(3) 食料自給率の向上に向けた取組 - maff.go.jp95 第1部 第1章...

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94 (食料自給率向上の重要性) 今後、新興国の人口増加や食生活の改善等により食料需給がひっ迫する可能性がある状 況のなかで、我が国が世界からこれまでどおり食料を買い続けることは困難となることが 予想されます。また、既にみたように、農産物については、生産量に占める貿易量の割合 が小さく、輸出も特定国に集中しています。このようなことを踏まえ、我が国では、輸入 の安定化や備蓄の取組を行うとともに、国内生産を増大し食料自給率を向上させていくこ とが重要です。 このため、平成 22(2010)年 3 月策定の「食料・農業・農村基本計画」において、 我が国のもてる資源をすべて投入した時に初めて可能となる高い目標として、平成32 (2020)年度の供給熱量ベースの食料自給率を 50%、生産額ベースの食料自給率を 70% に設定し、国産農産物の利用拡大等により関係者一体となって食料自給率の向上に取り組 むこととしています(図 1 − 30)。 (食料自給率向上に向けて、生産・消費両面で取り組むことが必要) 食料自給率の向上に当たっては、「消費あっての生産」という考え方を前提に、生産面、 消費面それぞれで取り組む必要があります。 生産面の取組においては、人、技術、農地基盤等の面で国内農業の生産力・供給力の低 下が著しいなか、その向上を図っていくことが重要です。また、国内生産の増大に向け、 水田を余すことなく有効活用し、主食用米以外の米粉用米や飼料用米、麦・大豆等の戦略 作物について、その増産を図ることや、技術開発・普及を通じた単収・品質の向上等が重 要です。平成 22(2010)年においては、戦略作物の生産に関して、関係者の努力もあり、 米粉用米や飼料用米の作付面積が、前年に比べそれぞれ 2 倍、3 倍強まで増加しています 1 また、消費面の取組については、食料自給率に関する国民の意識を実際の行動に結び付 けることが重要です。内閣府の世論調査によると、国民が食料自給率向上のために行動し ようと思っていることとしては、「ごはんを中心とした食生活を心がける」が8割と多く (3) 食料自給率の向上に向けた取組 図1-30 食料自給率 50%に向けた戦略 資料:農林水産省作成 共 通 ・戸別所得補償制度の導入 ・農業・農村の6次産業化等 小麦・米粉 ・パン・中華めんについて、国産小麦、米粉の 使用割合を画期的に引上げ(1割未満→4割) 畜産物・飼料 ・飼料自給率の向上(26%→38%) 大 豆 ・豆腐、納豆等について、国産食用大豆の使用 割合を引上げ(3割→6割) 主食用米 ・朝食欠食1,500万人の改善等で米の消費拡大 その他 ・輸出の促進(1兆円) 国産 国産 輸入飼料 国産 輸入 輸入 輸入 国産 小麦(88万t→180万t) 米粉用米(0.1万t→50万t) 飼料用米 (0.9万t→70万t) 大豆 (26万t→60万t) 消費の 拡大 1 米粉用米、飼料用米については、第 2 章第 2 節(2)主な品目別の需要・生産動向と課題(米粉用米・飼料用米)を参照 第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組

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Page 1: (3) 食料自給率の向上に向けた取組 - maff.go.jp95 第1部 第1章 あげられており、次いで「買い物や外食時に国産食材を積極的に選ぶ」5割、「米を原料

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(食料自給率向上の重要性)今後、新興国の人口増加や食生活の改善等により食料需給がひっ迫する可能性がある状

況のなかで、我が国が世界からこれまでどおり食料を買い続けることは困難となることが予想されます。また、既にみたように、農産物については、生産量に占める貿易量の割合が小さく、輸出も特定国に集中しています。このようなことを踏まえ、我が国では、輸入の安定化や備蓄の取組を行うとともに、国内生産を増大し食料自給率を向上させていくことが重要です。このため、平成 22(2010)年 3 月策定の「食料・農業・農村基本計画」において、

我が国のもてる資源をすべて投入した時に初めて可能となる高い目標として、平成 32(2020)年度の供給熱量ベースの食料自給率を 50%、生産額ベースの食料自給率を 70%に設定し、国産農産物の利用拡大等により関係者一体となって食料自給率の向上に取り組むこととしています(図 1 − 30)。

(食料自給率向上に向けて、生産・消費両面で取り組むことが必要)食料自給率の向上に当たっては、「消費あっての生産」という考え方を前提に、生産面、

消費面それぞれで取り組む必要があります。生産面の取組においては、人、技術、農地基盤等の面で国内農業の生産力・供給力の低

下が著しいなか、その向上を図っていくことが重要です。また、国内生産の増大に向け、水田を余すことなく有効活用し、主食用米以外の米粉用米や飼料用米、麦・大豆等の戦略作物について、その増産を図ることや、技術開発・普及を通じた単収・品質の向上等が重要です。平成 22(2010)年においては、戦略作物の生産に関して、関係者の努力もあり、米粉用米や飼料用米の作付面積が、前年に比べそれぞれ 2 倍、3 倍強まで増加しています 1。また、消費面の取組については、食料自給率に関する国民の意識を実際の行動に結び付

