(3)マイクロ小水力発電による避難時・停電時の...

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(3)マイクロ小水力発電による1)モデルの概要 ①常時 地域内の河川、農業用水路、上行い、近傍の道路の街路灯等に②災害時 災害発生時の避難や停電から回※基本的には外部電源不要から電源を確保する。 2)参考事例 合資会社嵐山保勝会水力発電所・景観重視で照明が設置されてい照明申請を行い、自然エネルギ・「低圧連系・逆潮流あり」を逆変1 - 100 難時・停電時の安全確保モデル 水道等の余剰落差を活用した小水力発電を 気を供給する。 するまでの期間の夜間の誘導灯として利用 システムとするが、必要があれば蓄電池等 京都府京都市) かったが、嵐山保勝会は事故防止や防犯面からの利用(小水力発電)により設置許可が下り実現 なしで関西電力が承認 発電所諸元 ・流量:0.55m 3 /s ・有効落差:1.74m ・定格出力:5.5kW ・発電形式:サイフォン式 図1.3-30 元要請のもと マイクロ水力発電による 灯(避難時の誘導灯)

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Page 1: (3)マイクロ小水力発電による避難時・停電時の …(3)マイクロ小水力発電による避 1)モデルの概要 ①常時 地域内の河川、農業用水路、上下

(3)マイクロ小水力発電による避

1)モデルの概要

①常時

地域内の河川、農業用水路、上下

行い、近傍の道路の街路灯等に電

②災害時

災害発生時の避難や停電から回復

※基本的には外部電源不要の

から電源を確保する。

2)参考事例

■合資会社嵐山保勝会水力発電所(

・景観重視で照明が設置されていな

照明申請を行い、自然エネルギー

・「低圧連系・逆潮流あり」を逆変換

1 - 100

避難時・停電時の安全確保モデル

下水道等の余剰落差を活用した小水力発電を

電気を供給する。

復するまでの期間の夜間の誘導灯として利用

のシステムとするが、必要があれば蓄電池等

(京都府京都市)

なかったが、嵐山保勝会は事故防止や防犯面からの地

ー利用(小水力発電)により設置許可が下り実現

換なしで関西電力が承認

発電所諸元

・流量:0.55m3/s

・有効落差:1.74m

・定格出力:5.5kW

・発電形式:サイフォン式

図1.3-30

街路

地元要請のもと

マイクロ水力発電による

路灯(避難時の誘導灯)

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3)災害時に利用するための課題と解決策

表1.3-12 マイクロ水力発電による避難時の誘導灯利用の課題と解決策

課題 解決策(内的条件) 解決策(外的条件)

施設の被害を 小

限に抑制し、電気供

給を止めないこと

■沿岸部、軟弱地盤地帯、土石流危険

地帯等を避けること

■災害により水車発電機が破損した

場合の対策(例えば、蓄電池を併用

して災害発生直後でも誘導灯に電

気が供給できるようにする。)

■発電地点に至るまでの水路、河川等

の耐震対策

(石積み水路や液状化しやすい区

間の水路等)

自立運転のための

課題

■発電機

・同期発電機等を採用する

・誘導発電機を採用している発電所で

は予備電源を確保

■負荷変動対策

・ダミーロードや蓄電池で調整する

■停電からの復旧

電気の利用先 ■需要施設が遠方にあると、配電線の

整備費用が嵩むことや災害時に断

線する確率が高くなることから極

力近傍に設置

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(4)マイクロ水力発電による緊急車両の燃料供給モデル

1)モデルの概要

①常時

地域内の河川、農業用水路、上下水道等の余剰落差を活用した小水力発電を行い、電気自動車のEV

ステーションに電気を供給する。EVステーションはは地域住民や役場の電気自動車の電源として利用

する。

②災害時

緊急用車両の充電を優先して利用

※街路灯にも電気を供給し避難時の安全確保も図る。

※基本的には外部電源不要のシステムとするが、必要があれば蓄電池等から電源を確保する。

図1.3-31 マイクロ水力発電による電気自動車充電

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2)参考事例

■EVステーション(群馬県前橋市)

