<卒業研究:幼児体育> 幼児幼幼児児幼児のののの足邪足足邪...

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- 1/16 - <卒業研究:幼児体育> 幼児 幼児 幼児 幼児の足 足の発育 発育 発育 発育・発 発について について について について(Ⅵ) 衣・近 晴・中 西 加奈子・中 小百合・中 真理恵 1.はじめに はじめに はじめに はじめに 幼児の足趾形態の経年観察に取り組んで6年目になる。観察する項目は、①土踏まず面積比の経年 変化(できている・できつつある・できていない)、②母趾角の経年変化、③足背高の経年変化、④ 足幅と踵幅の比率の経年変化、⑤踵骨外反角の経年変化の5項目である。 2005年度(研究開始年度)は上記5項目について加齢的な有意差は見られるか、各年齢階層間に有 意差は見られるか、各年齢階層の男女間に有意差は見られるか、すべての項目について座位と立位間 に有意差が見られるかを分析した。 2006年度は2005年度に行った座位と立位の比較を研究対象から外し、データは立位のみの値を比 較分析することにした。理由は、低年齢児の測定値は体重が軽いのでデータにばらつきがありすぎ たことと、データとして採用出来ない事例が多数出たからである。また、2006年度は加齢変化や経 年変化の観察だけではなく、幼児のび環境について保護者にアンケートを依頼し、こどもの動量 と上記5項目の計測結果の相関関係についても調べた。 2007年度は本研究における基準点や基準線についての考え方を明確にしたので、3年分の全データ を再分析し、全データの加齢変化を見た。さらに、幼児の裸足保育群と非裸足保育群の比較検討と成 人女性の動群と非動群の比較検討を加えた。 2008年度は他県の裸足保育推幼稚園からデータを得ることができたので、再度幼児の裸足保育 群と非裸足保育群の比較検討をした。さらに2008年度は、成人男性の動群と非動群のデータも 得ることができたので、動が足趾形態に及ぼす影響を、男女間左右間等さまざまな角度から比較分 析した。 2009年度は小学1年生の児童を対象に、動能力と足趾形態の関係を調べた。2008年度の研究結 果から、①成人の足幅と踵幅の比率は男女とも動群の方が非動群に比べて有意に高い。②成人 の踵骨外反角は、女性においてのみ動群の方が非動群に比べて有意に高い。③成人の母趾角は、 女性においてのみ動群の方が非動群に比べて有意に高い。④土踏まず面積比は、男性の動群 と非動群間の左足にのみ有意差が見られたが、他の門では有意差は見られない。⑤足長に対す る足背高の比率は、動群の男女間では有意差は見られなかったが、非動群の男女間で左右両足 に有意差が見られた。 このことから、本研究では幼児の足趾形態についても、足幅と踵幅の比率・土踏まず面積比・母 趾角・踵骨外反角及び足長に対する足背高の比率の5項目には何らかの動能力との関係が見いだ されるのではないかという推測を立てて研究に臨んだが、児童の動能力と足趾形態間には相関関 係はなかった。 2010年度は全被検者を対象に重心動揺検査を実施した。重心動揺検査はヒトの平衡機能の研究と して、主に耳鼻咽喉科領域でめられた事例が多く、迷路(内耳)障害、小脳障害、脳性麻痺、視 覚障害、精神滞、ダウン症、聴覚障害などの報告がある。本研究は幼児や児童の平衡機能の発 程を明らかにするとともに、足趾形態の発程と幼児や児童の平衡機能の発程の関を明 らかにすることを目的とした。

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<卒業研究:幼児体育>

幼児幼児幼児幼児のののの足部足部足部足部のののの発育発育発育発育・・・・発達発達発達発達についてについてについてについて((((ⅥⅥⅥⅥ))))

