取材協力:公益社団法人全国消費生活相談員協会 · 消費者問題出前講座...
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国民生活 2019.5 26
Q1 主催者との打ち合わせで、講座の内容がある程度決まると思いますが、講座の内容を決めるうえで意識していることはありますか?A1 主催者の意向に沿いつつ、日々消費生活相談を受けている消費生活相談員の視点から、講座を通じて受講者に何を伝えたいのかを明確にするようにしています。 消費生活相談員として日々、相談を受けたり事業者と交渉していれば、「何か」伝えたいことがあるかと思います。その「何か」を明確にするようにしています。 消費生活センターの名前を聞いたことはあっても、具体的に何をしているのか知らない人が多いため、「センターってどんなところ?」を必ず盛り込むようにします。どこまで説明するかは、受講者の属性によって違ってきます。高齢者であれば「役所がやっている窓口」「相談は無料」「相談の秘密は守られる」「(具体的な事例を挙げながら、)助言・あっせんの内容」を説明します。これらは必ず知ってほしいことなので、少し時間をかけます。受講者が民生委員など高齢者を見守る人が対象の場合、センターが法律や条例に基づいて設置されていることも付け加えています。 ほかにも必ず「契約とは?」「クーリング・オフについて」、受講者に合った相談事例や簡単なアドバイスを入れます。また、年齢等に関係なく、ネットショッピングなど通信販売にはクーリング・オフ制度はないことを加えます。
Q2 出前講座ではレジュメを作っていますか?A2 基本的にレジュメを作るようにしていますが、受講者の年齢や職業などによって内容や使う資料を変えています。■レジュメの内容は受講者によって変える 受講者に伝えたいことが明確になったら、それをレジュメにまとめていきます。 レジュメはどこまで内容を盛り込むかよく考えます。地域の趣味の集まりや高齢者クラブであれば、比較的柔らかい内容のほうがよい場合もありますし、地域で開かれている連続講座の受講者や民生委員など、消費者問題に関心の高い人たちが参加する講座の場合は、関連する法律や見守りの重要性などの内容も入れます。 高齢者向けには文字を大きく読みやすくしています。また、活字の量が多いと読んでもらえません。相談件数の推移などグラフ化したほうが分かりやすい情報もあります。 国民生活センターが毎年継続して公表している「PIO-NETにみる消費生活相談の概要」*の契約当事者の年代別割合の帯グラフはとても便利で、どの対象別講座にも使えます。60歳代以上の相談が増えていることが分かるだけではなく、20歳未満から20歳代になると相談が約4倍(2018年度資料より)に増えていることが分かりお子さんやお孫さん世代の相談も知っていただけます(図)。「消費者白書」のグラフ等も活用できます。
準備編(2)資料の作り方と講座の進め方第2回
消費者問題 の作り方出前講座
取材協力:公益社団法人全国消費生活相談員協会
* http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180808_1.html(2018 年度発行)
消費者問題 の作り方出前講座
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■相談事例とアドバイスは詰め込み過ぎない 相談事例があったほうが具体的な話をしやすいので、できるだけ入れるようにしています。相談事例は「点検商法」「お試し価格500円」のように、手口だけをタイトルにして、あとは口頭で説明することもあります。被害防止のアドバイス、対応策を入れる場合も同様で、詰め込み過ぎないように気をつけています。 なお、アドバイスは受講者本人だけに注意してもらうのではなく「家族や地域の人にも広めてください」と説明します。聞いている人は「自分は大丈夫」と思っているかもしれません。そこで周りの人に、とお願いすることで人のためにも聞いて社会貢献にもつなげようという高い意識を持ってもらえます。
Q3 PowerPointなどのスライド形式の資料を使う場合、気をつけていることはありますか?A3 1枚のスライドに内容を詰め込み過ぎないようにしています。
