iot 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami...
TRANSCRIPT
![Page 1: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/1.jpg)
卒 業 論 文
IoT無線デバイスの省電力化
北見工業大学工学部電気電子工学科
集積システム研究室
氏名 坂本 舜
2018 年 2月 21日
![Page 2: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/2.jpg)
i
目次
第 1 はじめに ................................................................................................................. 2 章
1.1 研究背景と目的 ........................................................................................................ 2
1.2 本論文の構成 ............................................................................................................ 2
第 2 IoT無線 .................................................................................................................. 3 章
2.1 IoT ............................................................................................................................... 3
2.2 LPWAN ....................................................................................................................... 3
第 3 測定データ変位量に基づく省電力化 ................................................................. 6 章
第 4 IoT無線試験機の開発 .......................................................................................... 9 章
4.1 無線モジュール ........................................................................................................ 9
4.2 Arduino ...................................................................................................................... 11
4.3 送受信プログラム .................................................................................................. 13
4.4 PER 測定手順 ........................................................................................................... 15
第 5 無線性能・測定評価 ........................................................................................... 17 章
5.1 送信間隔試験 .......................................................................................................... 17
5.2 予備通信試験 .......................................................................................................... 18
5.3 学内通信試験 .......................................................................................................... 21
第 6 消費電力の測定 ................................................................................................... 26 章
第 7 まとめ ................................................................................................................... 29 章
謝辞 ..................................................................................................................................... 30
参考文献 ............................................................................................................................. 31
![Page 3: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/3.jpg)
2
はじめに 第1章
1.1 研究背景と目的
近年,インターネット技術や各種センサ・テクノロジーの進化等を背景に,パソ
コンやスマートフォンなど従来のインターネット接続端末に加え,家電や自動車,
ビルや工場など,世界中の様々なモノをインターネットへつなげる IoT デバイスが
爆発的に増加している[1].その中でも,IoT 無線デバイスを使用した農作業におけ
る省力化・軽量化,農業生産の安定化・高品質化を可能にするスマート農業などに
注目が集まっている[2].しかし,IoT無線デバイスを使用するにあたって,デバイ
スを電池駆動で数年間などと,長期間にわたるデータ収集を要望される場合が多く,
現状のデバイスを電池駆動で数年間動作させるのは困難である.これは,IoT無線
技術の適用範囲を狭めることになるため,デバイスをより省電力で長時間動作させ
るための技術が求められている[3].
本論文では,通信プロコルの改良による IoT 無線デバイスの省電力化の提案と,
既存の無線モジュールを使用した IoT無線試験機を構築し,実際の測定で無線性能
を評価した結果,また実際のモジュールの消費電力を測定した結果を報告する.
1.2 本論文の構成
第 2章では本研究の IoT 無線通信において重要になるキーワードについて述べる.
第 3章では測定データ変位量に基づく省電力化の方法について述べる.
第 4章では IoT無線試験機の開発について述べる.
第 5章では無線性能及び測定評価をした結果と考察を述べる.
第 6章では消費電力の測定をした結果と考察について述べる.
![Page 4: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/4.jpg)
3
IoT 無線 第2章
2.1 IoT
IoT(Internet of Things)とは,人,動物,機械など,あらゆるモノをインターネッ
トに接続させようとする構想であり,これまでのように人間がコンピュータを使っ
てインターネットへ接続するのではなく,様々なデバイスが自動でインターネット
へ接続して情報をやり取りできる環境を指す.デバイスによって収集されたデータ
がインターネットを通して他のシステムと共有されることで,リアルタイムでの情
報の分析や,デバイス同士での自律行動への可能となる.また,IoTの代表的な活
用例として,人間の腕や頭部などに装着するデバイス(ウェアラブルデバイス)に
取り付けられた生体センサで利用者の健康データを収集し,データをインターネッ
ト経由で病院へ送るなどにより医師が患者の健康状態をリアルタイムで把握する
といったものや,複数のデバイスがお互いのデータを共有・連携することで,シス
テム全体が自律して稼働するスマートハウスやスマートシティなどが実現できる
ことを想定している[4].
2.2 LPWAN
IoTデバイスや関連のアプリケーションは,様々な用途や通信特性を有している.
