(1) 筑波大が被災者支援 · 2015-10-15 ·...

(1) 第 323 号 2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月) 第323号 編集責任 発 行 所 茨城県つくば市 天王台1-1-1 筑波大学 福原直樹 shinbun@ un.tsukuba.ac.jp E-mail 029(853)2040・6699 TEL: 筑波大学新聞 編集代表 19 使10 20 30 70 使紙面から ミニ特集 特集 10 67 , 学生から不満 10 筑波大どう動く 国立大 文系縮小問題 就活の後ろ倒し 宿23 宿宿10 ごみ置き場付近に不法投棄されたごみ(9 月 30 日、 宿10 11 14 10 70 11 21 家屋の浸水被害で出た大量のごみの撤去作業を手伝う学生ら (9 月 21 日、常総市水海道で) 一の矢学生宿舎で) 20 15 宿宿退LGBT支援体制の確立へ 使73 宿宿宿宿08 使10 15 15 21 56 宿1階部分が浸水し、床のタイルがはがれた常総市役 (9 月 21 日、常総市水海道で) 380

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(1) 筑 波 大 学 新 聞  第 323 号2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月)

第323号編集責任

月    刊

発 行 所

茨城県つくば市天王台1-1-1

筑 波 大 学

 福原直樹

[email protected]

E-mail029(853)2040・6699TEL:

筑波大学新聞編集代表

 

東京国立博物館に「観か

んぜ世

正宗」という日本刀がある。

1868年の江戸城無血開城

の際、幕府側が江戸城の大広

間に置いた観世正宗を、新政

府側の有栖川宮が取り上げる

儀式が行われた▼刀名の由来は、観

阿弥と世阿弥の流れを汲む能の流派

「観世流」が所蔵していたことだ。

能は「鎮魂の芸術」と称され、盲人

や子を失った母などを題材に、運命

の悲しみの中に見える生命の輝きを

描き出す。その家に伝わる名刀が、

無血開城の象徴となった▼安全保障

関連法が9月19日に成立し、集団的

自衛権の限定的な行使が認められ

た。この夏、例年通り各地で鎮魂の

祈りが捧げられたが、同法に平和を

危惧する声も多い。政府は「戦争の

リスクは減る」と言うが、自衛隊は

「抜かずの刀」であり続けられるの

か▼世阿弥の有名な訓戒にある「初

心忘るべからず」とは、物事を始め

たときに抱いた気持ちや感覚を忘れ

てはならない、というものだが、実

はもう一つの意味がある。10年目、

20年目、30年目……。その時々になっ

て初めて感じるもの、つまり「時々

の初心」を成長の糧にせよ、との意

味だ▼終戦から今年で70年。集団的

自衛権の限定的な行使容認という

「時々の初心」は、果たして未来へ

の糧となるのか。一人ひとりが多様

な意見に耳を傾け、国の現状や方向

性を考え続けることで生まれる「初

心」こそ、平和への糧としたい。

紙面から

ミニ特集

特集

TIAS

鳥人間コンテスト

欧州見聞録

蹴球部

柔道

絶対音感

国際スポーツの先導者育成

5年ぶりの完走に歓喜

世界選手権

永瀬が「金」

1年生

堂々の初舞台

ドイツ

難民殺到で対応限界210 9854

67,学生から不満

総理大臣杯

10年ぶりの3位

筑波大どう動く国立大 文系縮小問題

就活の後ろ倒し

対応をマニュアル化

 

学生宿舎付近に長年、家具や家電が大量に不法投棄され、平成23年度から昨年

度までの過去4年間だけで共益費から約1150万円の処分費用を支払っていた

ことが、学生生活課と学生宿舎管理事務所への取材で分かった。学生だけでなく

学外者も投棄していたとみられ、同事務所はすでにつくば中央署に通報している。

同事務所によると処分費用が減少すれば、昨年廃止された宿舎入居者へのごみ袋

の無料配布を再開したり、補食室などの共用スペースの清掃回数を増やすなどの

改善ができるという。(山野辺拓実=社会学類2年、写真も。10面に関連記事)

ごみ置き場付近に不法投棄されたごみ(9月 30 日、

東日本豪雨

物資を輸送

心のケアも

筑波大が被災者支援

宿舎付近に大量不法投棄

 

9月10日に起きた東日本豪雨で鬼怒川の堤防が決

壊し、甚大な被害を受けた茨城県常総市。筑波大の

学生や教職員らは災害発生直後から支援活動を行っ

ている。その中で同大大学院社会工学専攻は11日か

ら、教員が同市に連絡し、地元の要望を踏まえなが

らボランティアの学生を募集。14日から教職員、学

生が現地で活動し、10月1日現在で延べ70人の学生

を派遣している。現地で学生2人の活動を追った。

(新田萌夏=社会学類3年、写真も。11面に関連記事)

 

21日の朝、常総市役所。

任ニンシブン

詩文さん(社工専攻1年・

中国出身)郭カ

クオンシ

恩志さん(同

1年・台湾出身)の2人が

一般の人々のボランティア

の受け付けをしていた。常

総市に住むという年配の夫

処分費

昨年 

万 共益費から

家屋の浸水被害で出た大量のごみの撤去作業を手伝う学生ら(9月 21 日、常総市水海道で)

ダイバーシティ

推進室

一の矢学生宿舎で)

婦や20代前後の男性6~7

人。受付に並ぶボランティ

ア志願者たちに、任さんら

は受付票を渡した。受付票

にはボランティアらが住所

などを記入。それを基に市

側が配置先などを決める。

 

この後、2人は市役所近

くの水み

つかいどう

海道地区で浸水被害

にあった家屋でのごみの撤

去作業に参加した。周辺の

民家付近には大量のごみ袋

が積み上がり、壁には浸水

の跡が残る。庭には消毒用

の石灰がまかれ、白いま

だら模様が点々としてい

た。大量の本、家具、散乱

したダンボール……。ボラ

ンティアに入った家も、水

と泥にまみれた家財が散ら

ばっていた。強い日差しが

照りつけ悪臭が漂う中、2

人はそれを丁寧に分別しな

がら黙々と袋にまとめてい

く。2人の額に汗が光った。  

その家の住人は「ごみの

撤去作業は一人ではとても

できないので、手伝っても

らい本当にありがたい」と

話す。また、水海道地区に

ついて、「(同地区を流れる)

鬼怒川はこれまでにも大き

な洪水を起こしてきた。今

後は昔から土地に住んでい

る人に話を聞き、土地の特

徴を理解した上で対策に乗

り出すべきだ」と話してい

た。

 

一方、郭さんは「台湾で

は災害時に大学の教員など

が率先して行動を起こすこ

とはあまりない。今回のボ

ランティアに参加して力に

なれてうれしい」と語った。

 

筑波大では、硬式野球部

のメンバーらも15日に支援

活動を行った。また、筑波

大附属病院の精神科と、災

 

不法投棄の現場は平砂・

追越・一の矢の各宿舎にあ

る燃えるごみやびん・かん

などのごみ捨て場周辺。3

宿舎の少なくとも6カ所

に、不法投棄されたごみの

たまり場があり、最大のも

ので約6㍍四方のスペース

が2㍍近くの高さまでごみ

で埋め尽くされている。

 

年度末で引っ越しが増え

る3月や短期入居者が退去

する8月になると、不用に

なった椅子やパソコン、冷

蔵庫、洗濯機、マットレス

などが山積みになる。一定

の期間が経つと管理事務所

LGBT支援体制の確立へ 

筑波大学が性的少数者(LGB

T)= 

=の学生への支援体制を

整えることがダイバーシティ推進

室への取材でわかった。LGBT

の学生の相談窓口を設けるほか、

支援方法をまとめたマニュアルを

作成していく方針で、マニュアル

は、これまで学内の各部署で行っ

ていた対応例をまとめ、LGBT

の学生への対応方法を学内で共有

する。今年度内に完成させ、ネッ

トに公開する予定だ。こうしたL

GBTの学生に対する全学的な取

り組みは国立大学で初めて。

 

同推進室によるとマニュアルに

は、学生に対応する部署や対応方

法などを掲載する。例えば、LG

BTの学生が体育の授業で更衣室

を使う場合や健康診断を受ける場

合などは、それぞれの対応組織で

ある体育センターや保健管理セン

ターに相談し、別室を設けるなど

の個別対応をしてきた。

 

これまで、筑波大では相談ごと

に個別対応しており、対応方法を

が回収業者を雇いごみを処

分するが、昨年度処分され

たごみは約73㌧。処分費用

は約380万円で、学生が

宿舎の寄宿料と共に毎月収

める共益費(一般単身では

6830円)の一部から負

担されている。

 

不用になった家具は、粗

大ごみとしてつくば市に処

理を頼むなど、市が指定す

る方法で処分しなければな

らない。学生生活課は「宿

舎を出る学生や卒業生が、

処分に困った家具や家電を

軽い気持ちで投棄している

のだろう」と指摘する。

 

また、学生が捨てるとは

考えにくい業務用の大型冷

蔵庫や屋台用の鉄板、大量

のテレビが捨てられたケー

スもあり、「学外者がどこ

かで処分できることを聞き

つけ、投棄しているのでは」

(学生生活課)ともいう。

 

同課によると、かなり以

前から宿舎敷地内で大量の

不法投棄が続いており、こ

れも共益費などで処理して

いたという。この対策とし

て08年に「仮設粗大ごみ置

き場」を設置、そこに不法

学内で共有していなかったため、

LGBTの学生はどのような対

応・支援を受けられるのかわから

なかった。大学は対応方法を共有

し、窓口を統一することで、学生

が相談しやすい環境を整えたい意

向だ。

 

また、LGBTとその支援者が

運営するサークル「にじひろ」と

も連携。「にじひろ」に所属する

学生に大学への要望などを同推進

室の職員が聞き取り、改善を図る。

同推進室担当者は「過去に『男性

の格好ではあるが心は女性なので

女子トイレを使用したい』という

相談もあった。全ての要望に応え

ることは難しいが、相談や要望に

応じて支援の内容を拡充していき

たい」と話した。

   (油布知夏=人文学類3年)

  

LGBT=レズビアン(女性

同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、

バイセクシャル(両性愛者)、ト

ランスジェンダー(心と体の性が

一致しない人)の頭文字をとった

言葉で、性的に少数派の人を指す。

害時の心のケアについて教

育研究活動を行う災害精神

支援学講座(医学医療系)

は、県立こころの医療セン

ター(茨城県笠間市)など

と連携し、災害直後から被

災者の心理的な負担の軽減

などを行っている。

 

また、筑波大附属病院で

は、10日に災害対策本部を

設置、浸水した常総市の病

院などから患者15人を受け

入れた。さらに大学では15

日、21日に飲料水や非常食

などの支援物資を常総市に

提供。今後もボランティア

を学内で募集し、義援金も

募る。

 

一方、常総市に住む筑波

大の学生や教職員で、自宅

が浸水被害などに遭った人

は56人に及んだ。筑波大は

これらの被災者に宿舎の貸

与を検討している。

1階部分が浸水し、床のタイルがはがれた常総市役所(9月 21 日、常総市水海道で)

380

投棄物を集めた。ここへの

投棄は禁じられているが、不法投棄を行う人間は次第

に増加していったという。

長年状況変わらず

学外者も投棄?

筑 波 大 学 新 聞 第 323 号 (2)学内総合2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月)

国際スポーツの先導者育成

 

10月17(土)―18日(日)につくばセンター広場(つ

くば市吾妻)で開催される。

 

青森、岩手、山形、秋田、宮城、福島から11の酒造

が集まり日本酒を販売するほか、東北のご当地グルメ

を販売する。

 

また、筑波大学ときめき太鼓塾や応援部WINSな

どのステージも用意される予定。

  

 

就職活動を目前に控えた学生を対象に、10月8日

(木)に3A204で行われる。

 

就職活動を終えたばかりの内定者や、ソフトバンク

の人事部社員を交え就職活動やインターンシップでの

疑問点などを討論する。

 

参加希望の学生は事前に予約が必要。 

催事食

と酒 

東北祭り

Take@way

就活討論会

東京五輪に向け2組織新設独自の取り組み進む

 

9月19日に参議院を通過

して成立した安全保障関連

法案は、筑波大学でも大き

な議論を呼んだ。8月4日

には学内で「安保法案につ

いて考える討論集会」が行

われ、約60人の教員や学生

が参加した。

 

集会は、「安全保障関連

法案に反対する学者の会」

に賛同する佐藤嘉幸准教授

 

末益崇教授(数理物質系)

は、産業技術総合研究所(つ

くば市梅園など)などと協

力し、従来よりも安価で、

効率良く電気を作れる太陽

電池の開発に取り組んでい

る。現在開発中の電池は吸

収した光のうち2%しか電

気に変換できないが、これ

を2、3年以内には十数%

まで引き上げたい意向。最

終的には25%以上に高める

ことが目標で、商品化に成

功すれば太陽電池の需要の

増加に対応できると期待さ

れている。

 

開発中の電池はシリコン

にバリウムとストロンチウ

ムを合わせた半導体= 

「バリウムシリサイド」を

用いている。バリウムは消

化器のレントゲン診断の造

影剤に使われ、ストロンチ

ウムは骨腫瘍の痛みの緩和

剤に利用される。どちらも

比較的安価で、大量生産に

向いている。

 

シリコンは従来の太陽電

池でも使われているが、バ

リウムとストロンチウムと

合わせることで半導体の性

質を変え、光を吸収する性

能を高めた。その結果、従

来のものに比べ約100分

の1の厚さで同じ光の量を

貴重な数学書を展示

 

詳細=http://

shokutosake.wix.com

/tohoku

matsuri

吸収できる半導体の開発に

成功。効率良く電気を生産

できるという。

 

今後はバリウムシリサイ

ドの製造法を改良し、発電

効率の向上を目指す。

 

末益教授は「商品化には、

半導体の表面をなめらかに

整える加工処理が必要。研

究を進めその方法をみつけ

たい」と話している。

 

半導体=温度を上げる

ことで電流が流れやすくな

る結晶性の物質。代表的な

ものとしてシリコンなどが

あり、コンピューターの集

積回路などに用いられる。

(深作歩美=生物資源学類

2年、写真も)

 

9月5日にオープンし

た、つくば駅前の大型商業

施設「BiViつくば」の

2階に、「筑波大学サテラ

イトオフィス」が設置され

た。このスペースは、学生

や教員の研究成果などの発

表や、イベントの開催な

どに使用することができ

る。つくば市の「つくば総

合インフォメーションセン

ター」と併設されており、

イベントの際には2つのス

ペースを合わせて使うこと

もできる。

 

オープン当日には筑波大

芸術系の教員らが復元した

湯島聖堂本尊の孔子像が公

 

申し込み先=http://

takeawaytsukuba.

goo.gl/forms/FGEqRqk

問い合わせ先= http://

com/

筑波大ブース賑う

BiViオープン

(人社系)や、本法案に反

対する学生団体「SEAL

Ds」の幹部の諏訪原健さ

ん(教育専攻1年)らが企

画。全国的に議論が広がる

安保問題について、筑波大

でも議論の場を作ろうと考

えたのがきっかけだった。

 

まず、討論の前に発起人

2人が持論を発表した。佐

藤准教授は「現行憲法下で

は集団的自衛権は認められ

ていない」と強調。「一内

閣の決定で、改憲と大差な

い解釈変更を行うことは許

されない」と主張した。

 「SEALDs」で活動

を行う諏訪原さんは、「政

治とは、その時代で何が大

切なのか、という価値を選

択する行為だ」という自説

を展開。集団的自衛権が行

使される条件の一つ「存立

危機事態」の曖昧さを指摘

し、内閣により判断基準が

異なる可能性があることな

どを批判した。

 