けることが重要です。内閣府の世論調査によると、国民が食料自給率向上のために行動しようと思っていることとしては、「ごはんを中心とした食生活を心がける」が 8 割と多く

(3) 食料自給率の向上に向けた取組

図1-30 食料自給率 50%に向けた戦略

資料:農林水産省作成

共 通・戸別所得補償制度の導入・農業・農村の6次産業化等小麦・米粉・パン・中華めんについて、国産小麦、米粉の 使用割合を画期的に引上げ(1割未満→4割)畜産物・飼料・飼料自給率の向上(26%→38%)大 豆・豆腐、納豆等について、国産食用大豆の使用 割合を引上げ(3割→6割)主食用米・朝食欠食1,500万人の改善等で米の消費拡大その他・輸出の促進(1兆円)

国産農産物の利用拡大

関係者の最大限の努力と

政府の下支え

小麦・米粉畜産物・飼料

主食用米

大豆

消費の拡大

国産

国産 輸入飼料

国産

輸入

輸入

輸入

国産

小麦(88万t→180万t)米粉用米(0.1万t→50万t)

飼料用米(0.9万t→70万t)

大豆(26万t→60万t)

消費の拡大

1 米粉用米、飼料用米については、第2章第2節(2)主な品目別の需要・生産動向と課題(米粉用米・飼料用米)を参照

第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組

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第1部

第1章

あげられており、次いで「買い物や外食時に国産食材を積極的に選ぶ」5 割、「米を原料とするパンやめん等の米粉製品を積極的に選ぶ」3 割等となっています(図 1 − 31)。

平成 20(2008)年度からは、食料自給率向上に向けた国民運動「フード・アクション・ニッポン」が行われています。現在、農業者、食品製造事業者、外食産業、流通業、ホテル・旅館、マスメディア、学校、行政等幅広い分野の関係者が「推進パートナー」として参加しており、その数は平成 23(2011)年 3 月末現在 5 千を超えています。これら推進パートナーをはじめとして、全国各地の関係者の間で、国産品を利用した商品づくり、地産地消 1、各種啓発活動、朝ごはん運動等の様々な取組が行われていますが、これらを通じて、食料自給率について、多くの国民にさらに関心をもってもらうとともに、その向上のための具体的行動に結び付けてもらうことにより、国産品の消費拡大を図っていくことが重要です。

図1-31 食料自給率向上のための行動

%

資料:内閣府「食料の供給に関する特別世論調査」(平成 22(2010)年 10 月公表)他の世論調査 注 : 図 1-29 の注釈参照

0 10 20 30 40 50 60 70 80

ごはんを中心とした日本型食生活を心がける

買い物や外食時に国産食材を積極的に選ぶ

米を原料とするパンやめん等の米粉製品を積極的に選ぶ

揚げ物等の油脂類を多く使用する食品の消費を控える

牛や豚等の畜産物の消費を控える

その他

平成 20(2008)年

平成 22(2010)年

77.676.3

41.447.1

24.932.3

16.613.6

8.37.7

0.60.2

コラム  各国における国産品愛用運動

スイスでは、国内の鶏卵生産者団体や食肉団体が、国産の卵・肉の消費拡大運動を展開しています。このうち、鶏卵生産者団体では、国内産生鮮卵については、バタリーケージ(多段式のケージ)での飼育を禁止するとともに、1 施設当たりの最大飼養羽数が 1 万 8 千羽を超えないなどのアニマルウェルフェア* 1 を守った製品であること等をテレビコマーシャル等で宣伝して、その消費拡大運動を推進しています。スイス国内産の卵の価格は、輸入品 1 個約 30 円に対して約 40 円と高く、我が国の価格と比べても高価ですが、国産品に対する意識が高いこともあり、主婦層をはじめ幅広い層で購入されています。

豪 州 で は、「Australian Grown」、「Australian Made」 等 の ロ ゴ を国産品に添付し、その購入を促す運動を展開しています* 2。このロゴを付けた商品は、野菜や果物、畜産物等の農産物・食料品、日用雑貨まで 1 万点を超えています。豪州国内のスーパーマーケットにおいては、果物や肉類等のほとんどすべてにこのロゴが付けられており、国産品の販売促進を行っています。

*1人間が動物に対して与える苦痛を最小限にとどめようとする考え方で、家畜においては、我が国では「快適性に配慮した家畜の飼養管理」と定義され、家畜ごとの飼養管理指針が定められています。

*2「AustralianGrown」は、生鮮、冷凍、缶詰の野菜、果物、食肉、魚介類、酪農製品や、羊毛や綿からなる繊維、植物や切り花等の農林水産物が対象で、主原料がすべて豪州産であり、かつ、すべてまたはほぼすべての工程が豪州国内で行われることが条件となっています。「AustralianMade」は、加工のほとんどが豪州で行われており、生産コストの 50%以上が豪州国内で支出されているものです。

Australian Grown のロゴ

1[用語の解説]を参照

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(国産品を利用した商品づくり等の取組が進展)パン食やめん食を前提とした国産小麦・米粉の利用拡大の取組、国産大豆・飼料の利用

