kankyou houkoku 2006

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2006 環境報告書 Environmental Report

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2006環境報告書 Environmental Report

Introduction

C O N T E N T S

日本の資源とエネルギーについて

エネルギー・金属資源少国、日本。 石油、天然ガス等のエネルギー、銅や亜鉛等の非鉄金属は、国民生活や産

業社会にとって必要不可欠な資源です。

しかし我が国は、こうしたエネルギー・金属鉱物資源の国内生産量と消費

量との割合が著しくバランスを欠いており、これらの資源のほとんどを海外

からの輸入に頼っているのが現状です。

例えば石油に関して我が国は、米国、中国に次ぐ石油消費大国であり、そ

のほぼ100%を輸入しています。また、石油、石炭に次ぐ「第3のエネルギー

資源」である天然ガスは、近年、発電向けを中心に急速に需要が伸長してい

ますが、我が国は、そのほとんどをLNG(液化天然ガス)として輸入しており、

世界最大のLNG輸入国となっています。

一方、ベースメタルのひとつである銅について、我が国の銅需要量は現在、

世界第3位であり、そのほぼ100%を輸入し、また亜鉛については9割以上

を輸入しています。更にハイテク製品の材料として必要不可欠なニッケル

やクロム等のレアメタルのほぼ100%を輸入しています。

これらのエネルギー・金属鉱物資源を安定的に確保し、供給し続けること

は、我が国における国民生活の安定や経済・産業社会の発展に密接に関係

する、極めて重要なテーマとなっています。

Introduction 日本の資源とエネルギーについて

理事長メッセージ

JOGMECの概要

環境配慮方針、計画及びその取り組みの体制 -HSEマネジメントシステム-

HSE方針 HSEマネジメントシステム 環境配慮計画 GS-HSEマネジメントシステム HSE審査の実施 HSE教育

Activity● 石油・天然ガス開発支援業務と 地球環境

Activity● 金属資源開発支援業務と地球環境

Activity● 資源備蓄業務と地球環境

Activity● 鉱害防止支援業務と地球環境

資料編 オフィス活動における環境パフォーマンス及び HSE目的・目標達成状況

2

3

5

7

9

13

17

21

25

環境保全対策が求められるなかで。 その一方で、二酸化炭素(CO2)等大気中の温室効果ガス増大による地

球温暖化問題が深刻化しつつあります。2005年2月の「京都議定書」の発

効により、先進諸国に対して、地球温暖化の原因となる温室効果ガスに関し

て、1990年を基準とした削減率が定められ、国際的な地球温暖化対策が

急務となっています。日本は2008年~2012年の間に温室効果ガスを

1990年比6%削減するという厳しい削減目標を背負うことになりました。

現在、日本では、「省エネルギーによる温室効果ガス排出の抑制」「太陽光、

風力、バイオマス等の新エネルギーの積極的活用」「石油・石炭から、天然

ガス等CO2排出量の少ないガス体エネルギーへの転換」「石油・石炭の利

用効率の向上」を基本方針とし、産業分野、民生分野においてさまざまな地

球温暖化対策が推進されています。また、こうした地球温暖化問題のみなら

ず、廃棄物処理場の残存容量の減少、化学物質等による大気、水域、土壌・地

下水等への環境汚染問題等、さまざまな地球環境問題が顕在化しつつあり、

それらへの対応がよりいっそう求められています。

石油

日本の石油、天然ガス、金属鉱物資源の海外依存度(2005年)(出典:経済産業省、ICSG、ILZSG等)

天然ガス 銅 亜鉛

99.7% 96.3% 100% 93.2%

本報告書は独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の過去と現在の事実だけでなく、将来に関する予測・予想・計画等も記載しています。これらの予測・予想・計画は、記述した時点で入手できた情報に基づいた仮定ないし判断であり、これらには不確実性が含まれています。従って、将来の事業活動の結果や将来に惹起する事象が本報告書に記載した予測・予想・計画とは異なったものとなる恐れがあります。 当機構は、このような事態への責任を負いません。読者の皆様には、以上をご承知いただくようお願い申し上げます。

編集方針 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)

