j積分解析の妥当性評価検討(試験vs解析) 実験計 …...

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J 積分解析の妥当性評価検討(試験 VS 解析) 実験計画法を適用した数値解析の仕様最適化 ばらつきを考慮した最適化について 骨組み構造体の最適化 ~GA と DPSO の比較~ 塑性流体モデルによる粉体流動解析 SPH 法と DEM を用いた粉体と物体の連成解析 XFEM によるき裂進展解析の紹介 相関分析と RT 法を用いた異常診断技術紹介

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Page 1: J積分解析の妥当性評価検討(試験VS解析) 実験計 … によるき裂進展解析の紹介 相関分析とRT法を用 いた異常診断技術紹介 目次 【巻頭言】

J 積分解析の妥当性評価検討(試験VS解析)

実験計画法を適用した数値解析の仕様最適化ばらつきを考慮した最適化について骨組み構造体の最適化 ~GA と DPSO の比較~

塑性流体モデルによる粉体流動解析SPH法と DEM を用いた粉体と物体の連成解析XFEM によるき裂進展解析の紹介相関分析と RT法を用いた異常診断技術紹介

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目次

【巻頭言】

最適化特集に寄せて ・・・・・・・ 1

【技術論文】

J 積分解析の妥当性評価検討(試験 VS解析) ・・・・・・・ 2

□技術レポート

●最適化特集

*実験計画法を適用した数値解析の仕様最適化 ・・・・・・・ 8

*ばらつきを考慮した最適化について ・・・・・・・ 10

*骨組み構造体の最適化 ~GA と DPSOの比較~ ・・・・・・・ 12

*位相最適化について ・・・・・・・ 14

●塑性流体モデルによる粉体流動解析 ・・・・・・・ 16

●SPH法と DEMを用いた紛体と物体の連成解析 ・・・・・・・ 18

●XFEM によるき裂進展解析の紹介 ・・・・・・・ 20

●相関係数と RT 法を用いた異常診断技術紹介 ・・・・・・・ 22

□コラム

構造解析技術者でもかわる?流体解析手法のキホン ・・・・・・・ 24

□製品紹介

汎用有限要素解析ソフト Marc2017 ・・・・・・・ 26

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1 シミュレーション技報 第 13 号

巻頭言 シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部長

長野 秀信

最適化特集に寄せて

当部ではここ数年、数値解析と最適化技術を掛け合わせた技術サービスを本格化させています。

数値解析はソフトとインフラ両面の著しい日進月歩の恩恵に浴してその精度を飛躍的に向上させ、多大な手間暇とコストが

かかる実実験に代わる手段としての役割が増しています。また、効率的に実施した数値解析結果群を適切にデータ分析・処理

することで現象を支配する主要な因子を捉えて目標達成のための最適解を割り出すこと(最適化)ができるようになり、開発、

設計、生産、操業などの広範囲な業務プロセスに対する貢献の幅が広がり始めています。そうしたことも背景により広い取組み

内容を誌面に織り込むべく、誌名を本号より解析技報からシミュレーション技報に変更致しました。

上述のような最適条件を見出す取り組みに注力していると、あのノーベル賞を受賞した山中教授の逸話が頭に浮かんでくる

ことがあります。もちろんその偉大な業績と一緒に語るのは甚だ僭越かつ恐縮なのですが、のちに山中ファクターと呼ばれる

4 つの遺伝子特定に至った有名な話は大変興味深く、知恵を絞れば必ずやブレークスルーが拓けてくるという示唆を与えて

くれます。すでに幾多のニュースやテレビ番組でも紹介されていますのでご承知かとは存じますが概ね以下のような内容です。

当時、山中教授の研究チームはマウス実験を通じて細胞の初期化を起こすとみられる遺伝子の候補を絞り込み、それが 24

個ある(それら全部をまとめて細胞に入れるとちゃんと変化が起きる)ことまでは把握できていたものの、一体そのいくつが関係

しているかが不明でした。これを厳密に割り出すには、∑ C�������� (≒1680 万弱)通りの膨大な組合せ実験が必要で、おそらく毎

日実験しても数十年かかるほどだったと思われます。

その時、実験担当だった大学院生の一人が「24 個からそれぞれ 1 個だけを除いた 23 個の遺伝子からなる 23 種類のセットを

作って実験を行えば、本当に必要な遺伝子が含まれていないセットでは初期化は起きないはず。」と考え、24 個すべてを含む

セットも併せた計24セット(通り)の実験を実施したところ4つのセットにおいて変化が現れなかったため、それらのセットから除か

れていた 4 つの遺伝子が有意なものと特定でき、上述の山中ファクターとして知られる大きな発見につながったということです。

しかしこの成果は僥倖であったようにも思われます。総当たり実験だと 1680 万通り近くも行う必要があるにもかかわらずわずか

24 通りで済ませることができたという背景には、通常起きるであろう交互作用(複数の因子が組み合わさることで結果に(ポジ

ティブ、ネガテイブいずれかの)影響を与えること)が現れなかったからです。ともあれ最短距離でゴールに到達できた裏には、

不遜な表現を恐れずに言えば、非科学的とも思える判断、結果的に英断があったわけです。そこには科学者としての経験、知

識に裏打ちされた優れた閃きがあったのでしょう。セレンディピティ能力なのかもしれません。

話を元に戻しますが、当部では実実験を数値解析で置き換えてその結果から得られる複数のデータを組み合わせて最適な

因子(水準)を求めるという業務に取り組んでいます。それは、最初に選定した因子の適切性、通常あるはずの交互作用、解析

結果からの推定式の精度等の影響を受けますので、上述のような偶察力が好結果につながる保証はありません。

本誌の表紙絵は、数式 sinx・(cosy+sin(x・y))、つまり 2 つの変数(因子)からなる値を基にデザインした

もので一見複雑そうに見えますが、実現象はこのような俯瞰図で表せるほど単純ではなく、多次元の

パラメータ空間で構成されるのが一般的です。視覚化はおろか想像すら困難です。しかしその見え

ない片隅に最適解が潜んでいるはずです。それを見つけ出すためにはお客様との相互協力を通じて

ニーズや知見をしっかり理解しながら到達点を見定めた取り組みが大変重要となります。

悪魔は細部に宿るという言葉がありますが、神は細部に宿るという言葉もあります。

私どもは、皆様とともに神に近づく道を見つけるべく、今後とも一層研鑽を積んでゆく所存です。

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2 シミュレーション技報 第 13 号

技術論文

本稿では、ASTM規格に基づく破壊靱性試験の試験概要、評価方法及び試験結果と有限要素法を用いた

J 積分解析(MSC.Marc)での試験再現シミュレーション結果との比較による数値計算の妥当性評価を実施した

内容について以下に述べる。

1. 諸言

一般的に構造解析における強度評価指標としては

応力が用いられる場合が多い。しかしき裂先端や溶

接不溶着部のような鋭い切欠き部においては、理論

上、応力集中係数が無限大となる、応力による評価は

困難である。

破壊力学はこのような問題を取り扱う分野であり、応

力に代わる強度指標として、応力拡大係数、エネルギ

ー解放率、J積分などが用いられる。応力拡大係数と

エネルギー解放率は線形弾性材料を前提としている

ため、金属のような延性材料が広範囲に塑性降伏す

る問題には適用できない。これに対し、J積分は非線

形材料まで適用することが可能であり、弾塑性材の破

壊力学的評価指標としてよく用いられる。

J積分の評価に関しては、三点曲げ材・小形引張材

(CT材)などの比較的形状の簡単な試験片を用いた

実験により求めた荷重-変位曲線を使用し簡便式を

用いて評価する方法と、有限要素法を主とする数値

計算法により評価する方法があるが、複雑な構造物

内に介在するき裂部の J値を評価する場合には、後

者の適用が必須と考える。

その際、数値計算で十分な精度が確保できるか否

かが重要であるため、今回妥当性検討を実施した。

2. J 積分の定義

J 積分は、き裂先端を含む経路Γ(図 1)に沿った線

積分として下式(1)のように表すことができる。

)( dsxuTWdyJ (1)

Γ:き裂先端を囲む積分経路(図 1)

W:ひずみエネルギー密度

T:経路Γに沿う表面力ベクトル

u:経路Γに沿う変位ベクトル

ds:経路Γに沿う微小要素

図 1 J 積分概念図

MARC では、(1)式を面積積分に置き換えた(2)式に

て J値を計算している。[1]

dAxqW

xu

Ji

A ij

ij 1

11

)(

(2)

J 積分は弾性材料に対して適用されるエネルギー

解放率の考え方を、非線形材料にまで拡張したものと

解釈することができる(よって、弾性材料に対する J 積

分はエネルギー解放率と同じとなる)。

須藤 浩章

日本機械学会認定

計算力学技術者 1 級

岩松 浩一

日本機械学会認定

上級アナリスト

J 積分解析の妥当性評価検討(試験 VS 解析)

