平成 23 年度 フィリピンにおける日本食品の市場動向調査 - …...1....

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2011-AFC 14 平成 23 年度 フィリピンにおける日本食品の市場動向調査 2012 3 日本貿易振興機構(ジェトロ) 農林水産・食品部 マニラ事務所

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  • 2011-AFC

    14

    平成 23 年度

    フィリピンにおける日本食品の市場動向調査

    2012 年 3 月

    日本貿易振興機構(ジェトロ)

    農林水産・食品部

    マニラ事務所

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    本報告書には、ジェトロの公式見解ではなく外部委託先の論考、意見が含まれます。これらに

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    目次

    1. 調査の概要 ..........................................................................................................................1

    2. 日本産農林水産物・食品の輸入 .........................................................................................2

    3. 日本食品の小売での販売動向 .............................................................................................4

    3-1 フィリピン小売業の概要 ..............................................................................................4

    3-2 日本食品の小売動向 ....................................................................................................4

    ① フィリピン国内で生産されている日本食品 .............................................................4

    ② 日本から輸入されている日本食品 ............................................................................7

    ③ 日本以外の国から輸入されている日本食品 .............................................................9

    3-2 日本産の類似商品(現地消費者に日本産と認識されている外国産品) .............. 10

    4. 外食産業の動向 ............................................................................................................... 12

    4-1 外食産業に関する外資規制 ........................................................................................ 12

    4-2 日系外食産業の進出状況 ........................................................................................... 12

    4-3 現地で成功している日本食レストランの状況 .......................................................... 13

    4-4 現地で浸透しているレストランの成功要因 .............................................................. 15

    5. 外国産品の先行事例 ........................................................................................................ 17

    5-1 カリフォルニア産ワイン ........................................................................................... 17

    5-2 オーストラリア産乳製品 ........................................................................................... 20

    5-3 ニュージーランド産牛肉 ........................................................................................... 23

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    1. 調査の概要

    1-1 目的

    本調査は、フィリピンにおける日本食品の市場動向を調査し、日本産農林水産物・食品

    輸出のニーズもしくは可能性のある中小企業等へ情報提供することを目的とする。

    1-2 調査手法および時期

    本報告書に記載されている情報は、政府機関による統計データ、および食品製造業、食

    品輸入業、小売、飲食業等の公開情報、そして関係者へのインタビューに基づいている。

    調査実施時期は、2012 年 2 月上旪~3 月上旪である。また、報告書に記載されている各

    商品の小売価格は 3 月上旪のマニラ首都圏大手スーパーマーケットにおけるものである1。

    なお、本調査の一部は、野村総合研究所(NRI)マニラ支店に委託した。

    1 小売価格の通貨単位はペソ。調査時点(2012 年 3 月)において 1 ペソ=約 1.9 円。

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    2. 日本産農林水産物・食品の輸入

    フィリピン国家統計局(NSO)のデータによると、日本からの農林水産物・食品2輸入

    量は、2009 年に金融危機の影響を受け前年比 12%減となった。2010 年の輸入量は前年比

    30%増となったものの、2011 年には東日本大震災の影響もあり、前年比 11%減となり、

    合計約 2 万 3,200 トンであった(表1)。

    2011 年に日本から輸入された農林水産物・食品のうち、輸入額全体に占めるシェアが高

    い品目としては、①冷凍のサバ、カツオ、マグロといった冷凍魚介類(輸入額全体の 59%)、

    ②野菜等の播種用の種(同 11%)、③天然調味料やサプリメント等の調製食料品(同 7.3%)、

    ④チョコレート菓子(同 6.2%)、⑤化粧品原材料等として使用される植物エキス(同 3.2%)

    等が挙げられる。

    サバ、カツオ、そしてマグロといった冷凍魚介類の多くは、輸入された後、国内大手缶

    詰メーカーによって加工され、欧米等へ向けて輸出されている。なお、国内市場向けの缶

    詰には国産魚介類が使用されている。3

    フィリピンの食品市場は、2012 年から 2016 年にかけて年平均 5.6%の成長が見込まれ

    ている4。製菓市場の2009年から2011年にかけての年平均成長率が2.2%にとどまるなか、

    日本からの煎餅等菓子類の輸入量が増加しているのは、健康志向の高い中・高所得者層に

    おける日本産菓子への関心の高まり5を背景にしたものと考えられる。

    種子はフィリピン国内で生産されるキャベツやレタス、きゅうり、人参、とうもろこし、

    大根、茄子、かぼちゃ、ブロッコリ、カリフラワー、スイカ等用に輸入されている。

    天然調味料は大手食品メーカーによるスナック菓子や即席めんつゆの原材料として使用

    されている。

    2 品目分類番号(H.S.コード)における分類の第1~22 類に該当する品目を対象とする。 3 ヒアリングおよび各メーカー公開情報等に基づく。 4 “PHILIPPINE FOOD & DRINK REPORT 2012”, Business Monitor International お

    よび食品メーカー、輸入業者へのインタビューに基づく。 5 煎餅などの日本の菓子は、総じてフィリピン国内メーカーの商品よりもカロリーが低い

    という認識

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    表 1.日本産農林水産物・食品の上位9品目6輸入額および輸入量推移

    2008年 2009年2009年増加率

    2010年2010年増加率

    2011年

    '額および量の

    各全体に占める割合(

    2011年増加率

    2008年~2011年

    平均増加率

    FOB価格 '千米ドル(

    34,951 21,235 -39% 22,360 5% 25,399 100% 14% -7%

    量'グロス( (トン)

    22,762 20,072 -12% 26,150 30% 23,209 100% -11% 2%

    FOB価格 '千米ドル(

    9,984 11,333 14% 11,825 4% 14,898 59% 26% 15%

    量'グロス( (トン)

    15,043 14,179 -6% 19,201 35% 18,373 79% -4% 8%

    FOB価格 '千米ドル(

    1,913 2,001 5% 2,483 24% 2,853 11% 15% 15%

    量'グロス( (トン)

    77 69 -11% 78 13% 78 0.3% 1% 1%

    FOB価格 '千米ドル(

    1,145 1,642 43% 1,486 -9% 1,850 7.3% 24% 19%

    量'グロス( (トン)

    369 410 11% 441 7% 368 1.6% -16% 1%

    FOB価格 '千米ドル(

    1,447 1,681 16% 2,248 34% 1,584 6.2% -30% 7%

    量'グロス( (トン)

    316 313 -1% 303 -3% 250 1.1% -18% -7%

    FOB価格 '千米ドル(

    493 448 -9% 345 -23% 822 3.2% 139% 35%

    量'グロス( (トン)

    92 38 -58% 22 -42% 38 0.2% 74% -9%

    FOB価格 '千米ドル(

    707 334 -53% 280 -16% 450 1.8% 61% -3%

    量'グロス( (トン)

    670 490 -27% 473 -3% 412 1.8% -13% -14%

    FOB価格 '千米ドル(

    403 300 -25% 255 -15% 359 1.4% 41% 0%

    量'グロス( (トン)

    932 762 -18% 423 -44% 573 2.5% 36% -9%

    FOB価格 '千米ドル(

    40 58 45% 51 -12% 220 0.9% 331% 121%

    量'グロス( (トン)

    65 90 37% 85 -5% 83 0.4% -2% 10%

    FOB価格 '千米ドル(

    556 198 -64% 114 -43% 207 0.8% 82% -8%

    量'グロス( (トン)

