液々向流(テイラー渦誘起)型 遠心抽出装置による多段抽出...
TRANSCRIPT
1
液々向流(テイラー渦誘起)型 遠心抽出装置による多段抽出 Multistage extraction by a liquid-liquid countercurrent
centrifugal extractor with Taylor vortices
東京工業大学原子炉工学研究所
竹下 健二
東京工業大学新技術説明会 2013年12月10日
本講演の内容
(1)液々向流型遠心抽出装置の油水分散挙動 (2)連続抽出試験による抽出性能の評価 ・多段抽出効果 ・スケールアップ効果 ・油水エマルジョンを利用した抽出性能の向上
2
Extractor Extractor Extractor
連続して接続されたミキサセトラ # 1 # 2 # N
… 多段抽出の考え方
3
ミキサ・セトラー型抽出器
強い攪拌効果で油水界面積の増加 ○
物質輸送は化学平衡によって制限 ×
核燃料サイクルで使用済み核燃料から長半減期核種や高発熱量を有する小量核種を分離することで高レベル廃液量低減や環境負荷低減が期待される
分離困難な小量核種を高速多段分離可能な抽出器があれば有益
ゆえに、多段抽出にはミキサセトラを多数接続する必要がある
= Extractor
Taylor - Couette 理論段数N段
SMALL&FAST!!
研究背景
利点 抽出器 欠点
ミキサ・セトラ型
パルス・カラム型
遠心抽出器
多段抽出が可能
大量処理が可能 操作が簡便
化学薬品の使用量が少ない
抽出効率が低い
装置が複数台必要
装置が複数台必要
セトラ部が大型化
遠心抽出器
水相
有機相
有機相
水相
多孔板
パルセーター
水相
有機相
有機相
水相
多孔板
パルセーター
安定した向流接触が行える 脈 動強度においては 有機相を微 粒化する能力が劣っている
装置内での多段抽出を行うた めには 塔高さを高くする必要 がある
水相
有機相
有機相
水相
多孔板
パルセーター
水相
有機相
有機相
水相
多孔板
パルセーター
安定した向流接触が行える 脈 動強度においては 有機相を微 粒化する能力が劣っている
装置内での多段抽出を行うた めには 塔高さを高くする必要 がある
パルスカラム
4
研究背景
5
3.油相ホールドアップの増大
油相 水相
界面での物質輸送
1.濃度勾配の生成
テーラー渦列の誘起・整列によって…
∴多段抽出が可能
界面積の効果的な増大
2.効果的な分散相の微粒化
Taylor 渦
内筒
外筒
水相流入
水相流出
有機相流出
有機相流入
油相の長軸方向への輸送は比重差(浮力)のみ ⇒ 安定な向流接触、エントレイメントの防止が重要
小型にすることで 高価な抽出剤の使用量を最低限に抑制、二次廃棄物発生量の低減
抽出剤の開発と共に、それに適した抽出器の開発もまた重要
油相と水相が出口から両方排出される現象
テーラー・クエット流の利用とその効果
30 mm
40 mm
5 mm
20 mm
200
mm
有機相セトラ部
混相部
180
mm
30 mm
40 mm
5 mm
20 mm
200
mm
有機相セトラ部
混相部
180
mm
3-20 mL/min 水相入口(φ1mm)
液々向流型遠心抽出装置
6
3-20 mL/min 水相出口(φ3mm)
400-1600 rpm
5mm
3-20 mL/min
油相出口(φ3mm) オーバーフロー
ローター (回転部)
スカート (静止部)
3-20 mL/min 油相入口(φ3mm)
30
35
40
45
50
55
60
65
70
600 1000 1400 1800
rotation speed [rpm]E
[%]
3 mL/min10 mL/min
15 mL/min20 mL/min
D2EHPAによるZn2+の抽出
O OP
O OH
旋回流
200rpm
400rpm
600rpm
800rpm
1200rpm
1000rpm
理論段数 一段
- 多段抽出、多段分離実証 - 油水分散挙動シミュレーションと感度解析 - 金属-抽出剤錯体形成による界面張力低下 ⇒ エマルジョン遷移と関係 - エマルジョンの利用は効果的、内筒表面物性と回転数が重要 スケールアップ及び高回転数域でのエントレイメント防止策で理論段数向上が示唆
実用プロセスへの拡張のためにはスケールアップの効果の調査は必須 ⇒径方向のスケールアップは渦発生条件等が変化、過去の研究で径は小さい方が有利と判明
⇒ 長軸方向のスケールアップ 7
油水流動状態と抽出率の関係
単相のテーラー・クエット流の解析
8 2s 3s 4s 5s 6s
800rpm, Water inlet 60cc/min,
壁面からテーラー渦が成長
セトリング部
単相流において、テーラー渦を解像することができた
UVPによる単相テーラークエット流の実測(800rpm)(十分時間がたち定常) 単相テーラー・クエット流の解析800rpm、RNG k-ε法、標準壁関数、12秒後