その後、来場者の発言時

間になると、法案に対する

さまざまな意見が寄せられ

た。

 

特に国会前などで行われ

ている安保反対デモについ

ては、多くの声が挙がった。

法案に賛成する学生は「デ

モをして法案が廃案になる

とは考えられない」と疑問

を呈した。また、「法案の

内容と違憲性のどちらに反

対なのかなど、なぜ反対す

るかを表明した上で法案の

賛否を論じるべきだ」と述

べた。

 

一方、哲学が専門の津崎

良典准教授(人社系)は、

法案に全面的に反対とした

上で、フランス語では「投

票」も「声を上げること」も、

同じ「ヴォワ」という言葉

が使われることを紹介。「選

挙だけでなく、デモを通じ

て国民が声を上げることも

民主主義のあり方の一つ

だ」と述べた。

 

日本政治学会理事長の 

中豊教授(人社系)は、「S

EALDs」に代表される

若者の政治参加を「自由民

 

筑波大学は、スポーツ

選手の治療から復帰まで

を一貫して行う「つくば

スポーツ医学・健康科学

センター」を10月1日に

筑波大附属病院内に設置

した。医学と体育学の研

究者を擁する筑波大独自

の取り組みで、2020

年の東京五輪・パラリン

ピックに向け国内トップ

レベルの治療・リハビリ

体制の確立を目指す。

 

同センターには筑波大

でスポーツ医学に携わる

研究者や臨床医など約20

人が参加。スポーツ障害

治療とリハビリ

一貫支援

や生活習慣病を改善・予

防する方法などを研究

し、治療やリハビリを併

せて行う。スポーツ選手

の故障やけがは、治療と

復帰までのトレーニング

が別の施設で行われるこ

とが多く、一貫した支援

を行いづらかったが、同

センターでは治療から復

帰までを一貫して支援す

ることでスムーズな競技

復帰ができる。

 

筑波大出身でなでしこ

ジャパンの安藤梢選手は

今年6月に左足首を骨

折。同センターで治療を

受け、現在もリハビリを

継続している。安藤選手

は9月24日に開かれた会

見で「センターでは整形

外科の先生のアドバイス

を受けながらトレーナー

と共にリハビリを行え

た。食事のアドバイスな

ど、現在もさまざまな面

から復帰のための支援を

受けている」と話し「け

がをする前よりも体力が

格段に上がったと感じ

る」と語った。

 

同センターのアドバイ

ザーを務める、ソウル五

輪銅メダリストの山口香

准教授(体育系)は「ア

スリート以外にも、ス

ポーツに関わるさまざま

な人に利用してもらいた

い」と期待を寄せた。

(新田萌夏)

安保法

筑波大でも討論集会

高効率の太陽電池を開発

商品化に向け研究進める

L6o

主主義社会の成熟が見られ

る」と評価。若者が「自分

たちが政治を選択し、決定

する」という意識を持つこ

との重要性を説いた。

 

集会後、賛成派として参

加していた学生は「反対派

の人たちが開いた集会なの

で賛成意見を言いにくいか

と思ったが、賛成・反対が

入り交じった議論ができ

た」と話した。

 

佐藤准教授らは、10月15

日の午後6時過ぎから2B

棟で2回目の討論集会を開

き、今後の安保法制の展望

などを話し合う予定。

 (田中開=教育学類2年)

バリウムシリサイド太陽電池を作る装置と末益教授(9月 3日、工学系学系G棟で)

学生や教員ら60人参加

礒田教授らが企画

開された。それに伴い、守

屋正彦教授(芸術系)が

「聞きかじり儒教美術」と

題して講演を行った。この

日はサテライトオフィスに

500人以上が訪れ、大い

に賑わっていた。

 

また6日には孔子像のス

ケッチや、粘土を使った彫

塑を体験することができる

イベント「孔子像でちょ

こっとアート!」が開催さ

れた。子どもから大人まで、

熱心に制作に打ち込んでい

た。

 

来場した男性は「駅の近

くで人が集まりやすい場所

に自由に使える空間がある

のは便利。ぜひ利用したい」

と語った。

(石川泰行=社会学類1年、

12面に関連写真)

 

筑波大学が所蔵する数

学書などを展示する特別

展「数学の叡え

いち智―その探求

と発展―」が9月28日から

中央図書館で開催されてい

る。筑波大生や大学見学に

来た高校生などが会場に足

を運ぶなど好評だ。

 

今回の特別展は、数学教

育が専門の礒田正美教授

(人間系)らが数学の面白

さを伝えようと企画。礒田

教授が15年以上にわたり、

筑波大の附属図書館に寄贈

してきた世界中の貴重な数

学書を幅広く扱っている。

 

29日には、礒田教授が来

場者に展示品を紹介するイ

ベントを開催。礒田教授

は「古代ギリシャ圏では数

学は算術や幾何学だけでな

く、天文学や音楽の分野で

も使われていた」などと数

学の歴史を解説した。

 

特別展は11月8日まで。

    (田中開、写真も)

展示品を覗き込む来場者(9月29 日、中央図書館で)

 

国際的なスポーツイベ

ントの運営者や、国際オ

リンピック委員会(IO

C)の幹部などとして活

躍する人材を育成する、

大学院博士前期課程の専

攻「つくば国際スポーツ

アカデミー(TIAS)」

が筑波大学に新たに設置

され、12カ国18人が1期

生として入学した。9月

30日に大学会館で入学式

が行われ、IOC理事や

文部科学省の五輪・パラ

リンピック担当者らが出

席した。

 

同アカデミーは、

2020年の東京五輪・

パラリンピックに向けて

設立された。スポーツイ

ベントの運営方法やアン

チ・ドーピングなど、ス

ポーツに関するさまざま

な分野を総合的に学習す

る。修了に要する期間は

18カ月で、授業はすべて

英語で行われる。

 

入学式で、TIASの

アカデミー長に就任した

真田久教授(体育系)は

「学生の皆さんも五輪・

パラリンピックのレガ

シー(遺産)となる。国

際スポーツ界を先導する

人材になってほしい」と

あいさつした。入学者の

ロイシン・エリザベス・

ジュリア・キャンベルさ

ん(イギリス出身)は、「国

際的なスポーツイベント

を通じ男女平等を実現さ

せる方法を学びたい」と

語った。 

(森脇慎=社会学類3年)

嘉納治五郎像の前で記念撮影する入学者(9月 30 日、大学会館前で)=岡田優太(社会学類1年)撮影

つくば国際

スポーツアカデミー

つくばスポーツ医学・

健康科学センター

筑 波 大 学 新 聞  第323 号(3) 2015 年(平成 27 年)10 月 5日(月)ミニ特集

勉強に専念させる狙い

 

今年度から経団連に加盟する大手企業の選考活動の解禁が大学4年の4月から

8月に後ろ倒しされた。学生を勉強に専念させたり、留学生を増やすことが狙い

だが、学生への取材では「就活期間が長引いた」「研究や部活などに専念できな

い」など不満が上がっていた。経団連加盟企業と非加盟企業で採用時期にずれが

生じ、「就活終われハラスメント」(オワハラ)も社会問題となった。どのように

就活すれば良いのか。また、企業の対応はどうなったのか。就職課や今年就活を

した学生などに取材した。(林健太郎、森脇慎=社会学類、添島香苗=生物学類、

深作歩美=生物資源学類)

 

後ろ倒しで「就活終われ

ハラスメント(オワハラ)」

が増加した。

学内企業説明会で採用担当者の話を聞く筑波大生(3月 2日、大学会館

 

経団連による就活の後ろ

倒しでは開始が遅くなる一

方で内定式の時期は変わら

ない。この変更では選考期

間が短くなっている。しか

し選考解禁より前の時期

に、社員との座談会などの

形で事実上の面接を行う企

業も多く、学生はエント

リーシート(ES)を書く

のと同時期に、面接を受け

なければならないケースが

出てくる。生物資源科学専

攻のある大学院生は「ES

と面接では求められている

ことが違う上に、面接対策

はかなり時間を要する」と

話す。両方の対策を同時に

行うのは困難だ。

 

別の理系の大学院生は企

業の採用担当者に「お盆ま

でには採用活動を終わらせ

たい」と言われた。このた

め短期間でこの企業の面接

を複数回受けなければなら

ず、「心の準備ができない

まま面接に臨むことになっ

た」という。企業が選考を

急ぐ背景には、2017年

度入社向けの夏のインター

ンシップがある。

 

また、冬のインターンも

活発で、これを就活と見る

 

■後ろ倒しの経緯

 

就活時期の後ろ倒しは、

2013年4月に安倍晋三

内閣が平成27年度から就活

の時期を遅らせるよう経済

界に求め、実施が決定した。

就活を控えた学生を勉強に

専念させたり、日本と学期

制が違う外国の大学からの

帰国が遅れる留学生に配慮

することで、留学する学生

を増やすのが狙いだ。

 

要請を受け、経団連は採

用活動の時期を遅らせるよ

う加盟企業に促した。その

結果、説明会などの広報活

動解禁は大学3年の12月か

ら大学3年の3月に、面接

など選考の解禁は大学4年

の4月から8月に、それぞ

れ繰り下げられた。

 

だが、経団連に所属し

ていない中小企業やベン

チャー企業などの一部は、

昨年通りの日程で採用活動

を行っている。そのため、

「長期化

精神的につらい」

解禁前に事実上の面接も

「オワハラ」増加

就活の後ろ倒し 学生から不満

就活の期間は実質的に長期

化している。

卒論執筆に影響

 

今回の就活時期後ろ倒し

の影響で、学生から多く聞

 

■問題点

 

後ろ倒しの大きな影響

は、卒業論文や修士論文を

執筆したり、学会に参加す

る時期と、就活の時期が重

なることだ。筑波大学就職

課の担当者は「特に理系の

学生は実験があり、自由に

スケジュールを組むのが難

しい。そのため、理系の学

生ほど後ろ倒しの影響を受

けやすいのではないだろう

か」と推測する。

 

また企業が説明会などの

解禁前に、水面下で採用活

動をする場合がある。筑波

大生の就活を支援している

企業「クロノファクトリー」

の担当者によると、本来、

学生の選考は、複数回面接

を行うため1カ月以上はか

かる。しかし、大手企業の

場合、選考活動の解禁直後

に内定をもらう学生が少な

くない。担当者は「企業

は、インターンシップに参

かれたのが、「学業に影響

が出た」「精神的につらかっ

受験企業絞り、

負担減らす

 

就活時期の後ろ倒しによ

る学業などへの影響をどう

乗り切れば良いのか。「(後

ろ倒しの)影響は少なかっ

た」と話すシステム情報工

学研究科の大学院生を取材

した。

 

今年8月、情報サービス

と、実質的な開始時期は昨

年とほとんど変わっていな

い。マイナビの調査によれ

ば夏のインターンを実施し

た企業の74・6%は、冬も

実施した。インターンを採

加した学生と早めに接触す

るなど、解禁前から密かに

選考を進めているのではな

いか」と話す。

 

後ろ倒しで、企業がイン

ターンシップなどを行う期

間は長期化する。そのため

地方の学生は、大手企業が

集中していてインターン

シップなどに参加しやすい

都市部の学生よりも、就活

で不利になりやすいという

懸念がある。都市部に地方

から何度も通ったり都市部

に長期間滞在するのは金銭

的に大きな負担となるから

だ。

た」などだ。

 

ある理系の大学院生は、

後ろ倒しで自らの研究に大

きな影響を受けたという。

8月終わりから9月の初旬

にかけては、修士論文を評

価する審査の一つの中間報

告会がある。このため、審

査の準備と就活時期が重な

り「正直、両立が大変だっ

た」という。

 

また、この大学院生は「後

ろ倒しにより精神的な負担

が大きくなった」とも話し

た。後ろ倒し以前は就活が

始まる12月に就活を終えた

先輩が大学に残っていたた

め、就活の悩みを先輩に相

談できた。だが、今回はそ

れができず、つらかったと

いう。

 

経団連に加盟しない中小

企業やベンチャー企業の一

部は早々と説明会を開始

し、内定は4月のケースが

ある。だが、経団連所属企

 

オワハラは、他社

に学生を奪われたく

ない企業が、内定を

出す条件として就活

をやめるよう学生に

強要する行為。増加

した理由は中小企

業、大手企業の順で

採用活動を行うよう

になったためだ。中

小企業の内定を獲得

したものの、大手企

業が第一志望のため

就活を続けたい学生

が、オワハラを受け

たと感じることが多

い。

 

筑波大学就職課で

を手がける大手企業から内

定をもらったこの大学院生

は、自分自身の就活を振り

返り「受験する企業を絞る

用活動の一環とみなして力

を入れる企業が多いため、

学生も力を抜くことができ

ない。冬のインターンの準

備が始まる12月は、昨年の

就活解禁の時期にあたる。

別の理系の大学院生が「後

ろ倒しされたからといって

就活の準備が遅くなること

はなかった」というように、

学生にとっての負担は減っ

ていない。

ことが大切だと感じた」と

いう。

 

学群生だったころも就活

をしたが、その時は十数社

を受け、どこからも内定を

もらえなかった。受験した

ひとつひとつの企業への理

解を深められなかったのが

大きな原因だと感じ、今年

は「本当に行きたい」と思っ

た3社に受験先を絞った。

その結果、「多くの会社を

受験した人と比べて、企業

への理解も深まり、(就活

もさほど忙しくなかったた

め)学業と就活の両立もで

きた」と話し、後ろ倒しの

影響を乗り切れたという。

 

また、この大学院生は「就

活支援サイトを活用したり

就活イベントなどで友人を

つくることも効果的だ」と

話す。日程や学業の都合で

説明会に参加できなかった

時には、そこで知り合った

友人を通じて、企業の採用

情報を知ることができたと

いう。

は、7月からオワハラに関

する相談が増加したとい

う。

 

ある文系の女子学生は、

大手企業の選考が解禁さ

れる前に、既に内定をも

らっていたあるベン

チャー企業から、入

社するかどうかの決

断を迫られた。初め

は、大手企業の選考

を受けようと考えて

いた。だが、選考に

通らなかった場合の

リスクを考え、大手

企業を諦めてベン

チャー企業への就職

を決めたという。

 

就職課の担当者は

「中小企業から、入

社するという内容の

誓約書を書かされる

事例が多い。誓約書

を書いた後でも入社

は断れる。その場合は誠意

をもって対応するのが大事

だ」と話す。

業の選考解禁は8月。大手

企業に内定したある体専の

学生は「(1年以上就活を

続け)8月には気持ちが切

れそうになった」と話す。

 

この学生はもともと大手

企業志望。だが、4月に中

小などの企業に内定し就活

を終えた友人を見て、「自

分はいつまで続けるのだろ

うと不安に感じた」と話し、

「経団連は就活短期化のた

めの後ろ倒しと言うが、実

際には就活の期間が延びた

だけという実感だ」とも

語った。

 

また、ある文系の学群生

は「面接など選考活動が始

まった8月から内定をもら

うまでの約2カ月間、卒業

論文の作業ができなかっ

た。指導教員からも作業が

遅れていると言われてお

り、卒論が納得のいく内容

になるか不安だ」と話して

いた。

で)=筑波大学就職課提供

個別の企業の説明の様子(3月2日、大学会館で)=筑波大学就職課提供、一部画像処理をしています

筑波大生も被害

筑 波 大 学 新 聞 第 323 号 (4)オピニオン2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月) 

前号の「記者の声」(7

月13日)で林健太郎記者

は、沖縄県・普天間基地

(宜野湾市)の辺野古沖

(名護市)への移設問題

について、沖縄の基地負

担の軽減の必要性などを

論じた。私は同記者の取

材に応じ、普天間基地そ

ばの北

きたなかぐすくそん

中城村出身者と

して現地の危険な状況な

どを説明したが、ここで

は沖縄で生まれ育ち本土

で学ぶ者として、基地問

題に対する沖縄と本土の

温度差を再び考え、日本

 