    71 48 -33% 46 -3% 64 0.3% 39% 1%

    FOB価格 '千米ドル(

    18,262 3,240 -82% 3,273 1% 2,156 8.5% -34% -38%

    量'グロス( (トン)

    5,128 3,672 -28% 5,078 38% 2,967 12.8% -42% -11%

    その他

    8. 穀物又は穀物産品を膨脹させて又はいつて得た調製食料品等 '主に煎餅などの菓子類、パン粉(

    9. 魚のフィレその他の魚肉'断片状のもの(

    7. めん類 '主に即席めん類(

    1. 魚'冷凍。断片状のものを除く。( '主にサバ、カツオ、マグロ(

    2. 播種用の種、果実及び胞子 '野菜、果物用(

    3. 調製食料品 '天然調味料、サプリメント(

    4. チョコレートその他のココアを含有する調製食料品

    5. 植物性の液汁及びエキス等 '主に化粧品原材料として(

    6. ソース、ソース用の調製品、混合調味料等 '主に醤油、酢、マヨネーズ(

    全体

    出所:NSO(国家統計局)データよりジェトロ作成

    6 NSO データ上では、8 位に「トマト(生鮮もしくは冷凍)」(品目 0702 番)が挙がって

    いたが、2008 年~2010 年の NSO データでは「トマト」の輸入実績はないため、表から

    は除外した。

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    3. 日本食品の小売での販売動向

    3-1 フィリピン小売業の概要

    フィリピンの小売業界は、総事業者数の約 9 割7を占める零細事業者(「サリサリ・スト

    ア」と呼ばれる地域に根ざした小規模店)と尐数の大規模近代小売業(スーパーマーケッ

    トやハイパーマーケット等)から成る。

    フィリピンの小売店で販売されている代表的な日本食品としては、「味の素」や「キッコ

    ーマン」をはじめとする調味料、乳酸菌飲料「ヤクルト」、「日清」カップヌードル、「明治」

    チョコレート等が挙げられる。

    3-2 日本食品の小売動向

    ① フィリピン国内で生産されている日本食品

    フィリピン国内で生産されている日本食品としては、「味の素」、「ヤクルト」、大正製薬

    の「リポビタン」、日清の即席めん等が挙げられる。

    味の素は 1958 年からフィリピンでうまみ調味料の製造・販売を続けており、

    「AJI-NO-MOTO」ブランドは社会階層を問わず広く認知されている。2011 年の売上は

    約 52 億ペソであり、前年比 3%成長となった(表2)。同社の商品は、全国のサリサリ・

    ストア、ウェット・マーケットおよびスーパーマーケット等で販売されており、1 袋(4.3

    グラム入り)1 ペソで販売されている8。ターゲットである中・低所得者層消費者の購買力

    に合わせ手頃な値段で提供するという販売戦略が、シェアを高めてきた理由の一つである。

    他にも、「GINISA」(20g 入り、5 ペソ)や「AJI-SHIO」(18g 入り、4.35 ペソ)といっ

    た粉末調味料や唐揚げ用の粉「CRISPY FRY」(65g 入り 13.8 ペソ)、人口甘味料等も販

    売している。GINISA 等調味料の競合品としては、Nestle が現地生産している「Maggi

    Magic Sarap」(8g 入り 2.4 ペソ)等がある。

    フィリピン・ヤクルトは 1977 年に設立され、全国のヤクルトレディーによる宅配およ

    び小売店での販売によりブランドを確立してきた。2010 年の売上額は約 20 億ペソで前年

    7 2010 年における推定値は約 77 万件。 8 なお、スーパーマーケット等ではパック売りでより割安な価格で販売されている(36 袋

    入り 31.35 ペソ)。

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    比 5%増(表3)、2011 年の売上数量は1日あたり約 122 万本(前年比 6%減)である9。

    5 本入りパック(80ml/本)が 40 ペソ10で販売されており、乳酸菌飲料分野で 9 割以上

    のシェアを誇っている。競合品としては、Nestle が現地生産している「PROBIOTIC

    DRINK」〔5 本入りパック(1 パック 78ml 入り)、40 ペソ〕があり、オレンジやストロベ

    リー味の商品も出している。

    大正製薬の「リポビタン」は、1973 年にフィリピンでの販売が開始され、1992 年には

    現地販売会社の大正製薬フィリピン、 1997 年には製造会社の Taisho-Hizon

    Manufacturing, Inc.が設立された。ドラッグチェーン店やスーパー、サリサリ・ストア等

    で「LIPOVITAN」(100ml 入り 26.5 ペソ)、「LIPOVITAN PUNCH」(150ml 入り 30 ペ

    ソ)などが販売されており、2010 年の売上は約 1 億 8,600 万ペソとなった。2009 年、2010

    年の対前年売上増加率はそれぞれ 14%、28%と好調な伸びを見せている(表4)。競合す

    る栄養ドリンクとしては、最大のシェアを占めるタイ産「RED BULL」(Supreme:150ml

    入り 31.5 ペソ)がある。この他、Pepsi Cola の現地産「STING」(330ml 入り 17 ペソ)

