイス(interface)[59.1%]
ドメイン(domain)
ボウル(bowl)[84.5%]
メイン(main)[97.7%]
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メンテナンス(maintenance)
レインコート(raincoat)[99.5%]
●解説
二重母音は前の音を強く長く発音する傾向がある。
アンケート結果で支持された使用例 レインコート(raincoat)、ボウル(bowl)、メイン
(main)、インターフェイス(interface)を追加した。
<内閣告示第 2号 2Ⅲ3 の注 2>
長音は、原則として長音符号「ー」を用いて書く。
注 2 「エー」「オー」と書かず、「エイ」「オウ」と書くような慣用のある場合は、それによる。
〔例〕 エイト ペイント レイアウト スペイン(地) ケインズ(人)
サラダボウル ボウリング(球技)
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(5)「fo」「pho」の表記は「フォ」をあてる。
●表記例
インフォメーション(information)
フォーム(form)
フォロー(follow)
フォワード(forward)
フォークダンス(folkdance)
フォルダー(folder)[79.2%]
ユニフォーム(uniform)
●例外
ホルマリン(formalin) プラットホーム(platform)[88.1%] メガホン(megaphone) イヤホン(earphone)[70.4%] インターホン(interphone) プラットホーム(platform)
●解説
アンケート結果で支持された使用例フォルダー(folder)、イヤホン(earphone)を追加
した。
「テレホン」「テレフォン」について、アンケート結果で支持の多かった「テレフォン」
[58.8%]を採用した。ただし、「テレホン」[41.2%]も使用されている。
<内閣告示第 2号 2Ⅰ5>
「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」は、外来語ファ、フィ、フェ、フォに対応する仮名である。
〔例〕 ファイル フィート フェンシング フォークダンス
バッファロー(地) フィリピン(地) フェアバンクス(地)
カリフォルニア(地) ファーブル(人) マンスフィールド(人)
エッフェル(人) フォスター(人)
注 1 「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」と書く習慣のある場合は、それによる。
〔例〕 セロハン モルヒネ プラットフォーム ホルマリン メガホン
注2 「ファン」「フィルム」「フェルト」等は、「フアン」「フイルム」「フエルト」と書く慣用
もある。
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(6)「ia」の表記で発音が/ /の場合は「(イ)ア」をあてる。
●表記例
アンモニア(ammonia)
カフェテリア(cafeteria)
ジフテリア(diphtheria)
チアミン(thiamin(独))
トライアル(trial)
バイアス(bias)
バクテリア(bacteria)
ピアノ(piano)
メディア (media)
メディア(media)
ラジアル(radial)
●例外
ダイヤモンド(diamond)[84.2%]
ダイヤル(dial)[88.0%]
ダイヤグラム(diagram)
ビリヤード(billiards)
●解説
時代の変化とともに外来語の発音を原音に近い形で発音する例が多く見られるようにな
った。イ列・エ列の音の次にア/ヤの音が当たるものについても、かつては、日本語とし
ての発音のしやすさから、ヤとする例も多かったが、アとするに不自然さは以前より減少
していると思われる。
このうち、原語の「ia」については、「(イ)ア」を原則とするも、今回のアンケートでは、
慣例の強く残る「ダイヤル」[88.0%]、「ダイヤモンド」[84.2%]は、「ヤ」の支持が多い
結果となった。
<内閣告示第 2号 2Ⅲ4>
イ列・エ列の音の次にアの音が当たるものは、原則として「ア」と書く。
〔例〕 グラビア ピアノ フェアプレー アジア(地) イタリア(地)
ミネアポリス(地)
注 1 「ヤ」と書く慣用のある場合は、それによる。
〔例〕 タイヤ ダイヤモンド ダイヤル ベニヤ板
注 2 「ギリシャ」「ペルシャ」について「ギリシア」「ペルシア」と書く慣用もある。
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(7)原語「ware」は「ウェア」をあてる
●表記例
ソフトウェア(software) ハードウェア(hardware)
●例外
なし
●解説
アンケートで支持の多かったソフトウェア(software)[77.8%]、ハードウェア(hardware)[77.0%]
を採用した。
<内閣告示第 2号 2Ⅱ2>
イ列・エ列の音の次にアの音が当たるものは、原則として「ア」と書く。
「ウィ」「ウェ」「ウォ」は、外来語ウィ、ウェ、ウォに対応する仮名である。
〔例〕 ウィスキー ウェディングケーキ ストップウォッチ
ウィーン(地) スウェーデン(地) ミルウォーキー(地)
ウィルソン(人) ウェブスター(人) ウォルポール(人)
注 1 一般的には、「ウイ」「ウエ」「ウオ」と書くことができる。
〔例〕 ウイスキー ウイット ウエディングケーキ ウエハース
ストップウオッチ
注 2 「ウ」を省いて慣用のある場合は、それによる。
〔例〕 サンドイッチ スイッチ スイートピー
注 3 地名・人名の場合には、「ウィ」「ウェ」「ウォ」と書く慣用が強い
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■付属書