増加の取組、加工・業務用ニーズにこたえるための産地との協力体制の構築の取組、消費者との交流等を通じた国産品の利用拡大のための取組等が行われています。これらはまだ面的な広がりにはなっていないものの、一部地域・事業者の間で工夫した

取組がみられ、今後、多くの地域で拡大することが期待されます。

事 例  国産品を利用した商品づくり等の取組

(1)十勝産素材を使用したパンの製造・販売北海道帯

おび

広ひろ

市し

にあるパン製造・販売業の(株)満寿屋商店は、製造するパンの原料となる小麦を地元の十勝産にするとともに、砂糖、バターや卵、小豆、野菜等についても十勝産を取り入れています。これらのパンは「十勝産小麦 100%使用」等と表示されて販売が行われており、同社全体で 9 億円の売上げがあります。平成 21(2009)年には、十勝産小麦を 100%使用したパ

ンだけを販売する店舗を展開するとともに、体験農場も併設するなど、農業を身近に感じられる店づくりを工夫しています。

(2)国産大豆を原料とした新製品の開発・販売茨城県水

戸と

市し

にあるだるま食品(株)は、茨城県産大豆を使用した納豆を製造し、生協やスーパーマーケット、高速道路のサービスエリア、道の駅等で販売するとともに、県内学校給食にも供給しています。また、我が国で初めて登録された大豆品種「農林 1 号」(昭和 14(1939)年 5 月登録)を使用した商品や、地元のイベントに合わせて異業種と連携して商品化したレトルト納豆カレーを販売するなど、地元に密着した多様な商品を展開し、これら関連商品の売上げは 2 億円にのぼっています。なお、同社では平成 11(1999)年の取組開始当初、半分を輸入大豆に頼っていましたが、

現在では、原料大豆の 9 割は茨城県産となっています。

(3)高校生が運営する飲食店「まごの店」三重県多

気き

町ちょう

の三重県立相おう

可か

高校食物調理科の調理クラブは、平成 17(2005)年に、地産地消をテーマとした飲食店「まごの店」を開きました。同高校の研修施設であるこの店では、生徒が食材の仕入れからメニュー開発、調理、接客、経理等、店舗の運営すべてに携わっています。松阪牛や尾

鷲わせ

の真鯛、伊勢いも等の地元食材を使った懐石料理等を提供し、地域住民との交流も生まれていることや、地元新聞社がこの活動を紙面で取り上げるなどしたことから、営業日(学校休業日)には200 人を超える客が来店するなど、好評を博しています。

店舗と併設された農場

「農林1号」を使った納豆

「まごの店」でのミーティングの様子

北海道

帯広市

茨城県

栃木県

千葉県

水戸市

第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組

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第1部

第1章

また、技術・研究開発の面でも、収量性の高い飼料用稲の新品種の育成や、パンやめん加工適性の高い小麦や米品種の開発、米を利用した製パン・製めん技術の開発等の取組も進んでいます。

事 例  国産品利用拡大に向けた技術・研究開発の取組

(1)高収量の飼料用稲等の新品種育成地方独立行政法人青森県産業技術センターでは、

冷涼な青森県でも、飼料用米が安定生産できるよう、高収量で耐寒性の強い飼料用稲の開発を行っています。平成 20(2008)年には稲発酵粗飼料* 1

用品種である「うしゆたか」、翌年には飼料用米の多収性品種である「みなゆたか」(10a 当たり単収758kg)を開発するとともに、飼料用米を鶏に与えることによる鶏卵への影響等について研究を行うなど、飼料用稲の開発・研究に取り組んでいます。これらは県の奨励品種に指定され、「うしゆたか」は平成 23(2011)

年度までに 150ha、「みなゆたか」は平成 25(2013)年度までに 3千 ha 作付けされることが目標となっています。*1[用語の解説]を参照

(2)グルテン不使用の米粉パン製造技術開発(独)農業・食品産業技術総合研究機構・食品総合研究所

では、小麦アレルギーを引き起こすとされているグルテン* 1

を全く使用しない米粉パンの製造技術を開発しています。米粉パンについては、これまでパンを膨らませるために小麦由来のグルテンや増粘剤等を添加していましたが、サプリメントにも利用され、広く生物の体内に存在する「グルタチオン* 2」という物質を米粉の生地に添加することにより、小麦粉のパンのように膨らむものを製造できることが明らかになりました。この研究により、米粉パン以外にも、新たな米粉製品の開発が期待されます。また、こ

れまで小麦粉のパンでは必須であった食塩の添加が不要となったことから、減塩食品としての利用も期待されています。

*1小麦に含まれるたんぱく質である「グリアジン」、「グルテニン」から生成される(米からは生成されない)たんぱく質の一種。弾力性と粘着性をもち、この性質によってパンが膨らみます。

*2グルタミン酸、システイン、グリシンの 3つのアミノ酸からなるトリペプチド。抗酸化物質の一つであり、健康や美容維持にも有効とされ、サプリメントとしても販売されています。

