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J a p a n A s s o c i a t i o n o f D i a b e t e s I n f o r m a t i c s | 日本糖尿病情報学会誌 Vol.11 NPO 法人日本糖尿病情報学会(JADI) 糖尿病の疾病管理と ICT の活用 2013 年 8 月 23 日発行 通巻 11 号 Journal of the Japan Association of Diabetes Informatics(JJADI)

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日本糖尿病情報学会誌 Vol.11

NPO法人日本糖尿病情報学会(JADI)

糖尿病の疾病管理とICTの活用

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2013年8月23日発行 通巻11号

Journal of the Japan Association of Diabetes Informatics(JJADI)

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日本糖尿病情報学会誌 Vol.11

JJADI Vol.11 2013—5

要 約糖尿病患者における食習慣を評価するための自

己記入式タブレット PC を活用した食物摂取頻度調査(FFQ:カウント JOY)を開発し,その妥当性を検討するのが本研究の目的である.FFQ:カウント JOY は,6 つの料理グループを食事形態別に尋ねることで,4 つの栄養素の 1 日および食事毎の栄養摂取量を即時に算出するシステムである.FFQ:カウント JOY の妥当性を 3 日間の秤量食事記録をゴールド・スタンダードとして,32 名の学生において比較検討した.FFQ:カウント JOY と 3 日間の秤量食事記録の炭水化物量の相対差は,1 日,朝食,昼食,夕食でそれぞれ6%,−5%,8%,14%であった.両者の相関は,1 日(0.53,p<0.001)であった.朝食(0.52),昼食(0.45)に比べて,夕食(0.67)の相関が高

かった.この FFQ:カウント JOY は糖尿病患者において,炭水化物摂取量を決めるのによい妥当性があることを示している.�

諸 言

血糖値のコントロールは,糖尿病管理の主要な目標である.食事に含まれる炭水化物は食後の血糖値の主要な決定要因であり,食後の高血糖予防として,食事中の炭水化物を適正に摂取するためにカーボカウントによる栄養介入の重要性は,米国糖尿病協会の栄養勧告でも示されている�1).わが国の糖尿病食事療法においては長年,エネルギー重視の食事管理が進められてきたが,欧米食に比べて炭水化物エネルギー比が高い(日本:男56.1%/女 57.8% vs 米国:男 47.9%/女 50.5%)こと�2),日本人が摂取している全炭水化物量の 6割は,主食の穀類で占められている�3)ことからも,毎食の炭水化物摂取量に注目する意義は大き

キーワード:FFQ,炭水化物,食事形態,妥当性

原著論文タブレット端末を活用した糖尿病患者のための食物頻度調査法の開発と妥当性の検討

佐野喜子 1, 2),野川春夫 2),坂根直樹 1)1)(独)国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター予防医学研究室,

2)順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科

受付日:平成 24年 6月 5日 採択日:平成 24年 6月 20 日著者連絡先:坂根直樹(独)国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター予防医学研究室〒 612─8555 京都府京都市伏見区深草向畑 1─1TEL:075─641─9161 FAX:075─645─2781E─mail:[email protected]

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い.ところが,食事療法のアセスメントとして実施されている食事調査では,栄養素の 1 日平均摂取量を示すものが多い�4─6).糖尿病の栄養教育を目的に開発された食物頻度調査(FFQ)�7)もあるが,研究用に用いられる比較的精度が高い調査法でも,質問肢が多く,聞き取りや分析に時間を要する�8)ことが課題となっている.2010 年「iPad

(米:アップル社)」の登場により,タブレット情報端末の活用領域は,医療現場においても期待が増している.携帯可能な平板型の情報端末は,マウスやキーボードで操作するパソコンとは異なり,画面を直接触って操作する,手書き入力など直感的に操作できるので,電子機器に不慣れな高齢者にも扱いやすいのが特徴である.そこでわれわれは,このタブレット端末の利点を活用し,食後高血糖予防のために毎食の炭水化物量が簡易に算出できる糖尿病患者のための食物頻度調査法を開発し,その妥当性について検討したので報告する.

方 法

1.�タブレット端末を活用した糖尿病患者のための食物頻度調査法(FFQ:カウントJOY)の開発

糖尿病患者のための食物頻度調査法(以下FFQ:カウント JOY)は,京都医療センター糖尿病センターで使用している半定量式食物頻度調査票(semiquantitative�type:21 食品グループの食品に対して,1 回の摂取量と 1 週間の摂取頻度をカテゴリーから選択させる)をベースとしている.「毎食の炭水化物量」と「摂取エネルギー」「主要な栄養素」を食習慣の評価として算出する糖尿病・食後高血糖予防を目的とした簡易な食事調査法である.図 1 にシステムの流れを示す.