子どもを望まない独身の若者が10年間で増えてい

る。2013年の厚生労働省の調査によると、「将

来子どもは欲しくない」と答えた独身の若者は男性

で15・8%、女性で11・6%に上り、10年前の調査

よりも男性は7・2%、女性は4・4%上回った。そ

の理由には「子どもを育てるだけの経済的余裕がな

い」「自分の自由な時間をもてなくなる」などが挙

げられているが、筑波大学生はどう考えているのか。

中央図書館前や第二エリア食堂などで聞いた。(橋

野朝奈=日本語・日本文化学類1年、加藤未悠=社

会学類1年)

子どもを望まない

独身の若者の増加

【生資2年・女性】

 

子どもが欲しい。ただ、

産休や育休などの制度が

整った会社に就職しなけれ

ば子どもを持つのは難しい

と思うので、会社が育休な

どを実施する義務を負う法

律が必要だろう。

【日日1年・女性】

 

子どもはいらないし、結

婚願望もない。産休・育休

などの制度が理由ではな

く、夫婦や親子などの人間

関係に縛られずに自立した

いから。

【比文3年・女性】

 

子どもが欲しい。元から

子どもが好きなので制度が

あまり整っていなくても欲

しいと思うが、保育園が増

えればもっと安心して子育

てに臨めると思う。

【芸専2年・女性】

子どもは欲しくない。時

間的にも経済的にも負担に

なる。だが、政府にできる

だけ教育費などを補助して

もらえば、もう少し子ども

を持つことに対して積極的

になれると思う。

【人文3年・男性】

 

子どもが欲しい。育った

家庭が自分の理想の家庭に

近いので、自分もそのよう

な家庭を築きたい。経済的

や時間的に負担がかかるの

は仕方がないし、教育費な

どは親が負担すべきだか

ら、政策は現状のままでい

い。

【日日3年・女性】

 

子どもが欲しい。子ども

がいることは働くモチベー

ションになると思うので、

子どもを持つことは仕事を

する上でむしろプラスにな

る。

【教育1年・女性】

 

可愛い子どもを見ている

と幸せだと感じるので子ど

もが欲しい。自分の親は苦

労して子育てしていたが、

自分なら大丈夫だと思う。

【生物3年・男性】

 

子どもが欲しい。自分自

身が親に育てられ成長した

ので、そうした家庭のあり

方を引き継いでいきたいと

思う。政府には、教育費の

補助や産休・育休などの制

度をより充実させてほし

い。

【日日1年・女性】

 

子どもが欲しい。子ども

を持つことに憧れがある。

補助金などの制度があれば

うれしいが、自分自身がお

金をかけて親に育てても

らったので、自分もお金を

かけて子どもを育てるのは

当たり前だと思う。

全体で基地を負担するた

めの論議が広がることへ

の一助としたい。

 

終戦後の本土と沖縄の

状況はあまりにも違う。

米軍占領下の沖縄は、焼

け野原となった広大な土

地が、住宅地、農地、墓

地などの別なく米軍基地

のフェンスに囲まれた。

米国の土地収用令(53年)

などを基に「銃剣とブル

ドーザー」(沖縄県報告

書)により軍用地が強制

収容されたのだ。

 

私の両親は現在50代だ

が、彼らが幼い頃の占領

下では、道路は右側通行

で、通貨はドル。米軍用

機の墜落事故や米兵の犯

罪も続いた。本土が目覚

ましく経済復興していく

一方、沖縄は戦後もつら

い立場に立たされた。

 

沖縄の人々にとって戦

後の記憶はこれらのもの

に根差している。直接体

験に基づく、つらい記憶

であればあるほど意見は

先鋭化する。基地問題へ

の本土と沖縄の温度差の

一因が、同じ記憶を共有

していないことにあると

思う。

 

一方、私は小中高を通

じ、戦争はいけない、沖

縄戦はむごかった、「命ぬ

どぅ宝(命こそ宝)」と

の教育を受けた。悲惨な

記憶の継承という視点か

らはどれも重要な教え

だ。

 

だが今思うと沖縄の平

和・歴史教育は、過去と

冷静に向き合い現在を理

解することに向けられて

いるというより、被害者

であり続けたことを強調

し、感情に訴えかける先

鋭的なものが多かったよ

うに思う。先鋭的になれ

ばなるほど本土は沖縄に

興ざめし、反感を抱くの

ではないか。

 

また「戦争は悲惨だ。

そのための基地は必要な

い」という沖縄県民の根

強い意見は正しいと思

う。だが困難な現状と折

り合いをつける努力がな

ければ、現実と乖か

いり離した

空虚な理想しか生まれ

ず、問題は解決しない。

 

今回の基地移設問題

は、軍事や外交、環境保

全など多岐にわたる問題

が国や県、市町村レベル

米軍基地の移設問題

日本全体での議論を

 【ミュンヘンで平嶋健

人=社会学類4年、写真

も】内戦が続くシリアか

らの難民がドイツに殺到

している。同国が9月7

日、80万人の受け入れを

表明したためで、これま

でにもオーストリアなど

から10万人以上が到着し

ていたミュンヘン市に、

受け入れ表明後の12日に

は一気に1万人以上が列

車で押し寄せた。対応し

きれなくなった政府は13

日、流入を抑えるため

に国境での検問を導入。

オーストリアからの列車

を運休とした。現地に

難民殺到で対応に限界

入った。

 

9月16日、ウィーン発

ミュンヘン行きのバス。

約60人が乗れるバスはほ

ぼ満席だった。ドイツ国

境手前で検問の大渋滞に

遭遇した。「パスポート

を見せろ」。警察の指示

で空き地に停車したバス

に、疲れきった顔の警察

官が乗りこんできた。

 

難民とみられる乗客に

次々と「荷物を全て持っ

て、外に出ろ」と声をか

ける。つい先ほどまでス

マートフォンのゲームに

興じたり、車窓から見え

る夕焼けの写真を撮影し

てくつろいでいた青年や

家族連れだ。14人の難民

は外で犯罪者のように警

察官に囲まれ、一列に整

列させられた。手続きを

経た上で、付近の収容施

イラスト=姉崎信(心理学類 3年)

設に送られる予定だとい

う。難民待遇が良いドイ

ツに保護されたからか、

彼らはホッとしているよ

うにも見えた。

 

ミュンヘン到着後、中

央駅を訪れるとタクシー

乗り場にテントが張ら

れ、難民のためのバスの

待機所として使われてい

た。警備の警官に聞くと、

鉄道が運休になる前は難

民で溢れかえっていたと

いう。

 

話をしていると、20歳

代とみられる青年が歩み

寄り、旅券がないと訴え

た。警官は手短に会話を

すると、テント脇で待つ

収容施設行きのバスに青

年を連れて行った。「今

ではとても簡単に手続き

が進む。ただ、難民が多

すぎて警官が足りないけ

どね」。警官が苦笑した。

 

ドイツの公共放送の世

論調査によると国民の

88%が難民のために衣類

の提供や募金に協力する

と答えた。しかし国内で

は反対派も根強い。

 

タクシー乗り場と目と

鼻の先の交差点では難民

受け入れ反対のデモが行

われていた。「シリア人

はドイツから富を奪って

いる」。そう声を荒らげ

るデモ隊。だが、ブーイ

ングを浴びせる聴衆もい

た。「難民は助けを必要

としている。ミュンヘン

は欧州連合(EU)に所

属するドイツの都市とし

て責任を果たすべきだ」。

難民の支援団体に所属す

る同市在住の女性は反対

派を強く批判した。地元

警察によるとこうしたデ

モは定期的に行われてい

るという。

 

ミュンヘン市が属する

バイエルン州のホルス

ト・ゼーホーファー知事

は「(難民受け入れは)

長い間、災いをもたらす

だろう」と批判。一方で

同市のディーター・ライ

ター市長は「人々に野宿

はしてほしくない」とし

て、難民をできる限り受

け入れる方針を示してい

るが、限界に達している

難民の収容能力に「どう

対処したらよいのかわか

らない」とも漏らす。E

Uを揺るがす難民の流入

という異常事態は、もは

や日常の風景になりつつ

ある。

にまたがり、解決は困難

を極める。この問題を通

し私が強調したいのは、

平和な暮らしをする権利

と基地負担の義務とのバ

ランスをどう捉えるのか

が、沖縄、本土を問わず、

国民一人ひとりに問われ

ているということだ。

 

沖縄県によると10年の

米軍基地の同県面積に占

める割合は10・2%。他

の都道府県より格段に高

く、米軍専用施設に限る

と、全国の7割以上が沖

縄に集中している。沖縄

はあまりにも長い間、過

大な義務を果たし続けた

と思う。本土には問題の

根深さや沖縄の心情を

知ってもらい、全国で基

地受け入れの論議が広

がってほしい。

警官をはさんで対立する賛成派(手前)と反対派(奥)

ドイツ

安あ

里香菜さん(比文3年)

(9月 19 日、ミュンヘン中央駅前で)

 

大学公認サークルへの助成金支給などを行う筑波

大学の学生後援会「紫峰会」が業務の安定化のため、

来年度から大学の運営下に移行する方向で調整が進

んでいる。7月24日に1H棟で行われた学生向け説

明会では、玉川信一副学長(学生担当)や大学職員

が移行案について説明。紫峰会の支援を受けている

サークルや部活動の代表者ら約160人が参加し、

多数の質問や移行への不安の声が上がった。

 

終了予定時間を大幅に過ぎても質問はやまず、大

学は質問を受け付けるホームページの開設を約束し

て閉会。現在ホームページ上では、説明会の概要や

移行に関する資料とともに、投稿された質問とその

返答を掲載し、移行への理解を促している。大学の

説明に学生は何を感じたのか。また、説明会に来な

かった学生は、移行案についてどう思っているのか。

説明会直後の1H棟や中央図書館前で聞いた。(田

中開=教育学類2年、深作歩美=生物資源学類2年)

【社学1年・男性】

 

説明会に参加した。大学

側が紫峰会の移行を決定事

項として話を進めていたこ

とには納得できないが、大

学の説明には納得できた。

 

学生は現体制に特に不満

がなく「移行は悪」と決め

つけていたため、説明会で

は一方的に反対を主張する

ばかりだった。しかし、説

明を聞いた限りでは、移行

が悪いものだとは思わな

かった。

 

移行後の体制が固まって

いない現状では、移行につ

いて賛成か反対かを決める

ことはできないが、今後も、

説明会などがあれば積極的

に参加して情報収集し、賛

否を決めたい。

 

もし紫峰会が大学の運営

下になるなら、他大学のモ

デルになるような制度にな

ることを期待している。

【日日4年・女性】

 

説明会には参加していな

いが、大学公認サークルや

体育会の部活動など、特定

の組織のみに紫峰会の支援

が集中している現状には疑

問を感じる。大学の運営下

に入ることで、これまでよ

り広い範囲の学生に支援が

行き届くのではないか、と

期待している。

【比文3年・女性】

 

説明会に参加したが、移

行には反対だ。大学は「保

護者からの寄付金が減らな

いよう努力する」と言うが、

体制が変われば、寄付金が

減る可能性はあると思う。

 

また、話がある程度進ん

だ段階で大学が説明会を開

催しても、本当に学生のこ

とを考えているとは思えな

い。紫峰会の大学への移行

後も、(紫峰会の業務であ

る)サークル援助金の支払

いが行われるか不安だ。玉

川副学長は「できるだけ長

く現状を維持したい」と意

気込むが、制度が維持され

るのか疑問が残る。

【教育研究科2年・女性】

 

説明会には参加していな

いが、移行案には前向きな

イメージを抱いている。大

学が直接学生を支援するこ

とで、より手厚い支援がで

きるようになると思ってい

るからだ。

紫峰会の大学移行

筑 波 大 学 新 聞  第323 号(5) 2015 年(平成 27 年)10 月 5日(月)学芸

モチーフを見ながら絵を描く子ども(7 月18 日、5C 棟で)

 

軽音楽サークル、つくば

フォーク村のライブが8月

28―29日に1B棟で行われ

た。計34組のバンドが、国

内外のロックを中心に熱

演。また照明や音響などを

メンバーだけで行い、演出

にもこだわった。

 

トップバッターを飾った

「DEDEDEGARDE

N」は、日本のロックバン

ドELLEGARDENの

曲を高い技術で演奏。観客

はステージ際まで寄り、手

 

私は電気工学科の出身

である。エンジニアとし

て新日本製鐵(現新日鐵

住金)に入社した。入社

の動機は先輩社員の「こ

の会社は人を大切にする

会社だ」という一言で

あった。入社後の担当業

務は自社の製鉄設備エン

ジニアリング。入社3、

4年目ごろからエンジニ

アとしての適性に疑問を

感じ、入社6年目に社内

公募に応募した。人に直

接関わる仕事がしたいと

いう前向きな気持ちと、

エンジニアとして仕事を

岡お

だ田

昌ま

き毅教授

 

人間系・教授。1983年

新日本製鐵株式会社に入社

後、2000年筑波大学教育

研究科、07年名古屋大学大学

院教育発達科学研究科修了。

06年11月から現職。

続けていく自信が持てず

逃げたいという気持ちが

半々だった。

 

教育関連の子会社2社

を5年半経験し新日鐵に

復職、新規事業部門(現

新日鉄住金ソリューショ

ンズ)の人材育成担当と

なった。当時、この組織

は極めて大きな事業構造

変革を迫られ、それに伴

い否応なく仕事の転換を

迫られる社員の職種転換

教育を1年半担当した。

激しい変化に翻ほ

んろう弄され、

迷い模索し悩む多くの若

手社員と真正面から接す

ることになった。

 

私が人の支援をしてい

きたいと思った「原点」

がここにある。だが、何

も武器を持たない自分の

無力さに悩む日々が続い

ていた。

 

そんなある日、新宿の

高層ビルの地下街で開催

されていた社会人のため

の大学院フェアで筑波大

のカウンセリングコース

に出会った。「これだ!」

と直感した。心理学の勉

強をゼロから始め、2

度のチャレンジを経て

1998年に筑波大に入

学した。ここが私のキャ

リア支援者としてのス

タートラインである。

 

その後、同コースで学

んだことを自らの本務で

ある人材育成現場に応用

し、試行錯誤する中で新

たな知見を獲得、更に理

論の理解を深め現場に応

用するというサイクルを

継続。「組織の論理」と「個

人の尊重」という矛盾の

中で、どうすればそれら

を調和させられるか探求

していった。

 

私はその後、同コース

の教員となったが、社会

人大学院生の研究指導な

どを通じて実感するのは

「人は何歳になっても成

長する」ということだ。

その成長を支援するのが

私の今の役割であり、成

長を見守ることが私に

とってこの上ない喜びで

ある。現場で活躍する人

材の育成と理論の構築を

目指し、私自身も共に成

長し社会に貢献していき

たいと思う。

 

最後に、私の著書で紹

介している「職業キャリ

ア発達と心理・社会的発

達との関係を表す積分モ

デル」は、電気工学の「速

度制御モデル」をイメー

ジして発想したものであ

る。自らの適性に疑問を

感じ、エンジニアの世界

から離れていった私が、

電気工学の世界からヒン

トを得たというのも不思

議なものだと感じる。

(キャリア心理学)

つくばフォーク村

34組がロック熱演

変化に惑う若手を支えたい

 

ストリートダンスサー

クル「Realjam」

(jam)が主催するダ

ンスイベント「MEL'