江 口 亜 衣・近 藤 美 晴・中 村 愛 里

西 村 加奈子・中 野 小百合・中 村 真理恵

古 野 純 菜

1111....はじめにはじめにはじめにはじめに

幼児の足趾形態の経年観察に取り組んで6年目になる。観察する項目は、①土踏まず面積比の経年

変化(できている・できつつある・できていない)、②母趾角の経年変化、③足背高の経年変化、④

足幅と踵幅の比率の経年変化、⑤踵骨外反角の経年変化の5項目である。

2005年度(研究開始年度)は上記5項目について加齢的な有意差は見られるか、各年齢階層間に有

意差は見られるか、各年齢階層の男女間に有意差は見られるか、すべての項目について座位と立位間

に有意差が見られるかを分析した。

2006年度は2005年度に行った座位と立位の比較を研究対象から外し、データは立位のみの値を比

較分析することにした。理由は、低年齢児の測定値は体重が軽いのでデータにばらつきがありすぎ

たことと、データとして採用出来ない事例が多数出たからである。また、2006年度は加齢変化や経

年変化の観察だけではなく、幼児の遊び環境について保護者にアンケートを依頼し、こどもの運動量

と上記5項目の計測結果の相関関係についても調べた。

2007年度は本研究における基準点や基準線についての考え方を明確にしたので、3年分の全データ

を再分析し、全データの加齢変化を見た。さらに、幼児の裸足保育群と非裸足保育群の比較検討と成

人女性の運動群と非運動群の比較検討を加えた。

2008年度は他県の裸足保育推進幼稚園からデータを得ることができたので、再度幼児の裸足保育

群と非裸足保育群の比較検討をした。さらに2008年度は、成人男性の運動群と非運動群のデータも

得ることができたので、運動が足趾形態に及ぼす影響を、男女間左右間等さまざまな角度から比較分

析した。

2009年度は小学1年生の児童を対象に、運動能力と足趾形態の関係を調べた。2008年度の研究結

果から、①成人の足幅と踵幅の比率は男女とも運動群の方が非運動群に比べて有意に高い。②成人

の踵骨外反角は、女性においてのみ運動群の方が非運動群に比べて有意に高い。③成人の母趾角は、

女性においてのみ運動群の方が非運動群に比べて有意に高い。④土踏まず面積比は、男性の運動群

と非運動群間の左足にのみ有意差が見られたが、他の部門では有意差は見られない。⑤足長に対す

る足背高の比率は、運動群の男女間では有意差は見られなかったが、非運動群の男女間で左右両足

に有意差が見られた。

このことから、本研究では幼児の足趾形態についても、足幅と踵幅の比率・土踏まず面積比・母

趾角・踵骨外反角及び足長に対する足背高の比率の5項目には何らかの運動能力との関係が見いだ

されるのではないかという推測を立てて研究に臨んだが、児童の運動能力と足趾形態間には相関関

係はなかった。

2010年度は全被検者を対象に重心動揺検査を実施した。重心動揺検査はヒトの平衡機能の研究と

して、主に耳鼻咽喉科領域で進められた事例が多く、迷路(内耳)障害、小脳障害、脳性麻痺、視

覚障害、精神遅滞、ダウン症、聴覚障害などの報告がある。本研究は幼児や児童の平衡機能の発達

過程を明らかにするとともに、足趾形態の発達過程と幼児や児童の平衡機能の発達過程の関連を明

らかにすることを目的とした。

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2222....経緯経緯経緯経緯

長崎女子短期大学 幼児教育学科 幼児体育 幼児の足型計測実施日

長崎女子短期大学 幼児教育学科 山崎ゼミ 幼児の足型測定実施日  201 02 01 0201 0201 0 //// 6666 //// 2 42 42 42 4付付付付 けけけけ

5 11 火OKOKOKOK

←つばさ保育園15OKOKOKOK

江口・近藤・中村愛

5 12 水OKOKOKOK

←茂木保育園 7OKOKOKOK

江口・近藤・中村愛

5 13 木OKOKOKOK

つばさ山崎

5 14 金OKOKOKOK

←茂木小学校 32+9 中野・中村真・古野

5 18 火

OOOO

kkkk

5 19 水OKOKOKOK

←大浦小学校 3山崎

5 20 木

OOOO

kkkk

←大園小学校 1 西村

5 21 金OKOKOKOK

←愛宕小学校 49+4 中野・中村真・古野

5 25 火 変 更変 更変 更変 更 ←晴海台 2山崎

5 26 水OKOKOKOK

←つばさ保育園残り 江口・近藤・中村愛

5 27 木OKOKOKOK

←諏訪小学校 2山崎

5 28 金OKOKOKOK

←小島小学校 11 中野・中村真・古野

6 9 水OKOKOKOK

←南山小学校 1山崎

6 10 木OKOKOKOK

←長大附属 3山崎

6 15 火OKOKOKOK

←南長崎小 1山崎

6 17 木OKOKOKOK

←仁田小学校 8+1 西村

6 18 金OKOKOKOK

←高城台小学校 8+4 中野・中村真・古野

6 22 火 OK OK OK OK

←精道三川台 3山崎

OOOO

kkkk

←古賀小学校 2 西村

OOOO

kkkk

←橘小学校 4+1 西村

OKOKOKOK←高田小学校 10 江口・近藤・中村愛

OOOO

kkkk

←百合幼 1 江口・近藤・中村愛

6 29 火OKOKOKOK

←滑石小学校 12 江口・近藤・中村愛なし

6 30 水OKOKOKOK

←長与南 1山崎

7 1 木OKOKOKOK

←時津東小 3 西村

7 2 金OKOKOKOK

←矢上小学校 20+4 中野・中村真・古野

7 6 火OKOKOKOK

←鳴鼓小学校 2山崎

7 7 水OKOKOKOK

←横尾小学校 1山崎

7 8 木OKOKOKOK

←時津小学校 7 西村

7 13 火OKOKOKOK

←西城山小 1山崎

7 14 水OKOKOKOK

←虹ヶ丘小 3山崎

7 15 木OKOKOKOK

←西北小学校 14 西村

7 16 金OKOKOKOK

←日見小学校 2+1 中野・中村真・古野

備    考14 15 16

月 日 曜9 1310 11 12

←畝刈小学校 1

6 24 木

6 25 金

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3333.... 方法方法方法方法

3333....1111 被検者被検者被検者被検者

2005年度に275名の幼児(幼稚園2・保育園2・個人8)の保護者から5年間継続計測の承諾を得るこ

とができ、275名中208名の幼児を計測した(未計測者67名は中断・欠席・転校等の理由による)。

2006年度は255名の幼児が計測できた(未計測20名は転校等のやむを得ない事情による者のみ)が

分析対象者は196名(経年変化調査のため2年連続計測をした幼児のみを対象)とした。

2007年度は3年間の全被検児に1~2歳児及び成人女性の被検者を加え、全805例のデータを得た。

2008年度は経年変化計測の幼児と昨年加えた成人女性に成人男性を加えた1072名となった。

2009年度は全計測対象者の中から小学校1年生を選び出し、さらにその中から6歳児のみ(男児53

名女児48名)を抽出した。小学校1年生の計測対象者は男児88名女児63名であった。長崎市内の小

学校では6月下旬から7月上旬にスポーツテストが実施され、その時点で誕生日が過ぎている児童は

7歳児としてカウントされるがそれ以降の誕生日の児童は6歳児としてカウントされる。文部科学省

統計局の調査によれば、児童のスポーツテスト結果は6歳児から表示されており、本研究の小学校1

年生の計測対象者も6歳児が圧倒的に多かったので、全国平均と比較するために6歳児のみに絞った。

2010年度は、2005年度以降に足趾形態の経年変化調査を実施した全児童(男児128名女児109名計

237名)を対象に重心動揺検査を実施した。

3333....2222 計測器具計測器具計測器具計測器具

図図図図1111 ピドスコープピドスコープピドスコープピドスコープ 図図図図2222 グラビコーダグラビコーダグラビコーダグラビコーダ

足趾形態の計測器具は2005年度から使用している自作のピドスコープ(図1)である。今年度は足

趾形態と平衡機能の関連性を調べるためにアニマ株式会社製の重心動揺計(グラビコーダGS-2000

図2)も用いた。

3333....3333 計測手順計測手順計測手順計測手順

3333....3333....1111 足趾形態足趾形態足趾形態足趾形態

足趾形態の計測は、被検者をピドスコープに座らせ、足の位置を固定させてから立たせる。画像

は立位の足底面(土踏まず・足幅・踵幅・母趾角)、右側方(足背高)、左側方(足背高)、後方

(踵骨外反角)、前方(足趾形態)の5方向から撮影した。

撮影の際の被検者の足の位置は、両踵を2~5㎝離し、踵点から第2指先端を結ぶ線(足軸)がカメ

ラのレンズの中心線の延長に重なるように立たせた。なお、直立の姿勢が安定するように目の高さ

の前方の一点を注視させた。低年齢児の計測は、アンパンマン人形などの小道具を被検児前方の目

の高さの位置に置くなどして集中させた。

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計測手順や計測方法は、発育発達の分野、体育学や運動学の分野、医学の分野などそれぞれの分野