1)パイロット調査本 研 究 に 先 立 ち, パ イ ロ ッ ト 調 査 と し て

FFQ:カウント JOY と同内容の食物頻度調査を

紙面で実施した.調査対象者は,本研究の協力者とは別途とし,調査終了後に「食事形態」に沿って食事を判定する点についての不都合を聞き取った.また,紙面の質問紙にはタブレット端末のように不要な画面を表示しない機能を組み入れることができないので,回答項目について管理栄養士がサポートを行った.

2)データベースの作成1.カテゴリー分類(表 1)食後血糖に影響する炭水化物の摂取寄与率が高

く,入手が容易で摂食機会が多い食材として主食4 種(ご飯・パン・麺・シリアル),果物,乳製品,菓子,アルコール,一部の野菜,豆,調味料に注目し,それらが含まれる料理を「食事形態別料理カテゴリー(内食・中食・外食)」に分類した(表1).それらを「朝・昼・夕の食事において 1 回に食べる量(以下,ポーションサイズとする)を問う」形式とすることで,通常の食物頻度調査における「100 またはそれ以上の食品個々について,1日摂取量(頻度と量)を尋ねる」煩雑さを軽減した.炭水化物寄与率が高い主食量把握の精度を高め,食事内容の誤認軽減のために,タブレット機能を活用し,各所にイラストを用いた.

2.ポーションサイズの ‘ 見える化 ’ポーションサイズは,料理や食品の特性に合わ

せて,表示を調整した.外食では,1.少し残す(75%喫食),2.1 人前,3.大盛り(120%喫食),菓子では,1.少なめ,2.1 個 or 小袋 or�2 枚,3.たっぷり or レギュラーサイズ,副菜では,1.少なめ,2.小鉢一人前(イラスト表示),3.たっぷり,とした.[普通]という選択肢の代わりに,基準とする量を「2」に具体的に設定した.

3.操作仕様① PC 画面で調査予定者のリスト(ID 番号,氏

名,年齢,身長,体重,BMI)を作成し,タブレット端末に同期しておく.② 1 週間の朝・昼・夕の各食事について食事形態「家で作って食べる(内食)・買って食べる(中食)・外食する・食べない」

原著論文

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日本糖尿病情報学会誌 Vol.11

JJADI Vol.11 2013—15

要 約目 的:ポーションサイズはエネルギー摂取量を決定する重要な因子である.肥満者においてポーションコントロールプレート(ヘルシープレート ®)を用いたグループ指導の有効性と安全性について予備調査を行った.方 法:この研究のデザインは炭水化物量を調整するポーションサイズコントロールを用いた 3カ月間の介入研究の有効性と安全性を評価する前後比較試験である.10名の肥満者がリクルートされた.身体組成,血液検査,POMS短縮版を含む心理学的検査が試験前後で測定された.結 果:継続率は 100%であった.体重はベースラインに比べ,中央値 8.9kg(3.5kg,6.8kg,p = 0.005)の有意な減少が認められた.拡張期血圧,LDL─コレステロール値など多くのデータも改善した.炭水化物摂取量は有意に減少した

が,たんぱく質と脂質の摂取量に有意な変化はなかった.POMSのサブスケールである緊張および不安は改善したが,他のサブスケールに有意な変化はなかった.有害事象は報告されていない.結 論:以上の成績は,ポーションコントロールプレートが肥満者の減量を安全に促進することを示している.ただし,ランダム化比較試験を用いた検証が必要である.

Ⅰ.はじめに

メタボリックシンドローム(以下,MS)は腹部(内臓脂肪型)肥満とインスリン抵抗性を背景に,高血圧,高血糖,脂質代謝異常などの危険因子が重なった冠動脈疾患(虚血性心疾患)の高リスク病態であり,その構成因子が多いほど心血管イベントのリスクも増大する 1).日本では 2005 年にMS 診断基準 2)が発表され,2008 年 4 月には MSに基づく特定健診・特定保健指導も始まった.

