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首都:ハノイ ベトナム KAIZEN調JICA13 9 12 4500JICAJICA19955 200220 05 20008 M&A2013年に完成したKAIZEN吉田スクールの校舎(ホーチ ミン)。地上7階、地下1階建てのビルで約2, 000人が 学ぶ。校名の“KAIZEN (改善) ”には、ベトナムの人の働 き方と社会を改善したいとの思いが込められている。 在学中はあいさつ、お礼、お詫び、礼儀と節 度、ミスを認めて改善することなど、日本的な 習慣を身につける。 3 20186 29 14 2013年、ベトナムのエスハイ社は日本で働きたい若者に日本語や商習慣を教える校舎を新設した。 ビジネスを通じた日本とベトナムの交流促進のため、即戦力となる人材を多く育てている。 日越 となる 人材 日本 ホーチミン工科大学機械工学 部を卒 業 後、 1995 年に来日。 2000 年、東京農工大学大学院 機械工学研究科修士課程修 了。人材育成事業のほかに、日 本企業とベトナムをつなぐコンサ ルタント会社を経営する。 エスハイ代表取締役 レ・ロン・ソン さん スクールの卒業生が働く日本企業は約600社を数える。明るく勤勉な若者たちは、日本人からも温かく迎えられている。 ソンさん自身も授業を 行う。「30歳までは実 社会について学ぶ期 間。そこで多くを吸収 することで将 来が 変 わる」と、学ぶことの 大切さを訴える。 エスハイ社のKAIZEN吉田スクールで学ぶのは、高校や大 学を卒業した若者たち。日本で経験を積み、将来はベトナ ムの発展に貢献したいと目を輝かせる。 ベトナム産業人材育成事業 2011年(海外投融資 案件名 *民間企業が途上国で行う事業を支援する融資制度。エスハイ社への支援は、まずJICAからベトナムのアジア・コマーシャル・ジョイント・ストック銀行(ACB)に対して 融資が行われ、同銀行からエスハイ社に転貸が行われた。 5S (整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)、ホウレ ンソウ(報告、連絡、相談)などを学ぶ授業も ある。 1 5Sメコン地域 次なる 成長に向けて 特集 ホーチミン 文⃝光石達哉 10 July 2019 11 July 2019

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Page 1: JICA ACB1年3 9月 に 念 願 の校舎が完成した。現 在 は 、 ベ ト ナ ム 各 地 の 大 学 や 短 大 な ど 12校 に 分 校 を 開 設 し て 、 約 4 5

