五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的...

100
五感で学ぼう! 自然体験プログラム 作成と実施の手引書 平成 22 3 特定非営利活動法人 おぢかアイランドツーリズム協会 九州地方環境事務所

Upload: others

Post on 30-May-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

五感で学ぼう! 自然体験プログラム

作成と実施の手引書

平成 22年 3月

特定非営利活動法人

おぢかアイランドツーリズム協会

九 州 地 方 環 境 事 務 所

請 負 業 務

Page 2: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、
Page 3: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

はじめに この手引き書の目的

自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

私たちに感動や驚きを与え、知的好奇心や探究心を喚起させてくれます。特に、幼少期

から少年期において、自然の中で見たり、聞いたり、触れたりする体験は、向上心や想

像力、環境保全や自然愛護への積極的な態度を育てることに、大きな効果があると言わ

れています。一方では、子ども達の自然体験が不足していることが指摘されており、子

ども達が自然から学ぶために、より多くの機会を創出することが必要とされています。

これらの課題に対し、これまでも行政や民間の自然学校などが「自然体験プログラム」

を実施してきましたが、近年においては、専門的な知識・技術は持たないものの、様々

な目的のもとに、地域が有する自然環境を活用した「自然体験プログラム」をNPOやボ

ランティアグループなどが実施している例も数多く出て来ています。しかし、プログラ

ムを実施する地域やグループが増えてきたことで、「プログラムの質(教育効果、安全面

など)」の確保が課題となっています。

この手引書は、そういった NPO 等が、より質の高い「自然体験プログラム」を開発、

提供していくための「手引き」となるよう、長崎県小値賀町での取り組みを題材として

作成しました。この手引き書が、全国各地で自然体験活動に取り組んでいる(あるいは

取り組もうとしている)皆様にとって、一助となれば幸いです。

この手引き書の構成

この手引書は、以下の項目を前提に構成されています。 1、子ども(小学生~中学生)を対象とした、「自然体験プログラム」であること。 2、地域あるいはグループが、事業として行う「自然体験プログラム」であること。 3、体験を通して、何らかの「学び」を得る為の「自然体験プログラム」であること。

また、手引き書の作成にあたっては、本業務及び小値賀地区の特性から以下の点が主眼

となって作成されたことに留意して下さい。 4、海もしくは海辺での「自然体験プログラム」を題材として作成されたこと。 5、自然、生態系、生物多様性をテーマとした「自然体験プログラム」を題材として

作成されたこと。 以上を前提として、「プログラムの開発」から「実施」までのステップをご紹介していき

ます。もし、あなたの考える「自然体験活動」が上記の前提と合わない場合(体験そのも

のが目的で、大人を対象としている等)は、アレンジしてお使いください。

Page 4: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、
Page 5: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

目次 第一章 自然体験プログラムを作ろう

大事にしたい。あなたの思い 1

自然体験プログラムが出来るまで 1

・プログラム作りのサイクル 1

動機 2

調査 3

・調査の種類 3

・マーケティング調査 4

・フィールド調査 7

整理・検証 11

・整理 11

・検証 14

開発 16

・指導者養成 16

・指導者養成の手段 18

第二章 自然体験事業を実施しよう

自然体験活動の構造 32

企画 33

・主催事業と受託事業 33

・主催事業の企画 34

・受託事業の企画 37

運営 40

・組織 40

・運営スタッフ 42

・運営計画 44

安全管理 46

・安全のすすめ 46

・安全管理の考え方 46

・危険の分類 47

・計画段階から実施までの安全チェック 48

・参加者情報の必要性とその扱い方 50

・指導者がになう安全管理のポイント 52

・事故が起きてしまったら 53

・保険は重要なリスクマネジメント 54

Page 6: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

第三章 農山漁村宿泊体験を行おう 子ども農山漁村交流プロジェクト 58

・子ども農山漁村交流プロジェクトとは 58

民泊事業の体制作り 60

・子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ準備 60

・民泊サービスとは 66

・農林漁家民泊における安全管理のポイント 68

民泊事業の進め方の例 74

・子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ実施 74

参考文献 88

Page 7: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

第一章

自然体験プログラムを作ろう

Page 8: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、
Page 9: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

調査 (PLAN)

開発 (DO)

整理・検証 (CHECK)

背景・動機

大事にしたい。あなたの思い

この手引き書を手に取った皆さんのほとんどが、自然体験活動をやってみようと考えるに

至った「思い」を持っていることと思います。その「思い」とは、地域を活性化させたい、

子ども達の成長に関わりたい、自然環境を守りたい、など様々であることでしょう。 これから、楽しく、安全に学べる自然体験活動を作る為の「手法」をご紹介していきま

す。これらの「手法」があなたの「思い」を形にしていく為の道標となることを願います

が、時々立ち止まり、あなたの「思い」を確認しながら進めていきましょう。

自然体験プログラムが出来るまで

プログラム作りのサイクル

上の図は、ビジネスの基本とも言われる「PDCサイクル」に自然体験プログラム作りを

当てはめた物です。「PDCサイクル」とは、「企画」⇒「実施」⇒「評価」の流れのな

かで得た情報や知恵を、次の企画に生かしていくことが大事だとする考え方ですが、自然

体験プログラムを作ることにおいても、基本としておきたい考え方です。上の図で大事な

ことは、「整理・検証」をして終わりではなく、その結果が次の「調査」に繋がっている

ことです。一応のプログラムが出来たとしても、より質の高い物にしていく作業が重要で

あると言えます。

第一章ではプログラムを作成する「動機」の整理から始まり、「調査」⇒「開発」⇒「整

理・検証」という流れに沿っていくことで、プログラムが作成できるように構成していま

すが、実際に作業していく上では、「開発」の途中で「調査」に戻ってみたり、行う活動

が決まった上で、調査に入ることもあるでしょう。一つ一つのステップの精度を高めてい

くことが大事です。

キーワード

「アクティビティ」 と

「プログラム」 “アクティビティ”とは単一の「活動」をさし、“自然体験アクティビティ”とは、自然のフィールドの中で、自然に触れ、自然学びながら、自然に対してローインパクトに行う、健康的で創造的な活動のことを言います。 アクティビティの組み合わせがプログラムとなります。

Page 10: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

動機 まず、プログラムを作成するまえに、なぜ新しいプログラムを作成するのか、どういった

プログラムを作成すればよいのか、という方向性を整理しましょう。 1)目標の明確化

あなた(またはグループ)が何のために、どのようなプログラムを作りたいかという

「目標」を明確にするため、活動を行う地域が持つ条件や元々そのグループが持って

いる目的などを整理し、必要とされるプログラムの方向性を見つけてみましょう。例

えば、「町の活性化の為にきれいな海を活用してなにかできないか?」「地域の子ども

達に自然環境保護について考えてもらいたい」などです。その上で目標を達成するた

めに解決しなければならない点を整理しましょう。複数人で意見交換しながら整理作

業ができればベターです。複数人で考える時は特にですがなるべく文字に落してみる

ことをお勧めします。視覚化する事で、グループとしての認識を共有することに役立

ちます。

2)行動計画の作成

目標が何か、そして解決すべき課題は何か、について大凡整理できましたら、そのた

めの行動計画を作成しましょう。行動計画の作成には、前述の PDCサイクルが適用できます。PDC サイクルの各ステップにおいて何をすべきか整理し、課題解決のためのワークスケジュールを立てて下さい。

「視覚化」 ここでいう「視覚化」とは、「目的」を出して

いく過程を、全員が確認しながら作業を進めて

いくための工夫のことをいいます。ホワイトボ

ードや付箋紙を用意して、整理しながら、作業

を進めてみてください。 終了後は、右の図のように写真で記録して、メ

ンバーに配ると、事務の手間を軽くできます

Page 11: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

調査 次に、PDFサイクルの第1ステップである「調査」について考えていきましょう。

調査の種類 ここでいう「調査」とは、プログラム作りの概要を洗い出すことを目的としています。

つまり、「どのようなプログラムを」「どこで」開発していけばよいのかを明らかにしてい

く作業のことと考えてください。 1)マーケティング調査

「どのようなアクティビティを」を考えていく上で必要と なる調査です。どんなアクティビティが、実施側と体験する 側にとって必要とされるものであるかを調べましょう。

2)フィールド調査

「どこで」を明らかにしていく為の調査です。自然体験活 動は、森、高原や野原、海や川などの水辺、都市の公園等、 様々な場所(フィールド)で展開されます。フィールドの持 つ資質と環境は、活動自体の充実度を高めていく上で、大変 大きな役割を担うことになります。

キーワード 「マーケティング」 日本マーケティング協会によれば「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」と定義しています。

Page 12: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

マーケティング調査 マーケティング調査を実施するプロセスを次の6段階で示します。まず、「問題と調査目

的の明確化」に始まり、「調査計画の作成」「情報の収集」「情報の分析」を経て、「調査結

果を提出」し最終的に「意思決定」に繋げるステップです。プログラム作成におけるマー

ケティング調査の要点を解説します。

1)問題と調査目的の明確化

調査目的の基本事項については、全体計画作成時に整理と意味付けが成されてい

ますが、今一度何の目的で情報収集するのか、どういった点を達成したいのか、

について整理して下さい。

2)調査計画の作成 調査目的が再確認できれば、次に調査目的を達成するための調査計画作成に移り

ます。マーケティング調査は無料でできるものからコストが必要なもの、短期間

で終わるものから長期間かかるものなど実に様々です。自らの置かれた状況に合

わせて、最適な方法を組み合わせて効率的に目的を達成できる計画を立てましょ

う。

3)情報の収集

調査計画が決まれば、次は実際に情報を収集するプロセスに移りましょう。情報

には調査担当者自身が目的を達成するためにアンケート調査や聞き取り調査など

を行って独自に欲しい情報を収集する1次データと、政府や専門調査機関が既に

調査したデータを活用する2次データがあります。

①1次データ

実際にプログラムを提供している所に出向いて、直接自分で体験たり、電話

やメールを活用して、自然体験活動を実践している団体及び指導者に聞き取り

調査をしてみましょう。また、身近にいる「子ども達の現状をよく知っている

存在」である人々(例えば、学校の先生や PTAの皆さんなど)に直接聞き取りをする ことも一つの方法です。

②2次データ 現在は、行政や全国的なネットワークを持つ 自然体験推進団体などが、子ども達の自然体験 活動に関する大規模な調査データをHP上で公 開しています。これらの情報を活用しましょう。

1 次データは担当者が必要とする情報をピンポイントで得られるメリットがあ

りますが、収集するためにコストや時間がかかるというデメリットもあります。

一方で、2 次データはすぐに入手できて情報によっては無料のものもあるなど、

コスト面でもメリットがありますが、独自の調査目的で収集されたデータではな

いために、調査目的には必ずしも合致しないというデメリットもあります。これ

ら1次データと2次データのメリットとデメリットを十分に把握した上で、最も

効率的に調査・分析が実施できる情報の収集を心掛けなければいけません。

4)情報の分析

適切な情報収集が終われば、続いて収集した情報の分析プロセスに移ります。こ

の情報分析の段階では、収集した情報を客観的に分析し、問題点の特定や改善方

補足 「2次データ」

HP上で自然体験活動に関する情報を公開している主な団体を紹介します。 「文部科学省」 「国立青少年教育振興機構」 「日本キャンプ協会」 「自然体験活動推進協議会」

(CONE)

Page 13: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

法の発見に努めていくことになります。 5)調査結果の提出

情報の調査・分析が終了した段階で、調査担当者はまとめた結果を関係者全員に

伝えなければいけません。報告書では客観的な事実をありのままに伝えることに

より、調査担当者の主観的な情報に他のスタッフが引きずられるという判断ミス

を未然に防ぐことが可能になるでしょう。

6)意思決定

報告された調査結果をもとに、当初の目的を果たすべく意思決定を行い、業務を

各担当者に割り振っていきます。

以上のように「マーケティング調査」について述べてきましたが、次のページに、ワー

クシートを作ってみました。そのシートに小値賀町において開発に取り組んだ、「カヌース

ノーケリング」を題材とした書き込み例を付けていますので、参考にしてください。

Page 14: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

マーケティング調査 ワークフロー

問題と調査目的の明確化

・カヌーPGを実施しているが、より印象深い自然体験ができるようPGをパワーUPさせたい。

・今はスポーツレクリエーション性に偏りがちなPGが多いので、体験を重視するPGを作りたい。

・せっかく豊かな海があるので、水上からだけでなく、海の中を観察できるPGを作りたい。

・見た目の美しさだけでなく、小値賀の海の環境多様性を伝えたい。

調査計画の作成

・インターネット、地元の学校などからの調査

(キーワード:「生物多様性」「環境学習」「海の自然体験」)

・定期的なスタッフによる報告会の開催

・「生物多様性」「環境学習」「海の自然体験」をキーワードとした、シンポジウムや研修会への参加

・先進地視察

・既存プログラムの体験者からのアンケートによる調査

・20年度中を調査期間とする

情報の収集

インターネットから:オーシャンファミリーという団体が「カヌースノーケリング」という活動を行

っている。

地元の声から:海岸清掃、海水浴などはよく行っているが、海の生物や環境保全に対する知識や学び

はあまり進んでいない。

アンケートから:「カヌーのコースが単調に思える」「爽快感はあるが、こぎ続けるだけだと、間延び

感がある」「海の中を見てみたい」「もっと難しいことにチャレンジしてみたい」

先進地視察から:オーシャンファミリー主催の「カヌースノーケリング指導者講習会」に2名が参加。

情報の分析

・対象者のレベルに合わせられる、カヌーコース開発の必要性

・学習効果(ねらい)があるアクティビティの必要性

・カヌースノーケリングは現有の装備が活用できる。但し、新たに購入が必要な装備もある。

調査結果の提出・意思決定

新規開発プログラムとして

・カヌースノーケリング(学習効果の向上、単調さの軽減)

既存のプログラムへの追加として

・ロングコース等・バリエーションコースカヌー(難しいことにチャレンジ)

・小値賀の自然(地形・地質等)観察カヌー(学習効果の向上、サブテーマによる目的の明確化)

Page 15: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

フィールド調査 ○フィールド調査における4つのポイント 1)安全第一

すべての自然体験活動の「楽しさ」は「安全」の上に成り立っています。どんな

に魅力のあるフィールドであろうと、安全の確保が難しい状況であれば、そのフィ

ールドを使用すべきではありません。調査時に常に念頭においておくべきことが、

「安全性はどうか」という視点です。 2)継続性

自然体験活動を行うフィールドは常に変化をしています。時期や時間帯によって、

気温、水温、設備、などフィールドを構成する環境は違ってくるからです。フィー

ルド調査は一度だけで完結する物ではなく、継続してデータを収集する必要があり

ます。 3)データの整理

情報はきとんと整理し、記録しておくことが重要です。積み重ねられたデータは、

組織内で共有したり、外部に提示する資料とするために、画像や映像を使っての視

覚的にも分かりやすい資料作成を心がけましょう。 4)第3者の視点

作ろうとしているプログラムが、すでに他地域や他事業者によって行われている

ものであるならば、その専門家を招いて、チェックしてもらうことをお勧めします。

経験や体験から出てくる視点は、大変貴重な情報となります。また、そのフィール

ドが海であれば地元の漁師さん、山であれば林業に携わっている人など、そのフィ

ールドをよく知っている人達から情報を集めることも有効です。

Page 16: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

○フィールド調査のサイクル 上記の図はフィールド調査における作業を図式化したものです。これから新しく作ろう

としているプログラム、または、すでに実施しているプログラムにおいても、このサイク

ルを活用してみてください。 ○チェックポイント 1)広さ:活動に適した広さがあるか、狭いか 2)深さ:深い、浅い 3)温度:熱い、冷たい 4)気候:暑い、寒い 5)表面・周囲:凹凸がある、障害物がある、物が落ちている 6)風 :強い、風通しが悪い 7)光 :眩しい、明るすぎる、暗すぎる 8)視界:見えにくい、錯覚しやすい、見通しが悪い 9)聞く:聞こえにくい、うるさい 10)緊急避難場所:避難場所への距離、収容人数 11)医療機関:緊急搬送の時間、診療科目の把握

調査の実施 ・実地踏査 ・評価(チェック)