は、近年の世界的な環境保全意識の高まり、更には2005

年4月に施行された「環境情報の提供の促進等による特

定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法

律」(以下、環境配慮促進法)を踏まえ、本年から環境報告

書を作成し、当機構の地球環境保全に向けた方針・マネジ

メント体制、及び環境保全技術開発の状況等の取り組み

を中心に報告しています。

免責事項

本報告書は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(海外事務所を除く)を報告対象としています。なお、P25で報告している「オフィス活動における環境パフォーマンス」の集計範囲は本部ならびに技術センターです。

報告対象組織

2005年4月1日~2006年3月31日 ※一部の情報については、2006年3月31日以降の情報を含みます。

報告対象期間

●環境省「環境報告書ガイドライン(2003年版)」 ●Global Reporting Initiative(GRI) 「サスティナビリティ・リポーティング・ガイドライン2002」

参考にしたガイドライン

2006年6月

発行日

2006

1

2

3

4

環境報告書 Environmental Report

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 21

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

理事長

理事長メッセージ

資源・エネルギーの安定供給を支えるとともに、 「環境保全」に配慮し、 持続可能な社会の構築に貢献していきます。

■「安定供給」とJOGMEC 日本は、石油、天然ガス、金属鉱物資源等に関して、世界有数

の消費国にもかかわらず、これらの資源のほとんどを海外から

の輸入に依存しています。その一方で、近年、世界の資源トレ

ンドは需給の逼迫化と価格の高騰という大きな問題を引き起

こしています。

その背景には、中国、インド等の高度経済成長による資源の

需要増と資源獲得競争の激化があります。供給面においても、

資源開発プロジェクトの技術的・経済的条件に厳しさが増し、投

資リスクが拡大するとともに、資源保有国における国有化や規

制強化の動きが加わって、新たな資源開発、権益獲得がより難

しい状況になっています。また、世界規模の企業再編に伴う資

源メジャーによる寡占化や投機資金の資源市場への流入等も

価格高騰の一因といわれています。

こうした変化の激しい環境のなかで、石油、天然ガス、金属鉱

物資源を安定的に確保し、供給し続けることは、日本の国民生

活及び社会経済の安定にとって極めて重要な課題となってい

ます。JOGMECは、この国家的課題に対し、資源の探鉱・開発

に必要な支援や資源の備蓄を通じて、資源・エネルギーの安定

供給のための積極的な役割を果たしています。

■「環境保全」とJOGMEC

環境保全への配慮は、資源・エネルギーの安定供給とともに

JOGMECに与えられたもうひとつの社会的役割です。石油・

天然ガスと金属鉱物資源という貴重な天然資源の開発・安定

供給に携わるJOGMECは、これらの資源の発掘から開発・生

産の各段階における環境保全対策に取り組んでいます。

石油、天然ガスといったエネルギー資源においては、より効

率的な原油回収を実現するEOR(原油増進回収)技術の開発

をはじめ、石油や石炭に比べてクリーンなエネルギーである天

然ガスの有効利用に資するGTL(天然ガスの液体燃料化)技

術の開発によって、石油を補完するエネルギーの開発を推進

しています。

金属鉱物資源に関しては、金属含有量の少ない鉱物から効

率的に金属資源を抽出するバイオリーチングの技術開発と、循

環型社会の実現をめざして金属鉱物資源のリサイクル技術の

確立に向けた取り組みを展開しています。石油・石油ガス及び

レアメタル国家備蓄においては、安全とともに環境保全に配慮

した管理を徹底しています。更に休廃止鉱山からの有害物質

の流出を防止する鉱害防止業務を鋭意推進しています。

これらの取り組みを継続・発展させていくことで、限りある資

源の有効活用を促進すると同時に、エネルギーや資源の利用

に伴う環境負荷を低減し、持続可能な社会づくりに貢献してい

きます。

■HSEマネジメントシステムの運用

JOGMECは、環境保全政策を推し進めるツールとして、国

際規格であるISO14001及びOHSAS18001を統合した

独自のHSEマネジメントシステムを構築し、運用しています。

このシステムは、HS(Health & Safety=労働安全衛生)、