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3 シミュレーション技報 第 13 号

3.弾塑性破壊靱性評価法

(ASTM E1820[2][4])

き裂先端付近にかなりの塑性変形を伴った後に、

破壊が開始するケースで図 2 に示すような荷重‐変位

曲線となる場合がある。

高靱性を示す材料については、破壊開始直前のき

裂面の開き(き裂先端開口変位,CTOD)(δ)と、破壊

によって解放されるき裂周囲に蓄積された歪みエネ

ルギー(応力場解析手法に由来して J 積分と呼ぶ)の

両者が、等しく破壊靱性の指標になる。これらの指標

は、小規模降伏条件においては、

� � ���� � ��1 ���/ (3)

によって、K も含めて 3者相互に関係づけられる。

ここで、E,ν,σy は、それぞれ試験条件での材料

の弾性率、ポアソン比、降伏応力であり、また、m は平

面応力状態で1、平面歪み状態で2となる定数である。

J は、負荷時に試験片に吸収されたエネルギーUによ

って、

� � ��/�� (4)

で求めれられる。ここで、Bは試験片の厚さ、bはリガメ

ント、ηは試験片の形状に依存する係数で、例えば

曲げ試験片の純粋な曲げモーメント負荷では 2 となる。

J 及びCTODの具体的な試験法については ASTM

E1820 等にまとめられている。

E1820 で推奨される試験片の形状は(a)3 点曲げ

(SE(B))、(b)コンパクト(compact tension, C(T))、

(c)(DC(T))試験片の 3種類があげられる。

安定延性き裂発生時の J 値(��)を求める方法は複数の試験片を使う方法(複数試験片法)と、1 本の試験

片についてき裂長を測定しながら進める方法(単一試

験片法)等があるが、後者で JQが求められる除荷コン

プライアンス法がよく用いられている。

図 3.J-R 曲線からの JQ値決定方法

前記試験法によって、測定された荷重と変位から

(4)式に従って Jを計算するが、その際(5)式のように変

位のうちの弾性変形成分と塑性変形成分のそれぞれ

に対応する���と���に分け、弾性部分については(5)式から求まる K(CT 試験片の場合)に(6)式の関係を用い

て���を計算する。

�� � ������/� �

��������.�����.��

�����.��

�������.�� �

�����.� �

����

������

�/� (5)

� � ��� � ��� (6a)

��� � ��1 ���/ (6b)

��� � ������/���� (6c)

ここで、���は図 2 のように、荷重-変位曲線の評

価点から初期の荷重の直線部分に平行に下した直線

とで囲まれる部分の面積であり、係数���は試験片の

の形状に依存する係数である。

破壊開始に対する���を求めるには、複数のき裂進展量(⊿a)に対する J値から図3に示すように、次の手

順で求める。

1) 次式で表されるき裂鈍化直線を引く。

� � ���∆� (m は、実測値または既定値=2) (7)

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4 シミュレーション技報 第 13 号

2) 鈍化直線と平行な 0.15 ㎜と 1.5 ㎜限界線との間

に位置し、かつデータ数,J,⊿a などに関する所

定の条件を満足するデータについて、R曲線をべ

き乗回帰する。

3) 鈍化直線に平行な0.2mmオフセット線と R曲線と

の交点を仮の��とする。 4) ��評価点における R 曲線の勾配が鈍化直線の 2分の1を超えず、かつ(8),(9)式の条件を満足すれ

ば、有効な JICとみなす。

� � 25���/��� (8)�� � 25���/��� (9)

ここでのσyは降伏応力または0.2%耐力と引張強さ

の平均値、b0=W-a0は初期リガメント長さである。

なお、B に関する規定は板厚中心部が平面ひずみ

状態を満足するための規定であり、またb0に関する規

定はパラメータJが有効であるための降伏規模に関す

る規定である。[5]

4.弾塑性破壊靱性試験

ASTM/E1820 規格に基づく弾塑性破壊靱性試験

を実施した。

試験内容は CT 試験片による JIC試験を採用し、常

温でJIC試験を実施して荷重-開口変位曲線、J-Δaカ

ーブ、JICを求めた。

試験片材料は塑性域がある程度広がったあとに破

壊する材料とするため、WT780 を選定した。

また、材料物性値である荷重-伸び曲線、引張特性

を算出するために、引張試験(試験規格:JIS Z2241)

を別途実施した。

4-1.JIC試験概要

・試験規格 ・・・ ASTM E1820

・試験片材質 ・・・ WT780

・試験方法

① 試験片形状に 23.4mm の機械加工を施す。

② 疲労き裂の導入

(試験荷重 1.3kN-13.0kN の繰返し荷重負荷)

③ ②のき裂形状を初期き裂とし、単一試験片法を実

施。(初期試験力 20kN、試験力増分 10kN)

④ 荷重-クリップゲージ開口変位の出力(図 7 参照)

⑤ ④より J 値-き裂長さ(J-R 曲線)グラフを作成(図

8参照)

⑥ ⑤より JICの算出

(コンプライアンス法により算出[3])

図 4.CT 試験

図 5.CT 試験片

4-2.JIC試験結果

4-1 の手順に従い、試験結果より得られた荷重-クリッ

プケージ開口変位よりコンプライアンス法を使用して破

壊靱性値(JIC)=139[N/mm]を算出した。

図 6.き裂寸法

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5 シミュレーション技報 第 13 号

図 7.荷重-クリップゲージ開口変位

図 8.J値-き裂長さ(算出:コンプライアンス法)

全体

拡大

図 9.JIC 試験片の破面外観

4-3.引張試験

・試験規格 : JIS Z2241

・試験片

平行部直径:10.0mm 、平行部長さ:55mm

・試験条件

標点間距離:50mm 、 試験温度:25℃

図 10.引張試験片形状

図 11.引張試験片

4-4.引張試験結果

降伏応力(0.2%耐力)及び引張強度はそれぞれ

799MPa 及び 873MPa であった。

応力‐伸び線図を図 12 に示す。

また、図 12 よりヤング率=202405 MPa を算出した。

図 12 応力―歪関係

初期き裂位置

最終き裂位置

JIC値※1

0.3

15R

55

M16

(mm)

10

30 30

疲労予き裂先端

安定き裂先端(Δa先端)

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6 シミュレーション技報 第 13 号

5.弾塑性破壊靱性試験シミュレーション

Marc/J積分解析機能を使用して、試験再現解析を

実施した。

解析モデルは対称性を考慮し、2 分の 1 モデルで

作成した。また、材料物性値は 4-4 項での引張試験

結果/SS カーブ(図 12 参照)を使用して行った。

き裂長さを解析パラメータとし、初期及び最終き裂長

さの 2 パターンで弾塑性のJ積分解析を行い、J値及び

荷重-変位を算出し、試験結果との比較を実施した。

5-1.解析条件

解析モデル及び境界条件を図 13 に示す。

図 13.解析モデル図&解析条件

5-2.材料物性値

ヤング率 : 202,405 [MPa]

降伏応力 : 799[MPa] 、ポアソン比 : 0.3

SS カーブ : 引張試験結果より設定(図 12 参照)

5-3.解析ケース

試験結果を基に、以下 2形状を実施。

CASE1 : 初期き裂

CASE2 : 最終き裂(延性き裂進展量:1.27mm)

5-4.試験結果と解析結果の比較

最終き裂モデルにおける 80kN 荷重負荷時の相当

塑性歪み分布を図 14 に示す。き裂周辺で広範囲に

渡り塑性化している。

解析及び試験結果で得られた荷重-変位履歴を図

15 に示す。解析での初期き裂時履歴と最終き裂時履

歴の荷重-変位曲線の間に実測データの荷重-変位

履歴が位置しており、解析は概ね試験を再現してい

る。

また、試験結果を基に算出された JIC値:139[N/mm]

時の延性き裂進展量は 0.3mm(荷重は 80kN )であり、

初期き裂と最終き裂の解析結果を線形補間し、同き

裂進展時の J 値を算出した結果、J値は 124.5[N/mm]

であった。試験と解析での J値の誤差は10%程度で概

ね一致している。(図 17 参照)

図 14.相当塑性歪み分布(最終き裂時/80kN 負荷時)

図 15.荷重-クリップゲージ変位グラフ(試験 VS 解析)

P=0~120 [kN](板厚対称モデルのため)

1.02.54

30.5

12.7

対称境界クリップゲージ変位出力位置

φ12.7

23.4

1.27

1.0

0.1

初期き裂位置

最終き裂位置

3.3(疲労き裂)

0.010

0.000

0.005

[-]