特に,無線の場合は,消費電力や電波の特性等の制約条件が多いことから,既存の
単一の通信技術や規格でこれらのニーズに応えることは困難である.そのため,こ
うした多様なニーズに対応すべく,近年は新たな通信技術や規格が提案・開発され
ている[1].既存の技術・企画を含めてそれぞれの特徴に着目して整理したものを
図 2.2.1に示す.
![Page 5: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/5.jpg)
4
図 2.2.1 各通信方式の位置付け
図 2.2.1を見てみると,低電力かつ広域での通信を行える新しい方式として
LPWAN(Low Power Wide Area Networks)と呼ばれるものが存在する.この通信方式
は,伝送レートは数 kbps から数百 kbps と 3G,4Gに代表される携帯電話などの通
信方式と比較して低速なものの,単一の小型フォームファクタバッテリで 1,2年
のデバイス動作を実現できる省電力性や,数 km から数十 km もの通信が可能な広
域性を有する特徴がある[1].また,LPWANには図 2.2.2に示すように様々な規格
が存在しているが,その中でもサブギガヘルツ帯と呼ばれる免許不要であり,無線
LANなどで用いられる周波数帯に比べ周波数が低く,無線減衰が少なく回折性が
あり,広域性を実現できる周波数帯を用いた LPWANが開発され,物流や農業関係
などセンサ情報を収集するサービスなどへ利用され始めている[5].
![Page 6: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/6.jpg)
5
図 2.2.2 主な LPWAN 規格の位置付け
![Page 7: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/7.jpg)
6
測定データ変位量に基づく省電力化 第3章
無線通信の省電力化の方法の 1つとして,通信を行う間隔を長くすることで通信
回数を削減するというものがある.しかし,単純に通信間隔を広げると変位量の大
きいデータを取得できなくなる可能性が上がり,測定データ全体の信頼性が低下し
てしまう.また,通常,無線通信を行うときはある一定の間隔で通信を行うが,こ
のときの測定したデータの変位量が少ないときその間の通信で得られるデータは
実際には不要となる場合が多い.
そこで,測定データ変位量に着目して通信間隔を可変とする省電力化方法を検討
する.図 3.1 に示すようにある一定の閾値を設定し,1 回の通信を行った後に次に
取得する測定データの変位量が閾値を超えない場合は通信を停止し,変位量が閾値
を超える場合は通信を行うようにする測定データに適応した通信制御をすること
で,不要になるデータを送信しない分,通信回数を削減し,さらに測定データ全体
の信頼性の低下を抑えることができるというものである.
図 3.1 データの変位量に基づく通信回数の削減方法
この省電力化の方法にどれくらいの効果があるのかを MATLAB シミュレーショ
![Page 8: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/8.jpg)
7
ンにより検証する.また,送信するデータとして気象庁が公開している北見市の
2017年 12月の 1時間おきの温度変化のデータを使用する.
シミュレーション結果を表 3.1 と図 3.2 に示す.このとき,1 時間おきのデータ
から適応したデータを決定するときの閾値を6.9[℃]とし,比較対象として通信回数
を 18時間ごとに制御したデータも検証する.
表 3.1 温度変化のデータを用いた通信制御の検証
温度(最大値)[℃] 温度(最小値)[℃] 通信回数
1時間おき通信 6.70 −22.20 744
18時間おき通信 0.80 −21.50 42
データ適応通信 6.70 −21.00 44
図 3.2 温度変化のデータを用いた通信制御の検証
シミュレーションの結果,18 時間おきとデータ適応の通信回数はあまり変わら
なかったが,温度の最大値はデータ適応が 1時間おきのデータと一致する.よって,
![Page 9: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/9.jpg)
8
同じくらいの通信回数でも,一定で通信間隔を広げるよりもデータ変位量に応じて
通信間隔を制御するほうがより正確な値を得ることができることがわかる.しかし,
今回設定した閾値が別の送信するデータに適応するとは限らないため,信号源の性
質や求められるニーズによって閾値を設定しなければならないと考える.上記方法
はバッテリーもしくは太陽電池で電源供給され,省電力化のために通信回数に制約
される無線 IoTデバイスにとって有効であると考えられる.
