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私共富士精工は、名古屋合金製作所として産声をあげ、昭和 33 年 3 月に社名を変更 し、今年 60 周年を迎えました。当初、超硬大手メーカーさん及び商社さんから超硬素 材の切断のご注文をいただき、その後ロー付バイト(特にJIS標準バイト)、カッター用 ブレードへと製造の巾を拡げてきました。 昭和 34 年に工場を新築し、自宅の近くに移転しましたので、小・中学校の帰りによ く立ち寄りました。小学6年生の夏休みに工場へ行き、「宿題の工作に困っている」と、 工場の皆さんに話をしていましたら、数日後会社から電話が入り、「来てくれ」と伝言 がありました。行ってビックリ、真っ赤な木製スポーツカーのレプリカがありました(恐 らくこの赤は、K10の識別色だと思います)。思い出の品は、残念ながら自宅を転居す る際、壊してしまいました。ある時は「納品用の車が来たから見においで」との連絡が 入り、行きますとその当時名を馳せたダイハツのミゼットでした。この頃まで、父は 新三菱重工と富士精工の二足の草鞋でしたが、母が泣いており子供3人が呼ばれまし た。「新三菱重工を退職し、富士精工でやっていく」との宣言でした。私自身は、父が ちょっと荒れている様に思われたので、勤めている会社で何かあったのかと思ってい ました。母が泣き、妹2人がつられて泣き、一種異様な雰囲気だったと記憶していま す。その後協力工場にさせていただいた三菱金属(現:三菱マテリアル)さんの協力を 得て、昭和39年8月豊田市へ移転。相談をした三菱さんから、「森さん気が違ったか」 と言われたと、私に話してくれました。それもそのはず、購入土地は3,000坪、名古 屋の土地は 204 坪でした。昭和 40 年代に入り、旧超硬工具協会との接点、アメリカ・ヨー ロッパ自動車産業への視察に、会員外にて参加させていただき、特にフォード社の工 具のスローアウェイ化に仰天し、すぐさま工場をロー付工具から、経験の無いスロー アウェイ工具へと大転換。この結果で、現在の当社が存続していると思います。この 後協会に加入させていただき、「会員の内で俺が一番若い」とか、「超硬の開発されたの が 1923 年、俺は超硬の申し子だ」とか、「生まれたのが大正 12 年(1923 年)同い年だ」 とは言いませんでした。事あるごとに協会!協会!通常ではお会いできない方にお会 いでき、お話をさせていただける。この事が無上の喜びであったと思います。 今年は当社60周年と父の7回忌。話すことも、書くことも昔話ばかりになっています。 笑ってやってください。ただ、私が一番うれしかったのは父が亡くなった後ですが、【業 界功労賞】を頂いたことです。私の生まれたのは昭和23年、協会が出来た年です。私 は協会の申し子とは言いませんが、精一杯日本機械工具工業会のために、頑張ってい きたいと思っています。 最後に、当社富士精工は協会に対し、ただただ“感謝”の一言です。 (富士精工㈱ 会長) JTA Journal ジャーナル October 2018 (平成30年10月) 巻頭言 No. 14

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Page 1: JTAJournalJTAJournal No.14 October. 2018 (H30.10) 3 田中博信国際委員長に団長、吉江慎太郎国際委員に副団 長をお願いし、出発地・成田空港の一室で、結団式と参加

