(13)茶 - maff.go.jpると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千...

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(13)茶 (栽培面積は減少傾向) 茶の栽培面積は、生産者の高齢化、小区画茶園 や傾斜地茶園等の条件が不利な茶園の廃園等が進 行したことから、平成12(2000)年の5万ha から平成24(2012)年の4万6千haまで、9% (5 千 ha)減少しています(図 3-5-59)。 平成24(2012)年の栽培面積を地域別にみる と、最大の産地である静岡県や 3 位の三重県を含 む東海が全体の51%、次いで2位の鹿児島県を 含む九州が34%を占めており、2つの地域で全 体の 8 割以上を占めています。地域別の推移をみ ると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千 haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移して いますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減 少しています。 (茶の輸出は増加傾向) 二人以上の世帯における緑茶(リーフ)の購入数量は、平成17(2005)年の1,144gから平成23 (2011)年の972gまで15%減少しており、支出金額も5,615円から4,567円まで19%減少していま す(表 3-5-10)。 また、ペットボトル等の緑茶飲料の生産量は、平成 17(2005)年の 265 万 kL から平成 23(2011) 年の 223 万 kL まで 16%減少しています。 このため、茶の消費拡大に向けて、茶のブランド化の推進、新しい茶の楽しみ方の提案、健康食品や 化粧品等の新用途への利用に関する研究開発及びその成果の普及等を推進することが課題となっていま す。 表 3-5-10 緑茶の購入数量及び緑茶飲料の生産量の推移 (緑茶(リーフ)の一世帯当たりの年間購入数量及び支出金額の推移) (単位:g、円) 平成16年 (2004) 17 (2005) 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 購入数量 1,072 1,144 1,095 1,038 982 937 948 972 支出金額 5,536 5,615 5,484 5,290 5,031 4,780 4,424 4,567 資料:総務省「家計調査」(二人以上の世帯) (緑茶飲料の生産量の推移) (単位:千 kL) 平成16年 (2004) 17 (2005) 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 生産量 2,365 2,648 2,440 2,467 2,363 2,241 2,239 2,228 資料:(社)全国清涼飲料工業会「清涼飲料水関係統計資料」 図 3-5-59 茶の地域別栽培面積の推移 資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」 昭和55年 (1980) 12 (2000) 17 (2005) 22 (2010) 24 (2012) 23 (2011) 平成 2 (1990) 16.0 15.6 15.2 15.3 15.7 5.0 4.7 3.6 3.3 3.2 29.0 29.3 26.1 25.3 23.8 6.8 5.7 3.3 2.8 61.0 58.5 50.4 48.7 46.8 0 10 20 30 40 50 60 70 千 ha 九州 近畿 東海 四国 中国 2.5 関東・東山 15.6 15.6 3.2 3.2 23.4 23.2 2.4 2.3 46.2 45.9 220 第5節 主要農畜産物の生産等の動向

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Page 1: (13)茶 - maff.go.jpると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千 haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移して いますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減

(13)茶

(栽培面積は減少傾向)

茶の栽培面積は、生産者の高齢化、小区画茶園や傾斜地茶園等の条件が不利な茶園の廃園等が進行したことから、平成12(2000)年の5万haから平成24(2012)年の4万6千haまで、9%

(5千ha)減少しています(図3-5-59)。平成24(2012)年の栽培面積を地域別にみる

と、最大の産地である静岡県や3位の三重県を含む東海が全体の51%、次いで2位の鹿児島県を含む九州が34%を占めており、2つの地域で全体の8割以上を占めています。地域別の推移をみると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移していますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減少しています。

(茶の輸出は増加傾向)

二人以上の世帯における緑茶(リーフ)の購入数量は、平成17(2005)年の1,144gから平成23(2011)年の972gまで15%減少しており、支出金額も5,615円から4,567円まで19%減少しています(表3-5-10)。

また、ペットボトル等の緑茶飲料の生産量は、平成17(2005)年の265万kLから平成23(2011)年の223万kLまで16%減少しています。

このため、茶の消費拡大に向けて、茶のブランド化の推進、新しい茶の楽しみ方の提案、健康食品や化粧品等の新用途への利用に関する研究開発及びその成果の普及等を推進することが課題となっています。

表3-5-10 緑茶の購入数量及び緑茶飲料の生産量の推移

(緑茶(リーフ)の一世帯当たりの年間購入数量及び支出金額の推移)(単位:g、円)