NIGHT(メルナイト)

vol.35」が、8月8

日にclub 

GOLD

(土浦市)で行われた。

jamのメンバーに加

え、茨城大学や常磐大学

など8大学のダンスサー

クルと、プロのダンサー

3組を招き、計28ユニッ

トがさまざまなジャンル

のダンスを披露した。今

回は1年生の初舞台。観

客席に身を置いた。

 

ストリートダンスは路

上で踊ることから生まれ

たダンスの総称で、体の

使い方や曲の雰囲気など

が異なるさまざまなジャ

ンルがある。

 

ダンスを始めて数カ月

とは見えない演技を見せ

たのは山川鈴加(社工1

年)。ストリートダンス

のジャンルの一つ、ヒッ

プホップを6人の仲間と

踊った。ヒップホップの

発祥は1970年代アメ

リカ。ディスコが流行す

る中、貧困でディスコに

行けないアフリカ系アメ

リカ人の若者が、公園に

集まって踊ったことから

生まれたという。

 

山川はラップ調の音楽

に乗せ、ヒップホップに

特徴的な「アップ」と「ダ

ウン」の動きでリズムを

とった。アップは、少し

膝を曲げた姿勢からビー

トに合わせて上体を起こ

す。ダウンはその逆で、

ほぼ直立の姿勢からビー

トに合わせて背中を丸

め、膝を軽く折り曲げる。

 

山川は、腰や、首など

全身を使いアップとダウ

ンを繰り返した。それに

合わせ、腕を振ったり腰

を落としたりダイナミッ

クにステージを舞った。

 

ダンスを始めたのは大

学から。周りは高校以前

から続けている人ばかり

で「どうしても比べてし

まっていた。自分が一番

下手だった」と振り返る。

 

その分、練習には人一

倍熱心に取り組んだ。j

amの活動日以外にもほ

ぼ毎日自主練習し、多い

時期は一日6時間をダン

スに費やした。

 

山川は演技終了後、

「もっと練習して人を感

動させられるダンスがし

たい」と語った。更なる

飛躍への熱意は十分だ。

 

キレのある動きが、舞

台の中央で際立っていた

のは窪田なぎさ(国総1

年)。ストリートダンス

 

筑波大学の学生や卒業生

でビッグバンドを組み、イ

ベントなどで演奏する「筑

波大学ビッグバンドプロ

ジェクト」の創立記念リサ

イタルが、9月26日につく

ばカピオ(つくば市竹園)

で開催された。3部構成で、

を振り上げて熱狂した。 

 

4番目に登場した「おい

しいなぁ蜜柑」は、1曲目

に椎名林檎の「歌舞伎町の

女王」を演奏した。更に、

同曲をゆったりとした曲調

にアレンジした「泥酔バー

ジョン」を3曲目にも披露。

ステージの照明を落とし、

大人っぽい雰囲気を作り出

した。

 

フォーク村副会長の松浦

悠日さん(応理3年)は

「設営も自分たちでするこ

とで、一からライブを作り

上げる達成感があった」と

語った。(中垣音彩=心理

学類1年)

 

子どもたちが大学生と絵

を描くのを楽しむイベン

ト「夏休みアート・デイ

キャンプ」が7月18―19日

に5C棟の大石こう室で行

われ、子どもや保護者ら約

460人が参加した。8月

25―30日には、茨城県つく

ば美術館(つくば市吾妻)

で子どもたちの作品の展示

会が行われた。

 

このイベントは小中高生

に芸術の楽しさを伝えるた

め、筑波大の芸術系の教員

が主催しており、今年で8

回目だ。

 

イベント当日、子どもた

ちはミケランジェロのダビ

デ像やニケ像などの石こう

の別ジャンル、ハウスを

踊った。ダンスや音楽を

楽しむクラブでDJが流

すハウスミュージックに

合わせるもので、バスド

ラムが打つ低音のリズム

に乗せた、素早いステッ

プが特徴だ。

 

本番ではモノトーンの

衣装でクールな表情を作

り、クラブに合う大人っ

ぽい雰囲気を演出した。

アップテンポの音楽に合

わせ、身体を大きく使っ

て流れるようなステップ

を披露した。ミラーボー

ルの光と色とりどりのラ

イトに照らされたステー

ジに、ハウスミュージッ

クがよく映えた。

 

振り付けでは悩みも

あった。初めの練習で偶

然センター位置にいたこ

とから、本番もセンター

で長く踊ることに。プ

レッシャーを感じ、ダン

スを指導する上級生に位

置を替わりたいと申し出

たこともあった。だが「こ

のままの位置でいこう」

と背中を押された。

 

心が決まったのは、本

番2日前のリハーサル。

全メンバーの前で踊り、

本番のイメージが湧い

た。「やるしかない」と

吹っ切れた。

 

演技が終わると、客席

に向かって深々とお辞

儀。悩みを乗り越えた

清々しさを感じさせた。

 

今回のイベントで初舞

台を踏んだ1年生。部長

の浅井勇大(工シス3年)

は「今年はうまくなりた

いという強い熱意を持つ

1年生が多い。今後が楽

しみ」と期待する。出

番は長くはなかったが、

堂々とした演技で確実に

存在感を示した。(添島

香苗=生物学類3年)

1年生

堂々の初舞台

アップテンポな曲に合わせて全員で踊る1年生(8月

8日、club

GOLDで)=中垣音彩撮影

ジャズの名曲やディズニー

映画の挿入曲など17曲を披

露。訪れた観客は迫力ある

演奏を楽しんだ。

 

ビッグバンドはジャズの

演奏形態の一つ。演奏者は

17人前後で、サックス、ト

ランペット、トロンボーン

などの楽器で編成する。

 

これまで筑波大には、

サークルなどでビッグバン

ドの練習ができる環境が無

かった。同プロジェクト代

表の黒崎友さん(メ創4年)

は、ビッグバンドをやりた

い人が練習できる場を作ろ

うと、今年4月にT‐AC

Tでバンドを結成。宿舎祭

やつくば市のイベントなど

で演奏を披露してきた。

 

第1部の1曲目はL・プ

リマ作曲「Sing

Si

ng

Sing」。躍動感の

ある演奏で、観客をジャズ

像や、果物や鳥の剥製など

のモチーフを色鉛筆や水彩

絵の具で思い思いに描い

た。芸術を専攻する学生ら

から「鉛筆の使い方はこう

だよ」「遠近はこうやって

創立記念リサイタル生き生きとした音色を奏でるバンド(9 月 26 日、つくばカピ

表現するといいよ」などと

アドバイスを受けながら、

作品を完成させた。

 

2回目の参加だという小

学2年生の女の子は、絵を

描きながら「石こう室は(モ

チーフが)いろいろ置いて

あって格好いい。描いた絵

を美術館で飾ってもらえる

のもうれしい」と話した。

 

主催者の一人の太田圭教

授(芸術系)は「子どもた

ちが芸術に興味を持ち、絵

に関わる機会が増えてくれ

れば」と語った。(佐々木

悠里=人文学類1年、写真

も。12面に関連写真)

筑波大ビッグバンドプロジェクト

躍動感ある演奏 17 曲披露

子どもに絵の魅力伝える

学生が描き方を指導

の世界に引き込んだ。曲中

で黒崎さんがクラリネット

のソロを披露。明るい音色

を響かせ、客席から大きな

拍手が起こった。

 

リサイタルの最後を飾っ

たのは、スティーヴィー・

ワンダーの「Sir

Du

ke」。ボーカルの小峰楓

子さん(医学2年)と関口

晴紀さん(看護2年)の力

強い歌声をバンドの生き生

きとした演奏で盛り上げ、

華やかな幕切れとなった。

 

同プロジェクトは今後、

バンド名を「Neopol

is

Big

Band」と

変えてサークルとして活動

する。代表の黒崎さんは「こ

れからも技術を磨き、地域

で愛されるバンドに成長し

ていきたい」と話した。(廣

岡里穂=人文学類2年、写

真も)

オで)

Realjam

年度から筑波大大学院の教

育研究科に国際バカロレア

資格= 

=取得のための教

育に対応できる教員養成

コースを導入すると明かし

た。

 

永田学長は「人文社会科

学系の知識は大学での勉強

で完結するものではなく、

また社会に出てから重要な

素養になる」と人文社会系

の意義を強調。昨年文科省

が国立大学の人文社会科学

系の学部廃止などを非公式

に提言した際と同様、人文

筑 波 大 学 新 聞 第 323 号 (6)2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月) 特集

 

文部科学省は6月、全86の国立大学に対し、教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止や他分野へ

の転換に取り組むことなどを求める通知を出した。9月11日には下村博文文科相が人文社会科学系については

「廃止ではなく見直しを求めるものだ」と説明したが、文科省の通知には「文系を軽視するものだ」などの批

判が広がっている。文科省は国立大に昨年も同様の内容を非公式に提示しており、一部の国立大はすでに組織

再編を行っている。筑波大学の今後の方針や教員の声、他の国立大の動きを取材した。(油布知夏=人文学類、

井口彩、石川泰行、小野憲司、新田萌夏、林健太郎=社会学類、田中開=教育学類、深作歩美=生物資源学類)

■葛山泰央講師(人社系)

人文社会系は「廃止せず」

筑波大文科系 どう動く

文系教員の声

世界に向けた研究目指せ

 

今回の通知は、国立大学

が組織の見直しを図る際の

考え方や方向性を提示した

廃止

もので、「国立大学法人等

の組織及び業務全般の見直

しについて」という題名で

6月8日付けで全国の国立

大に通知された。

 

全国の国立大は、6年間

の方向性と到達目標を記し

た「中期目標」を策定する

よう義務づけられている。

各国立大は現在、平成28年

度から6年間の「中期目標」

の設定に向けて議論を進め

ている。

 

中期目標を策定する際に

文部科学省が各大学の見直

すべき論点を提示すること

は、国立大学法人法で義務

付けられており、これまで

2回行われた中期目標の策

 

文科省の「人文社会科学

系や教員養成系の廃止・見

直し」通知による筑波大学

への影響について、永田恭

介学長は本紙の取材に応じ

「筑波大が外部からの影響

で人文社会系を縮小・廃止

することはない」と明言し

た。また、他の国立大学が

教員養成系の学部・大学院

の統廃合などを進めること

に関し、「社会で求められ

る人材を独自に育てること

ができれば、教員養成系の

必要性は続く」と指摘。来

 

ICR(筑波大学人文

社会国際比較研究機構)

の機構長である 

中豊教

授(人社系)に人文社会

科学系の存続の意義と今

後について聞いた。

  (聞き手・林健太郎)

取材に応じる永田学長(9 月 14 日、本部棟で) =森脇慎撮影

社会系の存続について前向

きな姿勢を示した。

 

この一方で、永田学長は

「人文社会系全体で変革を

行う必要がある」とも話し、

たとえば、人文社会系では

英語で書かれた論文数が少

ない点を指摘した。学長は

「日本語や日本文化を扱う

分野でも、研究発表の場は

日本に限らない。全世界に

研究の成果を発信する意欲

を教員は持ってほしい」と

話している。

 

また他の国立大学が教員

養成系の学部・大学院の規

模縮小や統廃合を行ってい

理系教員の声

■礒田博子教授(生環系)

 中豊教授

教育研究科に新コースも

 

人文社会科学系は倫理学

や言語学など、異なる文化

圏や価値観の人とコミュニ

ることに関して永田学長は

「今後必要なのは、国内外

で日本語を母語としない子

どもを教育する人材」と指

摘。国際バカロレア資格に

対応したコース導入の必要

性を述べた。

 

一方で、永田学長は「大

学運営予算の減少で、学内

全体で新規採用の教職員を

減らす可能性がある」と発

言。国が国立大学に交付す

る大学運営の予算「一般運

営費交付金」が、平成16

年度から27年度までに約

765億円減少し、筑波大

の予算も11年間で約10%

減ったとして、永田学長は

「教員の削減数は6年間で

かなりの数に上るだろう」

と指摘した。

 

国際バカロレア資格=

世界共通の大学入学資格。

16―19歳を対象にした教育

プログラムのうち、指定の

カリキュラムを履修し試験

を受けて取得する。日本で

は、国際競争力向上のため

の人材育成が必要だとし

て、国際バカロレアのプロ

グラムを実施する高校やイ

ンターナショナルスクール

などを200校に増やす政

府目標が2013年に出さ

れている。

永田学長インタビュー

定時も、その時々に文科省

が求める論点を各大学に示

してきた。

 

だが、文科省が人文社会

科学系の学部の廃止や「社

会的要請の高い分野への転

換」を示したのは今回の通

知が初めてだ。

 

通知の約1年前、昨年8

月にも、同内容の文書が文

部科学省から各国立大に送

付されていた。文科省によ

ると、昨年の文書は、文科

省の審議会である国立大学

法人評価委員会での議論結

果を各大学に連絡したもの

に過ぎなかった。

 

それに対し今回の通知

は、文科省の「正式な要請」

だ。文科省によると、今回

の通知は中期目標を設定す

るにあたって検討してほし

い内容を文科省として要請

したものとなっている。

 

今回の要請を受け、一部

の報道機関やネットでは

「文系軽視だ」などの批判

が広がった。だが、文科省

の担当者は本紙の取材に対

し「文科省は人文社会科学

系などの重要性は十分に認

識している」と発言。その

上で現状の人文社会科学系

の問題点を「分野が細分化

ケーションをとる際に不可

欠な学問を含んでおり、社

会を理解する上で重要な役

割を果たしている。また、

現代ではロボットが暴走し

た場合、法律を適用できる

かなどの課題があるため、

新しい技術を活用するには

法学や政治学の知識が必要

だ。このように人文社会科

学系は、グローバル化やI

T化が進む社会で、人々の

行動を決定する上で重要な

学問だ。人々の心や社会に

対する影響を測ることもで

きる。

しすぎており、どのような

人材が必要か明確に考えた

上での人材育成が行われて

いないのでは」と指摘した。

 

また「社会的要請の高い」

という文言について文科省

の担当者は、「全大学に共

通する社会的要請を定めて

はいるわけではない」と説

明。「各大学の強みや特色

を活かしてさまざまな社会

的要請に応えられるよう、

組織の見直しを促すことが

今回の要請のねらいだ」と

話した。

 

今回の文科省の通知について、現場の教員はど

のように考えているのか。筑波大の人文社会系と

理系の教員にそれぞれ考えを聞いた。

 

だが、人文社会科学系は

他の学問と比べて社会への

貢献が見えづらいため、改

革を進める必要もある。現

在、人文社会科学系の論文

は日本語だけで書かれた論

文が多く、英語や他の言語

で書かれた論文が理系と比

べて圧倒的に少ない。更に、

日本の社会現象を研究した

ものが多いにも関わらず、

それを世界の社会現象と比

較した研究が少なかった。

世界で通用するためには、

多くの人と交流し、研究に

国際的な視点を入れるべき

■檜垣良成教授(人社系)

■亀田敏弘准教授(シス情

系)

 

あらゆる研究分野は社会

を支えており、社会に必要

不可欠だ。

 

自分が所属する北アフリ

カ研究センターでは、文系

と理系の研究者が協力して

研究しているが、その目的

は論文発表だけでなく、北

アフリカの産業を創出して

経済効果を現地にもたらす

ことだ。そのためには、哲

学や宗教学などの知識が必

要だ。それがなければ、技

術が現地の人々の生活に根

付きづらく、表面的な技術

移転しかできないだろう。

 

日本政府は科学技術を外

交資源と捉え、国際協力を

行おうと「科学技術外交」

を進めているが、これも哲

学などの知識が無ければ難

しいのではないか。その国

の文化を知らずに外交を始

めると、日本のそれが必ず

だ。

 

