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19 年度 修士論文 AlGaN/GaN HFET オーミック電極の低接触抵抗化の研究 徳島大学 大学院 先端技術科学教育部 博士前期課程 システム創生工学専攻 電気電子コース 原内 貴司

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H19 年度 修士論文

AlGaN/GaN HFET オーミック電極の低接触抵抗化の研究

徳島大学 大学院 先端技術科学教育部 博士前期課程

システム創生工学専攻 電気電子コース

原内 貴司

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平成19年度 修士論文 内容梗概 システム創生工学専攻 電気電子創生工学コース

研究題目 AlGaN/GaN HFET オーミック電極の低接触抵抗化の研究

氏 名 原内 貴司 [大野研究室]

はじめに AlGaN/GaN HFET は高周波デバイス、パワーデバイスとして開発中であるが、性能の改善にはオーミック

電極の低接触抵抗化が必要不可欠である。本研究では一般的に利用されている Ti/Al 系電極のさらなる改善を目

指し、熱処理方法の改善やガンマ線照射、仕事関数の低い Hf/Al、Zr/Al 系電極などを検討した。 実験内容と考察 (1)Zr/Al、Hf/Al のオーミック電極としての検討 Zr,Hf は Ti と似た性質を示し、窒素や酸素とよく反応するので酸化膜の除去や窒素空孔の生成が期待でき

る。加えて仕事関数がそれぞれ 4.1、3.9 eV と Ti の 4.3eV よりも低い。このため Zr、Hf を Ti の代替材料とし

て検討した。Ti/Al 系と同様な条件での実験によれば Ti/Al が 1.39Ωmm に対して Zr/Al が 1.89Ωmm、Hf/Al 2.43Ωmm で、いずれも Ti/Al のほうが良好なオーミック接触であった。(図 1)それぞれの窒化物の仕事関数が

HfN(4eV)>ZrN(3.9eV)>TiN(3.74eV)であることから純金属相でなく窒化物の特性が影響していると思われる。

Ti/Al 系電極は優れているといえる。 (2) 2 段階アニール 同一のサンプルを低温から高温まで段階的に熱処理していくと、同一の条件で 1 度熱処理したサンプルより

低い接触抵抗を示すことがあった。Ti/Al では 400℃付近で合金化が起き、これは金属の抵抗測定で確認されて

いる。(図 2)合金化の前に Ti と界面酸素の反応を完了させることを想定し低接触抵抗化を試みた。1 段目の熱処

理温度は 300℃から 800℃で 5 分間行い、そのまま 850℃で 3 分間アニールする。しかし 2 段階アニールを行っ

ても通常のアニールと接触抵抗に違いはなかった。Ti と酸化膜との反応は十分早く現在の条件の昇温中に十分

起こっていると思われる。オーミック化アニールでは 終のアニールによる反応が重要でその 適化が重要で

ある。 (3)ガンマ線照射による効果

過去にガンマ線照射により FET のオン抵抗の減少が報告され、オーミック電極の接触抵抗が低下したのでは

ないかと推定されていた。この効果を積極的に利用することにより、コンタクト抵抗の更なる低抵抗化または

熱アニールへの代替法として検討した。 事前のアニール温度の異なるサンプルに対してガンマ線をそれぞれ照射した。しかし、いずれの条件でも効

果が見られず、むしろガンマ線照射では接触抵抗は変化しないことが確認された。別の実験でガンマ線により

AlGaN 表面の界面電荷が変化することが分かったので、前回の結果はこの効果によるものと思われる。また、

今回の実験から、AlGaN/GaN デバイスのエピ層やオーミック電極はガンマ線に対し強い耐性を持つことが確認

できた。(図 3) まとめ 今回一般的に用いられている Ti/Al 電極の代替として、Zr/Al、Hf/Al を検討したが Ti/Al が優れていた。ま

た、2 段アニールによる熱処理方法の改善を行ったが、効果が見られなかった。Ti の酸素との反応は十分で、

また AlGaN からの窒素との反応により生じる TiN 層の低障壁化が図れることからも Ti/Al 系電極は優れた特性

を有することが分かった。加えて、ガンマ線照射の実験では、オーミック電極の特性変化は見られず、ガンマ

線に対しても耐性を有することが分かった。

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

接触抵

抗[Ω

・mm]

Ti/Al Zr/Al Hf/Al

00.5

11.5

22.5

33.5

44.5

5

0 500 1000アニール温度[℃]

金属

シート抵抗

[Ω/sqr]

0

100

200

300

400

500

600

700

800

シート抵抗[ohm/sqr]

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

接触

抵抗[Ω

・mm]

照射前 照射後

図 2金属抵抗のアニール温度依存性 図 1 HfAl,ZrAl と TiAl の比較 図 3 ガンマ線照射による影響

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目次

第 1 章 序論 1.1 研究背景 1.2 研究目的 1.3 本論文の構成 第 2 章 オーミック電極としての ZrAl、HfAl 電極の検討 2.1 Zr、Hf のオーミック電極としての可能性 2.2 実験方法 2.3 測定結果 2.4 考察 2.5 まとめ 第 3 章 ICP-RIE を用いたリセス構造、窒素プラズマ処理のオーミック電極への効果 3.1 リセス構造と窒素プラズマ処理 3.2 実験方法 3.3 測定結果 3.5 考察 3.6 まとめ 第4章 2 段アニール 4.1 2 段アニールについて 4.2 実験方法 4.3 測定結果 4.4 考察 4.5 まとめ 第 5 章 ガンマ線照射が与える影響 5.1 ガンマ線照射の影響 5.2 実験方法 5.3 測定結果 5.4 考察 5.5 まとめ 第 6 章 まとめ A.付録 測定方法

(1)TLM法 (2)ケルビン法 (3)金属抵抗

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序論 1.1 研究背景 1940 年代のトランジスタ誕生以来、半導体産業は目覚しい発展をつづけ、携帯電話やコ

ンピュータなどを生み出した。今日のような高度な情報化社会は、半導体電子デバイス発

展の賜物である。これらのほぼ全てはシリコンという優れた材料によりもたらされた。 シリコンデバイスはスケーリング則に従い微細化することによって集積化、高速化、低

消費電力化が進んだ。現在では 32nm が目前まで来ている。微細化によって発展してきた

シリコンデバイスであるが、微細化による高性能化の限界がすぐそこまで来ている。 そこで注目を集めているのが窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体