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7 シミュレーション技報 第 13 号

6. 結言

本稿では、ASTM 規格に基づく破壊靱性試験と有

限要素法を用いた J 積分解析での試験再現シミュレ

ーション結果との比較を実施した。

数値解析結果は概ね試験結果を再現しており、数

値解析の妥当性を確認することができた。

当手法を用いて、複雑な構造物においても数値解

析シミュレーションによる妥当な J 値結果を得ることは

可能であると考えられるが、き裂形状及び評価指標で

ある材料特有の破壊靱性値(=JIC)等が必要となること

を注意すべきである。

参考文献

[1]Marc2014 Volume A:Theory and User

Information CHAPTER 5 Structural Procendure

Library Numerical Evaluation of the J-integral

[2] ASTM,E1820-13,ASTM(2013)

[3] ASTM,E813-89

[4]山本琢也:破壊靱性試験法とデータ解析の実例

(講座:核融合構造材料における機械的特性の評

価手法とデータ解析)

[5]日本機械学会編/機械工学便覧 基礎編α3 材

料力学

[6]矢川元基:破壊力学 理論・解析から工学的応

用まで/培風館

図 16.J 値-荷重グラフ(解析結果)

図 17.J 値-き裂長さグラフ

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8 シミュレーション技報 第 13号

概要

解析を用いて仕様検討を行う場合、従来の方法では、解析で得られた結果(評価値)をもとに、設計者が経験

則的に改良値を決め、その効果を解析で確認するという繰り返し処理がしばしば行われる(図1)。この方法では、

目的の性能が得られるまでの解析数が増加しがちになり、改良値によるモデリング時間も含め、非常に多くの時

間が必要となる。

その対策として、実験計画法を利用して得られる推定式を用いる方法がある(図2)。本方法では、解析は推定

式の作成に必要な回数のみとなり、繰返し計算は推定式で行うため、大幅な時間短縮が期待できる。

本稿では、実験計画法を適用した鋼板冷却ノズルの仕様最適化について紹介する。

図1 従来の仕様検討 図2 推定式を用いた仕様最適化

1.適用モデル

図3-a に示すような鋼板冷却設備を模擬したモデル

を作成し、冷却ノズルの仕様最適化を行う。

上流側から流れてくる 200℃の鋼板を中央に設置さ

れた上下6つの冷却ノズル(図3-c)から出る空気で冷

却し、評価ライン上の温度分布が 150℃均一になるよう

な(図3-b)、ノズルの半径 a、b およびノズル間距離 c

(図3-d)を求める。解析モデルは上下左右の対称性よ

り 1/4 モデルとする。

図3 適用モデル

2.推定式の導出

まず、評価ライン上の温度を表す推定式を導出す

る。ノズル半径を 5 ㎜、10 ㎜、15 ㎜、ノズル間距離を

100 ㎜、200 ㎜、300 ㎜の3水準とし、実験計画法の直

交表に従った組合せ(表1)の解析を行う。

表1 直交表

全9ケース(Case1~9)の解析結果をもとに、回帰分

析を行い、評価ライン上 17 点の温度の推定式(図4、

式1)を導出する。

…(式1)

図4 推定式例(中央から 2.5mm 位置の温度)

技術レポート No. 1

実験計画法を適用した

数値解析の仕様最適化 構造解析チーム

日本機械学会認定計算力学技術者1級

原 一真

流体解析チーム

博士(環境科学)

チーム長 山田 貴啓

評価ライン

(d)設計変数(最適化パラメータ)

(a)解析モデル

(c)冷却ノズル (b)最適化イメージ

1/4 モデル範囲

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9 シミュレーション技報 第 13 号

図5は、Case1~3 において、評価ライン上の解析

値(実線)と推定値(マーカー)を比較したグラフであ

る。誤差は全9ケースによる比較において最大でも

3.4%となっており、推定精度としては十分であると判

断した。

図5 解析値と推定値の比較(Case1~3)

3.推定式によるノズルの仕様最適化

次に、導出した推定式を用い、ノズル条件の最適化

を行う。最適化は、各点の目標値 150°との温度差⊿

Ti (i=1~17)の二乗平均平方根(式2)を評価関数とし、

数理計画法(逐次二次計画法)による繰返し計算によ

り、RMS を最小化するノズル半径 a、b およびノズル間

距離 c を求める。

評価関数: …(式2)

図6は得られた最適解(ノズル半径 a=8.7mm、

b=15.0mm、ノズル間距離 c=207.4mm)と推定式を求め

た際の最良ケース Case2 の温度分布の比較である。

図6 最適前後の温度分布

図6のグラフが示すように最適化前(Case2)よりも最

適化後の方が、目標の 150℃に近くなっており、図7の

温度コンターも最適化後の方がより均一化されている

ことがわかる。評価値であるRMSは6.6から 4.3 となり、

最大温度差についても 14.6℃から 8.8℃に下がってい

る。また、最適化後のノズル条件は、ノズル半径 a=8.7

㎜、ノズル間距離 c=207.4 ㎜となっており、水準の中

間値を取ることでより良い結果が得られたと考えられ

る。

図7 最適化前後の結果比較

4.おわりに

実験計画法を適用した鋼板冷却ノズルの仕様最

適化について紹介した。ここで紹介した実験計画法と

の組み合わせは、構造解析や電磁場解析に対しても

有効と考えられる。また、実験計画法適用の際は、設

計変数や水準値の選定が非常に重要となるため、今

後も検討を継続し、本手法の精度を高めていく予定で

ある。

参考文献

1) 柏村孝義ほか、応用数値計算ライブラリ 実験計画

法による非線形問題の最適化、朝倉書店

2) DesignDirector、ユーザーマニュアル、日本発条

RMS: 6.6

最大温度差: 14.6℃

評価ライン 中央

[℃]

中央

(a)最適化前(ノズル条件、評価値、温度コンター)

(b)最適化後(ノズル条件、評価値、温度コンター)

RMS: 4.3

評価ライン 中央

最大温度差: 8.8℃ [℃]