(3)米粒からパンをつくるホームベーカリー開発家庭用電機メーカーの三洋電機(株)は、世界で初めて、

「米粒つぶ

」からパンをつくるホームベーカリーを開発しました。それまでの「米粉」からパンをつくるホームベーカリーでは、米粉が手に入りにくい等の理由で売行きがはかばかしくなかったことから、直接米粒からパンをつくる仕組みを考え出し、開発期間 7 年をかけて商品化を実現しました。平成 22(2010)年 11 月に発売となり、発売 3 週間で 6

万台以上を売り上げ、販売を一時中止するほどの人気となっています。購入者からは「米の消費拡大に貢献したい」といった声も寄せられています。

「うしゆたか」(左)、「むつほまれ」(中)、「つがるロマン」(右)

米粉生地に「グルタチオン」を添加しているパン(右)、添加していないパン(左)

米 粒 か ら パ ン を つ く る ホ ー ムベーカリー

秋田県 岩手県

青森県

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(地産地消等の様々な取組)地産地消は、地域で生産された農産物をその地域で消費することによって、生産者と消

費者を結び付けるものであり、消費者の食や農業への理解促進とともに、食料自給率の向上や地域農業の活性化につながる取組です。地産地消等を進めていくうえで中心的な役割を果たす農産物の直売については、農業者

グループや農協等による取組に加え、スーパーマーケットのインショップやマルシェでの取組等、その形態が多様化しています。また、取り扱う農産物の品目や数量を拡大させるため、およそ 2 割の農産物直売所が産地間連携に取り組んでいます 1。学校給食や社員食堂、外食・中食 2 事業者等との連携を通じた地場農産物の利用拡大の

取組も重要です。例えば、学校給食における地場産物の利用率(食材数ベース)は、平成21(2009)年、26.1%と対前年 2.7 ポイントの増加となっており 3、農業者と実需者(学校等)とのニーズのマッチングの促進、安定した納入体制の構築等を通じて、一層の地場農産物の利用の拡大が期待されます。また、地域が一体となった地場農産物の活用のための取組も重要です。例えば、静岡県

富ふ じ の み や し

士宮市では、平成 16(2004)年、「フードバレー 4 構想」が提唱され、市民、農業者、企業、大学、NPO、市の 20 の団体・個人で構成されるフードバレー推進協議会が中心となって、地域の農産物を活かした産業振興、市民の健康づくり等を目指した幅広い活動を展開しています。この活動のなかで、一定の基準 5 を満たす農産物を「フードバレー推奨農産物」に認定し、アンテナショップ等において積極的に宣伝するほか、学校給食では新米の時期(9 〜 12 月)に月 1 回、市内産米を使った「おむすび給食」を実施するなど、地産地消を通じて地域の活性化を図っています。この取組については、市民の 7 割が認知しており、飲食店等の食関連事業所の37%は売上げが増加したと回答するなどの効果がみられます。

アンテナショップの様子

1(株)流通研究所「直売活動の現状と大都市直売の展望:全国直売施設実態調査」(平成 22(2010)年 3月公表)、全国の農産物直売所(常設・有人(週 3日以上運営)、周年運営)5,001 施設に対して実施した郵送調査(回収件数839 件)

2[用語の解説]を参照3 文部科学省「平成 21年度学校給食における地場産物の活用状況調査」、都道府県別は未実施4「フードバレー」は富士宮市による登録商標となっています。5 市内の畜産農家が生産した家畜由来の堆

たい

肥ひ

を積極的に使用し、かつ農薬使用量を県の基準の8割以下に抑えた農産物

第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組

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第1部

第1章

事 例  地産地消等の様々な取組

(1)消費者との交流等を通じた地域特産物等の販売全国の主な都市において、生産者と消費者を直接結び付

ける住民参加型の市場(マルシェ)が開催され、旬の野菜や地域の特産物等が販売されています。生産者にとっては、消費者との交流のみならず、それま

で取引がなかった飲食店や加工業者等新たな販売先の拡大、生産者同士の情報交換の場になるなどの効果もみられています。平成 21(2009)年に開始されたこの取組は、当初全国 6

都市で開催されていましたが、平成 23(2011)年 3 月現在で延べ 25 都市、参加する生産者の数も延べ 2 千人まで拡大しており、消費者にも好評で、今後も継続的な取組が期待されます。

(2)地場の農産物を学校給食等に活用新潟県三

さん

条じょう

市し

食育推進室では、学校給食が子どもの将来の食習慣に大きな影響を与えるという認識のもと、米飯学校給食の導入を進め、平成 20(2008)年にはすべての日で米飯給食を実現しました。米飯のほか、キャベツやなし等の地元農産物を学校給食

に活用する取組も行っており、平成 21(2009)年には 6 割(牛乳乳製品・牛肉・鶏肉を除いた重量ベース)で三条市産農産物が使われています。同市は、このような学校給食の取組のほか、市民の食生

活を変え健康を確立するため、平成 22(2010)年、農業者、一般市民、関連企業や団体等が一体となって地産地消を推進する「三条まんま塾(食と農の連携協議会)」を設立し、様々な活動を行っています。例えば、平成 22(2010)年には、三条市産の春キャベツを市民に宣伝するため、6 月