情報の整理 ・各フォーマットへの情報

入力情報

検証 ・情報の共有 ・意見交換

記録

視覚化

運用

Page 17: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

○危険箇所 現地を調査する前に、基本的な危険箇所を押さえておきましょう。山、川、海など自然

体験活動のフィールドになりやすい場所は、これまでの実績からすでに多くの情報が集積

されています。あくまで一般的なものですが、参考になるでしょう。 ここでは、COME(コーン:自然体験活動推進協議会)が作成した「自然体験活動指導

者 安全管理ハンドブック」の第3章にある「海の危険箇所」を引用して解説します。

①流れ

黒潮や親潮などの海流、潮の干満で生じる潮流、地形の影響によるものなど、海の水

には流れがあります。地元の人に流れの危険箇所を聞いておきましょう。また、各地

点ごとにブイを浮かべてみたりして、流れの方向と速さを観察しておきましょう。

②離岸流

海岸から沖に向かって生じる、川のような帯状の速い流れのこと。風や波、海底の地

形など複合的な条件のもと、サンゴ礁のリーフの切れ目、湾の出口、長い砂浜などで

発生します。沖に出ると解消しますが、近くからでは、分かりづらいので、全体を俯

瞰できる場所から観察してみてください。

③一発波

波の大きさは一定ではありません。数回に1回、特大の波が押し寄せることがありま

す。波のリズムと大きさを観察しましょう。

④ダンパー波

海底が急斜面だと、波が一気に大きくくずれます。巻き込まれると海底にたたきつけ

られます。波の様子をよく観察しましょう。

Page 18: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

10

⑤磯

不安定な石、ぬるぬるして滑りやすい足元に注意が必要。カキやフジツボ類による切

り傷にも要注意です。潮位により、表面積が変化しますので、いくつかの時間帯で観

察してみてください。

⑥河口

海と川が出会う河口には複雑で強い流れが発生し、川底に引き込まれる危険がありま

す。また、一般に淡水域は海水域よりも水温が低くなります。

⑦桟橋と防波堤

桟橋には船をつなぐ道具やロープなどがあり、足をとられないよう注意が必要です。

また、転落や波にさらわれる危険もあります。

⑧消波ブロック

波の作用がブロックのすき間にはたらき、落ち込むと吸い込まれて自力での脱出は困

難です。活動を実施する際は、近寄らないようにするのが鉄則です。

⑨航路

船の航路は遊泳禁止区域です。航路に迷い込んでも船からは泳いでいる人は見つけに

くいものです。事前に遊泳エリアを調べておきましょう。また、港湾部での活動は地

元の漁協などと相談したうえで行う必要があります。

⑩落石

風雨や波にさらされて、海辺の崖は崩れやすくなっています。崖には近づかないよう

にすると共に、荒天時にどう変化しているか、観察する必要があります。

⑪釣り人

針や仕掛けに注意。海中では、切れた釣り糸や針に体がからんで拘束される危険性も

あります。頻繁に釣り人がいる場所なのかを調べておきましょう。

⑫魚網

定置網、刺し網の周辺は遊泳禁止です。あらかじめ漁協などで確認しておきましょう。

⑬海岸のゴミ、漂着物

ガラスの破片や空き缶、釣り針などの他、死んでも毒がある危険生物もあります。漂

着物を使っての活動を行う場合は、危険性のあるものがないかチェックしておきまし

ょう。

⑭インショアホール

波打ち際の砂の海底には、波の作用などで穴が掘られていることがあります。踏み込

むと捻挫などのけがをするほか、溺れの原因にもなります。

Page 19: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

11

○整理 チェックシート記入例(カヌースノーケリングおぢかバージョン)*裏面にマップ

フィールド調査チェックシート(表) 基本情報 (対象アクティビティ)カヌースノーケリングおぢかバージョン(対象地)柿の浜海水浴場(調査人員)4名(日時)2009年7月7日 9:00~ (想定規模)小学校5年生以上 20名程度(調査補助)オーシャンファミリー海洋自然体験センター 海野義明氏 調査項目 調査方法 結果・評価 対策

広さ 50Mロープを使い実測 干潮時(大潮):砂浜(幅100M、奥行き15M)待機場所(20

×10M)沖合いまでの距離(120M) 満潮時(大潮):砂浜(無くなる)沖合いまでの距離(140M)

十分な広さではあるが、大潮の満潮時は大人数の場合は避けた方がよい。 干潮時は広くなりすぎるので、旗を立てるなどして、行動可能範囲を定める。

深さ 1Mごとに印をつけたロープに錘をつけ

て実測。3Mごとに沖合いへ移動。 満潮時でも陸地から10Mまでは、水深1M程度。予定行動範囲の最深部で

2~3M。急激に深くなるところはない。 遠浅なので、ダンパー波は起きにくい。ただし湾の出口付近は流されやすいの

で注意

温度 水温計、気温計にて実測。スタッフの感覚。 調査時で水温23度、気温27度 沖合いは特に水が冷たく感じる 夏であっても水温は冷たい。 子どもの場合は長時間のスノーケルは避ける。 2人1組での交代制などで対応。時期、天候をずらしての調査が必要

気候 スタッフの感覚 調査時は初夏であり、晴れていたので暖かい 時期、天候をずらしての調査が必要

表面・周囲 目視確認 待機場所から砂浜までの間に、敷石のゾーンがある。幅2Mで軽い斜面にな

っている。湾の出口付近は連絡船の航路。向かって左側に岩場の存在。若干

の漂流物、流木がある。

事前のセーフティートークで危険の告知を行う。 沖に向かうときは連絡船の時間を考慮する。

風 スタッフの感覚。地元漁師からの聞き込み調査時は非常に穏やか。(風速1M)ただし沖の方では、山側からの吹き降

ろしを感じる。南風だと沖に流されやすく、北風だと湾の出口は時化やすい。

沖でスノーケリングを行う場合は、カヌーを流されないような工夫が必要(ア

ンカーを打つ、船外機に係留するなど) 風速ごとの調査が必要。

光 スタッフの感覚 非常に強い。海岸なので、まともに直射日光を浴びる。

陸上講習時は帽子の着用が必須。 日焼け対策も必要(長袖、長ズボン) 指導する場合の指導者の立ち位置を考慮する。(参加者を太陽と向かい合わせ

ない) タープを設置して、日陰のゾーンを作る。

視界 目視確認 陸上の東屋から湾全体が一望できる。ただし左側の小さな湾部は見えない。 陸上監視者は双眼鏡を装備する。

聞く スタッフによる聞き取り実験 海上に出てからは、5M離れると聞こえづらくなる。スノーケリング中はま

ったく聞こえない。

バディシステム(2人組)の徹底。 耐水無線機による交信が必要。 サインの指導

設備 目視確認。使用許可の確認 トイレ(男女1基ずつ)シャワー(男女2基ずつ)屋外蛇口(1基)東屋(1

基3×4M)設備は町の建設課が管理。水道の開栓は7~9月(それ以外は

申し込みをして、500円(1日)を支払う。

使用後の清掃を徹底する。 一般客優先。 事業で使う時は、役場に一報入れておくほうが無難。

緊急避難場所 周辺公共施設の調査、徒歩による時間調査徒歩10分程度の場所に、地区の公民館(一時的であれば、100人収容可

能)がある。事前に通知しておけば使用可能。海水浴場の東屋とシャワー更

衣室では20人が限界。

地区の行事などもあるので、事業開催時は事前の確認が必要。 海岸では、臨時的にカヌー艇庫を使用すれば、40人は一時待避可能。

医療体制 場所は調査済み(地域に1ヶ所しかない

為)

救急車の乗り入れは、海岸沿いまで可能。病院までの所要時間は約5分(車)

診療科目は「内科」「小児内科」簡易な外科処置。重傷時はドクターヘリに

より佐世保市へ搬送する可能性あり。

事前・直前の健康調査。 スタッフの救急法習得。 海上レスキューの習得。 緊急時連絡体制の徹底・訓練 現場の整理整頓(車両など)

その他 非常に透明度が高く、水質は良い。開放的でロケーションも抜群。湾部の左右に磯場があり、多様な生物を観察できる。湾になっているため、波の影響は出にくい(高い催行率が望める)一般客に迷

惑を掛けない配慮が必要。風向きによって催行できない場合に備えて、違う方角を向いているフィールドをあと2,3箇所押さえておきたい。

Page 20: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

12

フィールド調査チェックシート(裏:フィールドマップ)

広場(陸上講習) 東屋・シャワー棟 敷石エリア(足元悪い)

フィールド全体

約100M

スノーケル

ポイント

スノーケル

ポイント

カヌー練習エリア

港湾 (連絡船) 湾出口まで

約120M

岩礁 (滑りやすい)

Page 21: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

13

⑤磯観察

『赤だき』

⑧飛び込み

『大島港内』

⑥スノーケリング

⑦磯観察

『大島東の磯』

⑯ミニトレッキング

『野崎島』

⑮船森トレッキング

『野崎島 船森地区』

⑬カヌー(湾外)

『野崎島 野崎港』

⑨スノーケリング

⑩磯観察

『野崎島 野首港』

フィールドマップへの書き込み《例》 「小値賀町プログラムマップ」

①カヌー(柿の浜~納島) ②カヌー(湾内)

③スノーケリング

④磯観察

『柿の浜海水浴場』

王位石トレッキング

『野崎島 王位石』

⑫カヌー(港内)

⑬飛び込み

『野崎島 野崎港』

他のプログラム(又はアクティビ

ティ)を加えて、全体表示したも

のです。 全体を視覚化することで、未開発

地域を確認することが出来ます

し、そのまま広報用の資料とする

ことも出来ます。

Page 22: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

14

○検証 外部講師を迎えて、実際に調査したフィールドを使用して、プログラム(アクティビ

ティ)を行い、検証を行った例です。 業務名 カヌー・スノーケリング実地研修

実施日 09年 7月7日~8日 実施場所 小値賀島 柿の浜

参加者 OIT 職員 参加人数 6名 講師(担当

者) オーシャンファミリー海洋自然体験センター 海野義明氏

ねらい

・プロによる「スノーケリング プログラム」を体験し、プログラムのあり方を考える。

・専門家と一緒に、新しいフィールド(柿の浜、野首港)のプログラム適正を考える ・スノーケリングの基礎技術を高める ・新しいフィールドの自然を知る ・カヌー及びスノーケリングのレスキュー技術を学び、安全に関する専門性を高める

考察 (今後に向け

ての課題) *参加者によ

る評価会より

抜粋

●成果

新しいフィールド(柿の浜および野首港)に対する専門家の評価は以下のとおり。

・両エリアともスノーケリングへの特性は高い。

・安全確保及び生物の観察に適している。

・特に柿の浜はカヌースノーケリングPGを実施するのにも最適と考えられる。

職員の印象

・スノーケリングは海中景観を楽しむことができる最適なプログラムであると実感。

・スノーケリングの基礎技術、カヌーレスキュー技術が習得できたが、正確な習得に

は反復訓練を要すると考えられる。

・スノーケリングに必要な道具、装備を確認し、今後実施にあたって準備すべきもの

の想定ができた。

・柿の浜の生息する生き物の一部についての知識を習得したが、生物に関する情報も

共有すべきと考えられる。

●課題、これからの取り組み

①定期的なレスキュー訓練の必要性を感じた。シーズン前だけでなく、シーズン中も

その後も継続して取り組まなければいけない。

②スノーケリング指導の練習をこまめに行う。できているつもりでも実際本番になる

とできないもの。協会内で何度もリハーサルを実施して確認すること

③カヌースノーケリングは優れたプログラムであるが、職員のスキルと考慮すると、

当面スノーケリングプログラムの技術の向上を考えなければならない。

④魚の名前や生態を知ること。スポーツアクティビティからもう一歩踏み出したプロ

グラムであるためには、フィールドの自然をもっと知る必要がある。

海野氏による解説 スノーケリングの基礎を学ぶ 指導員の配置について

Page 23: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

15

その他の留意事項 ○知っておきたい関係法令(要約) 1)自然公園法・自然環境保全法

すぐれた自然の風景地は国立公園、国定公園、都道府県立自然公園区域として、

動植物・鉱物の採取、指定場所以外での活動、ペットの持ち込みなどが規制されて

いる区域がある。特に国立公園の特別保護地区では落ち葉であっても採取は原則禁

止されている。 2)電波法

自然体験活動の安全管理のため、業務用の無線機を導入する場合は、無線局免許

申請、業務用簡易無線届出が必要となる。 3)森林法

保安林以外の森林であっても、これらの森林において開発行為を行うにあたって

は、森林の有する役割を阻害しないように適正に行うことが必要であり、林地開発

許可制度は、このような観点から、これらの森林の土地について、その適正な利用

を確保することを目的としている。 4)その他

港湾法、海岸法、河川法、都市公園法、都道府県ごとの条例など 上記のように、自然体験活動において使われやすい場所は、様々な法令によって、保

護・規制されています。法令の遵守はとても大事なことなので、事業を行う前にチェッ

クしておいた方が良いでしょう。 ○地域への配慮

地域によっては(特に田舎ではそうですが)活動場所が誰かの所有地であったり、地

域特有のルールで管理されている場合があります。地域住民の方々に迷惑を掛けないよ

うに、その地域を管轄している役所に問い合わせをして、その地区の会長さんなどには、

挨拶をしておくなどの配慮をしておくようにしましょう。地域の方々から理解され、愛

されるような事業をめざしましょう。 ○消防署、警察署、その他の団体への通知

海であれば「漁業組合」、森林であれば「森林組合」などに、事業が可能かの問い合わ

せをしておきましょう。このような団体は、それぞれの場所について多くの情報を持っ

ていますので、相談しておくことをお勧めします。また、事業実施の際はその地区を管

轄している消防署や警察署にも一報入れておきましょう。

Page 24: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

16

人がすき 自然がすき

開発 これまでの「調査」によって、プログラムの概要を作成してきました。ここからは、実際

にプログラムの作成に取りかかりましょう、まず、そのプログラムを実施する際に必要不可

欠である、「人(指導者)」について考えていきましょう。 指導者養成 どんなに「すばらしい構想で」「適した場所」があっても実際にそれを指導する「人」が

いなければ、事業を進めていくことは出来ません。「指導者育成」はそのプログラムの持つ

ポテンシャルを左右する、とても重要な課題です。 ○自然体験活動指導者に求められる資質

自然体験指導者には「人がすき」「自然がすき」という資質が求められますが、その土

台となるのは豊かな活動経験です。 ・リーダー ・冷静さ ・協調性 ・判断力 ・包容力 ・知識、技術 etc etc

豊かな経験

キーワード 「スキル」 技術・知識のこと

キーワード 「カウンセリング」 一般的には「個人の持つ問

題や悩みを解決する為の

専門的な助言」のこと ここでは活動の目的が最

大限に達成されるよう参

加者を導き、人間関係の維

持・管理を行うことといえ

ます。

Page 25: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

17

○指導者に求められる2つのスキル 1)ハードスキル

当たり前のことですが、そのプログラムに関する確かな知識と確かな実技力が無けれ

ば、指導者の立場に立つことは出来ません。指導者にとって、このスキルが全てでは

ありませんが、指導するにあたって、しっかりとした技術的裏づけを持っていること

が大切です。 また救急法などのレスキュースキルを身につけておくことは、指導者として義務であ

るとも言えます。一朝一夕に身につくものではありませんが、習得への努力と現場で

の場数を踏むことが大事です。 2)ソフトスキル

ハードスキルに対して、参加者個人の成長を支援したり、グルー プの人間関係を維持する為の知識や技術のことです。カウンセリン グやコミュニケーションスキルなどがあります。 非日常の体験をすることの多い、自然体験活動において、参加者 は、様々な心の動きを見せます。よく観察し、適切なアドバイスや 気配りをして、参加者にとってよりよい環境で活動を行えるように 配慮することが大事です。

キーワード 「コミュニケーションスキル」 コミュニケーションを行

う上で、態度として身に着

けておく技法のこと。 これまで自然に行ってい

るものもあると思います

が、技法として意識するこ

とで、自分のくせに気づ

き、望ましいコミュニケー

ションが行えることにな

るでしょう

Page 26: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

18

指導者養成の手段 これから、指導者を養成するための手段を紹介していきます。様々な手段がありますが、

まずは自分(グループ)で①現状はどうか(これまでの経験、実績があるか)②まず何を学

ぶべきか③どんな方法が考えられるかなどを考えてみましょう。 講習会などに参加することは、新たな知識や技術、いい意味での刺激、ネットワークの構

築など資質向上の為には有効な手段ですが、講習会などで学んだことは、「生かす」ことが

大事ですので、講習会に行くことが目的にならないように気をつけてください。 ○講習会・研修会などへの参加

現在、全国各地において、指導者養成の講習会や研修会が盛んに行われています。そ

の内容・目的は様々ですが、大きく分けて次のように分類できます。 1)スキルを習得するもの (指導法、野外技術、救急法、レスキュー法 等) 2)情報収集が主なもの (各種ゲームやアクティビティ体験、リスクマネジメント 等) 3)事業担当者の養成 (マネジメント、人材育成、組織運営、広報 等) 4)資格の取得 (日本キャンプ協会、自然体験活動推進協議会(CONE)等)

○所属する組織内での研修

外部の講習会や研修会は一般的に概念化されたものが多いので、ここで学んだことを

自分達のフィールドや人材の特性に合わせて、落とし込む作業が必要です。なによりも

大事にすべきことは、常日頃からトレーニングをすることですので、組織の中で情報を

共有し、認識を統一するように努めましょう。ポイントは以下の通りです。 1)組織内ワークショップを開催する。

外部で講習を受けたスタッフが、その内容を整理して、他のスタッフに対してワ

ークショップを開催します。学んだことを人に伝えることによって、講習を受けた

スタッフもその学びが深まりますし、情報の共有化にも役立ちます。資料を回覧す

るだけでなく、体験を分かち合う方が有効です。 2)フィードバック

発表者や実践者が行った内容に対して、感想や課題点などを返してあげることを

「フィードバック」といいます。フィードバックを求める姿勢と前向きな意見を返

すことが大切です。批判や中傷にならないように注意しましょう。 3)講師を招聘する

講師を招聘して、地元で講習や研修を行うことも有効です。 メリットとしては以下の点が挙げられます。 ・専門的な技術や知識に一度に多人数が触れられる。 ・実際に使うフィールドで行える。 ・専門家とのつながりが出来、講習後も相談できる。

謝金・旅費などの経費は掛かりますが、何人も外部に行くよりは安く済みます。

次ページから、小値賀町で行った、様々な講習会・研修会をピックアップして紹介しま

すので、参考にしてみてください。

キーワード 「資格の取得」 資格を盛っておけば大丈

夫というわけではありま

せんが、取得することによ

って自覚や自信もついて

きます。 また、自然体験活動を推進

している各団体に所属す

ることによって、参加者に

安心を与えると共に、役立

つ情報を入手できるとい

うメリットもあります。

参考 「講師依頼」

現在は、自然体験活動の分野に

おいて講師依頼を請け負ってい

る団体もたくさんあります。イ

ンターネットや雑誌などから情

報を収集してみましょう。

Page 27: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

19

○指導者養成研修の実践

例① 外部講習への参加

業務名 NPO法人 オーシャンファミリー海洋自然体験センター主催

『カヌースノーケリング指導者研修』への参加

実施日 09年6月17日~19日 実施場所 神奈川県三浦郡葉山町

参加者 職員:前田、柴田 参加人数 2名

講師 NPO法人 オーシャンファミリー海洋自然体験センター 海野氏

業務のねらい

・当地域と同じく、海をメインフィールドとする他の事業者の視察研修

・当地域で検討中の「カヌースノーケリングプログラム」の概要について視察

する

・カヌー及びスノーケリングのレスキュー技術を学び、安全に関する専門性を

高める

業務の概要

[6/17]

AM:カヌースノーケリングについてのブリーフィング

PM:カヌーイングの安全対策および実習

スノーケリングの実習および子ども向け指導法

カヌースノーケリング実習

葉山のフィールド、植生の紹介

[6/18]