![Page 10: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/10.jpg)
9
IoT 無線試験機の開発 第4章
前章で提案した省電力化を IoT 無線デバイスに導入する前段階として,既存の
無線モジュールにはどのくらいの無線性能があるのかを検証するために IoT 無
線試験機を構築した.
4.1 無線モジュール
本研究では,サブギガヘルツ帯を用いた LPWANを使用し,1つのモジュールで
送受信の両方を担うことができるインタープラン社の IoT 無線モジュール
IM315TRX,IM920 を採用する.それぞれの基本性能を表 4.1.1,それぞれのモジュー
ル写真を図 4.1.1に示す.
表 4.1.1 IoT無線モジュールの基本性能
IM315TRX IM920
周波数 315MHz 帯 920MHz 帯
通信方式 単信 単信
変調方式 ASK FSK
通信距離 50m 7km
伝送レート 5kbps 1.25kbps
電源電圧 2.0~3.6V 2.0~3.6V
送信時の消費電流 15mA 40mA
![Page 11: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/11.jpg)
10
図 4.1.1 IM315TRX(左)と IM920(右)
ここで,各モジュールの通信方式,変調方式について詳しく説明する.まず,どち
らのモジュールも単信通信方式を採用しており,これは通信の相手側に対して送信
中の時は、相手側からの信号を受信することができず,相手側が送信中の時は、自
分側から送信することができないような通信方式である.次に,変調方式は,
IM315TRXには振幅変調(ASK)が採用されており,この方式は搬送波の周波数と位
相はそのままで搬送波の振幅のみ変化するものであり,RF(無線周波数)スペク
トルのメインローブ帯域幅は大きくない(周波数分解能が良い)が,復調において
検出信号を 1,0のデジタル信号に判定するときのスレッショルド電圧(雑音と搬送
波のピーク値がほぼ等しくなる点)が,振幅を変調するために移動伝送路のフェー
ジングによって変動し,信号誤り特性が劣化するものである.また,IM920 には周
波数変調(FSK)が採用されており,この方式は搬送波の振幅と位相はそのままで搬
送波の周波数のみ変化するものであり,RF スペクトルのメインローブは ASK の
1.5倍に広がるが,信号判定レベルが変動しないものである[6].
また,IM920 は通信モードの切り替えやコマンド設定で通信距離や送信時の消費
電流を変更することができるが,本研究では初期状態のものを基本性能とし,測定
評価にもこの性能を採用する.また,IM920 には図 4.1.2 に示す SMA コネクタを
使用して外部アンテナなどに接続できる IM920XS が存在し,本研究ではモジュー
ルとアンテナの間に減衰器を接続することで送信出力を減衰させ,測定評価する際
の通信距離を短くして測定効率を上げるために採用する.
![Page 12: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/12.jpg)
11
図 4.1.2 IM920XS と接続ケーブル
4.2 Arduino
図 4.2.1 は実際のマイコンボードとその総合開発環境(Integrated Development
Environment,IDE)であり,マイコンボードはハードウェア上,IDE はソフトウェ
ア上で動作する[7].本研究では,Arduinoマイコンボードの一種であるArduino UNO
R3の互換ボードであるマルツエレック社の Maruduino UNO R3 を採用する.この
マイコンボード上にモジュールを接続し,IDE で開発したプログラムをマイコン
ボードに書き込み,そのプログラムに記述された動作内容でモジュールを操作する.
また,電源は外部からでも供給が可能だが,本研究ではプログラムの書き換えを多
用するため,USBケーブルより PC から直接電源を供給する方法を採用する.
図 4.2.1 Arduino マイコンボードの互換ボード(左)と総合開発環境(IDE)(右)
![Page 13: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/13.jpg)
12
ここで,測定をするときのモジュールの切り替えを容易にするために,図 4.2.2
に示す IM シリーズのモジュールと Arduino マイコンボードを接続するインタープ
ラン社の無線シールド IM315-SHLD-RX-V2を採用する.これにより,Arduino から
直接電源をモジュールに供給することも可能になる.