・群馬県前橋市では豊富な緑や水資源を地球温暖化対策に結びつける取り組みの一環として、小河

川で発生した電気を普通充電器に供給するシステムを設置。(急速充電器は商用電源から供給)

・現在は、市民等に無料で開放している。

■照井土地改良区(岩手県一関市)

・低流量、低落差で発電可能なチロリアンクロスフロー水車を農業用水の急流工に導入(現在は系

統連系の協議中)

・発生電力は系統連系により売電するほか、バッテリーとコンセントを設置しており、地域の農家

の草刈り機等の充電に利用する予定である。

・今後、災害時の非常用電源としての活用も期待される。

発電所全景 水車(無通水時) 制御盤・分電盤等 電源ボックスと充電器

■東日本大震災における電気自動車の利用

・東日本大震災ではガソリンの供給不足が発生したため、停電からの復旧が早かった地域では電気

自動車が利用された。多くの被災地以外の自治体や自動車販売店が被災地に電気自動車を譲渡ま

たは貸し出ししている。

水力発電

施設

・水力発電機0.5kW( 大出力)

・計量表示板(発電量・累積発電量を表示)

[設置場所] 桃井小学校正門脇 矢田川

充電器 ・急速充電器(中容量) 20kW 1基

・普通・倍速充電スタンド(コンセント) 2基(4台分)

・充電器案内看板

[設置場所] 旧教育資料館駐車場(図書館南駐車場)

・水車形式:チロリアンクロスフロー水車 ・発電使用水量:0.414m3/s ・有効落差:2.16m

・発電出力:6.4kW ・設置年度:平成21年度 ・利用目的:売電、地域内利用

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3)災害時に利用するための課題と解決策

表1.3-13 マイクロ水力発電による電気自動車充電の課題と解決策

課題 解決策(内的条件) 解決策(外的条件)

施設の被害を 小

限に抑制し、電気供

給を止めないこと

■沿岸部、軟弱地盤地帯、土石流危険

地帯等を避けること

■災害により水車発電機が破損した

場合の対策(例えば、蓄電池を併用

して災害発生直後でも充電できる

ようにする。)

■発電地点に至るまでの水路、河川等

の耐震対策

(石積み水路や液状化しやすい区

間の水路等)

自立運転のための

課題

■発電機

・同期発電機等を採用する

・誘導発電機を採用している発電所で

は予備電源を確保

■負荷変動対策

・ダミーロードや蓄電池で調整する

■停電からの復旧

急速充電 ■現段階では電気自動車の普及率が

低いことから、大きな電気容量を必

要とする急速充電器を設置しても

利用率が低く、経済性が確保できな

い可能性がある。小水力発電は普通

充電機に利用し、急速充電機は、商

用電源等から確保する方が現実的

であると考えられる

※停電の復旧が遅れると充電可能台数

が限られる可能性がある。

■東日本大震災の復興において、高台

移転等で新規に街を造成する地域

において、住民の多くが電気自動車

を購入する場合等では、電気自動車

の普及台数や利用頻度に応じて急

速充電器を設置することも考えら

れる。

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(5)マイクロ水力発電による避難

1)モデルの概要

①常時

地域内の河川、農業用水路、上下

等へ電気を供給する。

②災害時

常時と同様に、小水力発電を行い

図1.3-32

2)参考事例

■田園調布学園 中等部

・新築校舎の建設時に、空調設備用配

・本システムは、直流発電機を設置

流量制御バルブが作動し発電を停

・外部電力がなくても動作するシス

出典:写真・諸元:田園調布学

http://www.onsa-aee.jp/ch配線模式図:東芝プラントシス

1 - 105

難所等への電気、熱供給モデル

下水道等の余剰落差を活用した小水力発電を行い、近

い、避難所となった公共施設等へ電気を供給する。

マイクロ水力発電による公共施設への電気供給

配管に発生する残存圧力を利用して発電し、照明等の

置し、蓄電池に充電するものである。蓄電池の容量

停止させている。

ステムであり、停電時にも活用できる。

園中等部ホームページ

hofu_eco1/eco-top1.html テム株式会社カタログ

発電所諸元

・流量:0.03m3/s

・有効落差:25m

・定格出力4.8kW

・水車:固定羽根横軸プロペラ

・発電機:直流発電機

近傍の公共施設

の電流に利用。

量があるうちは、

ラ水車

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■メーカー聞き取り(シーベルインターナショナル株式会社)