首都:ハノイ

ベトナム

を名誉校長に迎えて、校名を

「KAIZEN吉田スクール」と

した。生徒は順調に増え続けて、

そのたびに教室の場所を転々とし

ていたことから自前の校舎を建て

るのが夢となった。吉田さんから

「日本とベトナムのためにいいこ

とをやっているのだから、ちゃん

としたサポートを受けるべきだ」

とJICAを紹介され、その融

資を受けることで13年9月に念願

の校舎が完成した。

 現在は、ベトナム各地の大学や

短大など12校に分校を開設して、

約4500人の若者が学んでいる。

授業は通常のコースのほかに、日

本で活躍できる技術者や管理職を

目指す人を対象にしたハイレベル

のコースも設立されている。

「JICAの融資のおかげで、

私たちの活動はベトナムでも日本

でもいっそう注目されるようにな

りました。帰国した生徒には就職

先の斡旋を行い、ベトナム進出を

考える日本企業には事業展開のサ

ポートや、求めている人材の紹介

もしています」

 卒業生の中には、すでに日本か

ら帰ってきて企業の管理職や起業

家として活躍する人もいる。優秀

な人材を育てて日本へ送るという

ソンさんの思いは、日本とベトナ

ムとの人材交流を活発にし、おた

がいの国の発展を促す好循環を生

み出している。

だが、エスハイ社による渡航前の

人材育成は実習生が十分に活躍で

きるよう、考えられている。

JICAの支援で

念願の専用校舎が完成

 ソンさんは1995年から5

年間日本に留学して、機械工学を

学んだ。ベトナムでもインフラや

サービス、産業が日本のように発

展してほしいと願うようになり、

ベトナムの若者が日本に行けるよ

うなつながりを作りたい、と考え

た。そこで注目したのが外国人技

能実習制度だったが、当時ソンさ

んの目には、ベトナム人の多くは

働いて稼ぐことだけを考えて、日

本に馴染めていないように映った。

「日本語が不自由で、仕事を学ぼ

うという意識も弱い。文化に溶け

込めず、人間関係もうまくいかな

い。帰国までがまんして働いたり、

途中で逃げ出してしまう人もいた。

このままでは制度がもったいない

と感じました」

 2002年、ソンさんは日本

について学ぶ教室をホーチミンに

開いた。当初、生徒は20人だった

が口コミで評判が広まり、05年に

は200人に増加。08年には事

業に賛同して奨学金などを支援し

てくれた日本人の吉よし

田だ

允まさ

昭あき

さん

(M&A仲介業を手掛けるレコフ

社創業者で、一般社団法人日本ベ

トナム経済フォーラム代表理事)

2013年に完成したKAIZEN吉田スクールの校舎(ホーチミン)。地上7階、地下1階建てのビルで約2,000人が学ぶ。校名の“KAIZEN(改善)”には、ベトナムの人の働き方と社会を改善したいとの思いが込められている。

在学中はあいさつ、お礼、お詫び、礼儀と節度、ミスを認めて改善することなど、日本的な習慣を身につける。

受け入れ企業からも

評価が高い人材を育成

 日本には外国人技能実習制度が

ある。これは日本の企業が途上国

の若者を受け入れ、3年間の実習

を通じて学んだ技術や知識を帰国

後に母国の経済発展に生かしても

らう制度だ。近年、企業のニーズ

の高まりもあって、2018年

6月末の時点で各国からの実習生

は約29万人に上り、そのうちベト

ナムからが約14万人と最多を占め

ている(法務省発表)。

2013年、ベトナムのエスハイ社は日本で働きたい若者に日本語や商習慣を教える校舎を新設した。ビジネスを通じた日本とベトナムの交流促進のため、即戦力となる人材を多く育てている。

日越の架け橋となる人材を日本へホーチミン工科大学機械工学

部を卒業後、1995年に来日。2000年、東京農工大学大学院機械工学研究科修士課程修了。人材育成事業のほかに、日本企業とベトナムをつなぐコンサルタント会社を経営する。

エスハイ代表取締役レ・ロン・ソンさん

スクールの卒業生が働く日本企業は約600社を数える。明るく勤勉な若者たちは、日本人からも温かく迎えられている。

ソンさん自身も授業を行う。「30歳までは実社会について学ぶ期間。そこで多くを吸収することで将来が変わる」と、学ぶことの大切さを訴える。

エスハイ社のKAIZEN吉田スクールで学ぶのは、高校や大学を卒業した若者たち。日本で経験を積み、将来はベトナムの発展に貢献したいと目を輝かせる。

ベトナム産業人材育成事業 2011年(海外投融資*)案件名

*民間企業が途上国で行う事業を支援する融資制度。エスハイ社への支援は、まずJICAからベトナムのアジア・コマーシャル・ジョイント・ストック銀行(ACB)に対して融資が行われ、同銀行からエスハイ社に転貸が行われた。

5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)などを学ぶ授業もある。

 実習生を志望するベトナムの若

者に渡航前の約1年間、日本語を

はじめ「あいさつ」や「おもてな

し」といった日本の文化、商習慣

やマナーを教える学校を運営して

いるのが、ホーチミンに本社を置

く「エスハイ」だ。代表取締役社

長のレ・ロン・ソンさんは「私た

ちの生徒は、あいさつをしっかり

するし職場でも明るい。5S、ホ

ウレンソウもきちんとできている

と、受け入れ先の企業から喜ばれ

ています」と胸を張る。課題が指

摘されることもある技能実習制度

メコン地域次なる成長に向けて

特集

ホーチミン

産業

人材育成

文⃝光石達哉

10July 201911 July 2019