①「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編」に関して削除した
表記と追加した表記 「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編」から以下の表記を削除した。
カタカナ表記 原語
アーキテクチャー architecture
アイボリー ivory
イエロー yellow
イメージャー imager
オーバーフロー overflow
キーコーダー keycorder
キャプチャー capture
スーパーバイザー supervisor
スリッター slitter
タッチセンサー touch sensor
ドライバー driver
トレーシングペーパー tracing paper
プレイヤー player
プレビュー Preview
フロー flow
フューザー fuser
メニュー menu
「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編」に以下の表記を追加した。
カタカナ表記 原語
カプラー coupler
スーパーバイザー supervisor
スキャナー scanner
ドライバー driver
バナー banner
ビューアー viewer
フューザー fuser
ミラー miller
レター letter
キー key
コピー copy
サマリー summary
ダミー dummy
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ビジー busy
リポジトリー repository
②表記と原語の一覧
おもなカタカナ表記と原語の表記を以下に示す。
NO. 読み カタカナ表記 原語
1 ア アイデンティティー identity
2 ア アクセサリー accessory
3 ア アセンブラー assembler
4 ア アダプター adapter
5 ア アドバイザー adviser
6 ア アブソーバー absorber
7 ア アベレージ average
8 ア アンサー answer
9 ア アンチ- anti-
10 ア アンティーク antique
11 ア アンモニア ammonia
12 イ イニシアチブ initiative
13 イ イベント event
14 イ イミテーション imitation
15 イ イヤホン earphone
16 イ イレーサー eraser
17 イ インジケーター indicator
18 イ インストラクター instructor
19 イ インターフェイス interface
20 イ インターホン interphone
21 イ インタビュー interview
22 イ インフォメーション information
23 ウ ウェア wear
24 エ エクスプローラー explorer
25 エ エスカレーター escalator
26 エ エディター editor
27 エ エネルギー energy
28 エ エラー error
29 エ エレベーター elevator
30 エ エントリー entry
31 オ オーディオ audio
32 オ オートマチック automatic
33 オ オーナー owner
34 オ オーバー over
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20
35 オ オーバーコート overcoat
36 オ オペレーター operator
37 カ カウンター counter
38 カ カスタマー customer
39 カ カテゴリー category
40 カ カバー cover
41 カ カフェテリア cafeteria
42 カ カプラー coupler
43 カ カラー color
44 カ カレンダー calendar
45 キ ギア gear
46 キ キー key
47 キ キャラクター character
48 キ キャラバン caravan
49 ク クーラー cooler
50 ク クリーナー cleaner
51 ク クリエーティブ creative
52 ケ ケース case
53 コ コーディネーター coordinator
54 コ コーナー corner
55 コ コネクター connector
56 コ コピー copy
57 コ コミュニティー community
58 コ コンダクター conductor
59 コ コンディション condition
60 コ コンデンサー condenser
61 コ コントローラー controller
62 コ コンバーター converter
63 コ コンパイラー compiler
64 コ コンピューター computer
65 サ サーバー server
66 サ サービス service
67 サ サーベイ survey
68 サ サマリー summary
69 シ シェード shade
70 シ ジェネレーター generator
71 シ ジフテリア diphtheria
72 シ シミュレーション simulation
73 シ シミュレーター simulator
74 シ シャッター shutter
75 シ シリンダー cylinder
76 シ シンナー thinner
77 ス スーパー super
78 ス スーパーバイザー supervisor
79 ス スキャナー scanner
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
21
80 ス スケール scale
81 ス スタッカー stacker
82 ス スペース space
83 ス スリッパ slipper
84 セ セーバー saver
85 セ セーフティー safety
86 セ セキュリティー security
87 セ セパレーター separator