    や現地大手食品メーカーUniversal Robina Corp.(URC)の「RED DRAGON」(230ml

    入り 8.25 ペソ)といった「LIPOVITAN」や「RED BULL」よりもかなり安価で販売さ

    れているものもある。

    日清の即席めんは、ライセンス契約のある現地大手食品メーカーURC が子会社

    Nissin-Universal Robina Corp.で製造している。「NISSIN」ブランドはフィリピン国内で

    幅広く流通しており、即席カップめんは 40g 入り 14.25 ペソ、袋入りの乾めんは 55g 入り

    10 ペソで販売されている。Nissin-URC の 2011 年における売上は 14 億 7,500 万ペソで前

    年比 11%増と好調であった(表5)。URC は自社ブランドでも即席めんを製造しており、

    袋入りの乾めん「Pancit Shanghai」は 60g 入りで 7.7 ペソと、安さをセールスポイント

    にしている。また、菓子類で有名な大手食品メーカーの Monde Nissin Corporation が競

    合品として「Luck Me!」ブランドの即席めんを出しており、カップめんが 35g 入り 14.5

    ペソ、袋入りが 55g 入り 7.5 ペソと、袋入りは「NISSIN」より 2 割以上低い価格で出し

    ている。これら尐量入りの即席めんは、「メリエンダ」と呼ばれる間食として食されること

    が多い。なお、大手スーパーでは日本から輸入された日清のラーメンや韓国、中国産のも

    9 2011 年売上数量は速報値。出所:ヤクルト本社平成 24 年 3 月期第 3 四半期決算短信よ

    り 10 2010 年に 35 ペソから値上げされた。

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    6

    のも販売されている。これらについては後述する。

    表2.フィリピン味の素売上推移

    2009年 2010年 2011年

    売上'百万ペソ( 4,818 5,045 5,186

    対前年売上増加率'%( 5% 3%

    出所:SEC(証券取引委員会)に提出された財務報告書より

    表3.フィリピン・ヤクルト売上推移

    2008年 2009年 2010年

    売上額'百万ペソ( 1,883 1,999 2,091

    対前年売上額増加率'%( 6% 5%

    売上数量'千本/日( 1,217 1,299 1,220

    対前年売上数増加率'%( 7% -6%

    出所:SEC に提出された財務報告書およびヤクルト本社決算短信より

    表4.大正製薬フィリピン売上推移

    2008年 2009年 2010年

    売上'百万ペソ( 128 146 186

    対前年売上増加率'%( 14% 28%

    出所:SEC に提出された財務報告書より

    表5.Nissin-Universal Robina 社売上推移

    2009年 2010年 2011年

    売上'百万ペソ( 1,250 1,326 1,475

    対前年売上増加率'%( 6% 11%

    出所:SEC に提出された財務報告書より

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    ② 日本から輸入されている日本食品

    フィリピンで販売されている日本産食品の代表的なものとして、即席カップめん、チョ

    コレート、煎餅、マヨネーズ等が挙げられる(表6)。これらの食品は、主に中・高所得者

    層を顧客とする、首都圏の大手スーパーマーケットや日本食材店等の小売店のみで販売さ

    れている。

    表6.フィリピンで販売されている主な日本産の日本食品

    メーカー 商品名フィリピンにおける

    輸入業者内容量 小売価格

    NISSIN CUP NOODLESEAFOOD

    Madison Square Marketing 74g 114.70ペソ

    NISSIN UFO YAKISOBANOODLE Madison Square Marketing 125g 123.75ペソ

    東洋水産MARUCHAN CUP NOODLES'マルちゃん カップうどん(

    Madison Square Marketing 96g 127.75ペソ

    Meiji Apollo ChocolateStrawberry Grand Dragon Ent., Inc. 48g 32.05ペソ

    Meiji Hi milk chocolate '板チョコ( Grand Dragon Ent., Inc. 58g 51.75ペソMeiji ALMOND CHOCOLATE Grand Dragon Ent., Inc. 74g 83.15ペソ

    亀田製菓 KAMEDA AGE ICHIBAN Madison Square Marketing 155g 163ペソ

    ブルドックソースBULLDOG TONKATSU SAUCESTEAK GRILLED

    Madison Square Marketing 300g 175ペソ

    ヤマサ YAMASA SOY SAUCE Chriswell 1,000ml 286ペソキユーピー Kewpie Mayonnaise Madison Square Marketing 500g 275ペソ

    エスビー食品S&B Oroshi WasabiTubeOriginal

    Madison Square Marketing 43g 82.50ペソ

    丸美屋食品工業 MARUMIYA NORITAMA Madison Square Marketing 30g 98.25ペソ

    マルハニチロ食品MARUHA SARDINES IN MISOSAUCE

    Madison Square Marketing 100g 123.75ペソ

    キッコーマン飲料DEL MONTE VEGETABLEDRINK Madison Square Marketing 190g 73ペソ

    キッコーマン飲料DEL MONTE 100% TOMATOJUICE Madison Square Marketing 900g 195.25ペソ

    大塚製薬POCARI SWEAT ION SUPPLYDRINK'粉末( Madison Square Marketing 74g 113.75ペソ

    日清食品

    明治

    出所:ジェトロ

    最近の輸入食品市場の傾向として、「辛拉麺(SHIN NOODLES」(72g 入り 34.5 ペソ)

    に代表される韓国ブランドの人気が高まっていることが挙げられる。「辛拉麺」は中国産で

    あり、前述のフィリピン産の即席めんよりも高価であるものの、唐辛子の辛さを求める消

    費者が増えていることや、「体によい」「痩身効果がある」といった宣伝の仕方が功を奏し

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    た結果、売り上げが伸びているという11。他の競合商品として、シンガポール産の「KOKA」

    (70g 入り 49 ペソ)があり、チキン味、シーフード味に加え、トムヤン味、カレー味等

    もある。また「MSG 不使用」、「低カロリー」という点で競合商品からの差別化を図って

    いる。

    日本のチョコレート菓子では「Meiji」ブランドが圧倒的な人気を誇っており、一般的に、

    現地産もしくは他国産のチョコレートに比べ甘さが控えめ、かつ舌触りもなめらかという

    認識がある。競合商品としては、欧米各国のブランドのものが出揃っており、例えば米国

    の「HERSHEY‟S」(中国産、40g 入り板チョコ 41.25 ペソ)、スイスの「Nestle Kit Kat」

    (マレーシア産、17g 入り 17 ペソ)、「Nestle Kit Kat (White)」(英国産、45g 入り 30 ペ

    ソ)、スイスの「DELFI goya」(フィリピン産、38g 入り 17.5 ペソ)がある。また、地場

    ブランドでは「JACK „n JILL CLOUD 9」(28g 入り 5.95 ペソ)、「Choco Mucho」(33g

    入り 5.75 ペソ)等が低価格で販売されている。日本で生産されたチョコレートとしては、

    2008 年 12 月から札幌のチョコレートブランド「ROYCE」の商品がフィリピンでも販売

    され始め、現在、高級モール内に4店舗を構え直販している。2008 年は 12 月単月で約 500

    万ペソ、2009 年には約 3,260 万ペソ、2010 年は 3,250 万ペソを売り上げている12。フィ

    リピンにおける小売価格は日本の小売価格に比べ約6割高い13が、高級チョコレートとし

    て、ギフト需要に応えている。ただ、「ROYCE」は日本産ではなく欧米もしくはシンガポ

    ールのチョコレートだと認識している消費者もいる。

    日本のマヨネーズとして有名な「キユーピー」は中間・高所得者層における健康意識の

    高まりを受け、注目を集めている日本商品の一つであると言える。フィリピンで販売され

    ている主なマヨネーズとしては、オランダ/英国 Unilever 社ブランド Lady‟s Choice

    (「Mayo Lite 50% Less Fat」80g 入りパック 26.5 ペソ)、米国 KRAFT(「Mayo Real

    Mayonnaise」80g 入りパック 22.75 ペソ)、Unilever の低価格ブランド Best Foods(「Mayo

    Magic」80g 入りパック 16.45 ペソ)があり、すべて現地産である。1 グラムあたりの価格

    でみると、「キユーピー」の約 4~6 割ある。また、他の商品と同様に、販売価格を抑える

    ために尐量をパウチ入りで販売している。

    11 輸入業者へのインタビューに基づく。 12 SEC(Republic of the Philippines Securities and Exchange Commission)に提出され

    た財務報告書より。 13 「生チョコレート」(20 粒入り)が日本では 693 円なのに対し、フィリピンでは約 1,100

    円(580 ペソ)。

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    ③ 日本以外の国から輸入されている日本食品

    日本以外の近隣アジア諸国から輸入されている日本食品としては、シンガポール産の「キ

    ッコーマン」醤油やロッテのタイ産「コアラのマーチ」および韓国産「チョコパイ」、明治

    のシンガポール産菓子などが挙げられる(表7)。

    表7.日本以外の国から輸入されている主な日本食品

    品名 メーカー フィリピンにおける商品名フィリピンにおける

    輸入業者原産国 内容量 小売価格

    調味料 キッコーマン KIKKOMAN Soy Sauce Sysu International, Inc. シンガポール 500ml 93.50ペソ

    KOALA'S MARCH Lotte Confectionery PilipinasCorp. タイ 41g 32.50ペソ

    Choco Pie Lotte Confectionery PilipinasCorp. 韓国 168g'6個入り( 67ペソ

    HELLO PANDA CHOCOLATEBISCUIT

    Grand Dragon Ent., Inc. シンガポール 35g 14.80ペソ

    yan yan Creamy chocolate dipbiscuit snack

    Grand Dragon Ent., Inc. シンガポール 50g 26.10ペソ

    江崎グリコ POCKY CHOCO BANANA Goodway Int'l Trading Corp. タイ 25g 18ペソ

    大塚製薬 POCARI SWEATOtsuka (Philippines)Pharmaceutical Inc. インドネシア 500ml 33ペソ

    ポッカ POKKA SPORTS WATER Benby Enterprises Inc. シンガポール 500ml 31.90ペソ缶コーヒー ポッカ Pokka Milk Coffee Benby Enterprises Inc. シンガポール 240ml 26.95ペソ