中央

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1 0 シミュレーション技報 第 13号

概要

外乱やばらつきなどの不確定性を考慮しない通常の最適化手法(決定論的最適化)により得られた構造では、

ある条件が危険側に作用した場合、簡単に設計の制約を違反する恐れがある。そのため、諸々のばらつきに強

く、信頼性のある構造とするには、不確定性までを考慮した最適化を実施する必要がある。本稿では、構造解析

ソルバーMarc(MSC ソフトウェア 社)と最適化ソフト HyperStudy(Altair 社)を連成させ、荷重のばらつきを考慮し

た最適化事例について紹介する。

1.はじめに

今回、ばらつきを考慮しない決定論的最適化とばら

つきを考慮する最適化の 2 パターンの最適化を実施し

た。さらに、最適化により得られた結果を使用し、正規

分布でばらつかせた荷重にて確率統計解析を行い、

構造物の信頼性の評価を行っている。

2.決定論的最適化

(1)解析条件

解析モデルを図1に示す。解析種別は、微小変形

解析とし、2要素で構成されるトラス構造に、一端をピン

拘束、他端に鉛直荷重 1000kN を載荷している。最適

化の条件は、設計変数を部材断面積、目的関数を体

積最小化、制約条件を軸応力 300MPa 以下とし、最適

化手法には “ ARSM ( Adaptive Response Surface

Method:逐次更新型応答曲面法)”を採用している。

図1 解析モデル

(2)決定論的最適化による解析結果

最適化後の断面積と制約条件の判定を図2に示す。

断面積は本ケースの部材①の断面積で正規化してい

る。制約条件の判定は、横軸を部材①、縦軸を部材②

の発生応力としているが、決定論的最適化の場合、制

約条件の境界に結果が一点求まることになる。

図2 最適化後の断面積と制約条件判定

(3)確率統計解析による信頼性評価

決定論的最適化の部材断面積の結果を使用し、確

率統計解析にて荷重をばらつかせる。ばらつきの分布

は、鉛直方向荷重を、平均値 1000kN、標準偏差

86.6kN の正規分布と仮定する。さらに水平方向荷重も

考慮するものとし、平均値は 0kN であるが、標準偏差

86.6kN となるような正規分布を仮定する。

図3に 500 ケースの確率統計解析を実施した結果を

示すが、50%以上のケースで制約条件を違反する結果

となっている。これは、最適化で使用した荷重値を平

均値としているため当然の結果といえるが、決定論的

最適化の結果に対して、荷重が危険側へ作用すると

制約条件を簡単に違反してしまうことが分かる。

技術レポート No. 2

ばらつきを考慮した最適化について構造解析チーム

日本機械学会認定計算力学技術者1級

松瀬 善信

②ヤング率 :2.05×105MPa

ポアソン比:0.3

使用要素 :梁要素

1.41

1.0

Fail

Safe

Fail

Safe

図3 制約条件判定結果

1000kN

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11 シミュレーション技報 第 13 号

3.ばらつきを考慮した最適化

前章より、決定論的最適化により導かれた構造に荷

重のばらつきが発生すると簡単に制約条件を違反する

ことが分かった。本章では、荷重のばらつきまでを考慮

した最適化を実施することで、構造の信頼性向上を図

るとともに、確率的制約の違いにより結果がどのように

変化するかを調査する。

(1)解析条件

解析条件は、前章の条件をベースとし、荷重のばら

つきまでを考慮した最適化を実施する。最適化の制約

値については、前章と同様の 300MPa とするが、さらに

確率的制約を考慮する。確率的制約とは、制約条件を

満足する確率を意味し、今回、99%、80%、70%の 3 ケー

スを実施し、結果を比較する。最適化手法には、

“ SORA ( Sequential Optimization and Reliability

Assessment: 逐次最適化信頼性評価)”を採用してい

る。

(2)ばらつきを考慮した最適化による解析結果と確率

統計解析による信頼性評価

図4に最適化後の断面積と確率統計解析による制

約条件の判定を示す。確率的制約 99%の場合、500 ケ

ースの計算に対して制約条件の違反は 2 ケースにとど

まっており構造の信頼性が大きく向上しているが、前章

の決定論的最適化よりも、部材①の断面積は 18%、部

材②は 8.5%大きくなっている。

確率的制約99%にすることは、制約境界を厳しくする

ことを意味しており、決定論最適化の結果を安全な領

域に移すことで、確率的制約が満足されるようにする。

換言すれば、正規分布の 2σや 3σとなる 1100kN 付

近の鉛直方向荷重に対しても制約条件を満足する必

要がある厳しい条件になっていると考えられ、その結

果、過大に評価された断面積になったとも解釈できる。

その一方で、確率的制約を小さくしていくと、制約条件

に対して違反しているケースが多くなっているが、断面

積は小さくなっている。

これらの結果を踏まえると、安全側の設計のために荷

重を厳しめに想定することは重要であるが、その想定

を厳しくし過ぎると、合理的な設計からは遠ざかる。ば

らつきを考慮した最適化は、より現実的で合理的な設

計につながる結果を提供してくれる可能性がある。

4.おわりに

今回、注目するばらつきを荷重としたが、降伏応力な

どの物性をはじめ、解析の入力データに記載できる情

報であれば何でも適用可能である。また、構造解析に

は外部ソルバーを使用するため、線形、非線形を問わ

ないことも大きな利点である。

参考文献

1) Altair HyperStudy チュートリアル

図4 最適化後の断面と制約条件判定結果

99% 80% 70% 確率的制約

最適化後の

断面積

確率統計

解析に

よる制約

条件判定

1.18

1.53

1.16

1.50

1.05

1.46

Fail

Safe

Fail

Safe

Fail

Safe

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12 シミュレーション技報 第 13 号

概要

本稿ではメタヒューリスティック最適化手法を用いた骨組み構造体の最適化技術を紹介する。遺伝的アルゴリズ

ム(Genetic Algorithm、以下GAと略す)および離散型粒子群最適化(Discrete Particle Swarm Optimization、以下

DPSO と略す)について簡単に説明し、構造解析とGAもしくはDPSOを連成し構造最適化に適用し比較した例を

紹介する。

1.はじめに

近年、コンピュータの性能が向上したことによ

り、構造物や機械設備への高性能化、高信頼性、コ

スト低減等の要求に伴い、最適化問題を構造設計に

取り込んだ「構造最適化」が実施されている。

当部では最適化技術の獲得に向け取り組んでお

り、次章より GA,DPSO の概要および構造最適化に適

用した例を紹介する。

2.GAの概要

GA とは生物の進化の法則に基づく確率的探索手

法であり、1975 年にミシガン大学の J.H.Holland

の論文において提唱された最適化手法である。図 1

に GA を用いた最適化探索フローの例を示す。

初期集団

適応度評価

遺伝的操作・交叉・突然変異・エリート保存

開始

終了

終了判定

世代交代

11101 00110 01011

Yes

No

7点 3点 1点

(初期集団は乱数により決定)

11101 00110

11110 00101

11101

エリート保存

11010 00101

突然変異

交叉

ルーレット選択

図 1 GA 最適化探索フローの例

図 1 に示す通り GA は、遺伝子(0,1)を持つ個体

(11101 等)の集団を設定し、その個体が環境に適

応しているがどうかを表す「適応度」を用いて、そ

の個体の遺伝子配列を次世代に残すか否かを決定

し世代交代を繰り返すことで、より環境に適応した

個体を探索する手法である。また実際の生物の繁殖

で見られる遺伝子の交叉や突然変異を行うことで、

より適応度の高い個体を生み出すことができると

いう特徴がある。

3.DPSO の概要

PSO は、1995 年に James Kennedy と Russell

Eberhart)によって提唱された群知能(Swarm

Intelligence)と言われる最適化手法の一つであ

り、鳥や魚など群れを形成して行動する生物の習性

をモデルとしている。PSO に離散型アルゴリズムを

取り入れたものが DPSO である。図 2 に DPSO を用い

た最適化フローの例を示す。

初期集団

適応度評価

遺伝的操作・交叉・突然変異・エリート保存

開始

終了

終了判定

世代交代

Yes

No

図 2 DPSO 最適化探索フローの例

技術レポート No. 3

骨組み構造体の最適化

~GA と DPSO の比較~

構造解析チーム

日本機械学会認定計算力学技術者 1級

今道 功治

個体別の最良位置の保存(pBesti)

群全体の最良位置の保存(gBest)

速度の計算*1)

位置の更新

)()(

22

111

i

iiii

xgBestcrxpBestcrwvv

11 iii vxx

*1)

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13 シミュレーション技報 第 13 号

4.骨組み構造体への最適化適用事例

グランドストラクチャー2)で構成された骨組み構

造体への最適化適用事例である。図 3に最適化対象

とする解析モデルを示す。24 本の部材断面 4 種類

(大、中、小、無)を設計変数とし、最大変位が制

限値 8.8mm 以下となる制約条件下において、構造物

の総重量を最小化する最適化問題である。

F1F2

F3

固定

固定

固定

6m

6m6m

グランドストラクチャー(24部材)※全部の部材が「あり」の状態

図 3 解析モデル

評価指標となる適応度は下式に示す通り、総重量

最小化と最大変位制約を同時に考慮した関数とす

る。

最適化計算のGAおよびDPSOの共通パラメータは

表 1 の通りである。DPSO のパラメータはほぼこれ

だけであるが、GA の場合は、この他に遺伝子長、

エリート数、交叉方法、突然変異率などのパラメー

タの設定が必要なことが特徴である。

表 1 最適化計算のパラメータ

集団の個体数 30

世代数 500

GAおよびDPSO最適化検討を実施した結果を図4、

図 5 に示す。図 4 は適応度の履歴を示す。DPSO は

GA に比べ、収束が早い。また、図 5 は得られた部

材配置を示す。GAおよび DPSO ともに同じ部材配置

結果が得られたが、GA の赤線部は中断面となり、

DPSO は小断面となった。

図 4 適応度の履歴

表 1 最適化計算結果

GA DPSO

総重量 4.0 3.9

最大変位 7.0 7.3

図 5 得られた部材配置(左:GA、右:DPSO)

5.おわりに

骨組構造の最適化問題に GA および DPSO を適用し

比較した例を紹介した。今後も様々な事例へ適用し

その有効性を確認しながら活用を進めていきたい。

参考文献

1)大森博司,鬼頭伸彰.遺伝的アルゴリズムを用いたト

ラス構造物の形態創出.日本建築学会構造系論文集.

1999,no.520,p.85~92.

2)清水信孝,半谷公司,高田豊文.面外力(曲げ・ねじ

り)を受ける平面骨組の最適部材配置設計.コロキウム

構造形態の解析と創生 2014.2014,p.51~56.

3) 河村 圭ら.Particle Swarm Optimization を用いた

RC はりの損傷同定に関する基礎的研究.コンクリート工

学年次論文集,Vol.28,No.1,2006,p.2033~2038.