 私共富士精工は、名古屋合金製作所として産声をあげ、昭和33年3月に社名を変更し、今年60周年を迎えました。当初、超硬大手メーカーさん及び商社さんから超硬素材の切断のご注文をいただき、その後ロー付バイト(特にJIS標準バイト)、カッター用ブレードへと製造の巾を拡げてきました。 昭和34年に工場を新築し、自宅の近くに移転しましたので、小・中学校の帰りによく立ち寄りました。小学6年生の夏休みに工場へ行き、「宿題の工作に困っている」と、工場の皆さんに話をしていましたら、数日後会社から電話が入り、「来てくれ」と伝言がありました。行ってビックリ、真っ赤な木製スポーツカーのレプリカがありました(恐らくこの赤は、K10の識別色だと思います)。思い出の品は、残念ながら自宅を転居する際、壊してしまいました。ある時は「納品用の車が来たから見においで」との連絡が入り、行きますとその当時名を馳せたダイハツのミゼットでした。この頃まで、父は新三菱重工と富士精工の二足の草鞋でしたが、母が泣いており子供3人が呼ばれました。「新三菱重工を退職し、富士精工でやっていく」との宣言でした。私自身は、父がちょっと荒れている様に思われたので、勤めている会社で何かあったのかと思っていました。母が泣き、妹2人がつられて泣き、一種異様な雰囲気だったと記憶しています。その後協力工場にさせていただいた三菱金属(現:三菱マテリアル)さんの協力を得て、昭和39年8月豊田市へ移転。相談をした三菱さんから、「森さん気が違ったか」と言われたと、私に話してくれました。それもそのはず、購入土地は3,000坪、名古屋の土地は204坪でした。昭和40年代に入り、旧超硬工具協会との接点、アメリカ・ヨーロッパ自動車産業への視察に、会員外にて参加させていただき、特にフォード社の工具のスローアウェイ化に仰天し、すぐさま工場をロー付工具から、経験の無いスローアウェイ工具へと大転換。この結果で、現在の当社が存続していると思います。この後協会に加入させていただき、「会員の内で俺が一番若い」とか、「超硬の開発されたのが1923年、俺は超硬の申し子だ」とか、「生まれたのが大正12年(1923年)同い年だ」とは言いませんでした。事あるごとに協会!協会!通常ではお会いできない方にお会いでき、お話をさせていただける。この事が無上の喜びであったと思います。 今年は当社60周年と父の7回忌。話すことも、書くことも昔話ばかりになっています。笑ってやってください。ただ、私が一番うれしかったのは父が亡くなった後ですが、【業界功労賞】を頂いたことです。私の生まれたのは昭和23年、協会が出来た年です。私は協会の申し子とは言いませんが、精一杯日本機械工具工業会のために、頑張っていきたいと思っています。 最後に、当社富士精工は協会に対し、ただただ“感謝”の一言です。

(富士精工㈱ 会長)

JTA Journalジャーナル

October 2018(平成30年10月)

巻頭言

No.14

旧超硬工具協会と当社について

理事 

森  誠

Page 2: JTAJournalJTAJournal No.14 October. 2018 (H30.10) 3 田中博信国際委員長に団長、吉江慎太郎国際委員に副団 長をお願いし、出発地・成田空港の一室で、結団式と参加

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専務理事 関口紳一郎1.はじめに

 北米最大の工作機械見本市IMTS2018(米国国際工作機械見本市・主催:米国製造技術工業協会)が、9月10日~15日の6日間、イリノイ州シカゴ市のマコーミックプレイスで開催されました。 IMTS(通称シカゴショー)は、欧州のEMO、日本のJIMTOF、北京のCIMTと並び4大工作機械見本市の一つとされています。東京ビッグサイトの2.7倍の広さを持つ4館は通路で接続され、全天候型となっており、日本から130社が出展。当工業会(JTA)からは13社が出展されました。また、JTAとして初めて各国の工業会が出展する「国際協会ブース」に参加し、日本工作機械工業会の隣の好位置に配置され、ここを拠点に広報活動を行いました(21団体が参加)。

2.IMTSにおける工業会活動 JTAは平成27年6月の統合時から、国際化の推進を主要方針に掲げ、新たに設けた国際委員会(石川則男担当理事・田中博信委員長)がその活動の中心を担い、海外進出を希望している会員企業がどのような要望や難問を抱えているのか、その解決方法を検討してまいりました。中堅・中小企業の海外展開を支援する国の機関であるJETRO(日本貿易振興機構)から斬界のエキスパートの方にご参画いただき問題の解決を図っています。それらの観点からIMTSにおける活動について、国際委員会で企画立案し、下記を実施いたしました。