E(Environment=環境)にかかわるリスクの低減活動を継続

的に推進するとともに、万一の場合に迅速的確な判断・行動が

とれるよう緊急時対応計画を整備したものです。HSEマネジ

メントにより、事業や業務に内在するリスクを低減し、環境汚染、

人身事故等の未然防止に成果をあげています。

また、海外における石油、天然ガス、金属鉱物資源の探鉱・開

発においても、環境や安全への配慮は不可欠です。JOGMEC

は、日本の石油開発会社の海外における探鉱・開発の支援策と

して出資や債務保証を実施するに際してもHSE審査を徹底し

ています。更に、業務委託先等の企業が実施する間接事業につ

いても、HSE方針に基づくように要請することでHSEリスクの

低減を進めていきます。

このように、JOGMECは環境に配慮した事業活動を幅広く展

開することで、持続可能な循環型社会の構築に貢献していきます。

■情報開示

JOGMECは、これまでいろいろなかたちで資源・エネルギー

の安定供給への取り組み、環境への配慮、HSEマネジメント等

について可能な限り情報公開に努めてきましたが、「環境配慮

促進法」の施行を機に、このたび環境報告書というかたちで情

報開示を行うこととなりました。

この環境報告書は、JOGMECの環境保全への取り組みの内

容をとりまとめ、国民の皆様に開示できる良い機会であり、ぜひ

この機会に皆様にJOGMECの環境保全活動についてご理解

いただき、ご指導・ご鞭撻を頂戴できればと存じます。

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 43

石油公団 金属鉱業事業団 ●資金面での支援 ●インテリジェンス面での支援 ●技術分野での支援 ●国際協力 ●備蓄業務(石油・石油ガス)

●資金面での支援 ●インテリジェンス面での支援 ●技術分野での支援 ●備蓄業務(レアメタル) ●鉱害防止対策

我が国の石油開発企業への出資及び債務保証を実施するとともに、

金属鉱物の国内外の探鉱事業に対する出資・融資・債務保証を行い

ます。また、鉱害防止資金に対する融資・債務保証を行います。

資源保有国や主要外国開発企業の動向、国際市場の動き等に関す

る情報収集・調査分析を実施し、その成果を企業や国及び地方自治

体に開示・提供します。

日本企業による石油・天然ガス探鉱・開発プロジェクトを支援するた

め、海外の地質構造調査、国内の基礎調査等を実施します。また、非

鉄金属鉱物資源の探鉱・開発について、日本企業のニーズを踏まえ

た地質構造調査や海外の国営鉱山公社等との共同調査を実施します。

石油・天然ガス及び非鉄金属鉱物資源の探鉱・開発に関する技術開

発のほか、天然ガスの液体燃料化(GTL)技術やメタンハイドレート

等の非在来型資源開発の研究・開発、非鉄金属のリサイクルや製錬

分野の技術開発等を行っています。

石油・石油ガス、ニッケル、クロム等の希少金属(レアメタル)を国内

において安全かつ効率的に備蓄する一方、供給不足等の緊急時に

おいては、備蓄物資の放出・売却を機動的に実施します。

日本国内の金属鉱業に起因する鉱害を確実かつ永続的に防止する

ため、融資事業、鉱害防止調査・技術調査等の対策事業を行います。

JOGMECの概要

石油、天然ガス等のエネルギー資源と 非鉄金属鉱物資源の安定的な供給確保を通じて 国民生活の安定と経済・産業社会の発展を支えています。

JOGMECの事業機能

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構―――JOGMEC(Japan Oil, Gas and Metals National Corporation)は、2002年7月26日に公布された「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構法」に基づき、2004年2月29日に設立されました。石油、天然ガス等のエネルギー資源の安定的な供給確保の役割を担ってきた石油公団の機能と、非鉄金属鉱物資源の安定的な供給確保の役割を担ってきた金属鉱業事業団の機能が集約されています。

石油、天然ガス、非鉄金属鉱物資源の安定供給を維持するためには多様な調達手段を整えておくことが必要不可欠です。JOGMECは、さまざまな支援機能を活かして、資源の安定調達を支えています。

正 式 名

設 立

主な所在地

資 本 金

支 出 予 算

職 員 数

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

2004年2月29日

本部 〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー TEL.044-520-8600 FAX.044-520-8710