で独特の観点があり、統一された計測方法はないが、本研究では日本整形外科学会のX線撮影による

計測方法を参考にして計測を行った。側方撮影を内側からの撮影とせず外側からの撮影としたのは、

内側からの撮影は一方の足を挙げて撮影しなければならず、撮影側の足にのみ体重がかかるので正

確な立位自然体の足趾形態とはならないと判断したからである。

3333....3333....2222 重心動揺検査重心動揺検査重心動揺検査重心動揺検査

重心動揺検査は開眼、閉眼の2条件で行う場合が多い。姿勢は裸足で重心動揺計に起立し、両爪

先と両踵を接し、両上肢を体側に接して直立姿勢を保たせる(図2)。測定は、直立姿勢が安定し

たところで開始ボタンを押し、5秒経過後から60秒間重心動揺の記録を行う方法が一般的に用いら

れている。本研究は開眼条件と閉眼条件を比較検討するのが目的ではなく、重心動揺と足趾形態や

運動能力との関連を調べるのが目的なので閉眼条件のみで検査を行った。開眼条件で検査しなかっ

たもう一つの理由は、低年齢の被検児は集中力を保たせるのが困難で、周囲のざわめきや動きに気

を取られて頭部の固定や直立姿勢の保持が続かない場合が多いので、姿勢保持に気持ちを集中させ

るためでる。

測定は、直立姿勢が安定したところで開始ボタンを押すと、30秒間の重心動揺がグラビコーダに

記録され、測定終了後自動的にロール紙にデータが印字されて出てくる。測定途中にバランスを崩

して測定板からはみ出たりすると自動的にデータは消去される。

日本平衡神経科学会は、検査の記録時間は「60秒を基準とする」としながらも、「60秒直立困難

な例では30秒記録を行う。60秒以外のときには記録秒数を記載する」と記述している。本研究で使

用したアニマ社製のグラビコーダは測定時間が30秒と設定されているが、本研究における低年齢児

の測定は60秒間集中させるのが困難なので、初期設定を変更せず、設定通りの30秒測定で実施した。

4444.... 解析解析解析解析

4444....1111 足趾形態画像解析足趾形態画像解析足趾形態画像解析足趾形態画像解析

画像解析はイノテック社の pixes2000_pro を用いた。pixes2000_pro を用いることによって2

年目以降変わったのは、土踏まずを面積比で表せるようになったことである。

図図図図3333 足底面足底面足底面足底面のののの計測計測計測計測1111((((鏡映像鏡映像鏡映像鏡映像)))) 図図図図4444 足底面足底面足底面足底面のののの計測計測計測計測2222((((鏡映像鏡映像鏡映像鏡映像))))

しかし、面積比(図4 e/d)だけで土踏まずを論ずるのは危険である。なぜなら、土踏まずの形状

はさまざまで、大別しても長方形タイプ、台形タイプ、三角形タイプに分かれる。土踏まず面積が大

きくても長方形タイプは土踏まず最深部が浅いし、三角形タイプは深い。土踏まずは、面積だけでな

く、最深部がどこまで到達しているかも重要な要素なので、土踏まずを検討する場合は面積と最深部

到達地点の両方から吟味しなければならない。

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土踏まず最深部の到達地点を評価する方法として本研究では2006年度まで簡便法

6)

(図4上部の

区分け)を用いた。多くの研究者は、土踏まず最深部を評価するのに平澤のHライン

17)

を用いている。

この方法はカメラで足底面の画像を撮影する方法がなかった時代の、足裏にスミを塗って紙に足型

を写しとるという方法を用いていた頃に絶対的な権威を持っていた方法である。Hラインとは、足底

面の外側線と内側線の交点から第2趾の中心に向かって引かれた線のことである(図3上中央線)。

本研究に着手した当初、Hラインを用いての計測は難航した。第1の理由は、内側線と外側線の交点

が踵の後方のかなり遠い位置になるので、交点の位置の誤差の範囲が大きくなることであった。第2

の理由は、Hラインは第2趾の中心を通るのであるが、被検者の中には第2趾が浮いていて接地してい

ないものや、本来置かれるべき位置からずれていて、第2趾の趾先の位置を特定できない事例が出現

したことである。

そこで本研究では、2007年度以降Hラインに変わるものとしてYライン(図3下中央線)を採用する

ことにした。Yラインとは、第2趾の付け根中央部(解剖学的には第2中足骨遠位端)を基点とし、踵

先端の最も長い距離をなす点(踵点)に向かって引いた線のことである。

さらに2006年度には、画像解析のスケールの使い方でも工夫を加えた。2005年度に行った側方撮

影の画像解析では第2趾前方に置いたスケールをもとにして足長と足背高を計測したが、2006年度

と2007年度は第2趾前方に置いたスケールを外した。理由は、計測補助者が代わるごとにスケールを

置く位置がずれ、正確な計測値を出すことができない危険性があったからである。代わりのスケ-

ルは図3に示すように、踵先端から第2趾先端までの、カメラから見た平行な距離とし、その長さはガ

ラス面に貼り付けたメモリ付きのスケールをもとにして算出した。

また、2006年度からMP関節の位置を示すマーカーも外した。このマーカーは足長を計測する場合

の目印として利用していたが、こどもの足は先端部分が非常にやわらかくてMP関節の関節裂隙を触

診で探し当てるのが難しい。

そこで本研究での足長は、HラインとYラインについて説明したように、足底面の画像における第2

中足骨遠位端から踵点までの最長距離とした。図3のYラインの長さが本研究の足長の実測値である。

4444....1111....1111 土踏土踏土踏土踏まずまずまずまず

これまでもっとも多く採用されてきた土踏まずの判定方法は、土踏まず最深部がHラインより内側

にあれば土踏まずができたと判定する方法である

9)

。この方法は、内側線と外側線の交点をパソコ

ン上で作図するのが非常に難しいので当初から本研究では採用していない。

2006年度に本研究でが採用した方法は2種類ある。ひとつは踵点から第1中足骨遠位端と第2中足

骨遠位端に向かって直線を引き、それによってできた3区画(図4上に示す1、2、3の区画)のどこを土

踏まず最深部が通過しているかで扁平度を判定し、0から3までのカテゴリーで分類した

11)