である。GaN は表 1-1 に示す物性値を持ち、高い電子飽和速度から高周波デバイスとして、

ワイドバンドギャップ、高い絶縁破壊電界から高出力デバイスとして期待されている。 半導体の高周波特性は電流利得が 1 である電流遮断周波数fT は

( )THGGgs

mT VV

LCg

f −∝= 22μ

π (1-1)

(gm:相互コンダクタンス、Cgs:ソース・ゲート容量、μ:キャリア移動度、LG:ゲー

ト長、VG:ゲート電圧、VTH:しきい電圧)であらわされる。この式からゲート長の微細

化が重要である。GaN はシリコンの 10 倍の絶縁破壊電界を有しており、シリコンの 10 分

の 1 のゲート長まで実現することができる。 微細化を進めていくと、同時にさまざまな問題も生じてくる。接触抵抗の増大はそのひ

とつで、電極幅が小さくなると寄生抵抗の中の割合は上昇する。 例えば 1-1式は高周波特性を示すものであるが実用的には寄生抵抗による影響を考慮し

た電力遮断周波数fmax(1-2 式)が重要になる。寄生抵抗が大きすぎると、寄生抵抗の

平方根に反比例して減少する。

( ) ( )STGSiGDTsTGsiD

T

LfRRRCfLfRRRgff

πππ 2244max+++++++

= (1-2)

また、パワーデバイスとしては寄生抵抗が直列抵抗として存在するため、そこでジュー

ル損が発生し損失低下となる(1-3)。 PLOSS=2RcI2 (1-3) 1.2 研究目的 本研究の目的は、AlGaN/GaN HFET の高周波特性、高効率化のためにオーミック電極

の接触抵抗を低減させることである。 本論では、ZrAl、HfAl 電極の検討、ICP-RIE によるリセス構造、窒素プラズマ処理によ

る効果、2 段アニール、ガンマ線照射による効果について述べる。

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2 章 ZrAl,HfAl 電極の検討 2.1 ZrAl、HfAl について Zr、Hf は AlGaN/GaN HFET で一般的に使用されている Ti と同じ族であり、似た特性

を示す。酸素や窒素との反応し易さは Zr、Hf ともに大きく、かつ Ti :4.3eV、Al:4.2eVに対して Zr:4.1eV Hf:3.9eV と Zr、Hf は Ti、Al よりも小さい仕事関数を有する。[1]ここでは ZrAl、HfAl と TiAl 電極を比較し、ZrAl、HfAl のオーミック電極としての可能性

を述べる。 2.2 実験方法

(a) エピ構造 使用した試料は、エピ構造は、サファイア上に GaN3μm、Al 組成 0.23 の AlGaN

を 24nm と、同構造で AlGaN の Al 組成が 0.22 を 24nm である。MOCVD で成長さ

せたものである。図 2-1(a)は HfAl(b)は ZrAl に使用した。

GaN 3000nm

Al0.23Ga0.77N 24nm

サファイア基板

図 2-1(a) エピ構造

GaN 3000nm

Al0.22Ga0.77N 24nm

サファイア基板

図 2-1(b) エピ構造

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(b) プロセスフロー 図 2-2 にプロセスフローを示す。ダイシング後、純水リンスを行いその後クリーニ

ングとして、SPM 洗浄(100℃ 4 分)有機洗浄(アセトン・メタノール)王水処理(4分)行った。次に MESA 形成の為に ICP-RIE を用いて 60nm 程度エッチングした。 その後オーミック電極として TiAl、HfAl、ZrAl を蒸着、リフトオフにて形成した。

オーミック化アニールを 200℃~900℃まで行い、アニールごとに測定しコンタクト抵

抗の変化を見た。測定には TLM、金属抵抗測定用パターンをそれぞれ用いた。

電極構造 使用ウエハ Ti/Al=30/60nm (a) Ti/Al=30/120nm (a) Hf/Al=30/60nm (a) Hf/Al=30/120nm (a) TiAl=50/100nm (b) TiAl=50/200nm (b) ZrAl=50/100nm (b) ZrAl=50/150nm (b) Zr/Al=50/200nm (b)

ダイシング

クリーニング 純水リンス SPM 洗浄 100℃ 4min

有機洗浄 アセトン、メタノール 王水処理 4min

MESA 形成 ICP-RIE 60nm

オーミック電極形成 スパッタ 前処理 塩酸 4 分

オーミック化アニール

測定

図 2-2 プロセスフロー

表 2-1 蒸着金属

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2.3 測定結果 (a) ZrAl と TiAl の比較 ZrAl と TiAl の比較

同じウエハ上に蒸着した ZrAl 系電極と TiAl 系電極とのコンタクト抵抗を比較する。

Zr/Al=50/200nm のオーミック電極が 550℃で 1.89Ω・mm で最小であったのに対し TiAl系電極 Ti/Al=50/200nm のオーミック電極が 500℃で 1.39Ω・mm で最小値であった。 一方、HfAl 系電極と TiAl 系電極の比較では HfAl=30/120nm が 550℃で 2.43Ω・mm に

たいし、TiAl=30/120nm が 500℃で 1.51Ω・mm でそれぞれ最小値であった。 それぞれの最小値を比較すると TiAl が最も低い値を示した。(図 2-3) その他の組成の電極では、HfAl と同一のウエハに蒸着した TiAl=30/60nm(TiAl 比 1:2)

のオーミック電極が 500℃、600℃においてそれぞれ 3.67、3.68Ω・mm と最小の値をしめ

し、HfAl=30/60nm が 600℃、850℃でそれぞれ 8.5、9.4Ω・mm と最小値、極小値を示し

た。 また、ZrAl と同一のウエハに蒸着した TiAl=50/100nm(TiAl 比 1:2)の電極では 800℃

で 6.0Ω・mm を示している。 ZrAl=50/150nm(ZrAl 比 1:3)のオーミック電極は 500℃で初めてオーミック特性を

示した。この温度で 2.83Ω・mm と最小値を示し、アニール温度増加に伴い単調に増加し

ている。 ZrAl=50/100nm の電極では 650℃で初めてオーミック特性を示した。この温度で最小値

4.2Ω・mm を示し、アニール温度増加とともに単調に増加した。 このときの金属シート抵抗は、400~450℃で上昇を始め、500℃までに急峻に上昇する。

その後は、ZrAl で電極構造が 50/100nm の電極は増加し続け、50/200、50/150nm、の電

極では緩やかに減少している。HfAl 系電極では増加し続ける。TiAl 系電極は 500℃以降で

落ち着いている。

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7

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

接触

抵抗

[Ω・m

m]