(1)JTAブースの設置 JTAとして初めて、北館レベル2の会場に出展(国際協会ブース)。 ①JTA職員と日本人通訳の常駐とアテンド

 ②会員ブースの配置図の掲示。また工業会旗、ポスターを掲示

 ③受付台の設置と会員名簿、工業会案内冊子等の配布及び広報活動

 ④小会議スペースの確保、訪問者へのソフトドリンクの提供等を実施

 ⑤JETROの支援による商談チャレンジの会場提供 ⑥会員ブースの紹介

(2)JAPAN QUALITYと銘を打った出展会員紹介並びに会員名簿の作成・配布

 ①�出展各社の小間配置図 ②�各社の出展の見どころ ③�会員全社の名簿と生産品目 ④�2,000部制作: ※�出展各社に配布をお願いし、ご協力いただきました。

(3)商談チャレンジ:ビジネスマッチング ①新明和工業株式会社、株式会社東陽の2社が商談チャレンジを実施

 ②JTAブースを利用。通訳を活用。 ③海外取引新規開拓支援の実施

3.IMTS視察ツアーの開催 視察ツアーの企画立案は国際委員会と旅行会社(近畿日本ツーリスト社)の打合せの下9月9日~ 15日の7日間の計画をたて、今年2月に会員各社に参加募集を行い、各社のご協力をいただいて12社16名の参加となりました。

IMTS2018 米国国際工作機械見本市

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JTA Journal No.14 October. 2018(H30.10) 3

 田中博信国際委員長に団長、吉江慎太郎国際委員に副団長をお願いし、出発地・成田空港の一室で、結団式と参加者による自己紹介等を行い、IMTS2018ツアーが開始されました。参加者の顔触れは会社の代表者から係長クラス、年齢も様々な感はあるものの比較的若い方が多いように見受けられました。 今回の視察ツアーでは展示会見学時間を2日間とし、会場に到着後出展の見どころの冊子を配布し、各展示会場を隈なく見学いただきました。 つづいて、4日目はデトロイト市にあるフォード社ルージュファクトリーを訪問、ディアボーントラック工場の一般見学コースを見学しました。米国の最も象徴的なトラックで新しい軍用アルミボディのFord�F-150トラックを製造しており、最終の組み立てラインを見学、1分間に1台のトラックをフルラインスピードで稼働するロボット、複雑な機器、パーツデリバリーや熟練労働者の様子が見られました。

 5日目はシアトルに移動、1916年創業の世界最大の航空宇宙機器開発メーカーのボーイング社を見学。同社は民間の大型旅客機、軍用機やミサイル、宇宙船など研究開発と製造を行っています。工場では主に飛行機の組み立てラインを見学。次世代ジェット旅客機として注目を集めている787ドリームライナーや現在も活躍中のボーイング777、747、767の組み立て工程を見学しました。 当日の午後、シアトルの航空博物館を見学。150機を超える実物大の

航空機、ヘリコプター、宇宙船が所蔵されており、圧巻でした。1959年にアイゼンハワー大統領に提供された初の専用機(エアフォースワン)、英国航空で最後の商業飛行を行ったコンコルドやスペースシャトルに関する展示もありスケールの大きさに驚かされました。 その夜は、今回のツアーの締めくくりとして、田野井優美理事の乾杯の発声で食事会を開催、二次会では参加者全員で全行程を振り返りました。

4.今後への対応 帰国後、今後の国際委員会の活動の充実を図るため、全参加者にアンケート調査を行いその結果を取りまとめ委員会で審議していく予定です。 来年のEMO2019についても、当工業会のブースの出展、会員各社の出展の見どころ等冊子制作の検討、視察ツアーの企画開催を引き続き実施したいと考えております。今後もJETROのご支援ご協力をいただきながら中堅・中小企業の海外進出の支援に少しでもお役に立てるよう検討を重ねていく考えです。 現在国際委員会参画会員は15社ですが、委員会参加を希望される正会員はぜひ事務局までご連絡ください。