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

購入数量 1,072 1,144 1,095 1,038 982 937 948 972支出金額 5,536 5,615 5,484 5,290 5,031 4,780 4,424 4,567

資料:総務省「家計調査」(二人以上の世帯)

(緑茶飲料の生産量の推移)(単位:千kL)

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

生産量 2,365 2,648 2,440 2,467 2,363 2,241 2,239 2,228

資料:(社)全国清涼飲料工業会「清涼飲料水関係統計資料」

図3-5-59 茶の地域別栽培面積の推移

資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」

昭和55年(1980)

12(2000)

17(2005)

22(2010)

24(2012)

23(2011)

平成2(1990)

16.0 15.6 15.2 15.3 15.7

5.0 4.7 3.6 3.3 3.2

29.0 29.326.1 25.3 23.8

6.8 5.73.3 2.8

61.0 58.5

50.4 48.7 46.8

0

10

20

30

40

50

60

70千ha

九州近畿

東海

四国中国

2.5

関東・東山

15.6 15.6

3.2 3.2

23.4 23.2

2.4 2.3 46.2 45.9

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第5節 主要農畜産物の生産等の動向

Page 2: (13)茶 - maff.go.jpると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千 haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移して いますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減

このような中、緑茶の輸出量は健康志向等を背景として、平成17(2005)年の1,096tから平成24(2012)年の2,351tまで2倍に増加しています(図3-5-60)。また、平成24(2012)年の輸出量を国別にみると、米国が1,127tと48%を占めており、次いで、台湾(262t)、シンガポール(257t)、カナダ(144t)の順となっています。

図3-5-60 緑茶の輸出数量の推移

資料:財務省「貿易統計」を基に農林水産省で作成

500

1,000

0

1,500

2,000

2,500

平成17年(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

24(2012)

23(2011)

t

353865 750 776

1,063 1,136 1,228 1,12784

51 91 73

78 107171 262

82

103 94 107

131169

166 257

74

56 137 162

149172

198 144

48 55 39

5898

86 114

96

73 92 124

82100

124 104

389

380 407 420

397450

413 343

1,096

1,576 1,625 1,7011,958

2,2322,387 2,351

米国

その他

ドイツ

シンガポール

カナダ

台湾

タイ

コラム

日本茶・宇治茶の世界文化遺産登録に向けた取組

茶は、平安時代(9世紀初め)に中国・唐から伝来し、京都の寺院等で栽培・利用が始まりました。鎌倉時代(12世紀末)に中国・宋から臨済宗の開祖栄

えい西さい

により挽き茶を使った点てん

茶ちゃ

法が伝わり、栄西の下で禅をきわめた明

みょう恵え

上人が茶の栽培を広めました。宇治において茶の生産が始まったのは13世紀初めといわれています。室町時代(14世紀半ば)には喫茶の習慣が広がり、喫茶と料理を組み合わせ、座敷飾りや茶道具を鑑賞する「茶の湯」が登場しました。

安土桃山時代(16世紀後半)には宇治で、「覆おおい

下した

栽さい

培ばい

」と呼ばれる栽培法が開発されたことで、鮮やかな濃緑色をしたうま味の強い茶が生産され、日本特有の抹茶が生まれました。

千利休が16世紀に大成した「茶の湯」では宇治茶(抹茶)が用いられ、茶の湯はその作法だけでなく茶室や庭園、懐石料理と一体となって進展しました。茶園ごと、栽培年ごとに香りや味に違いのある茶の品質を一定に維持した茶師たちのブレンド技術も茶の湯を支えました。

また、江戸時代中期(18 世紀中期)には、宇う

治じ

田た

原わら

の茶農家によって宇治製法(青あお

製せい

煎せん

茶ちゃ

製せい

法ほう

)が開発され、この製法で作られた煎茶は、色味、香りやうま味が良く、全国の茶産地に広められて、現在も日本茶の製法の主流となっています。

さらに宇治では、19世紀に覆下栽培の葉を宇治製法で仕上げる玉露が生み出されました。このように、宇治茶が何世紀にもわたって日本茶のトップブランドとして評価される中で、京都・

山城地域は、抹茶、煎茶、玉露という現代の日本茶を代表する茶の栽培・製法を常に開発するとともに、日本を代表する喫茶文化を生み、支え、育んできました。

221

第1部

第3章

Page 3: (13)茶 - maff.go.jpると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千 haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移して いますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減