    ロッテ菓子

    清涼飲料水

    明治

    出所:ジェトロ

    日本食品の代名詞となっている「キッコーマン」は、シンガポールから輸入されており、

    500ml 入りボトルが 93.5 ペソで販売されている。スーパーマーケット等の小売店の店頭

    には、中国産「SINSIN」(635ml 入り 64 ペソ)、国産「SILVER SWAN」(200ml 入り 5.6

    ペソ)、「DATU PUTI」(60ml 入り 2.5 ペソ)、「Mama Sita‟s」(30ml 入り 2.25 ペソ)と

    いった、より安価な商品が並んでいる一方で、タイ産「HEALTHY BOY BRAND」(250ml

    入り 78.85 ペソ)といった高額な輸入商品もある。「キッコーマン」は、これまで主に中間

    層以上の顧客向けに販売されてきたが、2012 年 1 月より中間層以下をターゲットとした

    低価格の小分けタイプ(100ml 入りパック 25 ペソ)を販売し始めた。なお、醤油の輸入

    は 2006 年以降、年平均 0.5%の伸び率と、大きくは伸びていない。2010 年の国別輸入額

    ではシンガポールが最も高く 55%、次いで中国が約 20%であった14。

    ロッテの「コアラのマーチ」は、以前日本から輸入されていたが、現在はタイ産を輸入

    しているため販売価格が抑えられ、より多くの消費者が購入しやすくなった。明治の

    「HELLO PANDA」という小袋入りのチョコレートビスケット、そして「yan yan」とい

    14 NSO データより

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    10

    うスティックビスケット&チョコレート・ディップはシンガポールから輸入している。こ

    れら明治の商品に対して、国内菓子メーカーがよく似た商品を製造・販売している。

    「HELLO PANDA」に対して「KOKOLA」(パッケージのパンダがコアラに変わったも

    の。25g 入り 6.5 ペソ)、「yan yan」に対して「yum yum」(30g 入り 10.55 ペソ)と、シ

    ンガポール産の明治商品に比べ、1 グラムあたりの価格でみると 3 割以上安い。また、1

    箱あたりの量を尐なめにすることで販売価格を抑えている。

    清涼飲料水では大塚製薬の「POCARI SWEAT」(500ml 入り 33 ペソ)がインドネシア

    から、ポッカの「POKKA SPORTS WATER」(500ml 入り 31.9 ペソ)がシンガポールか

    ら輸入されている。これらの輸入品に対し、フィリピン国内では米国 STOKELY-VAN

    CAMP INC.の「Gatorade」(500ml 入り 30.25 ペソ)が Pepsi Cola Products Philippines

    によって製造されており、価格も 1.65 ペソ安い。シンガポールの FRASER AND NEAVE,

    LTD.ブランド「100 PLUS」(500ml 入り 23 ペソ)も国内で製造されており、小売価格は

    ポカリスエットに比べると 3 割安い。缶コーヒーではポッカ(240ml 入り 26.95 ペソ)も

    シンガポール産の商品が輸入されており、競合商品のマレーシア産 Nestle(240ml 入り

    28.5 ペソ)に比べると安く販売されている。

    フィリピンの輸入業者や小売関係者間では、高所得者層向けの一部の商品を除き、日本

    産食品に比べ、上述の「日本以外の国で生産される日本食品」の販売が今後も伸びるとい

    う見方が強い。

    3-2 日本産の類似商品(現地消費者に日本産と認識されている外国産品)