。区画0

が凹足(足底中央部分が接地していない)、区画1は土踏まずができている、区画2は土踏まずができ

つつある、区画3が土踏まずができていないとした。

もうひとつの方法は、足底接地部全面積(図4の足底全面)と接地していない部分(図4の濃い色

の部分)の面積比で扁平度を判定する方法である。さらに2006年度は、足幅(図3の線分a)と内側

線から土踏まず最深部までの距離の比率も扁平度の指標とする方法として採用した(的場法)

21)

が、

2007年度はこれを破棄し、Yラインから土踏まず最深部までの距離(図3のc)で扁平度を判定する方

法と、面積比で扁平度を判定する方法の2種類とした。

足幅(図3の線分a)と踵幅(図3の線分b)は腓側中足点及び踵部外側突出部位から内側線に向かっ

て引いた垂線の長さとし、外測線は計測基準線から除外した。その理由は、内側線は脛側中足点と踵

部内足突出部位に接する直線を引くことが容易だが、外側線は特に低年齢児の場合は足底中央部が

くびれているない事例が多く、腓側中足点と踵部外側突出部位の2点間の接線を引くことができない

事例が出現するからである。

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4444....1111....2222 母趾角母趾角母趾角母趾角

母趾角の判定は初年度から変わらず、内側線と母趾線のなす角とした。但し、図3に示すように足

幅や土踏まず最深部の計測の基準線は接地部における内側線としたが、母趾角を計測する場合の内

側線と母趾線は画像の脛側中足点に接する線とした。その理由は、特に母趾角を計測する場合、趾先

の接地部は被検者のわずかな姿勢の変化により位置や形が変わりやすい部位なので、それを内側線

の基準点とするのは誤差の範囲が大きくなると判断したからである。

整形外科的基準では第1中足骨と母趾基節骨とのなす角を母趾角とし、それが15度以上のものを外

反母趾としている

8)

。それに伴い、本研究本研究はX線撮影によるものではないが、母趾角15度以上

のものを外反母趾とした。

4444....1111....3333 足背高足背高足背高足背高とととと足長足長足長足長

2006年度までの側方からの撮影(図5)は、リス

フラン関節とMP関節の上にマーカーを置き、それ

を目印として足長に対する足背高の割合を計測し

た。これは、X線撮影による内側縦アーチの計測

法である横倉法

3)

を参考にしたものである。横倉法

による計測法では、足長を第1中足骨頭内側種子骨

下縁と踵骨隆起下端と接地面との接点間の長さと

し、その長さに対する各関節中心部までの高さを%

で表しているが、本研究はX線撮影による計測では

ないので関節中心部を特定することはできない。

そこで本研究の足長は踵点から第2中足骨遠位端ま 図図図図5555 足背高足背高足背高足背高とととと足長足長足長足長のののの定義図定義図定義図定義図

での長さとし、足背高はもっとも上下移動が多く、触診によりその部位を確認しやすい第2中足骨リ

スフラン関節上縁から接地面までの高さとした。ただし、2年目以降の足長はマーカーの位置で判定

するのではなく、Yラインの長さとした。その理由は前述のとおりである。

足長と足背高について図5を用いて述べておきたい。

足長とは足先点(第2趾の先端)から踵点までの長さのことをいう。また、足背高は接地面から楔状

骨点までの高さのことをいい、楔状骨点は踵点と足先点を結ぶ線(足軸という)に沿って足長の55

%位置における足背の最高点とする、と述べてある文献や書籍は多い

22)

。本研究では足長の55%位

置を触診で定めることは難しいので、足長は整形外科の解剖学的基準(横倉法等)を採用し、足背高

は触診でもっとも把握しやすい第一楔状骨の遠位端とした。

4444....1111....4444 足幅足幅足幅足幅とととと踵幅踵幅踵幅踵幅

研究開始の2005年度は、内側線と外側線が足底前部と踵部のもっとも幅広い部分と接した点を結

んだ線分を足幅及び踵幅としたが2006年度からそれを変更し、図3の線分aを足幅、線分bを踵幅とし

ている。これは基準線を内側線とし、そこから垂直に立てた線が足底前部と踵部のもっとも幅広い

部分と交わる点までの線分の長さとしたものだが、基準線を内側線だけとし、外側線を基準線から除

外した理由は、前述のとおりである。

4444....1111....5555 踵骨外反角踵骨外反角踵骨外反角踵骨外反角

アキレス腱と踵骨のなす角を計測した(図3)。幼児の踵骨はほぼ例外なく外反しており

12)

、それ

が成長とともに直立に近くなっていくといわれている。

本研究はその確認と、そのことが土踏まずの形成過程や母趾角の変化と関連してるかどうかを見

ようとした。画像からアキレス腱と踵骨の傾きを計測し、その角度を踵骨外反角とした

13)

。踵骨の

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傾きを表す線は、踵骨の上部2等分点と底部2等分点を結ぶ線とした。

4444....1111....6666 画像補整画像補整画像補整画像補整

2008年度に初めて試みたのが画像の補整である。撮影画像はレンズを通した映像なので画像周辺

部は歪んでいると考えられる。そこで、1㎝平方格子状の線が引かれた透明プラスチック板をガラ

ス板の上に置いて実測値と画像解析ソフトによる計測結果を比較した(図7)。

その結果、成人の足型測定では、足底中央部の長さの解析ソフトのデータは実測値の99.7%。足底

面積は実測値の97.0%。幼児の足型測定では、足底中央部の長さの解析ソフトデータは実測値の99.

9%。足底面積の解析ソフトデータは実測値の98.9%であった。しかし、補正値を考慮しなければな

らないのは成人と幼児の絶対値比較の場合のみで、その他の計測値については画像解析データで比

較することについては大きな問題はなかったので従来通りの方法で研究を進めることにした。

図図図図6666 踵骨外反角 図踵骨外反角 図踵骨外反角 図踵骨外反角 図7777 計測値計測値計測値計測値のののの補正補正補正補正

4444....2222 グラビコーダデータグラビコーダデータグラビコーダデータグラビコーダデータ解析解析解析解析

検査結果は、以下の項目の値が自動的にロール紙に印字される。

LNGLNGLNGLNG((((総軌跡長総軌跡長総軌跡長総軌跡長))))㎝㎝㎝㎝

計測時間内の重心点移動距離の全長

LNGLNGLNGLNG////TIMETIMETIMETIME((((単位軌跡長単位軌跡長単位軌跡長単位軌跡長))))㎝㎝㎝㎝////secsecsecsec

計測時間内の重心の移動速度の平均値

LNGLNGLNGLNG////EEEE....AREAAREAAREAAREA((((単位面積軌跡長単位面積軌跡長単位面積軌跡長単位面積軌跡長))))1111////㎝㎝㎝㎝