11 BW

V 適応度

p

dddd

ddB

00

0

1の時   

の時  1≦

W:総重量、d:最大変位、d0:変位制限値

B:ペナルティ関数、p:ペナルティ乗数

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14 シミュレーション技報 第 13号

概要

最適化技術の一つに位相最適化がある。位相最適化は、従来の概念にはない独創的な結果を出してくれるこ

とから開発の初期段階で利用されることが多く、最近では、実構造物への適用事例の報告も増えてきている。ま

た、3D プリンタの普及もあり、位相最適化のニーズは、今後さらに高まるものと思われる。本稿では、位相最適化

の概念的な説明をし、弊社が実施した解析事例について紹介する。

1.位相最適化について

位相最適化は、剛性への影響が大きい要素を残

し、影響が小さい要素を削除することにより構造の

位相を求める最適化手法である。計算上は、要素そ

のものを削除するのではなく、一般的には、弾性率

と関連付けた要素密度を変化させることで要素の

要否を判定し、要素密度が高ければ構造への寄与度

が高く、要素密度が低ければ構造への寄与度が低い

ということになる。しかし、図1に示すように中間

要素密度が多くの領域で発生すると、その要素が必

要なのか不要なのか判断に困る場合に遭遇するこ

とがある。その場合には、最小部材寸法などの条件

を追加で設定することで中間要素密度の発生を回

避させることができるが、その調整にはノウハウが

必要となる。

調整なし(デフォルト設定)

調整あり

図1 解析条件の調整有無による比較

(by OptiStruct)

位相最適化を実施していくと,中空構造など現実

的に製作不可能な複雑な形状が求まることがある。

これを回避するために、多くの汎用のソフトでは型

抜き方向や押し出し方向などの製造制約条件を付

与できるようになっている。

図2は片持ち梁の曲げ問題で、製造制約条件の有

無の影響を調査した例である。製造制約条件には長

手方向への押し出し方向を指定している。製造制約

条件を付与しないケースは中間密度を有する要素

が多く、製造も容易でないことが分かるが、製造制

約条件を付与したケースでは、H形鋼に近い形状が求められている。製造制約条件の付与は、結果の解

釈も容易にしてくれる。

図2 製造制約条件有無による比較

(by OptiStruct)

技術レポート No. 4

位相最適化について構造解析チーム

日本機械学会認定計算力学技術者1級

松瀬 善信

製造制約条件なし

製造制約条件あり

押し出し方向指定

完全拘束

鉛直方向荷重

構造解析チーム

日本機械学会認定計算力学技術者1級

尾西 利之

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15 シミュレーション技報 第 13 号

2.位相最適化に関わる弊社の計算環境

世の中には、いろいろな位相最適化のソフトが販

売されているが、弊社は、OptiStruct(Altair 社)と TOSCA(DASSAULT SYSTEMS 社)の2つのソフトを保有している。

両ソフトの優劣をつけることは難しいが、大きな

特徴としては次のとおりである。TOSCAは、Nastranをはじめとした外部ソルバーとの連携が可能なため、既存の CAE資源を有効活用することができる。一方、OptiStructは、構造解析ソルバーを内蔵していることで、位相最適化に必要な情報

をダイレクトに抽出することができるため、計算速

度が速い。弊社では、両ソフトの特徴を把握してお

り、客先殿のニーズに応えている体制を整えてい

る。

3.位相最適化の解析事例

(1)経緯

日之出水道機器株式会社殿(以下、日之出殿)か

らの依頼を受けて、液晶モニタースタンドの位相最

適化の計算を実施した。日之出殿は鋳鉄製品の製造

と開発を行っている企業である。そのため、モニタ

ースタンドに求められた最大の要件としては、壊れ

ないことは当然であるが、意匠性に特徴があり、通

行人の足を止めるほどにインパクトがあるものに

したいとのことであった。つまり、独創的な結果を

出してくれる位相最適化の性質と、複雑な形状を簡

単に作れる鋳物の利点を融合させることで、従来の

概念を覆すモニタースタンドの創出を狙ったので

ある。弊社も、これまで多くの位相最適化の計算を

行ってきたが、デザイン性を重視した計算は初の試

みとなった。

(2)解析条件

解析条件としては、液晶モニター重量による鉛直

方向荷重および地震を想定した水平方向荷重を入

れ、底部を完全固定とした。最適化の条件は、目的

関数を重量最小化、制約条件を変位とし、さらに対

称条件や最小部材寸法等を考慮した。

(3)解析結果

設計領域の取り方や各種条件の違いで、位相最適

化は様々な結果を出してきた。多くのケーススタデ

ィの結果、最終的には関係者が“おもしろい”と判

断した図3に示す形状で落ち着いた。

一般的には、位相最適化で出てきた形状がそのま

ま製品になることは少ない。本件については計算結

果がほぼそのまま製品になっており、鋳物と位相最

適化との相性が抜群に優れていることを示した。

解析結果

実物

図3 液晶モニタースタンドの解析結果と実物

(by TOSCA)

4.おわりに

位相最適化の概念的な説明をし、解析事例を紹介

した。位相最適化は、その設定自体は簡単であるが、

狙った形状へと導くには経験が必要である。

液晶モニタースタンドの実物は、福岡市科学館に

展示されているので、読者の皆様には機会があれば

是非お立ち寄りいただきたい。

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16 シミュレーション技報 第 13号

概要

粉体運動では、DEMによって個々の粒子を離散的に取り扱うことが多いが、計算が大規模となることが多い。故に、粉体の運動を連続体近似して計算できるようになると、計算時間の短縮に

つながり、有益である。本記事では、岐阜大の森口ら[1]が提案した、粉体を塑性流体(非Newton流体の一種)で連続体近似し、Navie-Stokes 方程式によって粉体流動を解析する手法を紹介し、そのモデルを用いた解析事例を示す。

1. 塑性流体モデルの基礎理論弾性体のレオロジー的挙動は応力とひずみ(変形量)の関係で決まるのに対し、粘性流体ではせん断応力とひずみ速度(変形速度)の関係で決定される。ここで、せん断応力�~ひずみ速度��において正比例関係が成立するものを Newton流体、それ以外のものを非 Newton流体といい、擬塑性流体・ダイラタント流体・塑性流体などがそれにあたる(図 1)。その中で、塑性流体とはせん断応力�がある降伏応力��を超えたときにはじめて流体層間にずりを生じ流動がはじまる流体のことをいう。ここに、塑

性流体モデルの構成方程式をせん断応力軸に切片

を有する�次関数として表現する。

� � ���� �� (1)

ここで、��は塑性粘度である。岐阜大の森口ら[1]

は、この切片にあたる降伏応力��をMohr-Coulombの破壊基準を用いて次式で定義した。

�� � �� tan∅� (2)

ここで、�は付着力、∅は内部摩擦角、 は拘束圧であり流体の圧力で代用される。式(2)から分かるように、本モデルの特徴は、流動における降伏応力��が一定値ではなく、物性値や局所的な拘束圧に依存

していることである。すなわち、粉粒体間の付着や

摩擦といった粉粒体ならではの特性が構成方程式

に組み込まれたモデルとなっている。

以上二式により、粉粒体特性を組み込んだ塑性流

体モデルの構成方程式が得られたが、流体解析ソル

バーでは、このせん断応力�~ひずみ速度��間のレオ

ロジー的関係性は粘性係数�というかたちでNavie-Stokes方程式に現れる。そこで、本手法では、式(2)を式(1)に代入したものをひずみ速度��で除することで、みかけ上の粘性係数

�� � min� ���� �� �1 tan∅1

�� , ����� �3�

を定義し、それを Navie-Stokes方程式の粘性係数とすることで、粉粒体の特性を流体の粘度としてソ

ルバーに取り込んでいる。ただし、ひずみ速度が極

めて小さい場合には、粘性係数は無限大に発散して

しまうため、上限値����が設けられている。以上より、本モデルは時間的・空間的に粘性係数

が変化する、一種の非 Newton流体として、粉体流動を解くモデルとなっている。

尚、壁面せん断力は、式(3)に粉体~壁面間のパラメーターを用いることで実装した。

図 1 Newton流体と非 Newton流体

技術レポート No.5

塑性流体モデルによる粉体流動解析

流体解析チーム

北本 旭央

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17 シミュレーション技報 第 13号

2. 塑性流体モデルを用いた計算例 (ダム崩壊) 前節で述べた塑性流体モデルを熱流体解析ソフ

ト FLUENTに実装し、流体解析にてよく用いられるダム崩壊に適用してモデルの検証を行った。

2.1 解析モデル壁面に沿って積み上げられた粉体(図 2)が、重力によって崩壊していく過程を解析する。本解析で

は、空気と粉体の二相流を、自由界面の追跡に適し

た Volume of Fluid(VOF)法を用いて計算する。VOF 法は、流れの方程式に加えて、体積分率の輸送方程式を解き、得られた体積分率の分布(0~1)より、各相の位置を判断する手法である。解析条件は

表 1の通りである。

図 2 ダム崩壊問題の初期状態

表 1 解析条件 Case 1 Case 2 Case 3

内部摩擦角 ∅� 30° 45° 30°粉体~壁面間摩擦角∅� 10°

付着力 ��, �� 0.0 Pa塑性粘度�� 1.0 Pa ∙ s

� 1.0 (Bingham流体)