AM:安全管理の基礎(海辺の危機対策一般/フィールドの下見)

カヌーイングの安全対策および実習(安全指導/事故対策/曳航)

PM:レスキューの講習および実習(レスキューチューブを用いたレスキュー

の流れ)

[6/19]

AM:スノーケリングの安全対策講習および実習(安全指導/事故対策

PM:カヌーからのレスキュー実習(溺者のカヌーへの引上げ/陸への搬送)

カヌースノーケリングの安全対策講習および実習(実際と複合時の安全

対策)

考察 (今後に向けての課題)

■組み合わせることで増す「楽しさ」と「リスク」

カヌーとスノーケリングを複合したカヌースノーケリングの特徴として、

①同じ場所でも水上と水中を活用することで、フィールドの幅が広がり、視点

の異なる体験をすることで、飽くことがないため、参加者の楽しさが増す。

②不安定な海上において、異なる活動が流動的に動く為、事故などのリスクも

増す。

■指導者に求められるもの

①海の理解(気象情報、フィールド状況の把握、先々の判断力、緊急時の対応)、

②参加者の理解(人数の確認、技量の把握、体調の監理)

③指導者の理解(自己の体調管理、自分の技術の客観的な把握)

活動自体が持つ「楽しさ」を最大限に発揮する為に、以上の 3点を踏まえて、

「安全に、楽しく」催行できる人数を考えておく必要がある。

■安全性を確保するために

今回の講習で学んだレスキューチューブとカヌーを使用したレスキューでは指

導者およびインストラクターに高度な技術が必要になるので、講習受講後も日

頃よりレスキュー鍛錬を反復することが必要である。またレスキューチューブ

等安全管理に使用する備品は、たいへん有効であり、その必要性を大いに感じ

た。

カヌーの実地講習 レスキューチューブ講習 カヌースノーケリング講習

Page 28: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

20

例② 講師を招いての組織内研修

活動名 カヌースノーケリング

実施日 09年 09月 21日 実施場所 小値賀柳地区柿の浜海水浴場

参加者 当協会職員および

NPO法人オーシャンファミリー

海野義明氏

参加人数 当協会職員6名+海野氏

ねらい

今年度のプログラム開発の目玉として取り組んできた柿の浜海水浴場におけるカヌース

ノーケリングプログラムの開発の取組みの総まとめとして、開発にご協力いただいた、

オーシャンファミリーの海野氏をカヌースノーケリングプログラム(試行)の参加者と

して迎え、実際にプログラムを実施した上で意見を伺った。主な流れは以下の通り、

今回の研修におけるチェックポイントは主に以下のように定める。

①陸上(砂浜)でのカヌーおよびスノーケリングのインストラクション法

②海上に出てからのカヌーおよびスノーケリングのインストラクション法

③安全管理における措置

④教育効果への配慮

スケジュール

8:45 現地集合(柿の浜)

9:00 プログラムスタート

10:00 カヌー出航、湾最外部の瀬へ

10:30 湾最外部の瀬にてスノーケリング

11:00 湾外の隣の砂浜で休憩

11:30 砂浜周辺の磯でスノーケリング(2本目)

12:00 砂浜をカヌー出航、帰着へ

12:30 終了、解散

考察

(プログラムを終えてのふりかえり)

安全管理、プログラムの進め方については、想定通りに進んだ。しかし、今回の試行

は、ある程度のスキルを持った大人の参加者を対象として実施したが、これを子供、ま

たは完全な初心者を対象として実施する場合、以下のような課題が想定される。特に、

「環境学習を補助する資料」の作成に関しては、当該プログラムの教育効果を高める上

で今後の重要な課題となる(海野氏コメント参照)。

■プログラム実施時間と参加者のコンディション管理

■スノーケリングセット他、船上に持ち込む道具の管理

■行動を限定する範囲の再設定

■環境学習を補助する資料の作成

(海野氏のコメント)

このフィールド(柿の浜)のカヌースノーケリングに対するプログラム適性は疑う余地もない。美しい景色と多様な生物が観察できるこのプログラムは、高い環境学習効果を生むことができる。今回の試行では、インストラクション、安全管理も初めてのプログラム実施としては上々だったと思われる。 湾内は安全であるが、湾をある程度出たところから潮の流れが速いことが考えられる。今後、経験を積むことで、湾外での活動に対する安全管理を強化してもらいたい。また、せっかく多様な生物が観察できるのだから、プログラムに活かせるような生物に関する知識を深める取り組みを今後の課題としてもらいたい

プログラム参加者 スノーケリング装備でカヌーへ カヌーからのスノーケリング

Page 29: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

21

整理・検証 整理 ここでいう「整理」とは、「①必要な情報を②客観的に分かりやすく③資料に落とし込む

こと」を指します。 これまで「調査」や「開発」の過程で得られた情報や考察を総合的な資料として落とし込

んでいきます。資料の作成は労力と時間を必要としますが、これまでの成果を客観的に見る

ことができ、新たな課題への指標となります。 ○資料作成のポイント 1)情報の区別

一つの資料にあまりたくさんの情報を載せてしまうと、見づらくなってしまうの

と同時に一つ一つの情報が埋もれてしまいます。「何を知る為の資料なのか」を明確

にして目的別に整理しましょう。 2)見やすさが大事

画像や表を使用して、見やすい資料となるように心がけましょう。これらの資料

は、外部に提示するときにも役に立ちます。 ○資料の種類 1)フィールドマップ

活動場所を視覚的に捉えることに役立ちます。 2)学習効果一覧

活動を「ねらい」別に表示したものです。活動をプログラム化し ていく過程において、目的に沿った活動を選択する際に役立ちます。 特に学校や「教育」を目的とする団体に対しては、この資料を提示 することで、プログラム化をスムーズにしていける効果があります。

3)課題整理

活動ごとに、「対象」「実施人数」「所要時間」「安全上の留意点」 などをまとめた資料です。各項目は実施して検証していく毎に、記 録を更新していく必要があります。

参照 フィールドマップ

第1章 P12・13

参照 学習効果一覧

第1章 P23

参照 課題整理一覧

第1章 P22

Page 30: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

22

課題整理一覧表(例)

フィール

コース

ポイント

マップ番

カテゴリ

対象

参加

可能数

(最大)

必要

講師数

(最大時)

所要時間

(min) 実施適期 体験・学習ポイント 安全等留意事項

フィールド

プログラム

の相性

スノー

ケリング

小学生

以上 20 3 90 夏

小値賀本島のスノーケリングに比べ、より多種多様な貝類を

観察することができる。野崎島の非常に透明度の高い海を体

感できる。

アウトドアアクティビティにおけるルール遵守の大切さを意

識付けすることができる。

レスキュースキルに長けた講師1名を必須とする応急対応その

他ルールについて参加者への事前説明を行い、スノーケリング

時は、都度、参加者全員の状況確認を行う。湾が閉じてない為、

風向きにより波が立ちやすく注意を要する。

野首港 野首港

北側磯

磯観察

小学生

以上 20 3 90 春~秋

生物相が幅広く多種多様な海岸生物が観察できる。

五島列島ならではの切り立った崖など地形観察できる。

アウトドアアクティビティにおけるルール遵守の大切さを意

識付けすることができる。

参加者全員アクアシューズを履くことを必須とする。

事前に『海の安全講座』によるセーフティートークに加え、危

険生物、危険漂流物など、小値賀の海ならではの危険を伝える。

湾内

野首

海水浴場

カヌー

小学生

以上 20

2

船外機

1隻

120 春~秋

初心者でも比較的安全で容易にカヌーを体験できる。

船上から湾内の生物を観察できる

船上から柿の浜の美しい景観を眺めることができる。

アウトドアアクティビティにおけるルール遵守の大切さを意

識付けすることができる。

レスキュースキルに長けた講師1名を必須とする。また、講師

とは別に船外機1隻を必須とする。

応急対応その他ルールについて参加者への事前説明を行う

カヌー

小学生

以上 20

2

船外機

1隻

90 春~秋

初心者でも比較的安全で容易にカヌーを体験できる。

船上から湾内の生物を観察できる

船上から柿の浜の美しい景観を眺めることができる。

アウトドアアクティビティにおけるルール遵守の大切さを意

識付けすることができる。

レスキュースキルに長けた講師1名を必須とする。また、講師

とは別に船外機1隻を必須とする。

応急対応その他ルールについて参加者への事前説明を行う

野崎港

周辺

湾内

飛込み

小学生

以上 30 2 90 夏

勇気を育み、海への恐怖心を払しょくできる。

海への親しみが深まる。

講師の水中待機を必須とする。

参加者全員アクアシューズを履くことを必須とする。

プログラム開始前にライフジャケットの確認

なるべく前方遠くに足から飛びこむよう指導する。

自然

学塾村

王位石

トレッキ

ング

小学生

以上 20 3 240 秋~春

ルート上から小値賀本島および属島・宇久島が望見でき、多

島海景観や火山活動に関する解説ができる。

王位石といった特異な地形の観察ができる。

ルート脇にある樹木等の植生について観察ができる。

行程がやや長いため王位石に到達したときの達成感と爽快感

が味わえる。

沖の神島神社と地の神島神社を通じて小値賀島と野崎島の関

係性など当地の歴史を学べる

慎重な天候判断を要する

催行規模にあった講師数の準備を必須とする

レスキュースキルに長けた講師1名を必須とする

行程スケジュール、応急対応、その他ルールについて参加者へ

の事前説明を行う

必要に応じて熱中症対策を講ずる

自然

学塾村

舟森

トレッキ

ング

小学生

以上 20 3 240 秋~春

ルート脇にある樹木等の植生について観察ができる。

津和崎瀬戸の早潮を観察し、海域現象の学習ができる。

行程がやや長いため舟森に到達したときの達成感と爽快感が味わ

える。

舟森地区の集落跡と石積みを通して、この地区における隠れ

キリシタンの信仰の歴史と人間の想いの強さを学べる

慎重な天候判断を要する

催行規模にあった講師数の準備を必須とする

レスキュースキルに長けた講師1名を必須とする

行程スケジュール、応急対応、その他ルールについて参加者へ

の事前説明を行う

必要に応じて熱中症対策を講ずる

野崎島

各地

野崎港

周辺

トレッ

キング

小学生

以上 30 3 150 通年

野崎の集落や教会の歴史、シカをはじめとする動物、砂丘上

に形成される植物群落に関して観察しながら学習できる。

必要に応じて熱中症対策を講ずる。

シカに対する接し方と集落跡へ入らないように注意する ◎

Page 31: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

23

アクティビティ別 学習効果一覧表

生物多様性・共生・自然学習 自発・協働・社会学習

アクティビティ フィールド コース

いきもの 人と自然 地球 ポイント計 計画・企画・立案

事前学習

チーム

ワーク 地域学習 ポイント計

柿の浜~納島 1 - 3 4 2 2 - 4

小値賀本島

柿の浜

湾内 1 - 2 3 1 1 - 2

野崎港~

野首海岸 1 2 3 6 1 2 1 4

カヌー

野崎島

湾内 1 - 2 3 - 1 - 1

小値賀本島 小値賀本島

柿の浜 1 1 1 3 1 1 - 3

大島 大島

東の磯 2 1 1 4 1 1 - 3 スノーケリング

野崎島 野首港内 2 - 1 3 1 1 - 3

野崎島 野崎港内 - 1 1 2 - 1 - 1

飛込み

大島 大島港内 - 1 1 2 - - 1 1

小値賀本島

柿の浜 1 1 - 2 - - 1 1

小値賀本島

小値賀本島

赤だき下 3 1 1 5 1 - 2 3

大島 東の磯 2 1 - 3 1 - - 1

磯観察

野崎島 野崎島

野首港 2 1 1 4 1 - - 1

王位石 1 2 3 6 2 2 3 7

舟森 1 3 1 5 2 2 3 7 トレッキング 野崎島

野崎港周辺

ミニトレッキング 1 2 1 4 1 1 2 4

Page 32: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

24

検証 いよいよ、大詰めの段階です。ここからは、作ってきたアクティビティを実施して、その

成果を検証していく過程を解説します。

○検証の流れ ・アンケートの作成 ・ログブックの作成

・アンケート(記入) ・ふりかえりの実施

・評価会 ・ヒヤリハット報告書 ・活動報告書

○検証のポイント 1)アンケートの作成

「ニーズ調査」の項で述べたコンシューマーリサーチ(消費 者調査)を得る為に、アンケートを作成しましょう。子ども に書いてもらう場合は、文章による回答が期待しにくいので、 点数方式にしたりして、客観的な資料になりやすいアンケー ト作成を心がけましょう。

2)アクティビティ・ログブックの作成

指導上の留意点などをまとめた「ログブック」を作成してみ ましょう。基本的なタイムスケジュールや参加者に伝えるべ き内容を洗い出しておくと良いでしょう。チェック方式にし ておくと、事後の評価に役立ちます。ただし、現場の状況は 常に変化するので、あまり進行に囚われないように注意して ください。

事前

実施

事後

キーワード 「ログブック」

辞書では「航空日誌」または「航海日

誌」とあります。 ここでは、指導内容を記録するものと

して、使用しています。

参照 アンケート様式例

第1章 P27

参照 アクティビティログブック様式例 第1章 P28

Page 33: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

25

3)ふりかえりの実施 「ふりかえり」とは活動後に参加者に対して行う、自己評価の手法です。聞き取

りが中心の「ヒアリング方式」や絵を描いたり文章にしてみたりする「表現方式」

などのやり方があります。いずれにしても、強制ではなく、自発的な意見が出るよ

うに配慮しましょう。そこで出た内容を記録して、検証の材料として反映しましょ

う。

4)評価会

スタッフによる「ふりかえり」のことです。アンケートやふりかえりで得た情報

をもとに、評価を行い、次回に向けての課題を明らかにします。明らかになった課

題を次回以降に「生かす」事が大事ですので、次に繋がる具体的な改善点が出るよ

う留意しましょう。

5)ヒヤリハット報告書

聞きなれない言葉かもしれませんが、 活動中において、事故にはならなかった ものの「ヒヤリ」としたり「はっ!」と した様な事項を記録した報告書です。 ハインリッヒの法則にもありますが、

重大な事故が起こる前には、それに至る 複線があります。この報告書によって、 安全に関する課題を洗い出し、解決策を 見つけ、共有化することで、事故の芽を 無くすことに努めましょう。

6)活動報告書の作成

評価会終了後、速やかに活動報告書を作成しましょう。その活動がどのようにし

て行われ、どのような成果が得られたかを組織内で共有化する為のものです。様式

は様々ですが、以下のポイントを押さえておきましょう。 ・概要(対象者、人数、日時、スケジュールなど) ・ねらい(何を目標としたか) ・成果(何が達成できたか) ・課題(次回に向けての課題は何か)

キーワード 「ハインリッヒの法則」

1:29:300の法則 アメリカのハインリッヒが導き出した統計上の法則で、「重傷」

以上の災害が1件あったら、その背後には、29件の「軽傷」

を伴う災害が起こり、300件もの「ヒヤリ・ハット」した(危

うく大惨事になる)傷害のない災害が起きていたことになると

いう法則。

参照 ヒヤリハット報告書様式例

第1章 P29

Page 34: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

26

7)次回に向けての活用 検証を行った結果は、次に同種の活動を行う前の事前打ち合 わせにおいて、再確認をしましょう。しっかりとした検証も、 次回に生かされなければ意味を成しません。 1)~6)で説明した各資料は、次回において再確認する為 に、有効な物です。

この章の始めに示した、「PDCサイクル」にもあるように、検証した内容は、次の「調

査」に繋げていくことが大事であり、その流れの中で、アクティビティの質を高めていくこ

とが大切です。

参照 活動報告 ・検証シート様式例 第1章 30・31

Page 35: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

27

コメント

アンケート様式例―子ども対象

アンケート

月 日( )

なまえ

他のお友達に見せたりすることは、絶対にないので、素直に思ったことを書いてみてね。

○健康チェック

まったく問題ない・・◎ 普通・・○ すこし問題あり・・△ とても問題あり・・×

昨日の睡眠・・ 食欲・・ 排便・・

本日の体調(吐き気がする、頭が痛いなど)・・

○一日の活動を終えて

1.○○○はどうでしたか?(数字に○をつけてね)

よい ふつう よくない

5 4 3 2 1

その理由は?

2.○○○はどうでしたか?(数字に○をつけてね)

よい ふつう よくない

5 4 3 2 1

その理由は?

3.今日一日の感想を自由に書いてください。(スタッフへのお願いなど)

Page 36: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

28

人数

インストラクター数 名

チェック

時間 チェック

0:00

0:20

0:25

0:45

1:00

チェック

にこやかに、元気良く楽しいイメージを持ってもらえるように

シーカヤック

3.パドルの向き

4.操作の仕方(前進、右折、左折、後進、ブレーキ)

*あまりしつこくやらない。水上に出て、体で覚えることが大事

1.湾内で行う。

5.集合サインの確認

*1艇づつ

2.乗り方(お尻から)

3.降り方(足を着いてから)

*怪我をしやすいポイント。全員に周知徹底させる。

1.乗降場所の確認

*必要に応じて、集合させ指導する。

2.手の位置の調整

1.移動の際の注意(縦に持って移動)

6.出発

2.指導者は全体を見渡せる、ポジションへ。

4.準備物(救急セット、レスキューロープ、トランシーバー、磯靴)

指導マニュアル

3.バックルを装着する。(胴回り、腰回り、股)

4.2人組みになり、装着具合をチェック

1.体の大きさに合っているか

2.セーフティートーク

「ねらい」の説明⇒目的の共有

1.挨拶、自己紹介

1.湾内で集合する。

2.先頭と最後尾を確認する。

*大人数の場合は、順番を決めて一列縦隊にする。

*参加者のレベルや天候によって、コースを調整する

事後チェック

3.ライフジャケット

9.帰着

項目

4.後片付けの指示(カヌー、パドル、ライフジャケット)

*1艇づつ

3.装備の点検(破損箇所など)

1.事後体操の実施

2.参加者の体調チェック

7.フリー練習

8.湾外へ

5.乗り降り

1.予定終了時刻の説明及び活動の概略説明

4.参加同意書についての説明、署名

2.危険箇所の告知及び周知

3.参加者の体調チェック

5.準備体操の実施

6.緊急時の対処法についての告知および周知

体験者名(団体名)

日時 H   年  月  日  曜日     :    ~    :活動場所

天候 風(風向、風速など)

波高 記録者

事前チェック

1.装備の安全確認(参加者の装備、IT協会の装備)                  

2.指導者の役割分担                                       

3.フィールドチェック(危険箇所の確認)                            

項目

内容 ポイント

4.パドル

2.ジッパーを閉める

アクティビティログブック様式例―(カヌー)

Page 37: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

29

ヒヤリハット報告書様式例

発生日時

月 日 曜日 時 分

記録者

発生場所

傷病者 無・有( )

活動内容

傷病者氏名

発生状況

□ 何が起こりましたか?