こうした人文社会科学系

の課題を解決するため、I

CRでは、若手研究者が海

外の大学や研究機関に進む

ための支援や、外国語で論

文を書くことを推奨してい

る。また、今まで人文社会

科学系の学者は個人で研究

することが多かった。そこ

で、相互に協力する体制を

つくり、人文社会科学系の

学問で新たな研究分野を開

拓することを目指してい

る。このようにして人文社

会科学系の学問に新たな価

値を見出す努力を続けた

い。

(「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて(通知)」の資料に基づき作成)

文科省

転換

正式に要請

あらゆる学問

不可欠

授業形態の改善を

 

現在はインターネットな

どで多くの考え方に触れら

れるため、どの価値観が正

しいかどんな人でも自分で

考えなければならない。そ

れだけではなく、簡単に多

様な価値観に触れられる社

会の是非も問う必要がある

だろう。それはさまざまな

学問分野で考えるべきで、

そのためには人文社会学系

の学問も必要だ。

 

ただ、学生が自分で考

え、自分から社会に責任を

持てるようにならなければ

意味はない。現在教員が一

方的に話すような授業もあ

るが、一人で読書をするの

と変わらない。政府には文

系を縮小するより、この授

6 月 8 日に国立大学に対して出された

業形態を改善できる法的・

財政的支援を要請したい。

 

今回の改革は時代の変化

のスピードに合わせたもの

なので、むやみに改革に消

極的になるべきではない。

筑波大学が「新構想大学」

として作られ、学群や学類

を再編するなど実験的な取

り組みをしながら発展して

きたことからも分かるよう

に、大学は社会の要請に合

わせ改革を行ってきた。

 

仮に将来、筑波大で比較

的大規模な人社系教員の削

減が決定したとしても、そ

れは大学改革の一例にすぎ

ない。研究の場としての大

学の環境がある程度維持さ

れ、場当たり的な改革では

なく、理念が備わっていれ

ば何ら問題はないと思う。

しも正しくはないため相手

国の文化や慣習を踏みにじ

ることになりかねない。

 

工学系の分野でも、人文

社会科学系の知識は非常に

重要だ。新しい機械やロ

ボットなどの開発では、そ

れがどう役に立つかを常に

考えなければならない。そ

の際必要なのが、人文社会

科学系が研究対象とする人

間の心理構造や現代の社会

情勢だ。これらの研究から

明らかになる「社会的に必

要なもの」を、工学系の研

究者たちは何度も開発の参

考にしてきた。

 

だが、人文社会科学系の

学問が社会の動きを反映し

ていなければ、文科省のい

う「社会的要請の高い分

野」から乖離する可能性が

あり、他の分野の研究者が

参考にすることは難しくな

るだろう。

文科省の通知

ぎると不思議とそういう

のは消えるのですよ。

 

2年生以降住んだアパ

ートでは、また友達とお

互い行き来してメシ、酒。

ゴミ捨て場で自転車を拾

い、分解・洗浄・再塗装・

組立をしたのも楽しかっ

たです。友達に貸したら、

鍵を掛けずに止めやがっ

て速攻盗まれた、という

のもいい思い出です。

 

デビューしたのもここ

に住んでいる時です。携

帯電話なんて普及してな

い時代、電話も最初は引

筑 波 大 学 新 聞(7) 特集 2015 年(平成 27 年)10 月 5日(月)  第 323 号

英語長文の読み間違い

 

月刊アフタヌーンでデ

ビューしたのは、芸術専

門学群在学中の1994

年の事でした。高校生の

時からすでにマンガ家を

目指していた私は、入試

の面接で「将来は画家に

なりたいです!」とウソ

をついて入学しました。

先生方本当にすみませ

ん。

 

しかし編集長に「君は

大学生活がよっぽど楽し

かったんだなあ」と半ば

呆れられるほど、大学生

を主人公にしたマンガを

多く描くことになりま

す。何が楽しかったかな

あ?と思い出をつれづれ

に、書かせていただこう

と思います。マンガ家ゆ

えにふざけた文章になっ

ていますが、ご容赦くだ

さい。

 

まずは学生宿舎。平砂

でしたね。あの五角形の

小部屋。友達と部屋を行

き来していました。朝食・

夕食は基本、共用棟。風

呂も共用棟です。冬は何

日風呂に入らずにいられ

るか……なんてチキンレ

ースみたいなことも。最

長2週間くらいだったか

なあ。最初の数日はかゆ

いし臭うけど、それを過

文科省要請

いてなくて、受賞の報せ

はハガキで来ました。部

屋でのたうちまわりまし

た。喜びで。

 

よく聞かれるのは私の

マンガに出てくるサーク

ルは本当にあるのか、実

話なのかということで

す。皆さんならご存知

でしょうが、

同名のサー

クルは筑波

大に存在し

ます。入っ

ていたこと

もあります。

ただ、半年

くらいしか

いませんで

した。

 

ですから当然すべてフ

ィクションです。別にサ

ークルと問題があったわ

けではなく、私が団体行

動が苦手で足が遠のいた

だけのことです。なので

名前を使うのは少々申し

訳ないと思いますし、サ

ークルに青春を懸けても

 

以前このコーナーで紹

介したジャコウアゲハ

は、体に毒を含むことで

身を守っていた。ジャコ

ウアゲハのような毒チョ

文理融合型学部を新設

「眼球運動測定装置」を使って英文を読ませる実験の様子

今を支える大学生活

ウは数多くいるが、ツマ

グロヒョウモンは毒チョ

ウを利用して敵の目を欺

いているといわれる。ツ

マグロヒョウモンのメス

は毒を持つカバマダラと

羽の模様が似ている。カ

バマダラに毒があると

知っている鳥は、ツマグ

ロヒョウモンも毒チョウ

だと勘違いするので、食

べられずに済むのだ。

 

ツマグロヒョウモンは

元は南方のチョウだが、

地球温暖化の影響で北関

東に定着した。だが、彼

らの「元ネタ」のカバマ

ダラはそこまで北上して

いないので、その毒を知

らないつくばの鳥の前で

まねをしても、あまり意

味はなさそうだ。

 

この写真は、朝に日光

浴をしているメスのツマ

グロヒョウモンだ。忙し

い朝でも、奇麗なチョウ

が日なたぼっこしている

のを見たら、気持ちに少

し余裕ができると思う。

(写真・文=今田創、比

文3年、野生動物研究会)

 

■国立大8大学で8学部

新設

 

来年度は、国立大が法人

化した2004年以降最も

多い8大学8学部が新設。

文理融合型の学部が半数以

上で、地域の活性化を目指

すなど、地域への貢献を目

的とする学部も多い。更に、

世界が抱える問題を解決す

ないのにそんなマンガ描

くのはどうなんだろうと

思わなくもないです。

 

ともあれ、大学生でマ

ンガを描く理由は、年齢

的にはほぼ大人ながら、

青春すること・未熟であ

ることが許される最後の

年代だと思うからです。

社会に出ればそんな甘え

は捨てなければならない

……かどうかは、実のと

ころ知りません。最初に

書いた通り在学中にデビ

ューしてるので、働いた

ことが無いのです。

 

なのでメンタリティは

学生のまま、40歳を越え

てしまいました。全然大

人になれないまま、徐々

に肉体の衰えを感じ始め

ている今日この頃です。

 

それでもここまでマン

ガで食えてきたベースは

間違いなく大学時代にあ

ります。皆さんも自分の

やり方で楽しんでくださ

い。(平成8年度芸術専

門学群卒)

筑波

図漫画家

木き お し も く

尾士目さん

国立大学「学生教育のための改革を」

©木尾士目/講談社

◇ツマグロヒョウモン◇

撮影地=第二エリア

 

文科省の通知の背景

や、今後の国立大学の

とるべき方針につい

て、高等教育論が専門

の金子元久特命教授に

聞いた。

(聞き手・井口彩)

る手段を模索するなどの国

際的な視野を持つことが目

的の学部もある。

 

例えば、千葉大学(千葉

市稲毛区)の「国際教養学

部」は、世界規模の問題の

解決に向け文理融合の教育

を行うことが目標だ。本紙

の取材に対し、千葉大の担

当者は「(国際教養学部の

新設は)国際色豊かな大学

づくりを目指し元々提案さ

れていたもので、今回の文

科省の通知を受けたもので

はない」と回答した。

 

■文系単科大の動きは

 

文系の単科大学も改革を

迫られている。東京外国語

大学(東京都府中市)の文

書回答によると、日本や世

界の文化を国際的に発信す

ることなどを目的とした国

際日本学部(仮称)の設置

などを予定している。だが、

これも今回の通知を受けた

ものではないという。

 

出てくる単語や文法は

知っているものばかりな

のに、英語の長文を読む

と内容を誤読してしまう

ことを、誰もが一度は経

験しただろう。読み間違

いを防ぐために生徒にど

う指導すればいいのか研

究を行っているのが卯城

祐司教授(人社系)だ。

 

卯城教授は、心理学な

どで使われている「眼球

運動測定装置」を使い、

英文を読んでいる時どの

ように視線が動き、どの

部分をどれくらい見つめ

ているか測定すること

で、文章全体を正しく読

解できる読み方がどのよ

うなものか探っている。

 

実験では装置で頭部を

固定した状態で、モニ

ターに映る矛盾を含んだ

英語の長文を読んでもら

い、視線の動きや文中の

ある部分を見つめる時間

を測定。前の文脈と矛盾

する内容が出てきた際

に、どのように読み戻る

かを調べた。

 

その結果、長文の中で

矛盾する内容が離れて書

かれていた場合、多くの

人が矛盾に気づきにくく

なると分かった。例えば、

「メアリーはベジタリア

ンだ」という文の近くに

「メアリーはチーズバー

ガーを注文した」という

矛盾する内容が書かれて

いると、多くの人が「ベ

ジタリアンだ」と書かれ

ていた部分に視線を戻し

長く見つめていたが、離

れているとそのまま読み

流す傾向にあった。

 

そこで現在は、「テキ

ストの内容を想像しなが

ら読むように」という指

示を出すことで、矛盾す

る内容の文が離れていて

も矛盾に気付けるのでは

ないかという仮説を立

て、検証を行っている。

「読み間違いは、英文を

訳すことにしか意識が向

かず、文と文のつながり

を気にせずに読み進むか

ら起こる。ストーリーを

頭の中で組み立てながら

読めば文章全体に目を向

けられるため、自分の理

解が間違っていると思

い、立ち戻って確認する

ようになるのではない

か」と卯城教授は予測す

る。

 

卯城教授は大学教員に

なる前、高校の英語教員

として12年間働いたが、

科学的根拠に基づいた長

文読解の指導方法がな

かった。「どうやって読

み間違えてしまうのか、

その過程を知りたい」。

そう思い、卯城教授は大

学教員として研究の道に

進んだ。

 

現在、研究の対象は登

場人物の特徴や行動が変

化している場合の読み間

違いだけだが、今後は場

面の転換がある場合など

も含め、研究対象を広げ

ていく。「英文読解に大

切なのは、文法を一つ一

つ理解することでなく、

話の内容全体を通して理

解できること。研究を重

ね、英文読解が分からな

い中高生を支援していき

たい」と卯城教授は語る。

(油布知夏=人文学類3

年、写真も)

目の動きから原因探る

(9月 9日、人文社会学系棟で)

 

――人文社会科学系が廃

止・縮小される原因は。

 

通知の根底には、国立

大学の財政悪化がある。

2004年の国立大学法人

化で、定期的に大学に配分

される予算「一般運営費交

付金」が削減され、各大学

は文科省が認めた研究に与

えられる補助金「競争的資

金」で研究資金をまかなう

必要が出てきた。そのため、

科学技術の振興に大きく寄

与する理系の研究の方が文

科省に認められる傾向があ

り、それに重点が置かれる

ようになった。

 

――今回の通知を受け、

人文社会科学系のあり方が

問われています。

 

今回の通知に対して人文

社会科学系の文化的な重要

性を無視していると反発す

る人もいるが、それは違う。

人文社会科学系の研究は他

の学問と異なり、研究者自

身の問題意識が「社会的な

要求」を作り出していると

思う。人文社会科学系の研

究に文化的・社会的な重要

性があるかは誰にも分から

ないと思うし、単に文化的・

社会的重要性という観点か

ら人文社会科学系を擁護す

るのはいかがなものか。

 

問題にすべきは、学生の

教育に対する教員の姿勢だ

と感じる。人文社会科学系

は学生の教育にとっては非

常に重要だ。理系の人も人

文社会科学系の知識を得る

ことで広い視野を持てる。

ある調査によると、人文社

会科学系の教員はほとんど

の勤務時間を研究と事務的

な作業に費やしており、学

生教育のための時間はその

うち3割ほど。人文社会科

学系が必要だと主張するな

ら、教員はもっと教育に力

を入れるべきだろう。

 

――国立大学は今後どう

すべきでしょうか。

 

窮乏する国立大学を改善

するために必要なのは、教

員や学生が所属する組織の

改革だろう。多くの大学で

は学部や学科単位で学生数

と教員数が決められている

が、この場合、学部・学科・

コースごとに一定数の教員

を配置する必要があり人件

費がかかる。学部や学科な

どの枠組みをなくし、教員

組織と学生組織を分けれ

ば、学生の少ない学科の教

員数を減らし人件費を抑え

られる上、文理融合の組織

を新設することも可能だ。

 

筑波大学は、「系」と呼

ばれる教員組織と学群・学

類に代表される学生組織が

独立しており、この改革を

すでに終えている。だが、

実際は自分の学類以外の授

業が取りにくいなどその良

さを生かせていない。カリ

キュラムを変更し、学類や

文理の壁を超えた学習がで

きれば、より学生のために

なる。改革は、学生の教育

のために行われるべきだ。

永瀬 2度目の挑戦で

筑 波 大 学 新 聞 第 323 号 (8)スポーツ2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月)

男子

15季ぶりの優勝

柔道世界選手権

一昨年の王者ピエトリに対し、攻撃の機会をうかが

秋季リーグ

う永瀬(左) (8 月 27 日、世界選手権の決勝で)

日本人初の81㌔級制覇

 【戸田漕艇場(埼玉県戸

田市)で田中開=教育学類

2年】男子シングルスカル

の越智寛太(体専4年)が

全国の舞台で結果を残し

た。8月20─23日の全日本

大学選手権で3位に入賞す

ると、9月10─13日に開か

れた全日本選手権では準優

 【国士舘大学多摩キャン

パス(東京都多摩市)で油

布知夏=人文学類3年】関

東学生ハンドボール連盟秋

季リーグが8月29日から9

月22日にかけて行われ、男

子が7勝2分で15季ぶり19

回目の優勝を果たした。

 

9月22日の最終戦で、筑

波大は日本体育大と対戦。

勝った方が優勝という事実

上の優勝決定戦で、試合終

了1分前に逆転し、29─28

で劇的な勝利を収めた。

 

前半は序盤から激しい打

 

全日本高校・大学ダン

スフェスティバルが、8

月5─8日に神戸文化

ホール(神戸市中央区)

で行われ、筑波大ダンス

部の作品『裸密―写真「A

Sense of D

e

・tach

ment

」より―』が文部

科学大臣賞を受賞した。

同賞は、最も完成度の高

い作品に贈られる。ダン

ス部にとって2年ぶり11

回目の受賞となる。

 

受賞した作品は、写

真家の山口理一氏の作

品「A

Sense of D

e

tach

・ment

」がテーマ。

同作品は、現代の希薄な

人間関係から生まれる疎

外感と、それに伴う心理

的不安を描いたものだ。

演技の前半は人を物のよ

うに扱う動きを見せ、後

半では人が集まりながら

大きく激しい動きをする

ことで人と人との触れ合

いの中に温もりが生まれ

ていく様子を表現した。

SNSなどによりコミュ

ニケーションが表面的に

なっている現代社会にお

ける、人と人との真のつ

ながりの重要性を訴え

た。

 