2.2 解析結果

図 3 粉体相の時間的変化

図 3 は初期状態から粉体相の柱が崩壊し始めて平衡状態になるまでの粉体相の時間的変化である。

内部摩擦角や粉体~壁面間摩擦角の大きさによって、平衡状態における粉体相の安息角に違いが生じ

ていることが確認でき、粉体の特性をモデルに表現

できていることが分かる。

3.おわりに粉体特性を構成方程式に組み込むことで、流体解

析によって粉体の流動層を解析した事例を紹介し

た。本手法は、個々の粒子の運動を追う必要がある

場合は適当ではないが、粉体の挙動をマクロに捉え

るのみであれば、有効な手段となり得る。

参考文献

1) Moriguchi, S., Yashima, A , Sawada, K. , Uzuoka, R

and Ito, M.:Numerical Simulation of Flow of

Geomaterials based on Fluid Dynamics, Soila and

Foundations, 45(2), 155-165, (2005)

1.5s(平衡状態)

密度 � � 1.225 kg/m�

粘性係数 � � 1.795 � 10�� Pa ∙ s空気相

粉体相

29 cm

15 cm1.0

0.0

体積分率 �

Case1

密度 � � 500.0 kg/m�

粘性係数 � �式�3�

Case2 Case3

0.2s 0.2s 0.2s

0.3s 0.3s 0.3s

1.5s(平衡状態)

1.5s(平衡状態)

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18 シミュレーション技報 第 13号

概要

Smoothed Particle Hydrodynamics(SPH)法と DEM を用いた粉体と物体の連成解析例を紹介する。SPH ソルバ

ーには DualSPHysics1)というオープンソースを用いた。SPH 法によって粉体挙動を表現するため,粉体のせん断

強度を考慮した Bingham 流体モデル 2)を DualSPHysics に実装した。DualSPHysics では元々SPH 法と離散要素

法(DEM)の連成解析が可能なため、この実装により粉体と物体との連成解析も可能となる。

1.DualSPHysics への Bingham 流体モデルの実装

SPH 法での粒子運動は次式の運動方程式と連続の式で解く。

f

xW

mDt

Dv

i

ijN

j j

j

i

ij

i

122 (1)

i

ijN

jjij

i

xW

vvmDt

D

1(2)

ここで、下付き添字i,jはそれぞれ評価対象粒子,影響範囲内にある粒子での値を,上付き添字,は座標方向を示す。v は速度,D/Dt は Lagrange記述の時間微分,x は粒子の位置,m は粒子の質量,は粉体の密度(以下の解析では1000 kg/m3),は全応力テンソル,f は外力による加速度成分,W はkernel関数である。全応力テンソルは次式で表される。

p (3)

ここで,p は圧力,はクロネッカーのデルタ,はせん断応力テンソルである。pは次式で表される。

1

0Kp (4)

ここで,Kは体積弾性係数(以下の解析では 5 MPa),0は参照密度である。SPH 法で粉体を表現するため,に次式を用いる。

xv

xv

(5)

ここで,' は見かけの粘性係数であり,粉体のせん断強度を考慮した Bingham 流体モデル 2)

では次式

で表される。

maxmax

max0 tan

/pc

(6)

ここで,・・・は降伏後の粘性係数,c は粘着力(以下の

解析では 0 Pa),・・は内部摩擦角, はせん断ひずみ

速度,・max は粘性係数の最大値で,以下の解析では

・max = 1010としている。DualSPHysics では壁面や物体も

粒子で表現するため,これらの粒子でも式(3)~(6)を計

算することで境界条件が設定できる。

粉体挙動への内部摩擦角の影響を見るために,内

部摩擦角が= 20~45° の場合の円柱状の砂柱の崩壊解析を実施した。図1に砂柱の初期状態と崩壊後の

形状を示す。図の白い点は SPHの粒子である。この図

から内部摩擦角が大きいほど崩壊後の粉体斜面が急

になっており,本手法で粉体の安息角の違いを表現で

きることが確認できる。

初期状態:半径 0.3 m、高さ 0.3 mの円柱状の砂柱

図 1 内部摩擦角の違いによる砂柱崩壊後の形状の変化

技術レポート No. 6

SPH法と DEM を用いた粉体と物体の連成解析

流体解析チーム

博士(水産科学)

首藤 史

20°

25°

35°

40°

45°

内部摩擦角

粒子数 88206

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19 シミュレーション技報 第 13 号

2.SPH法と DEMによる粉体と物体の連成解析例

SPH 法と DEM による粉体と物体の連成解析例を二

つ紹介する。一つ目は直方体状に配置した粉体が崩

壊し,積み上げられたブロックに衝突する解析である。

二つ目は直方体状に配置した粉体が崩壊し,そこにブ

ロックが落下してくる解析である。DualSPHysics では

元々SPH 法と DEM の連成解析ができるため,特に

DEMに関するプログラム開発はしなくても良い。

一つ目の解析結果を図2に示す。初期の粉体とブロ

ック間の距離を変えた二種類の解析を実施した。粉体

とブロックの距離が遠い方のブロックは崩れていないが

(図 2 (b)),近い方のブロックは崩れている(図 2 (c))。

このような解析技術は土石流などの災害シミュレーショ

ンに役立つ。

0.0 s

0.2 s

0.4 s

0.6 s

0.0 s

0.4 s

0.8 s

1.2 s

0.2 m 0.1 m

図 2 SPH法と DEMの連成解析例

0.0 s

0.4 s

0.8 s

1.0 s

0.6 s

0.2 s

図 3 SPH と DEMの連成解析例

二つ目の解析例を図 3 に示す。このように粉体に物

体が落下して衝突する問題は,メッシュを用いる

Volume of Fluid (VOF)法で解くと粉体と物体の間の

気体の流れも解く必要があるため計算が不安定にな

る。一方,SPH 法では気体を解かなくても良いため,

VOF 法より安定して粉体と物体の連成解析ができる。

3.おわりに

DualSPHysics というオープンソースを用いたSPH法

と DEM を用いた粉体と物体の連成解析例を紹介し

た。SPH法は気体を解かなくても良いため,VOF法より

安定して粉体と物体の連成解析ができるのが利点であ

る。

参考文献

1)Crespo, A.J.C., Domínguez, J.M., Rogers,

B.D., Gómez-Gesteira, M., Longshaw, S., Canelas, R.,

Vacondio, R., Barreiro, A., and García-Feal, O.:

DualSPHysics: open-source parallel CFD solver on

Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH).

Computer Physics Communications, 187,

204-216, 2015.

2) 森口周二, 八嶋厚, 沢田和秀: 地盤への剛体貫

入に関する大変形問題への新しい試み, 第17回

中部地盤工学シンポジウム, 85-92, 2005.

DEM SPH

(b) 初期の粉体とブロック間の距離 0.2 m

(c) 初期の粉体とブロック間の距離 0.1 m

SPH DEM

(a) 計算条件

粉体(密度 1000 kg/m3,内部摩擦角 35°)