88 セ セピア sepia
89 セ セレクター selector
90 セ センサー sensor
91 ソ ソーター sorter
92 ソ ソフトウェア software
93 タ ダイアリー diary
94 タ タイプライター typewriter
95 タ タイマー timer
96 タ ダイヤグラム diagram
97 タ ダイヤモンド diamond
98 タ ダイヤラー dialer
99 タ ダイヤル dial
100 タ ダミー dummy
101 チ チェーン chain
102 チ チケット ticket
103 チ チップ tip
104 チ チャージャー charger
105 テ ディスカッション discussion
106 テ ディスカバリー discovery
107 テ ディスク disk
108 テ ディスプレー display
109 テ ディレクター director
110 テ ディレクトリー directory
111 テ デコーダー decoder
112 テ デジタル digital
113 テ デリバリー delivery
114 テ テレフォンサービス telephone service
115 ト ドア door
116 ト トナー toner
117 ト ドメイン domain
118 ト トライアル trial
119 ト ドライバー driver
120 ト トランシーバー transceiver
121 ト トランスミッター transmitter
122 ト ドリア doria
123 ト トレーナー trainer
124 ネ ネーチャー nature
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
22
125 ネ ネーム name
126 ネ ネガティブ negative
127 ハ バージョン version
128 ハ パーティー party
129 ハ ハードウェア hardware
130 ハ バイアス bias
131 ハ バイオリン violin
132 ハ バイナリー binary
133 ハ ハイパー hyper
134 ハ バインダー binder
135 ハ バインダリー bindery
136 ハ バクテリア bacteria
137 ハ バッテリー battery
138 ハ バッファー buffer
139 ハ バナー banner
140 ハ バニラ vanilla
141 ハ バラエティー variety
142 ハ パラメーター Parameter
143 ハ バリエーション variation
144 ハ バルブ valve
145 ハ ハンチング hunting
146 ハ ハンディー handy
147 ハ ハンドラー handler
148 ヒ ピアノ piano
149 ヒ ビジー busy
150 ヒ ビデオ video
151 ヒ ビューアー viewer
152 ヒ ビリヤード billiards
153 フ ファインダー finder
154 フ ファミリー family
155 フ ファンタスティック fantastic
156 フ フィーダー feeder
157 フ フィニッシャー finisher
158 フ フィルター filter
159 フ フォークダンス folkdance
160 フ フォーム form
161 フ フォルダー folder
162 フ フォロー follow
163 フ フォワード forward
164 フ フッター footer
165 フ フューザー fuser
166 フ プライマリー primary
167 フ ブラウザー browser
168 フ プラスチック plastic
169 フ プラットホーム platform
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
23
170 フ プリンター printer
171 フ プレーヤー player
172 フ プロジェクター projector
173 フ プロセッサー processor
174 フ プロッター plotter
175 フ フロッピー floppy
176 フ プロバイダー provider
177 ヘ ページ page
178 ヘ ペーパー paper
179 ヘ ベール veil
180 ヘ ヘッダー header
181 ヘ ベテラン veteran
182 ホ ポインター pointer
183 ホ ボウル bowl
184 ホ ボーカル vocal
185 ホ ボディー body
186 ホ ボランティア volunteer
187 ホ ポリシー policy
188 ホ ボリューム volume
189 ホ ホルマリン formalin
190 マ マーカー marker
191 マ マスター master
192 マ マネージャー manager
193 マ マルチ multi
194 ミ ミラー mirror
195 メ メイン main
196 メ メーカー maker
197 メ メーター meter
198 メ メール mail
199 メ メガホン megaphone
200 メ メッセージ message
201 メ メディア media
202 メ メモリー memory
203 メ メロディー melody
204 メ メンテナンス maintenance
205 メ メンバー member
206 モ モーター motor
207 モ モジュラー modular
208 モ モニター monitor
209 ユ ユーザー user
210 ユ ユーティリティー utility
211 ユ ユニバーサル universal
212 ユ ユニフォーム uniform
213 ラ ライター writer
214 ラ ライブラリー library