主将の江え

がみまあや

上万絢(体専

3年)は、「リハーサル、

予選、決選、エキシビショ

ンと重ねるにつれ、一人

ひとりの演技に磨きがか

かると共に、部員の団結

力が増していくのを感じ

た。今後も、見た人がテー

マの題材を考え直すきっ

かけを与えるような作品

を作っていきたい」と

語った。      

(橋野朝奈)

 【秩父ミューズパーク(埼

玉県秩父市)で田中開=教

育学類2年】6月20日から

行われている関東学生選手

権(夏関)で、森崎可南子(体

専1年)がベスト4に入っ

た。第3シードの細沼千沙

(早稲田大2年)、第5シー

ドの坂元君佳(慶應義塾大

4年)ら強豪を下したが、

準決勝では第1シードの林

恵里奈(早稲田大3年)に

4─6、2─6で敗れた。

 

9月22日の準決勝、森崎

は序盤から相手フォア側に

球を集める積極的な攻めを

見せた。サーブも好調で、

3―2まで試合を有利に展

開。だがその後は苦手とす

森崎ベスト4

写真:アフロスポーツ

るバック側での返球が甘く

なり、コートを外すミスが

目立った。デュース時に

ゲームを取り切れなかった

ことも響き、第1セットを

奪われた。

 

第2セットでも森崎は

バックの球を回り込んで

フォアで返して強打するな

ど、球威では相手を上回っ

た。だがミスを引きずり、

ゲームを支配できず第2

セットも落とした。

 

森崎は「(準決勝は)自

分のミスで失点することが

多く、納得できる試合では

なかった」と悔しさをにじ

ませたが、一方で「ベスト

4という結果には手応えを

感じている。結果を自信に

し、今後の試合では更に上

の成績を目指したい」と意

気込んだ。

勝を飾った。

■全日本大学選手権

 

昨年ダブルスカル優勝を

果たした越智は、今年は

シングルスカルでの出場。

2000㍍決勝は、スター

ト直後から古田直輝(明治

大1年)、斧澤友寛(東京

経済大4年)が抜け出す展

開。越智は2番手を追走し

たまま1500㍍地点を通

過。残り約300㍍からス

パートを仕掛けたが、上位

2人には届かなかった。

 

越智は敗因に、スタート

で首位に立ち逃げ切るとい

う計画が崩れたことと、そ

の後切り替えて1000㍍

地点までに加速できなかっ

たことを挙げた。「良くも

悪くも終始自分のペースを

崩せず、予想外の試合展開

に合わせられなかった」と

語った。

■全日本選手権

 

大学選手権と同じ

2000㍍シングルスカ

ルで決勝に進出した越智。

スタートで出遅れたが、

250㍍地点で2番手の斧

澤友寛(東京経済大4年)

に並んだ。その後徐々に離

され、1500㍍地点まで

は芹澤を1艇身から2艇身

の差で追いかけた。だが残

り500㍍からロングス

パートをかけ残り約200

㍍で芹澤を捉えると、そこ

からデッドヒート。追いつ

いた勢いを落とさず残り約

100㍍で半艇身抜け出

し、2位争いを制した。

ち合いが繰り広げられた。

開始1分で日本体育大に先

制されたが、その数十秒後

に筑波大もゴールを返す。

その後4点差まで広げられ

る場面もあったが、26分、

筑波大が12―12と同点に追

いついた。だが終了間際に

日本体育大に立て続けに

ゴールを決められ、2点差

で前半が終了した。

 

後半再び4点差まで離さ

れ終盤へ。だが、筑波大は

焦らず着実に得点を重ね

た。18分の藤本良佑(体専

4年)を皮切りに、立て続

けにゴールを奪い、1点差

に迫った。ここで日本体育

大がタイムアウト。すると

流れが再び日本体育大に傾

き、連続で失点した。

 

だがここから筑波大が粘

りを見せた。25分、26分に

「金」

越智が準優勝

執念の逆転

全日本選手権

最終戦

濱谷が決勝弾

連続ゴールを決め再び1点

差に。その直後日本体育大

に7㍍スローを献上した

が、GKの坂井幹(同2

年)が阻止。そのこぼれ球

を筑波大が拾うと速攻を仕

掛け、堀広輝(同2年)が

同点弾を決めた。

 

タイムアウトを取り、改

めて円陣を組む筑波大。そ

してタイムアウト明けの29

分、中央からパスを受けた

濱谷奎介(同4年)がサイ

ドからシュートを放ち逆転

ゴールを決めた。土壇場で

この日初めて日本体育大を

逆転し、そのまま試合が終

了した。

 

決勝弾を放った濱谷は、

「タイムアウト中にどう

ゴールを狙うか話し合って

いたが、実際にシュートし

たときは無我夢中だった。

 

柔道の世界選手権が8月24─30日にカザフスタン・アスタナで行われ、男子81

㌔級で永瀬貴規(体専4年)が金メダルを獲得した。同階級での日本人の優勝は

初。決勝では一昨年の王者ロイック・ピエトリ(フランス)と対戦し、抑え込み

で一本を奪った。団体戦にも出場した永瀬は、韓国との決勝でイ・センスに勝利

し、日本の2連覇に貢献した。                  (森脇慎)

 

昨年は準々決勝でアブタ

ンディル・チリキシビリ

(ジョージア)に、3位決

定戦でピエトリに敗北し、

メダルを逃していた永瀬。

今大会には雪辱を期して臨

んだ。

 

2回戦から登場した永瀬

は順調に勝ち進み、準決勝

でチリキシビリと対戦。先

に組みに行き自分のペース

に持ち込んだ。チリキシビ

リが大外刈りを失敗した隙

を見逃さず隅す

落としで有効

を奪い、優勢勝ちで決勝に

進出した。

 

ピエトリに挑んだ決勝。

永瀬は試合序盤から積極的

に前に出て、技を仕掛けた。

1分30秒過ぎ、小内刈りで

ピエトリの体勢を崩すと、

相手の体を回し、守りの姿

勢に入ろうとするピエトリ

の腕をつかんだ。抵抗する

ピエトリを崩れ上四方固め

で抑えて一本勝ち。自身初

の世界一に輝いた。

 

団体戦の決勝では中堅戦

でイ・センスと対戦した。

個人戦の準々決勝に勝利し

た相手に苦戦したものの、

指導2で勝利。勝負強さを

発揮した。

 

永瀬は「昨年の悔しさを

晴らせた。リオデジャネイ

ロ五輪で勝つことが最大の

目標なので、しっかりと気

を引き締めてやっていきた

い」と語った。◆

 

永瀬貴規(ながせ・たか

のり)

 

男子81㌔級。長崎日本大

学高校出身。筑波大柔道部

主将。2013、14年にグ

ランドスラム東京を連覇。

14年世界選手権では個人戦

5位、団体戦優勝(中堅)。

15年全日本選抜体重別選手

権、マスターズ大会優勝。

得意技は内また。181㌢。

21歳。長崎県出身。

リードされる展開で難し

かったが、粘り強く戦えた。

今後は(11月7日から始ま

る)インカレでの優勝を目

指す」と語った。

人と人とのつながりを表現したダンス部(8 月 8 日、全日本高校・大学ダンスフェスティバルで)=同部提供

得点を狙う筑波大選手 (9 月 22 日、日体大戦で)=男子ハンドボール部提供

文科大臣賞受賞

◆バドミントン 

東日本選

手権(8月28日丨9月5

日、山形市総合スポーツセ

ンター、山形県体育館)

【女子】▽団体=優勝▽ダ

ブルス 

加藤美幸(体専2

年)・柏原みき(同2年)=

優勝

◆体操 

全日本学生ラート

競技選手権(8月29日丨30

日、琉球大学)

▽団体 

Aチーム=2位、

Bチーム=3位

【男子】▽個人総合 

佐々

木大地(工シス4年)=優

勝、北島瑛二(体専4年)=

4位、森本修多(同3年)=

5位▽直転 

北島瑛二=1

位、森本修多=4位▽斜転

 

佐々木大地=2位、森本

修多=4位▽跳躍 

中田悠

飛(比文2年)=2位、佐々

木大地=4位、森本修多=

5位

【女子】▽個人総合 

杉浦

舞(体専3年)=2位、渡

辺理沙(同2年)=3位、

冨名腰真子(同1年)=6

位▽直転 

杉浦舞=1位、

渡辺理沙=3位▽斜転 

浦舞=1位、渡辺理沙=3

位▽跳躍 

瓜兼汐里(同1

年)=2位、杉浦舞=3位、

冨名腰真子=4位、鈴木理

沙(同4年)=5位

◆水泳 

日本学生選手権

(9月4日―6日、古橋廣

之進記念浜松市総合水泳

場)

【男子】▽200㍍バタフ

ライ 

渡会舜(同2年)=

5位

【女子】▽200㍍背泳ぎ

 

斎藤ゆり子(体専1年)=

1位、西脇怜奈(同1年)=

6位

全日本高校・大学ダンスフェスティバル

関東学生選手権

筑 波 大 学 新 聞  第 323 号(9) スポーツ 2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月)

投手陣奮闘で首位タイ

10 年ぶりの第3位

後半 23分、先制点を挙げ喜ぶ中野(8月 14 日、

総理大臣杯

関学大に惜敗

 【ヤンマースタジアム長居(大阪市東住吉区)で森脇慎=社会学類3年】夏の

大学日本一を決める総理大臣杯が、8月7─16日に行われ、筑波大は第3位に入っ

た。筑波大が3位に入ったのは10年ぶり。14日に行われた準決勝の関西学院大戦

では、後半23分に中野誠也(体専2年)のゴールで先制したが、試合終了間際の

43分、アディショナルタイム4分に立て続けに失点し、1─2で惜敗した。

9年ぶり優勝へ好発進

昇格へ

思いは一つ

首都大学 1 部

 【柏の葉公園野球場(千

葉県柏市)で前名裕一=社

会学類1年】9月5日に開

幕した首都大学秋季1部

リーグで、筑波大が好調だ。

10月1日現在、6勝2敗で

桜美林大と並び首位タイに

つけている。9年ぶりの優

勝へ、負けられない戦いが

続く。

 

9月13日に行われた日本

体育大戦では、試合序盤の

先制点を最後まで守り抜

き、1―0で勝利した。

 

筑波大は二回、1死から

7番の大澤永貴(体専3年)

が右前打で出塁すると、板

﨑直人(同4年)が左前打

で1、3塁とチャンスを広

げた。続く9番の三木翔太

 【青山学院大学相模原体

育館(神奈川県相模原市)

で林健太郎=社会学類3

年】秋季関東大学女子1部

リーグが9月13日から開催

されている。春季リーグで

優勝した筑波大は10月1日

現在、3勝0敗で首位に

立っている。

 

9月20日に行われた嘉悦

大戦では、全日本代表の井

上愛里沙(体専2年)のア

タックなどで相手の堅い守

備を崩し、3―0でスト

レート勝ちした。

 

第1セットは高さを生か

したブロックで得点を重

ね、25―18で先取したが、

第2セットは苦戦。序盤、

嘉悦大のディフェンスの前

5 回無失点と好投した先発の野々村(9月 13 日、日体大戦で)=森脇慎撮影

            

            

 

昨年の関東大学1部リー

グでは11位に終わり、2部

降格の憂き目にあった筑波

大。今年はリーグ戦こそ昇

格圏手前の3位(10月1日

現在)と「満足な成績では

ない」(小井土正亮監督=

体育系・助教)が、総理大

臣杯の予選・アミノバイタ

ルカップ(5月30日─6月

7日)では、早稲田大や流

通経済大など、1部リーグ

の強豪を下して準優勝。関

東第2代表の座を勝ち取っ

ていた。

 

先制点を挙げたFW中野

誠也(体専2年)は、試合

終了と共ににピッチに崩れ

落ちた。「何としても4年

生の先輩たちをインカレに

連れて行きたかった」。悔

し涙があふれた。

 

その年の大学日本一を決

めるインカレに出場するに

は、総理大臣杯で優勝する

か、関東大学1部リーグで

5位以内に入ることが条

件。筑波大は昨季2部に降

格したため、今大会での優

勝が出場への唯一のチャン

スだった。降格からわずか

半年で迎えた今大会で、強

豪を相手にベスト4と躍進

 

総理大臣杯で筑波大は2

回戦から登場。初戦は北陸

大に3─2、準々決勝では

福岡大に3─1と連勝。準

決勝で昨年のインカレ準優

勝の関西学院大に挑んだ。

 

前半、筑波大はFW若杉

拓哉(体専4年)にボール

を集めた。27分、MF西澤

健太(同1年)が右サイド

で抜け出すと、ゴール中央

へパス。若杉が頭で合わせ

たが、わずかにゴール左

上へ。39分にはMF野口

航(同2年)が左サイドか

らドリブルでペナルティエ

リア内に切り込み、若杉に

ボールを送ったが、左足で

のシュートは枠を外れた。

 

試合が動いたのは後半23

分。右サイドで西澤が縦に

ドリブル突破し、ゴール前

へボールをあげると、若杉

がヘディングシュート。一

度はGKに防がれたが、途

中出場のFW中野誠也(同

2年)がこぼれ球にいち早

く反応。「スピードに期待

した」という小井土監督の

采配が的中し、先制した。

 

だがその後は関西学院大

に押し込まれる展開が続い

た。GK岩脇力哉(同4年)

を見せたが、目標にはあと

一歩届かなかった。

 

だが、小井土正亮監督(体

育系・助教)は「(この日

の敗戦は)良い経験」と語

る。全国の舞台だからこそ、

「関東大学2部リーグでは

味わえない厳しい試合がで

きた」ことに手応えを感じ

ていた。「(やりたい試合は)

これだと思ったし、(強豪

が集う)1部リーグに上が

りたいという気持ちが更に

強くなった。それは誰より

も選手たちが強く感じてい

るはず」

 

選手たちも監督の思いに

応えた。主将のDF早川史

哉(同4年)は、「負けた

ことは悔しいが、その分

にスパイクを決められない

場面が目立った。「攻撃が

単調で相手に次の攻撃を見

破られていた」(中西康己

監督=体育系・准教授)が、

後半、井上がアタックを決

めるなどして、接戦の末28

―26で奪った。

 

第3セットもブロックを

かわされ逆にアタックを決

められ、5点差まで離され

た。だが、井上のアタック

や主将の帯川きよら(同4

年)のブロックを中心に

次々と得点し逆転、25―21

で3セットを連取した。

 

中西監督は「秋季リーグ

での全勝、全日本インカレ

での優勝を目標に、高さと

パワーに頼らず、選手間の

コンビネーションを磨きた

い」と語った。

 

今年5月の関東学生テ

ニストーナメント(春

関)で1年生ながらベス

ト4入り。6月には世界

ツアー公式戦の東京有明

国際女子オープンで優勝

するなど、目覚ましい活

躍を見せるテニス部の新

エースだ。自らを「負け

ず嫌い」という彼女は、

勝利を貪欲に追い求め、

日々厳しい練習に励んで

いる。

 

群馬県出身。小学1年

生の時にテニスを始め

た。その当時は近所のク

ラブで「ただ楽しく練習

していた」と言うが、4

年生の時、県大会での優

勝をきっかけに「本格的

に取り組みたい」と、地

元の強豪、高崎テニスク

ラブに移った。2005

年に日本最年少(当時)

でプロに転向した森田あ

ゆみ(現キヤノン)を輩

出した同クラブに、高校

卒業まで在籍した。

 「もっと勝ちたい」。小

学生のころは、その一心

で練習に没頭した。だが

県大会では勝てても全国

大会では1回戦突破が精

一杯。「とにかく悔しかっ

た」と当時を振り返る。

 