技術センター 〒261-0025 千葉県千葉市美浜区浜田1丁目2番2号 TEL.043-276-9212 FAX.043-276-4061

金属資源技術研究所 〒017-0202 秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山宇古館9番地3 TEL.0186-29-3829 FAX.0186-29-3849

1,774億円(2006年4月1日現在) (2006年度) 石油天然ガス開発部門 450億円 石油・LPガス備蓄部門 10,274億円 金属鉱業部門 258億円

506人(2006年4月1日現在)

機構概要

出融資・債務保証機能 1

情報収集・提供機能 2

地質構造等の調査機能 3

技術開発・技術支援機能 4

資源備蓄機能 5

鉱害防止機能 6

ロゴマークについて JOGMECの表記は、当機構の英名(Japan Oil, Gas and Metals National Corporation)の頭文字を組み合わせています。 シンボルマークは地球をモチーフ 世界規模で地質構造調査・探査を行っていることをデザインコンセプトとして開発しています。 3つの形は石油・ガス・非鉄金属鉱物資源を表現 地球全体の一部をトリミングして、大きな地球の存在を創造しています。 3つのカラーは「自然」「大地」「誠実」を表現 「グリーン」「オレンジ」「ブルー」の3色で表現しています。

65 環境報告書 2006 Environmental Report 2006

ISO14001/OHSAS18001認証取得

● HSE活動全般の事務及び監査の運営にかかわる事務のとりまとめ

●組織横断的なHSEプロジェクトの実施

●「HSE監査年間計画」に基づくHSE監査の実施

●理事長へのHSE監査結果の報告

●HSEMSの継続的改善を目的とする被監査グループに対する改善提案

●HSEMSの構築・維持・運用

●「HSEMSマニュアル」の作成

●一般研修及び認定研修の実施

●「HSE監査年間計画」の作成

HSE管理責任者

本部(14グループ) 技術センター(3グループ)

●HSE方針の策定 ●必要な経営資源(人材、設備、資金、技術等)の準備と配置

●HSE監査結果等に基づくHSEMSの見直し

理事長

●「グループ目的・目標マネジメントプログラム」の作成

●自グループに関連する手順書の承認

●特別研修の実施

●自グループのHSE活動の実施・維持・管理

●自グループに関連する手順書の作成

●自グループのHSE活動に関するグループリーダーの全般的な補佐

グループリーダー HSEリーダー

HSE推進事務局 HSE監査員

HSEマネジメント体制と主な役割

項目 目標 対策

区分 研修名 研修実施日 受講者数

※ HSE活動状況の詳細は、P25-26をご参照ください。

2005年度 環境配慮計画

2005年度 研修実施状況

省エネルギーの 推進

省資源推進

ゴミの削減・ リサイクル

環境物品調達・ 管理

電気使用量の 削減

紙使用量削減

分別及びリサイクル 推進による 廃棄物削減

調達目標の達成

●PCモニターのスイッチオフ ●昼休みの消灯 ●不要な照明等のスイッチオフ ●空調温度コントロール

●PCプリンター・コピー機での両面利用促進

●不要なプリントアウト削減 ●情報提供資料のメールマガジン化

●HSEパトロールの実施 ●分別を明示した紙をゴミ箱へ表示

●物品等の購買時に環境物品等の調達の徹底

●調達方針の作成及び調達実績の公表

一般研修

認定研修

職員研修

幹部研修

補講

HSEリーダー研修

HSE監査員研修

6月22日、7月4日、6日

6月28日

1月20、25、26、27日、 2月1日

6月28日

6月22日

350名

22名

103名

39名

31名

環境配慮方針、計画及びその取り組みの体制―HSEマネジメントシステム―

1. 法規制の遵守 HSEに関する法規制とその他の要求事項を遵守すると共に、業界のベストプラクティスに基づき自主基準を設定します。 2. 自主管理と関連企業との協働による 負荷の低減 (1)HSEマネジメントシステムの継続的改善と同システ

ムに基づく活動の実施により、事業や業務に内在するHSEリスクを低減し、環境汚染、人身事故等を防止します。また、事故が発生した際は、迅速且つ的確な対応が可能となるよう、緊急時対応計画を整備します。