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215 ラ ラジアル radial
216 ラ ラジオ radio
217 ラ ラスター raster
218 リ リーダー reader
219 リ リバイバル revival
220 リ リポジトリー repository
221 ル ルーラー ruler
222 レ レイヤー layer
223 レ レインコート raincoat
224 レ レーザー laser
225 レ レーダー radar
226 レ レコーダー recorder
227 レ レシーバー receiver
228 レ レジスター register
229 レ レジストリー registry
230 レ レター letter
231 レ レビュー review
232 レ レベル level
233 ロ ローラー roller
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
25
解 説
■外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編に対する 学識者からの推薦のことば.......................................................................... 26
■参考 ①カタカナ表記(主に長音以外)に関する調査アンケート報告書 (制作者側:2006年7月) ..................................................................... 30
②カタカナ表記(主に長音以外)に関する調査アンケート報告書 (ユーザー側:2007年 1月) ................................................................. 30
■補足 ①ガイドライン策定に至るまでの背景および活動経過 ............................... 31 ②「規定事項」に関する補足事項 ................................................................ 32 ③今後の課題................................................................................................. 33 ④カタカナ表記検討ワーキンググループ 「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編」メンバー一覧 . 33
⑤カタカナ表記検討ワーキンググループ 「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版」メンバー一覧......... 33
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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■ 外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号
編に対する学識者からの推薦のことば
(コメントおよび所属は 2004 年 12 月当時のものです)
東京都立科学技術大学 八戸信昭教授
長音記号を付けることに賛成の根拠は,以下の三つです。
1. 内閣告示第二号(H3.6.28)「外来語の表記」(通称:国語審議会ルール)を尊重する。
2. マスコミ(出版、放送)、教育の現場では国語審議会系ルールに準じている
3. 英語の語尾の-er、-or、-ar などに当たるものは、原則としてア列の長音とし長音符号「ー」
を用いて書き表す。
今回は、上記に加えて、外来語本来の発音記号とアクセントの位置に注目してみました。外来
語本来のアクセントどおりに発音する人が中心になって考え、カタカナ表記を決めると長音記号
のつかないカタカナ表記が多くなります。
例:プリンタ、モータ、エネルギ、コンピュータ
一般の人は、プリンタ、モータ、エネルギ、コンピュータのような母音でおわるカタカナ語句
を発音するとき、「ター」、「ギー」のように、強勢(ストレス)を付けて発音する傾向にあり
ます。このため、長音記号を付けて表記するほうが、一般の人にとっては自然な感じになります。
ケア、ストア、ウェアに対して、長音記号を付けない理由として、「アクセントと語尾の間に、
ほかの発音記号が入っていない」と考えてみました。いずれも短い単語であることが特徴です。
ソフトウェアのような長い語句であっても、ウェアの部分だけを考えると納得がいきます。
「学者・技術者の専門集団が使う学術用語の世界は、日常社会で使う用語とは別」と考えたほ
うがよい、と私は考えます。長音記号を付けない用語と、付ける用語が混在すると、一般社会の
人は混乱します。
以上が、私の長音記号を付ける理由です。
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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広島国際大学 社会環境科学部 住環境デザイン学科
森口稔 助教授
このたびテクニカルコミュニケーター協会の活動の一環として作成された「カタカナ表記ガイ
ドライン」について、以下の点から推奨いたします。
1. 表記の統一
2. 言語の情的側面の重視
3. 制作現場からの声
まず、長音符号を付けるにしろ、省略するにしろ、このガイドラインによって、表記の統一
を図ることができるのは、喜ばしいことです。言語は情報を伝えるための記号ですから、一つの
概念を表す記号が二つの表記を持つ場合、混乱が起こる可能性も否めません。たとえば、私自身、