図 4.2.2 無線シールド IM315-SHLD-RX-V2
ここで,IoT 無線試験機の全体図を図 4.2.3,実際の試験機の外観を図 4.2.4 にそ
れぞれ示す.このとき,モジュールの電源V𝐶𝐶を Arduino の 3.3 Vピン,データをア
ンテナへ出力する端子 TxDをデジタル入力端子 D8,アンテナからのデータを入力
する端子 RxD を D9,モジュールへのコマンドを入力する BUSY を D10 にそれぞ
れ無線シールドを通じて接続する.また,試験機の構成は送受信ともに同じものと
なっている.
図 4.2.3 IoT無線試験機
![Page 14: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/14.jpg)
13
図 4.2.4 試験機の外観
4.3 送受信プログラム
プログラムは Arduino の IDE で開発する.Arduino のプログラミング開発言語は
C言語系で,オブジェクト指向の C++に準じた高度な言語がベースとなっている[7].
実際の送受信プログラムのソースコードをそれぞれ図 4.3.1,図 4.3.2に示す.
#include <SoftwareSerial.h>
SoftwareSerial IM920Serial(8, 9); // ソフトウエアシリアル
int busy;
unsigned char cnt = 0;
char sendPacket[24] = "";
unsigned long tms = 200; //送信間隔を設定(ms)
int count = 1;
char pr[24];
void setup() {
IM920Serial.begin(19200); // ソフトウエアシリアル 初期化
Serial.begin(19200);
pinMode(10, INPUT);// Busy 信号 Pin10 入力
while (!IM920Serial & !Serial ) {
;
}
}
void loop() {
while (count <= 100) {
![Page 15: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/15.jpg)
14
do {
busy = digitalRead(10); // Busy 信号 読み取り
} while (busy != 0); // Busy なら Loop
IM920Serial.print("TXDT"); // 送信コマンド
cnt = (0xff & (cnt + 1)); //カウンター.0xffで 0x00に戻る
sprintf(sendPacket, "%02x%s ", cnt, "02030405060708");
IM920Serial.println(sendPacket); // アナログ値を HEX フォーマットで送信
sprintf(pr, "count:%3d sendData:%s", count, sendPacket);
Serial.println(pr); //デバッグ用
count++;
delay(tms); //0.2 秒ごとに送信
if (count > 100) {
delay(tms * 100); //20 秒待機
cnt = 0x00;
count = 1;
}
}
}
図 4.3.1 送信プログラム
#include <SoftwareSerial.h>
SoftwareSerial IM920Serial(8, 9); // ソフトウエアシリアル
void setup() {
Serial.begin(19200); // ハードウェアシリアルを準備
IM920Serial.begin(19200); // ソフトウエアシリアル 初期化
pinMode(10, INPUT);// Busy 信号 Pin10 入力
while (!IM920Serial & !Serial) {
; //受信待機
}
}
void loop() {
if (IM920Serial.available()) {
Serial.write(IM920Serial.read());
}
}
図 4.3.2 受信プログラム
まず,図 4.3.1の送信プログラムの概要を説明する.このプログラムは,16進数
値の 8 byteのデータを一定の間隔で 100回送信し,その後 100回送信したのと同じ
時間待機するのを半永久的に繰り返すものである.このとき,受信側でデータを識
別するために送信するデータの 1 byte目の初期値を「01」とし,一回送信するごと
に値が 1足されていき,100回送信したら初期値に戻るようにし,この後ろに 7 byte
![Page 16: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/16.jpg)
15
の固定データ「02030405060708」を付けたものを送信データとしている.
次に,図 4.3.2 の受信プログラムの概要を説明する.このプログラムは,受信側
のモジュールに送信側のモジュールの固有 ID が登録されていると,データの受信
が確認できたときに,そのデータを書き出すものである.このとき,モジュールの
固有 ID登録は既に完了しているものとする.また,書き出されたデータは IDEの
シリアルモニタ画面より確認できるがデータを保存することはできない.
4.4 PER 測定手順
PER(Packet Error Rate,パケット誤り率)測定をするために,図 4.4.1 に示す
Arduino より書き出されたデータを画面出力し,そのデータをテキスト保存するこ
とができる通信ターミナルソフト Tera Term を採用する.これにより,測定時にデー
タを監視しながら記録をとることができ,そこからデータ送信回数を算出し,
送信回数−受信回数
送信回数
より PER を計算する.このとき,PER の値の範囲は 0~1となり,0に近いほどパ
ケット誤りが少なく,1に近いほどパケット誤りが多いということになる.