中学生になると、才能

が開花。2年生の時に関

リーグ戦にすべてをつぎ込

める。絶対に1部に昇格し

ようという気持ちはより強

東大会で優勝すると、3

年生の時には悲願の全国

制覇を成し遂げた。中学

卒業後は、地元群馬県の

私立高校に進学。だが遠

征が続くと高校に通えな

い日も多かった。「テニ

スに専念したい」と長野

県の通信制の学校に編入

し、1年生の時に全日本

ジュニア、2年生の時に

はインターハイで優勝を

つかみ

取った。

 

だが3

年生の

時、挫折

を味わっ

た。右ひ

じのけが

で思うよ

うに練習

ができ

ず、「苦

しい時期だった」。痛み

止めの注射を打ち試合に

出たこともあったが、最

後のインターハイには出

場すら叶わなかった。

 

自分が出たい大会に自

由に出ることができるこ

とを決め手に筑波大に入

学。「常に試合を意識す

ることが大切」とゲーム

形式の実践的な練習に重

点を置いている。

 

大学入学後からダブル

スにも挑戦している。高

校まではシングルス一筋

の選手だったが、「先輩

と組むことで学ぶものは

大きい」と話す。また、「ダ

ブルスのボレーの動きは

シングルスでのネットプ

レーの向上につながる」

と早くも手応えをつかん

でいる。

 

各年代で日本のトップ

を走ってきた。原動力は

「試合に負けると悔しく

てやめたくなる」ほど強

い勝利へのこだわりだ。

「大学での目標は、もち

ろんインカレ優勝」。誰

にも負けない向上心で、

日本一へ突き進む。(橋

野朝奈=日本語・日本文

化学類1年、写真・岡田

優太=社会学類1年)

準決勝の関西学院大戦で)=田中開撮影

記者の目

くなった」と話し、DF鈴

木大誠(同1年)も「強力

なFWを相手にしても、一

人で抑えられる選手に成長

し、リーグ戦で貢献したい」

と決意を口にした。

3連勝でリーグ首位

東京有明国際女子オープンで優勝

(体専1年)牛島 里咲

勝つことが原動力

(同3年)が初球をスクイ

ズし成功、先制点を奪った。

 

その後打線はダブルプ

レーなど拙攻で追加点を奪

えなかったが、投手陣が奮

闘。先発した野々村高志

(同4年)が5回まで3塁

を踏ませない好投を見せる

と、6回からは前日の試合

で敗戦投手となった大場遼

太郎(同2年)がマウンド

へ。7回、8回にはランナー

を3塁に背負ったが、直球

で押してピンチを切り抜け

た。9回も無失点に抑え、

雪辱を果たした。

 

川村卓監督(体育系・准

教授)は「スクイズは夏の

間に学生が自主的に練習し

ており、その成果が出た。

今後は(春からの課題の)

先頭バッターを塁に出し、

得点につなげることにこだ

わっていきたい」と語った。

 

今季、蹴球部は「一

はじめ」と

いうスローガンを掲げてい

る。そこには「1部復帰」

「部員が一つになる」「日本

一」という3つの意味があ

る。この試合で日本一の夢

は絶たれたが、1部復帰に

向け更に一丸となった。

 

10月1日現在、リーグ戦

は2位の関東学院大と勝ち

点差2の3位。1部復帰へ、

「すべての試合に勝つつも

りで挑む」と小井土監督は

前を向いた。  (森脇慎)

関東大学対抗戦

 【熊谷ラグビー場(埼玉

県熊谷市)で山野辺拓実=

社会学類2年】関東大学対

抗戦が9月6日から行われ

ている。筑波大は得点力不

足に苦しみ、連敗スタート

となった。

 

27日の明治大戦では、0

─26で完封負けを喫した。

前半20分までは両チーム固

いディフェンスを見せた

が、27分、反則からピンチ

を招きトライを奪われた。

続いて30分、40分にもトラ

イを許した。

 

追い付きたい筑波大だっ

たが、チャンスでボールを

奪われる場面が目立った。

逆にじりじりと明治大に攻

め込まれると、後半25分に

トライを決められた。

 

筑波大は最後まで粘りを

見せた。38分には、タック

ルを繰り返して押し込み

タッチラインを越えたが、

ボールが選手の手からこぼ

れ、トライにはならなかっ

た。明治大の体で守るディ

フェンスに苦戦し、得点を

挙げられなかった。

 

古川拓生監督(体育系・

准教授)は「重要なプレー

でミスを重ね得点できな

かったのは、チームプレー

が完成していなかったか

ら。更なる強豪校との試合

を前に課題が多い」と厳し

い表情で語った。    

 

関東大学対抗戦は12月6

日まで行われる。

明治大に完封負け

が幾度となくピンチを救っ

たが、43分、右サイドから

送り込まれたボールにDF

陣が反応できず、ヘディン

グシュートを許し同点に追

いつかれた。関西学院大の

勢いを止められず、アディ

ショナルタイム4分、ペナ

ルティエリア内でクリアを

拾われると、そのまま蹴り

込まれ、勝ち越しを許した。

ラグビー

準決勝

筑 波 大 学 新 聞 第323 号 (10)学生生活2015 年(平成 27 年)10 月 5日(月)

宿舎3地区

不法投棄現場ルポ

 

カビの生えたマットレ

ス。冷蔵庫や洗濯機。壊

れたプリンター……。平

砂宿舎の不法投棄現場

は、粗大ごみであふれ、

異臭がしていた。取材を

していると、現場に突然、

マットレスを乗せた台車

を押してくる中年男性の

姿が。話を聞こうとする

と、男性はマットレスを

無造作に捨てて、無言で

立ち去った。9月下旬、

一の矢、平砂、追越3宿

舎の不法投棄現場を回っ

た。(山野辺拓実=社会

学類2年、写真も。田中

開=教育学類2年)

 

学生生活課によると、

平砂・追越宿舎では7月

末、今年2回目の不法投

棄物回収を行ったが、現

場にはすでに大量の家具

や家電が乱雑に積まれて

いた。カビが生え、ほこ

りまみれになったベッド

のマットレス。宿舎の備

品とは明らかに異なるも

のだ。宿舎を出る学生が

投棄したのだろうか、冷

蔵庫も目立つ。臭いにひ

かれたのか、小バエがた

かっていた。袋にくるま

れた衣服や布団、折れた

ビニール傘も無数に捨て

られている。

 

一の矢宿舎。共用棟近

くの不法投棄現場では、

約2㍍の高さまで積まれ

たごみが、約6㍍四方の

柵の中を埋め尽くしてい

た。カラーボックス、洗

濯機、事務椅子……。縦

約90㌢、横120㌢の大

型テレビもある。

 

異臭。ごみ山の頂上に

ある衣装ケースには雨水

がたまり、やはり小バエ

が舞っている。宿舎の男

子学生は「ここが投棄禁

止だと初めて知った。山

のようなごみを見ると、

捨ててよい場所と勘違い

してしまう」。一方、現

場を通りがかったインド

ネシア出身の男性留学生

は、「一の矢宿舎に入居

したばかりだが、ごみの

山には本当に驚いてい

る。この処理のために多

 「なぜペルーに留学す

るの?」。私は度々、ペ

ルーや日本の友人にこう

聞かれます。南米に留学

をしてみたい気持ちはあ

りましたが、正直なとこ

ろ留学先は何となく決め

ました。本来留学は明確

な目的や理由を持ち慎重

に留学先の国や大学を選

ぶものでしょうが、私は

日本の地球の裏側にある

南米大陸に、深く物事を

くのカネが費やされるの

は良くない」と話した。

 

学生生活課によると、

一の矢学生宿舎の不法投

棄物の回収は今年、4月

に1回行われた。同課は

準優勝杯を掲げてほほ笑む家根本さん(7月 26日、滋賀県彦根市で)=徳永翼撮影

異臭、舞う小バエ

カトリカ大学

一いちおたいぞう

尾泰造

(ペルー)

「ケセラセラ」の精神を実感

「ここ(不法投棄現場)

に捨てれば、回収してく

れるという誤った考えが

広がっている」と話す。

 

粗大ごみは本来、市

の「粗大ごみ受付セン

ター」に連絡して回収の

予約をし、ごみの一番長

い部分の長さに応じた処

理券(50㌢から120㌢

未満400円〜)を貼り

回収してもらうか、直接

「クリーンセンター」に

考えず飛び込むことで学

ぶこともあると考えたの

です。南米は自由奔放な

人が多く、あまり小さな

ことに悩まない文化があ

り苦労もしましたが、自

分の選択を後悔すること

なくいろいろなことを楽

しく吸収できています。

 

しかし、最初の数カ月

はスペイン語も話せず、

発展途上国での留学だっ

たため、大学の授業や日

常生活でさまざまな困難

にぶつかりました。大学

の授業は40分遅れて始ま

るのが当たり前。唯一の

公共交通手段であるバス

にはバス停がなく好きな

場所で乗り降りするシス

テムだったり、郵便物は

運が良くないと届かない

など毎日驚きの連続でし

た。

 

でも、不自由なことが

多い分ペルーの人々は心

が豊かです。家族や友人

とのつながりを重んじ、

悲しい時は目いっぱい泣

き、うれしい時は大声で

笑います。感情をあらわ

にしないとされる日本人

の私には新鮮で学ぶこと

が多いです。

 

在学しているカトリカ

大学はペルーで最も有名

な私立大学で、学生はと

ても優秀で勤勉です。私

自身も彼らに刺激され、

専攻の政治学に意欲的に

取り組んでいます。

 

カトリカ大学の授業の

多くで、英語の論文を課

題文献としていることに

驚きました。ペルーの公

用語はスペイン語なので

多くの生徒は英語の文献

に苦戦していますが、こ

れはグローバル人材を育

成したり、翻訳書の出版

を待たずに最新の研究を

取り入れるためのようで

す。グローバル人材の不

足が心配される日本も見

習うことがあります。

 

私はペルーの文化や言

語、人々と触れることで

自分や日本の文化を見つ

め直せました。留学は語

学に堪能で意識の高い人

が行くというイメージが

あるかもしれませんが、

まずは行ってみることに

意味があると思います。

 

有名な曲にある「ケセ

ラセラ」という言葉は、

スペイン語で「なるよう

になる、先のことは分か

らない」という意味です。

時間や社会に制限される

ことなく、ケセラセラな

行動ができる学生のうち

にペルーに留学し、自分

の価値観や考えを大きく

変えられて良かったと思

います。(社会学類3年)

 【松原水泳場(滋賀県彦

根市)で佐々木悠里=人文

学類1年、徳永翼=日本語・

日本文化学類1年、岡田優

太=社会学類1年、山野辺

拓実=同2年。12面に関連

写真】自作のプロペラ機や

グライダーで琵琶湖上空を

飛び、その飛距離や飛行時

間を競う「鳥人間コンテス

ト2015」が7月25―26

日に行われ、筑波大からは

「つくば鳥人間の会」が「人

力プロペラ機タイムトライ

アル部門」に出場し準優勝

を果たした。

 

同会が出場したタイムト

ライアル部門は、スタート

ラインから500㍍地点で

旋回し、帰還するまでのタ

イムを競うもの。短時間で

変わる風向きに対応するた

め、飛行機の精密な設計・

製作と、パイロットの高度

な操縦技術が求められる。

 

今年の同会の飛行機の名

前は「鶺せ

きれい

 

」。プロペラや

翼などほぼすべてを手作り

してきた。機体は全長約8

㍍、翼の幅約25㍍で、緑色

のコックピットに無数の鳥

の絵を装飾した。

 

タイムトライアル部門が

行われた25日は、早朝から

秒速5㍍を超える強い向か

い風が吹き、飛行機にとっ

ては難しい天候だった。同

会が出番を待つ間に突風が

吹き、尾翼が破損。急きょ

予備の尾翼を装着すること

になった。「出場できるか

とても不安だった」と同会

会長の西永尚矢さん(工シ

ス3年)は当時の心境を語

る。

 

直前、風が秒速2〜3㍍

に落ち着き、絶好のチャン

スに恵まれた。パイロット

の家や

根本知輝さん(人文3

年)の掛け声と共に発射台

から飛び立った飛行機はす

ぐに安定し、真っすぐ折り

返し地点に向かった。家根

本さんは風向きを考慮し左

回りの旋回を選択。大回り

してしまい、やや予定の

ルートから外れてしまった

が、すぐに立て直しゴール

を目指した。

 

同会は2分44秒78でゴー

ル。大阪府立大学「堺・風

車の会」に次ぐ2位だった。

筑波大の飛行機が着水せず

にゴールしたのは5年ぶり

だ。

 

フライト後、家根本さん

は「1人で飛んでいたが、

チームメイトがそばにいる

ような感覚だった。目標に

は届かなかったが、今まで

の練習の成果を出し切れた

ので、胸を張って帰れる」

と興奮しながら話した。

 

機体の設計をした藤原広

太さん(工シス3年)は

「チームで作った飛行機が

帰ってくる姿を初めて見て

感動した」と語った。

持参する。電化製品は自

分で回収業者などに持ち

込む。学生宿舎管理事務

所は、新入生へのオリエ

ンテーションで、正しく

ごみを捨てるよう指導し

たり、不法投棄禁止の看

板を立てるなどするが、

不法投棄物は中々減らな

い。

 

宿舎を取り巻く不法投

棄の現状は、問題の根深

さを示していた。

5年ぶりの完走に歓喜タイムトライアル

平砂宿舎のごみ回収直後の様子(上)(7月 29 日撮影)と2か月後の様子(下)(9月 28 日撮影)

鳥人間コンテスト

部門準優勝

 

筑波大学は、起業家教育

を推進するため、筑波大出

身者で作る経営者の会「筑

波みらいの会」と連携して、

学生らが企画する事業など

への資金調達を行うサービ

ス「筑波フューチャーファ

ンディング(TFF)」(佐々

木敦也代表理事=昭和58年

度社会学類卒業)の運用を

9月24日から本格的に開始

した。同様のサービスはア

メリカや日本で普及してい

るが、大学が中心となって

取り組むのは日本で初めて

だ。

 

TFFでは、学生など事

業の企画・立案者が企画案

を提示した後、審査などを

経て、2、3週間をめどに

審査に通った案をTFFの

サイトに掲載する。筑波大

の卒業生を中心としたサイ

トの閲覧者が、その企画を

支援するために資金を提供

し、企画者は商品やサービ

スなどで支援者に還元する

仕組みだ。他の企業も同様

のサービスを運用している

が、TFFは「筑波みらい

の会」の会員などが企画案

へのアドバイスを積極的に

行い、企画案に磨きをかけ

ることが大きな特徴だとい

う。

 

TFFは本格運用後、ま

ず筑波大附属病院の小児病

棟の子供たちのためのイベ

ントを企画・実行する学生

サークル「つくばけやきっ

ず」が行う「ゆめ花火」と

いう企画の資金調達を支援

していく。更に、これを皮

切りにして、毎年5件前後

の企画案を支援したい意向

だ。

学生の事業資金を調達

筑波みらいの会と連携筑波フューチャーファンディングのホームページ

 

TFFの佐々木代表理事

は、「TFFは筑波大の学

生が卒業生とのつながりを

感じられる場でもある。在

学生をはじめ、筑波大への

留学生や筑波大にゆかりの

ある人たちに企画を出して

もらい、『起業するならつ

くばで』という気風を生み

出したい」と意気込みを

語った。

 

筑波大では昨年度から筑

波みらいの会と協力し、学

生が起業プランを考える

「筑波クリエイティブ・キャ

ンプ(TCC)」を実施。

ここで作られたプランや学

生主催の企画を実現させる

ため、インターネットから

資金調達を行うTFFを試

験的に運用し、4件の企画

の費用をまかなった。

       (新田萌夏)