    大手スーパーで販売されており、フィリピン人消費者に「日本産」と誤認されている商

    品としては、「Fuji Apple」(ふじりんご、中国産、30 ペソ/玉)、「Japanese Root」(日本

    ごぼう、中国産)、「Japanese Cucumber」(日本きゅうり、フィリピン産、93.75 ペソ/

    kg)などの果物・野菜が挙げられる。また、中国産の冷凍しめ鯖が「SHIMESABA

    (Vinegared Mackerel)」として日本語のパッケージで売られている(133g 入り 160 ペソ)。

    即席めん類では、前述の「辛」ラーメンで有名な韓国食品メーカーNONGSHIM CO. LTD

    が「JAPANESE STYLE UDON」(韓国産、276g 入り 120 ペソ)を販売しており、フィ

    リピン人消費者には日本産うどんと誤認されている例がある。

    菓子類では、フィリピン人に人気のあるエビの写真や「おいしい」という日本語の文字

    をパッケージに表示し、1980 年代から「日本のスナック」として親しまれている「Oishi

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    11

    –Prawn Crackers」(フィリピン産、24g 入り 4.65 ペソ)がある。また、自宅で揚げるタ

    イプの現地企業 Besuto Food Corporation が製造する「ベスト -Cocktail Snack」(100g

    入り 14.55 ペソ)とカタカナ表記されたものも人気を博しており、現在でも日本の商品と

    認識されている。エビフライの写真をパッケージに表示したスナック菓子「Tempura

    -Shrimp Flavored Snack」(フィリピン産、100g 入り 16.5 ペソ)や、その競合品として

    登場し同様にエビフライの写真を載せた「Okeji -Tempura Style Flavored Snack」(フィ

    リピン産、100g 入り 16.75 ペソ)といった、日本を連想させる商品名を付けられたものが

    スーパーやコンビニエンスストア等で販売されている。ビールのつまみとして長年人気の

    あるピーナッツ菓子「NAGARAYA(ナガラヤ)」(フィリピン産、40g 入り 6.5 ペソ)や、

    その競合商品である「Tokyo San」(フィリピン産、80g 入り 12.85 ペソ)も現地消費者から

    は「日本のスナック」と認識されている。前述の「Oishi」ブランドは近年「Bread Pan」

    (トーストパン菓子) (42g 入り 7.5 ペソ)というより健康的なイメージの商品も発売し、

    スナックコーナーでも売れ筋となっている。

    中国産の商品にも日本産として認識されているものがある。「米スナック」という日本語

    表記のある「ONE ONE RICE SNACK」(フィリピン企業による中国産、56g 入り 25.6

    ペソ)、さらに「ONE ONE RICE SNACK」を製造している中国の企業が自らのブランド

    として出している類似商品「WANT WANT SENBEI RICE CRACKERS」(中国産、56g

    入り 27.5 ペソ)がその例である。日本の商品は他国産に比べ健康によい、という一般的な

    イメージがあるため、日本語文字の表記や日本語らしいアクセントの商品名を使用するこ

    とで、消費者にアピールしている。

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    12

    4. 外食産業の動向

    4-1 外食産業に関する外資規制

    外食産業は小売業に分類され、ネガティブリスト A の外資参入禁止分野の「払込資本金

    が 250 万米ドル未満の小売業」に該当する。ただし、ホテル内に立地する場合は、外国資

    本によるレストランビジネスが許可される。ホテルの資本に一部でもフィリピン資本が入

    っている場合には、その相手が 1%以上の資本を持つことが要求される。したがって、払

    込資本金 250 万米ドル以上、もしくは 100%外資のホテル内であれば、100%外資による

    レストランビジネスが許可されるということになる。

    4-2 日系外食産業の進出状況

    前述の規制から、日系外食業界がフィリピンに進出する場合、現地企業とフランチャイ

    ズ契約を結ぶのが一般的である。現在、尐なくとも 10 の日系外食チェーン15が地場事業者

    とフランチャイズ契約を結び、フィリピンで店舗を展開している(表8)。最も早く進出し

    たのは「吉野家」で 1991 年に現地企業と合弁会社を設立し、1992 年に店舗を開設したも

    のの 1993 年に契約を解消し撤退した。その後 2001 年に再度フランチャイズ契約を結び、

    現在 5 店舗を展開している。2000 年には「味千ラーメン」(重光産業㈱)が進出したが、

    店舗は 2 店舗にとどまっている。近年では、2008 年に「ペッパーランチ」が出店し、現

    在 7 店舗まで拡大し、今後も新規出店計画を予定している。その後、金融危機による世界

    大不況の影響もあり新規出店はなかったが、2011 年には「和茶房 鎌倉 夢見屋」(イタリ

    アントマト)、「洋食屋マ・メゾン」、「とんかつ武信」と日本の洋食店の出店が続いた。ま

    た、2012 年には居酒屋チェーンの「和民」、および「らーめん山頭火」の出店が予定され

    ている。これまで現地消費者にいわゆる「日本食」として認識されている寿司や刺身、天

    ぷらを提供する日本食レストランは現地で設立されたものばかりで、日系企業で最初に進

    出したのが和民となる。

    15 レストラン以外にキオスク(ドーナツやシュークリームの持ち帰り販売店)を含む。

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    13

    表8.代表的なフィリピン進出日系外食チェーン店

    No. 店舗名/ブランド名 会社名フィリピンにおける事業者/フランチャイズ契約相手先

    店舗開設年 店舗数

    1YOSHINOYA'吉野家(

    ㈱吉野家

    Yoshinoya Century Pacific,Inc.'大手食品メーカーCentury Pacific Groupの子会社(

    1992年'1993年にFC契約解消(、

    2001年に再度FC契約締結。

    5店舗

    2Mister Donut'ミスタードーナツ(

    ㈱ダスキンRamcar Group of Companies'KFC等も経営(

    1995年約1,800店舗'コンビニ内等設置を

    含む(

    3AJISEN RAMEN'味千ラーメン(

    重光産業㈱ Ajisen Ramen Philippines, Inc. 2000年 2店舗

    4Beard Papa'ビアード・パパ(

    ㈱麦の穂 Beard Papa Philippines, Inc. 2004年 6店舗

    5Capricciosa'カプリチョーザ(

    ㈱WDI Tan Vy International 2006年 2店舗

    6Ukkokei Ramen Ron (烏骨鶏ラーメン龍(ロン)(

    (有)ワイアールコーポレーション

    Valentia Inc. 2007年 2店舗

    7Pepper Lunch'ペッパーランチ(

    ㈱ペッパーフードサービス'サントリー・フード&ビバレッジ・インターナショナルが受託運営(

    Benmark Group Holdings 2008年7店舗'2012年に1店舗オープン

    予定(

    8Yumemiya Japanese Café'和茶房 鎌倉 夢見屋(

    イタリアントマト'キーコーヒーの子会社(

    Subarashi Nihon Key FoodsCorp.