展示会名 IMTS JIMTOF EMO METALEX IMTS JIMTOF

開催年 2016 2016 2017 2017 2018 2018

会期 9/12 ∼ 17 11/17-22 9/18-23 11/22-25 2009/10/15 2011/1/6

期間 6日間 6日間 6日間 4日間 6日間 6日間

開催地 シカゴ 東京 ハノーバー バンコク シカゴ 東京

展示面積(㎡) 120,774 49,500 181,720 64,000 132,315 49,500

出展社数(社) 2375 769 2,236 944 2,563 838

JTA会員出展 14 65 18 6 13 69

来場者数(人) 115,612 147,602 128,966 91,034 128,415 -

◎主要展示会比較

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ISO13399講演会

 2018年6月21日(木)、機械振興会館にて、ISO/TC29/WG34参加メンバーでもあるCIMSOURCE社をお招きし、ISO13399講演会を開催いたしました。 最初にCIMSOURCE社�社長Goetz�Marczinski様より「ISO13399関連事業の実情とデータベースシステムの紹介」との演題で、日本語通訳を介したご講演をいただき、休憩を挟んで永年ISO会合に出席されておられる

㈱日研工作所�常務取締役�三角�進様より「ISO13399と日本機械工具工業会/日本工作機器工業会」について、最後に上智大学名誉教授�清水伸二様より「ものづくり現場におけるIoT活用の現状と将来」についてご講演いただきました。 Marczinski様からご講演の最後にこのようなお言葉を戴きました。「われわれはデータの程度及び範囲への需要が拡大するにつれて、時間とともに変わりゆく要求に対応していきま

す。マスターデータのデータベースを確立することは、現実世界の物流における『倉庫』と言えます。そこからデータを必要な形式に変換してお客様に送信することができ、データの配布が楽になります。なぜデジタルトランスフォーメーションを習得する上で国際標準に基づく製品データ管理が極めて重要か?製品データは皆様のお客様がデジタルの未来の先を行くために必要な『空気』だからです!」 国際規格ISO13399は「切削工具データの表示および交換」に関する規格で、作業部会であるISO/TC29/WG34が規格作成とメンテナンスを担当。大手工具メーカーを中心に製品情報管理の専門家が参加し10年以上活動しています。現在はドイツ、スウェーデン、イスラエルを中心に技術的な解決と各国の要望に対する調整とメンテナンスを継続しており、日本国としては当工業会および日本工作機器工業会からそれぞれ委員を派遣しています。この規格を使った管理システムは、欧州大手メーカーで既に導入されているところもあります。工具に関わるシステム変革が世界に広まる前に、希望する全てのJTA会員がスムーズに移行できる仕組みを形作る時期が来ているのかもしれません。

■CIMSOURCE社 社長 Goetz Marczinski様

■上智大学名誉教授 清水 伸二様

■株式会社 日研工作所 常務取締役 三角 進様

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第7回 技術交流発表会

技術者の相互研鑚および最新技術の紹介等を目的とした第7回技術交流発表会が、7月5日に日立金属高輪和彊館にて開催され、29社70名の方が出席された。足立副委員長の司会進行

のもと、はじめに村上委員長より「コンペチターに日頃聞きづらいことを自由闊達に質問出来るチャンスなので、いろいろと質問するなど、実りの多い会となることを期待しています。」と開会の挨拶があった。続いて平成29年度日本機械工具工業会技術功績賞受賞記念講演として、右記7件についてご講演いただいた。各講演後には、出席者から様々な質問が挙がり、有意義な会となった。次に、特別ゲスト講演として、東京電機大学工学部機