これらを踏まえ、京都府では、京都・山城地域に集積している茶畑・茶工場、茶師・茶商の屋敷や茶問屋、茶室・茶席等の茶の生産、流通、喫茶にわたる日本の茶文化の変遷を表す重要な文化遺産群を保全、継承、発信することにより、茶の生産体制の強化と担い手確保、消費拡大につなげていくことを目的として、「日本茶・宇治茶」のユネスコ世界文化遺産の登録に向けた取組を進めています。

本ずの覆下栽培 山の斜面を利用した茶畑 茶問屋の町並み 利休の茶室(妙喜庵待庵)

(茶作経営は農業所得が低下傾向)

畑作経営茶作部門(東海)の農業粗収益の推移をみると、平成16(2004)年の42万5千円/10aから平成21(2009)年の25万8千円/10aまで39%減少しています(図3-5-61)。この期間における荒茶の農産物価格指数(平成17(2005)年=100)をみると、平成16(2004)年の106から平成21

(2009)年の71に低下しており、茶の価格低下が農業粗収益の減少要因となっていると考えられます(図3-5-62)。

また、農業経営費は平成16(2004)年から平成20(2008)年にかけて、24万円/10aから26万円/ 10aの間で推移していますが、平成21(2009)年以降は低下傾向で推移し、平成23(2011)年は21万9千円/10aとなっています。一方、農業所得は平成16(2004)年の17万7千円/10aから平成21

(2009)年の2万8千円/10aまで84%減少した後やや回復しましたが、平成23(2011)年は3万8千円/10aとなっており、平成16(2004)年に比べて79%減少しています。

図3-5-61 茶作部門(東海)の10a当たり農業粗収益及び農業所得の推移

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

資料:農林水産省「農業経営統計調査 営農類型別経営統計(個別経営)」

注:図3-5-6の注釈参照。

425 405

353 361

050100150200250300350400450千円/10a

農業経営費農業所得

農業粗収益

308258 269 257249 252 243 263

257230 227 219

177153

110 99 5128 3842

図3-5-62 茶の農産物価格指数の推移(平成17(2005)年=100)

112100

87 8371

6471

89106100

94 92

7871

82

87

0

20

40

60

80

100

120

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

生葉

荒茶

資料:農林水産省「農業物価統計」注:平成16(2004)年の指数については、平成17(2005)年

基準の指数と接続させるためのリンク係数を用いて算出した。

222

第5節 主要農畜産物の生産等の動向

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(14)牛乳・乳製品

(牛乳・乳製品の生産量は近年減少傾向)

我が国における牛乳・乳製品の消費仕向量(生乳換算ベース)は、国民1人当たり供給数量(生乳換算ベース)の増加とともに増加してきました。最近では、景気低迷等の要因から減少しつつも、平成23(2011)年度においては、前年度の1,137万tに比べて2%増加し、1,163万tとなっています(図3-5-63)。

一方、生乳生産量は、需要に応じて増加してきま し た が、 近 年、 減 少 傾 向 に あ り、 平 成23

(2011)年度においては、前年度の猛暑による受胎率の低下や東日本大震災の影響等から、前年度の763万tに比べて1%減少し753万tとなっています。

また、輸入量(生乳換算ベース)は、需要に応じて増加しており、平成23(2011)年度は、402万tとなっています。

(牛乳等の生産量は伸び悩み、チーズ向けの需要増加に期待)

牛乳・乳製品の品目別の生産量の推移についてみると、牛乳は、平成16(2004)年の397万kLから平成23(2011)年の306万kLまで23%減少しています(表3-5-11)。また、加工乳・成分調整牛乳は、牛乳よりも安価であること等を背景に増加してきましたが、平成23(2011)年には、需要が反転し、前年から13%減の59万kLとなっています。このような中、はっ酵乳については、健康志向等を背景に生産量が増加していますが、牛乳、加工乳・成分調整牛乳等を加えた牛乳等全体では、生産量は伸び悩みの傾向となっています。