    2011年 1店舗

    9Ma Maison'洋食屋マ・メゾン(

    ㈱マメゾン Creative Resto Concept, Inc 2011年 1店舗

    10YABU: The House of Katsu'とんかつ武信(

    とんかつ武信John Concepcion氏が経営'Unilever RFM Ice CreamInc.のCEO(

    2011年 1店舗

    11WATAMI'和民(

    ワタミ・インターナショナル

    Creative Resto Concept, Incとフランチャイズを行うことを取り決めた開発契約を締結'2011年6月(

    2012年'予定(2012年末までに2店舗、最終的に15店舗前後の計画

    12 らーめん山頭火 ㈱アブ・アウト 2012年'予定(

    出所:各社ホームページ、SEC 提出資料よりジェトロ作成

    4-3 現地で成功している日本食レストラン16の状況

    (1)経営管理体制

    前述の外資規制から現地の日本食レストランはフィリピン資本ではあるものの、実質の

    経営管理は技術および経験のある日本人が行っている場合が多い。特に成功している日本

    食レストランでは、共通して日本人シェフが経営から日々の現場監督までを行っている。

    飲食業における最大の成功要因として「味」が挙げられるが、このような日本食レスト

    16 平均月間売上 300 万ペソ以上の現地日本食レストラン5店へのインタビューに基づく。

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    14

    ランでは、味をフィリピン人の一般的な嗜好(甘い、濃い)に合わせることなく、日本の

    味を保っている。また、日本食は一品一品手の込む料理が多いため、経験のある日本人シ

    ェフが調理場で目を行き届かせ、フィリピン人に細かい指導を行うことが非常に重要であ

    る。接客サービスについても、顧客への素早い対応や気配り等を日々教育し、従業員任せ

    にしないことが不可欠である17。このように日本人による現場密着型の監督が重要となる

    ため、チェーン展開することは稀である(同じ様に指導・監督でき、信頼できる人材の採

    用もしくは育成が必須となるが、現実には難しい)。

    (2)顧客層および客単価

    顧客層は、①日本人(在比日本人、日本人旅行客)、②フィリピン人上流層(会社オーナ

    ーや大企業の役員)、③フィリピン人中間層の上位クラスに分類される。食事の仕方には、

    日本人とフィリピン人で違いが見られる。日本人は、昼はセットメニュー等で済ませ、夜

    は酒類とおつまみ系が多く最後に主食をとることが多い。一方、フィリピン人は、昼も夜

    も食事のとり方に大きな差がなく、昼でもセットメニューでなく一品料理を数種類とり、

    皆で分け合うことが多い。また、フィリピン人は上流層を除き、食事の際にお酒を飲むこ

    とが尐ない。そのため、フィリピン人の場合、昼と夜の客単価はそれほど変わらない。客

    単価は、昼が 700~1,000 ペソ18、夜が 1,000~2,000 ペソである。新規顧客開拓について

    は、マスコミ等を通じた広告宣伝はほとんど行っておらず、口コミがメインである。

    (3)人気メニュー

    日本食レストランでフィリピン人顧客に人気のあるメニューは、刺身(サーモン、マグ

    ロ、ハマチ、カンパチ)、サバ、ギンダラ、和牛、エビの天ぷら、鶏の手羽先・唐揚などで

    ある。

    (4)食材調達

    人気メニューであるエビやマグロは主にフィリピン産である。一方、トロやハマチ、カ

    17 一方で、顧客からのサービスチャージの 85%は従業員間で均等に分けることが法律で

    定められており、顧客が増えることにより収入が増えるというインセンティブが働いてい

    る(給与と同額のサービスチャージが入ることもある)。 18 昼のランチセットは約 400 ペソから。

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    15

    ンパチ、サバといった、脂ののった魚介類はフィリピンでは調達が困難なため、日本から

    調達している場合が多い。この他、日本食レストランで日本から調達している食材として

    は、水菜、大葉、カイワレ大根、トマト、葱、ゆず、蓮根、かぼちゃといった野菜、そし

    て醤油や酒、みりん、味噌といった調味料が挙げられる。

    一方、ハタ(ラプラプ)やイカ、アジなど、フィリピン国内で採れる魚介類も豊富にあ

    り、成功している日本食レストランでは日本人シェフが毎朝自ら市場に足を運び、その日

    採れたての食材を仕入れている。それが顧客へのセールスポイントとなり、顧客にとって

    も定番メニュー以外の楽しみを買いに行くこととなるのである。また、野菜についてもフ

    ィリピン国内で採れる野菜を活かし、各レストランでは旪のメニューを出し新奇性を追求

    している。なお、政府の認可を受けた有機野菜栽培農家も 500 以上となり、増加傾向にあ

    る19。

    米は日本から調達しているレストランもあるが稀であり、多くの日本食レストランでは

    フィリピン産の日本米(「コシヒカリ」等)もしくは中国米(「東北」)を使用している。

    原価率は平均すると約 6 割(店により 5~7 割)である。日本から仕入れる食材は原価

    率が高く、フィリピン国内調達分で利益を稼いでいる。

    (6) 売上動向と今後の市場認識

    2011 年 3 月の東日本大震災以降、日本から仕入れる食材の放射能汚染への不安から特に

    魚介類等の売上が下がったものの、現在では売上が戻っているところがほとんどである。

    昨今、フィリピンでも健康への関心が中間層以上で高まっており、「日本食は体に良い」

    というイメージが定着しつつあり、日本食レストランにとっての追い風となっている。

    4-4 現地で浸透しているレストラン20の成功要因

    外食産業を主に食事スタイルおよび顧客単価で見た場合、①ファストフード、②カジュ

    アル・ダイニング、③ファイン・ダイニングに分けられ、代表的な店舗は表9のとおりで

    ある21。フィリピンにおいて市場シェアが高い、もしくは認知度が高いレストラン事業者

    へのインタビューを通じて以下の成功要因が浮き彫りになった。

    19 出所:Business Monitor International, “Philippines Food and Drink Report 2012 Q1” 20 日本食を除く。 21 現地大手飲食事業者数社の区分に基づく。

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    16

    (1) 商品開発

    フィリピン人低所得層~中間層をターゲットとしている場合、一般的なフィリピン人の

    嗜好に合わせて、甘め、濃い目の味にする場合が多い。一方、中間層上位~高所得層をタ

    ーゲットとしている場合、健康志向の消費者が増えているため、できるだけ調味料を使わ

    ずに素材の味を活かす、またはカロリーの低い食材調達(豆類、魚介類等)や調理法を採

    用している。フィリピン国内で調達不可能な食材・調味料については海外から輸入してい

    るが価格が上がってしまうため、フィリピン国内で調達できる質のよい素材を発掘するこ

    とが重要なポイントとなっている。

    成功しているレストランでは常時、新奇性のあるメニュー開発に取り組んでいる。例え

    ば、「Y 世代」と呼ばれる消費者層(25~35 歳独身で安定した収入があり、海外旅行に行

    き、最新の携帯電話機器等に関心を持つ層)は特に新しいもの好きのため、飲食事業者の

    R&Dチームは、常に海外や飲食業以外の動向も見ながら新しいメニューを投入している。

    最近では、格安航空会社の恩恵を受け近隣諸外国に旅行する層が増え、彼らは韓国やタイ

    の食文化を経験し、フィリピンに戻ってからもその味を求める傾向が見られる。そのよう

    な消費者に、唐辛子などを使ったスパイシーなメニューが人気である。

    (2) 立地

    ファストフードおよびカジュアル・ダイニングは直営もしくはフランチャイズ・チェー

    ン型であり、大型モールや商業施設内に立地している場合が多い。また、カジュアル・ダ

    イニングのチェーン店は、近年、大手私立病院や国際空港、会員制クラブ施設といった中

    間層~高所得層をターゲットとした場所に進出している。一方、高級レストランにはチェ

    ーン型でなく独立系が多く、メニューや価格のみならず、レストランの雰囲気が重視され

    ることから、高級モール内や高級住宅街の近隣といった喧騒から離れた場所に立地してい

    る。

    (3) 広告・宣伝

    大衆向けの宣伝効果が最も高いのはテレビコマーシャルで、有名俳優を起用している。

    一方、中間層~高所得層向けには、新聞の日曜版記事や雑誌等に広告を掲載して、話題性

    を持たせることである。また規模の大小に関わらず、多くのレストラン事業者がフェイス

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    17

    ブックやブログ等のソーシャルネットワークを活用している。

    (4) マネジメント

    現地で成功している日本食レストランの成功要因と共通し、味の質を落とさないために

    現場で従業員に対し厳格な指導や管理を行うことが重要である。「監視がなくなると必ず質

    が下がる」というコメントが異口同音に聞かれた。

    表9.フィリピンにおける代表的な外食店舗

    区分 客単価 代表的な店舗/ブランド

    (飲食チェーン市場におけるシェア)

    経営形態

    ①ファスト

    フード

    80~200 ペソ

    未満

    ・Jollibee(バーガー)(約 3 割。シェア 1 位22)

    ・McDonald’s(バーガー)(約 1 割、シェア 2 位)

    ・Chowking(中華系)(シェア 3 位23)

    ・Greenwich(ピザ)(シェア 4 位)

    直営チェーン、

    フランチャイ

    ズ・チェーン

    ② カ ジ ュ ア

    ル・ダイニン

    200~700 ペソ

    未満

    ・Max’s(鶏料理)(シェア 11 位)

    ・Yellow Cab(ピザ)(シェア 16 位)

    ・Pancake House(ホットケーキ、フィリピン料理)

    ・Kaya Korean Restaurant(韓国料理)

    ・Italianni’s(イタリア料理)

    直営チェーン、

    フランチャイ

    ズ・チェーン

    ③ファイン・

    ダイニング

    700 ペソ以上 ・CHATEAU 1771(西欧料理)

    ・El Cirkulo(スペイン料理)

    ・Shang Palace(中華料理)

    独立系、

    直営チェーン

    出所:地場大手飲食事業者へのインタビューよりジェトロ作成

    5. 外国産品の先行事例

    5-1 カリフォルニア産ワイン

    ① 輸入額および輸入量

    フィリピンにおけるワイン市場は拡大傾向にあり、2011 年のワイン輸入額は約 1,970

    22 2009 年飲食チェーンにおける市場シェア。出所:Euromonitor International 2010 23 Chowking および Greenwich は Jollibee 系列。

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    18

    万ドル、輸入量は約 1,160 万リットルであった。2000 年まではフランスが最大の輸入相手

    国であったが、2000 年以降はカリフォルニアワインをはじめとする米国が首位を占めてい

    る。2011 年におけるワイン輸入量は米国が全体の 32%を占め、次いでスペイン(18%)、

    オーストラリア(8%)、シンガポール(7%)、チリ(6%)である(表11)。なお、清酒

    24と比較すると、2011 年の清酒輸入額は約 6 万 6,000 ドル、輸入量は 7 万 1,000 リットル

    とワインのそれぞれ 0.3%、0.6%に過ぎない。ただし、清酒の輸入相手国としては日本が

    1 位であり輸入額で 53%のシェアを占める25。

    表10.ワイン輸入額および量の推移26

    2009年 2010年 '増加率( 2011年 '増加率(

    輸入額 (FOB)'千US$) 15,719 20,005 27% 19,726 -1%

    輸入量'千リットル( 9,777 11,677 19% 11,606 -1%

    出所:NSO データよりジェトロ作成

    24 H.S.コード 2206.00 中の 200 25 なお、2 位は韓国の 30%。 26 H.S.コード 2204 および 2205

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    19

    表11.国別ワイン輸入額および量27

    輸入額(FOB)'千US$)

    'シェア(輸入量

    '千リットル('シェア(

    輸入額(FOB)'千US$)