□ どのようにして起こりましたか?

対応状況

□ どのような対応をしましたか?

□ その他

今後の対応等

Page 38: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

30

報告様式例―おぢかんもんどり

活動報告・検証シート 報告日 月 日 報告者

活動名 おぢかんもんどりPG

実施日 09年 9月20~21日 実施場所 小値賀島 赤だき周辺

参加者 IT職員、 当協会主催事業参加者

参加人数 職員3名、 参加者(子ども)23名

検証のねらい

主なチェックポイント

①安全面における配慮は十分か

②時間の設定は適当か

③学習効果の充実度はどうか

④プログラムの楽しさはどうか

業務の概要 別紙『おぢかんもんどりアクティビティーマニュアル(仮)』参照

考察 (今後に向

け て の 課

題) *参加者を

対象とした

アンケート

等による

①安全面

・磯場は子どもたちの集中力を削ぐものだらけ、子どもたちにもっと集中して話を聞

いてもらう工夫を。

・子どもたちの服装・装備に対してアナウンスをしっかりと。特に足元。

・始めに『泳いではいけない』ことを明言すること。

②時間

・集合場所から実施場所までの距離が結構あるので(潮の満ち具合にもよるが)移動

時間を踏まえた時間設定が必要。

・みんな割りと簡単に仕掛けを作れた。仕掛けを作る工程はよいと思う

・全部の仕掛けを回収できたものの、数グループは時間がかかった。見つけやすくす

る為の工夫を

③学習効果

・みんな海の漂流物(ゴミ)の存在を知ることができた。それにより環境問題への意

識付けができた。

・家に帰っても近所の海や川でやってみようと多少は思ってくれた。

・観察が浅い。より深い観察と考察を得るためにルーペや箱メガネ等の小道具をもっ

と効果的に使う工夫を。

・もんどりの結果(成果)を参加者全員でシェアする工夫が必要。

・もっと多様な生き物を獲りたい。エサを数種類用意するなどの工夫が必要。

④楽しさ

Page 39: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

31

・楽しんでいる様子が伺えた。

・ただの観察ではなく「作る」という要素があることが楽しさに繋がっている。

・なにが採れているか分からないドキドキ感がある。

・安全管理に集中するのは分かるが、スタッフの子ども達に対する働きかけが少ない

のではないか。

⑤その他

・子どもたちに備品の管理をちゃんとやらせる工夫を。

漂流物を利用したおぢかんもんどり もんどり設置風景 もんどり回収風景

Page 40: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

第二章

自然体験事業を実施しよう

Page 41: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、
Page 42: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

32

事業の

「ねらい」

プログラムの

「ねらい」

プログラムの

「ねらい」

プログラムの

「ねらい」

アクティビティの

選択

アクティビティの

選択

プログラム

プログラムの構造

用語の整理 アクティビティ:プログラムの中の一つ一つを構成する活動。 プ ロ グ ラ ム:アクティビティを組み合わせることで、「ねらい」に向けた「流れ」を持

たせた活動。

プログラムの構造

事業・プログラムの構成

図-2は「事業・プログラムの構成」を図式化したものですが、プログラムの構成を

考えていく上で、忘れがちになるのが、「何の為(目標)に、何をするのか(手段)」と

いう関係です。 事業の「ねらい」は、プログラムの「ねらい」と同一ではなくても、各プログラムの

基底には事業の「ねらい」が根付いている必要があります。事業の「ねらい」から生じ

る各プログラムの「ねらい」を最適なアクティビティを選択することにより達成するこ

とが、事業において高い成果を生み出すことに繋がります。

キーワード 「プログラム」

事業全体のことをプログ

ラムと呼んだり、アクティ

ビティのことをショート

プログラムと言い換えた

りすることもありますが、

本手引き書では左記のよ

うに定義します。

アクティビティ

アクティビティ アクティビティ

Page 43: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

33

企画

企画とは、主催者の思いを紙の上での具体的なカタチ(企画書) にする作業のことを言います。 企画の段階で企画書を作成することは、事業計画に抜け落ちがな いか確認することに役立つことだけでなく、団体内部の構成員の意 思統一、合意形成や協力団体、参加者などの外部の人の理解を得る ことにも繋がります。そのため、事業の規模に関わらず、しっかり とした企画書を作成することをお勧めします。 ここでは、企画書作りのパターンを主催事業と受託事業に分けて、 解説していきます。皆さんが行おうとしている事業の特性に合わせ て、参考にしてください。

主催事業と受託事業

○主催事業 ここでの主催事業とは「広く参加者を募集する事業」として定義します。「思い」や「ね

らい」をこちら側で設定することが出来、その団体が持っているメッセージを自由に表

現することができる良さがありますが、広報や集客、オリジナリティのあるプログラム

が必要とされます。

○受託事業 外部からの依頼に基づき行われる事業のことです。あらかじめ参加する人数や予算な

どが決められている場合が多く、集客をする手間はありませんが、相手(例えば学校)

の「思い」や「ねらい」を丁寧に拾い上げて、具体化していく作業が大切です。 また、20年度からスタートした「子ども農山漁村交流プロジェクト」をはじめとし

て小中学校における自然体験活動への期待も大きくなって来ています。このような、実

施目的がはっきりしている学校や団体に対応していくために、しっかりと情報を整理す

ることが大切です。

キーワード

「企画」 万が一事故が起きた場合

にも、企画書を作成してい

たかどうかを問われるこ

とがあります。

Page 44: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

34

参照 「組織編制」

第2章 運営―組織 40・41ページ

主催事業の企画 ○主催事業のフロー

6W2Hの整理 (別頁「企画シート」を使用)

役割分担ミーティングの開催 (担当者の決定・指示系統の確認)

事業内容ミーティングの開催 シミュレーション 参加者の募集

各プログラムの催行 スケジュール等確認ミーティング 保護者等への状況報告

評価・ふりかえりミーティング 報告書作成

上記のフローチャートは、主催事業を開催するにあたっての基本的な流れを示したもので

す。 企画からスタートしているフローになっていますが、場合によっては、すでに組織がある

状態で、企画に入ることもありますので、それぞれの条件に合わせてください。

企画

組織編成

運営(準備)

運営(実施)

評価

参照

「評価」 第1章 整理・検証―検証 24~26ページ

参照 「運営(準備)」 「運営(実施)」

第2章 運営および安全 40~57ページ

Page 45: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

35

○企画の6W2H 下に記したものは、事業企画をしていく上で、基本的な要素となるものです。様々な

企画に適用できるものですが、特に主催事業において、チラシやポスターを作成する上

での構成要素となるため、企画の初期段階において、これらの要素を最低限確定してお

けば、早いタイミングでの広報に役立ちます。 6W

Why 何故(目的、ねらい)

When いつ(期日、日時、季節)

Where どこで(会場、場所、フィールド)

What 何を(内容、プログラム)

Who 誰が(主催者、共催者、後援)

Whom 誰に(対象者、年齢、人数)

2H

How to どのように(方法、手段)

How much いくらで(参加費、予算)

○その他の要素 1)タイトル、ネーミング

その事業のねらい、そして内容を表現したもので、参加対象者が来たくなるような”

興味”をかき立てるようなインパクトのある名称が好ましい。

2)ポテンシャル

その事業のねらいを実践するために適した講師(専門分野)や指導のために必要、適

正なスタッフの人数、能力について状況を把握します。

3)オリジナルアクティビティ

キャンプのネーミングが表現するようなそのキャンプの目玉となる特徴的な活動や

独特な活動があればベターです。

4)必要な備品や装備類

その事業のねらいを実践するためのプログラム活動に不可欠な備品や装備類を確認、

準備する必要があります。

参照 第2章 36ページ 「企画シート」記入例

Page 46: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

36

○企画シートの作成(例)

企画シート 作成日:平成00年00月00日 作成者:00

タイトル、ネーミング 島らいふ~海の調査隊~

何故(目的、ねらい) 島外に住む子どもたちに、海辺での活動や農漁

業体験を通して、島の暮らしと自然への関心を

促したい。

いつ(期日、日時、季節) 平成00年0月00日~00日 2泊 3日 どこで(会場、場所、フィール

ド) 長崎県小値賀町 舟瀬海岸など

誰が(主催者、共催者、後援)

NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会 子どもゆめ基金助成事業 長崎県教育委員会 後援

誰に(対象者、年齢、人数) 小学 3年生~中学 3年生の男女 30名程度

何を(内容、プログラム) 宿泊は民泊。海の生物調査体験

どのように(方法、手段) 漂流物を加工した仕掛けを作り、海辺の生物を

観察する。農漁業を営む民泊民家に宿泊し、島

の暮らしを体験する。

いくらで(参加費、予算) 一人 1万 9千円 ポテンシャル スタッフは 5名で対応。民家は6~7軒程度

オリジナルアクティビティ 「おぢかもんどりプログラム」

必要な備品

2リットルのペットボトル。漂流ゴミであるア

ナゴ漁の仕掛け。えさ。バケツ。虫眼鏡。すく

い網。

Page 47: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

37

受託事業の企画

○受託事業のフロー 業務概要の作成 広報活動

個人、学校、行政からの依頼

顧客ヒアリング プログラムデザインワークシート作成 (別頁)

6W2Hの整理 (別頁「企画シート」を使用)

以下、主催事業と同じ

上記のフローチャートは、受託事業を受けるにあたっての基本的な流れを示したものです。 主催事業との違いは、あらかじめ対象が分かっている為、企画の前にその対象について、

より具体的なリサーチ(事前調査)をする必要があるという点です。 特に、学校や教育を目的とする団体の事業を受託する場合は、単にアクティビティを組み

合わせただけのプログラムではなく、「ねらい」に向けたプログラムを企画することが必要

となります。そのために、依頼者の意図を知るためのリサーチは、しっかり行うように努め

ましょう。

企画

営業

事前調査

・・・

参照 第2章 プログラムの構

造 ねらいの関連性

32ページ

受託

Page 48: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

38

○リサーチの手段 リサーチする為の手段として、「プログラムデザインワークシート」を活用してみましょ

う。 相手の意図(思い、ねらい)を知る為には、直接会って話をすることが、最も有効な手段

ですが、その際に「何を明らかにするか」を探る為の指標となります。また、時間的、距離

的に直接話す機会が取りづらい場合でも、相手に記入してもらうことで、相手の意図を知る

ことができます。

○プログラムデザインワークシートのポイント 1)条件の確認 ・対象者(人数、男女比)・日程(時期、日数)・予算の確認 ・引率者の数など 2)あなたの思い

依頼者は様々な期待や思いを持っています。限られた条件の中で、より有効な活動

を行うために、最も期待することをリサーチしましょう。 3)思いの背景

依頼者がその思いを持つに至った理由を洗い出します。普段の子ども達を見て感じ

ている問題意識を整理します。 4)対象者の分析

対象となる子ども達の特徴や現在の状況、または親の意識なども整理しましょう。 5)指導力の分析

依頼者の自然体験活動における経験の有無または程度を知っておきましょう。また

普段の子ども達への指導として留意している点なども聞いておきましょう。 6)目的の設定

背景で考えた問題意識を「・・が問題だ」から「・・を育てる」「・・を図る」に変

換する作業です。 7)目標の設定

目的は大まかであったり、抽象的であったりします。この機会で達成したいことを、

目標として具体化してみましょう。

Page 49: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

39

プログラムデザインシート記入例

プログラムデザインワークシート 団体名 長崎市立00小学校 作成日 00年00月00日

条件の確認 ・対象者 児童49名(男:22名 女:27名) 引率6名(内1名は養護) ・日程 7月13日~16日:3泊4日 ・予算 180万円(補助事業)

あなたの思い 自然の中で、思い切り楽しませたい。自分達の地域とは違う文化・習性を学んでもら いたい。人と触れ合うことの楽しさを学んでもらいたい。

思いの背景 学校が市街地にあるため自然の中で遊ぶ機会が少ない。よくまとまっているが、学校内 に留まっている感がある。チャレンジ精神に欠ける。

対象者の分析 指示したことはよく守る。おとなしい子が多い。心配症の保護者が多く、自然体験活動 には消極的。

指導力の分析 体育系ではあるが、自然体験活動の経験はそれほどない。学校の事情によりあまり人員 が割けないので、学生スタッフを募集する予定。

目的の設定 「交流」と「体験」に「チャレンジ」する

目標の設定 ・ まったく知らない人の家に泊まり、無事に過ごす。・難易度の高い自然体験活動に挑

戦してみる。

具体的な企画の作成(企画シート)へ

Page 50: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

40

運営 運営とは、主催者の思いがカタチになった企画を現実のものにする作業です。 どんなに素晴らしい企画でも、適切に運営されなければ、参加者に自然体験活動の素晴ら

しさを伝えることはできません。自然体験活動を円滑に運営するためには、しっかりとした

組織づくりが基本です。 この項では、運営の中でも特に組織づくりに焦点を当てて解説します。

組織 組織図を作成する際には、情報の伝達経路と責任の所在を明確にすることが必要です。よ

って、組織図には①役職名、②担当者、③指示系統が明記されなければなりません。 以下は組織図の例をあげたものです。どのような組織づくりをするかによって、事業をう

まく運営できるかが決定します。

ホイール型組織(図表1) 星型組織(図表2)

図表1は、ホイール型と呼ばれ、組織として機能する最小単位です。情報経路が一本化さ

れ、責任の所在が明確化ですが、構成員の横のつながりが欠如し、組織が大きくなるとスタ

ッフを管理するのに限界が生じやすくなります。スタッフが数名の小規模の事業や、各作業

ブロックの組織には適しているといえます。 一方、図表2は星型と呼ばれ、構成員間の情報伝達を自由に行える組織です。そのため、

上下関係が生まれず、円滑な人間関係を保つ事ができます。例えば、キャンプグループなど

では、特定のキャンパーを代表者等に立てず、星型グループを作ったほうがよいでしょう。

ところが、万が一問題が起きた場合、責任の所在が不明であり、いろいろな情報が交錯し、

組織としては機能しなくなる恐れがあります。そのため、実際の自然体験活動の運営では用

いられることは少ないですが、企画段階のアイデアづくりなどでは応用可能でしょう。

Page 51: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

41

ライン型組織(図表3)

図表3はライン型と呼ばれ、ホイール型の発展系であり、自然体験活動の運営では、最も

多く見られる組織です。情報の伝達、収集が確実であり、指示系統が一本化されているのが

特徴です。それゆえに、組織の柔軟性が欠如し、迅速な対応に欠ける欠点もあります。

ライン&スタッフ型組織(図表4)

一方、図表4はライン&スタッフ型と呼ばれ、二つの指示系統や所属の移動を柔軟に行う

ことができます。例えば、生活班担当の指導者では指導が難しいカヌーを行う場合、それぞ

れの班にインストラクターが付き、カヌー指導・安全管理はインストラクター、生活指導、

カウンセリングは班付き指導者といったように専門化による役割分担が可能となります。ま

た、本部付きスタッフを食料の炊き出しの時は食料係のサポートに充当し、撤収時には装備

係を補助するといったように、臨機応変な組織運営ができます。ところが、不明確な役割分

担は混乱を招いたり、同じ立場に立つスタッフの意見調整が困難になったりする場合もある

ので、上に立つものの高度なリーダーシップが必要となるでしょう。

Page 52: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

42

運営スタッフ 運営スタッフの人数と役職は、自然体験活動を運営する上での必要最小限の規模にするの

が理想です。少なすぎると運営に支障をきたすだけではなく、安全管理上の問題が生じます。

多すぎると一人のスタッフに対する責任が分化し、やりがいの低減につながったりします。

どのような役職を作るか、また、それぞれの役職にどのような業務責任を負わせるかは、活

動内容とスタッフの資質によって異なってきます。図表5を参考に、各団体の事情に応じ、

応用してください。

○組織図例 (図表5)