f0
~
6 mm
4 mm~
6 mm
4 mm
fD
解析結果は妥当
ドップラー効果による波長の変化
長軸方向の流速が得られる
トランスデューサー
油滴
超音波
回転内筒
外筒
超音波流速計による軸方向流速の計測
UVP法による数値解析結果の妥当性評価
9
油水分散の時間変化 界面張力5mN、回転数1200rpm
10
初期状態 0.3sec後 0.6sec後 1.0sec後
11
流れ方向 回転方向
初期条件
①
油
接線方向の不安定界面振動による液柱の分離
②
微粒化による 界面積の増大 ⇒高抽出率
④
テーラー渦列の成長
③
テーラー渦生成による長軸方向の界面振動
水とドデカンの物性値である25mN/mで解析しているが、実験より分散性が悪い 実際には金属種と抽出剤で錯体が生成しており、界面活性効果が発現した可能性あり
油水分散挙動の観察と整理
11
• 長軸方向に回転内筒有効長を拡大(180⇒360 mm)、流路幅は同一(5mm)
• セトリング長を二倍に拡張 • 下部油相同入管およびスカート設置 • 油相出口を半径方向から接線方向に修正
改修点
Oil outlet
Water inlet
Water outlet
30 mm
40 mm
5 mm
200
mm
Inner rotor
Outer wall
20 mm
旧型抽出器
Oil inlet
Scale up
×2
Oil inlet
Oil outlet
Water outlet
30 mm
40 mm
5 mm
400
mm
Inner rotor
Outer wall
40 mm
Water inlet 新型抽出器
セトリング性能の向上が期待される
液々向流型遠心抽出装置のスケールアップ効果
12
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0 10 20 30
%E
Time (min)
800 rpm1000 rpm1200 rpm1st Stage Equilibrium
旧型抽出器(有効混合長:180mm)
水相;Zn=1mM,pH=2.5, I=0.02 有機相;n-dodecane, D2EHPA-10mM 流速;10cc/min, 回転数;400,800,1200, 1400rpm
実験条件
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0 20 40 60
%E
Time (min)
1400rpm1200rpm800rpm1st Stage Equilibrium
新型抽出器(有効混合長:360mm)
長軸方向への2倍のスケールアップによって、 抽出率が安定するまでに時間が倍増 800rpm, 1200rpmではおよそ10%抽出率が向上 1400rpmにおいては更に大幅に抽出率が向上
n=3 n=2 n=1
n=4
n=2 n=3
連続抽出試験結果
13
高効率操作法の検討
新規な運転方法の検討
水相流入
有機相流出
水相流出
有機相流入
外筒
Taylor渦
内筒
水相流入
有機相流出
水相流出
有機相流入
外筒
Taylor渦
内筒高回転域(1500rpm)において油水エマルジョンを形成
(油水エマルジョンを維持したまま回転数を低下)
低回転域(800rpm)において抽出操作
低回転域における安定な向流接触
高界面積
14
15
Taylor-Couette流 800rpm
エマルジョン流 1500rpm
Taylor-Couette流とエマルジョン流
油水エマルジョンの安定性
・ 装置内流動状態は15分弱で油水エマルジョンの崩壊が起こる
0
20
40
60
80
100
0 5 10 15 20 25
Time / min
形成時回転数 :1500rpm
油水エマルジョン
油水エマルジョンにおけるZn抽出率の経時変化
・ Zn抽出率は10分以降において低下した
Taylor-Couette流れ(800rpm)における抽出率 E /%
段数 10
段数 3
低回転域において油水エマルジョンを安定化する方法の検討
20
40
60
80
100
0 5 10 15 20 25 0
16
ポリマー保護剤による油水エマルジョンの安定化
油滴の合一 油水エマルジョン
油水エマルジョンの維持
油水エマルジョンの崩壊
Polyethylene glycol (PEG)を添加することで油滴の合一を制御する
:水相 :有機相
:PEG
PEG添加
油水エマルジョンの維持
:界面活性剤
を妨げる 界面での物質移動
弱い界面活性作用を持つ物質の選択
・ セトリング困難 ・ 界面での障害
17
Time / min
E /%
20
40
60
80
100
010 30 40200
界面活性剤による油水エマルジョンの安定化
・ Zn抽出率に向上が見られない ・ 相分離能が低い
・ 界面で物質移動を妨げる