    'シェア(輸入量

    '千リットル('シェア(

    1 米国 6,249 32% 3,717 32% 6,817 34% 3,762 32%

    2 オーストラリア 3,254 16% 880 8% 3,699 18% 1,252 11%

    3 スペイン 2,690 14% 2,041 18% 2,337 12% 2,051 18%

    4 シンガポール 1,852 9% 856 7% 1,122 6% 263 2%

    5 フランス 1,278 6% 612 5% 1,739 9% 973 8%

    6 チリ 994 5% 685 6% 1,113 6% 728 6%

    7 イタリア 706 4% 464 4% 813 4% 500 4%

    8 英国 489 2% 135 1% 361 2% 110 1%

    9 南アフリカ 348 2% 162 1% 588 3% 272 2%

    10 ニュージーランド 341 2% 79 1% 343 2% 88 1%

    その他 1,523 8% 1,975 17% 1,073 5% 1,679 14%

    合計 19,726 100% 11,606 100% 20,005 100% 11,677 100%

    2011年 2010年

    国名順位

    出所:NSO データよりジェトロ作成

    ② 価格帯および売れ筋

    フィリピンで販売されているワインは小売価格によって、(a)300 ペソ未満の低価格帯、

    (b)300~1,000 ペソ未満の中価格帯、(c)1,000 ペソ以上の高価格帯に分けられる。

    ワインは小売販売が 5 割強を占め、残りはホテルやレストラン等へ販売されている。小

    売販売の販売先としては、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ワイン専門店、

    そしてオンラインショッピングがある。

    多くのフィリピン人消費者には、甘みのあるフルーティーなものがより好まれている。

    また、シャンパンの代わりに、手頃な価格で飲めるものとしてスパークリングワインの人

    気も広まってきている。ワイン市場はアルコール飲料市場全体においてまだ 1%未満のシ

    ェアしかないものの、健康志向の高まりに訴求するプロモーションによって、今後もワイ

    ン市場は拡大する余地があると見られている。

    ③ 米国政府の促進策

    米国農務省海外農業サービス局による農林水産物輸出促進プログラムの一つとして、生

    産者や輸出業者などに対して海外でのマーケティングやプロモーション活動(トレードシ

    ョーやマーケット調査、技術支援、セミナー等)の資金援助を行う「マーケット・アクセ

    27 H.S.コード 2204 および 2205

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    20

    ス・プログラム」28があり、「カリフォルニアワイン」の輸出も同プログラムに含まれてい

    る。フィリピン国内では米国大使が公邸で米国産ワインの紹介を兼ねたパーティーを開催

    するなど、輸出国先でのマーケティング支援も積極的に行われている。

    ④ フィリピン国内におけるマーケティング施策

    フィリピン国内市場で広く浸透させるためには、まず、ホテルやレストランを対象としたプ

    ロモーション活動を実施する場合が多い。消費者の啓蒙として「食事と合うワイン」をホテ

    ルやレストランで提案し、そこで消費者に受け入れられたものが小売店やワインバー、オ

    ンラインワインショップ等で販売されていくことになる。逆に、ホテルやレストランへの

    販売実績がなく小売店に売り込むことは難しい。

    マニラ首都圏における多くのレストランは、「今月のワイン(”Wine of the Month”)」と

    して新しく入れたワインに対する消費者の反応を確かめる仕組みを持っている。「今月のワ

    イン」として取り上げてもらうためには、卸売業者は 1,000~1,500 ドルの費用を負担す

    ることになるが、有名レストラン等において認知されたワインが、その後マスメディアで

    取り上げられることもあり、宣伝効果は高い。

    また、顧客が注文するかどうかは、店員がいかに顧客に勧めるかにもよる。そのため、

    ワイン 1 杯に対し 20~30 ペソのインセンティブを店員に支払う商慣習もある29。昨今で

    は、店員間でのインセンティブ争いを避けるために店舗単位で販売目標数量・金額に達し

    たら報奨金を出している場合もある。また、フィリピンにも International Wine & Food

    Society (IWFS)の支部があり(1982 年設立)、このようなネットワークを通じたプロモー

    ション活動も行われている。

    5-2 オーストラリア産乳製品

    ① 輸入額および輸入量

    フィリピンは乳製品の約 99%を輸入に依存しており、2011 年の輸入額は約 8 億 3,500

    万ドルに達する。乳製品の中でも、粉状もしくは固形状のミルク及びクリームが輸入額の

    57.9%を占める(表12)。国別ではニュージーランドが全体輸入額の 4 割以上を占め、次

    28 http://www.fas.usda.gov/mos/programs/map.asp 29 “USDA Foreign Agricultural Service GAIN Report, Philippines” (July 2009) http://www.calwinexport.com/files/Wine%20Product%20Brief_Manila_Philippines_7-14-2009.doc

    .pdf

    http://www.calwinexport.com/files/Wine%20Product%20Brief_Manila_Philippines_7-14-2009.doc.pdfhttp://www.calwinexport.com/files/Wine%20Product%20Brief_Manila_Philippines_7-14-2009.doc.pdf

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    いで米国(24%)、そして 3 位がオーストラリア(11%)である(表13)。

    表12.乳製品の輸入額および量推移

    品目 2009年 2010年 '増加率( 2011年 '増加率(

    FOB価格'千米ドル(

    265,176 417,829 58% 483,241 16%

    輸入量'トン( 141,521 155,745 10% 146,012 -6%

    FOB価格'千米ドル(

    41,611 91,344 120% 104,624 15%

    輸入量'トン( 18,270 21,049 15% 20,260 -4%

    FOB価格'千米ドル(

    36,436 53,231 46% 74,807 41%

    輸入量'トン( 32,062 36,916 15% 31,652 -14%

    FOB価格'千米ドル(

    40,965 48,166 18% 65,452 36%

    輸入量'トン( 15,092 14,338 -5% 16,500 15%

    FOB価格'千米ドル(

    32,997 48,197 46% 56,572 17%

    輸入量'トン( 40,113 42,227 5% 40,548 -4%

    FOB価格'千米ドル(

    30,823 47,498 54% 50,439 6%

    輸入量'トン( 42,419 52,630 24% 53,911 2%

    FOB価格'千米ドル(

    448,008 706,265 58% 835,135 18%

    輸入量'トン( 289,477 322,905 12% 308,883 -4%

    ホエイ'乳清('HSコード:0405(

    ミルク及びクリーム'液体(

    'HSコード:0406(

    乳製品全体

    ミルク及びクリーム'粉状、固形状(

    'HSコード:0401(

    バター類'HSコード:0402(

    ヨーグルト類'HSコード:0403(

    チーズ類'HSコード:0404(

    出所:NSO データよりジェトロ作成

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    表13.2011 年国別乳製品の輸入額および量30

    順位 国名 輸入額'FOB)

    '千米ドル('シェア(

    輸入量'トン(

    'シェア(

    1 ニュージーランド 380,797 46% 120,246 39%2 米国 201,995 24% 67,363 22%3 オーストラリア 89,629 11% 28,737 9%

    4 フランス 28,768 3% 10,750 3%5 アイルランド 15,646 2% 4,468 1%6 タイ 14,356 2% 12,540 4%7 アルゼンチン 13,173 2% 3,825 1%8 オランダ 11,338 1% 6,379 2%9 デンマーク 9,560 1% 2,489 1%