以下、それぞれの役職の一般的な業務を紹介します。

1)プロデューサー

事業の方針を決定したり、実行委員会等を召集し、実行委員やスタッフの最終的な決

定を行います。対外的にも事業のカオとなり、プログラムの目的を達成し、スタッフ

が働きやすいように、運営上重要な渉外を担当し、環境調整を行う役割もあります。 また、補助金などの申請時にもその責任者となります。

2)プログラムディレクター

事業の方針に従い、キャンプの企画・運営の責任を負います。その為に、適宜スタッ

フへの情報の指示・徹底を行い、カウンセラー等を通じ、参加者の状態、プログラム

の目標の達成状況を把握する役割があります。

3)カウンセラー

最前線で参加者の直接指導にあたる役割を担います。参加者との信頼関係を形成し、

プロデューサー

プログラム ディレクター

ドクター

マネジメントディレクター

食料係 装備係 カウンセラーインストラクター

Page 53: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

43

生活面や、野外活動の指導を行います。また、参加者の健康状態、問題行動、成熟段

階を把握し、これらの情報をプログラムディレクターに報告する義務があります。

4)インストラクター

野外活動の中でも、特に専門的技能が必要なものの指導を行います。このとき、班付

きカウンセラーは一般的にサポート等にあたり、参加者の特性等の情報交換をするな

ど連携を図ります。

5)マネジメントディレクター

キャンプの事務・管理の総括を行います。プロデューサー、プログラムディレクター

と連携をとり、事業を縁の下から支える役割です。

6)マネジメントスタッフ

事務・管理業務を事業の形態に合わせて、分担して行います。 一般的には、食料、装備、運送、会計、渉外、(医務)などの作業を、専属のスタッ

フが担当します。また、遊軍としてそれぞれの作業をサポートする本部付きスタッフ

を置くこともあります。

7)ドクター

医師免許を持った人が担当するのが理想的です。事業中に起こった、参加者、スタ

ッフの疾病・傷害の診断・治療を行い、その結果をプロデューサーに報告する義務が

あります。健康・安全に関わる専門的な判断を行うので、プログラム、マネジメント

の下部組織から独立させるのが一般的です。現場では対処不可能な疾病・傷害の場合、

地元の医療機関や、参加者の居住地の医療機関に紹介状を作成するなどの役割もあり

ます。

以上のように、組織作りに関して述べましたが、事業の規模や人的資源(数、質)によっ

ては、プロデューサーとディレクターを兼任したり、インストラクターとカウンセラーの役

割を一緒に担ったりすることも多くなります。組織編成は役割と責任を明らかにすることが

目的なので、状況に合わせて柔軟に対応しましょう。

Page 54: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

44

運営計画 事業の運営は、準備もなくプログラムを催行しさえすればよいものではありません。一つ

の事業を行うだけでも事前・事後を通じて、膨大な作業が発生します。これらの作業は一般

的に実行委員会等の組織を立ち上げて行い、多くの場合、実行委員会のメンバーは、そのま

ま事業の重要な役職となることが多いものです。ここでは、事業を運営するための実行委員

会の作業フローモデルと、決定しなければならない議題の目安を解説していきます。 初回の実行委員会では、実行委員会の構成員を定め、実行委員会の代表者を決定しましょ

う。一般的に実行委員会における代表者が事業催行時のプロデューサーとなることが多いで

しょう。この段階で事業のコンセプトを決定すると、以後の実行委員会をスムーズに進める

ことができるでしょう。 第2回実行委員会では、事業計画の(案)を提案し、検討・修正を加えて、事業計画の決

定を行います。コンセプトに基づいて各自が計画を持ち寄ったり、プログラムディレクター

候補がいるのであれば、担当者がたたき台を提出したりすると会議がスムーズに運びやすく

なります。事業計画が決定すると、それに伴う様々な実務が発生するので、事業催行時の役

割分担を行うと、各実行委員がワーキングすべきことが明確になり、作業の質が高まります。 第3回目以降は、図表6に示すような内容を参考に、各項目に応じた計画を決定するとよ

いでしょう。それぞれの計画は、相互に関係を有していますので、十分な意見調整を行うこ

とが大切です。 直前の実行委員会では、事業の催行時のスケジュール、作業・役割分担を再確認しましょ

う。この会には実行委員だけでなく、事業当日から手伝うスタッフにも参加してもらったほ

うことになります。天候や参加者の状態でプログラムが変更となる可能性があることを前提

に情報を提供・共有し、あくまでも事業の全体像を伝えるよう過不足のない情報が望ましい

でしょう。最終実行委員会は、会計報告、関連団体等への報告方法、内容を審議します。ま

た、次回の事業を改善するためと、仮に一度限りの事業でも、他の事業の発展に貢献するた

めに、事業の評価を行いましょう。まとめた内容は、団体内で有効に活用することはもちろ

ん、対外的な広報などにも積極的に活用しましょう。

Page 55: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

45

実行委員会の流れ(図表6)

実行委員会(初回)

実行委員会(第2回)

実行委員会

(第3回以降)

実行委員会(直前)

事業コンセプト・委員会代表者の決定

事業計画決定・役割分担

後援・協賛・賛助の依頼

予算、広報、評価、食料・装備の各計画の立案

組織づくり、スタッフ養成

許認可手続

当日の運営スケジュールの確認

実行委員会(事後) 報告・評価・次事業の構想検討

Page 56: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

46

安全管理 安全管理のすすめ 自然体験活動は、ふだんの生活環境からはなれ、新しい経験や活動にチャレンジすること

が多く、またふだん使い慣れない用具や施設を使う機会が多いため、事故やケガが起きやす

い環境にあるといえます。

しかし、そのことにばかりに気を取られ、「あれもこれもダメ、あれもこれもやめておこ

う」といった消極的な活動になってしまうと、参加者にとって「わくわく感」のない「楽し

くない」ものになってしまうばかりか、企画者の当初の「ねらい」も十分に達成できない結

果になりかねません。

ケガや病気を含めた事故を未然に防ぎながら、楽しく安全な自然体験活動を積極的に行う

ためには、以下を充実させることが大切となります。

・「周到な計画・準備」

・「指導者のトレーニング」

・「事前調査に基づいた事故防止のための対策」

・「救急対策」および「補償対策(保険)」

この項では、社団法人「日本キャンプ協会」が発行している、「安全なキャンプのために

PART10 リスクマネジメントの手引き」を参考にして、自然体験活動と安全について解説していきます。

安全管理の考え方 自然体験活動は家族で楽しむものから教育的効果を意図するものまで、幅広く多くの人々

に親しまれています。 しかし、日常とは違う環境で、使い慣れない器具や道具を扱う機会が多いので、安全には

十分な配慮をしなければなりません。また、自然の中には、刻々と変化していく気象やさま

ざまな動植物の営みなど、人の力の及ばないことが無数にあることを認識し、それらを謙虚 に受け止めることが必要です。 このような環境の中で、できる限り想像力をはたらかせ、起こりうる危険を予測し、その

要素を一つひとつ点検し、ていねいに安全対策に取り組むことが、野外活動における安全管

理の基本的な考え方です。

Page 57: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

47

管理するもの 排除するもの

考え方 考え方

対処 対処

危険の分類 ○リスクとハザード 自然体験活動における危険は、大きく分けて2つに分類することができます。

参加者(子ども)の「挑戦してみたい」ことをどこまで許容できるかは、見守る指導者(大

人)の経験の幅によるところが大きいといえます。参加者自身にとってもリスクは管理する

ことで、何が危なくて、どう気をつけたらいいのかを経験から学ぶことができ、やがては自

分自身で身を守る知恵を得るための助けとなります。一方、命の危険、大きな事故に繋がる ものは確実に取り除かねばなりません。事前に予測し、対策を立て、かかわる大人がその情

報を共有していることが重要です。

リスク(RISK) リスクとは・・・

「予測し易い危険のこと」 (例) ・木登り⇒落ちる ・火を焚く⇒火傷をする ・刃物を使う⇒手を切る

など

ハザード(HAZARD) ハザードとは・・・

「不意に起こる危険のこと」 (例) ・道具の故障 ・崖崩れ ・危険生物

など

事前指導・安全教育 ・木登り⇒補助する ・火を焚く⇒革手袋をする ・刃物を使う⇒軍手を着ける

など

事前調査・点検 ・修理する又は使用しない ・立ち入り禁止にする ・生息域に近寄らない

など

Page 58: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

48

計画段階から実施までの安全チェック 自然体験事業は参加する対象者や目的に合わせてプログラムが作成 され、運営体制や指導方法などもそれに沿って決定されるのが基本で す。しかし、「キャンパー・ファースト」の考え方からはずれ、企画者 (指導者)自身が活動をするような錯覚に陥って計画を立ててしまう と、事業の目的を達成できないだけでなく、事故やケガを引き起こし てしまう可能性があります。

○日程、プログラム作成する上での安全管理ポイント 1)参加者の特性を把握する

対象者の人数、年齢、経験の度合い、体力などによって一つひとつの活動に要する時

間や疲労度が異なります。これらを考慮して日程・プログラムを作成しなければ、無

理がたたって事故やケガの発生につながることがあります。

2)ゆとりのあるプログラムを考える

短時間に多くの活動を取り入れると、常に時間に追い立てられ、参加者に無理を強い

ることになります。結果として、事故やケガにつながることにもなります。プログラ

ムの詰め込みにならないよう、活動に取り組む時間にゆとりを持たせるようにしまし

ょう。

3)活動の特性を考えてプログラムを組み立てる

動的な活動(体を動かす活動)が続くと体力の消耗が激しくなり、疲労の蓄積が病気

やケガの発生の原因になることもあります。動的な活動の後には休憩時間を多く取っ

たり、比較的、体を動かすことの少ない静的な活動(クラフト・スケッチなど)にす

るといったように、活動の特性を考慮してバランスよくプログラムを組むことが大切

です。

4)適切なスタッフ体制を組む

安全にキャンプを行うためには、活動内容に応じて適切な人数のスタッフ確保が必要

です。どのような役割が必要なのか、どのような組織にするのかなど、コスト(費用)

も考慮しながらバランスよく配置する必要があります。 その場合、自然体験活動に精通している人(有資格者など)が加わっていることがベ

ストです。参加者とともに生活しながら様々な援助を行う役割の人たち(グループリ

ーダー)と、活動全体がスムーズに進行できるように準備運営していく役割の人たち

(マネジメントスタッフなど)で組織を作ることが理想的です。

キーワード

「キャンパーフ

ァースト」

キャンパー(参加者)

の立場を最優先する考

え方。

Page 59: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

49

専門的な知識や技術が必要な活動を取り入れる場合には、その活動について十分調べ、

トレーニングを受けたスタッフが確保できるか、その活動にはどんな危険があるのか、

どのような場合が危険なのか、どんな参加者にどのような危険がともなうかなどを十

分検討しておく必要があります。

5)悪天候に備えて、代替プログラムを用意する

大雨や強風などの悪天候にもかかわらず晴天時のプログラムを強行したために、事

故やケガの発生を招くことがあります。悪天候に備えて代替プログラムを用意してお

きましょう。

○事前調査(下見) 事前調査は通常、直前から1ケ月前位の実際の催行時期と同じ時期(季節)に行うこ

とを基本とします。下見では、プログラムが実施可能かどうかを確認するだけでなく、

危険箇所や緊急時の避難場所、避難ルートを把握する必要もあります。事前に出発から

帰着までのすべてにわたって、活動ごとに安全対策を立てておき、さまざまな視点で危

険と思われる場所を細部にわたってチェックする、常に参加者の動きをイメージしなが

ら危険チェックをするのが現地踏査のコツといえます。 また、その地域特有の自然環境による危険には注意が必要です。地元の関係者等から

入念に情報を入手しましょう。さらに、必ず医療機関、消防署、警察署等の連絡先、場

所等も確認しておきます。 実地踏査は指導者全員がそろって行うことが理想的ですが、どうしても行くことので

きない指導者のために写真やビデオを撮り、後日映像を使って確認できるようにしてお

きましょう。

○保険の加入

傷害、賠償責任、捜索費用など目的にあった保険に加入し、参加者、指導スタッフ全

員を登録します。

○参加者に対する事前説明会

参加者及び保護者を対象とした事前説明会を実施し、事業の主旨、日程、集合・解散

場所、緊急連絡先、携行品、諸注意などの実施要項を確認し、情報の共有を行いましょ

う。また、体験活動中は不慮の災害や事故、やけど、切り傷などのケガは起こりうるこ

とをきちんと伝え、万が一に備えて賠償責任保険や旅行傷害保険などに加入しているこ

と、補償はその範囲で行うことあらかじめ伝えておくことは重要です。

○事故や傷病に備えた役割や処置手順

Page 60: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

50

健康調査票、事前説明会等で個人情報を得られたら、その内容に応じて該当する参加

者の事故やケガの発生時の処置の方法や手順を決めておきます。この時、個人情報の取

り扱いには厳重な注意が必要です。

参加者情報の必要性とその扱い方 ○収集する個人情報とポイント 1)参加申込書(参加者の氏名・年齢・連絡先など)

※ 申込み受付方法によっては省略される場合もある

2)基本情報

参加者の氏名、生年月日、住所、電話番号、保護者の氏名や連絡先などの基本的

な情報は、事業を実施するために欠かせません。保険の申し込みにも必要です。顔

写真があると本人確認に役立ちますし、電子メールアドレス個々の連絡だけでなく

一斉に連絡を取る場合にも便利です。急な予定変更などを連絡するためにも、情報

配信のシステムを構築しておくとよいでしょう。参加者の情報にはさまざまなもの

があります。プログラムの充実、緊急時の対応、そして防犯の面からも適切な情報

収集と管理が必要になります。

3)健康に関する情報(健康調査票)

参加者の健康に関する情報を入手しておくことは重要です。既往症やアレルギー

を含む持病に関する情報は、「健康調査票」などを用いて保護者より提供してもらい、

事前に把握しておきましょう。あわせて、ふだん服用している薬がある場合は、薬

の名前や使用方法を聞いておきます。 その他、健康医療面の細かなことについては自由記述式で記入してもらいます。

できるだけ詳しい情報を収集しておけば、万が一の時に役立つことがあります。特

に、持病については、活動中の事故や疾病とのかかわりが深いため、見落としがな

いように留意する必要があります。

4)緊急時に必要な情報

事故などが起こった時、運悪く保護者に連絡が取れなかった場合を想定した対応

も検討しておかなければなりません。参加者を急病やケガで病院に搬送しても、保

護者でないスタッフが医療処置を依頼することには制約があります。このような場

合に備えて、保護者の意思を確認できる書類、つまり医療に関する同意書を整えて

おくことも必要です。また、持病がある場合には、かかりつけの医師に連絡をして

指示を受けることが可能な状態にしておくと安心です。

Page 61: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

51

5)指導のための情報

参加者の性格や対人関係について、特に配慮を要するような場合には、心理状態

や生活習慣、友人に関する情報などを自由記述式で記入してもらいます。生活に影

響を与える人間関係や行動特性などについて記述されることがあり、指導の助けと

なるでしょう。

6)お迎えの際の情報

解散の時に参加者の迎えに保護者が来られない場合、代理の人が来ることがあり

ます。その場合には、事前に迎えに来る人の氏名を提示してもらいます。解散時に

は、氏名を確認して参加者を引き渡すことで誘拐等の被害を防ぎます。低年齢の参

加者の事業では特に重要です。

○情報管理における留意点 1)情報の活用とチェック体制

貴重な情報が提供されたとしても、有意義に活用されなければ意味がありません。

たとえば、アレルギーに関する情報が保護者から提供されているにもかかわらず、

そのことがスタッフに伝わっていないために事故が発生するといったことは避けな

くてはいけません。場合によっては、責任問題に発展することもあるでしょう。 複数のスタッフで確認するなど、大事な情報が必ず活用されるようなチェック体

制をつくっておくことが重要です。

2)個人情報保護

個人の情報は、本来の目的以外には使用しないという原則があります。万一、情

報を紛失したり、第三者に漏れたりしたおそれがある場合には、その旨を関係者に

伝えなければなりません。些細な情報であっても、参加者に関する情報が学習塾や

住宅メーカー等の営業に利用されることもあり得ます。情報の管理は厳重に行わな

ければなりません。

3)健康保険証の管理

健康保険証には本人以外に家族の情報も記載されている場合があり、その取り扱

いには個人情報保護の観点から、特に注意が必要です。スタッフであっても必要な

時にしか見ることができないよう、封筒に入れて管理し、病院等で必要な時に限っ

て開封するといった配慮も必要です。健康保険証は悪用される危険が高いので、盗

難、紛失が起こらないような管理に努めなければなりません。

Page 62: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

52

4)体格の情報

参加者の身長や体重等は、プログラムの用具を手配する場合や医療機関で薬を出

してもらう際には必要な情報です。しかし、個人の身体的な特徴を示すものですの

で、コンプレックスを持つ参加者もいることに留意し、収集の方法や取り扱いには

十分に配慮しましょう。

5)個人名が特定されにくい配慮

キャンプやスキーで、名札やゼッケンに名前を書いて活動している光景を見かけ

ます。これは第三者に対して参加者の氏名を示して、個人が特定される状態です。

いたずらや犯罪につながる可能性もありますので、むやみに氏名を露出させないよ

うな注意が必要です。 また、雑誌等で活動を紹介する場合にも、個人の顔写真についてはできるだけ個

人名が特定できないような配慮が必要です。事前に肖像権に関して参加者や保護者

に了解を得ておくことも、忘れずやっておきましょう。

指導者がになう安全管理のポイント 事故はさまざまな要因によって起こります。それらの要因に対してしっかりとした準

備をすることが、事故予防のポイントとなります。準備すべき項目は多岐にわたります

が、共通点は「危険を予見して回避する」ことです。以下に示す内容を参考に、必要な

準備を洗い出しましょう。 また、参加者自身が活動中の危険性について認識を持ち、自ら準備することができれ

ば事故は確実に減っていきます。ですから指導者は、参加者に「何が危険でどうしたら

防ぐことができるのか」を気づかせ、「自分の安全は自分で守る」意識を育てる役割(責

任)もあります。

○ふだんから安全について学ぶ 安全に、事故のないキャンプを運営するためには、安全管理に関する「知識」と「技

術」を身につける研修が必要です。「知識」とは、危険の種類、危険を回避する方法、事

故発生時の対応などに関するもので、「技術」とは、主に事故発生時の対応に関するもの

です。

○安全管理の知識を身につける研修 事故を未然に防ぐための一番の準備は、「危険を知る」ことです。 できるだけ多くの危険を知り、さまざまな角度から対応策を練っておくようにしましょ

う。

Page 63: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

53

1)KYTトレーニング(危険予知トレーニング) KYTとは、「危険」「予知」「トレーニング」の頭文字を取った略称です。危険を

予知し、回避する能力を、イラストを使ってゲーム感覚でトレーニングできるもの

です。社団法人全国子ども会連合会が、子ども会活動中のケガを防ぐために作成し

たものです。

2)リスクマネジメントエクササイズ(RME)

野外活動における「事故防止対策」「事故発生時の対応」 「危険回避」の3点について、知識や方法を学ぶものです。 用意された問題をグループで話し合いながら解いていくこと によって、個人では気づかなかった対策や対応の知識を共有 することができます。

