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情報技術思想論 赤尾① 情報技術思想論 赤尾① ジョージ・オーウェル原作『1984』

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情報技術思想論 赤尾①情報技術思想論 赤尾①

ジョージ・オーウェル原作『1984』

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『1984年』『1984年』ジョージ・オーウェルが1949

年に発表したディストピア小説。核戦争後に,全体主義/管理主義的体制で統治された世界

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ビッグブラザービッグブラザー党を率いる「偉大なる兄弟」実在するかは定かではない最大の敵は「人民の敵」ゴール

ドスタイン。国民は毎日,テレスクリーンを通して彼に対する「二分間憎悪」を行い,彼に対する憎しみを駆り立てる

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テレスクリーンテレスクリーンテレビと監視カメラを兼ねた

機能を持ち,「真理省」が発信する映像を再生する一方,テレスクリーンの前にいる人々の映像や音声を送信している。スイッチを切れない。テレビ電話的機能もある。膨大な映像を誰が監視・管理しているかは謎。

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1956年製作の映画1956年製作の映画

マイケル・アンダーソン監督日本未公開(DVDが2009年に発売)

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1984年製作の映画1984年製作の映画

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論点①「監視」とは何か論点①「監視」とは何か「影響,管理,保護または指導の目的で,個人の詳細事項に対して向けられた,焦点を絞った,体系的でルーティーン化した注意。見張りと見守りなど,疑念・悪意だけでなく,配慮や慈愛を持って相手と関わることも監視の一側面」(ディヴィッド・ライアン)監視とは本来「両義的」なものだが,「自分が知らないところで,自らの意志に反して,自分が一方的に見られている」という収奪的な監視イメージに『1984』などが貢献

デイヴィッド・ライアン『監視社会』青土社,2002

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情報技術と情報社会の決定論情報技術と情報社会の決定論技術決定論が正しいとすれば,情報技術を用いた社会は結果的に同様の構造を持つようになる(民主主義的全体主義政体?)政治体制(社会構造)はそのままで,情報技術を駆使することで,その支配構造をさらに強固にすることもある(社会選択論の立場)つまり,ユートピアとディストピアとは表裏の関係中国・北朝鮮などは情報技術をも支配の道具とした社会(独裁)主義体制とも言える

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論点②政治体制と監視社会論点②政治体制と監視社会「共産主義か自由主義か」という冷戦構造下の政治体制の選択から離れ,高度な情報科学技術と結びついた強権政治が暗黒の未来をもたらすのか?集権的・強権的で監視社会を生むのは,共産(社会)主義的国家に限定されるのか?

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イングソックイングソック社会主義のみかけをした「少数独裁制集産主義」で党のスローガンはダブルシンク/ダブルスピーク=二重語法的(同時に矛盾した考えを信じること)

– 戦争は平和である (WAR IS PEACE)– 自由は屈従である (FREEDOM IS SLAVERY)– 無知は力である (IGNORANCE IS STRENGTH)

テレスクリーン(双方向テレビ)・思想警察・相互監視(密告=子どもを含む)などにより,中産階層から自由を奪い,階層と不平等を固定化する

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真理省(Minitrue)真理省(Minitrue)主人公が勤務する政府機関プロパガンダに携わる。政治的文書,党組織,テレスクリーンを管理する。新聞などプロレフィードを供給するほか,歴史記録や新聞を党の最新の発表に基づき改竄し,党が言うことが常に正しい状態を作り出す思想統制を扱うのは「愛情省」– 個人の管理・観察,逮捕,反体制分子に対する

尋問と拷問。連行された者を最終的に党を愛させるようにして,その後処刑する。

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論点③忍従か抵抗か論点③忍従か抵抗か『1984』のディストピア・イメージが同時に,抵抗・対抗・反抗の契機とセットで語られている「体制がどんなに抑圧的だろうとも,すべての人がそれを甘んじて受け入れるわけではない」という“神話”「人間」でいる限り,抵抗が潰えることはけっしてない(逆に,抵抗が失敗した結果,監視システムはさらに強化される)

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アップルコンピュータが1984年2月に,Macintosh発売を告知したCM。ビッグブラザーはIBM(通称:ビッグブルー)。計算機=管理のための道具パーソナルコンピュータ=使用する人間の能力・感性を拡張するための道具

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性本能の抑圧(恋愛の禁止)性本能の抑圧(恋愛の禁止)人間の性本能や愛情も抑圧性行為から快楽(オルガスムス)を除去しようと試みており,党やビッグ・ブラザー以外への愛情は必要としない下層階級(プロレ)の性に関しては放置されているが,党員の結婚は党への奉仕のために子供を生むための「儀礼」で,男女間に肉欲がある場合は結婚を許可されない。若者の間には「青年反セックス連盟」があり,完全な独身主義を提唱するキャンペーン

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ダブルシンクダブルシンク一個の人間が矛盾した二つの信念を同時に持ち,受け入れることができる思考能力。現実認識を自己規制により操作された状態でもある– 過去を支配する者は未来まで支配する。現在を

支配する者は過去まで支配する– 2足す2は5である。もしくは3にも,同時に4

と5にもなりうる• 2足す2は4だと言えることは「自由」ではない。党が5と言えば「答えは5だ」と信じる

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論点④複数の1984論点④複数の1984オーウェルが執筆したのは1949年(=35年後の未来)。現時点では32年前の過去近未来テーマのSFが描く未来像はフィクションで,実際の未来と合致はしない「未来社会は陰鬱」というイメージの醸成に『1984』は貢献したと考えられるだが,世界の多くの国に現実に訪れた1984年は陰鬱なだけの世界ではなかった。物質的な豊かさと政治的自由を多くの人が享受していた

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論点⑤「1984年型監視」を超えて論点⑤「1984年型監視」を超えて『1984』が喚起した監視社会イメージと,そのとき/その後に現実化している監視社会の実質は相当に異なる。だが,監視社会を『1984』の陰鬱なイメージで語るとき,その実質を見誤ることにならないか?「陰鬱な監視」から「明るい監視」へ。SNSやポイントカードなど,人々が自由意思によって主体的に選択したシステムが,監視に用いられている可能性が高い(例:facebook)。

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