    10 ブラジル 7,972 1% 3,389 1%その他 61,902 7% 48,698 16%

    全体 835,135 100% 308,883 100%

    出所:NSO データよりジェトロ作成

    ② 主な商品および価格帯

    オーストラリア産の乳製品は米国や欧米産に比べると、フィリピンへの地理的な近さに

    よる物流コストの低さもあり 2~3 割低い価格であるのが強みとなっている。

    オーストラリア産の粉末ミルクで浸透しているブランドとしては「Milk Magic」があり、

    120g 入りが 36.75 ペソで販売されている。これはニュージーランド産の「Anchor」(150g

    入り 70.20 ペソ)や Nestle ブランド「NIDO」(160g 入り 69.20 ペソ)より 1 グラム当た

    りの価格は 3 割以上安く、地場食品大手ブランド「ALASKA」(150g 入り 44.70 ペソ)に

    匹敵する価格競争力がある。また「Milk Magic」はオーストラリアから輸入した粉末ミル

    クをフィリピン国内で液状に加工し、250ml 入りパック 18.75 ペソで販売しており、子ど

    もに人気がある商品の一つとなっている。

    オーストラリア産の液状の牛乳では、「HARVEY FRESH」ブランドが有名であり、1ℓ

    入り 64.75 ペソで販売されている。他にも、「REAL–FRESH BRAND」があり、1 ℓ 61.20

    ペソとさらに安く販売されている。粉末ミルクと同様、ニュージーランド産(例えば、

    「Nestle Fresh」、69.30 ペソ/ℓ)より安い。

    チーズもオーストラリア産は米国やフランス、ニュージーランド産に比べ低価格で販売

    されており、輸入商品に興味はあるが価格に敏感な中間層のニーズに応えていると言える。

    例えば、カマンベールチーズ「Australian GOLD」は 125g 入り 172.80 ペソと、フランス 30 H.S.コード 0401~0406

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    産「PRESIDENT」(125g 入り 222.65 ペソ)より 2 割以上安い。クリームチーズでは米国

    KRAFT の「PHILADELPHIA」(226g 入り 145.70 ペソ)が有名だが、「Australian CREAM

    CHEESE」(200g 入り 92.15 ペソ)は 3 割ほど低い価格である。サンドイッチや調理用と

    しても使われるチェダーチーズでは、ニュージーランド Fonterra 社の「Anchor」(100g

    入り 78.3 ペソ)が浸透しているが、オーストラリア BEGA CHEESE 社の「MELBOURNE

    CHEDDAR」(250g 入り 140.40 ペソ)はグラム当たり約 3 割安価である。ピザやサラダ

    に使われるパルメザンチーズでは、「Mil Lel」(125g 入り 181.25 ペソ)の他に、「Perfect

    Italiano」(125g 入り 211 ペソ)というイタリア風の商品もある。

    ③ オーストラリア政府の促進策

    オーストラリア政府の輸出促進策として、オーストラリア貿易促進庁(Austrade)によ

    って運営されている輸出市場開発補助金(Export Market Development Grants: EMDG)が

    あり、オーストラリアの中小企業が海外市場で商品販売促進を行う際の資金援助を行って

    いる31。過去 2 年間の輸出マーケティング費用が 1 万 5,000 ドルを超えている事業者が対

    象となり、対象となる費用から 1 万 5,000 ドルを差し引いた額のうち、最高 50%までが現

    金で償還される。

    また金融支援としては、輸出金融保険会社(Export Finance and Insurance Corporation :

    EFIC)が、中小企業を含むオーストラリア企業に対して、輸出信用保険の引き受けや資金

    調達の援助を行うことで、輸出事業の拡大や海外投資の促進を図っている32。

    5-3 ニュージーランド産牛肉

    ① 輸入額および量

    フィリピンでは牛肉の国内生産量が尐ないため、国内で消費される牛肉の大部分を輸入

    に頼っている。2011 年の牛肉の輸入量は 8 万 3,910 トンであり、前年比 11%減であった

    (表14)。最大の輸入相手国はインドで、2011 年の輸入額全体の 43%を占めている。輸

    入された牛肉は主にコーンビーフ(corned beef)等の缶詰製品やソーセージ、バーガー等

    の原料として使用されている。2 位のオーストラリアが 31%のシェアを占め、3 位はニュ

    ージーランドである(表15)。ニュージーランドのシェアは 2009 年の 4%から 2010 年

    31 http://www.austrade.gov.au/What-Is-EMDG/default.aspx 32 http://www.efic.gov.au/Pages/homepage.aspx

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    には 6%へ、そして 2011 年には 13%へと増加傾向にある。この背景として、オーストラ

    リア・ニュージーランド・アセアン自由貿易協定により、牛肉33は 2005 年において 10%

    だった関税率が 2011 年には 3%まで下がり、2012 年には 0%となることが挙げられる。

    また、ニュージーランド産の牛肉は欧米等で流行した狂牛病や口蹄疫ウイルスによる感染

    症にかかっていないという安心感からもシェアが高まってきたと言える。

    表14.牛肉の輸入額および量推移34

    2009年 2010年 '増加率( 2011年 '増加率(

    FOB価格'千米ドル(

    134,799 180,184 34% 226,370 26%

    輸入量'トン( 84,042 93,822 12% 83,910 -11%

    出所:NSO データよりジェトロ作成

    表15.2011 年の牛肉の国別輸入額および輸入量35

    順位 国名 輸入額'FOB)

    '千米ドル('シェア(

    輸入量'トン(

    'シェア(

    1 インド 97,644 43% 39,166 47%2 オーストラリア 69,250 31% 20,711 25%3 ニュージーランド 29,255 13% 9,306 11%

    4 ブラジル 16,832 7% 7,425 9%5 米国 9,975 4% 5,199 6%6 カナダ 2,602 1% 1,614 2%7 台湾 199 0% 92 0%8 オランダ 197 0% 141 0%9 アルゼンチン 94 0% 75 0%

    10 フランス 81 0% 6 0%その他 240 0% 175 0%

    合計 226,370 100% 83,910 100% 出所:NSO データよりジェトロ作成

    33 H.S.コード 0201 および 0202 34 H.S.コード 0201 および 0202 35 H.S.コード 0201 および 0202

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    ② 価格帯

    ニュージーランド産の牛肉は高級スーパーや会員制スーパー等で販売されており、価格

    はフィリピン産に比べると約2~2.5倍、オーストラリア産に比べると1割弱高い。例えば、

    リブ・アイは 1 キロ当たりフィリピン産が 420 ペソ、オーストラリア産が 780 ペソである

    のに対し、ニュージーランド産は 850 ペソ、また、サーロインはフィリピン産が 338 ペソ、

    オーストラリア産が 775 ペソに対し、ニュージーランド産は 820 ペソである。

    ③ ニュージーランド政府の輸出促進策

    政府は、牛肉の安全性を高めるために厳しい品質管理体制を整え、監視し、結果的に輸

    出を促進することにつながった。ニュージーランドでは 10 年以上前から農家が各畜産物

    の認証のための電子登録を行っており、データベースが整備されている36。そのため家畜

    の病気が流行した際や安全性の問題が生じた場合には追跡が可能となっており、各農家の

    安全に対する意識もより高まったと言える。また、質の高い肉を提供するため、畜産物の

    飼育環境標準も高く、その保護が法律で定められている37。

    36

    http://cache.business.newzealand.com/vAmseKA/media/103386/meat_industry_fact_sh

    eet.pdf 37 “Animal Welfare Act 1999” (http://bit.ly/GzFcp6)

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    平成 23 年度

    フィリピンにおける日本食品の市場動向調査

    発行 2012 年 3 月

    発行所 日本貿易振興機構(ジェトロ)

    農林水産・食品部 農林水産・食品調査課

    東京都港区赤坂 1-12-32

    電話 03(3582)5186

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