学生時代にギリシア神話について少し知りたいことがあり、『ギリシア神話辞典』を引いてみた
ところ、自分が読んでいた文献と表記が異なるために、なかなか知りたい項目を見付けることが
できなかったという経験があります。「コンピューター」か「コンピュータ」かという実際の表
記の問題以前に、まず統一に向けた実質的な動きとして評価したいと思います。
では、なぜ、長音符号を使うのか。言語の知的側面と情的側面から考えてみましょう。たと
えば、「子供」を「お子様」と呼んでも「ガキ」と呼んでも指し示す対象は同じです。これが言
語の知的側面です。しかし、自分の子供が「お子様」と呼ばれるか、「ガキ」と呼ばれるかによ
って、親の気持ちはまったく違います。これが、言語の情的側面です。また、そこまでの違いは
なくとも、足に履く布を「靴下」と呼ぶか「ソックス」と呼ぶか、いわば、好き嫌いで決めるよ
うな場合もあります。長音符号の有無も、表記としてはほとんど同じですが、ユーザーの「好き
嫌い」を反映したものであり、このガイドラインが、ユーザーの言語の情的側面を考慮している
点と言えます。「わかりやすさ」が TC の最重要課題であると考えるならば、「好き嫌い」など
の言語の情的側面は重要なものではないのかもしれませんし、長音符号を付けることによる画面
の経済性や、原稿を書く際のキータッチの増加などを計算すると、制作現場としては長音符号が
ないほうが却って都合が良いこともあるかもしれません。それにもかかわらず、ユーザーに対す
るアンケート調査を踏まえて、ユーザーが持つ言語の情的側面を重視した点は高く評価できます。
上記の点に加えて、このガイドラインが制作現場の声を反映している点にも注目しておきたい
と思います。ガイドラインが参考にしている内閣告示第二号「外来語の表記」は、日本語の使用
実態を調査した国語審議会の答申に基づくものです。ただ、国語審議会の委員の中に TC の現場
を経験したことのある委員がどの程度含まれているのかは疑問を感じます。このガイドラインは、
制作現場の方が中心になって作成し、また制作現場に対してもアンケート調査を行ったものであ
り、まさに現場の声が反映されていると言えるでしょう。
最後に、「いや、私は実際に話すときも伸ばさずに「コンピュータ」と短く止めている、だか
ら書くときにも長音符号は付けない」という意見もあるかもしれません。もしそういう人がいた
として、はたしてその人は「氷」と言う時と、「高利」と言う時では異なった発音をしているで
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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しょうか。一つの文字が複数の発音を持つ英語のアルファベットに比べて、日本語の仮名文字と
発音はほぼ1対1の対応関係を持っています。ただし、ここで「ほぼ」と付けたように、それも
やはり100パーセントではありません。「氷」と「高利」は実際の発音は同じでも仮名で書く
場合の表記としては「こおり」と「こうり」に分かれる、というのが日本語の実態です。ですか
ら、仮に上記のような意見を持つ人がいたとしても、「コンピューター」と書いていながら、長
音を発音しないということも、日本語としては許されると考えてよいのではないでしょうか。
言葉は、生き物であり、放っておけば、どんどんと好き勝手な方向に散らばって行きます。そ
の言葉の知的側面をしっかりと押さえ、情的側面も考慮に入れながら、「わかりやすさ」を目指
す。TC協会が、様々な問題に関するガイドライン作成の第一歩としてカタカナ表記ガイドライ
ンに着手したことを評価し、今後も大いに期待したいと思います。
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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東北工業大学 デザイン工学科
両角清隆 教授
1) ユーザーインターフェイスは、人とシステムが会話する空間である。日常的な言語が会話空
間に使われることで、一般ユーザーがストレス無く自然に会話することができる、と考えら
れる。
2) 言葉は揺れ動くものであるが、作り手は日常で一番使われている言葉に配慮すべきであり、
技術者の専門的な知識によって決定されるべきではない。また、機能を表現するような用語
はユーザーの誤解を生まないためにも、一貫性をもって使用するべきである。
3) 自然な会話で使用されている用語(e.g. プリンター)に統一することで、見たり聞いたり
したとき自然でしかも表現の揺れが発生しにくくできると考えられる。
よって一般のユーザーが使うインターフェイス用語を、最も使用されている頻度が高い国語審議
会系の用語に統一することに賛成する。
こうしたユーザーに親しみやすい用語がより幅広く使われるようにするための活動を強く支持
する。
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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■参考
①2001 年 9月カタカナ用語表記に関する TC協会会員アンケート報告書
(別冊を参照)
②2003 年 10 月カタカナ用語表記に関する一般使用者アンケート報告書
(別冊を参照)
③2006 年 7月カタカナ用語表記に関する TC協会会員アンケート報告書
(別冊を参照)
④2007 年 6月カタカナ用語表記に関する一般使用者アンケート報告書
(別冊を参照)
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■補足
①ガイドライン策定に至るまでの背景および活動経過
1999.8 TC シンポジウムでの問題提起
2001.5 有志による「カタカナ表記検討 WG」発足
2001.6~7 外来語(カタカナ)表記に関する実態調査実施(延べ 46 社)