図 4.4.1 通信ターミナルソフト Tera Term
ここで,Tera Termに出力された受信データの一例を図 4.4.2に示す.このデータ
からノード番号,送信モジュールの固有 ID,RSSI,送信データを確認できる.ま
![Page 17: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/17.jpg)
16
た,データは全て 16 進数で表現される.
図 4.4.2 受信データ(例)
ここで,ノード番号とは,固有 IDとは別に送信側で任意に設定できる 8bit の番
号であり,主にセンサ番号,スイッチ番号などをつけたいときに使用するが,本研
究では使用しないため初期設定の「00」が出力される.
また,RSSI とは,各メーカーがそれぞれ 0 から 255 の範囲の値と定義している
受信信号の相対的品質を表す値であり,数値が高いほど受信信号が強いことを示す.
IM920,IM920XS では,ノイズがない環境での受信可能な RSSIは 125 前後が限界
であり,安定した通信には 135程度は必要である[8].
![Page 18: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/18.jpg)
17
無線性能・測定評価 第5章
5.1 送信間隔試験
この試験では,今後さまざまな場所で試験する際の測定時間を短縮し測定効率を
上げるために,送信する間隔をどこまで短くできるのかを IM920 で測定した.
測定条件として,試験機間の距離を約 0m,送信間隔を 0.1~10s とし,この時の
PER と,RSSIの平均値を測定した.
測定結果を表 5.1.1,図 5.1.1にそれぞれ示す.
表 5.1.1 送信間隔と PER,RSSIの関係
送信間隔[s] PER RSSI(平均)
0.10 0.4568 221
0.11 0.4898 221
0.12 0.4678 221
0.13 0.04 221
0.15 0.04 221
0.18 0.05 221
0.19 0 221
0.20 0 221
0.50 0 221
1.00 0 221
5.00 0 221
10.00 0 221
![Page 19: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/19.jpg)
18
図 5.1.1 送信間隔と PER の関係
測定結果より,送信間隔が0.2sあたりまでは PER は低下しないが,それより短く
すると PER が低下することがわかる.これは,モジュールか Arduino が動作限界
に達しており,ちゃんと送信できていなかったためと考える.この結果から,今後
の測定評価の際の送信間隔の設定をモジュールに関係なく一律して0.2sとした.
5.2 予備通信試験
この試験では,測定条件を変化させた時の通信距離と PER,RSSIの関係を調べ,
今後の様々な環境での通信を行う場合の参考とするために,通信距離を変化させた
り,モジュールとアンテナ間に減衰器を取り付けて入出力電力を低下させたりした
状態での通信を,IM315TRX と IM920 のそれぞれで測定した.
測定条件として,IM315TRX では第 1総合研究棟 6階の廊下で測定を行い,通信
距離を1~30m間で変化させた時の PER と RSSI を確認した.また,IM920 では体
育館で30m間の通信,第 1総合研究棟 6階の学生実験室から電気電子棟 3階の学生
実験室までの直線距離で150m間の通信の 2 通りの場所で測定を行い,それぞれの
場所で,受信側のモジュールに IM920XS を採用し,減衰器を取り付けることで通
信間の減衰量を0~30dB間で変化させた時の PER と RSSI を確認した.また,この
![Page 20: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/20.jpg)
19
時の見通しは良いものとする.
IM315TRXの測定結果を表 5.2.1,図 5.2.1にそれぞれ示す.
表 5.2.1 通信距離と PER,RSSIの関係(IM315TRX)
図 5.2.1 通信距離と PER,RSSIの関係(IM315TRX)
また,IM920 の測定結果を表 5.2.2,図 5.2.2 にそれぞれ示す.