1960 年代,栄養学者アンセル・ケイは動物性

キーワード:肥満,食事療法,炭水化物,ポーションコントロール,減量

原著論文ヘルシープレート ® を用いた減量プログラムの効果と安全性:予備調査

山内惠子 1),坂根直樹 2),山内崇裕 3),片山知美 4)1)名古屋学芸大学 管理栄養学部,

2)(独)国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター予防医学研究室,3)蒲郡市民病院 看護局,4)宝塚大学看護学部

受付日:平成 24年 8月 31 日 採択日:平成 24年 10 月 26 日著者連絡先:山内惠子名古屋学芸大学管理栄養学部〒 470─0196 愛知県日進市岩崎町竹ノ山 57TEL:0561─57─1111(代)E─mail:[email protected]

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日本糖尿病情報学会誌 Vol.11

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脂肪やコレステロールの取りすぎが心臓血管病死の原因であると主張し,低脂肪・低コレステロール・高炭水化物食の食事療法が世界中に広がった.しかし,この 10〜15 年の報告によると,脂肪の摂取量を減らしたが,肥満や糖尿病はほとんど減らず,肥満や糖尿病は増加の一途をたどっている 3).

したがって,栄養士が行う肥満やメタボの改善教室などのダイエット指導食では,厳しいエネルギー制限や,脂肪の過度な制限などから,良質たんぱく質,ミネラル分の潜在的な不足が生じ,十分な減量効果が得られなかったり,リバウンドが問題視されてきた.

わが国の食事療法は糖尿病患者の食品交換表の活用がベースになっている.1965 年の初版では,①適正なカロリー,②糖質量の制限,③糖質,たんぱく質,脂質のバランス,④ビタミンおよびミネラルの適正な補給と記載されている.これが,1969 年の第 2 版になると糖質制限がエネルギー制限に代わり,1 日 100g 以上の糖質摂取の文言が記載された.その後改定を繰りかえし,1993年 5 版では現在の糖質 60%,脂質 20%,たんぱく質 20%という総摂取エネルギーが定着してきたようである.津田は血糖コントロールと血糖値に大きな影響を与える糖質について特別の記載がなくなってしまったことに対し,血糖コントロールが合併症予防に重要であり,食後高血糖に影響するのは,エネルギーではなく糖質であることを明記してよいのではないかと述べている 4).

一方,米国では 1 型糖尿病患者あるいは 2 型糖尿病のインスリン導入の糖尿病患者に対する食事療 法 の 1 つ の 方 法 と し て,DCCT(Diabetes Control and Complications Trial)5)の研究で紹介され,炭水化物の量にインスリン量を合わせるカーボカウント法が広く普及してきた 5).しかし,動物性脂肪や動物性たんぱく質の増加を伴う低炭水化物食が心血管疾患死亡などを増加させることが欧米では報告されている 6).

そこで,欧米ではポーションコントロールプ

レートを用いた介入研究が行われている 7)が,その炭水化物エネルギー比は 10%,12%といった厳しいものである.

日本人は,本来コメを主食とした食習慣があり,極端に主食を抜くような食習慣は不適切であると考える.また,厳しすぎる糖質制限は,たんぱく質の過剰摂取や,それに伴う飽和脂肪酸など,動脈硬化由来の食品群の過剰摂取も予測できる.さらに,日本には,糖尿病患者の食品交換表を活用し,栄養バランスを良好に保つ方法が定着しており,その炭水化物エネルギー比は 55〜60%である.

これらのことから,食品交換表を活用し,なおかつ若干の糖質制限となる「40〜50%の炭水化物エネルギー比」でバランスのとれたカーボコントロールによる食事指導の開発が必要と考えた.さらに,我々は独自に開発したヘルシープレート ®

を活用することで,簡単にカーボコントロールをとりいれることが可能となる減量法(簡単カーボコントロール法)の介入を考案し,その効果について検討したので報告する.

Ⅱ.研究目的

MS の背景にある肥満や 2 型糖尿病の血糖コントロールに,ヘルシープレート ® を用いた減量プログラム「簡単カーボコントロール法」を考案し,その効果と安全性についての予備調査を行うことを目的とした.

Ⅲ.対象および方法

我々は,BMI 25 以上の一般成人の肥満者を対象とした生活習慣改善のための「シェイプアップ教室」に,簡単カーボコントロール法のプログラムを取り入れ,その減量効果と,簡単にできる指導方法の工夫をテーマに介入を行った.