【問合せ先:社団法人日本キャンプ協会】

○心の安全管理 安全管理で意外と忘れがちなのが、「心の安全管理」です。参加者やスタッフが、違和

感や不安を抱えていたり、グループ内で仲たがいが起きていたりすると、事故が起きる

可能性が高まります。このような「心のリスク」を少しでも回避しておくことで、安全

管理の知識と技術を最大限に発揮することができます。事前の研修において、最低限以

下の4点を確認しておくとよいでしょう。 ・スタッフはプライベートな悩みをキャンプに持ち込まない ・責任者は、スタッフの性格、技量を把握しておくこと ・スタッフ同士のコミュニケーションが取れていること ・参加者の心の状況を顔色や言動から推し量ること

事故が起きてしまったら 十分な備えをしていても、事故は突然起こります。その時、指導者には冷静な判断と

対応が求められます。事故が起きた時に慌てないためにも、事前に事故対応のシミュレ

ーションを行い、対応方法を確認しておきましょう。また、事故が起きたことを想定し

て日頃から事故対応のトレーニングを定期的に行うことが大切です。

○事故が起きた時の基本的対応 1)冷静になる 心の準備ができていない時に事故が身近で起こると、人は適正な判断力を失うことが

補足

「リスクマネジメ

ントエクササイズ」

リスクマネジメントエク

ササイズはリスクマネジ

メントセミナーで体験で

き、体験された方のみ冊子

を入手出来ます。

Page 64: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

54

あります。適正な判断ができないと、場合によっては被害を拡大してしまうことがある

ので、まずは冷静になることが大切です。

2)自分自身の安全を確保する(二次災害の防止) 救援や応急処置を行う時、自分自身の安全確保を忘れないようにします。水難事故に

遭遇し、救助しようとしてあわてて飛びこみ、自分も事故にまき込まれるといったケー

スがよくあります。二次災害を起こすことのないよう、十分に注意が必要です。

3)被害者以外の人たちの安全を確保する(二次災害の防止) 現場では、どうしても被害者に目を奪われてしまいます。まずは、それ以外の人たち

の安全を確保した上で、対処に向かう必要があります。人数の確認を忘れず行いましょ

う。

4)被害者の救護を行う 救急車等の手配を行うと同時に、必要な応急処置を行います。119番通報は、落ち

着いて負傷者の位置と状況、負傷した理由等をわかる範囲ではっきりと知らせます。

5)警察への連絡(重大事故の場合) 重大事故の場合、110番通報を行います。

6)事故の記録を取る わかる範囲で、記録を残しておきます。必要に応じて、写真も撮っておきましょう。

被害者やその家族への報告や保険請求などに役立ちます。

7)保険会社へ連絡

8)負傷者への誠意を持った対応 負傷者へのお見舞い、お詫びなど

※保護者への連絡は、報告連絡事項が整ってから行いましょう。

保険は重要なリスクマネジメント 保険の加入は最低限のリスクマネジメントといえます。事業を主催する場合には、必

ず、賠償責任保険に加入するようにしましょう。また、参加者には傷害保険に加入して

もらうよう促す必要があります。

Page 65: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

55

○賠償保険の対象 1)偶然の事故により 2)他人に損害を与えた場合 3)法律上の賠償責任を負担することによって 被る損害を補償します。 上記のどの一つが欠けてもこの保険の対象とはなりません。

○賠償責任の種類 1)対人賠償:他人をケガさせたり、死亡させたりした場合。 2)対物賠償:他人の物を壊した場合。

○自然体験活動における賠償責任 1)指導中における賠償責任

(指導ミス、管理の不備、監督不行き届き、設営等のミス) 2)飲食物による賠償責任(飲食物等が原因で食中毒の事故) 3)貴重品等、一時的に預かりその損害に対する賠償

○支払い項目 1)損害賠償金

被保険者が被害者に対して賠償債務のために支払うことを義務づけられた金額。治療

費、入院費、通院費、慰謝料、休業損、葬儀料、死亡による逸失利益や物の修理代等

の費用。 2)訴訟費用

保険会社の承認を得て支出した訴訟、仲裁、和解または調停のための費用、訴訟の結

果被保険者側の勝訴に終わっても補償されます。 3)損害防止軽減費用

この費用のうち、応急手当・護送・その他の緊急措置に要した費用については、被保

険者に賠償責任がないことが後で判明された場合でも補償されます。

○傷害保険

傷害保険とは、「傷害」つまり「ケガ」をすれば保険金の支払い対象になります。た

だし、保険金が支払われるには、「急激」かつ「偶然」な「外来」の事故によって身体

に傷害を被り、その直接の結果として死亡したり、入院・通院した場合等という条件

が満たされる必要があります。 1)急激性

単に時間的に短いということだけでなく、「予測不能」と「不可避」の2要素が必要

です。

Page 66: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

56

例1:「屋根瓦の修理中に足を踏み外し転落する事故」について考えると、「屋根瓦の

修理中に足を踏み外す」ことは予測不能ですし、「転落」する過程は不可避です。 例2:「有毒ガスを継続的に、吸引、呼吸または摂取した結果生じる中毒症状」は「有

毒ガスを継続的に、吸引、呼吸または摂取する」ことが急激にあたらず事故とは

いえません。

2)偶然性

原因または結果の一方または、両方が「偶然」であることが必要です。 例1:偶然が原因(階段で足を踏み外すなど) 例2:結果が偶然(荷物を持ち上げて腰を痛めるなど) 足の骨折治療中にボールを蹴って悪化させた場合等、十分に結果を予想することが

できたケガは対象になりません。

3)外来性

外来性とは、傷害が身体の内部からでたものでないことを明らかにする主旨の要件

です。 例1:脳疾患、心臓疾患、糖尿病性昏睡等により意識不明により転倒、あるいは自動

車運転中運転不能になり事故にあった場合等は、事故の原因が身体内部にある

ため外来性の要件からはずれます。 例2:犬にかまれて狂犬病にかかった場合や、海に転落し救助に時間がかかり肺炎に

なった場合等は、急激、偶然、外来の事故を直接の原因としているため傷害事

故となります。

○傷害保険における傷害 傷害とは、一般的には「ケガ」ですが、傷害保険においてはさらに範囲が広く、身体

外部から発生した原因による身体の損傷を含みます。従って、打撲傷、切リ傷、刺し傷、

やけど、捻挫、骨折に限らず、内臓破裂、筋違いや窒息(煙による窒息、溺死、食物が

喉に詰まったための窒息死等)、毒物による急性中毒等も対象になります。

○利用できる保険の例 1)ボランティア保険

ボランティア活動に参加する個人や団体を対象に、傷害保険と賠償保険をセットに

したものです。全国社会福祉協議会が一括して保険会社と締結するもので、保険料は

非常に安く設定されています。 【問合せ先:市区町村の社会福祉協議会】

Page 67: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

57

2)スポーツ安全保険 スポーツ活動、文化活動、ボランティア活動、地域活動などを行う5名以上のアマ

チュアの社会教育関係団体(営利団体は対象外)を対象としています。例えば、少年

野球チームや、子ども会などが加入しています。傷害保険と賠償保険が含まれていま

す。 【問合せ先:市区町村にあるスポーツ安全協会支部】

3)レクリエーション保険

参加者の活動中のケガに対する傷害保険です。特約により賠償保険をつけることも

可能です。対象の条件として、1日の参加者数の下限(1日20人以上など)を設け

ています。 【問合せ先:損害保険会社各社】

Page 68: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

第三章

農山漁村宿泊体験事業を行おう

Page 69: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、
Page 70: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

58

学ぶ意欲や自立心、思いやりの心、規範意識などを育み、力強い子どもの成長を支え

る教育活動として、小中学校における農山漁村での長期宿泊体験活動を推進するニーズ

が高まっており、既に各地で取り組みが開始されています。

第3章では、こうした取り組みの中から、小値賀町が受入れを実施している「子ども

農山漁村交流プロジェクト」を題材とし、事例を入れながら、小中学校における農山漁

村での長期宿泊体験活動の実際を解説していきます。

子ども農山漁村交流プロジェクト

子ども農山漁村交流プロジェクトとは 農山漁村での宿泊と農林漁業体験活動を通じて、子ども達が受け入れ先の家庭と交流

することによる感受性の向上や、農林漁業体験や自然体験活動を通じた生きた学力の向

上といった効果が期待できる、との理由から、農林水産省、総務省、文部科学省では3

省連携事業として平成19年に「子ども農山漁村交流プロジェクト」を立ち上げ、平成

20年度より、全国2万3千校の小学校で体験活動を展開することを目指して、小学校の

農山漁村での長期宿泊体験活動を推進することとしています。

○子ども農山漁村交流プロジェクトの推進モデル図

引用 「子ども農山漁村交流プロジェクト推進

モデル図」

農林水産省HPより引用

Page 71: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

59

小値賀町では平成20年度より子ども農山漁村交

流プロジェクトの受け入れ可能地域として平成20

年度に6校、21年度に5校を受け入れました。こ

こからは、小値賀町での事例を交えながら、受入れ

の準備から実施に至る流れを紹介します。

補足 これから紹介する内容は農林水産省

発行の「農山漁村における宿泊体験活

動の受入れのための手引き」を参考に

しています。

Page 72: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

60

民泊事業の体制作り

子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ準備

○受入れの発意

民泊受入れの体制づくりのきっかけとしては、様々なものが考えられますが、実効性

のある取り組みとするためには、行政と民間が一体となった取り組みが求められます。

発意のパターンとして以下の3つがあります。

1)農林漁家が運営・実施の主体となって取り組む場合

すでに一部の農林漁家が積極的に事業を展開している地域においては、それらの主

体が率先して、行政、観光関係者や地域住民との間で協議の場を設けていくというプ

ロセスが取られるケースがあります。

2)観光関係者(観光協会など)が仕切り役になって取り組む場合

宿泊体験活動受入れの取り組みがまだ行われていない、あるいは地域に十分根づい

ていない地域において、地域の観光振興に積極的に民泊を活用しようとする場合、そ

の効果を直接的に期待できる観光関係者(観光協会など)が主体的に取り組むケース

が見られます。

3)地方自治体が中心になって推進する場合

農林漁家や観光関係者の中で取り組む体制が種々の条件から設定しづらい場合など

は、地方自治体がイニシアチブをとって、観光関係者や地域住民との協議・調整の場

を設け、地域における宿泊体験活動受け入れの有用性や観光振興に活かすための具体

的な取り組み方などを検討していくケースが見られます。

事例①

小値賀町においては、農林漁家民泊事業を中心とした、観光推進団体である「お

ぢかアイランドツーリズム協会」が存在していた為、上記のパターンでいうと2)

のパターンで発意がなされました。

Page 73: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

61

○地域受入れ協議会の設立

宿泊体験活動の受入れを推進する方針が関係者間で確認・共有できたら、最初に行

うべきことは「地域受入協議会を作ること」です。協議会が必要となる理由としては

以下のようなものがあげられます。

1)取り組みを意欲的に牽引する中心母体となり、地域全体の意見交換や関係者

間の調整役を果たす。

2)対外的な広報や、受け入れに当たっての窓口を一本化する必要がある。

3)保険の団体加入など、受け入れの仕組みづくりにあたって効率化が図れる 等

また、宿泊体験活動の受け入れに当たっては、地域を挙げた取り組みが重要になる

ため、幅広い主体で構成されることが望まれます。想定される構成主体の例を挙げる

と以下のようになります。

○組織形態

1)法人

社会的な信用を得ることができることが最大のメリットです。

例)・公益法人(財団法人、社団法人、NPO 法人など)

・協同組合(農協、漁協、森林組合など)

2)任意団体

法人格を持たない団体で、有志が集まった団体では、一般にはその成功はリーダ

ーの資質がカギとなります。また、構成員の間に意識や能力の面でのばらつきが見

られる場合も多くなります。当初から法人としての設立が可能であれば様々な面で

メリットがありますが、取り組みの当初は任意団体として発足し、人員体制など一

定の組織基盤が確立された段階で法人格を取得するのも一つの考え方です。

事例②

小値賀町においては、3つの任意団体(「観光協会」「自然学校」「民泊協議会」)が合

体して、平成19年度に「NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会」を立ち上げ

ました。

・観光協会 ・商工会

・農林漁業協同組合 ・受入農林漁家

・宿泊施設 ・婦人会

・体験プログラム実施団体 ・行政(市町村) など

Page 74: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

62

○組織構造

1)単一の地域内で受け入れを行う場合

単一の地域(一つの協議組織で対応できる地域)内での受け入れの場合、協議組織が

「商品作り」「受け入れ」に関してのすべての業務を行います。

2)複数の地域内で受け入れを行う場合

市町村をまたがるような広域での受け入れを行う際は、全体の取りまとめを行う広域

協議組織を設定します。広域組織が渉外等の事務を行い、地域受入主体(協議機能を

必ずしも有する必要はありません。)との間で役割分担をしながら、連携して事業を

進めていくこととなります。広域協議組織は、地域受入主体の代表者を入れることで、

協議機能が高まることがあります。

学校

地域受入協議会

問い合わせ・連絡 企画・回答・手配

受入れ民家 受入れ民家 受入れ民家

連絡 調整

連絡 調整

連絡 調整

学校

広域受入協議会

問い合わせ・連絡 企画・回答・手配

受入れ民家 受入れ民家

連絡 調整

回答 手配

地域受入主体

連絡調整

地域受入主体

受入れ民家 受入れ民家

連絡調整

連絡 調整

回答 手配

Page 75: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

63

子ども農山漁村交流プロジェクト受入れ体制

施策:活力ある農山漁村とグリーン・ツーリズムの推進、豊かな人間性の向上

 小値賀町においては、農業体験(グリーンツーリズム)+漁業体験(ブルーツーリズム)+自然体験(エコツーリズム)を一体化した「アイランド・ツーリズム」が展開されており、島の自然、漁業、農業、文化などの島の暮らし体験を通して、都市住民との交流活動を促進し、地域活性化を図っていくことを目指します。

小学校

各市町村教育委員会

児 童

保護者

長崎県教育委員会

長崎県農政課

小値賀町

  子ども農山漁村交流プロジェクト受入組織

   小値賀町長期宿泊体験協議会 <行政、NPO法人、農協、漁協、商工会連携>(事務局:NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会)   ・受入調整   ・プログラムの提供、開発   ・安全管理   ・料金精算

インストラクター 民泊民家

農業体験

漁業体験

自然体験

郷土料理体験

文化体験

子ども達の情操教育と地域活性化へ

各専門部会が組織化

情報提供・支援 魅力ある

「民泊体験

人々との交流

連携

ポイント

事例③(小値賀町における推進協議会の相関図)

○広域及び地域受入協議会等の主な業務

組織の役割分担を明確にすることで、学校からの申し込みから実施までの流れがスム

ーズになります。

組織の役割分担 業務の内容

単一地域内受入れの場合 広域受入れの場合

・対外的な広報、問い合わせ対応

・要望ヒアリング

・事前説明会の実施、下見対応

・各地域への児童の割りあて

・概要スケジューリング

・詳細スケジューリングのチェック

・会計処理

・事後評価(学校、児童、協力農林漁家へ

のヒアリングの実施、評価会の実施等)