械工学科教授の松村隆様より「切削加工の動向と高能率・高機能化技術」について、ご講演いただいた。松村教授の研究室は主に、ガラス・サファイヤの切削、

アグレッシブウォータージェットによる微細加工・流体研磨、ワーリングによる微小径線材のねじ加工などの研究を行っており、他にもワーリングの新加工技術や切削シミュレーションの開発等について研究されている。今回は、切削加工の動向という観点から研究室の取り組み内容についてご紹介いただいた。「切削材料の難削化」としてチタン合金の切削、ワーニング切削の適用、「切削材料の複合化」としてCFRPの切削、CFRP/チタン合金重積材の切削、「切削の微細化」としてマイクロディンプルの高速切削、ワーリングによる小径線材への切削、「切

削材料の硬脆化」としてガラスの切削など、多くの具体例を挙げお話いただいた。最新の研究内容に出席者は大変興味を惹かれた様子であった。講演会終了後は、講演者への記念品贈呈および懇親

会を行い閉会した。

①超硬ドリル用被膜「EgiAs」の開発 オーエスジー株式会社

R&D室開発グループ 王 媺

②新旋削加工用工具CoroTurn Prime®サンドビック株式会社

技術/製品開発部 井原 明彦

③鋼旋削汎用コーテッド材種AC8025Pの開発住友電工ハードメタル株式会社

合金開発グループ 奥野 晋

④小径カッタ「Tung Force Rec」の開発株式会社 タンガロイ

切削工具開発部 雲井 春樹

⑤超硬ソリッド 千鳥刃面取りカッターの開発株式会社 東陽

技術部 中田 歩

⑥ハイドロサポートボーリングホルダの開発富士精工株式会社

技術部開発課 小島 秋広

⑦ラジアスミル「RD16B形」の開発三菱日立ツール株式会社

成田工場 開発技術部 高橋 勇人

受賞記念講演一覧(敬称略)