簡単カーボコントロール法とは,食品交換表の単位配分(炭水化物量 55〜60%)を基に,炭水化

原著論文

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日本糖尿病情報学会誌 Vol.11

JJADI Vol.11 2013—29

要 約糖尿病患者の過剰飲酒は身体的・精神的・社会

的に悪影響を及ぼす.そこでアルコール飲料をHV─TV カ メ ラ で 撮 影, 映 像 を After Effects・Premiere で編集し,音声と同調後 MPEG2 で書き出した.通常指導後もγ─GTP≧70IU/l の糖尿病患者 49 名を本媒体で再指導すると,飲酒量・γ─GTP・中性脂肪が有意に減少した.適正飲酒量と過剰飲酒の弊害を明示する HDV 媒体は過剰飲酒の是正に有用と考える.�

はじめに

糖尿病における過剰飲酒は血糖や体重のコントロールを乱すのみでなく,肝機能障害・高血圧・脂質代謝異常などの身体的影響に加えて,家庭内

暴力・自殺・犯罪・休業などの精神的・社会的弊害の大きな原因である.しかし,適量飲酒の効用や過剰飲酒の包括的弊害を明快に示した教育媒体はなく,患者はメディアの誤った情報に振り回されている.したがって,医療機関では適正飲酒に関して患者が陥りやすい飲酒行為を把握した上でわかりやすい正しい情報を提供し,長年の誤った飲酒習慣を是正する必要がある.本研究では適正な飲酒量と過剰飲酒の弊害を理解させるためのHDV 教育媒体を制作し,その短期的効果を検証した.

方法と対象

10 種類のアルコール飲料の適量(2 単位)および,糖質オフビールやピーナッツなどのつまみをHV─TV カメラで撮影した.撮影した動画およびCorelDRAW・Photoshop で 加 工 し た 静 止 画 をAfter�Effects�CS3�Pro で編集し,Premiere�Pro�CS3 に読み込ませ,映像と音声を同調させて,MPEG2(1920×1080)で書き出した.本媒体は各

キーワード:食事指導,HDV 媒体,アルコール飲料,過剰飲酒

臨床ノートPCで制作したデジタルハイビジョン(HDV)映像による適正なアルコール摂取に関する指導の短期的効果

遠藤直子,小坂愛子,植武春美,石橋不可止石橋クリニック

受付日:平成 24年 4月 10 日 採択日:平成 24年 7月 11 日著者連絡先:遠藤直子石橋クリニック〒 738─0033 広島県廿日市市串戸 1─9─41─2TEL:0829─32─5206 FAX:0829─32─7553E─mail:[email protected]

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種アルコールの適量を明示し(図 1─A),適量飲酒やレスベラトロールの効用(抗動脈硬化作用,抗酸化作用,抗がん作用など)(図 1─B)を述べ,長年の過剰飲酒は肝障害(図 1─C)・がん・動脈硬化・高尿酸血症・認知症などの身体的影響だけでなく精神的にも影響を与え,うつ傾向を誘発し自殺の原因となり(図 1─D),また就業困難・犯罪・暴力などの社会的弊害の生じること(図 1─E)を説明している.またフラッシャーを説明し,糖質オフビールでもカロリーやアルコールは含まれることを示し,さらにつまみの過剰摂取による弊害(図 1─F)を啓蒙する内容とした.HDV 教育媒体の映像時間は 12 分,ファイルサイズは 1.6GB

であった.繰り返しの通常の指導にもかかわらずγ─GTP

が 70IU/l 以上の男性糖尿病患者 49 名(年齢;61.4±1.4 歳,BMI;24.7±0.4 kg/m2,HbA1c

(NGSP 値);7.4±0.1%)を対象とする.本媒体を 22 インチ HV モニターで管理栄養士が 1 対 1で供覧し,必要があれば画面を止めて補足説明して,アルコール過剰摂取の弊害およびアルコール適正量を再指導した.本媒体供覧前と 1 カ月後,半 年 後 に 飲 酒 量 を 聞 き 取 り 調 査 し, 体 重・HbA1c・γ─GTP・中性脂肪・尿酸を測定した.