広域協議組織

・協力農林漁家の確保、連絡調整

・各農林漁家への児童の割りあて

・詳細スケジューリング

・受け入れ当日のオペレーション

地域受入協議組織

地域受入主体

Page 76: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

64

○受け入れ民家の確保

取り組みの当初から、地域の多くの関係者の理解と協力が得られればそれが最も望ま

しいことですが、個別の農林漁家の事情もあり必ずしもそうは行かない場合があります。

その為、取り組みの初期段階では、核となる数軒の農林漁家等で受け入れを開始し、

徐々に地域の理解と協力を得るための方策をとることによって段階的に協力農林漁家数

を増やしていくのが良いでしょう。

協力農林漁家を増やしていく方法には以下のようなものがあります。

1)新聞や広報で募集する

地方新聞や自治体の発行する広報紙などに募集記事を掲載する方法です。潜在的

に「受け入れてみたい」と考えている農林漁家に対して訴えることができます。

2)説明会やセミナーを開催して募集する

協力をお願いしたい農林漁家に一ヶ所に集まってもらい、概要について説明する

方法です。一度に趣旨を伝えることができます。

3)個別に説明して理解を得る

最も地道で労力が必要な方法ですが、それだけに趣旨や熱意を直接伝えるには最

も確実な良い方法です。

4)キーパーソンを通じて理解を得る

地域の有力者、名士といわれる人(例えば、自治会長、地区会長、退職した学校

の先生など)を説得し、その方の理解を十分に得た上で、間に入ってもらって話を

通してもらうと、物事がより円滑に進む場合もあります。

5)地域の婦人会などの協力を得る

受け入れの先進地域の中には、婦人会でその地域ならではの伝統料理を活かした

食事メニューの開発を行っている地域もあります。受入家庭において負担の一つで

ある食事に関する部分については、このような組織に協力を仰ぐことも一つのポイ

ントです。

6)まずは試行的に受け入れてもらう

見ず知らずの他人の宿泊を受け入れる事に対して、誰しも始めは抵抗感を持つも

のです。そのため、一度試行的に受け入れてもらい、実際の様子を体験してもらう

と、「やってみたら案外簡単だったし、楽しかった」というように抵抗感が無くな

る場合があります。また、一度受け入れを体験した農林漁家から、口コミ的にその

Page 77: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

65

良さや楽しさが伝わり、理解が得られるといったことも期待できます。

7)成功している先進地の様子を知ってもらう

一般の農林漁家にとっては、宿泊体験活動を受け入れるということが実際にどの

ような事なのか、またそれによってどのようなメリットがあるのかが実感として認

識できないために、二の足を踏んでしまうということもあります。そのため、意欲

ある農林漁家を集めて先進地を視察するといったことで、より理解が深まり、学ん

だことを自らの地域の取り組みに活かすといったことも可能になります。

8)受入家庭の家族全体からの理解・協力を得る

宿泊体験活動の受入れに当たっては、児童が受入家庭に入って共に過ごすことに

なりますので、受入家庭の家族全体からの理解・協力を得ることが必要です。

事例④

小値賀町の民泊組織は、当初10軒の民家からスタートし、現在は33軒の民家が登

録しています。

1)~8)の全ての方法を行ってきましたが、中でも「3)個別に説明して理解を得

る」「4)キーパーソンを通じて理解を得る」「6)試行的に受け入れてもらう」の3

つは重要です。

また、民家を募集するポイントとして以下のことを説明しています。

1)強制ではないこと

時間に都合がつくときの受入れでかまわない

2)条件付でもかまわないこと

人数、性別、年齢など、受入れしやすい条件を提示してよい。

3)協議会等がサポートを行うこと。

受入れを行う上での不安やトラブルの解消に対し、協議会等がサポートを行うこと

を伝える。

Page 78: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

66

民泊サービスとは

○農林漁家民泊におけるサービスの考え方

受け入れにあたっては、ありのままの農山漁村の生活を体験してもらうことが望まし

い為、予め学校・児童に対して事前に家庭によりサービスに差があることについて了承

してもらう必要があります。

一方で、学校から、各受け入れ先でのサービスについて平準化を求める声もあります。

このため、やはりある程度の水準については統一することによって、児童間で大きな不

公平感が残らないようにする工夫が必要となります。(例えば、食事のメニューは地元

の食材や郷土料理の調理法を取り入れたものとするなど

個々の学校の教育方針等によって、滞在中の決まり事を設定している学校もあります

ので、基本的にはその都度学校の方針を把握した上で、それに従った対応が求められる

と言えます。

多くの学校が最も望むことは、「少人数で受け入れ先の家族と深く交流できること」

です。つまり、滞在中には夕食時の家族団らんや体験作業を通しての交流で、普段接し

ている家族や教師とは違う大人等との関わり方などを学ぶことなどを重視しています。

このため、児童の滞在中には、受入家族と児童たちができるだけコミュニケーション

をはかるように時間の過ごし方を工夫することが求められます。

事例⑤

小値賀町では、受入れ民家に対して、以下のようにお願いしています。

受入れの考え方

・お客さん扱いせず、叱るべき時はきちんと叱る。

・どの子にも分け隔て無く接する。

・それとなく子どもの行動は見守ってあげ、からかいや仲間はずれなど、いじめに繋が

りそうな行動は注意する。

・一方的に「指導する」のではなく子どもと「一緒に活動し創り上げていく」という双

方向の姿勢を持つ

など

各民家共通で行って欲しいサービス

・夕食メニューに、必ず1品は郷土料理を入れる。

・食事は子ども達と一緒に作るようにしてもらう。

・夕食後、農山漁村の暮らしについて話をする。

・布団の上げ下ろし等はセルフで行ってもらう。 など

Page 79: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

67

○農林漁家民泊の施設整備

農林漁家民泊は、あくまで農林漁家庭の日常生活を体験することが目的ですので、特

別な設備投資が求められる訳ではありません。

例えば、風呂については家庭用の浴槽では一度に大人数の子どもが入浴出来ない、ま

た家族用の風呂と利用を分けることが出来ない、といった状況下で実施せねばならない

ことも多いですが、その条件下で行うことが民泊としての一つの要素であり、事業の実

施や成功の可否に対する決定的な要因には成り得ません。受け入れの先進事例の中には、

近隣の共同浴場を利用することによって対応している地域もありますが、各地の特色を

生かした民泊メニューを行うという観点こそ重要です。

宿泊施設としての開業に当たっては、建物や設備に関して様々な規制要件があります

が、農林漁家民宿における施設整備については、全国において次のような規制緩和が進

められています。

関連法規等 規制緩和の内容

旅館業法関係

通常、簡易宿所営業の許可を得る場合、客室面積は33㎡以上必要ですが、農

林漁家民宿においては33㎡に満たない客室面積でも、簡易宿所営業の許可を

得ることができます。

消防法関係

農林漁家民宿は、地元の消防長又は消防署長の判断により、避難が容易であ

るなどの条件を満たせば、「誘導灯、誘導標識」及び「消防機関への警報設

置」を省略することができます。

建築基準法関係

住宅の一部を民宿等として利用する場合、33㎡未満の客室面積であって、避

難上支障がないと認められる建築物については、建築基準法上旅館に該当し

ないものとされます。そのため、火気のある部屋(台所、いおりのある部屋

等)の壁・天井を防火上支障のないものに内装する必要はありません。

運送法関係

宿泊者に対する送迎が「白タク営業」にあたるのではないかという問題は宿

泊サービスの一環として行う送迎輸送は原則として許可対象外であり、道路

運送法上の問題はありません。

さらに、都道府県によっては、施設設備のうち浴室、便所、洗面所を家族と兼用を認

めるなどの規制緩和を進めています。農林漁家民宿の開業に当たっては、各都道府県の

規制緩和の状況を確認しつつ、必要に応じて法令等への対応を行いましょう。

Page 80: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

68

農林漁家民泊における安全管理のポイント

滞在中の安全管理については、学校が最も地域に望む事項の一つです。そのため、安

全管理の方策をマニュアルなどとして明文化し、各受け入れ先に配付するなどにより、

対策意識を徹底するようにすると良いでしょう。野外プログラム等における安全管理に

ついては、「第2章 安全管理」において述べましたが、ここからは、農林漁家民泊に

おける安全管理について解説していきます。

○食事に関する安全管理

食事を提供する業務を行う場合には、食品衛生法の適用を受け、「飲食店営業」の許

可施設になる必要があります。この法律は、主に厨房、台所の設傭や、食品管理、雑排

水処理などの衛生管理について細かく決められています。また、食品衛生責任者を置く

ことが必要ですが、この資格は講習会など短期間の講習等で取得できます。

都道府県によっては、児童と一緒に食事を作る場合においては、厨房・調理場の設備

基準の緩和や「飲食店営業」の許可の対象外としている場合もあります。

食事を提供する際の留意すべき事項として下記には、大まかな項目のみ記述していま

すが、食品衛生法に則り安全に十分に配慮し提供しましょう。

1)加熱調理の徹底

提供する食事は十分に加熱調理したものを中心とし、刺身などの生ものの提供に

あたっては食材の品質管理に十分注意しましょう。

2)食材の適切な管理

使用する食材の管理については冷蔵、冷凍に充分注意し、日数が経って質が劣化

しているものは使用しないようにしましょう。

3)消毒や調理前の手洗いの励行

調理の前には必ず石けんを用いて手洗いを徹底するようにしましょう。児童がと

もに調理場に立って調理を行う場合にも、児童に手洗いを徹底させるようにしまし

ょう。また、使用する食器も定期的に消毒するなどして衛生管理に留意しましょう。

4)定期的な検査の実施

食事を提供する側の検便や検査のための検食保存など、検査をきちんと実施しま

しょう。検食保存は、万が一、食中毒等の食品事故が起きた際に、早期原因究明、

事故対策を立てるうえで重要です。宿泊者に提供した食事と同じもの(一部)を一

定時間以上保存する必要がありますが、保存量、保存温度、保存期間など細かな規

定がありますので、管轄保健所にお問い合せください。

Page 81: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

69

5)関係者に対する衛生講習会の実施

定期的に講習会を開催するなどして、食中毒を出さないための注意点等を関係者

間に周知徹底させることが必要です。

○滞在中全般における安全管理

1)事前説明の徹底

受け入れ時に、事故を防ぐための注意点を児童にきちんと説明し、理解してもら

うようにしましょう。特に、地震や火事などの非常時に安全に屋外に脱出できるよ

うに、入居時に避難経路を確認するようにしましょう。あわせて、安全対策を紙に

書いて目に付くところに掲示しておくとよいでしょう。

2)火の始末の徹底

火事を防ぐ対策として、寝る前にはストーブなどの火の始末を確実に行うように

しましょう。

3)施錠の徹底

農山漁村など地方においては、都市部と比較して防犯に留意する必要がないこと

から、家の玄関を施錠しない習慣が残っている地方もあります。しかしながら、児

童を受け入れるに当たっては、万が一の不審者の侵入等に備えて、施錠を心がける

ようにしましょう。

4)建物・設備の保守

建物や設備が老朽化していると、利用時にそれらが破損、故障する事によって思

わぬ怪我や事故に繋がる恐れがあります。これを防ぐため、日頃から使用する建物

や設備の状態をよく把握し、不具合が見つかったら直ちに修繕・修理することを心

がけましょう。

5)児童に対する目配りの徹底

親や教室での授業から離れて、農山漁村で過ごす時間は、児童達にとって開放的

な気分で、友達や受入家庭と交流できる貴重なひとときとなりますが、一方で高揚

感や気のゆるみからくる事故などにも気をつけなければいけません。

そのため、特に夜間においては、児童の自由行動に気をつけて、目の届く範囲内

で行動させるように注意しましょう。

Page 82: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

70

6)緊急時の連絡体制の確立

通常、引率の先生は児童とは別に宿泊施設(本部)に泊まることが多くなります。

そのため、緊急時には本部と児童が滞在する各農林漁家の間ですぐに連絡が取れる

よう、携帯電話等を活用して連絡網を構築しておきましょう。

また、警察や消防、医療機関にも受け入れの日時と人数などを事前に知らせてお

き、いざというときにすぐに担当者に連絡が取れるようにしておくことも重要です。

7)安全講習会の開催

受け入れのシーズンが始まる前や終わった後には、安全講習会を開きましょう。

初めて受け入れを行う受け入れ先には、事前の安全講習会は必ず出席してもらいま

しょう。また、受け入れ実績のある家庭についても、常に緊張感を持っていただく

ために、講習会へ参加していただきましょう。

8)寝具等の衛生管理

布団やまくら等についてはカバーを掛け、受け入れが終わるごとに洗濯を行い、

また、定期的に日に当てるなど衛生管理に努めましょう。

9)長期受け入れに当たっての留意点

子ども農山漁村交流プロジェクトでは、一週間程度の長期滞在を想定しています。

子ども達は初日は緊張していても、2 日目以降は慣れてきて、その分、気のゆるみ

から事故が起こりやすくなりますので、特に滞在期間の中盤から後半にかけて、子

どもに注意喚起をするなどして、一定の緊張感を保つように心がけましょう。

Page 83: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

71

事例⑥小値賀町における安全講習会

講習名 MFA インストラクターによる AED を用いた心肺蘇生法

(CPR)の講習会

実施日 09年 6月21日 実施場所 小値賀町

参加者 民泊民家 参加人数 10名

講師 MFAジャパン ケアプラス インストラクター

講習のねらい ・民泊実施中の安全意識向上のため

・民泊実施中、事故が起こった時に迅速な対応が出来るため

業務の概要

・事故が起こった時、どう対処したらよいか。

・CPR(心肺蘇生法)の手順

・乳児のCPR(心肺蘇生法)について

・AEDの使用方法について

・咽喉に物体が詰まった時の対処法

講習の様子

気道確保 人工呼吸 CPR

事例⑦ その他の安全対策

キーワード

「MFA」

メディック・フ

ァースト・エイ

ドの略称。MFA

は救急医療の先

進国アメリカで

25年以上前に

誕生した一般市

民レベルの応急

救護の訓練プロ

グラムである。

1)ライフジャケットの無料貸出

磯遊び、魚釣りなど、民泊時における体験活動には、水辺での活動も多い為、ライ

フジャケットの着用を義務化し、受入れの度に、人数分のライフジャケットを無料で

貸出しています。

2)体験者の体調不良時における約束事

・素人療法は行わない。

・原則として外科処置に対しては、「消毒液の塗布」「バンドエイドの使用」までと

し、それで手に負えない場合は、病院で処置する。

・内服薬(風邪薬など)は絶対に処方しない。

Page 84: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

72

対物賠償

受託物

死亡保険金

入院日額

通院日額

救援者費用

→賠償保険(食中毒含む)

5千円

3千円

→傷害保険

1事故-1,000万円(免責1万円/1事故)

1事故-100万円(免責5千円/1事故)

500万円 1名-1億円。1事故-2億円対人賠償

100万円

交通機関

九州商船株式会社

野母商船株式会社

有限会社美咲海送

小値賀交通(バス)

丸まタクシー

0956-42-5607

0959-56-2003

0959-56-2337

公共機関

0959-56-3135

0959-56-2821

小値賀警察署 0959-56-2110

佐世保西消防署 0956-43-3119

小値賀診療所 0959-56-4111

海上保安部 0956-26-1202

小値賀町役場 0959-56-3111

緊急時対応と連絡先

・天候悪化により活動が困難な場合は、早めに避難所(建物)へ避難する。・緊急事態発生(事故によるケガ、発病等)の場合は、次の経路にて対応、処置する。(連絡体制と緊急体制)・万一に備えて、参加者(スタッフ、キャンパー)は、全員傷害保険に加入する。 緊急時は、必ず連絡網を一本化する事。

緊急時対応

連絡先 事故発生、急病(ケガ)

緊 急 措 置

佐世保西消防署(0956-43-3119)

小値賀警察署(0959-56-2110)

おぢかアイランドツーリズム協会

専務理事高砂 090-4488-2828

事務所 0959-56-2646

病院へ移送処理・治療

小値賀町立診療所(0959-56-4111)

保 険 会 社学 校 ・ 家 庭+ 主 催 者

安全対策とその対応について

①常に協会としての「安全・衛生・管理基準」を持って活動し、前述の基準を定期的に更新し、インストラクターの研修も義務づけております。②海上のアウトドアスポーツにおいてはライフジャケットを着用します。③味覚体験や宿泊施設等の食事においては、食物アレルギーなどを事前調査の上、有無のご連絡をお願い致しております。④緊急時の連絡体制を整え、インストラクターなどに周知徹底(緊急連絡先一覧表の携帯)致しております。また、応急処置及び救急車の手配、関係者への連絡を行うように指導しております。⑤民泊体験は、お客扱いではなく家族の一員として迎えるよう指導しており、布団の上げ下げや食事の準備もセルフまたはいっしょに行っていただきます。⑥ステイ先には、食事、入浴、トイレ、寝具などに係わる衛生面に留意するよう指導しております。⑦安全管理には最大限の対策と指導をしておりますが、万が一の場合に備え、下記の通り保険に加入致しております。なお、民泊民家や野崎島宿泊施設は、長崎県保健所による簡易宿泊所の認可をうけており、民泊における食中毒や事故などにも保険にて対応しております。しかし安全管理には自己責任もともないますので、参加者への危険告知も文書、口頭など適宜行い安全管理に努めております。⑧自家用自動車に乗車の場合は当該車両の自動車保険にての対応となります。

保険契約内容

関係先一覧

小値賀町役場(0956-43-3111)

スタッフ(おぢかアイランドツーリズム協会)・民泊民家・島民サポーター・

その他関係者など

学 校 ・ 家 庭+ 主 催 者

ヘリ ・ 船 の要請

事例⑧ 小値賀町における緊急連絡体制

Page 85: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

73

○保険への加入 宿泊中のケガや食中毒などによる宿泊客に対する補償や、火災や災害による損害など

に対処するため、保険の加入を検討する必要があります。

滞在中に起きる事故として、次のようなケースなどが想定されます。

1)利用者に損害を与えてしまった場合

・宿泊先の失火により利用者がやけどをした。

・利用者に出した食事が原因で食中毒になった。

2)利用者自身の不注意でケガをした場合

・利用者が農作業体験中に転んで足を折った。

3)利用者の不注意で損害が起きた場合

・利用者が稲刈り体験中に誤って他の参加者にカマでケガをさせてしまった。

・利用者が誤って家の中のものを壊してしまった。

4)指導する側の責任で事故が起きてしまった場合

・きのこ狩りにつれていったところ、指導側の不注意で転倒しケガをさせてしまった。

・体験に使う道具を車で運ぶ途中、停車中の車にキズをつけてしまった。

補償の内容については、公的な共済から民間の損害保険会社の商品まで、いろいろな

ものがありますので、詳細については、近くの保険会社まで問い合わせてみてください。

保険の種別

被保険者 種類 内容 販売されている保険の例

旅館業法の営業許

可を取得している

施設

・施設事故

・生産物事故

・受託物事故

・旅館賠償責任保険

・民宿賠償責任保険

・登録体験民宿賠償責任保

一般の農林漁家

宿泊体験活動を実施している施設内

(屋内)で想定される事故・災害を補

償する保険 ・施設事故

・生産物事故

・農林漁家民泊賠償責任保険

・ファームステイ保険

受け入れ側

体験指導者

インストラクター

屋外での体験等で想定される事故・災

害を補償する保険

・対人賠償

・対物賠償

・体験指導者賠償責任保険

・認定グリーン・ツーリズム

インストラター賠償責任保険

学校側(生徒) 生徒自身が怪我をした場合や加害者

になったときに補償される保険

・傷害事故

・賠償責任

・国内旅行傷害保険

・グリーン・ツーリズム参加者傷害保険

Page 86: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

74

民泊事業の進め方の例

子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ実施

ここからは、受け入れまでの各段階で実施すべき業務を整理します。

スケジュールや手法は地域や学校により異なってきますが、平成21年度に小値賀町に

て受入れを行った学校を題材として解説していきますので参考にしてください。

○受入れ実施の流れ

営業・受付

6ヶ月前

3ヶ月前

1ヶ月前

1週間前

前日

当日

受入れ後

・営業・日程、おおよその人数の確認

・学校引率者等との現地下見

・受け入れ民家の選定・民家への依頼

・学校への作業依頼(健康調査、班分けなど) ・プログラム構成の確定 ・参加者・保護者への事前説明会の実施

・天候予測等を踏まえたスケジュールの調整 ・受入先への詳細通知及びミーティング ・備品の準備

・欠席者の確認・受入れ先への最終確認の連絡

・引率教師の巡回案内・参加者の健康チェック

・評価会・会計処理 ・事業報告書の作成

Page 87: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

75

○実施校の概要

○営業・受付

次年度の学校予算の確定後、学校では宿泊体験活動プログラムの実地地域の選定が始

まります。そのため、実施年度前年の12 月頃から営業を開始します。実施校が決定す

るパターンとしては、

①実施指定校になった学校からの問い合わせ

②営業活動により関心を持った学校からの問い合わせ

この2つのパターンが主になっています。

1)営業のポイント

学校は行政の枠組みの中で運営されていることもあり、急に訪問しても対応しに

くい事情があります。スムーズに話ができるよう、訪問する前に、以下のポイント

を押さえて準備しましょう。

①営業する学校を選定する

自分の地域で受け入れることの出来る規模(人数)の学校を選定しましょう。各

都道府県教育委員会のHPで学校の規模を調べる事が出来ます。全国的に宿泊体験

学習を実施する学年は5,6年生がほとんどです。

②県及び市町村教育委員会に連絡する。

所轄の学校に対して、営業活動を行ってよいか確認を取った方がスムーズです。

必要があれば、教育委員会を訪問し、協力をお願いしましょう。

学校名 長崎市立南長崎小学校(長崎県)