(2)環境維持に貢献するため、天然ガスの有効利用に関する調査・研究を継続します。

(3)出融資・債務保証先、業務委託先等に対し、本方針に従い事業活動・作業が実施されるよう要請し、ともに取り組みます。

3. 方針の周知と教育訓練 (1)本方針を役職員に周知し、方針の実行を確実にします。 (2)教育訓練の実施により、役職員にHSE活動に関する役

割と責任を自覚させ、HSEに関する意識の向上と主体的なHSE活動への参加を促し、効率的なHSEマネジメントシステムの運用を目指します。

4. 情報の公開 利害関係者と相互理解を築くため、本方針、HSEマネジメントシステムの運用結果等を公開します。 5. HSE活動の継続とサイトの拡大 本年度は、春日事務所と技術センターにおいてHSE活動を継続的に実施すると共に、本部においてもISO14001・OHSAS18001認証サイト拡大のための活動を開始します。 2005年4月28日

環境配慮計画

JOGMECは、HSEマネジメントシステムのなかで事業活動にか

かわる環境配慮計画を策定しています。2005年度は地球温暖化、

天然資源の枯渇、廃棄物の増加による汚染等の観点から、本部及び

技術センターにおいて電気使用量の削減、紙使用量削減、分別及び

リサイクル推進による廃棄物削減を推進しました。

また、JOGMECでは、「国等による環境物品等の調達の推進等

に関する法律」に基づき、特定調達物品等の調達目標を定めた調達

方針を毎年度作成し、できる限り環境への負荷の少ない物品等の

調達に努めています。

2005年度の環境配慮計画における主な項目は以下の通りです。

GS-HSEマネジメントシステム 石油・天然ガス等の探鉱・開発業務のうち、自らがフィールドオペ

レーションを実施する海外地質構造調査、国内基礎物理探査等の事

業では、①組織が責任を持ち、人身事故、環境汚染及び健康障害の

回避に努めることが必要、②当該事業においては、HSEマネジメン

ト能力の高いコントラクターを適正に管理することがリスクの低減

に有効であるという考えのもと、石油公団時代に構築した「GS-

HSEマネジメントシステム」(HSEマネジメント能力を考慮したコ

ントラクターの選定方法、地震探査/坑井掘削に関するオペレーショ

ナルポリシー等を含む)を運用しています。

HSE審査の実施 JOGMECは、探鉱出資、開発債務保証等により、民間プロジェク

トを支援していますが、支援事業の採択においては、技術面と資金

面の審査のみならず、HSEの観点からも審査を行っています。

JOGMECは自ら事業を実施する立場にはありませんが、その事業

に付随する人身事故や環境汚染及び健康障害といったリスクの回

避に努めることが出資や債務保証を行う組織の責務であると考え

ています。

このHSE審査では、(1)法令が遵守されること、(2)HSEに関

する事故や災害の未然防止のために適切な探鉱・開発計画が策定

されていること、(3)事故や災害が発生した場合を想定し、迅速・的

確な対応計画が準備されていることを重視しています。

HSE教育

JOGMECの実施するHSE教育・訓練は、役職員に対し自覚を促

す「一般研修」と、特定業務の実施に必要とされる知識・技法をテー

マとする「特別研修」、そしてHSE活動をサポートするために必要

とされる知識・技法をテーマとする「認定研修」の3つから構成さ

れています。

一般研修には、「職員研修」と「幹部研修」があり、主な研修内容は、

HSEMSの要求事項、HSE方針及び手順書を遵守することの重要性、

各人の業務改善がもたらすHSE上の利点、緊急事態への対応等で

す。役職員は年1回以上研修を受けることになっています。

特別研修には「特別業務研修」と「法定業務研修」があり、各グルー

プで教育・訓練・資格認定のニーズを明確にしたうえで、随時実施し

ています。

認定研修には「HSEリーダー研修」と「HSE監査員研修」があり

ます。HSEリーダー研修は、HSE活動を推進するうえで必要な知

識をテーマとする研修でありHSEリーダーを対象に年1回以上実

施しています。また、HSE監査員研修は、監査員として必要な知識

及びHSE監査技法をテーマとする研修で適宜実施しています。

2005年度における一般研修及び認定研修の実施状況は以下の

通りです。

HSE方針