一方、乳製品については、バター、脱脂粉乳等は、減少傾向となっていますが、チーズやクリームについては、近年需要が高まっており、生産量も増加傾向にあります。

特にチーズについては、国内需要の約8割を輸入品が占めているため、今後は、国産生乳の需要拡大を図るためにも、国産チーズの生産を拡大していくことが重要となっています。このため、取引価格が安価となるチーズ向け生乳に対し、「チーズ向け生乳供給安定対策」により、1kg当たり14.6円(平成24(2012)年度)の助成金を交付し、国産生乳のチーズへの仕向量の増大等を図っています。

図3-5-63 牛乳・乳製品の生産量、消費仕向量等の推移

650820 841 753

141224

395 402

7941,058

1,2311,16365.3

83.294.2 88.6

0

20

40

60

80

10

30

50

70

10090

02004006008001,0001,2001,400万t

生産量

消費仕向量

輸入量

昭和55年度(1980)

平成2(1990)

12(2000)

23(2011)

1人当たり供給数量(右目盛)

kg

資料:農林水産省「食料需給表」注:生乳換算ベースの値。

223

第1部

第3章

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表3-5-11 牛乳等及び乳製品の品目別生産量の推移

(牛乳等)(単位:千kL)

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

牛乳 3,971 3,823 3,702 3,592 3,509 3,180 3,069 3,064加工乳・ 成分調整牛乳 483 467 449 446 442 625 678 589

乳飲料 1,189 1,203 1,242 1,312 1,241 1,180 1,210 1,279はっ酵乳 778 800 839 844 813 821 841 843乳酸菌飲料 174 174 166 173 179 199 184 178

(乳製品)(単位:千t)

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

全粉乳 14.9 14.4 13.8 14.0 13.5 12.6 13.2 14.3脱脂粉乳 182.7 186.8 180.7 172.5 158.2 167.3 155.6 137.1調製粉乳 34.8 32.0 31.2 30.0 30.2 34.9 32.9 27.6クリーム 91.5 91.0 95.6 103.1 107.5 104.9 107.4 111.7チーズ 119.6 122.5 124.9 125.4 118.3 122.1 125.0 131.3バター 80.1 84.1 80.5 75.1 71.7 81.0 73.6 62.8

資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

(都府県においては、生乳生産基盤の弱体化が懸念)

乳用牛の飼養頭数は、減少傾向で推移しており、平成12(2000)年の176万頭から平成24

(2012)年の145万頭まで減少しています(図3-5-64)。飼養頭数を地域別にみると、平成24

(2012)年においては、北海道が82万頭と全体の57%を占めています。

飼養戸数についても減少傾向で推移しており、平 成12(2000) 年 の3万4千 戸 か ら 平 成24

(2012)年の2万戸まで減少1しています。しかしながら、1戸当たりの飼養頭数は、平成12

(2000)年の52.5頭から平成24(2012)年の72.1頭まで増加2しており、規模拡大の進展がうかがえます。

また、飼養頭数規模別にみると、平成24(2012)年においては、100頭以上の層は全国の飼養戸数の10%となっていますが、飼養頭数では36%を占めています(図3-5-65)。

図3-5-64 乳用牛の地域別飼養頭数の推移

資料:農林水産省「畜産統計」

19.1 19.7 15.8 15.1 12.2 11.9 12.010.9

12.0

44.2 39.929.1 25.2 21.3 20.7 20.2

24.621.6

16.4 14.712.3 12.0 11.7

77.1 84.7

86.785.8

82.7 82.8 82.2

210.4 205.8

176.4165.5

148.4 146.7 144.9

0

50

100

150

200

250

昭和56年(1981)

平成2(1990)

12(2000)

17(2005)

22(2010)

23(2011)

24(2012)

万頭北海道

近畿

四国

中国 東海

九州

東北

関東・東山

1、2 農林水産省「畜産統計」

224

第5節 主要農畜産物の生産等の動向

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図3-5-65 乳用牛の成畜飼養頭数規模別飼養戸数及び飼養頭数の割合

1.7

2.2

0.4

0.5

25.7

21.8

6.7

4.7

16.8

14.8

9.8

6.7

29.1

26.2

27.8

19.2

18.6

19.6

29.7

24.3

3.6

5.1

8.2

9.1

4.4

10.2

17.4

35.5

平成14年(2002)

24(2012)

14(2002)

24(2012)