Ti/Al Zr/Al Hf/Al

図 2-3 TiAl、ZrAl、HfAl の接触抵抗の最小値比較

0

2

4

6

8

10

12

400 500 600 700 800 900

アニール温度[℃]

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・mm

]

Ti/Al=50/200nm

Ti/Al=50/100nm

Zr/Al=50/200nm

Zr/Al=50/150nm

Zr/Al=50/100nm

図 2-4 ZrAl、TiAl コンタクト抵抗のアニール温度依存性

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8

0.1

1

10

100

0 200 400 600 800 1000

アニール温度[℃]

金属

シー

ト抵

抗[Ω

/sq

r]

Ti/Al=50/200nm

Ti/Al=50/100nm

Zr/Al=50/200nm

Zr/Al=50/150nm

ZrAl=50/100nm

図 2-4 ZrAl,TiAl 金属抵抗のアニール温度依存性

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(b) HfAl と TiAl の比較

0

5

10

15

20

25

30

400 500 600 700 800 900 1000

アニール温度[℃]

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・m

m]

TiAl=30/60

TiAl=30/120nm

HfAl=30/60nm

HfAl=30/120nm

図 2-5 HfAl,TiAl コンタクト抵抗のアニール温度依存性

0

5

10

15

20

25

0 200 400 600 800 1000

アニール温度[℃]

金属

シー

ト抵

抗[Ω

/sq

r]

Ti/Al=30/60nm

Ti/Al=30/120nm

Hf/Al=30/60nm

Hf/Al=30/120nm

図 2-6 HfAl,TiAl における金属抵抗のアニール温度依存性

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2.4 考察 ZrAl、HfAl のどちらも TiAl のコンタクト抵抗より大きい値を示した。それぞれの電極

で最も低い抵抗値で比較すると、TiAl が 1.39Ω・mm と 1.51Ω・mm と TiAl の電極の接

触抵抗が異なる。このためそれぞれに TiAl の接触抵抗で比較すると TiAl1 に対して ZrAlが 1.89、HfAl が 1.61 であった。仕事関数が Hf<Zr<Ti であることと逆の特性を示した。 TiAl 系電極において、AlGaN 界面に TiN の存在が確認されている。[2]同じように、窒

素との結合が強い Zr、Hf においても同様のことがある可能性がある。表 2-1 に示すそれ

ぞれの窒化物 TiN、ZrN、HfN の仕事関数に着目すると、HfN>ZrN(3.9 の場合)>TiN と

いうことがいえる。これは接触抵抗の大きさと相関があるように思われる。 TiAl,ZrAl,HfAl 電極では XAl-GaN 間で窒化物を生成し、このときに仕事関数が減少して

いる効果があるのではないだろうか。

表 2-2 Ti,Zr,Hf とその窒化物の仕事関数[2][3][4]

材料 金属仕事関数[eV] 窒化物仕事関数[eV] コンタクト抵抗[Ω・mm]

Ti 4.3 3.74 1.39、1.51

Zr 4.1 3.9~4.2 1.89

Hf 3.9 4 2.83

Ti:Al 比、ZrAl 比、HfAl 比がどちらも 1:4 の割合の電極が 500、550℃で最小を示し

ている。Ti:Al、Zr:Al,Hf:Al 比が小さくなると、最小値もしくはオーミック特性を示す

アニール温度が大きいほうにシフトしている傾向にある。これは、一般に TiAl 系電極でも

言えることで Al が AlGaN と接触する割合が大きいためである。 2.5 まとめ ZrAl,HfAl と TiAl のコンタクト抵抗を比較したが、TiAl が最もよく次に ZrAl、HfAl の順であった。ここで TiAl 電極が優れた電極であると分かった。

また、金属の特性よりも窒化物の特性が重用になっているのではないだろうか。

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参考文献 [1]Semiconductor Devices Physics and Technology 3rd edition S.M.Sze [2]Methods and Mechanisms for Ohmic Contact on AlGaN/GaN HEMTs Extended Abstract of the 2006 International Conference on Solid State Devices and Materials Yokohama 2006 pp 958-959 Ilesam,oAdesida [3] Physical and electrical characteristics of high-j gate �dielectric Hf(1 x) LaxOy Solid-State Electronics 50 (2006) 986–991 X.P. Wang

[4] Ion beamassisted deposition of tantalum nitride thin films for vacuum microelectronics devices Surface and Coatings

Technology 158 –159 (2002) 729–731 Y. Gotoh

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3 章リセス構造オーミック電極 本章ではリセス構造オーミック電極の効果についてまず述べ、その後窒素プラズマによ

る処理の効果について述べる。 3.1 リセスオーミック 金属―半導体界面における電流輸送機構としては、熱電子放出モデルによるものとトン

ネル電流によるものがある。本章ではこのトンネル電流に着目した。トンネル電流を増加

させるには、障壁層である AlGaN 層をエッチングにより薄くするか AlGaN 層を n+にする

ことで実現できる。本章では、前者については ICP エッチング装置によって AlGaN 層のエ

ッチングを行い AlGaN 層の薄膜化を行い、後者については窒素プラズマによる表面処理を

行った。

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3.2 デバイス構造 (c) エピウエハ構造 使用した試料は、通常の HFET 用エピウエハでサファイア上に GaN3μm、Al 組成

0.23 の AlGaN を 24nmMOCVD で成長させたものである。図 3-1

(d) 図 2-2 にプロセスフローを示す。ダイシング後、純水リンスを行いその後クリー

ニングとして、SPM 洗浄(100℃ 4 分)有機洗浄(アセトン・メタノール)王水処理

(4 分)行った。次に MESA 形成の為に ICP-RIE を用いて 60nm 程度エッチング

した。 その後、ICP-RIE を用いてリセスエッチング、窒素プラズマ処理を行った。リセス

エッチングは ICP パワー50WBias パワー20W の条件で 12nm、24nm、30nm、窒素

処理は ICP パワー100WBis パワー100W、0W で行った。(表2-1) 次にセルフアラインでオーミック電極(TiAlTiAu)を蒸着、リフトオフにて形成し

