isfj最終発表 1
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非正規雇用から正規雇用への移行および定着に向けての支援策
~入職経路に着目して~
樋口美雄研究会
平泉駿 長谷川明広 水木茉那 廉 ボミ
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不本意型非正規雇用
• 非正規雇用として働く者の中でも
「正社員として働く会社がなかったから」 という理由で働いている者
平成15年:14.0% 平成 19年:18.9% 平成 22年:22.5%
出典 厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」
年々増加している!!
問題意識
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非正規雇用の課題①雇用調整の対象となりやすい ⇒雇用が不安定
②低賃金で、年齢・勤続による賃金上昇も少ない ⇒経済的自立が困難
③能力開発機会が不足 ⇒職業キャリアの形成が十分でない
問題意識
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人数(万人) 割合(%)
全体 341 19.2
15 ~ 24 歳 39 17.8
25 ~ 34 歳 84 30.3
35 ~ 44 歳 72 19.6
45 ~ 54 歳 63 18.5
55 ~ 64 歳 64 16.6
65 歳以上 19 10.2
厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」より筆者作成
若者の不本意型非正規雇用問題意識
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若者の雇用問題
学校から企業等への移行に困難を抱えている
正社員としてではなくフリーターとして労働市場に輩出される
問題意識
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初職が与える影響勇上 和史 (2009 ) 「雇用形態の多様化と転職」
問題意識
直前の雇用形態の経験
最終学校卒業後の初職の経験
その後の雇用形態6
問題意識初職が与える影響
直前の雇用形態が非正規雇用 ⇒その後、正規雇用になることが困難
直前の雇用形態
初職が正規雇用 ⇒その後、正規雇用への移行率が高い
初職が非正規雇用 ⇒その後の転職において正規雇用への転換が困難
初職の経験
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男女、初職就業時期別「非正規の職員・従業員として初職に就いた者」の割合
総務省統計局「平成24年 就業基本構造調査」より引用
問題意識
年々増える初職非正規雇用者
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若者の雇用問題を解決するには?
① 学卒就職が失敗することがないようにどのような手立てを講じるか
② 非正規雇用者となった若者をどのように正社員に移行させるか
我々はこの2点のうち、②に注目する
問題意識
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②に着目する理由
荒木宏子・安田宏樹 (2011)
「大学生の正社員内定要因に関する経済分析」
大学の偏差値や個人の活動 (アルバイト、部活、セミナー参加など )は正社員の内定に有意に影
響
問題意識
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個人属性が強く影響している就職段階を取り扱うよりも
非正規→正規の転換を妨げる要因を分析し、包括的な支援策を提言するほうが有効
問題意識
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②に着目する理由
現在の非正規雇用から正規雇用への移行状況
男性:約38%女性:約18%
男女間で非正規雇用から正規雇用への移行には大きな差がある
男女共に、派遣社員、契約社員からの正規雇用への移行率が高い
平成24年度 就業構造基本調査 より筆者作成
現状分析
過去5年間の非正規雇用から正規雇用への移行率
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フリーターから正社員への転職状況
厚生労働省 「若者雇用関連データ」 より引用
・フリーター期間が半年以内の場合 男性で約7割、女性で約6割
・フリーター期間が3年を越える場合 男性で約6割、女性で約4割
フリーター期間が長いと正社員になることが難しくなると言える
現状分析
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現在の日本の支援策
① わかものハローワーク、わかもの支援コーナー、わかもの支援窓口
・全国各地の求人情報(仕事情報・企業情報)の提供
・仕事探しに関する相談
・担当者制による個別支援
・就職後のフォロー
現状分析
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現状の日本の支援策② ジョブカフェ 都道府県が主体的に設置する、若者の就職支援をワンストップで行う施設
現在、 46の都道府県が設置
・各地域の特色を活かして 就職セミナーや職場体験
カウンセリングや職業相談
職業紹介
保護者向けのセミナー
を実施
現状分析