子畜のみ

0 20 40 60 80 100 %

飼養戸数

飼養頭数

1 ~ 19頭 20~ 29頭 30~ 49頭50~ 79頭 80~ 99頭 100頭以上

資料:農林水産省「畜産統計」注:学校、試験場等の非営利的な飼養者は含まない。

飼養戸数の推移を北海道・都府県別にみると、平成12(2000)年から平成24(2012)年までに北海道で27ポイント減少しているのに対し、都府県では46ポイント減少しています(図3-5-66)。一方、この間の生乳生産量は、北海道ではほぼ横ばいで推移しているのに対し、都府県では115万t減少しています。

特に都府県においては、飼養戸数の減少に規模拡大の進展が追いついておらず、生産基盤の弱体化が懸念されます。

図3-5-66 乳用牛の飼養戸数の変化と生乳生産量の推移

485 442 408 398 382 360 370

365 386 391 393 390 388 394

850 829 798 791 772 747 763

0

200

400

600

800

1,000万t

北海道 都府県

7969 64 60 57 54

10089

81 79 77 75 73

北海道

都府県

60

40

80

100

120

0

資料:農林水産省「畜産統計」、「牛乳乳製品統計」

平成12年(2000)

17(2005)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

24(2012)

(飼養戸数の変化(平成12(2000)年=100)) (生乳生産量の推移)

平成12年(2000)

17(2005)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

24(2012)

(酪農の1頭当たりの粗収益は増加しつつも、所得は減少)

酪農経営(酪農部門)における農業粗収益については、平成16(2004)年の89万7千円/頭から、平成23(2011)年には97万8千円/頭まで増加していますが、農業経営費についても、平成16(2004) 年 の69万4千 円/頭 か ら 平 成23

(2011)年の83万4千円/頭まで増加しています(図3-5-67)。

このような中、農業所得の推移をみると、平成16(2004) 年 の20万2千 円/頭 か ら 平 成20

(2008)年の8万9千円/頭まで減少しましたが、平成21(2009)年は農業粗収益の増加に伴い17万6千円/頭に増加しました。しかしながら、

図3-5-67 酪農部門の搾乳牛1頭当たり農業粗収益及び農業所得の推移

897 900 864 878 920 983 961 978

694 712 722 764 830 808 808 834

202 188 142 114 89176 153 144

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

0

200

400

600

800

1,000

1,200千円/頭 農業経営費 農業所得農業粗収益

資料:農林水産省「農業経営統計調査 営農類型別経営統計(個別経営)」

注:図3-5-6の注釈参照。

225

第1部

第3章

Page 7: (13)茶 - maff.go.jpると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千 haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移して いますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減

平成22(2010)年以降は減少に転じ、平成23(2011)年の農業所得は14万4千円/頭となっています。これは、農業経営費の増加が一因となっており、この間における配合飼料価格高騰の影響がうかがえます。

(地域ぐるみで生産基盤の維持・確保に取り組むことが重要)

このように我が国の酪農の状況は、規模拡大は進展しつつも、特に都府県においては、生産基盤の弱体化が懸念され、今後、持続的に酪農経営を維持していくためにも、地域ぐるみで経営継承等に取り組み、生産基盤の維持・確保を図っていくことが重要です。このため、酪農における労力軽減を図るため、酪農ヘルパー制度の充実・強化、コントラクターやTMRセンター1等、作業の外部化に資する支援組織の設立・育成に向けた支援等を推進するほか、離農農家等の家畜や畜舎等の経営資源を有効活用し、後継農家に継承していくための支援等が重要となっています。

また、配合飼料価格の高騰等による経営費の増大等を踏まえ、平成25(2013)年度の畜産物価格では、加工原料乳地域における生乳の再生産確保を図るため、加工原料乳生産者補給金単価を12.55円/kg(+35銭/kg)で決定したほか、その他関連対策についても措置することとしており、これら対策等を通じて生産基盤の維持・確保を推進しています(図3-5-68)。

図3-5-68 酪農の生産基盤維持・確保のための対策(平成25(2013)年度)

1.加工原料乳生産者補給金補給金単価 → 12.55円/kg(+35銭/kg)限度数量  → 181万t

2.チーズ向け生乳供給安定対策事業助成単価  → 15.1円/kg

3.加工原料乳確保緊急対策事業4.持続的酪農経営支援事業

持続的な経営を行う酪農家に対し、飼料作物作付面積に応じた交付金を交付

5.その他関連対策・生乳需要基盤強化対策(補正予算)・酪農生産基盤回復緊急支援事業・酪農ヘルパー事業の拡充・牛群検定システム高度化支援事業の拡充・国産粗飼料増産対策・飼料自給力強化支援(補正予算)・畜産経営力向上緊急支援リース事業(補正予算)