た。オーミック化アニールを 200℃~900℃まで行い、アニールのたびに測定した。測

定には TLM、クロスケルビン構造、金属抵抗測定用パターンをそれぞれ用いた。

GaN 3000nm

Al0.23Ga0.77N 24nm

サファイア基板

図 2-1 エピ構造

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表 3-1 リセスエッチング、窒素プラズマ処理の時間 サンプル

No エッチング

時間[分] エッチング

量[nm] 残り AlGaN厚さ[nm]

エッチング後の処理

1 0 0 24 塩酸処理 2 11 13 11 塩酸処理 3 11 13 11 窒素処理(ICP/Bias=100/0W) 4 11 13 11 窒素処理(ICP/Bias=100/100W) 5 16 19 5 塩酸処理 6 30 36 0 塩酸処理

ダイシング

クリーニング 純水リンス SPM 洗浄 100℃ 4min

有機洗浄 アセトン、メタノール 王水処理 4min

MESA 形成 ICP-RIE 60nm

オーミック電極形成 スパッタ

オーミック化アニール

測定

図 3-3 プロセスフロー

リセスエッチング・窒素プラズマ処理

塩酸処理 or 窒素プラズマ処理

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表 3-2 リセスエッチング・窒素プラズマ処理条件 処理 ICP パワー

[W] バイアスパ

ワー[W] 圧力[Pa] 流量[sccm]

リセスエッ

チング 50 20 0.25 3(SiCl4)

窒素プラズ

マ処理 1 100 100 0.25 50

窒素プラズ

マ処理 2 100 0 0.25 50

3.3 実験結果 図 3-4 から分かるようにエッチングしないサンプル、12nm エッチングしたサンプルが

850℃でそれぞれ 0.28Ω・mm で最小の値を示した。また、20nm エッチングしたサンプル

は 800℃で 0.43Ω・mm、36nm エッチングしたサンプルは 800℃で 0.5Ω・mm であった。

Bias パワーを 0W で窒素処理を行った試料は、850℃で 0.96Ω・mm と同構造の 12nm エ

ッチングしたサンプルに対してコンタクト抵抗が悪化した。バイアスパワーを 100W で窒

素処理したサンプルは電流が流れなかった。

0.1

1

10

100

600 700 800 900 1000

アニール温度[℃]

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・m

m]

標準

etched 12nm

etched 20nm

etched 36nm

etched 12nm + N2 treatment

図 3-4 エッチング、窒素処理によるコンタクト抵抗のアニール温度依存性

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3.4 考察 最も良好なオーミック特性を示したのはエッチングしないサンプル、12nm エッチングし

たサンプルであった。また 20nm36nm エッチングしたサンプルについてはエッチングしな

いサンプルよりも悪化した。これは、エッチングによる薄層化と同時にエッチングダメー

ジによって 2 次元電子が減少したためであろう。 窒素プラズマについては、バイアスパワーが 0W のサンプルについては AlGaN 表面が窒

化したと思われる。バイアスパワーが 100W のサンプルでは窒素処理によってダメージが

入ったのであろう。 3.5 まとめ 本章ではリセスエッチングによるコンタクト抵抗の低下を試みたがエッチングしないサ

ンプルより低いコンタクトは実現しなかった。 エッチングによってダメージが入ったのではなかろうか。より低ダメージのエッチング

を行うか、エッチング後の処理が必要と思われる。

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17

4 章2段アニール 4.1 2 段アニール 経験的に 200℃程度の低温から段階的にアニールしていくと同じ条件で 1 度だけアニー

ルしたサンプルに比べ接触抵抗が低くなるということがある。 TiAl 系でよく言われる低接触抵抗化のメカニズムは次のとおりである。AlGaN 層表面に

は薄い酸化膜の層があるとされる(4-1(a))。まず Ti が AlGaN 層表面の酸化膜を取り込

む(図 4-2(b))。その後 Al が拡散し(図 4-1(c)Ti 層と接触し Ti3Al に合金化する。この

とき Al 過剰の状態だと AlGaN 層と Al が接触し(図 4-1(d))低接触抵抗が得られる。[1] Ti が酸化膜を除去するには、Al が拡散し合金化する前に酸素を除去しなければいけない。

金属抵抗のアニール温度に対する変化(図 4-2)が 450℃において急峻に起こっているこ

とから、Al の拡散合金化は 450℃付近で起こり始めたと思われる。 低温から段階的にアニールしたサンプルは 450℃以下の低温での熱処理を長時間受けて

いるわけだからこの酸化膜除去が十二分に行われたことで低い接触抵抗を示した可能性が

ある。一方で、単純にアニール時間が最適化されていない可能性もあり、本章では、アニ

ール時間を最適化した後に 2 段アニールの効果について議論する。

GaN

AlGaN

Ti

Al

酸化膜層

GaN

AlGaN

Al

TiOx 層 Ti

GaN

AlGaN

Al

TiOx 層 Ti

GaN

AlGaN

Al

Ti3Al

図 4-1(a) 図 4-1(b)

図 4-1(c) 図 4-1(d)

図 4-1 Ti/Al 系オーミック電極の低コンタクト抵抗化メカニズム

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18

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 100 200 300 400 500 600 700

アニール温度[℃]

金属

シー

ト抵

抗[Ω

/□

]

4.2 デバイス構造

(a) エピ構造 エピ構造を図 3-1 に示す。サファイア基板上に GaN 3000nm、Al 組成 0.23 の AlGaN

24nm を成長させたサンプルを使用した。

GaN 3000nm

Al0.23Ga0.77N 24nm

サファイア基板

図 4-3 エピ構造

図 4-2 金属シート抵抗のアニール温度依存性

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(b)プロセスフロー プロセスフローを図 3-2 に示す。エピウエハをダイシングし、純水リンスを行った後 SPM

100℃ 4 分、有機洗浄(アセトン、メタノール)、王水洗浄 4 分 の順にクリーニングを行

った。その後、ICP-RIE により 60nm エッチングし、素子間分離を行った。次に塩酸処理

(HCL:H2O=1:1)を4分行った後、スパッタにより電極を蒸着し、リフトオフでオーミッ

ク電極を形成した。オーミック金属は TiAlTiAu=50/200/40/40nm である。

プロセスフロー

ダイシング

クリーニング 純水リンス SPM 洗浄 100℃ 4min

有機洗浄 アセトン、メタノール 王水処理 4min

MESA ICP-RIE 60nm

オーミック電極形成 スパッタ

オーミック化アニール

測定

図 4-4 プロセスフロー

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(c) 2 段アニールについて 2 段アニールについて定義する。2 段アニールとはまず 1 段目の温度まで昇温させその状

