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情報技術思想論 赤尾⑦ 『LOOK』 ※来週冒頭に返却するので,「大福帳」は今 週分も書いて提出して帰ってください。

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情報技術思想論 赤尾⑦『LOOK』※来週冒頭に返却するので,「大福帳」は今週分も書いて提出して帰ってください。

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作品概要

監督:アダム・リフキン(デトロイト・ロック・シティ)

2007年,Capture Film作品「全米約3000万台の監視カメラが週

40億時間を超える映像を録画。平均的アメリカ人が録画される回数は1日200回」という現実を反映したフェイクドキュメンタリー

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続編

アメリカでは興行も好調で,2010年には続編も製作された。SUPER,HYPER,ULTRA。日本ではレンタルリリースのみだが,そちらには日本語吹替版がある。

※作品はセクシュアルなシーンで始まります!

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フェイク・ドキュメンタリー“風”

『LOOK』は監視カメラから覗いた様を偽装して,監視カメラが捉えた人々の姿が真実なのか/仮想や虚構にすぎないのか,見る/見える=“LOOK”の現在を描こうとしたと考えられる監視カメラが置かれていそうな場所/アングルにカメラを据え,エフェクトをかけることで,監視カメラ映像“風”に仕立て上げた(音声が明瞭なのは「映画」のお約束事だが)リアルに見えるけれどすぐれてフィクション

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マーティーは職場でイジめられている

損害

保険

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かり

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を誘

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秘密

が…

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弁護士のベンは,二人目の子どものベビーシッターを見張るため,居間などに監視カメラを仕掛ける

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弁護士ベンの秘密妻子がありながら,弁護士仲間の男性とデキている。ベン(左)はバイセクシュアルなのである

ベンはいつも用心深い。ベンはこの映画の“狂言回し”役である

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深夜のコンビニで働くウィリーはロックスターを夢みている。ダチのカール(右)と歌で暇をつぶしながら,弛緩した働きぶり。ウィリーが,尋ねてきた元カノと話をするため,レジに不慣れなカールに店番をまかせ,喫茶店に行く。

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凶悪犯はモールの駐車場で車を換えた

白い

車は

、バ

ゲッ

ジル

ーム

に中

年女

性を

入れ

たま

ま、

長期

にわ

たっ

て(お

そら

く凶

悪犯

が逮

捕さ

れた

後も

ずっ

と)放

置さ

れた

まま

にな

る。

監視

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記録

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のに

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かが

気が

付く

まで

その

まま

か?

捜査

過程

で供

述す

るの

か?

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覗き見する悦楽

他人の秘め事を知ることに楽しみや興奮を覚えるのはなぜだろう?ワイドショー,「警察密着24時」,どっきりカメラなどテレビにはその種の番組が溢れるさらにSNSなどによって,他人の私事や秘密を見ることが半ば「自己目的化」している

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論点①監視カメラの映像は万能か?

防犯目的で設置され,犯罪捜査で証拠採用されるわけだから,監視カメラの映像こそ「リアルな世界」であるだが,監視が強化されている割に,セキュリティは向上しているとは言えないのではないか? 犯行現場と容疑者が鮮明に捉えているのに,事件が解決し犯人が捕まることがないケースがある。所与の目的を達するにはさらに監視カメラを増やすべきなのか?

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この画像は捜査に使われなかったのか 被害

者家

族は

弁護

士で

、誘

拐さ

れた

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れて

いて

、「

犯人

」の

容貌

も記

録さ

れて

いる

のに

、こ

の画

像が

結局

は捜

査に

活か

され

なか

った

とい

うこ

とか

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監視カメラ映像は人間が探して使う

監視カメラ以外に誰も「決定的瞬間」を見ていない場合,大量の映像が自動的にデータとして記録されたとしても,それを情報として活用できない限り,セキュリティは確保できない。監視カメラの映像群は人間が使ってはじめて「見える(look)化」する監視カメラを通して秘密や悪事がすべて「見える(look)」としても,それだけで社会の安寧は保てない

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ほぼ削除したエピソード

モールでフロアマネジャーを務めるトニー。同じ職場で働く女性店員と見境なく職場で関係を結ぶ。家庭では良きパパなのに(エンディング参照)。ドラッグをキメているから,セックス依存症の疑いもある。だって,監視カメラの存在と性能を誰よりも熟知しているはずなのに……

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論点②プライバシーかセキュリティか

監視社会を論じる場合,「個人のプライバシーと公共のセキュリティとで,どちらを優先的に守るべきか」という二者択一を取り沙汰することが多い。その設問は正しいのか? (たいていは公共の利益が優先される)実際には「その両者を守れていない」のではないか? プライバシーを露悪的に好奇に曝されることが増える割に,セキュリティは向上していないのではないか(犯罪発生率の減少/犯人検挙率の向上)

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論点③見る/見られることは楽しいのか

監視カメラ越しを装った映像は,相手も「見られる可能性がある」と承知しているはず。一種の諦観。そこには「見られる快感」がある?見ている側も「見る快感」がある? それは従来の窃視(のぞき見)の一方的な眼差しではなく,双方向的な,互いに侵犯し合うような眼差し現代の「監視」とはそうした共犯関係に進化している可能性がある?

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論点④ホンモノ/ニセモノ

「監視カメラなどで“自分は見られていない”と思った時には,人はどう行動するかを描いた」と『LOOK』の監督は言う。確かに,登場人物はみんな無邪気で無頓着だだが,その結果,一人の人間の二(多)面性を描き出している。複数の映像でどれがホンモノで,どれがニセモノなのかがわからない。それこそが情報/監視社会のリアリティーなのか?

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まとめ課題授業で取り上げた(あるいは取り上げられなかった)映画の一本に即しつつ,現代社会における「監視」概念の変容について論じよ。分量:1000字程度提出先:[email protected]締切:2016年12月20日(火)23:59:59

※来週冒頭に返却するので,「大福帳」は今週分も書いて提出して帰ってください。