通信距離[m] PER RSSI(平均)
1 0.22 149.00
3 0.22 124.68
5 0.18 123.03
10 0.35 98.42
15 0.74 89.21
20 0.82 85.06
25 0.85 84.80
30 1 −
![Page 21: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/21.jpg)
20
表 5.2.2 通信間の減衰量と PER,RSSIの関係(IM920)
通信距離[m] 減衰量[dB] PER RSSI(平均)
30 0 0 157.31
30 10 0 150.86
30 20 0 145.55
30 30 0 134.85
150 0 0 136.66
150 10 0 127.51
150 20 0.90 121.41
150 30 1 −
図 5.2.2 送信出力の減衰量と PER,RSSIの関係(IM920)
測定結果より,IM315TRX においては通信距離を1m離したら PERの低下が始ま
り,30 mになると通信ができなくなることがわかる.これは公表値の50 mを下回
る結果となったが,この測定では上下左右の壁の反射などは考慮していないので,
実際に使用するとフェージングな影響を強く受けてしまうためと考える.また,
IM920 においては通信距離が30 mのときは減衰器を取り付けても安定した通信は
できていたが,150 mになると,減衰量が20 dBを超えると急激に PER が低下する
![Page 22: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/22.jpg)
21
ことがわかる.ここで,RSSI に注目してみると,安定した通信をしているときは
平均して 125以上の値を示しており,PER が低下する点では 125以下の値を示して
いることがわかる.よって,IM920 の通信の安定には受信信号の強さが密接に関係
しており,公表されている最低限の RSSIを確保できないと急激に通信距離を狭め
ることになると考える.
5.3 学内通信試験
この試験では,北見工業大学のあらゆる場所に受信機を設置することで,実際の
環境でどれくらい通信ができるのかを,IM920 を用いて測定した.
測定条件として,図 5.3.1 に示すキャンパスマップ内で第 1 総合研究棟の学生実
験室に設置した送信機から50,100,150,200 m(Google Maps より算出,高低差
は考慮しない)ごとに屋内外,見通しの良し悪しを問わずに安全に試験機を設置で
きる合計 13箇所のポイントを決定し,そこに受信機を設置した時の PER と,RSSI
を測定した.このとき,通信時の見通しは RX側から目視で TXを確認できたもの
を見通しが良いとし,それ以外を見通しが悪いと判断した.また,図 5.3.1 の測定
場所の詳細を表 5.3.1 に示す.
![Page 23: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/23.jpg)
22
図 5.3.1 キャンパスマップと送受信機の設置位置
表 5.3.1 測定場所の詳細
受信位置 詳細 受信機環境 見通し
RX1 講堂入口のスロープ 屋外 悪
RX2 図書館内 屋内 悪
RX3 A棟と B棟間の廊下 屋内 良
RX4 アトリウムと学務課間の十字路 屋内 悪
RX5 A103講義室前 屋内 悪
RX6 B 棟 2階と電気電子棟 2階の渡り廊下 屋内 良
RX7 体育館入口 屋外 悪
RX8 大学会館入口 屋外 良
RX9 機械工学科 2号棟 2階の廊下 屋内 悪
RX10 機械工学科 2号棟と情報システム工学科 1号棟間の道路 屋外 悪
RX11 弓道場前の階段 屋外 悪
![Page 24: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/24.jpg)
23
RX12 マテリアル工学科棟 2階のコミニュケーションルーム 屋内 悪
RX13 陸上競技場沿いの道路と一般道路間の連絡階段 屋外 悪
測定結果を表 5.3.2 に示す. また,PERと RSSIの関係を分布図で表したものを
図 5.3.2に,PER を 0.0.5 未満,0.05~0.5,0.5 以上で分類し,図 5.3.1のキャンパス
マップ内の受信ポイントを色分けしたものを図 5.3.3にそれぞれ示す.