■発表会の様子

■村上技術委員長

■ゲスト講師 東京電機大学工学部機械工学科教授 松村 隆様

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 知的財産専門委員会は、技術委員会における7つの専

門委員会(ソリッドドリル専門委員会、ソリッドエンド

ミル専門委員会、ねじ切り工具専門委員会、歯切工具専

門委員会、刃先交換工具専門委員会、耐摩耗工具専門委

員会、知的財産専門委員会)の一つであり、15社15名

に日本機械工具工業会の事務局3名を加えた計18名に

よって構成されています。

 昭和62年(1987年)7月、旧超硬工具協会において、

当時の知的財産に携わる会員が互いに研鑽を積む場とし

て「特許委員会」が設立され、活動が開始されました。

この特許委員会が、平成27年(2015年)、日本機械工

具工業会の発足を機に「知的財産専門委員会」と名を改

めて現在に至っています。

 特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法及び

不正競争防止法といった知的財産に関する法律は、ほぼ

毎年のように改正されており、また、法律をどのように

解釈して適切に運用していくかという観点において重要

且つ注目すべき裁判事例も数多く示されています。企業

において適切な知的財産活動を進めていくためには、知

的財産に関する動向を正確且つタイムリーに把握するこ

とが重要です。しかしながら、膨大な数の裁判の中から

重要で注目すべき事例を個々のメンバーが抽出し続ける

ことは難しい面があります。

 このような理由から知的財産専門委員会では、年4回

開催される委員会において各メンバーが現在注目すべき

裁判事例を持ち回りにて紹介しています。紹介された事

例における争点を各メンバーが精査し、何が問題であっ

たのか?何故このような判決が下されたのか?当該事例

を踏まえて今後どのような対応・対策をするべきか?に

ついて、活発な議論を行っています。

 当委員会では、上記のように裁判事例の研究を中心に

活動していますが、この研究に加えて、知財高裁におけ

る裁判の傍聴(年1回)及び特許庁との意見交換会(年1

回)を開催しています。特許庁との意見交換会では、知

的財産に関する法律の改正や行政の動向に適切に対応す

るため、特許庁から審査官をお招きして、特許出願等に

関する統計資料などを用いて最近の特許行政や事例など

について説明を受けています。一方メンバーからは特許

庁に対して様々な要望を伝えており、非常に有益な会合

機会となっています。

 報道等で御存知の方も多いかと思いますが、近年、例

えば米国Apple社及び韓国Samsung社による世界各国

での特許係争のように、経営に大きなインパクトを与え

得る多くの事件が起きています。また、IoTやAIなど

を活用したインダストリー 4.0の時代を迎えて、飛躍的

な技術の革新が起きようとしています。このような状況

下で事業を円滑に進めていくために、知的財産の重要性

が益々高まっています。専門委員一同、これからも研鑽

を積みスキルアップに努めていきたいと思います。(京セラ㈱ 知的財産部知財2部2課3係)

委員会だより(知的財産専門委員会)

知的財産専門委員長 谷川 宣人

■特許庁の審査官との意見交換会の様子(2018年5月)■活動報告(資料)

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◆会社紹介 MAPAL社は1950年にドイツ連邦共和国アーレン市で創業し、ガイドパッド付きリーマやファインボーリングツールを主力製品として成長してきました。 現在では、ソリッドドリルやPCD工具、ハイドロチャック等を含め、機械加工のあらゆるソリューションを提供する世界的なトータルツーリングメーカーとなっています。 各地域で生産・販売・サービスを行う子会社を世界21カ国に有するほか、25カ国に販売代理店を展開しており、現在グループ全体の従業員数はおよそ5,250名です。 マパール株式会社は、アジア初の子会社・MAPAL日本支社として1996年4月日本橋小伝馬町に設立されました。迅速な対応を実現するため翌年には葛飾区へ移転し、日本国内でのメンテナンスや修正をスタートさせました。その後生産設備の拡充のため、2006年に埼玉県三

郷さと

市に移転し、現在に至ります(ISO9001認証工場、2017年認証取得)。また顧客へのオンサイト・サポートを充実させる

ため名古屋、大阪、富山各地に営業所を展開しています。 現在三郷工場ではMAPAL本社創業のきっかけとなったガイドパッド付き穴加工工具(リーマ及び精密ボーリングツール)を中心に生産を行っています。 ここでガイドパッドツールについて簡単に説明致します。 通常のボーリングツールは刃先とツールボディーとの間に大きなスキマがあり切削加工時に幾何学精度(真円・真直・円筒)を確保するのが難しく、特に量産加工では切削速度が上げられず大きな障害になります。MAPALの創業者はこの点に着目し、刃先径とパッド径のスキマを数μに確保・維持することにより幾何学精度と切削速度を大幅に向上させることに成功しました。ガイドパッドツールのもうひとつの特徴として、刃先が切削している最中にガイドすることにより一般的なボーリング工具より遥かに安定した切削が可能になり刃先寿命が飛躍的に向上したことがあります(シリンダーヘッド、カム穴の加工実例で刃先無調整で1万台を超える加工実績が報告されています。)世界の自動車・モーターサイクル等のエンジン部品加工メーカーがガイドパッドツールの性能を認識することでマスプロダクション加工に

多大な貢献することが出来、MAPALがワールドワイドに活躍する基になったのです。三郷工場ではガイドパッドツールを設計から生産まで行っています。使用状況にもよりますが、1本あたりの寿命は10年以上が可能でコストパフォーマンスに大変優れたツールです。ガイドパッドツールの製造工程について簡単に触れておきます。旋盤・ミーリング・パットロー付け・研削・・・100を越える工程を充分修得した特殊技能者のみ製造に携わっています。ガイドパッドツールの肝となるパッドの精度(真円・真直・円筒)は3μ以内、社内工程精度1μ以内にて製造しています。(ガイドパッドツールの生産は技能の継承・維持が可能とドイツ本社が認めた工場のみで行われています。)ガイドパッドツール以外ではドリル・エンドミル・リーマなど超硬及びPCDツールの再研磨、ラインバーの設計・製造も行っています。