る。知名度は高くないが

徐々に注目を集めてお

り、2000年から五輪

の種目にも採用された。

 

設立して6年目の新し

筑 波 大 学 新 聞  第 323 号(11) 学生生活 2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月)

 

中央体育館の体操場に

足を踏み入れると、会員

が宙を高く舞う姿に目を

奪われた。両足をばねに

素早く跳躍しながら、体

をひねったり空中で膝を

抱えるなど次々に技を繰

り出す。均整のとれた華

麗な動きは、見る者を引

きつける。

 

会員が取り組むトラン

ポリン競技は、10本の

技を連続で跳び、

技の難易度や正

確さ、跳ぶ高さ

を競うもの。演

技中の跳躍の高

さは、男子選手

で7㍍にも達す

トランポリン同好会

い同好会だ。活動は週4

回、学内外の体育館で

行っている。

 

会員は現在32人。イン

カレ出場を目指す人から

息抜きとして楽しみたい

人まで、目的はさまざま

だ。会員のほとんどは初

心者で入会した。中には

大学でトランポリンを始

めて、才能を開花させた

会員も。水谷一波さん(生

資1年)は高校時代まで

 【常総市で新田萌夏=社会学類3年、写真も】帰

省の道中で街を通り、親しみを感じていた常総市。

そんな同市が未曽有の大水害に襲われた……。9月

10日常総市で発生した水害で、これまで6日間支援

活動を行っている筑波大学生がいる。平井恵理さん

(社工専攻1年)だ。平井さんの支援活動に密着した。

緻密な計算で美しく

美しい跳躍を見せる水谷さん。今年8月にはインカレ

鍋つかみや手袋にビーズなどを付け、人形を作

 

避難所として約100

人(21日時点)の避難者が

使用している同市の研修施

設、「水み

つかいどう

海道あすなろの里」

(常総市大塚戸町)。平井さ

んはそこで浴場の受付など

を行っている。埼玉県さい

たま市出身。帰省の際の通

り道として見てきた常総市

の美しい街並みが、過酷な

状況に陥っているのを知

り、「いてもたってもいら

れなかった」と話す。

 

鬼怒川決壊から5日後の

15日に現地入り。水は幾分

ひいていたが、家々は浸水

で建物の壁が泥で汚れ、街

に土ぼこりが舞っていた。

 

初日は常総市役所で事務

作業を手伝ったが、現場は

情報を求める市民であふれ

ていた。市役所1階も浸水

る子どもたち(7月 24 日、福島県いわき市で)

被害に遭っていたが、市民

への対応に追われ、市役所

はそれを修復する余裕もな

かった。

 

初日の午後以降はあすな

ろの里で、救援物資の配布

などを行った。最初はどの

ように避難者に接するべき

かわからなかったが、日を

重ねるうちに顔見知りの避

難者も増え、「何人かと世

間話をするようになった。

徐々に避難者の表情が明る

くなったのがうれしかっ

た」と話す。

 

10月からは大学院での授

業が始まるが「これからも

時間を見つけて支援活動を

続けたい」と話す。また、

「災害当初に比べ、被災者

も落ち着きを取り戻しつつ

あるが、支援を必要として

いる人はまだまだいる」と

長期的な支援活動の必要性

を語った。

 

筑波大の東日本大震災復

興支援事業に参画し、今回

同大大学院社会工学専攻で

ボランティアを呼びかけた

大澤義明教授(シス情系)

は「常総市と近い筑波大だ

からこそ非常時には積極的

に関わっていきたい。学生

ボランティア活動の後押し

に加え、中長期的な復興ま

ちづくりにも組織的に支援

していきたい」と話した。

いわき市で学生らが人形劇

現地でボランティア続ける「いてもたってもいられず」

被災地の子どもに遊び場を

 「受験生のための筑波大

学説明会」が8月1―2、

8日に開催され、各学群・

学類ごとに模擬授業や施設

の公開、学生による相談

コーナーなどが行われた。

当日は猛暑の中、全国から

多くの高校生が来校した。

 

1日の日本語・日本文化

学類の説明会では、谷口孝

介教授(人社系)による模

擬授業が行われた。「聖徳

太子は平安時代、どのよう

に語られてきたのか」とい

う授業内容に、多くの高校

生が耳を傾けていた。模擬

授業に参加した女子高校生

は「高校では歴史上の人物

を掘り下げるような授業は

無い。大学に入って興味の

ある人物を追ってみたい」

と話した。

 

2日に行われた社会学類

の説明会では社会学、法学、

 

常総市を襲った水害につ

いて9月21日、今後の課題

などを塩畑実・常総市副市

長に聞いた。

体操をしていたが、新歓

でトランポリンを体験

し、大学から本格的に始

めた。着実に実力を伸ば

し、わずか4カ月ほどで

今年8月のインカレでの

決勝進出を果たした。

 

記者もトランポリンを

体験させてもらった。初

めは垂直に跳べず、斜め

方向に跳んでしまう。主

将の山下史雅さん(比文

3年)から「骨盤からつ

ま先にかけて力を入れ

て」とアドバイスをもら

い、多少は上に跳べるよ

うに。実際に跳ぶと、到

達する高さが想像以上で

驚いた。地上からは見え

ない景色と、体を包む浮

遊感が心地よかった。

 

だが、少しでも跳び上

がる姿勢が変わると跳躍

全体に影響してしまい、

高さや向きを一定に跳ぶ

のは難しい。演技をする

姿は一見ダイナミックだ

が、会員たちが緻密に体

を制御していることがよ

く分かった。

 

会員にトランポリンの

魅力を尋ねると「跳べば

素晴らしさがすぐに分か

りますよ」と口をそろえ

た。実力も目標も違う彼

らだが、トランポリンの

上から見る景色の美しさ

を分かち合っている。(徳

永翼=日本語・日本文化

学類1年、写真も)

常総市副市長

インタビュー

――今後の課題は。

「現在、電気や水道が

ほぼ復旧し、道路の通行止

めもほぼ解除されつつあ

る。だが大量に出たごみと

感染病などの二次被害、浸

水被害などにあった被災者

の住宅問題がある。特に被

災者の住宅については、避

難所を中心に聞き取り調査

を行い、市営住宅への受け

入れを整えるつもりだ」

――避難所の状況は。

「個人的なスペースが

なく、プライバシーが守れ

ないため、今後は簡易壁な

どの設置を進めプライバ

シーに配慮したい。現在、

24時間体制で職員が避難者

に対応している」

――筑波大生もボラン

ティア活動を行っていま

す。「

多くのボランティア

に来て頂き感謝している。

常総市は比較的高齢者世帯

の多い地域で、今後も若い

世代の力に期待したい」

市職員とともに受付業務をこなす平井さん(左)(9

大学説明会開催

模擬授業楽しむ

政治学、経済学の主専攻ご

とに模擬授業が行われた。

政治学主専攻の会場では、

政治の仕組みを人気アニメ

のキャラクターの行動に例

えた解説などユーモアあふ

れる授業が行われた。同学

類の学生による相談コー

ナーでは、大学受験や日々

の学生生活に関する質問に

対して、学生が時折冗談を

交えながら自身の経験など

を語っていた。

 

同学類の説明会に訪れた

男子高校生は「大学のイ

メージが漠然としていた

が、多くの情報を得ること

ができ良い刺激になった」

と満足そうに話した。(岡

田優太=社会学類1年、写

真も)

社会学類の説明会で模擬授業に聞き入る高校生たち(8月 2日、1H棟で)

月 21 日、水海道あすなろの里で)

 【福島県いわき市で添島

香苗=生物学類3年、写真

も】村上史明助教(芸術

系)ら教員3人と学生6人

のチームが、7月24日にい

わき芸術文化交流館アリオ

ス(福島県いわき市)で、

東日本大震災で被災した子

どもたちを対象としたワー

クショップ「くぼひめとお

おきなおともだちワーク

ショップ」を行った。5歳

から11歳の子ども13人と保

護者らが参加し、人形劇や

人形作りを楽しんだ。

 

筑波大芸術系の教員らが

中心となり、平成24年度か

ら行っている「筑波大学創

造的復興プロジェクト」の

一環。芸術系の教員と、芸

術専門学群開設の授業「創

造的復興」を履修する学生

がチームを組み、東日本大

震災の被災地や被災者を支

援している。

 

今回は、被災地の子ども

たちに遊びとコミュニケー

ションの場を提供するた

め、人形劇と人形づくりを

楽しめるプログラムを用意

した。集まった子どもたち

は、まず学生らによる人形

劇を鑑賞。劇には、地域の

ことを知ってほしいという

思いからいわき市の伝承を

取り入れた。いわき市で生

まれたとされる美女「久保

姫」が、伝説の巨人「だい

だらぼう」に会いに行くと

いう内容で、子どもたちに

「一緒に行く友達を作って」

と呼びかけた。

 

次に、子どもたちは久保

姫の友達になる人形を制

作。学生の手を借りながら、

鍋つかみや手袋にビーズな

どを付け、手を入れて動か

せる人形を作った。作り終

わると、自分の人形と写真

を撮ってもらったり、「久

保姫」の人形と会話したり

した。最後にもう一度人形

劇を鑑賞し、ワークショッ

プは終了した。

 

ワークショップの内容

は、全てチームのメンバー

の手作りだ。人形劇は、い

わき市に行き現地の人に話

を聞き、物語を創作した。

 

また、チームは心理療法

士を招いて勉強会を開き、

心理学的なアプローチも学

んだ。例えば、人形の材料

として用意したものは、手

袋や鍋つかみ、スポンジな

どの日用品。村上助教は「身

近なものを『これは人形の

口』などと考えさせること

で、心理的に想像力をかき

たてられる」と話す。

 

参加した女の子は「『ぽ

んちゃん』という名前の人

形を作った。写真を撮った

のが楽しかった」と話した。

の決勝に進出した(9月 27 日、中央体育館体操場で)

筑 波 大 学 新 聞 第 323 号 (12)トピックス2015 年(平成 27 年)10 月 5 日(月)

情報発信の拠点となる筑波大学サテライトオフィス(9

B i V iつくば オープン

大学生からアドバイスを受ける小学生(7月 18 日、5C

鳥人間コンテスト

5 面へ

琵琶湖上空を飛ぶ「鶺せきれい

 」(7月 25 日、滋賀県彦根市で)

夏休みアート・デイキャンプ

10 面へ

全日本高校・大学ダンスフェスティバル

次号は11

月2日(月)

発行予定です

8面へ

 

9月21日、多くの家屋が

浸水被害に遭った常総市に

足を踏み入れました。曲

がった電柱に冠水した道路

……。何より強烈だったの

は家屋付近に積み上げられ

た大量のごみでした▼この

大量に出たごみの中には、

現地では使いものにならな

くなった家財道具などが不

法投棄され、復旧作業に支

障をきたしているといいま

す。やむを得ず捨ててし

まったのでしょう。市役所

近くの空き地には泥にまみ

れた畳やテレビなどが山積

みになっていました▼しか

し、同様の惨状が筑波大学

内にもありました。今回1

面と10面で取り上げた学生

宿舎付近での大量不法投棄

は、景観を損ねるだけでは

なく、処分費用に多額の共

益費が使われているといい

ます。こちらは「やむを得

ず」という文言は通用しま

せん▼不法投棄の抑制につ

ながることを願いながら、

今後も報道を重ねていきま

す。(副編集長・新田萌夏=

社会学類3年)

 

岡山県などで作られた国産ジーンズ

の魅力を伝えるウェブサイト「EVE

RY 

DENIM」を、昨年12月から

運営している。同県は国内有数のジー

ンズの産地だが、生産工場の労働環境

は近年悪化している。国産ジーンズの

魅力をより多くの人に知ってもらい、

現状の改善につなげるのが活動の目的

国産デニムの保護目指す独自ブランドも立ち上げ

ウェブで国産デニムの魅力伝える

山脇耀平さん(社学4年)

だ。

 

きっかけは、2年前に弟の舜介さん

(岡山大学3年)が岡山県のジーンズ

工場を見学し、本人から話を聞いたこ

とだ。同県は国産ジーンズの発祥地で、

1960年代から高品質のジーンズを

作り続けている。世界的にも評価が高

く、海外の高級ブランド製品に生地が

使われること

もある。だが

近年、海外製

品に押されて

国内の工場は

激減。残った

工場は低コス

トでの生産を

強いられてお

り、ジーンズ

加工職人の賃

金は決して高

くない。後継

の人材も不足

している。

 

そのような環境でも職人たちは、わ

ざと使い古した雰囲気を出す色落ちや

ダメージ加工を絶妙に施すなど、細部

にこだわって高品質のジーンズを作り

続けている。その姿に感銘を受け、舜

介さんは現状を改善したいと考えるよ

うになった。一方、耀平さんは子ども

時代から体格が良く、丈夫で破れにく

いジーンズを好んで履いていた。二人

は思いを共有し、昨年12月に兄弟でサ

イトを立ち上げた。「国内の工場の深

刻な現状を知り、すぐに行動しなけれ

ば取り返しがつかなくなると感じた」

と話す。

 

まずは国産ジーンズを広く知っても

らうため、岡山県の工場で働く職人な

どに取材し、記事をサイトに載せるこ

とにした。初めはネットでの情報発信

に理解が得られなかった。だが地道に

活動を続け、これまで10件以上のイン

タビュー記事を掲載。生の現場を見て

「仕事に妥協しない姿勢と、高い技術

に驚かされた」という。

 

取材では、職人から不満の声も聞い

た。基本的に工場は、メーカーに指示

されたデザインに従って製品を作る。

そのため職人は、自分で製品を考えて

も提案する場がないのだという。

 

だが、長年の経験から生まれるアイ

デアもある。例えば、瓦などに使用さ

れる天然塗料「黒ベンガラ」で黒染め

したジーンズ。通常、ジーンズの着色

には化学染料を使うが、黒ベンガラは

自然に由来するため環境にやさしい。

更に、独特の渋い色合いを持つ。取材

した職人は、より良い色を追求する中

でこの染料に注目。2年間の試行錯誤

の末、世界で初めて黒ベンガラでジー

ンズを染色するのに成功した。だが、

製品化には結びついていなかった。

 

そこで、職人のやりがいにつなげよ

うと、3月に独自のジーンズブランド

の立ち上げを提案した。職人の発想を

生かした製品を作り、来年1〜3月ご

ろからネットショップで販売する予定

だ。ネット販売には、職人にとって大

編集後記

黒ベンガラで染色したジーンズを持つ山脇さん(9月

月 4日、Bi Viつくばで)=石川泰行撮影

棟で)=佐々木悠里撮影

=岡田優太撮影

7日、中央図書館で)

きな利点がある。メーカーからの発注

生産と異なり元請け業者がいないた

め、職人がより多くの対価をもらえる

のだ。

 

ショップ開設に向け、9月からネッ

ト上で資金を募っている。全国から支

援が集まり、5日間で目標金額の88万

円を達成。現在も支援金は増えており、

10月1日時点で約130万円が集まっ

ている。取り組みが岡山の新聞に取り

上げられるなど、地元の期待も高まっ

ている。

 「まずは、職人と一緒に製品を開発

し、自分たちで販売・配送するしくみ

を確立させたい」と話す。今後は、販

売したジーンズを無料で修理するサー

ビスを計画。将来的には3Dプリン

ターなどの最新技術を取り入れ、ジー

ンズ生産を効率化させたいと考えてい

る。取り組みはまだ始まったばかり。

職人と寄り添いながら、作り手が誇り

を持てる環境づくりを目指す。(齋藤

優斗=社会工学類2年、写真も)

2面へ

文部科学大臣賞を受賞したダンス部(8月 7日、神戸文化ホールで)=同部提供