表 5.3.2 受信位置ごとの PER,RSSI
受信位置 通信距離[m] PER RSSI(平均) 受信機環境 見通し
RX1 50 0.0694 130.2968 屋外 悪
RX2 50 0.0000 135.7076 屋内 悪
RX3 50 0.0000 145.7068 屋内 良
RX4 50 0.0176 125.5042 屋内 悪
RX5 100 0.0004 131.2639 屋内 悪
RX6 100 0.0000 141.3116 屋外 良
RX7 100 0.0000 134.9072 屋外 悪
RX8 150 0.0000 138.5980 屋外 良
RX9 150 0.4760 121.4427 屋内 悪
RX10 150 1.0000 − 屋外 悪
RX11 200 0.0816 129.2291 屋外 悪
RX12 200 0.9750 119.4000 屋内 悪
RX13 200 1.0000 − 屋外 悪
![Page 25: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/25.jpg)
24
図 5.3.2 PER と RSSIの関係
![Page 26: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/26.jpg)
25
図 5.3.3 PER による受信ポイントの色分け
測定結果より,やはり公表されている最低限の RSSIを確保しないと PER が低下
することがわかる.これは,建物や壁の反射や回折によって信号強度が劣化してし
まうためと考える.しかし,屋内で見通しが悪い場合でも通信ができていることが
ある.ここで,図 5.3.3 の PER が 0.05未満となる RX位置に注目してみると,多く
は第 1 総合研究棟の南西側(図中では TX から上側)に位置する.逆に北東方向(下
側)から北西方向(右側)にある RX1, RX10, RX12, RX13 では PER が低下するこ
とがわかる.TXから RX1, RX10, RX12, RX13 の位置は第 1総合研究棟の南西側か
らは死角となるので,第 1総合研究棟の建物に電波が遮蔽されることで受信電波強
度が低下したと考えられる.
![Page 27: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/27.jpg)
26
消費電力の測定 第6章
実際に IoT無線モジュールの消費電力を測定するが,今までの通信試験で使用し
た試験機ではモジュール単体の消費電力の測定は困難である.そこで,電力測定回
路を構築し,実際の消費電力を測定する方法を検討する.
Arduino にはマイコンボードのアナログ入力端子から電圧を測定する機能がある.
よって,送受信のコマンドをモジュールに転送するものとは別のArduinoを用意し,
それを電圧計として機能させ,そこから消費電力を計算して求めた.電圧測定用の
Arduino のプログラムを図 6.1に示す.
unsigned long tms = 2; //測定間隔を設定(ms)
char pr[48];
void setup() {
Serial.begin(19200);
}
void loop() {
static unsigned long tm = millis();
sprintf(pr, "A0=%4d A1=%4d", analogRead(A0), analogRead(A1));
Serial.println(pr);
//Serial.print(analogRead(A0)); //モジュールの電源電圧
//Serial.print(analogRead(A1)); //モジュールの入力電圧
while (tm + tms > millis());
tm = tm + tms;
}
図 6.1 電圧測定のプログラム
図 6.1のプログラムの概要を説明する.このプログラムは設定した測定間隔ごと
に 2つの Arduino のアナログ入力端子 A0,A1から電圧値を0~1023の数値(10bitの
分解能)で読み取り書き出すものである.ここで,電圧測定時の Arduino の入力可
能な電圧の範囲は0~5Vなので,読み取った数値を𝑉0,元の電圧値を𝑉1とすると,
![Page 28: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/28.jpg)
27
V1 =5
1024𝑉0[𝑉] (6.1)
より,元の電圧値を求めることができる.
この電圧測定用の Arduino を利用した電力測定回路を図 6.2に示す.
図 6.2 電力測定回路の構成
図 6.1 の電力測定回路の電圧測定用の Arduino はアナログ入力端子 A0,A1 から
モジュールの電源電圧𝑉𝐷とモジュールへの入力電圧𝑉𝐶𝐶をそれぞれ読み取るように
なっている.そして,測定した電圧値から外付け抵抗Rにかかる電流Iを求めると,
I =𝑉𝐷−𝑉𝐶𝐶
𝑅 (6.2)
となる.よってモジュールの消費電力Wは,
W = 𝑉𝐶𝐶𝐼 =𝑉𝐶𝐶(𝑉𝐷−𝑉𝐶𝐶)
𝑅 (6.3)
より求められる.
実際にモジュールがデータを送信している時の消費電力を測定した結果を表 6.1
に,実際の消費電力の測定データを一部抜粋したものを図 6.3にそれぞれ示す.こ
のとき,送信プログラムは性能評価時のものと同じものを採用し,モジュールの送
信間隔を0.2 s,電圧測定の間隔を2 ms,任意で設定できる外部抵抗Rを10 Ω,電源
電圧𝑉𝐷を3 Vとした.
![Page 29: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/29.jpg)
28
表 6.1 実際のモジュールの消費電力
最大電力
𝑊max [mW]
最小電力
𝑊min [mW]
平均電力
𝑊ave [mW]
送信時の電力
𝑊trans [mW]
スタンバイ時の電力
𝑊𝑠tan [mW]
127.790 23.675 100.515 127.209 81.676
図 6.3 実際の消費電力(一部抜粋)
この結果から,送信したときに消費電力が大きくなるのがわかる.また,送信時
の消費電流は44.21 mAであり,公表値が40 mAなので,この測定方法はほぼ正しい
値を測定できていると考える.