包絡周囲長:プロップの凸点を結んだ場合の周囲長(図9の点線)

包絡面積:プロップの凸点を結んだ場合の面積(図9の点線で囲まれた部分)

ENVENVENVENV....AREAAREAAREAAREA((((外周面積外周面積外周面積外周面積))))㎝㎝㎝㎝

2222

重心動揺の最外部によって囲まれる内側の面積を求めたもの、すなわち包絡面積のことである。

RECRECRECREC....AREAAREAAREAAREA((((矩形面積矩形面積矩形面積矩形面積))))㎝㎝㎝㎝

2222

X,Y各軸の動揺の最大値で囲まれる長方形の面積を求めている。

RMSRMSRMSRMS....AREAAREAAREAAREA((((実効値面積実効値面積実効値面積実効値面積))))㎝㎝㎝㎝

2222

Root Mean Square(2乗平均の平方根)の略である。取り込んだデータを2乗し、(2乗すると全て

正になる)その平均を計算した後開平(Root)する。図10で示す負の部分を上に折り返し、その波形

の面積を求め、これを平均にならした時の長方形の高さがRMSであると考えることができる。

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図図図図9999 LNGLNGLNGLNG////EEEE....AREAAREAAREAAREA 図図図図10101010 RMSRMSRMSRMS

図図図図11111111 LNGLNGLNGLNGとととと年齢年齢年齢年齢のののの関係関係関係関係

表表表表1111 LNGLNGLNGLNGとととと年齢年齢年齢年齢のののの関係関係関係関係(+;有意差なし)

5555.... 結果結果結果結果とととと考察考察考察考察

5555....1111 LNGLNGLNGLNG((((総移動距離総移動距離総移動距離総移動距離))))とととと年齢年齢年齢年齢のののの関係関係関係関係

中林

27)

らの研究では、図12と表2に示すように 図図図図8888 グラビコーダデータサンプルグラビコーダデータサンプルグラビコーダデータサンプルグラビコーダデータサンプル

4歳から6歳までの間でLNGの値に有意差が見ら

れたという報告があるが、本研究では図11に示

すように、年齢が増すにつれてわずかにLNGの値

が小さくなってはいるものの、表1に示すように

各年齢間の有意差検定では差がなかった。

5555....2222 足趾形態足趾形態足趾形態足趾形態とととと重心動揺重心動揺重心動揺重心動揺のののの関係関係関係関係

男女それぞれにおける足趾形態の区分を、

「発達している」「発達途中である」「未発達で

ある」の3段階に分け(図13)、それぞれの区分に

属する児童群間の重心動揺検査結果に差がある

かどうかを調べた。3区分に分ける数値の境界は

図図図図12121212 閉眼条件 全体 中林閉眼条件 全体 中林閉眼条件 全体 中林閉眼条件 全体 中林らによるらによるらによるらによる ※点線は成人値

男 11-10 9 8 7 5 5-4

N 45 35 20 11 10 7

均 61.91 + 62.34 + 60.23 + 70.11 + 56.80 + 70.55

STD 18.99 20.50 15.22 20.99 13.23 16.05

+ + + + + +

女 11-10 9 8 7 5 5-4

N 33 26 21 10 10 8

均 58.95 + 56.97 + 52.16 + 59.68 + 61.89 + 68.08

STD 12.51 15.66 15.14 17.91 15.93 12.66

男女 11-10 9 8 7 5 5-4

N 78 61 41 21 21 15

均 60.66 + 60.05 + 56.10 + 65.14 + 59.20 + 69.23

STD 16.53 18.64 15.53 19.83 14.14 13.86

歳14 1512 13

240

220

200

180

160

140

10 11

120

100

80

60

4 5 6 7 8 9

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表表表表2222 閉眼条件 全体閉眼条件 全体閉眼条件 全体閉眼条件 全体((((中林中林中林中林))))

下記の通りとした。

①踵幅に対する足幅

「発達している」は平均値+0.5σより大きい

「発達途中」は平均値±0.5σ

「未発達」は平均値-0.5σより小さい

②土踏まず面積比

「発達している」は平均値+0.5σより大きい

「発達途中」は平均値±0.5σ

「未発達」は平均値-0.5σより小さい

③母趾角

「発達している」は平均値-0.5σより小さい

「発達途中」は±0.5σ

「未発達」は平均値+0.5より大きい

④踵骨外反角の「発達している」は平均値-0.5σより小さい

「発達途中」は平均値±0.5σ

「未発達」は平均値+0.5σより大きい

⑤足長に対する足背高比率

「発達している」は平均値-0.5σより小さい

「発達途中」は平均値±0.5σ

「未発達」は平均値+0.5σ

重心動揺検査結果の数値は年齢及び男女間ともに有意差は見られなか

ったので、足趾形態の区分は男女を区分けせずに上記の3区分とした。重心動揺検査と足趾形態と

の有意差検定項目は、重心動揺検査からはLNG、ENV、RECの3項目に絞り、足趾形態から

は、歩行や姿勢の安定に深く関与していると思われる足幅と踵幅の比率、土踏まず、母趾角、踵骨

外反角の4項目に絞った。

本研究は、歩行や姿勢の安定には

①足幅に対する踵幅の比率が小さい

②土踏まず面積が広い③母趾角が小さい

④踵骨外反角が小さい

が大きく関わっているという予測を基に進めてきた。

しかし、図14から図17までの 表表表表3333足幅足幅足幅足幅とととと重心動揺重心動揺重心動揺重心動揺のののの関係関係関係関係

散布図では土踏まず面積比と踵

骨外反角は予測に近い分布状態

を示しているが、足幅と踵幅の

比率と母趾角では予測に反する

分布状態を示している。とはい

え、それとて相関があるとは言

えない分布状態である。そのこ

とは、表3から表6に示す有意差

検定結果からも証明できる。

図図図図13131313 階級階級階級階級サンプルサンプルサンプルサンプル

足幅の発達段階とLNGの関係

発達 途中 未発達

N 68 96 73

均 62.4 + 60.4 + 59.0

STD 17.9 16.9 16.4

足幅の発達段階とENVの関係

発達 途中 未発達

N 68 96 73

均 3.51 + 3.26 + 3.14

STD 2.10 1.88 1.85

足幅の発達段階とRECの関係

発達 途中 未発達

N 68 96 73

均 9.86 + 9.21 + 8.73

STD 5.99 5.30 5.44

年齢 M SD

 4歳 198.73 33.45

 5歳 168.68 35.45

 6歳 173.63 26.72

 7歳 154.99 21.59

 8歳 141.27 26.34

 9歳 129.36 21.51

10歳 130.83 23.85

11歳 134.97 25.33

12歳 116.42 17.31

13歳 119.08 19.11

14歳 115.39 16.78

15歳 119.97 21.59

成人 95.78 15.45

  単位:㎝ 中林等による

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5555....3333 足趾形態足趾形態足趾形態足趾形態とととと運動能力運動能力運動能力運動能力のののの関係関係関係関係