・以下のシステムで発電するため、停電時にも対応できる。

①常時は売電または需要施設で利用

②災害時(停電時)には、内蔵しているパワコンが作動し、自動で単独運転に切り替わる

③災害用コンセントから蓄電池や電化製品等に電気供給する

④負荷がない場合は、ダミーロードが作動する。

※発電機は同期発電機を標準としている。

3)災害時に利用するための課題と解決策

表1.3-14 マイクロ水力発電による公共施設への電気供給の課題と解決策

課題 解決策(内的条件) 解決策(外的条件)

施設の被害を 小限に

抑制すること

(災害発生直後にも電

気供給が必要な場合は、

供給を止めないこと)

■沿岸部、軟弱地盤地帯、土石流危

険地帯等を避けること

■災害により水車発電機が破損した

場合の対策(例えば、蓄電池を併

用して災害発生直後でも充電でき

るようにする。)

■発電地点に至るまでの水路、河

川等の耐震対策

(石積み水路や液状化しやす

い区間の水路等)

早期に復旧できること ■体制整備

・災害時の連絡・行動体制整備

・点検・復旧マニュアルの整備

・代替部品等の保管

・災害訓練の実施等

■メーカーや電気関係事業者と

の連携

自立運転のための課題 ■発電機

・同期発電機等を採用する

・誘導発電機を採用している発電所

では予備電源を確保

■負荷変動対策

・ダミーロードや蓄電池で調整する

■停電からの復旧

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(6)マイクロ水力発電による停電時・電力不足時の電気供給

1)モデルの概要

①常時

地域内の河川、農業用水路、上下水道等の余剰落差を活用した小水力発電を行い、電気自動車の

EVステーションに電気を供給する。EVステーションは地域住民や役場の電気自動車の電源として利

用する。

多くの地域住民が利用できるように、EVステーションは複数個所に設置する。小水力発電で電気

供給できない場合は、他の新エネルギーや電力会社の電気も活用する。

図1.3-33 マイクロ水力発電によるEVステーション(常時)

②災害時

・各家庭の電気自動車に充電し、電気自動車を電源として利用

図1.3-34 マイクロ水力発電によるEVステーションと電化製品の利用(災害時)

EV EV EV

市街地

集落

集落

照明 暖房(ストーブ電源)

携帯電話充電

(安否確認)

テレビ・ラジオ

(情報収集)

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2)参考事例

■東日本大震災におけるプラグインハイブリッド自動車の利用

・東日本大震災が発生した平成23年3月現在、国産車ではトヨタのエスティマハイブリッドの

みが1500Wの充電機能を持っていた。この電源を炊飯等に利用した事例がある。本来はアウ

トドア用として整備した機能であるが、震災時にも有効利用できることが実証された。

・現在、三菱自動車では自社の電気自動車を電源車として利用するための改造を行っている。

3)災害時に利用するための課題と解決策

表1.3-15 マイクロ水力発電によるEVステーションと電化製品の利用の課題と解決策

課題 解決策(内的条件) 解決策(外的条件)

施設の被害を 小

限に抑制

■沿岸部、軟弱地盤地帯、土石流危

険地帯等を避けること

■発電地点に至るまでの水路、河

川等の耐震対策

(石積み水路や液状化しやすい

区間の水路等)

早期に復旧できる

こと

■体制整備

・災害時の連絡・行動体制整備

・点検・復旧マニュアルの整備

・代替部品等の保管

・災害訓練の実施等

■メーカーや電気関係事業者との

連携

自立運転のための

課題

■発電機:同期発電機等を採用する

■負荷変動対策:ダミーロードや蓄

電池で調整する