◆ご当地紹介 埼玉県三郷市は、人口約14万人、埼玉県の東南端に位置し、南は東京都、東は千葉県と接し南北に長い地形です。市 内 に はJR武蔵野線三郷駅、新三郷駅、つくばエクスプレス三郷中央駅を、自動車道では東京外環自動車道、常磐自動車道、首都高速道路が交差する三郷ジャンクションを擁するなど非常にアクセス性の高い街です。2018年6月より三郷南IC ~高谷JCTまでの外環道が開通し、首都圏へのアクセスが更に向上しました。都

心への交通の円滑化、物流の生産性向上が期待されています。近年「日本一の読書のまち」を宣言し、家庭・地域・公共図書館との連携により読書活動を推進しています。また大型商業施設などが立地し、関東地区「本当に住みやすい街大賞」にて4位入賞を果たしました。

マパール株式会社〒341-0043 埼玉県三郷市栄4丁目235-1TEL 048-949-1400 FAX 048-949-1401https://www.mapal.com

工場自慢ツール風土記

三郷の風ひろば

三郷ジャンクション

三郷本社工場

三郷花火

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東京都千代田区神田須田町2-25 GYB秋葉原12階TEL 03-3526-6200 FAX 03-3526-6301

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印刷・製本:(株)アサヒ・エンタープライズ

平成29年生産額実績及び平成30年上半期生産額推移

編集後記 あんなに暑かった日々から一転、朝夕はめっきり冷え込むようになりました。今年は猛暑に加え、度重なる自然災害によりひときわ大変な夏場であったと思います。被災された皆さま、ならびに被災された地域の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 本号から、「委員会だより」(6ページ)がスタートいたしました。出席者でないと、委員会活動の内容を知る機会はなかなか無いのではと思います。どんなことをしているのかな?と、興味を持っていただければ幸いです。 (K.I)

(単位:百万円)