表表表表4444土踏土踏土踏土踏まずとまずとまずとまずと重心動揺重心動揺重心動揺重心動揺のののの関係 表関係 表関係 表関係 表5555母趾角母趾角母趾角母趾角とととと重心動揺重心動揺重心動揺重心動揺のののの関係 表関係 表関係 表関係 表6666 踵骨外反角踵骨外反角踵骨外反角踵骨外反角とととと重心動揺重心動揺重心動揺重心動揺のののの関係関係関係関係

+;有意差なし) +;有意差なし) +;有意差なし)

図図図図14141414 LNGLNGLNGLNGとととと足幅足幅足幅足幅のののの関係 図関係 図関係 図関係 図15151515 LNGLNGLNGLNGとととと土踏土踏土踏土踏まずのまずのまずのまずの関係関係関係関係

図図図図16161616 LNGLNGLNGLNGとととと母趾角母趾角母趾角母趾角のののの関係 図関係 図関係 図関係 図17171717 LNGLNGLNGLNGとととと踵骨外反角踵骨外反角踵骨外反角踵骨外反角のののの関係関係関係関係

表表表表7 67 67 67 6歳児計測結果比較歳児計測結果比較歳児計測結果比較歳児計測結果比較

土踏まずの発達段階とLNGの関係

発達 途中 未発達

N 75 107 55

均 58.4 + 60.8 + 62.9

STD 15.9 16.7 19.0

土踏まずの発達段階とENVの関係

発達 途中 未発達

N 75 107 55

均 2.97 + 3.39 + 3.54

STD 1.59 1.93 2.31

土踏まずの発達段階とRECの関係

発達 途中 未発達

N 75 107 55

均 8.40 + 9.50 + 9.93

STD 4.43 5.66 6.56

母趾角の発達段階とLNGの関係

発達 途中 未発達

N 57 + 102 + 78

均 61.8 60.5 59.6

STD 18.7 17.7 14.9

母趾角の発達段階とENVの関係

発達 途中 未発達

N 57 102 78

均 3.59 + 3.25 + 3.13

STD 2.16 1.86 1.85

母趾角の発達段階とRECの関係

発達 途中 未発達

N 57 102 78

均 9.91 + 9.21 + 8.83

STD 5.86 5.52 5.36

踵骨外反角の発達段階とLNGの関係

発達 途中 未発達

N 64 68 105

均 58.4 + 62.1 + 60.8

STD 15.8 18.0 17.2

踵骨外反角の発達段階とENVの関係

発達 途中 未発達

N 64 68 105

均 3.12 + 3.48 + 3.28

STD 1.88 2.17 1.81

踵骨外反角の発達段階とRECの関係

発達 途中 未発達

N 64 68 105

均 8.67 + 9.84 + 9.22

STD 5.55 5.99 5.25

男児 身長 体重 下肢 下腿 握㎏ 起回 屈㎝ 横点 シャ回 50秒 幅㎝ ソフm 足幅a 踵幅b 面積d 面積e b/a% 長/区% e/d% 区 母角外 踵外反 足長f 足甲g g/f% ローレル

AVG 117.7 22.3 54.8 29.5 8.9 10.8 25.3 27.2 20.9 11.7 114.3 9.2 62.4 36.9 6570 1692 59.0 6.5 25.7 10.0 8.4 9.2 154.8 38.9 25.2 135.9

STD 5.09 3.74 3.26 1.50 2.14 5.60 6.11 4.95 10.1 1.27 15.67 3.72 4.05 2.77 755.7 440.5 3.14 4.62 6.42 7.08 3.16 2.45 8.10 2.54 1.36 14.37

N 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53 53

全男 身長 体重 下肢 下腿 握㎏ 起回 屈㎝ 横点 シャ回 50秒 幅㎝ ソフm 足幅a 踵幅b 面積d 面積e b/a% 長/区% e/d% 区 母角外 踵外反 足長f 足甲g g/f% ローレル

AVG 116.7 21.5 9.6 11.2 26.4 27 16.3 11.6 115.6 9.3

STD 4.88 3.4 2.48 2.15 7.85 4.76 8.16 1.05 17.71 3.47

N 1102 1102 1101 1101 1108 1082 1081 1113 1120 1115

女児 身長 体重 下肢 下腿 握㎏ 起回 屈㎝ 横点 シャ回 50秒 幅㎝ ソフm 足幅a 踵幅b 面積d 面積e b/a% 長/区% e/d% 区 母角外 踵外反 足長f 足甲g g/f% ローレル

AVG 116.5 21.2 54.5 29.1 8.3 10.5 28.7 27.3 15.9 11.9 109.7 5.9 60.5 36.1 6414 1602 59.7 5.9 25.0 9.0 8.2 8.2 152.8 37.5 24.5 134.4

STD 4.31 2.13 2.49 2.49 1.81 5.55 5.19 3.96 7.14 1.22 17.50 2.05 2.87 2.46 568.5 482.6 3.48 5.82 7.33 8.82 4.50 2.51 6.98 2.36 1.33 13.01

N 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48 48

全女 身長 体重 下肢 下腿 握㎏ 起回 屈㎝ 横点 シャ回 50秒 幅㎝ ソフm 足幅a 踵幅b 面積d 面積e b/a% 長/区% e/d% 区 母角外 踵外反 足長f 足甲g g/f% ローレル

AVG 115.8 21 8.9 10.4 28.5 26.5 14.5 11.9 106.6 5.9

STD 4.91 3.29 2.36 4.97 7.62 4.6 6.58 0.95 15.99 1.94

N 1106 1106 1103 1099 1108 1084 1082 1107 1120 1113

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図図図図18181818 LNGLNGLNGLNGとととと握力握力握力握力のののの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図19191919 LNGLNGLNGLNGとととと握力握力握力握力のののの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