調査結果に基き、ガイドライン案(ver.1.0)作成
各社における運用を想定し、「長音」表記に絞ったガイドライン案(ver.1.1)
を作成
2003.9 TC 協会理事会において趣旨説明
2003.9~10 上記ガイドライン案についてのユーザビリティー評価実施(アンケート調
査)を実施
2003.10 テスト結果をもとにガイドライン案(ver.1.2)を作成
TC 協会会員に趣意書(評価結果添付)を配布
2003.11~12 趣意書への意見収集および分析、修正
2004.2 関連する工業会、団体への配布、説明
2004.3 経済産業省 JIS 改訂委員会担当者と意見交換
2004.4 日本新聞協会 新聞用語集担当者と意見交換
2004.5 経済産業省 JIS 担当部署と意見交換
2004.6 財団法人 日本消費者協会担当者と意見交換
2004.7 社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 担当者と意見
交換
趣意書とガイドラインを一本化し、ガイドライン案(ver.2.0)を作成
2004.8/10 TC シンポジウムの協会発表として啓蒙を図る
2004.12 ガイドライン策定し、TC 協会ホームページより展開
2006.4 現場でばらつき頻度が高い表記を検討
2006.7 制作者側(情報の発信者)の調査を実施
2006.12 ユーザー側(情報の受け手)の調査を実施
650 人に外来語(カタカナ)表記に関する実態調査実施した
2007.8/10 TC シンポジウムの協会発表として啓蒙を図る
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
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②「規定事項」に関する補足事項
『JIS Z 8301 規格票の様式』と当ガイドラインの棲み分けについて
まず、『JIS Z 8301 規格票の様式』(以降 JIS Z 8301)は、序文の「適用範囲」にあるとお
り、あくまでも「日本工業規格(以下、規格という。)の構成及び表現形式」自体を規定するも
のであり、当ガイドラインが対象とする製品自体やそのマニュアル、カタログ、パッケージの表
記について規定するものではない。また、JIS Z 8301 の「7.2.3 用語および外来語の表記」、
「b」 外来語の表記」には、「主として"外来語の表記" H3.6.28、 内閣告示第二号」によると
ある。また、解説付表の説明では、「長音符号"ー"を付けるか、付けないか、(中略)問題が多
く統一は困難なので、それが属する専門分野の学術用語の表記に従っているのが現状である。」、
「学術用語においては、(中略)長音符号"ー"を付けるか、付けないか、について厳格に一定に
することは困難であると認め、各用語集の表記を、それぞれ専門分野の標準とするが、長音符号
"ー"を用いても略しても誤りでないことにしている。」と解説している。つまり、JIS Z 8301
は、「原則は"外来語の表記" H3.6.28、 内閣告示第二号。ただし、長音符号"ー"の付ける付け
ないについては規定しない」旨を発していると判断できる。そのため、当ガイドラインが JIS Z
8301 に抵触することはない。
国立国語研究所「外来語言い換え提案」との棲み分けについて
2003 年 4月に国立国語研究所「外来語」委員会より発表された「外来語言い換え提案」とは以
下の点において趣旨が異なるため、とくに整合はとらない。また、整合をしないことによる問題
は発生しないと考える。
・「外来語」委員会の趣旨は、「わかりにくい「外来語」について言葉遣いを工夫し提案する
ことを目的としています」としており、外来語の日本語による言い換えを目的としている。
・本ワーキンググループは、外来語そのものの表記を利用者の立場でわかりやすくすることを
目的にしている。
外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版
33
③今後の課題
カタカナ表記には長音表記のほかにも、検討すべき課題が残っている。
今後は以下の課題についても引き続きガイドライン策定のための調査を続ける。
・末尾以外の長音(メール/メイル フェース/フェイス)
・語尾が-re の長音(ストア/ストアー ケア/ケアー)
・複合語になったときの長音の扱い(インタフェース/インターフェース)
・他にも、WG 宛に意見をいただいており、順次検討していきたい
④カタカナ表記検討ワーキンググループ 「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 長音符号編」メンバー一覧
リーダー: 長崎正道(株式会社リコー)
メンバー: 大和田潤治(キヤノン株式会社)
大月伸一郎(キヤノン株式会社)
川井正幸(富士ゼロックス株式会社)
小見山正(マイクロソフト プロダクト ディベロップメント リミテッド)
小山茂(松下電器産業株式会社)
田中祥子(テクニカルライター)
オブザーバー: 岡本郁子(日本アイ・ビー・エム株式会社)
事務局 早川誠二(株式会社リコー)
⑤カタカナ表記検討ワーキンググループ 「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第 2版」メンバー一覧
リーダー: 川井正幸(富士ゼロックス株式会社)
メンバー: 大和田潤治(キヤノン株式会社)
大月伸一郎(キヤノン株式会社)
奥野文子(マイクロソフト プロダクト ディベロップメント リミテッド)
貝島良太(有限会社アトリエ・ワン)
梶山恵也(アライドテレシス株式会社)
小山茂(松下電器産業株式会社)
中島晃一(マイクロソフト プロダクト ディベロップメント リミテッド)
長崎正道(株式会社リコー)
原田務(東芝ドキュメンツ)
山田葉月(ピーシーデザイン)
事務局 早川誠二(株式会社リコー)