品  目平成29年生産額実績 平成30年1~6月生産額実績

1~6月 7月~12月 歴年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 1~6月 前年同期比ド リ ル 9,227 9,689 18,917 1,641 1,529 1,771 1,674 1,678 1,687 9,980 108.2%エ ン ド ミ ル 3,548 3,503 7,051 522 571 608 569 566 580 3,415 96.3%カ ッ タ 626 563 1,189 84 90 95 96 81 97 542 86.6%ギ ヤ カ ッ タ 4,382 4,594 8,976 739 760 816 751 762 815 4,644 106.0%ブ ロ ー チ 5,849 5,627 11,475 885 951 995 946 978 928 5,682 97.2%ね じ 加 工 工 具 17,764 18,507 36,271 2,825 2,969 3,442 3,138 3,144 3,301 18,820 105.9%バ イ ト 843 817 1,660 140 141 154 154 151 139 879 104.2%リ ー マ 1,007 940 1,947 129 158 157 173 162 180 958 95.1%鋸 刃 カ ッ タ 765 810 1,575 144 147 156 143 142 148 880 115.0%耐 摩 耗 工 具 1,377 1,419 2,796 244 236 251 256 225 247 1,459 105.9%特 殊 鋼 工 具 計 45,390 46,467 91,857 7,351 7,552 8,446 7,900 7,889 8,121 47,258 104.1%ド リ ル 20,139 20,393 40,532 3,449 3,476 3,798 3,657 3,656 3,559 21,594 107.2%エ ン ド ミ ル 21,803 23,423 45,226 3,793 3,905 4,195 4,068 4,126 4,180 24,266 111.3%カ ッ タ 2,931 3,590 6,521 521 605 650 602 628 594 3,599 122.8%ね じ 加 工 工 具 1,727 1,758 3,485 240 302 332 300 287 305 1,766 102.3%バ イ ト 5,766 6,219 11,985 1,033 1,068 1,201 1,047 1,086 1,124 6,560 113.8%リ ー マ 1,415 1,857 3,272 266 304 305 342 327 328 1,872 132.3%鋸 刃 カ ッ タ 333 370 703 52 57 58 56 62 67 352 105.7%イ ン サ ー ト 74,054 83,121 157,175 13,496 13,807 15,517 14,294 14,837 15,222 87,173 117.7%耐 摩 耗 工 具 19,071 19,418 38,490 3,086 3,158 3,420 3,308 3,294 3,403 19,668 103.1%鉱 山 土 木 工 具 4,499 4,180 8,679 668 698 644 770 734 744 4,259 94.7%超 硬 工 具 計 151,739 164,329 316,068 26,604 27,379 30,120 28,443 29,039 29,525 171,108 112.8%ド リ ル 565 554 1,120 102 98 111 100 102 88 601 106.4%エ ン ド ミ ル 966 1,088 2,054 213 230 232 231 238 210 1,356 140.3%カ ッ タ 380 443 823 57 73 84 64 84 71 433 113.9%イ ン サ ー ト 9,990 10,774 20,764 1,812 1,891 2,093 1,978 1,981 2,091 11,847 118.6%ダ イ ヤ・CBN計 11,902 12,858 24,760 2,185 2,291 2,520 2,373 2,406 2,461 14,237 119.6%ド リ ル 29,931 30,636 60,568 5,192 5,102 5,680 5,431 5,436 5,334 32,175 107.5%エ ン ド ミ ル 26,317 28,013 54,330 4,528 4,706 5,035 4,868 4,930 4,970 29,037 110.3%カ ッ タ 3,938 4,595 8,533 662 768 829 762 793 762 4,575 116.2%ギ ヤ カ ッ タ 4,382 4,594 8,976 739 760 816 751 762 815 4,644 106.0%ブ ロ ー チ 5,849 5,627 11,475 885 951 995 946 978 928 5,682 97.2%ね じ 加 工 工 具 19,491 20,264 39,756 3,065 3,271 3,774 3,438 3,431 3,606 20,586 105.6%バ イ ト 6,609 7,036 13,646 1,173 1,210 1,355 1,201 1,237 1,263 7,438 112.5%リ ー マ 2,422 2,797 5,219 395 461 462 514 490 508 2,829 116.8%鋸 刃 カ ッ タ 1,098 1,179 2,278 195 205 214 200 204 214 1,232 112.2%イ ン サ ー ト 84,044 93,895 177,939 15,308 15,697 17,610 16,272 16,819 17,313 99,019 117.8%そ の 他 工 具 9,004 9,424 18,428 1,493 1,605 1,694 1,704 1,658 1,764 9,918 110.2%ボ デ ィ 関 係 8,830 9,266 18,095 1,588 1,603 1,699 1,645 1,683 1,845 10,062 114.0%切 削 工 具 小 計 201,917 217,327 419,243 35,224 36,338 40,162 37,733 38,421 39,321 227,198 112.5%耐 摩 耗 工 具 20,449 20,837 41,286 3,329 3,394 3,671 3,563 3,519 3,650 21,127 103.3%鉱 山 土 木 工 具 4,499 4,180 8,679 668 698 644 770 734 744 4,259 94.7%総 合 計 226,864 242,344 469,208 39,221 40,430 44,478 42,066 42,674 43,715 252,584 111.3%前 年 同 月 比 99.7% 110.4% 105.0% 113.6% 110.2% 111.9% 110.6% 114.4% 107.7% 111.3%

(出典:日本機械工具工業会 会員統計)

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電話番号 079-422-8666FAX番号 079-422-8487

URL http://www.daitsu-group.co.jp/主要製品 ハイスリーマ・特殊ドリルの研磨加工、ハ

イスドリル・ブローチの旋削加工