態で 5 分間保持する。1 段目のアニール温度は 300℃から 800℃まで 100℃刻みに条件を振

った。そのまま 850℃に昇温し 3 分間保持した。

1段目 5分

2段目850℃ 3分

時間[sec]

アニール温度℃

図 4-5 2 段アニールの温度設定

1 段目アニール温度 300、400、500,600、700、800℃

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0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

0 100 200 300 400

アニール時間[sec]

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・m

m]

0

100

200

300

400

500

600

700

シー

ト抵

抗[Ω

/sq

r]

4.3 実験結果 アニール時間に対する接触抵抗の特性(図 4-5)は約 180 秒で 1.65、1.8Ω・mm であっ

た。180℃付近では接触抵抗がアニール時間に対して安定しており、2 段アニールの効果を

見るのに適している。このことから 2段アニールの最終アニール条件は 850℃3分間とした。 1 段目のアニール温度に対するコンタクト抵抗は標準のアニールの接触抵抗 1.1~2.7Ω・mm に比べ、同程度かむしろ悪化した。

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

0 200 400 600 800 1000 1200

1段目アニール温度[℃]

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・m

m]

図 4-6 コンタクト抵抗のアニール時間依存性

図 4-7 コンタクト抵抗の 1 段目アニール温度依存性

標準アニール

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4.4 考察 2 段アニールを行ったが、その効果ないかむしろ悪化した。1 段目の熱処理は Ti による

AlGaN 層表面の酸化膜の除去の時間を十分長くすることであった。今回結果が示すように

低温でのアニール効果はなかった。Ti による AlGaN 層表面の酸化膜の除去は標準の条件で

十分であると思われる。 RTA を用いて急速加熱を行っているのだが、その昇温時間は 10℃/sec である。これは

450℃を超えるまでに約 45 秒間かかる。この時間が十分に早く酸化膜は完全に取り除かれ

たのではと考えられる。 今回は、アニール時間を最適化してから行った。これまでの結果は、アニール時間の最

適化がきちんと行われていなかったからであろう。 4.5 まとめ 今回低温でアニールすることでAlGaN層表面の酸化膜層を完全に除去することを狙った

が、効果がなかった。Ti の酸化膜除去は十分に早く昇温中に十分に行われていると思われ

る。また、過去の実験で段階的なアニールの接触抵抗が低く見られたのはアニール時間の

最適過不足であろう。 参考文献 [1] Methods and Mechanisms for Ohmic Contact on AlGaN/GaN HEMTs Extended Abstract of the 2006 International Conference on Solid State Devices and Materials Yokohama 2006 pp 958-959 Ilesam,oAdesida [2] スパッタ蒸着を用いた AlGaN/GaN HFET オーミックコンタクトの研究 岩崎総一

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第 5 章 ガンマ線照射によるオーミック電極への影響 5.1 ガンマ線照射による AlGaN/GaN HFET への影響 窒化ガリウムはその耐環境性から宇宙での用途も考えらている。そのため、放射線によ

る影響についても研究されている。また、AlGaN/GaN HFET についてはガンマ線照射に

よりトランジスタのオン電流が増加したという報告がある(図 5-1)[1]。このとき閾値のシ

フトは起きていない。(図 5-2)トランジスタの GDSの逆数と接触抵抗が 5-1 式のようで

あるから、GDS の逆数を Vg-Vt の逆数でプロットすると(図 5-3)傾きはほぼ一定で切片が

減少している。計算では接触抵抗が約 1Ωmm 減少したとの報告がある。 本章では、ガンマ線照射による AlGaN/GaN HFET への影響をコンタクト抵抗、シート

抵抗、金属の抵抗の3点から述べ、最後にガンマ線照が与える AlGaN/GaN HFET への

影響についてまとめる。

)15(1

)(11

−+−

= LcGDS GVtVAG

図 5-1 ガンマ線照射によるオン電流の上昇 図 5-2 ガンマ線照射による閾値への影響

LW

tA ε

μ=

GDS:ドレインコンダクタンス Gc:コンタクト抵抗 Vg:ゲート電圧 Vt:閾値電圧

0 5 10 15 200

5

10

15

20

25

Dra

in c

urr

ent

( m

A )

Drain voltage ( V )

・ before・ after

-10 -8 -6 -4 -2 0 210-1010-910-810-710-610-510-410-310-2

Gat

e c

urr

ent

( A

)

Gate voltage ( V )

・ before・ after

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5.2 実験方法 エピ構造を図 5-1 に示す。サファイア基板上にニュークリエーション層を形成し、その上

に GaN 2000nm AlGaN 12nm を成長させている。 プロセスフローを図 5-2 に示す。エピウエハをダイシングし、純水リンスを行った後 SPM 100℃ 4 分、有機洗浄(アセトン、メタノール)、王水洗浄 4 分 の順にクリーニングを行

った。その後、ICP-RIE により 60nm エッチングし、素子間分離を行った。次に塩酸処理

(HCL:H2O=1:1)を4分行った後、スパッタにより電極を蒸着し、リフトオフによりオー

ミ ッ ク 電 極 を 形 成 し た 。 オ ー ミ ッ ク 金 属 は 、 Ti/Al/Ti/Au = 50/200/40/40nm 、

GaN 2000nm

AlGaN 12nm

サファイア基板

図 5-4 エピ構造

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.50.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

y = 0.1506x + 0.2280

y = 0.1499x + 0.1957

・ before ・ after

DSG1

図 5-3 トランジスタ特性からの接触抵抗の低下量の算出

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TiAl=ZrAl=HfAl=50/200nm をそれぞれオーミック化アニールを行った後、高崎原研にてガ

ンマ線を照射した。金属と照射量は表 5-1 に示す。 ガンマ線の吸収線量は水に対して 36.1×104Gy と 3.09×104Gy の 2 通り用意した。 測定はガンマ線照射前後に行い、その効果を評価した。測定方法は TLM、クロスケルビ