資料:農林水産省作成

(15)牛肉

(牛肉の生産量はほぼ横ばいで推移)

牛肉の消費仕向量は、平成2(1990)年度の110万tから平成12(2000)年度の155万tに41%増加しています。これ以降、国内でのBSE

(牛海綿状脳症)2や口蹄疫3の発生のほか、景気の低迷等の影響により減少し、近年は回復傾向にあるものの、平成23(2011)年度には125万tとなっています(図3-5-69)。

一方、生産量についてはほぼ横ばいで推移しており、平成23(2011)年度には51万tとなっています。

1~3[用語の解説]を参照。

図3-5-69 牛肉の生産量、消費仕向量等の推移

43

56

52 51

17

55

106 74

60

110

155155

1253.5

5.5

7.6

6.0

012345678

020406080100120140160180

昭和55年度(1980)

平成2(1990)

12(2000)

23(2011)

万t

生産量

消費仕向量

輸入量

1人当たり供給数量(右目盛)

kg

資料:農林水産省「食料需給表」

226

第5節 主要農畜産物の生産等の動向

Page 8: (13)茶 - maff.go.jpると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千 haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移して いますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減

(九州、北海道が主な肉用牛産地)

肉用牛の飼養頭数の推移をみると、平成22(2010)年までは増加傾向にありましたが、平成22(2010)年に発生した口蹄疫や近年の需要低迷等により、減少に転じており、平成24(2012)年は、272万頭となっています(図3-5-70)。

地域別にみると、北海道における飼養頭数が増加しており、平成24(2012)年では、北海道は53万頭と九州の98万頭に次ぐ肉用牛の産地となっています。

(肉用牛農家は、小規模層が多く存在する中で大規模層中心に生産展開)

肉用牛の飼養戸数は、平成14(2002)年の10万4千戸から平成24(2012)年の6万5千戸に3万9千戸減少1しています。しかしながら、1戸当たりの飼養頭数は、平成14(2002)年の27.2頭から平成24(2012)年の41.8頭に増加2しており、規模拡大の進展がうかがえます。

また、飼養頭数規模別の飼養戸数の割合をみると、100頭未満の層が全国の肉用牛飼養農家戸数の93%を占める一方、飼養頭数をみると、100頭以上の層が全国の65%を占めています(図3-5-71)。

このことから、我が国の肉用牛飼養農家は、全体として規模拡大の進展はみられるものの、小規模層が数多く存在する中で、大規模層を中心に生産を展開している構造となっていることがうかがえます。この背景として、肉用牛経営のうち、繁殖経営については、稲作等との兼業の中で主に小規模に展開されてきた一方、肥育経営については、効率的な経営展開を目指し、大規模化が進展してきたことが考えられます。

図3-5-71 肉用牛の飼養頭数規模別飼養戸数及び飼養頭数の割合

40.440.4

32.732.7

3.83.8

2.42.4

23.323.3

22.122.1

5.95.9

3.83.8

16.416.4

17.717.7

8.18.1

6.06.0

10.810.8

14.014.0

11.911.9

11.111.1

4.04.0

6.56.5

10.310.3

11.511.5

2.72.7

3.63.6

13.513.5

12.712.7

2.52.5

3.43.4

46.446.4

52.452.4

0 20 40 60 80 100

平成14年(2002)

24(2012)

14(2002)

24(2012)

飼養戸数

飼養頭数

1 ~ 4頭

200頭以上100~ 199頭50~ 99頭

20~ 49頭10~ 19頭5~ 9頭

資料:農林水産省「畜産統計」注:学校、試験場等の非営利的な飼養者は含まない。

(牛枝肉価格と子牛価格は低下傾向から回復傾向に変化)

牛枝肉価格は、景気の低迷等を背景として、平成19(2007)年度以降、低下傾向で推移してきた中で、平成23(2011)年度には東日本大震災による消費の減退や牛肉から暫定規制値を超える放射性物

図3-5-70 肉用牛の地域別飼養頭数の推移

北海道

九州

四国

中国近畿

東海

関東・東山

東北

沖縄86.886.897.797.7 101.1101.1 105.9105.9 98.498.4 97.597.5

10.710.716.816.8

14.914.9 14.214.2 13.713.7 13.213.2 13.013.010.810.810.510.516.216.216.616.6 14.714.7 14.514.5