ブロック(密度 1200 kg/m3)粒子数 128282

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20 シミュレーション技報 第 13号

概要

構造物に生じたき裂進展の様子を解析する手法として、通常の FEM に比べてより簡易なモデル化で解析可能な

XFEM を用いたき裂進展解析機能を紹介する。

1.XFEM(拡張有限要素法)とは

通常の FEM でき裂を表現する場合、メッシュをき裂

の形状と一致させる必要が有る。さらにき裂の進展を

表現する場合、き裂の進展に合わせてメッシュを再分

割しながら解析を進める必要があり、非常に解析コスト

が掛かる。

これに対し XFEM は、要素内の不連続性を表現でき

る特別な要素(エンリッチ要素)を用いることで、メッシュ

形状とは無関係にき裂の進展を表現でき、より簡易に

き裂進展解析が可能となる(図 1)。

2.XFEM き裂進展解析におけるき裂進展速度

商用構造解析ツールのき裂進展解析機能として、

XFEMによる低サイクル疲労解析機能がある。

①低サイクル疲労解析では、き裂の進展速度を 相対

破壊エネルギ解放率⊿Gに基づいて計算する。

各サイクルのき裂の進展速度は次式で与えられる。

②一般的に知られている Paris 則のき裂進展速度は次

式である。

③材料定数 c、m については文献等の調査から多少の

記述はあるものの、c3、c4 についてはほぼ皆無であ

る。

この為、既知の c、m を用いたき裂進展の例題等への

合わせ込み解析により、材料定数c3、c4を推定する必

要がある。

3.例題による検証:ブロック半円き裂問題

簡単な例題で き

裂進展解析の機

能検証を行った。

半円形状のき裂

が存在する直方

体ブロックに、繰

り返し引張荷重

が作用した場合

(図 2)のき裂進展

量を解析し、理論

値と比較した。

技術レポート No.7

XFEMによるき裂進展解析の紹介

ソリューション第一チーム

日本機械学会認定計算力学技術者1級

坂田 健

図 1 き裂進展解析の模式図

(a)FEM:き裂に沿ってメッシュを再分割

(b)XFEM:メッシュと無関係にき裂進展を表現

図 2 ブロック半円き裂イメージ図

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21 シミュレーション技報 第 13号

①モデル化におけるき裂の定義は、任意形状の平板

として簡易に設定可能である(図 3)。

②参照解の算出には、Newman-Raju の解を用いて導

き出すフリーウェアを使用(参考文献 1)。

③材料定数は、c=2.38x10-15、m=3.65(一般鋼相当)と

して参照解を算出し、解析でき裂進展量が参照解と同

等となるように c3、c4 の値を合わせ込みを行った

(図 5)。この結果、c3=4.5x10-5、c4=1.83 となった。

板厚方向と幅方向のき裂進展量の傾向は XFEM と参

照解でよく一致しており、材料定数を適切に設定する

ことでき裂進展の様子を表現できると考えられる。

4.複雑形状におけるき裂進展方向の表現

XFEM において、き裂進展方向は「最大主応力に直角

な面」と定義されており、複雑な形状で き裂進展方向

が変化する現象を表現することができる。

一例としてリブに生じた初期き裂が方向を変え、母材

側に進展する現象を解析した(図 6)。

5.おわりに

XFEMによるき裂進展解析機能を紹介した。

今後は業務への適用に向けて、実積データの収集

等、知見の習得に取り組む予定である。

参考文献

1) 「絵とき 破壊工学 基礎のきそ」 谷村康行著

図 5 き裂長さ/載荷回数グラフ

図 4 解析結果イメージ図 6 複雑形状におけるき裂進展方向の変化

図 3 平板解析モデル リブ

母材

初期き裂

き裂が母材側へ

進展している

繰返し荷重

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22 シミュレーション技報 第 13 号

概要

時系列データの異常診断を相関係数と RT 法を用いて分析する方法について紹介する。

1. はじめに

近年、AI・機械学習・ディープラーニング等の

大規模データ分析技術は著しい進歩を遂げており

あらゆる分野でデータの有効利用が行われている。

当部のシステム開発部門においても数年前からデ

ータ分析技術の獲得に取組んでおり、中でも時系列

データの異常診断には様々な手法でトライしてい

る。 今回はその中から相関係数とRT法を用いた

時系列データの異常診断手法を紹介する。

2.相関係数とは

「相関係数」として一般的によく利用されてい

るものは図1式で示される「ピアソンの積率相関

係数」であり、rは-1 から 1 の実数値で示され、

±1に近いほど相関が強く、0に近いほど相関が

弱い事を表す。

図1 ピアソンの積率相関係数式

例えば、以下の表1に示される4つのパラメタの

時系列データを用いて、2変数の関係をグラフ化

したものを図2に示す。

表1 時系列データ例

図2 各パラメタ間の相関グラフ

図2の各グラフにおいて赤枠内の数字が

相関係数rを表す。

3.RT 法とは

RT 法とは品質工学において提唱されているパ

ターン認識手法の一つであり、主に画像分析や文

字認識に使用されるものである。

学習データと評価データを用意して、各評価デー

タが学習データとどのくらい異なるかの度合い

をアジョイントマハラノビス距離という指標で

評価する。例えば図3に示す学習用の画像データ

を用いて、図4に示す評価データを RT 法で分析

した結果を図5に示す。

図3 学習データ 図4 評価データ

この手法のポイントは

画像データの相違を

明確に数値指標で評価

できる点にあり、値が

大きいほど相違が大きい

事を表す。

図5 RT 分析結果

技術レポート No. 8

相関係数と RT法を用いた異常診断技術紹介

データサイエンスチーム

長嶋 満也

分 A B C D1 1 2 30 402 2 4 27 363 3 6 24 344 4 8 21 245 5 10 18 226 6 12 15 157 7 14 12 98 8 16 9 79 9 18 6 610 10 20 3 2

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23 シミュレーション技報 第 13 号

4.相関係数とRT法を用いた異常診断

今回の分析手法は時系列データの多変量パラ

メタ間において“本来あるべき関係が崩れてい

る”場合を異常と判断する。

例えば車の例で言うと、

速度が上がる →正常

アクセルを踏込む

速度が変わらない→異常

と判断できる。

分析の流れを図6に示す。

時間をずらしながらパラメタ間の

相関係数を計算

X1,X2,X3,X4,X5・・・・・・Xn Y1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・・・・Yn

図6 分析フロー

ある時系列データを用いて RT 分析を行って得ら

れたアジョイントマハラノビス距離(AD 値)を

グラフにした事例を図7及び図8に示す。

図7 正常データの AD値遷移

図8 診断データの AD 値遷移

図7と図8を比較すると、診断データの赤枠部に

あきらかな違いが見られ、この部分が異常を示し

ていると考える。赤枠部の A’点の時刻における

相関係数と正常時の同時刻 A 点における相関係

数をコンタ図化してみたもの図9及び図10に

示す。 図中の A からIはパラメタを示す。

図9 正常時 A 点 図10 異常時 A’点

コンタ図の赤はプラス相関の強さを表しており

青はマイナス相関の強さを表している。

図9と図10を比較すると、特に赤枠部の相関が

プラスからマイナスに変化しており、この結果か

ら判断するとパラメタAに何らかの異常が出て

いる事が推定される。

以上のように、相関係数とRT法による分析を併

用すると時系列データの中でどの時点で異常が

出ているか、さらにどのパラメタが異常を示して

いるか等の情報を得る事ができる。

5. おわりに

今回紹介した手法は数ある時系列データの分

析手法の一つであり、実際の分析に当たっては

まず適用可能か否かを事前検討する必要がある。

もし本手法が適用可能であれば、計算負荷も低い

ため、システム化によりリアルタイムな状態監視

にも適用可能である。

適用可否の判断も含めて、もしこのようなニーズ

を持っている方がおられたら是非ご相談頂きた

い。

参考文献

1)https://www.weblio.jp/content/%E3%83%94%E3%

82%A2%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%A9%8D%E7%

8E%87%E7%9B%B8%E9%96%A2%E4%BF%82%E6%95%B0:ピ

アソンの積率相関係数

2) 鈴木真人.試して究める!品質工学 MT システム解析

法入門.日刊工業新聞,2012,p119-125

R1 R2 R3

A’→時刻

正常時の時系列

生データ

診断する時系列

生データ

正常時の時系列

相関係数データ

診断する時系列

相関係数データ

RT分析

時系列アジョイント

マハラノビス距離データ出力

A

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【 コ ラ ム 】

24 シミュレーション技報 第 13号

構造解析技術者でもわかる?流体解析手法のキホン

流体解析チーム

日本機械学会認定計算力学技術者 1級(固体、流体) 春日 悠

概要

数値流体解析(CFD)の手法は、構造解析技術者にはわかりにくいらしい。なんでも、有限要素法は単純なトラスの

剛性方程式を組み立てるところから始まるが、CFDの理論ではいきなり微分方程式が出てくるからだとか。ならば、微分

方程式を使わないで説明できないだろうか、というのが本稿の趣旨である。

1.小さな箱

煙突から立ち上る煙の動きを追いたいとしよう。煙の

中の一点の周りで小さな箱を考える(図 1)。箱の体積

を∆� � ∆�∆�∆� [m3]、箱の密度を� [m3]、箱の中にある煙を構成する物質の質量を� [kg]とする。このとき、箱の中の物質の質量割合は� � �/�∆�と表されるので、� � ��� [kg]である。

図 1 小さな箱

2.箱の中の物質の質量変化

箱を出入りする物質の流れを考えよう(図 2)。箱の

中の物質の質量変化は� � ����、変化の時間を∆�とすると物質の質量変化率は�/� �����/� [kg/s]である。 箱の面から出入りする物質の量を考えてみる。とりあ

えず X方向のみを考える。左の面から流入する物質の

単位面積あたりの質量流量(流束)を � [kg/s-m2]とする。箱は小さいので単純に考えると、右の面から流出

する物質の流束は � � ∆ �/∆��∆�である。すると X方向の質量変化率∆��/∆� [kg/s]は左右の差を取ればよいので

∆��∆� � �� � �

∆ �∆� ∆� � ���� � �∆ �∆� �

3 方向合わせると、物質の質量変化率 �/� �����/� [kg/s] は次式になる。

∆���∆� � � ��∆ �∆� �

∆ �∆� �

∆ �∆� ��

図 2 箱を出入りする物質の量

3.離散化

流体解析では主に差分法や有限体積法が用いられ

る。上記の方程式の両辺を�で割って、箱の頂点の変数で方程式を表すのが差分法である。一方、有限

体積法は箱を箱のまま活用する。

箱の面の外向きを正にとる(図 3)。X 方向のみを考

え、左右の面の流束を ��、 ��とすると、それぞれ �� � � � ∆ �/∆��∆�、 �� � � �である。面積にも方向を考え、左右の面を∆���、∆���とすると、それぞれ∆��� � ∆�∆�、∆��� � �∆�∆�である。こうすると、X 方向の質量変化率 [kg/s]は単純に次のようになる。