ン構造による I-V 測定、金属抵抗測定パターンによる測定を用いた。

ダイシング

クリーニング 純水リンス SPM 洗浄 100℃ 4min

有機洗浄 アセトン、メタノール 王水処理 4min

MESA ICP-RIE 60nm

オーミック電極形成 スパッタ

オーミック化アニール

前測定

ガンマ線照射

測定

図 5-5 ロセスフロー

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表 5-1 電極材料とガンマ線の吸収線量 電極材料 アニール温度 水の吸収線量[Gy]

Ti/Al/Ti/Au =50/200/40/40 nm

アニール無し 3.09×104Gy 500℃ 5 分 3.09×104Gy 850℃ 5 分 3.09×104Gy アニール無し 36.1×104Gy 500℃ 5 分 36.1×104Gy 850℃ 5 分 36.1×104Gy

Ti/Al=50/200nm 500℃ 5 分 36.1×104Gy Zr/Al=50/200nm 500℃ 5 分 36.1×104Gy Hf/Al=50/200nm 500℃ 5 分 36.1×104Gy

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5.3 測定結果 ガンマ線照射の前後でコンタクト抵抗、シート抵抗、金属シート抵抗ともに顕著な変化は

なかった。 TiAlTiAu を 850℃でアニールしたサンプルに対して、照射量は 36.1×104Gy の試料に対

しては図 5-6 からわかるようにコンタクト抵抗、シート抵抗の変化は少なく顕著な変化は

ない。一例を挙げると、照射前にシート抵抗、コンタクト抵抗は 754Ω/sqr、1.85Ω・mmであったのが照射後、692Ω/sqr、1.88Ω・mm であった。シート抵抗については 62Ω変化

しているが、これは測定のばらつきの範囲内であるといえる。また、コンタクト抵抗は変

化していない。これは、ケルビン測定(図 5-7)でも言うことができ、照射前後で変化は

ない。 TiAlTiAu でアニールをしないサンプルでは(図 5-12、5-13)、電流が 10μA 流れるとき

の電圧が照射量 36.1×104Gy で 0.34V→0.37V 3.09×104Gy で 0.34V→0.37V にシフト

した。アニールをしていないことから、電極の酸化、500℃以下でのアニールに相当したの

か判別できない。 TiAlTiAu 以外のサンプル(図 5-15)は HfAl のコンタクト抵抗が照射前 3.2Ω・mm から照

射後 2.2Ω・mm と 1Ω・mm 変化したがシート抵抗は変化しなかった。他は TiAl,ZrAl は変化していない。 他 TiAlTiAu で 850℃でアニールし照射量 3.09×104Gy を照射したサンプル(図 5-8、5-9)、TiAlTiAu に 500℃でアニールし、照射量 36.1×104Gy(図 5-10)、照射量 3.09×104Gy(図 5-11)を照射したサンプルについても TLM、ケルビンどちらも変化がなかった。

金属抵抗はどの金属でも変化しなかった。(図 5-16)

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(a) TiAlTiAu の 850℃アニール 照射量 36.1×104Gy

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

1.8

2

0 0.5 1 1.5 2 2.5

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・m

m]

0

100

200

300

400

500

600

700

800

シー

ト抵

抗[Ω

/sq

r]

コンタクト抵抗

シート抵抗

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

-0.004 0 0.004

電圧[V]

電流

[mA

]

照射後

照射前

(a) 図 5-6 TLM 事前アニール 850℃ 照射量 36.1×104Gy

図 5-7 ケルビン構造I-V 特性 事前アニール 850℃ 照射量 36.1×104Gy

照射前 照射後

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(b)TiAlTiAu の 850℃アニール 照射量 3.09×104Gy

0

100

200

300

400

500

600

700

800シ

ート

抵抗

[ohm

/sq

r]

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・m

m]

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

-0.004 0 0.004

電圧[V]

電流

[mA

]

照射後

照射前

照射前 照射後

図 5-8 TLM 事前アニール 850℃ 照射量 3.09×104Gy

図 5-9 ケルビン構造I-V 特性 事前アニール 850℃ 照射量 3.09×104Gy

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(c)TiAlTiAu 500℃ アニール 照射量 36.1×104Gy

-0.05

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

-1 -0.5 0 0.5

電圧[V]

電流

[mA

]照射後

照射前

(d)TiAlTiAu 500℃アニール 照射量 3.09×104Gy

-0.05

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

-1 -0.5 0 0.5

電圧[V]

電流

[mA

]

照射後

照射前

図 5-10 Kelvin 構造 I-V 特性 大

図 5-11 Kelvin 構造 I-V 特性 事前アニール 500℃ 照射量 3.09×104Gy

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(e)TiAlTiAu アニールなし 照射量 36.1×104Gy

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0.06

0.07

-1 -0.5 0 0.5

電圧[V]

電流

[m

A]

照射後

照射前

(f) TiAlTiAu アニールなし照射量 3.09×104Gy

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0.06

0.07

-1 -0.5 0 0.5

電圧[V]

電流

[m

A]

照射後

照射前

図 5-12 Kelvin 構造 I-V 特性 事前アニールなし 照射量 36.1×104Gy

図 5-13 ケルビン構造 I-V 特性 事前アニール無し 照射量 3.09×104Gy

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TiAl,ZrAl,HfAl アニール温度 500℃

0

100

200

300

400

500

600

700

シー

ト抵

抗[Ω

/sq

r]

TiAl

HfAl

ZrAl

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

コン

タク

ト抵

抗[Ω

・m

m]

TiAl

HfAl

ZrAl

照射前 照射後

図 5-14 照射前後のシート抵抗の変化 TLM

照射前 照射後

図 5-15 Ti/Al Zr/Al Hf/Al のコンタクト抵抗の変化 TLM

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(c)金属シート抵抗の測定

0.1

1

10金

属シ

ート

抵抗

[Ω

/sq

r]

TiAlTiAu 850℃

TiAlTiAu 500℃

TiAlTiAu

as depo

HfAl

TiAl

ZrAl

照射前 照射後

図 5-16 金属シート抵抗への影響

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34

5.4 考察 ガンマ線照射の前後でシート抵抗、オーミック電極のコンタクト抵抗、金属抵抗は変化

しなかった。このことから、オーミック電極のガンマ線照射による影響はないと結論でき

る。 前回では、トランジスタの電流が上昇したことからコンタクト抵抗の上昇を推定してい

た。しかし、今回の実験からシート抵抗、コンタクト抵抗、金属抵抗は変化しなかった。 今回測定した TLM パターンはトランジスタパターンのゲート電極がない構造である。こ