しかし,送信を行っていないスタンバイ状態のときでも送信時の約 2/3 倍とかな
りの消費電力が発生してしまっており,これだと本研究室が提案する省電力化の方
法を採用しても,あまり効果は望めないと考える.この対処法として,モジュール
をスタンバイ時にスリープ状態にするという方法がある.IM920 には指定のコマン
ドを入力することでモジュールをスリープ状態に移行することができる機能を有
している.このスリープ状態の消費電流は公表値で5μAとされており,現在のスタ
ンバイ時の消費電流は26.855 mAなので,これを採用すればかなりのスタンバイ時
の省電力化が見込めるのではないかと考える.
![Page 30: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/30.jpg)
29
まとめ 第7章
測定データの変位量に基づく省電力化の方法としてデータ適応通信を提案した
が,いつでもデータ適応が良いとは言えず,信号源の性質や求められるニーズがど
のようなものであればデータ適応が使えるか検討する必要があると考える.
また,実際に既存の IoT 無線モジュールを使用して通信試験を行った結果,
IM315TRX は見通しが良い状態で25 mまでしか通信が行えないことが確認でき,
IM920 では見通しが悪く,受信機が送信機を設置した建物から死角になると近距離
でも PER が低下することが確認できた.これらの結果から,今回の試験で使用し
たモジュールはあまり長距離での安定した通信が適さないように見受けられるが,
これは送信機や受信機の設置位置に注意することである程度は改善できると考え
る.また,実際に消費電力を測定すると通信を行っていないスタンバイ状態でも電
力消費が発生することが確認できた.これはモジュールのスリープコマンドにより
電力消費量を抑えられると考える.
今後の課題として,IoT無線試験機全体の消費電力の測定評価,スリープコマン
ドを導入したときの無線性能,消費電力の測定評価,本研究室が提案する測定デー
タに適応した IoT無線デバイスの省電力化の方法を実際にArduinoプログラムで構
築し,試験機に導入したときの無線性能,消費電力の測定評価などが挙げられる.
![Page 31: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/31.jpg)
30
謝辞
本研究の実施に当たり,日ごろから親身になって御指導,御助言を賜った吉澤真
吾准教授,谷本洋教授に深く感謝いたします.また,研究を進めていく中で助言を
いただいた集積システム研究室の大学院生,同期生の皆様に心から感謝いたします.
![Page 32: IoT 無線デバイスの省電力化 - islab.elec.kitami ...islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H29(2017)/2017Bachelor... · を18 時間ごとに制御したデータも検証する.](https://reader031.vdocuments.pub/reader031/viewer/2022040410/5ece3cd9a160d21f083aeac5/html5/thumbnails/32.jpg)
31
参考文献
[1] 総務省,”平成 29年版情報通信白書,” July. 2017
[2] 川野 茉莉子,”期待が集まるスマート農業の新展開,” 経営センサー, Mar. 2016
[3] 久保 祐樹, 柳原 健太郎, 野崎 正典,” 無線センサネットワークの省電力化技
術,” OKIテクニカルレビュー,第 214号,Vol. 76 No. 1, Apr. 2009
[4] JETRO/IPA New York,” 米国における IoT(モノのインターネット)に関する取
り組みの現状,” Aug. 2015
[5] 望月 伸晃, 勝田 肇, 藤野 洋輔, 赤羽 和徳, 長岡 秀樹, 村尾 貴史, 米坂 真
司,”モノ向け利用を加速する広域無線アクセスへの取り組み,” NTT 技術ジャーナ
ル, Jan. 2017
[6] 大友 功, 小園 茂, 熊澤 弘之,”ワイヤレス通信工学(改訂版),” コロナ社,
Mar. 2014
[7] 高本 孝頼,”みんなの Arduino 入門,” リックテレコム, Feb. 2014
[8] インタープラン株式会社,”安定通信のために,RSSI 値と入力電力,” Rev. 1.0,
Oct. 2017.