装置内に油水エマルジョン を形成した
界面活性剤により油水エマルジョンを安定化する 界面活性剤: 0.1–3 mM
Sodiumbis(2-ethylhexyl) sulfosuccinate (AOT)
cmc : 5–7 mM
・ セトリングが困難
Taylor-Couette流れ (800rpm)におけるZn抽出率
油水エマルジョン(800rpm)におけるZn抽出率
▲:3 mM ■:1 mM ◆:0.5 mM ●:0.1 mM
18
20
40
60
80
100
0 30 60 90 120 150 0
Time /min
E /%
■:with PEG□:without PEG
Taylor-Couette流れ(800rpm)における抽出率
PEGによる油水エマルジョンの安定化
PEGを添加することで油水エマルジョンの安定性が向上した
PEGの有無による抽出率の比較
保護剤 Polyethylene glycol (PEG) PEG(分子量6000) : 0.15 gL-1
15分 150分 油水エマルジョンの持続時間:
段数 10
19
5 10 15 20 25 30 35
20
40
60
80
100
0 0
Time /min
E /%
◆:600rpm■:800rpm▲:1000rpm●:1200rpm
内筒回転数の油水エマルジョン安定性への影響
流動状態は800-1200rpmにおいて 油水エマルジョンを維持していた
600rpmに回転数を設定後 油水エマルジョンが崩壊した
油水エマルジョンの安定性はせん断力の大きさに対して依存性を示した
PEG :0.15 gL-1
内筒回転数 :600-1200rpm
内筒回転数
せん断力
低 高
小 大
20
内筒回転によるせん断力の関係
1500rpm 1500rpm 800rpm
内筒回転による油滴の微粒化
低回転域においてせん断力が低下
PEG添加系における油水エマルジョンの内筒回転数による変化を観察する
1 mm1 mm 1 mm1 mm1 mm 1 mm
21
10 20 40 30 50
20
40
60
80
100
0 0 60
PEG分子鎖の影響:高せん断力場 800rpm
PEG分子量 ◆:8000 ●:6000 ▲:2000 ■:200
Time /min
E /%
・ 高分子量のPEGの方がより安定に油水エマルジョンを形成した
PEGの分子鎖が長くなることで油滴の合一を防ぐ効果が期待できる
PEG平均分子量 : 200-8000 内筒回転数 :800rpm
PEG分子量 油滴の合一
低 高
多 少
段数 10
段数 3
22
理論段計算による実験結果の評価
有機相・水相流量: 10 mL min−1
内筒回転速度を合わせてから, 25, 30, 35分後の結果を平均
1500rpmでエマルジョン形成後 すぐに内筒回転速度を下げた
600, 800rpmにおいて理論段数10段を遥かに上回った。
100
90
80
70
60
50
40
0 200 400 600 1400 1200 1000 800 1600
Perc
ent e
xtra
ctio
n of
Zn
/ %
The rotating speed of the inner cylinder / rpm
Extraction equilibrium
30
20
10
Emulsion state
Taylor-Couette flow
Theoritical stage n = 30
Theoritical stage n = 3
23
本講演のまとめ
• 液々向流型遠心抽出装置に発生するテーラー渦によって油相を高分散されることを数値解析により明らかにした。
• テーラー渦で油相を分散することにより多段抽出操作が可能であった。
• 高分子保護剤(PEG)を用いることで油水エマルジョンの安定性が向上し安定な連続運転が可能であった。
• 油水エマルジョンでの理論抽出段数10段以上の結果が得られた。
• せん断力と油滴の合一のバランスによって油水エマルジョンの安定性を制御でき、液々向流型遠心抽出装置の高性能化を達成できた。
24
企業への期待
• 連続溶媒抽出装置の高性能化、小型化を目指す企業。
• 金属ナノ粒子(レアメタル)回収装置を目指す企業。
• その他、広範囲での利用を検討いただける企業。
25
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:遠心抽出方法及び遠心抽出装置
• 出願番号:2008-026752 • 公開番号:2009-183870
• 登録番号:5078018 • 出願人:東京工業大学 • 発明者:竹下健二、及川博
26
お問い合わせ先
東京工業大学産学連携推進本部 産学連携コーディネーター 尾上二郎 TEL:03-5734-7634 FAX:03-5734-7694 Eーmail:[email protected]
27