infotech2016 6burn
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ジョエル&イーサン・コーエン
2008年情報技術もSF要素も組織的・機械的監視もない映画ロクデナシの登場人物たちが演じる,徹底したブラック・コメディ「陰謀」が普遍的に存在する可能性があること,逆に「陰謀」が不在かもしれないことを浮き彫りにしている
BURN
「読み終わったら燃やせ」はスパイへの指令の常套句。そこから転じて「くだらない作品」というマイナス・イメージ?一方,「読んだら心に焼き付く(作品が輝く)」というプラス・イメージ?CD/DVDをコピーして(burn)広めて,という究極の絶賛イメージ
物語の不在
作品全体を通じて,明確な物語が存在しないただ,登場人物は何らかの形でCIA(中央情報局)と関わってくるバラバラのエピソードをパッチワークのように貼り合わせていくかのごとく,場当たり的に場面が展開していく計画や意図が存在しないがために暴走してしていくリアリティ
論点①陰謀は存在するのか
身勝手でいい加減で適当な登場人物が勝手に行動した結果,ロシア大使館を巻き込む“国家的スキャンダル”に発展する。まるで,“陰謀”が存在したかのごとくただ“陰謀”はどこにも存在しない。あるとしたら疑心暗鬼を正当化する“物語”(説明)を欲する“弱い心”が,手垢が付いた“陰謀論”を呼び込むのではないのか?
陰謀論の役割
自分が陥った窮地の原因として,「巨悪による陰謀」を想定すれば,とりあえずの説明と納得ができる「なぜこんなことに!?」
「あいつらの策略のせいだ!」多くの人は「あいつら」を誅して,金品をせしめようなどとは夢想だにしないものだが……
論点②結果的に“陰謀”はあったことになる?
一連の騒ぎは,ついにCIAが取り扱う事案となる。CIAは“事件”の揉み消しを図り,コックス夫妻,ハリー,リンダの四人にはCIAによる行動監視が付くことになった勝手に動いた結果として,“CIAによる陰謀”が現実化してしまった“陰謀論”として語られがちなCIAによる介入は,こうした経緯をたどったものが多いのか?
論点④陰謀の遍在と不在
諜報組織は,何らかの陰謀や企みがまずあり,それを捜査し解決する組織として意義があるだが,陰謀や企みが実在しなくても,人々は容易に“陰謀の影”を見てしまう。「誰だ? CIAか?軍か? まさかNSA(国家安全保障局)なのか?」監視されていなくても(不在),いつでも監視されている(遍在)錯覚が生じて,精神と行動を束縛している?
論点⑤場当たり的な捜査機関
CIAも真相を解明しようとする真摯さに欠け,事なかれ主義の場当たり的な捜査と監視に終始する。「殺人」を予防する努力はみられない。事件の処理も“封印”に近い(リンダは得したが)しかし,正当な根拠や脈絡を欠いたとしても,圧倒的な情報収集・分析能力により,人々を監視し,“複雑すぎて”“クソややこしい”と愚痴った事案も処理していく。本質を理解したり,解決に尽力したりしなくても