13 〜 19 日を「三条キャベツ週間」、16 日を「キャベツの日」とし、スーパーマーケットで特売を行うとともに、学校給食、飲食店、医療機関等でキャベツを使った献立を使用しました。このほか、きゅうり、ぶどう、かんしょ等でも同様の取組を展開しており、地場農産物と市民の食卓を近づけています。

都市部でのマルシェの様子

「三条キャベツ週間」でのスーパーマーケットの様子

新潟県福島県

長野県

三条市

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コラム  全国各地に残る伝統野菜

近年、全国各地に古くからある伝統野菜に注目が集まっています。伝統野菜とは、各地域で昔から栽培されてきた独特のもので、採種を繰り返していくなかで、その土地の気候風土に合った野菜として確立されてきたものです。伝統野菜は郷土料理とも密接なかかわりがあり、京料理には京野菜、加賀料理には加賀野菜が使われるなどしています。市場では、大量生産や周年安定生産が求められ、それに合わせて品種改良された F1 品

種* 1 が普及していくなか、伝統野菜については、比較的手間がかかり品質も安定しないなどの理由から、栽培する農業者が減少し、消滅の危機に瀕するものも出てきました。このようななか、地産地消に対する関心の高まりを背景に、各地で伝統野菜を保存する

動きがみられるようになりました。最近ではインターネットを通じて伝統野菜を販売している企業もあります。また、伝統野菜についての認識を高めるためにロゴやイメージキャラクターを作成したり、伝統野菜に関する検定を独自に行ったりするなど様々な取組がみられます。このような各地における特色ある作物は、地産地消のみならず、地域の活性化や種の保

全にも貢献していくことが期待されています。

*1形や収量を安定させるため、系統の異なる親同士を交配してできた雑種第1代のことです。種は自家採取せず、毎年新しい種を買う必要がありますが、形や大きさの揃いが良く、成長が早いなどの理由から、大量生産に適しています。

各地の伝統野菜の例

資料:成瀬宇平、堀知佐子『47 都道府県・地野菜/伝統野菜百科』(丸善出版、平成 21(2009)年11 月)   等を基に農林水産省で作成

北海道:八列とうもろこし

沖縄:モーウイ

東山山梨:おちあいいも長野:開田かぶ

北陸新潟:長岡巾着なす富山:どっこ石川:加賀れんこん福井:河内赤かぶ

東海岐阜:桑の木豆静岡:水掛菜愛知:守口だいこん三重:伊勢いも

四国徳島:ごうしゅいも香川:さぬき長莢愛媛:伊予緋かぶ高知:十市なす

はちれつ

関東茨城:赤ねぎ栃木:ゆうがお群馬:下仁田ねぎ埼玉:紅赤千葉:大浦ごぼう東京:練馬だいこん神奈川:三浦だいこん

しも に た

べにあか

おおうら

ねり ま

み うら

東北青森:糖塚きゅうり岩手:二子さといも宮城:仙台長なす秋田:山内にんじん山形:雪菜福島:会津小菊かぼちゃ

ぬかづか

ふた ご

さんない

ゆき な

あい づ こ ぎく

ながおかきんちゃく

こう ち あか

かい だ

みずかけ な

もりぐち

ながさや

い よ ひ

と いち

中国鳥取:伯州ねぎ島根:津田かぶ岡山:土居分小菜広島:広島おくら山口:笹川錦帯白菜

はくしゅう

つ だ

ど い ぶん こ な

ささがわきんたいはくさい

九州福岡:山潮菜佐賀:女山だいこん長崎:長崎はくさい熊本:水前寺もやし大分:久住高菜宮崎:糸巻きだいこん鹿児島:桜島だいこん

やましお な

おんなやま

すいぜん じ

くじゅうたかな

近畿滋賀:蛭口かぶら京都:堀川ごぼう大阪:毛馬きゅうり兵庫:武庫一寸蚕豆奈良:大和いも和歌山:和歌山だいこん

ひるぐち

け ま

む こ いっすんそらまめ

第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組

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101

第1部

第1章

コラム  地域で特色ある食料消費

各地域での食料消費の姿は、かつてほどではありませんが、今でも相当な違いがみられます。この違いをみると、地域の自然や気候風土に従って、そこでとれるものをその地で食べる「地産地消」の姿もみえてきます。例えば、「家計調査」における食料消費支出のうち、外食等を除く約 200 品目について、

二人以上の世帯の 1 世帯当たりの品目別の支出金額が 1 位の市をみると、世帯人員の違いに留意する必要がありますが、新潟県(新

にいがた

潟市し

)ではさやまめ、鳥取県(鳥とっとり

取市し

)ではなし、静岡県(静

しずおか

岡市し

)では緑茶、熊本県(熊くまもと

本市し

)ではすいか等となっており、それぞれの地域で盛んに生産される食材がよく購入されていることがわかります。地産地消の推進に当たっては、このような地域の消費の特性を考慮することも重要です。

食料消費支出が1位の品目の例(平成 19(2007)~平成 21(2009)年平均、都道府県庁所在市及び政令指定都市別)