日程 平成21年 7月13日(月)~7月16日(木)3泊4日

受入れ人数

・児童:49名(6年生 2クラス)

・教員:4名 (教頭1、担任2、養護1)

・その他:2名 (大学生ボランティア )

計 55名

対応スタッフ

・アイランドツーリズム職員 7名

・町民インストラクター 7名

計14名

受入れ民家 11軒

Page 88: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

76

③訪問する学校には必ず事前に連絡をする。

外部との折衝は、教頭先生が担当していることが、多いようです。教育委員会に

話を通していることを伝えて、訪問する日時を調整しましょう。

2)受付時のポイント

①実施日程と大まかな人数の確認

他の学校と重なっていないかなど、受付可能な時期かを確認します。受入れ組織

の規模(対応人員、宿泊可能容量など)も考慮して、十分に対応できるかどうか

を判断してください。月別の日程表を作っておくと便利です。

②学校側の連絡担当者を聞いておく

学校側の担当者が誰になるかは、学校ごとに違います。これまでのケースだと、

教頭先生か学年主任の先生になることが多いようです。

○6ヶ月前

1)下見対応

下見実施には、以下のような目的がありますので、必ず実施してもらうようにし

ましょう。

①受け入れスケジュールやプログラムの構成を確定させるため、体験場所・体験

内容について学校側立会で下見をし、プログラムの内容や事業の進め方の確

認作業を一緒に行う。

②事故を事前に防ぐため、危険箇所や安全管理のチェックする。

③児童が円滑に能率よく行動ができるように、ルート等確認する。

引率する先生全員が参加することが理想的です。また、気候の変化や使用設備の

変更なども考えられるので、実施直前にもう一度下見に来てもらうほうが良いでし

ょう。

2)下見時のチェック項目

①活動場所の確認

②体験アクティビティの内容確認

③危険箇所と対応の確認

④受入民家の確認(例として)

⑤交番・病院の確認

⑥緊急連絡場所と連絡方法の確認

Page 89: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

77

○3ヶ月前

1)受入れ民家の選定

受け入れ先となる、民泊民家を選定しましょう。実施日よりあまりに早く配布を

しても予定が立っていない場合が多くあります。実施の3 ヶ月前を目安にすると良

いでしょう。

また、一般の民家での受け入れの場合、冠婚葬祭や家人の急病など突発的な事で

予定していた受け入れ先での受け入れが困難になる場合があります。そのような場

合に備えて、予備の受け入れ先を確保しておくようにしましょう。受入れ民家が選

定できたら、名簿を作成しておきましょう。

2)受入れ態勢の確立

この頃までには、受け入れ側の運営組織を編成しておきましょう。編成について

は、「第2章 運営」を参考にして、対応するチームを作りましょう。「第1章 企

画」で紹介した、プログラムデザインシートをもとに、プログラムを具体的にくみ

上げていきましょう。

また、体験アクティビティを実施するにあたり、外部へ協力を申し込む場合は、

依頼をしておきましょう。

○1ヶ月前

1)学校への依頼

学校に依頼して、集約してもらう必要のある資料は次の2点です。

①事前健康調査票

事前健康調査票は、生徒児童の安全に関する非常に重要な資料ですので、必ず保

護者に書いてもらいましょう。あまり早い段階で、記入すると当日までの間に、

体調の変化が出る可能性が大きくなりますので、1ヶ月前ぐらいをめどにすると

良いでしょう。また、この健康調査票は個人情報であるため、取り扱いには十分

に注意しましょう。

②民泊振り分け名簿

先に作成した民泊名簿をもとに、振り分け用の書式を作成して、学校側に記入し

てもらいます。この名簿は、民家への通知と保険対応時の名簿としても使用でき

るものが良いでしょう。

2)持ち物確認

児童が持参する必要があるものについて連絡しましょう。体験毎に必要となる備

Page 90: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

78

品等がありますが、なるべくどの体験にどのようなものが必要か明記しましょう。

3)スケジュールの確定

受け入れ期間中のスケジュールを確定させましょう。個々のプログラムの配置だ

けでなく、到着・出発時間や歓迎式、お別れ式の段取りや時間配分などを確認しま

す。その他、気になる点や注意して欲しい点などは受け入れ前にお互いしっかりと

確認しあう必要があります。

4)事前説明会への参加

ほとんどの学校は、当日の1~2ヶ月前に、児童やその保護者に対して、事前説

明会を開催します。保護者としても、長期間、子どもを預けることには、少なから

ず不安があります。事前説明会に参加して受け入れ態勢や安全に関する告知を行う

ことで、保護者の不安を少しでも取り除いてあげましょう。学校としても保護者か

らの後押しは、事業を円滑に進めるためにとても重要な要素となります。

事前説明会の実施風景

児童からの質問 保護者への説明

教員への体験学習ワークショップ 児童への事前指導

Page 91: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

79

資料 健康調査票

事前健康調査票 NPO法人 おぢかアイランドツーリズム協会

参加者氏名

●お子様は、アレルギーを持っていますか? はい いいえ ●(はい)に丸をつけた方のみ、具体的に記述してください。(アレルギーに対する対応、留意点など)

●基礎情報について( )内にご記入ください。 平常体温( ) 血液型( 型・不明) 泳力 約( )メートル自力で泳げる。

●お子様の体質について該当するもの全てに、○をつけて下さい。 かぜをひきやすい おなかをこわしやすい 熱を出しやすい 扁桃腺が腫れやすい 蕁麻疹が出やすい かぶれやすい 頭が痛くなりやすい 疲れやすい 貧血を起こしやすい 鼻血が出やすい 便秘しやすい 乗り物などに酔いやすい 夜尿症である 場所が変わると眠れない その他( )

●既往疾患 ・伝染病、感染症で1~2年のうちにかかったもの( ) ・今までにかかった病気 喘息 ひきつけ てんかん はしか 心臓疾患 腎臓病 おたふくかぜ 風疹 盲腸炎 水ぼうそう 中耳炎 扁桃腺炎 ヘルニア その他( )

●本人の健康について気をつけているところ

●特記事項(常用薬などあれば、ご記入ください)

上記の個人情報は、NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会において厳正に管理され、本事業以外に使用する

ことはありません。

Page 92: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

民泊民家 班 名前 ふりがな 治療月経(期間中)

夜尿アレルギー(食物)

アレルギー(動植物)

常備薬の種類 備考

******* △△△ △△△シンブレアクラリス

アレルギー性結膜炎アレルギー性鼻炎

アトピー性皮膚炎

猫・猿 ヨクイニン剤 喘息

家庭で飼うペット

そば

○ アレグラ じんましん 夜尿の心配

メロン・そば猫・ヨモギ・スギ・ブタ

△ 牛乳 中耳炎

いくら・山芋・そば

春ウコン

花粉・ほこり

アトピー

6班

1班

2班

3班

4班

5班E

民泊振り分け名簿

資料 民泊振り分け名簿

Page 93: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

81

チェック 品物 数量 用途・備考

□ バック 1 全体の荷物を入れる。ボストンバックやスポーツバックで可

□ 下着 日数分 1組くらい余分があるとよい。

□ 靴下 日数分 1組くらい余分があるとよい。

□ 帽子 1 つばのあるもの。サンバイザータイプではない物。

□ パジャマ 1 普段から使っている物

□ タオル 適当 必要に応じた数。

□ 運動靴 1 普段から履きなれているものを履いてくること。

□ 洗面具 1 歯ブラシなど。

□ ティッシュ、ハンカチ 適当 必要に応じた数。

□ 常備薬 必要な人のみ

□ ビニール袋 適当 スーパーのもので可。あると便利です。

□ 保険証のコピー 1 表裏をコピーしたもの。名前を書いた封筒に入れてください。

□ 個人で必要なもの コンタクトレンズなど

チェック 品物 数量 用途・備考

□ リュックサック 1 活動のときに必要なものを入れる。15ℓ程度のもの

□ 雨具(カッパ) 1 セパレートタイプの丈夫で動きやすいもの。

□ 薄手の長袖、長ズボン 1カヌー、スノーケル時に必要。濡れてもいいもの。日焼け対策として有効です。ジャージでもよい

□ 水着 1 カヌー、スノーケル時に必要。

□ アクアシューズ 1カヌー、スノーケル時に必要。かかとが固定できる物であれば、スポーツサンダルでも可。濡れてもいい古い運動靴でも可。ビーチサンダル、スリッパは不可。

持ち物リスト民泊で必要な物

活動で必要な物

資料 持ち物リスト

Page 94: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

82

資料 スケジュール表

1日目(7月13日) 時間 プログラム スタッフの動き 備考

11:30 11:45 12:15 13:30 14:25 15:30 16:00 16:30 17:30 18:30 20:00

小値賀着 「海上タクシー」 到着式 ・ 児童挨拶 ・ITより挨拶 ・ 諸注意 昼食 アクティビティ①

小値賀さるく ターミナル帰着 民家さんとの顔合わせ ・ 児童挨拶 ・ 民家紹介 ・ 各民家へ移動 学校スタッフを旅館へ 民家視察 終了予定 スタッフミーティング

・高速船乗り場 ・各自に荷物を持たせて、ターミナル

へ誘導(A、B) ・進行(先生) ・IT挨拶(理事長) ・弁当受け取り(B) ・ターミナル内にて ・ルール説明(B) ・飲料水の配布(A) ・スタッフを各所へ配置(A) ・本部待機(B、教頭) ・緊急時はBへ連絡 ・学校スタッフ撤収(A) ・進行(A) ・ターミナル内にて ・送迎(B) ・2班に分かれて巡回 ・旅館にて(A、B)

・午前中に到着式会場をセッテ

ィング(IT職員) ・ゴミ収集 ・本部(保健室)を仮眠室 に設置

*準備項目 ・お茶作り(ジャグ×2) ・ライフジャケット ・テント、寝具準備 ・タープ、イベントテント ・ペットボトル回収(15日の

カヌー時に使用)

Page 95: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

83

○1週間前 1週間前ごろになると、当日の天候も予想が立ちやすくなりますので、予定を変更す

べきかどうかの検討を行いましょう。

また、受け入れ側の関係者(協力機関、民家、体験インストラクターなど)と打ち合

わせを行い、受入れに関する確認を行いましょう。

1)受入れ民家との打ち合わせ

この頃までには、誰の家に、どの児童が宿泊するのかが確定していることと思い

ます。民家を集めて打ち合わせを行いましょう。

確認事項は以下のポイントを押さえてください。

①集合・解散時間の確認

②学校側の希望(接し方など)の確認

③受入れする児童の健康状態の確認

④緊急連絡網の確認

特に健康状態の確認については、「食物アレルギー」についての確認をしっかり行

いましょう。学校側も参加してもらうのが理想的です。

2)受入れスタッフとの打ち合わせ

これまでの間にも打ち合わせを重ねていることと思いますが、特にこの時期にお

いては、天候等による予定変更の手順を確認しておきましょう

○前日

いよいよ本番直前ですが、最終確認として最低限以下のことを確認しましょう。

①欠席者の確認

②受入れ民家への最終確認

また、学校側には、移動中の状況について定期的に連絡を取り合えるよう依頼しておき

ましょう。

○当日

予定にあわせて進行していきますが、以下のような業務が発生する場合があります。

①引率教師の巡回案内

引率教師の希望により、各受け入れ先を巡回することがあります。

②夜間等緊急時の対応

Page 96: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

84

事例 プログラムの実際 1~2日目 月日 主な活動 内容

7月13日

(一日目)

・小値賀着 ・到着式 ・アクティビティ①

「小値賀さるく」 ・民家さんとの顔合わせ ・民家視察 ・スタッフミーティング ・民家 泊

到着式 小値賀さるく① 小値賀さるく② 民家との顔合わせ 民家での様子① 民家での様子②

*小値賀さるく 町内に残る、昔ながらの漁師町の中を、地図を頼りに、ウォークラリ

ー方式で練り歩く。地元の人に聞かなければ分からないような問題を設

定し、町の雰囲気を感じることと、町民との交流をねらいとした。

Page 97: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

85

7月14日

(2日目)

・野崎島(無人島)へ移動 ・アクティビティ② 「飛び込み、トレッキング」

・テント設営 ・アクティビティ③ 白浜海岸での活動

・教会見学 ・スタッフミーティング ・野崎島自然学塾村 泊

飛び込み トレッキング① トレッキング② テント設営 浜辺での活動 教会見学

*飛び込み 高さ3~4M(最干潮時)から海に飛び込む。ライフジャケットを着

用しているものの、最初は足がすくんでしまう。この事業のキーワード

の一つである「チャレンジ」を体現する活動として設定。

3~4日目

7月15日

(3日目)

・小値賀へ移動 ・アクティビティ④ カヌー、スノーケリング

・民家迎え ・スタッフミーティング ・民家 泊

カヌー スノーケル指導 郷土料理作り *カヌー&スノーケル 豊な海を活用しての活動。このときは、途中から天候不順となった為

残念ながら、途中で終了した。

7月16日

(4日目)

・各民家にて体験 ・お別れ式 ・小値賀発 ・評価会

港での朝食 魚釣り体験 お別れ式

*各民家での体験 午前中は各民家において体験を行った。行う体験は民家ごとに違う。

Page 98: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

86

主な感想(事業後のアンケートより抜粋)

学校から ・児童に自主性と協調性を促す効果が見受けられた。 ・他の児童の動きを見ながら自分の分担を考えることができるようになった。 ・学校生活では集団にとけ込めず消極的だった児童が、様々な活動を通じて、自分の意見を言ったり、他の仕事で忙しい友達の作業を手伝ったりする等、積極的に仲間を手助けする行動に出た

保護者から ・子ども達だけで無人島に行かせたりしたことがないので、怪我や病気をしないか心配だった。 ・先生から実際現地に入って、直接体験した話をしてくれたので少し安心した。 ・保険や緊急連絡先がしっかりしているので感心した。

評価・課題(評価会から抜粋) 評価・課題 対策

「小値賀さるく」の際に、町民から「どこの子ども達だ?」

などの問い合わせがあった。(苦情ではなかったが)

事前に回覧版や町内放送で、他地域からの子ども達が来

ることを、知らせておく

こちらで把握できていない持病を持った児童がいた。

(健康調査票には記載されていなかった)

軽い喘息だったが、幸い発症しなかった。保護者として

は書く必要がないと判断したかも知れない。健康調査票

をしっかり書いてもらうことが必要。

カヌーとスノーケリングが、突然の荒天により途中で終

了となったが、多少混乱したものの、事故無く撤収でき

たのでよかった。全体を見渡す監視員を配置していたの

が正解だった。

これからも、海での活動の際は、必ず監視専門のスタッ

フを配置すべき。今回は優れた判断により、荒天になる

直前に撤収できたが、日頃からフィールドの観察力を養

うトレーニングが必要。

お別れ式終了後から船で出発するまでが長い。民家を時

間的に拘束してしまうのではないか。(不満が出ていた

わけではないが)

スケジュールの組み方として、余裕を持たせすぎたかも

知れない。但し、バタバタするよりはいいと思う。見送

りはプログラムの一部として必要なので民家に理解して

もらうことが必要。(事前打ち合わせで確認)

Page 99: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

87

○受入れ後 1)評価会の実施

受入れをした民家や担当スタッフで評価会を行いましょう。評価会の手法は様々

ですが、民家の中には高齢の方も多いので、アンケート式よりも、ヒアリング式の

方が効果的です。事業終了後、あまり間を空けずに開催するように心がけましょう。

2)請求書・領収書の発送

学校に請求書を発送し、入金が確認されたら、領収書を発送します。

3)各受け入れ先への体験料支払い

受け入れ先に体験料を支払います。体験料の支払いについては、推進主体で定め

たルールに則って支払いましょう。

4)事業報告書の作成

受け入れ終了ごとに事業報告書を作成し、計画の進捗や問題点などをきちんと評

価することによって、継続的な改善につなげましょう。

5)事後発表会への参加

学校によっては、事後に児童が活動の成果を発表する機会を設ける事があります。

出席の依頼があった場合は、積極的に参加しましょう。

受入れ後によくあること

①学校から御礼の手紙が送られてくる。

各民家に配布しましょう。次回への意欲が向上します。

②民家の住所・電話番号を教えて欲しいとの問い合わせが来る。

児童が個別に手紙などを送りたいからという理由がほとんどです。

喜ばしいことですが、民家の個人情報ですので、許可を得るなどの配慮が必要です。

Page 100: 五感で学ぼう! 自然体験プログラムはじめに この手引き書の目的 自然の中は、人間の五感に働きかける不思議な刺激に満ちています。これらの刺激は、

88

参考文献

○「キャンプ指導者入門」(2006年):社団法人日本キャンプ協会

○「キャンプディレクター必携」(2006年):社団法人日本キャンプ協会

○「自然体験活動指導者 安全管理ハンドブック」(2007年):CONE地

域子ども教室推進事業運営協議会

○「リスクマネジメントのてびき Part10」(2009年):社団法人日本キ

ャンプ協会 安全管理委員会

○安全海あそび講座(2008年):NPO法人海に学ぶ体験活動協議会(CN

AC)

○IOEキャンプマニュアル(1997年):野外教育研究所IOE

○自然体験活動における体験学習法の調査研究報告書(2000年):体験学習

法調査研究会

○農山漁村における宿泊体験活動の受入れのための手引き~子ども農山漁村交

流プロジェクトの推進に向けて~(2008年):農林水産省 農村振興局