のことから、前回のオン電流増加はゲート電極に起因することが推測される。また、前回

の結果では閾値電圧が変化していないことからガンマ線によって変化したのはゲートエッ

ジではないかと推測できる。

このオン電流の増加はゲートエッジでの負電荷の挙動によるものである。つまり、測定

中にゲートエッジに負電荷が蓄積し、ゲートエッジ直下の 2 次元電子ガスが減少した。そ

のため、ゲートエッジ部だけが高抵抗化していたと思われる。これが、非常に高いエネル

ギーを持つガンマ線により負電荷がたたき出され元に戻ったのであろう。 5.5 まとめ 本章では、ガンマ線照射によるオーミック電極の改善効果を検討した。しかし、ガンマ

線照射によって、シート抵抗。コンタクト抵抗、金属シート抵抗は変化しなかった。この

ことは逆にオーミック電極はガンマ線照射による悪影響がないことになる。 前回の結果との比較から、ガンマ線照射によるオン電流の増加はゲートエッジの負電荷

の挙動であると推定できた。 参考文献 [1]AlGaN/GaN HFET 電気特性へのガンマ線照射の影響 66 回応用物理学会学術講演

会 予講集 8p-W-8

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35

6章 まとめ 6.1 各章のまとめ 2 章 ZrAl,HfAl オーミック電極の検討 2 章では Ti と似た性質を持ち、酸素、窒素とよく反応する Zr、Hf を利用した ZrAl、HfAl電極を検討した。結果、いずれも TiAl よりも低い接触抵抗を得られなかった。Zr、Hf は

Ti と同様に酸素、窒素を吸着する働きがあるが、それによりできた窒化物の仕事関数では

TiN が 3.75eV と最小であった。酸素との吸着、窒化物の仕事関数の両面から TiAl 電極が

優れていることを示した。 3 章 ICP-RIE によるリセス構造と窒素プラズマ処理によるオーミック電極への効果 3 章では、ICP-RIE の低レートエッチング、窒素プラズマを用いて低接触抵抗を試みた。

結果、エッチングしないサンプルと 12nmAlGaN をエッチングしたサンプルが 0.27Ω・mmとよい結果が得られた。また、20nm、36nmAlGaN 層および AlGaN+GaN 層をエッチン

グしたサンプルに対してはエッチングしないサンプルより悪化した。 エッチングにより AlGaN 層の状態が変化し、エッチングダメージなどその影響が出たと

思われる。 窒素プラズマによる処理は悪化した。 4 章 2 段アニールによる効果 4 章では、低温で AlGaN 層表面の酸化膜を十分除去する 2 段アニールを行った。結果、

現在のアニールで酸化膜層の除去は十分であることが分かった。前回の低抵抗化はアニー

ル時間の最適過不足であったと思われる・ 5 章 ガンマ線照射による効果 5 章では、ガンマ線照射による低接触抵抗化を試みた。結果、ガンマ線による効果がない

ことが分かった。同時にガンマ線に対して悪化もしておらず、耐性がある。また、前回の

実験で予想された接触抵抗の低下はゲート直下の負電荷により高抵抗かしていたものが元

に戻ったと推定した。

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6.2 結論 本研究の目的はオーミック電極の低接触抵抗化であった。2 章から 5 章にかけ、コンタク

ト抵抗の低下の試みについて論じてきた。結果、従来の Ti/Al 系電極は酸化膜の除去、金属

窒化膜の仕事関数の低さなどから非常に優れていることが分かった。既にこの金属系で 10-6Ωcm2まで実現されておりこの程度のコンタクト抵抗なら十分である。今後しばらくは現

在の TiAl 系電極で十分である。 これ以上の低抵抗下のためにはシリコンの熱拡散や表面処理などのプロセス面での工夫

が必要であろう。 本論でも電極蒸着前の表面処理としてリセスオーミック、窒素プラズマ処理を行った。

しかし、前者は同程度、後者は悪化した。

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謝辞

本研究を行うにあたって終始御指導、助言をしてくださいました徳島大学ソシオテクノ

サイエンス研究部先進物質材料部門 大野泰夫 教授に深く感謝いたします。研究につい

てのアドバイスだけでなく、今後の人生についてのアドバイスや指導をしていただき心よ

り感謝しております。ありがとうございました。 クリーンルームでの装置の使用方法や実験を行うにあたって必要な知識を教えてくださ

った徳島大学ソシオテクノサイエンス研究部先進物質材料部門 敖金平 講師に深く感謝

いたします。 発表会等で有益なご助言とご指導をいただきました徳島大学ソシオテクノサイエンス研

究部先進物質材料部門 酒井士郎 教授に深く感謝したします。 講義等で研究に必要な知識を教えていただきました徳島大学ソシオテクノサイエンス研

究部 大宅薫 教授に深く感謝したします。 発表会等で有益なご助言とご指導をいただきました徳島大学ソシオテクノサイエンス研

究部 富永喜久雄 助教授に深く感謝したします。 常日頃から私の質問に対して丁寧に教えてくださり、有益な議論をしてくださった徳島

大学ソシオテクノサイエンス研究部先進物質材料部門 直井美貴 助教授に深く感謝いた

します。 有益な議論をしてくださり、講義においてもご指導してくださった徳島大学ソシオテク

ノサイエンス研究部先進物質材料部門 西野克志 助教授に深く感謝いたします。 装置運営やクリーンルームの運用などご協力いただきましたソシオテクノサイエンス研

究部総合技術センター 稲岡武 技術職員に深く感謝いたします。 研究の環境を整えていただいたソシオテクノサイエンス研究部総合技術センター 桑原

明伸 氏、山中卓也 氏に深く感謝いたします。 放射線照射実験にご協力頂きました日本原子力研究開発機構 平尾敏雄 氏、日本原子力

研究開発機構 博士課程 小野田忍 氏、日本原子力研究開発機構 大島武 氏に感謝致し

ます。

研究を行う上での心構え、研究の進め方、考え方など研究に関する多大な知識をくださ

った 菊田大悟 氏(2005 年度博士卒、現豊田中研)に深く感謝いたします。 常日頃から私の質問に丁寧に答えていただき、研究ばかりでなく休日の息抜きにも付き

合ってくださった 岡田政也 氏に深く感謝いたします。 研究の指導、アドバイスをいただいた 岩崎聡一郎 氏(2005 年度修士卒、現中外炉工業)、

高木亮平 氏(2005 年度修士卒、現日本パイオニクス)松田潤也 氏(2005 年度修士卒、現

マツダ自動車)、松田義和 氏(2005 年度修士卒、現京セラ)に深く感謝いたします。 クリーンルームでの装置の使用方法、サンプルの測定方法などを教えてくださった 松