資料:総務省「家計調査」を基に農林水産省で作成 注:1) 二人以上の世帯の1世帯当たり支出金額、平成 19(2007)~平成 21(2009)年平均 の値を基に作成   2) 外食、油脂・調味料を除く約 200 品目を対象として、主要な品目を選定   3) 都道府県庁所在市と政令指定都市(神奈川県川崎市、福岡県北九州市)を対象。神奈川県については

 横浜市と川崎市、福岡県については福岡市と北九州市を含む。

かわさきし きたきゅうしゅうし

ふくおかしよこはまし

生鮮野菜・果物魚介類穀類乾物・海藻、大豆加工食品等

飲料・酒類・菓子類・調理食品肉類・乳卵類

オレンジ

ヨーグルト栃木 ぎょうざ

岩手 中華めん

山形 こんにゃく 他の果物

塩さけ秋田 ほうれんそう

他の乳製品宮城 かまぼこ

福島 もも

群馬 乳酸菌飲料 グレープフルーツ

茨城 茶飲料

埼玉 豚肉・チーズ

千葉 レタス、ピーマン、キウイフルーツ

神奈川 しゅうまい

米 しらす干し緑茶静岡

山梨 ぶどう

バター東京 ワイン

かき岐阜

愛知 ハム

魚介のつくだ煮三重

和歌山 牛肉梅干し

奈良 牛乳キャンデー

油揚げ・がんもどきやきとり福井 ソーセージ

ぶり、いか富山 こんぶ

小麦粉長野 りんご

果実・野菜ジュースほたて貝青森

だいこん漬他の和生菓子れんこん石川

清酒さやまめ、他の野菜新潟

こんぶつくだ煮滋賀 卵

はくさい大阪

他の野菜の漬物京都 ビール 他のパン

他の洋生菓子たこ兵庫 食パン

しじみ島根

なし

ビスケット山口

岡山 他の茶葉

かき

かれい、いわし鳥取

北海道 メロン

ベーコンカステラ長崎

干しのり佐賀ようかん

他の生鮮肉すいか熊本

たらこ、さば福岡

焼酎揚げかまぼこ鹿児島

もやし 鶏肉

煮干し宮崎

干ししいたけ

かんしょ

みかん愛媛 めん類香川

はくさい漬かつお高知

他の加工肉かつお節・削り節沖縄 にんじん

広島

大分

徳島

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(消費者の国産品購入意識は高いものの、農業・食料に関する一層の啓発が重要)平成 23(2011)年に消費者を対象に行った調査によると、生鮮野菜や豚肉、生鮮果実

等では国産品を積極的に購入している者が 6 〜 8 割と多い一方、国産の小麦や米を使用した加工品、国産チーズ等では積極的に購入している者は 3 〜 4 割と少なくなっています(図 1 − 32)。国産品を購入している理由としては、「他の農産物に比べて品質が良いから」51%、「国

内の農業を応援したいから」24%、「売っている店が身近にあるから」8%等となっています。一方、国産品を購入していない理由としては、「他の農産物に比べて高いから」19%、「売っている店が身近にないから」16%、「品数が少ないから」13%等となっています。

また、平成 22(2010)年に消費者を対象に行った調査によると、輸入農産物と比較して国産農産物が「とても優れている」と評価している点としては、「旬や鮮度」、「産地と消費者の近さ」がともに 63%と多くあげられており、次いで「おいしさ」43%、「ブランド」40%等となっています(図 1 − 33)。

図1-32 国産品の購入状況

資料: 農林水産省「食料・農業・農村及び水産資源の持続的利用に関する意識・意向調査」(平成 23(2011)年 5月公表) 注: 消費者モニター 1,800 人を対象としたアンケート調査(回収率 90.3%)

生鮮の国産野菜

国産豚肉

生鮮の国産果実

国産大豆を使用した加工品

国産牛肉

国産米を使用した米粉加工品

国産小麦を使用した加工品

国産チーズ

積極的に購入している ある程度購入している

あまり購入していない 全く購入していない

分からない・無回答

%0 20 40 60 80 100

79.579.5

65.065.0 27.327.3

63.063.0 30.130.1

55.255.2 33.333.3 7.67.6

50.850.8 30.030.0 14.214.2

38.938.9 21.021.0 6.26.230.330.3

35.435.4 15.615.6 6.66.640.140.1

28.428.4 35.535.5 22.122.1 5.95.9 8.18.1

17.017.0

図1-33 輸入農産物と比較しての国産農産物の評価

資料 : 農林水産省「食品及び農業・農村に関する意識・意向調査」(平成 22(2010)年4月公表) 注:1) 消費者モニター 1,500 人を対象として実施したアンケート調査(回収率 87.0%)   2) 大都市部(東京 23 区、政令指定都市)及び都市部(県庁所在地等)の住民 741 人の結果