∆��∆� � �� ��∆��� � ��∆����

すべての面を考えても簡単で

∆���∆� � � ���� ∙ ∆��

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【 コ ラ ム 】

25 シミュレーション技報 第 13 号

ここで、

�� � �� �� ���� 、 ∆�� � ∆��� ∆��� ∆�����はそれぞれ面の流束ベクトルと面積ベクトルである。要

はそれぞれの面の流束ベクトルと面積ベクトルの内積

を取った合計にマイナスを付けたものが箱の中の物質

の質量変化である、という単純な話になっている。

図 3 箱を出入りする物質の量の別表現

4.有限体積法

上の方程式は小さな箱を考えていたが、計算機で

効率的に計算するにはある程度大きな箱のほうがよ

い。そこで、箱をある程度の大きさのもので代用する。

ただ、上の形式だと面のことしか出てきていないので、

実は箱は六面体である必要がなく、任意の多面体でよ

い。有限体積法ではこの多面体を「セル」と呼ぶ

(図 4)。

セルの体積を��、面の面積ベクトルを��とし、セルの中心の値を��、��などとすると、上記方程式は次式で表される。

∆�����∆� �� � ���� ∙ ��

これが有限体積法の基礎式である。あとは流束を対流

や拡散で表現し、セルの中心の変数で表してやれば、

代数方程式が出来上がる。

5.物の見方の違い

流体と固体の大きな違いは、方程式に対流項を含

むかどうかである。これは物の見方の違いに由来する

(図 5)。

図 5 物の見方の違い

固体の運動を表す場合は、物体と一緒に移動する

点の上で表す(ラグランジュ表記)ので、特に難しいこと

はないが、流体の運動は空間に固定された点の上で

表す(オイラー表記)ので、ある量の時間変化につい

て、その点上での時間変化に加え、量が流れに乗って

その点を通過する分(対流項)が必要になる。

対流項は特殊な離散化が必要で、差分法において

単純に中心差分を適用すると、物理量に非物理的な

振動を引き起こす。これを避けるために、離散化に使う

点を流れの上流側に寄せた風上差分が用いられる。

有限体積法でも同様の方法が取られる。

流体解析で有限要素法が用いられないのは、対流

項に中心差分を用いたのと同じことになるためである。

とはいえ、いまや対流項の上流化手法が提案されてい

るので、有限要素法でも流体解析は可能である。ただ

し、構造解析で用いられる Galerkin 法ではなく、

Petrov-Galerkin 法というものである。

6. おわりに

CFD の計算手法の基本中の基本を微積分なしで説

明してみた。理解の一助になれば幸いである。

図 4 セル(2 次元)

編集後記

今後、数値解析周辺の関連技術についても幅広く掲載してゆきたく、数値解析技報 13 回目の発刊となる本号から

誌名をシミュレーション技報に変えました。

本号では最適化特集としてその関連技術レポートを 4 件掲載していますが、数値解析と最適化技術の連成により、

開発、設計等のフロント(上流)や操業分野等への貢献が期待されます。 御高覧頂ければ幸いです。 (湯本 淳)

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26 シミュレーション技報 第 13 号

製品紹介 : 汎用有限要素解析ソフト Marc2017

Marc2017.1 の新機能 トピックス 2017年11月、Marcの最新バージョン2017.1がリリースされました。

Marc2017.1 および Mentat2017.1の新機能について紹介します。

◆ 新しい材料構成則の採用

近年多く利用されてきている高強度鋼の板成形、深絞り加工などでは周期的荷重載荷を受けるためバウシンガー

効果を精密に考慮する必要があります。このような挙動を再現するために、従来の降伏曲面(=正規降伏面)に達

する前の非弾性ひずみを考慮できる下負荷面モデル(=橋口モデル)が本バージョンで採用されました。

正規降伏面に相似な下負荷面を表現することで、従来よりも実現象に近い状態を再現可能な構成則として期待

できます。

◆ ピラミッド要素の採用

三角形と四角形の面から構成される五面体要素が利用可能になりました。

三角形四面体要素(テトラ要素)と四角形六面体要素(ヘキサ要素)が混在するモデルでの要素遷移が表現できるよう

になります。

表示操作のアイコン化により、

操作性が向上しました。

図 1-2.パラメータ設定画面

等方硬化パラメータ

移動硬化パラメータ

純弾性限界範囲

R の発展則

図 1-3.応力-ひずみ関係の一例 等方硬化(赤)と移動硬化(紫)と下負荷面モデル(緑)の比較

正規降伏面

下負荷面

図 1-1.降伏曲面イメージ

図 2-1.ピラミッド要素(一次要素、二次要素) 図 2-2.テトラ要素とヘキサ要素の接合

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27 シミュレーション技報 第 13 号

新機能の詳細については、Marc2017.1 に同梱されているリリースガイドを参照ください。

開催日:2017年11月27日(月)

場 所:北九州テクノセンター

弊社が販売代理店となっているエムエスシーソフトウェア(株)様

(以下、MSC)との共催で、数値シミュレーションの最新情報および

事例を紹介する「第 20 回 CAE 活用事例セミナー」を開催しました。

今回のセミナーはひずみ評価を実験と CAE 検証した事例について、

鹿児島大学 機械工学専攻の池田徹教授と新日鐵住金(株)鉄鋼研究所 下本豪紀様にご講演をいただきました。

MSC からは Marc の最新情報、機構解析ソフト Adams での機械搬送系事例の紹介、(株)電通国際情報サービス様

からは Adams と DEMの連成解析事例をご紹介いただきました。

また当社からはオープンソース CAE ソフトウェアの現状と当社で取り組んだ事例を紹介しました。

九州地場の企業および教育機関の約 40 名の方々にご参加いただき、有意義な情報発信活動となりました。

弊社取扱製品

弊社では構造解析、流体解析などの受託解析に加え、エムエスシーソフトウェア株式会社の代理店として、

Marc など MSC ソフトウェア製品の販売を行っております。Marc 導入をご検討の際には下記窓口へご相談ください。

<お問合せ先>ソフトウェア契約担当窓口 TEL: 093-588-7233 / E-mail:[email protected]

※ 記載の製品名等の固有名詞は各社の商標または登録商標です。

◆ その他の主な新機能

熱による接触判定

高次要素のアダプティブメッシュ

MUMPSソルバーの改良

温度による接着の形成、剥離のコントロールが可能です。

利用用途)金属の溶融、接着剤の硬化・溶融など

二次要素のアダプティブ・リゾーニングに対応しました。

計算コスト削減、曲面への追従性がよくなります。

剛性マトリクス構築が分散化され、またOut of Core での計算が

できるように改良されました。使用メモリが低減できます。

材料データファイルの暗号化機密性の高い材料データを暗号化して外部ファイルとすることで材料物性の詳細を公開せず解析を委託できるようになります。

○トピックス:第20回 CAE 活用事例セミナー開催

◆ Mentat の追加機能

・接触ボディの色設定が任意に指定可能になりました。 これまでのバージョンでは接触ボディの表示・非表示でボディの配色が変更されていましたが、個別に表示色を指定できるようになりました。 さらに、接触ボディの色指定は入力データ(DAT ファイル)にも出力され、ポスト処理でも同じ色で表示できます。 ・マルチレベル UNDO 1 回のみだった UNDO機能が複数回可能になりました。 Mentat 起動コマンドにオプション設定を行って使用します。設定例)Windows 環境の場合

mentat.bat ‒multiundo on ‒undo_levels 20 最大 50 回まで設定可能。

図 3.接触テーブルでボディ設定色の確認が可

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NSプラント設計株式会社 NS PLANT DESIGNING CORPORATION

シミュレーション技報 第 13 号 2018 年 1 月 発行発 行 NS プラント設計株式会社 http://www.npd.eng.nssmc.com発行 責 任 者 シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部 湯本 淳 本 社 〒804-0002 福岡県北九州市戸畑区中原 46-59

TEL 093-588-7240 FAX 093-882-7655 〒141-0032 東京都品川区大崎 1-5-1 大崎センタービル15F

TEL 03-6665-4606 FAX 03-3492-2023 ※ 本誌掲載の記事,図表,写真などの無断使用、転載、複製を禁じます。

本社 東日本営業チーム

中 原●新日鐵住金八幡製鉄所

●北九州テクノパーク

歩道トンネル

至戸畑

至小倉

北九州都市高速道路

九州工大前

19

新日鉄住金 エンジニアリング北九州技術センター

山手線

Think Park

大崎駅

東口

至品川

至渋谷

大崎フロントタワー

アートヴィレッジ大崎

ニューオータニイン 東京

ゲートシティ大崎

TOC大崎ビル

1F

3F

目黒川

新日鉄住金エンジニアリング 本社内

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