浦一暁 氏(2006 年度修士卒、現ユーディナデバイス)に深く感謝いたします。

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研究の指導、アドバイスをいただいた 石尾隆幸 氏(2006 年度修士卒 現 富士通)、

菅良太 氏(2006 年度修士卒 現 新日本無線)、山岡優哉 氏(2006 年度修士卒 現大陽

日酸)に感謝いたします。 同期として、議論し時には励ましあい公私共に支えていただいた M2 伊藤秀起氏、柏

原俊彦氏、亀岡紘氏、上月保典氏(2005 年度学部卒 現 富士通テン)乗松泰治氏に感謝

いたします。 また、同じ研究室の仲間としてミーティング等で議論し、有益な助言をいただいた大

野研究室の皆様に感謝いたします。

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A.付録 A.1 TLM 測定 コンタクト抵抗とシート抵抗

電極と半導体の界面を模式的に表すと右の図 A1-1 のようになる。ここでは簡単 のため電極の幅 W 方向成分は考えず、2次元モデルとする。 このとき電極の長さ方向について微小区間取り出したものを下の図 A1-2 に示す。電極の

長さ方向をxとし、各抵抗成分における電流、電圧を図のように示すとき以下の式が成り

立つ。

)()( xVdxxdIcρ

= -①

)()( xRsdxIxdV = -② ここで、ρcをコンタクト抵抗率、Rs をシート抵抗とする。 式①、②より

)(1)( xVxIdxd

ρ= -③

電極

W[mm]

図 A1-1 電極モデル

Rsdx

ρc/dx V(x)

I(x)

V(x)‐dV

I(x)+dI

図 A1-2 微小区間でのモデ

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)()( xRsIxVdxd

= -④

式④の両辺を微分すると )()(2

2

xIdxdRsxV

dxd

=

これに式③を代入すると )()(2

2

XVRsxVdxd

ρ=

この微分方程式を解くため、ρ

Rsr =2と置くと

rxrx Be+= −AeV(x) -⑤ となる。 ここで、x=0 のとき V(0)=0 より V0=A+B x=∞のとき V(∞)=V0 より B=0 したがって A=V0、B=0 となり、これらを式⑤に代入すると

rxeVXV −= 0)( -⑥

となる。 また、I(x)については式③に式⑥を代入すると

rx

c

eVxIdxd

01)(ρ

=

となり、これを両辺積分すると

rxeVr

xI 01)(cρ

= -⑦

となる。 式⑥,⑦より抵抗 R は

cc

rx

rx

RsRs

reV

r

eVxIxVR

ρρ

ρ

ρ

ρ

==

===

0

0

1)()(

となり、単位は[Ωmm]となる。 この R を一般的にコンタクト抵抗と呼ぶ。

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コンタクト抵抗とシート抵抗にはこのような関係が成り立つ。しかし、TLM 測定で求め

られるシート抵抗は実際には電極の界面ではなく電極間の表面のシート抵抗を測定した値

であり、この式に当てはめることができない場合があるため注意が必要である。 図 A1-3 は TLM 測定用のパターンである。電極を電極間距離を 5 から 25μm まで変え

て蒸着している。2 電極間の抵抗は(A1-1)式のようになる。

WR

WLR

R CS 2+= (A1-1)

ここで R=抵抗(Ω) L=電極間の距離(mm) W=電極幅(mm) Rs=シート抵抗

(Ω/□)Rc=コンタクト抵抗(Ω・mm)とする。

図 A1-3 の各電極間距離において測定した抵抗を電極間距離でプロットすると、式 A1-1を用いて傾きからシート抵抗 Rs、切片からコンタクト抵抗 Rc が算出できる。

電極間距離:L

電極幅:

W=100um 5um 10um 15um 20um 25um

図 A1-3 TLM パターン

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A2.ケルビン測定 ケルビン測定はコンタクト抵抗を測定する方法のひとつで、電極の I-V 特性を直接測定す

ることができる。図 A2-1 はクロスケルビンパターンでケルビン測定用のパターンである。 電極 A、D 間に電流を流し、電極 C で金属側の電位を、電極 B で半導体側の電位を測定

することで図 A2-2 のようにオーミック電極の I-V 特性を直接測定することができる。ま

たコンタクト抵抗率だけでなくVA-VCから金属抵抗、VB-VDからシート抵抗を算出できる。 図A2-1のクロスケルビンパターンの特徴は線幅を小さくすることでコンタクト抵抗が小

さい領域でも測定することができることである。測定の精度は線幅で決まる。 求めた抵抗を式 A2-1 のように面積で規格化することでコンタクト抵抗率[Ωcm2]が算出

できる。

2aR

c=ρ A2-1

なおコンタクト抵抗[Ωmm]に変換するには電極直下のシート抵抗がシート抵抗と等しいと

して式 A2-2 を用いる。

s

cRRc ρ= A2-2

A C,D

Rs

Rc Rc B

Rc

Rs

I

I=0

Vc=Vm VB=Vs

Vs

B

D

C A

電流

Vm VS

MESA 金属

図 A2-1 クロスケルビンパターン

図 A2-2 クロスケルビンパターン

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A3 金属シート抵抗の測定 金属シート抵抗測定用のパターンは 4 端子測定を用いたものである。電極 A,D 間に電流

を流し、それによる電圧効果を電極 B,C を用いて測定する。 線幅の抵抗は A3-1 式で表現できる。抵抗の逆数を線幅 W に対してプロットすることで

A3-2 式傾きから金属シート抵抗ρs と切片からリソグラフィのずれ⊿W を測定できる。

WL

WtLR sρρ =⋅

= A3-1

LWW

LR ss ρρΔ

+=11

A3-2

A D

B C

電流 線幅 W 3~15μm

図 A3-1