図図図図20202020 LNGLNGLNGLNGとととと上体起上体起上体起上体起こしのこしのこしのこしの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図21212121 LNGLNGLNGLNGとととと上体起上体起上体起上体起こしのこしのこしのこしの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

図図図図22222222 LNGLNGLNGLNGとととと体前屈体前屈体前屈体前屈のののの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図23232323 LNGLNGLNGLNGとととと体前屈体前屈体前屈体前屈のののの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

図図図図24242424 LNGLNGLNGLNGとととと反復横跳反復横跳反復横跳反復横跳びのびのびのびの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図25252525 LNGLNGLNGLNGとととと反復横跳反復横跳反復横跳反復横跳びのびのびのびの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

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図図図図26262626 LNGLNGLNGLNGととととシャトルランシャトルランシャトルランシャトルランのののの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図27272727 LNGLNGLNGLNGととととシャトルランシャトルランシャトルランシャトルランのののの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

図図図図28282828 LNGLNGLNGLNGとととと立立立立ちちちち幅跳幅跳幅跳幅跳びのびのびのびの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図29292929 LNGLNGLNGLNGとととと立立立立ちちちち幅跳幅跳幅跳幅跳びのびのびのびの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

図図図図30303030 LNGLNGLNGLNGとととと50505050㍍㍍㍍㍍走走走走のののの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図31313131 LNGLNGLNGLNGとととと50505050㍍㍍㍍㍍走走走走のののの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

図図図図32323232 LNGLNGLNGLNGととととソフトボールソフトボールソフトボールソフトボール投投投投げのげのげのげの関係関係関係関係((((男子男子男子男子)))) 図図図図33333333 LNGLNGLNGLNGととととソフトボールソフトボールソフトボールソフトボール投投投投げのげのげのげの関係関係関係関係((((女子女子女子女子))))

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5555....3333....1 61 61 61 6歳児歳児歳児歳児・・・・男女別男女別男女別男女別・・・・足趾形態及足趾形態及足趾形態及足趾形態及びびびび運動能力運動能力運動能力運動能力のののの平均値平均値平均値平均値とととと標準偏差標準偏差標準偏差標準偏差((((全国比較全国比較全国比較全国比較))))

計測を実施した各グループ間に差がないかどうかを調べるために、足趾形態観察開始の2005年度

に各項目について分散分析を実施した。その結果各グループ間に差が見られなかったので、それ以

後はすべての被検者をひとまとめにして分析を行っている。

2009年度の小学校在学被検者総数は、男児120名女児95名である。そのうち、1年生在学時にス

ポーツテストデータが得られた児童は男児55名女児49名であった。さらにその中から、スポーツテ

スト全種目を実施していない男児2名女児1名を除き、結果の分析対象となった児童は男児53名女児

48名となった。抽出した6歳児の体格、運動能力、足趾形態の平均値と標準偏差及び全国平均との

比較を表7に示した。

5555....3333....2 62 62 62 6歳児歳児歳児歳児のののの運動能力運動能力運動能力運動能力とととと足趾形態足趾形態足趾形態足趾形態のののの関係関係関係関係

2009年度に6歳児被検者の体格と運動能力の関係を調べたが、男女とも体格と運動能力との間に

相関関係はなかった

28)

また、スポーツテストの各項目について男女差があるかどうかを調べたが、立位体前屈では女児

の値が有意に高く、シャトルランとソフトボール投げでは男児の値が有意に高かった

28)

。文部科学

省統計局のデータでは有意差検定結果は示されていないものの本研究とほぼ同じ数値が示されてい

る。このことから、体格ではまったく差がないものの6歳児ではすでに大筋群活動において男女差

が生じ始めているのではないかと思われる。

さらに本研究では、男女それぞれにおける足趾形態の区分を、「発達している」「発達途中であ

る」「未発達である」の3段階に分け、それぞれの区分に属する児童群間の運動能力に差があるか

どうかを調べた。その結果、有意差が見られた項目だけを抽出して列記した

28)

<男児>

①【足幅と踵幅比率】握力の項目で「発達している」と「発達途中」間に有意差ありP<0.01

上体起こしの項目で「発達している」と「発達途中」間に有意差ありP<0.05

立ち幅跳びの項目で「発達している」と「発達途中」間に有意差ありP<0.05

②【土踏まず面積比】50メートル走の項目で「発達途中」と「未発達」間に有意差ありP<0.05

③【母趾角】シャトルランの項目で「発達している」と「発達途中」間に有意差ありP<0.05

④【踵骨外反角】シャトルランの項目で「発達している」と「発達途中」間に有意差ありP<0.05

<女児>

①【足幅と踵幅比率】上体起こしの項目で「発達途中」と「未発達」間に有意差ありP<0.05

立位体前屈の項目で「発達途中」と「未発達」間に有意差ありP<0.05

ソフトボール投げ「発達途中」と「未発達」間に有意差ありP<0.05

②【母趾角】立位体前屈の項目で「発達途中」と「未発達」間に有意差ありP<0.01

③【踵骨外反角】反復横跳びの項目で「発達している」と「発達途中」間に有意差ありP<0.05

④【足背高比率】反復横跳びの項目で「発達している」と「発達途中」間に有意差ありP<0.05

5555....3333....3 63 63 63 6歳児歳児歳児歳児のののの運動能力運動能力運動能力運動能力とととと重心動揺重心動揺重心動揺重心動揺のののの関係関係関係関係

中林

27)