臨床ノート

A B

C D

E F

図 1 HDV教育媒体映像の一部A;各種アルコールの適量,B;レスベラトロールの効用,C;過剰飲酒の身体的影響(肝障害),D;過剰飲酒の精神的影響,E;過剰飲酒の社会的影響,F;つまみの過剰摂取について

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日本糖尿病情報学会誌 Vol.11

JJADI Vol.11 2013—33

要 約伊都・橋本・五條地域で糖尿病の病診連携体制を構築するために 2009 年より伊都医師会,橋本市民病院(当院)および五條市医師会の共催で医師・コメディカルを対象とした勉強会を開催し,メーリングリストにより情報交換を図り,地域連携パスを作成している.伊都医師会では 2002年より電子カルテネット網「ゆめ病院」を構築して,医療情報を共有しているが,2011 年に五條市医師会が参加した機会に,当院の検査データベースと接続して,登録患者の検査結果をかかりつけの診療所で閲覧できるようにした.地域連携パスのアップロードを計画している.2008 年から 2010 年の終診患者のうち安定逆

紹介者の率は 15/78,57/127 および 43/112,初診患者のうち未治療者の率は 29/111,36/83および 39/90 であった.「ゆめ病院」登録を開始している.「ゆめ病院」とリンクして,病診間でこれまでより詳細な診療情報の伝達が可能となり,辺境地域での患者データベース構築と治療標準化が実現することが期待される.�

緒 言

伊都・橋本・五條地域(当地域:図 1)における糖尿病・病診連携の現況を紹介する.和歌山県伊都郡はかつらぎ町,九度山町,高野町の 3 町からなり,果物を中心とした農産地帯で,霊場高野山を有する.橋本市は和歌山県の北東端に位置し,北は大阪府河内長野市,東は奈良県五條市とそれぞれ県境で接する.大阪市の中心部まで,私

キーワード:糖尿病の病診連携体制,地域連携パス,電子カルテネット網,安定終診患者の比率,未治療初診患者の比率

臨床ノート伊都・橋本・五條地域における糖尿病・病診連携の試み―地域医療ネットワーク

「ゆめ病院」とリンクして大星隆司 1),小河健一 2),大萩晋也 3),玉井敏弘 3),

前田至規 3),山田宏治 4)

1)橋本市民病院 代謝内科,2)和歌山県立医科大学附属病院紀北分院 内科,3)伊都医師会,4)五條市医師会

受付日:平成 24 年 4 月 10 日 採択日:平成 25 年 1 月 29 日著者連絡先:大星隆司橋本市民病院 代謝内科〒 648─0005 和歌山県橋本市小峰台 2─8─1TEL:0736─37─1200 FAX:0736─34─6130E─mail:ohoshi03@hashimoto─hsp.jp

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日本糖尿病情報学会誌 Vol.11

34—JJADI Vol.11 2013

鉄を利用すれば約 50 分で達し,大阪府との県境部はベッドタウンとして開発中である.橋本市と五條市の間には京奈和自動車道が開通しており,15 分程度で往来できる.かつらぎ町には和歌山県立医科大学附属病院紀北分院,五條市には奈良県立五條病院があるが,橋本市民病院(当院)は,唯一 300 床を有し,当地域の基幹病院である.表1のごとく伊都郡の人口密度は低く,医師数も少ない(2010 年 10 月現在の伊都郡の医師会会員数は 29 名)ため,橋本市といっしょに伊都医師会を構成している.伊都医師会では,高齢化と過疎化の進む伊都・橋本 2 次医療圏で,住民に安心,安全な医療を提供するために,2002 年より各診療所や病院をつなぐ電子カルテネット網「ゆめ病院」を構築して,医療情報の共有化を図ってい

る�1).2008 年 4 月まで当院に常勤の糖尿病専門医が不在で,587 名の糖尿病患者を外来で診療しているにもかかわらず,患者教育を実施する体制が十分に整っていなかったため,まず,医師・コメディカルで糖尿病医療チームをつくり,教育入院を開始した.次いで,外来患者の飽和状態を改善して,効果的な糖尿病診療を行うために病診連携体制を構築することが急務と考えられた.

方 法

2009 年より伊都医師会,当院および五條市医師会の共催で,勤務医,開業医およびコメディカルを対象とした糖尿病の勉強会(「伊都・橋本・五條病診連携糖尿病懇話会」以下,懇話会)を年

臨床ノート

図 1 伊都・橋本・五條地域

橋本市和歌山県 奈良県

かつらぎ町

伊都郡

九度山町

五條市

隣接

橋本市民病院

50km

50km

紀北分院,五條病院

高野町

表 1 伊都・橋本・五條地域の人口分布人口(人) 面積(km2) 人口密度(人 /km2)

和歌山県 伊都郡 26,9342011 年 3月 1日 推計

332.93   81

和歌山県 橋本市 66,2332011 年 3月 1日 推計

130.31 508

奈良県 五條市 34,2462011 年 2月 1日 推計

292.05 117  五條市医師会

伊都医師会