■スライドは、すっきりはっきりした内容に スライドを使う場合、すっきりはっきりした内容になるよう、意識しています。1枚のスライドに詰め込み過ぎると、受講者には読みにくく、頭に入っていきません。 字の大きさはもちろん、字体にも注意しています。自分のパソコンで見たときとプロジェクターで映したときでは見え方がまったく違って修正が必要なことがあるので、スライドを使う場合は時間に余裕を持って準備しています。 スライドではアニメーションを使うことがありますが、使い過ぎないようにしています。受講者がアニメーションにばかり気を取られてしまい、肝心の内容を聞き流してしまうことがあるからです。 混乱せずに聞いてもらうためレジュメとスライドの内容を別に作るのか、それともスライドをレジュメにするのかも気をつけています。また、スライドを使うと会場が暗くなり、手元のレジュメが見づらくなるため、その点も気をつけています。
左がクイズなどの比較的柔らかい内容、右がグラフを使った内容。
図 出前講座で使用したレジュメの例(一部抜粋)
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■スライド資料の印刷も主催者と相談を 意外と忘れてしまうのが、資料の印刷の負担です。スライドは便利ですが、それを印刷するとどうしても枚数が増えてしまいます。 主催者が地域の小規模なコミュニティ団体の場合、印刷の枚数が増えると負担をかけてしまいます。講師がレジュメなどを印刷して、会場に持っていくことも検討します。 誰が資料を印刷するのか、提出締切日、資料の枚数、印刷の形式やカラーコピーができるかなど、主催者と相談しています。
Q4 レジュメやスライド以外の資料も使っていますか?A4 パンフレットやチラシ、場合によっては自作の小道具も使っています。■「見守り新鮮情報」を活用する 相談事例とアドバイスをコンパクトにまとめるのは難しく、毎回苦労しています。そこで、センターが発行するパンフレットやチラシなどを活用しています。例えば、国民生活センターが発行する「見守り新鮮情報」は、事例とワンポイントアドバイスが1枚にまとめられ、配布するのにも便利です。また、講座の若干の時間調整にも使えます。全部の事例を説明できなくても「残りは持ち帰ってご覧ください」と伝えることもできます。■自作の小道具で飽きない講座にする 小道具を使うこともあります。1万円札100万円分の厚さ(1㎝ほど)のメモ帳を用意し、「消費者被害額」を「東京タワーやスカイツリーの高さの何倍分」と導入に持って行くこともあります。 ほかにも、相談が多く寄せられている通信販売の定期購入のコマーシャル画面を作ったりと、小道具を自作することもあります。話を一方的に聞くのではなく、視覚的に印象に残るようにすると、受講者を飽きさせない講座にできます。 また、「契約とは?」では、〇×体操といって、契約クイズの答えを、胸元に両腕で〇か×を描
いてもらいます。他の参加者には答えが見えないので、間違っても受講者は恥ずかしくありません。鉛筆とハガキ大の用紙を用意していき事例を説明した後にクーリング・オフ書面を書いてもらうこともあります。 さらに簡単なシナリオを用意し受講者に担当してもらい、断り方や、消費者の思いを体感し話し合うなど参加型になるよう努めています。 電話勧誘については片手に受話器を持っているしぐさをしてもらい、「お断りします!」と声に出し切る練習をしてもらうこともあります。 最後に替え歌を入れるようにしています。ただ聞くだけではなく声を出して皆で歌うことで「この講座に参加した!」と実感していただけるからです。■著作権は必ず確認する ほかにレジュメや資料を作るうえで注意しているのは、著作権の問題です。例えば新聞記事。地域で起こった消費者被害が掲載されていることがあり便利ですが、そのままコピーするのは問題です。替え歌についても、著作権上問題のあるものとないものがあるので、気をつけています。 また、レジュメなどで引用や転載をする場合は、引用や転載元を明示するようにしています。■講座を通じて何を伝えたいかを大切に 最後は振り返りの時間を作る 注意していることは、印象に残るように楽しんでもらうことばかりを考えてはいけないということです。 講師自身が確認することも含めて、講座の最後に「今日の講座の振り返り」の時間を作っています。「今日のポイントは3点ありましたね」というように具体的な数字を入れて「伝えたいこと」を印象づけるようにしています。
次回は、「話し方、服装、立ち振る舞いで注意すること」を紹介します。
(取材・文:国民生活センター広報部)
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