旬や鮮度

産地と消費者の近さ

おいしさ

ブランド

安全性

原産地等の表示

価格

とても優れている どちらかといえば優れている

どちらかといえば劣っている 劣っている 無回答0 20 40 60 80 100

63.263.2 35.235.2

62.562.5 33.533.5

43.143.1 55.255.2

40.140.1 55.755.7

39.839.8 58.958.9

38.238.2 55.855.8

47.447.47.07.0 43.943.9%

第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組

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第1部

第1章

他方、平成 23(2011)年に消費者、農業者を対象に行った調査によると、農業・食料に関する知識(米や野菜、畜産物等の農産物、食品はどのように生産されるのか等)について、身のまわりでは「もっていない子どもが多い」、「ほとんどの子どもがもっていない」とする消費者が 6 割、農業者が 5 割と多い状況となっています(図 1 − 34)。また、その子どもたちの親については、「もっていない親が多い」、「ほとんどの親がもっていない」とする消費者が 5 割、農業者が 3 割となっています。

このようななかで、今後、国産農産物の消費拡大を通じて食料自給率の向上を図るためには、多様なニーズを踏まえつつ、供給サイドにおいて品質向上や価格面での取組をさらに強めていくことはもちろん、これまでみてきたような農業者、食品製造業者、流通業者をはじめ、地方公共団体や大学、その他幅広い業種による取組が一体となって推進され、国産品の良さ、食料・農業の事情、国産品消費の意義・必要性等をさらに周知したり、啓発したりすること等を通じて、消費者の実際の購買行動に結び付けることが重要と考えられます。また、食料自給率は、国民一人ひとりの食生活に影響される面が大きく、今後、各地域

の親子に対し、食や農業に関する情報発信や啓発の取組を進めていくことが必要です。

図1-34 農業・食料に関する知識

資料:農林水産省「食料・農業・農村及び水産資源の持続的利用に関する意識・意向調査」(平成 23(2011)年 5月公表) 注:消費者モニター1,800人及び農業者モニター2千人を対象としたアンケート調査(回収率はそれぞれ 90.3%、81.4%)

ほとんどの子どもが十分もっている

十分もっている子どもが多いが、一部はもっていない

十分もっている子ども、もっていない子ども半々ぐらい わからない

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100%

%

もっていない子どもが多いが、一部は十分もっている

ほとんどの子どもがもっていない

(子ども)

(親)

消費者

農業者

消費者

農業者

ほとんどの親が十分もっている

十分もっている親が多いが、一部はもっていない

十分もっている親、もっていない親半々ぐらい わからない

もっていない親が多いが、一部は十分もっている

ほとんどの親がもっていない

7.37.3 17.717.7 27.727.7

61.29.52.3

33.533.5 11.611.6

16.716.75.25.2 17.717.7 23.823.8 25.825.8 10.810.8

21.9 49.6

13.713.7 28.828.8 30.830.8

46.316.32.6

15.515.5 8.58.5

27.427.415.115.1 21.921.9 18.718.7 9.69.6 7.27.2

28.342.5

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(朝ごはん運動の取組も進展)食料自給率向上のためには、朝食欠食の改善も必要です。朝食の欠食者は、我が国の総

人口の 1 割強に相当する 1,500 万人にも及び、その市場規模は年間 56 億食、1 兆 7 千億円に及ぶと試算されています(表 1 − 10)。

事 例  各種啓発の取組

(1)農家による食や農業に関する情報発信北海道旭

あさひ

川かわ

市し

では、米と野菜の生産を行っている農業者高倉晴美さんが、自身の農業に付加価値を付けるため、栄養士の資格を取得し、自ら生産した農産物を使用したおにぎり・そう菜をつくり、市内や空港で販売を行っています。農場の隣の厨房では、地元の食材を使った料理教室や保存食の教室、おむすび講座を開催したり、外部からの講師を呼んでフランス料理等の教室を実施したりして食や農についての積極的な情報発信を行っています。これらの教室には、平成22(2010)年には延べ 40 人が参加しています。また、同厨房では、農産物直売所として地域の野菜、はちみつ、卵等の販売も行う予定

となっています。

(2)地元産の農産物を用いた食文化普及講座愛媛県伊

予よ

市し

の伊予市生活研究協議会双ふた

海み

支部では、子どもたちに地元農水産物を使ったふるさと料理等の食文化の伝承を進めるとともに、豊かな食生活と手づくりの楽しさを味わってもらうため、地元小学校 3校で食文化普及講座を開催しています。同協議会では、もともと農家女性グループ等を中心に農産物直売や農水産物の加工販売を行っていましたが、地元消費者との交流を通じ、地場産食材を使用したふるさと料理が何よりのごちそうであることを再認識し、子どもたちにその思いを伝えたいと思っていました。そこで、同協議会の会員である漁協女性部が実施していた小学校への料理講座を発展させ、同講座を始めました。この講座では鯛めし、つみれ汁、筑前煮等の料理の調理実習を行っており、同講座を受

講した子どもからは、「鯛をさばくところを初めてみた」、「料理することが楽しかった」、「美味しかった。家でもつくりたい」といった声が寄せられています。また、平成 22(2010)年には保護者も交えて調理実習するなどの取組も行われています。