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現状の日本の支援策③ トライアル雇用働いた経験が少ないことから、期間の定めのない雇用(常用雇用)での就職に不安のある方などが、常用雇用への移行を前提として、原則3カ月間その企業で試行雇用として働いてみる制度
・トライアル雇用が終わったあとは、約8割の人が常用雇用に移行
・「トライアル雇用」の対象者
現状分析
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入職経路からみたハローワークと民間人材サービス
厚生労働省 雇用動向調査 (2010 )より引用
現状分析
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ハローワークと民間職業紹介所の違い
現状分析
出典:平成 26年 9月 厚生労働省 職業安定局「公共職業安定所 (ハローワーク )の主な取組と実績」
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25.6%
8.6%65.8%
仕組みも理解しているし、実際に利用しようと思っている
仕組みは理解しているが、特に利用しようと思わない
仕組みや内容を知らなかった
ハローワークの認知度は低い
出典:マイナビアンケート 2013年卒第 8回「 2013年卒学生の現状調査」より筆者作成
現状分析
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入職経路に注目する理由・非正規から正規への移行を促すことだけではない
⇒移行後の移行+定着
を促すことを論文の主旨としている
・マッチングが上手く行かない場合
⇒正規への移行後、再び非正規に逆戻りすることも想定される。
マッチングを高める=転職の精度を高める
現状分析
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本論文のオリジナリティ・李 青雅 (2011)
「非正規雇用から正社員への転換は人材の組織定着を促したのか」
①内部転換正社員の転換後の定着度・仕事満足度は
外部転換よりも有意に高いことを示した
②仕事満足度は定着度に有意な影響を与えている。
⇒外部転換に情報の非対称性の存在が示唆される
現状分析
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・ミスマッチを解決するために、 情報の仲介役である HWなどの入職経路にアプローチ
⇒外部転換社員にとって、より良い転職の支援 満足度・定着度が高い
現状分析
本論文のオリジナリティ
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非正規雇用から正規雇用への移行
求職方法、求職経路 久米 功一、鶴 光太郎 (2013)
「非正規労働者の雇用転換-正社員化と失業化」
2009 年 1 月から 6 ヶ月毎に計 5 回にわたって(独)経済産業研究所が実施した
「派遣労働者の生活と求職行動に関するアンケート調査」
のデータを用いて分析
先行研究①
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①求職経路・「自らの求職活動を通じて」、「紹介予定派遣を通じて」
⇒自助努力(自らの求職活動を通じて )の重要性
・「職場の上司に推薦されて」、「家族や知人の紹介を通じて」
⇒周囲との人的ネットワークの次の職業機会の創出へのつながり
・民間の人材派遣会社が負に有意
先行研究①
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正社員求職者は、人材派遣会社を介して派遣労働者として働くことを社員へのステップとみなしていない可能性がある
非正規雇用から正規雇用への移行
求職方法、求職経路
②求職方法 「企業のホームページ(パソコン、携帯電話等)を見たり、登録したりしている」
「求人情報専門誌、新聞、チラシ等をチェックしている」
⇒正社員の仕事を得るためには情報収集が重要
・ハローワークや民間の職業紹介機関に「通っている」のではなく、
それらのインターネットを活用して、正社員に転じた人が有意に存在
・非正規雇用から正社員への転換は
⇒オン・ザ・ジョブ・サーチ(仕事を続けながらの職探し)
先行研究①
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機会費用の大きさインターネットでの求職活動<紹介所へ通うこと
非正規雇用から正規雇用への移行
求職方法、求職経路
マッチングと満足度
小林 徹 (2012)
「民営職業紹介のマッチングが転職結果に与える影響」
データ:「ワーキングパーソン調査」
「前職:正規→現職:正規」の個票データを用いて分析
①民営職業紹介による転職者
転職市場で有利であると考えられる高学歴
転職後の収入が高くなるようなマッチング
先行研究②
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分析
・データ
「ワーキングパーソン調査2002、2004、2006、2008、2010、2012」
・対象首都圏 50KM(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)で、正規社員・正規職員、契約社員・嘱託、派遣、パート・アルバイト、業務委託として就業している 18~ 59歳の男女。
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分析
• 方法 プロビット分析、順序ロジット、多項ロジット
• 説明変数 男性ダミー、若年ダミー、配偶者ダミー、学歴ダミー、移行ダミー
職種ダミー (前職と現職の職種が同じなら1 違うなら0 )