14.014.0 13.813.8

38.138.137.137.1 32.732.7 32.832.8

31.431.4 31.031.0

53.453.4 44.144.139.739.7 41.341.3

39.439.4 37.337.3

29.029.0 41.441.444.844.8

53.953.953.653.6 53.453.4

270.2270.2282.3282.3 274.7274.7

289.2289.2276.3276.3 272.3272.3

0

50

100

150

200

250

300

昭和56年(1981)

平成2(1990)

12(2000)

17(2005)

22(2010)

23(2011)

24(2012)

万頭

資料:農林水産省「畜産統計」

76.7

18.6

14.229.1

42.5

20.6

228.1

1、2 農林水産省「畜産統計」

227

第1部

第3章

Page 9: (13)茶 - maff.go.jpると、九州は平成12(2000)年以降、1万5千 haから1万6千ha程度でほぼ横ばいで推移して いますが、東海は平成12(2000)年の2万6千haから平成24(2012)年の2万3千haまで11%減

質が検出された影響により更に低下しましたが、平成23(2011)年度後半からは回復傾向にあります(図3-5-72)。

また、肉用子牛の価格は、枝肉価格の低迷等の影響を受け、平成23(2011)年には和牛子牛(去勢)で39万3千円まで低下しましたが、その後枝肉価格の回復、肉用子牛の頭数の不足感等により上昇に転じ、平成24(2012)年には43万円となっています1。

図3-5-72 牛枝肉の規格別卸売価格の推移(東京市場)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

平成16年(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

24(2012)

円/kg去勢和牛A-4

交雑種去勢牛B-4

乳用種去勢牛B-3

資料:農林水産省「畜産物流通統計」

(肥育経営は農業経営費の増大等により厳しい経営環境)

枝肉価格の低迷等を受け、肉用牛経営(肥育牛部門)における農業粗収益は、平成19(2007)年の63万2千円/頭から減少し、平成23(2011)年 は61万8千 円/頭 と な っ て い ま す(図3-5-73)。一方、農業経営費は、動物費(もと畜費)2

や飼料費の増大等により、平成16(2004)年の48万2千円/頭から平成23(2011)年の57万9千円/頭まで増加しています。その結果、農業所得は、平成16(2004)年の12万3千円/頭から平成23(2011)年の3万9千円/頭まで減少しており、厳しい経営環境となっています。

(肉用牛経営に対して経営安定対策を実施)

このような状況の中、肉用牛肥育経営の安定を図るため、粗収益が生産コストを下回った場合に、生産者と国の積立金から差額の8割を補填金として交付する肉用牛肥育経営安定特別対策事業(新マルキン事業)を実施しています。本事業の実施に当たっては、より現場の実情が反映されるよう、平成25

(2013)年度からは、一部の県における地域算定をモデル的に実施し、より一層の制度の改善を図ることとしています。

また、肉用牛繁殖経営の安定を図るため、子牛価格が保証基準価格を下回った場合に生産者補給金を交付する肉用子牛生産者補給金制度を措置しているほか、これを補完するものとして肉専用種の子牛価格が発動基準を下回った場合に差額の4分の3を交付する肉用牛繁殖経営支援事業を実施しています。

図3-5-73 肉用牛肥育牛部門の1頭当たり農業粗収益及び農業所得の推移

23(2011)

22(2010)

21(2009)

20(2008)

19(2007)

18(2006)

17(2005)

平成16年(2004)

568 581 625 604531 489 534 521

38 2111 28

5678

63 97605 602

636 632586 567

597 618

482 502546 570 576 556 562 579

123 100 90 6210 11 35 39

0

100

200

300

400

500

600

700千円/頭

販売収入等 共済・補助金等共済・補助金等農業経営費農業所得

農業粗収益

資料:農林水産省「農業経営統計調査 営農類型別経営統計(個別経営)」

注:図3-5-6の注釈参照。

1 農林水産省「農業物価統計」(子畜・和子牛(雄))。平成23(2011)年は7月の値。平成24(2012)年は1~12月の平均値。2 肥育の材料となるもと畜(子牛、子豚等)を入手するために要した費用。

228

第5節 主要農畜産物の生産等の動向