厨房でのだしづくり実演の様子

小学校での調理実習の様子

全国平均 20歳代 30歳代 40歳代

朝食欠食率(%) 12.0 27.6 23.2 15.5

人口(千人) 128,056 14,198 18,054 16,796

1 日の欠食数(千人) 15,367 3,919 4,189 2,603

年間欠食数(億食) 56.1 14.3 15.3 9.5

市場規模(億円) 16,800 4,300 4,600 2,900

表1-10 朝食欠食の市場規模

資料:厚生労働省「平成21年度国民健康・栄養調査」、総務省「人口推計(平成22年10月1日)」を基に農林水産省で作成 注:市場規模は、1食で当たり 300 円として試算

北海道

旭川市

愛媛県高知県

伊予市

第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組

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第1部

第1章

また、消費者を対象に行った調査によると、朝食を食べていると回答した者(高頻度摂取層、中頻度摂取層)のなかでも、平日の朝食でパンを主食としている者が 6割程度の一方、米食では 4割程度にとどまり、低頻度摂取層では米食の割合がさらに低くなっています(図1 − 35)。

このような状況のなかで、朝食摂取を促進し、米の消費拡大を図る「めざましごはんキャンペーン」が展開されています。平成 22(2010)年 12 月末時点で、4,300 の企業・団体がキャンペーンに参加し、食品製造業ではロゴマークを付けた商品の開発・製造、小売店ではごはん関連食材を集めたキャンペーンの展開、大学等では朝食欠食が急増する新入学生に対する啓発等の取組が行われています。一部地方公共団体では、従来から、住民と一体となって、条例により朝ごはん運動を推

進する取組が行われています。青森県鶴つる

田た

町まち

では、平成 13(2001)年、町内の児童の食生活を調査したところ、11.4%が朝食を欠食し、70%以上が夜食を食べていること等、食生活が乱れている実態が明らかになりました。そこで、同町は、平成 16(2004)年、関係者が一体となって、米文化の継承をとおして正しい食習慣の普及と健康増進を図るための朝ごはん運動を、恒久的に取り組むこと等を目的とした「朝ごはん条例」を全国で初めて制定しました(図 1 − 36)。

図1-35 平日の朝食内容(朝食摂取頻度別、複数回答)

0

10

20

30

40

50

60

70

80%

ジュースや牛乳、

コーヒー、水等の

飲み物

パンやサンドイッチ

等のパン食の主食

ごはんやおにぎり

等の米食の主食

バナナやリンゴ

等の果物

スープやみそ汁

サラダやおひたし

等の副菜

焼き魚や卵料理等

の主菜

その他サプリメント

や栄養補助食品、

ゼリー飲料等

めん類

69.7

60.860.4

36.5

46.241.1

23.1

32.7

23.2

17.3

26.4

16.4

7.7

23.1

7.2

0.0

21.5

9.2

1.9

17.115.0

11.5

4.6 5.8

13.5

70.0朝食高頻度摂取層

中頻度摂取層

63.5

低頻度摂取層

資料:東北大学加齢医学研究所「幸せ度とライフスタイルに関する意識と実態調査」(平成 22(2010)年 9月公表) 注: 1) 全国の 20~60 歳代の仕事をもつ男女を対象としたインターネット調査(回答総数 1千人) 2) 朝食を食べていると答えた 896 人を対象とした設問 3) 朝食高頻度摂取層は朝食を毎日食べる者(637 人)、中頻度層は週に 3~6日(207 人)、低頻度層は週2日以下

(52 人)

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この朝ごはん運動によって、学校給食ではすべて町内産の米を用いた米飯給食に切り替えられるとともに、地元の食材を提供する活動等が行われています。また、児童の朝食欠食率は、平成 22(2010)年には 8.4%に低下するなど、規則正しい生活の実現等に大きな効果が出ています。

米飯学校給食の様子

図1-36 朝ごはん条例(抜粋)

鶴田町朝ごはん条例    平成 16年 3月 22日鶴田町条例第 1号

(目的)第 1条 この条例は、鶴の里健康長寿の町宣言に基づき、米文化の継承を通して正しい食習慣の普及と健康増進を図るため、鶴田町における朝ごはん運動についての基本方針を定め、併せて町長、町民、関係機関及び関係団体等の責務を明らかにすることにより、総合的かつ計画的に運動を推進し、もって、21世紀の健康長寿目標を達成することを目的とする。

(基本方針)第 2条 町長は、次の各号に掲げる事項を基本方針として、町民、関係機関及び関係団体と一体となって朝ごはん運動を推進するものとする。・ごはんを中心とした食生活の改善・早寝、早起き運動の推進・安全及び安心な農産物の供給・鶴田町において生産された農産物の当該地域内における消費(地産地消)の推進・食育推進の強化・米文化の継承

(推進本部の設置)第 3条 町長は、朝ごはん運動を総合的かつ計画的に推進するため、鶴田町朝ごはん運動推進本部を設置する。

(略)5 推進本部の所掌事務は、次の各号に掲げるとおりとする。・第 2条に規定する基本方針に係るガイドラインの策定・朝ごはん運動を推進するための鶴田町朝ごはん運動実施計画の策定・実施計画の進行管理・朝ごはん運動推進に係る施策の総合的な調整

資料:青森県鶴田町

鶴田町役場

第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組