らによれば、重心動揺の総軌跡長と年齢の間には明らかな相関関係がある。しかし、本研

究の結果からは総軌跡長と年齢の間には相関関係はまったく見られず、総軌跡長と足趾形態の間に

も相関関係は見られなかった。さらに、総軌跡長と運動能力の間にも、図18から図33に示すとおり

何ら相関関係はなく、本研究が期待した脚力や体幹支持筋の結果が反映される反復横跳び、シャト

ルラン、50㍍走、立ち幅跳びの結果においても男女逆の値を示すなど、期待した結果は得られな

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かった。

6666.... まとめまとめまとめまとめ

この研究は幼児の足趾形態の経年変化を調べるために始めた。経年変化観察は同一被検者のデー

タを継続して取り続けなければならない。本研究では継続のひと区切りを5年とした。昨年で5年目

に達したが、まだ結論は出せない。幼児の足趾形態の発育発達には様々な因子が絡んでいることが

わかり、それらの因子との因果関係を一つひとつ解き明かしていくのに時間がかかることと、デー

タ不足のために、途中から協力してもらった低年齢児の計測がまだ終了していないからである。

これまでの研究では、足趾形態に関わりがあると思われる項目を挙げ、下記①から⑤に示すとお

り、それぞれの項目と足趾形態の発育発達との関係を明らかにしようとした。

①足趾形態の加齢変化

②性差

③幼児を取り巻く生活環境

④保護者の養育に対する考え方や保護者の運動経歴

⑤運動経験等

今年度は、それに下記①から③の項目を加え、それぞれの項目と重心動揺の関係を明らかにしよ

うとして、アニマ社制のグラビコーダで児童の重心動揺検査を実施した。

①被検児の年齢

②被検児の足趾形態

③被検児の運動能力

先行研究では、年齢と重心動揺の間には明らかな相関関係があるとした発表が数多くあるが、本

研究では年齢のみならず、足趾形態や運動能力との間にも相関関係はまったく見られなかった。こ

のことについては、重心動揺検査の記録時間を30秒としたことが影響しているか否かを検証しなけ

ればならない。日本平衡神経科学会は、重心動揺検査の記録時間は「60秒を基準とする」としなが

らも、「60秒直立困難な例では30秒記録を行う。ただし、60秒以外のときには記録秒数を記載す

る」と記述している。

本研究で使用したアニマ社製のグラビコーダは測定時間が30秒と設定されており、本研究の被検

児の集中力持続能力から判断しても、アニマ社製のグラビコーダが標準設定としている30秒記録は、

日本平衡神経科学会が、「60秒を基準とする。ただし、60秒直立困難な例では30秒記録を行う」に

違反してはいない。

しかし、先行研究では60秒で実施した例が多いので、本研究と同じように30秒で実施した先行研

究と比較検討しなければならないという課題が残った。

<引用・参考文献>

1)文部科学省体力運動能力調査報告書.体力・運動能力の加齢に伴う変化の傾向.p9-17.2006

2)野田雄二.足の裏から見た体.講談社、東京、p48-49.1998

3)水野祥太郎.ヒトの足―この謎にみちたもの.創元社、大阪、p146.1984

4)大塚美智子.幼児の成長に伴う足部形態の変化.日本生理人類学会誌.VOL3、№3. 1998

5)鈴木良平.足の外科.金原出版、東京、p27.1976.

6)水野祥太郎.ヒトの足―この謎にみちたもの.創元社、大阪、p147.1984

7)坂下喜久佐ら.コピー機を利用した幼児の足の裏のプリント.靴の医学.VOL7、p38. 1993

8)萩原一輝ら.子供の足と靴の検診「12年間の反省」.靴の医学.VOL11、p85-87. 1997

9)野田雄二.足の裏から見た体.講談社、東京、p74. 1998

10)S.C.Wearing et.al 2004 The Arch Index: A Measure of Flat or Fat Feet? Foot and Ankle In

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ternational Vol25 pp.575-581

11)水野祥太郎.ヒトの足―この謎にみちたもの.創元社、大阪、p96. 1984

12)清水昌一.足そして靴.風濤社、東京、p61. 1999

13)勝真理ら.足底支持板が下肢の筋へ及ぼす影響について.靴の医学.VOl7、137.1993

14)J.Gross 原著 石川ら監訳.筋骨格系検査法、医歯薬出版、東京、p406. 2005

15)浅見高明.わかる體のはかり方. 前田印刷、東京、p129. 2000

16)清水昌一.足そして靴.風濤社、東京、p128. 1999

17)野田雄二.足の裏から見た体.講談社、東京、p81. 1998

18)城戸正博ら.子供の外反母趾.靴の医学.VOL6、62.1992

19)鈴木良平.足の外科.金原出版、東京、p30.1976

20)大村政男ら.KIDS SCHALE.(財)発達科学教育センター、東京、type-B p1 type-c p1

21)水野祥太郎.ヒトの足―この謎にみちたもの.創元社、大阪、p96.1984

22)河内まき子・持丸正明.人体寸法データベースについて.くらしとJISセンター研究報告集、

4:46-53.2000

23)河内まき子・持丸正明.人体寸法データベース.ヒューマンインタフェース学会誌.

4:252-258.2000

24)西沢 昭.幼児の土踏まずに及ぼす影響について―BMIとはだし保育.2008

体育学会ポスター発表 2008/9/11於:早稲田大学

25)山崎純男・西沢 昭.長崎女子短期大学紀要第32号.p4-25.2008

26)清水賢治.土踏まずと運動能力の関係について.金沢大学紀要第49号.P91-94.2003-6-4.

27)中林稔堯.児童の平衡機能の発達について.神戸大学発達科学部研究紀要第4巻第2号.

P187-207.1997

28)山崎純男・西沢 昭.長崎女子短期大学紀要第33号.p10-14.2009

<謝辞>

本研究を進めるにあたり下記の幼稚園・保育園・小学校・個人的協力者の方々にご協力いただき

ました。お忙しい中快く受諾いただきましたことを深く感謝いたします。

1. 長崎女子短期大学附属幼稚園 21.長崎市立滑石小学校

2. 社会福祉法人鶴鳴会茂木保育所 22.長崎市立古賀小学校

3. 百合の園学院百合幼稚園 23.長崎市立南長崎小学校

4. 社会福祉法人おおぞらつばさ保育園 24.長崎市立橘小学校

5. 長崎市立矢上小学校 25.長崎市立横尾小学校

6. 長崎市立大浦小学校 26.長崎市立大園小学校

7. 長崎市立西城山小学校 27.長崎市立土井首小学校

8. 長与町立高田小学校 28.長崎大学附属小学校

9. 長崎市立小島小学校 29.長崎市立晴海台小学校

10. 長崎市立虹が丘小学校 30.私立南山小学校

11. 精道三川台小学校 31.長崎女子高等学校

12. 長崎市立諏訪小学校 32.長崎女子短期大学

13. 長崎市立愛宕小学校 33.長崎商業高校女子バスケットボール部

14. 長崎市立仁田小学校 34.長崎西高校女子バスケットボール部

15. 時津町立時津東小学校 35.純心女子高校バスケットボール部

16. 長崎市立西北小学校 36.長崎女子高校バスケットボール部

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17. 時津町立時津小学校 37.長崎西高等学校

18. 長崎市立茂木小学校 38.長崎東高等学校

19. 長崎市立畝刈小学校 39.個人的協力者7名

20. 時津町立鳴鼓小学校 ※名簿順は計測日順とした