業種ダミー (前職と現職の業種が同じなら1 違うなら0 )
転職前の年収、転職前の従業員規模、転職回数
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分析 (1段階目 )・目的 求職経路別にその求職経路を使っている人の属性を把握
・手法 多項ロジット分析
入職経路はハローワークを基準として分析
・被説明変数 ハローワークを基準に、
民間職業紹介を使った人:1 インターネットを使った人:2、その他:3 29
推計結果 (民間職業紹介所 )
***:1%水準で有意**: 5 %水準で有意*: 10 %水準で有意
説明変数 係数 Z値
男性ダミー -0.42 -1.76*
若年ダミー 0.71 2.95***
学歴ダミー 1.02 4.28***
前職の従業員規模 0.09 2.67***
転職前年収 0.003 4.98***
2004 年ダミー -2.33 -2.26**
2006 年ダミー -0.72 -1.72*
2008 年ダミー -1.18 -2.15**
説明変数はスペースの都合上一部のみ掲載 30
分析結果
○有意 ・若年ダミー (+ ) ・学歴ダミー (+ )
・前職の従業員規模 ・転職前年収
○属性
・若者 (34歳以下 ) ・高学歴
・前職の従業員規模が大きい ・転職前の年収が多い
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推計結果 (インターネット )
***:1%水準で有意**: 5 %水準で有意*: 10 %水準で有意
説明変数 係数 Z値
若年ダミー 0.98 7.93***
初職正規ダミー -0.44 -3.61***
転職前年収 0.001 3.32***
2002 年ダミー -1.43 -5.24***
2004 年ダミー -1.18 -4.59***
2006 年ダミー 0.78 -4.18***
2008 年ダミー 0.87 -4.36***
説明変数はスペースの都合上一部のみ掲載 32
分析結果
○有意 ・若年ダミー (+ ) ・初職ダミー (- )
・転職前年収
○属性 ・若者 (34歳以下 ) ・高学歴 ・初職が非正規
・前職の従業員規模が大きい ・転職前の年収が多い
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分析 (2段階目 )
・目的非正規雇用から正規雇用になる人の特徴、及び求職経路別の移行状況の把握
・手法 プロビット分析
入職経路はハローワークを基準として分析
・被説明変数 非正規雇用者の正規雇用への移行確率
(非正規→正規: 1,非正規→非正規: 0)34
推計結果 (移行 )
説明変数はスペースの都合上一部のみ掲載
***:1%水準で有意**: 5 %水準で有意*: 10 %水準で有意
説明変数 係数 z 値男性ダミー 0.52 16.66***
配偶者ダミー -0.09 -2.81***
学歴ダミー 0.20 5.59***
職種ダミー -0.11 -3.16***
前職規模 0.008 1.82*
民間職業紹介所ダミー 0.49 3.64***
インターネットダミー -0.58 -8.92***
その他 -0.55 -11.46***
転職回数 -0.06 -7.51***
2002 年ダミー 0.69 12.29***
2004 年ダミー 0.41 8.23***
2006 年ダミー 0.48 9.72***
2008 年ダミー 0.33 6.44***35
分析結果○非正規から正規になる人の特徴 ・男性 ・配偶者なし ・高学歴 ・前職と現職の職種が違う
・転職回数が多い人ほど、移行できない
・前職の従業員規模が大きい
○入職経路 ・ハローワークを基準に分析
民間が+、インターネットが-に有意
民間>ハローワーク、ハローワーク>インターネット36
分析 (3段階目 )
・目的非正規雇用から正規雇用になった人の、正規職としての満足度の把握 (入職経路別に )
・手法 順序ロジット分析
入職経路はハローワークを基準として分析
・被説明変数現在 (現職 )の仕事満足度 (全く良くない1、良くない2、どちらでもない3、良い4、とても良い5 )
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推計結果 (満足度 )
***:1%水準で有意**: 5 %水準で有意*: 10 %水準で有意
説明変数 係数 Z値
インターネットダミー
-0.21 -1.84*
その他 -0.28 -3.67***
男性ダミー 0.37 6.34***
若年ダミー -0.196 -3.69***
配偶者ダミー -0.43 -8.69***
学歴ダミー -0.19 -3.61***
前職の従業員規模 0.011 1.65*
2004 年ダミー -1.15 -14.41**
2006 年ダミー -1.02 -14.59***
2008 年ダミー -1.13 -15.81***説明変数はスペースの都合上一部のみ掲載
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分析結果○入職経路 ハローワークを基準に分析
民間は有意でない
インターネットが-に有意
○特徴 男性ダミー (+ ) 若年ダミー (ー ) 配偶者ダミー(ー )
学歴ダミー (- ) 前職規模が大きい39
入職経路別分析結果のまとめ①
○移行率 (ハローワーク基準 )
民間職業紹介所>ハローワーク
ハローワーク>インターネット
○満足度 (ハローワーク基準 )
民間職業紹介所=ハローワーク
ハローワーク>インターネット
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入職経路別分析結果のまとめ②
○属性
・民間職業紹介所とインターネットを利用している人の属性は似ている
・若者 (34歳以下 ) ・高学歴
・前職の従業員規模が大きい ・転職前の年収が多い
4つの項目が同じく有意
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政策提言の方向性
①ハローワークの利用推進策②ハローワークの組織改革案
の2つ
政策提言
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就学段階でのハローワークの
意識付け
【背景】 若者のハローワークのサービスに対する認知度が低い
【具体的提案】 中学・高校・大学でのハローワークによる講演会の開催
政策提言利用推進策
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転職の入口としての民間転職サイトの活用
【背景】 ①若者の民間のインターネット転職サイトの利用者は有意に存在
⇒転職のきっかけとしての役割を看過できない
②ハローワークにもインターネットサービスがある
【具体的提案】 民間の転職サイトと提携し、 民間のサイト内にハローワークの広告ページを設置する
政策提言利用推進策
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適切な入職経路を選別する機関の設置
【背景】 ①各人材サービスによって、利用者属性が異なる
②事業内容 (提供できるサービスの質 )も異なる
【結果】 ①求職者のサーチコストの削減できる
②人材サービス従事者の業務の無駄の省くことができる
政策提言組織改革案
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選別機関の設置
< イメージ図 >
求職者 選別機関
ハローワーク
民間職業紹介所
情報共有
※ 赤字が政策提言の該当箇所
政策提言組織改革案
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ハローワーク職員の専門化・増員
【背景】 ①ハローワークの正規職員の減少・サービスニーズの多様化
⇒対人的なサービスには専門的な知識が必要
②諸外国に比べて、労働者 1人当たりの職員数が少ない
( 欧州主要国の 4分の 1~ 10分の 1)
政策提言組織改革案
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参考文献• 平成24年 就業構造基本調査 概要
HTTP://WWW.STAT.GO.JP/DATA/SHUGYOU/2012/PDF/KGAIYOU.PDF
• 厚生労働省 「非正規雇用の現状と課題」
HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/STF/SEISAKUNITSUITE/BUNYA/0000046231.HTML
• 厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」
HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/TOUKEI/LIST/5-22.HTML
• わかものハローワーク
HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/SEISAKUNITSUITE/BUNYA/KOYOU_ROUDOU/KOYOU/JAKUNEN/WAKAMONO/DL/WAKAMONOSHIEN.PDF
• ジョブカフェ
HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/BUNYA/KOYOU/JAKUNENSHA/JOBCAFE.HTML
• トライアル雇用
HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/SEISAKUNITSUITE/BUNYA/KOYOU_ROUDOU/KOYOU/KYUFUKIN/DL/TRIAL_KOYOU_LEAFLET03.PDF
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参考文献• 雇用動向調査
HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/TOUKEI/LIST/9-23-1.HTML
• 厚生労働省 「若者関連雇用データ」
HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/TOPICS/2010/01/TP0127-2/12.HTML
• 玄田 有史 (2007)「前職が非正社員だった離職者の正社員への移行について」
• 久米 功一 , 鶴 光太郎 (2013)「非正規労働者の雇用転換-正社員化と失業化」
• 四方 理人 (2011)「非正規雇用は「行き止まり」か?」
• 勇上 和史 (2009)「雇用形態の多様化と転職」
• 小林 徹 (2012)「民営職業紹介のマッチングが転職結果に与える影響」
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ご清聴ありがとうございました
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説明変数一覧
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基本統計量
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