石油・天然ガスの探鉱・開発事業には、爆発・火災による人身事故、

原油・汚染物質による環境汚染、有害物質による健康障害などの大

規模災害を引き起こすリスクが含まれます。世界の石油開発業界

では、1980年代の2件の大規模災害を契機として、労働安全衛生

及び環境(HSE=Health, Safety and Environment)に配慮し

た操業の重要性に関する認識が高まり、本社組織、操業現場にHSE

マネジメントシステムを導入し、これらのリスク低減に関する取り組

みが開始されました。

こうした背景のもと、我が国の資源・エネルギー安全保障を確保

するため、石油、天然ガス、非鉄金属鉱物資源の探鉱・開発支援、石油・

石油ガス・希少金属鉱物の備蓄、鉱害防止支援等の事業を推進する

JOGMECでは、これらの事業がHSEに関する著しいリスクを内在

していることを認識し、人身事故、健康障害、環境汚染等を回避する

ため、直接業務のみならず、出融資・債務保証先等の企業が実施す

る間接事業についても、これらの企業と協働してリスクを低減すべ

く、2005年4月にHSE方針を策定し、機構内組織にこの方針の徹

底、浸透を図っています。

HSEマネジメントシステム(HSEMS)

HSEマネジメントシステムは、旧石油公団が2002年に自らの

HSEリスク低減と我が国の石油開発業界等のHSEパフォーマンス

の向上を目的として導入したものであり、2005年に金属部門に拡

大され、JOGMEC全体として運用されています。また、JOGMECの

HSEマネジメントシステムは、環境の国際規格ISO14001と労働

安全衛生の国際規格OHSAS18001を統合し、運用されている点

に特徴があり、JOGMECはこれら2つの国際規格の認証を維持し

ています。

今後も、環境物品調達の推進、電力・紙使用量の削減等から石油、

天然ガス、非鉄金属鉱物資源の探鉱・開発、備蓄、鉱害防止事業に

おけるHSEリスクの低減に至るまで、役職員全員が一体となって

取り組んでいきます。

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 87

日本における京都議定書の対象となる温室効果ガス排出量の推移

六フッ化硫黄(SF6) 一酸化二窒素(N2O)

(年度)

(百万トン) 1,400

1,200

1,300

1,000

1,100

0 2002

1,336.2

基準年 2003

1,301.4

2005

パーフルオロカーボン(PFCs) ハイドロカーボン(HFCs) メタン(CH4) 二酸化炭素(CO2)

1,339.1

2004

1,3301,237

世界のエネルギー消費量の推移と見通し

中東 アフリカ 中南米 中国

出典:OECD/IEA「World Energy Outlook 2004 EDITION」

出典:温室効果ガスインベントリオフィス

旧ソ連等 OECD(日韓除く) アジア(日韓含む)

(年度)

(石油換算・百万トン) 18,000

12,000

15,000

3,000

6,000

9,000

0 20021971 2010 20302020

10,345

12,194

16,487

5,536

14,404

石油・天然ガス開発支援業務と 地球環境

Activity

エネルギー利用と温暖化問題

世界のエネルギー消費量がどんどん増え続けているなかで、 どんな地球温暖化防止策が求められているのだろう?

より温室効果ガス排出量の少ないエネルギーへの シフトが大きなテーマ

石油は、天然ガスや原子力等ほかのエネルギー利用が進む

なか、その経済性・利便性等から、依然として日本の一次エネ

ルギーの最大シェアを占める重要な資源です。しかし、日本で

は石油のほぼ全量を輸入に頼っており、石油の安定供給体制を

維持していくためには、石油の備蓄や自主開発、産油国への協

力等を効果的・効率的に進めることが不可欠です。

こうしたなか、JOGMECは、「資金支援」「情報収集、分析・

提供」「技術開発支援」「産油・産ガス国との協力」の4つの事

業を行っています。

「資金支援」は、事業リスクが非常に高く、多くの資金と時間

が必要な石油・天然ガスの探鉱開発を民間企業が進められるよ

うに、出資・債務保証等を通じた支援を実施する事業です。「情

報収集、分析・提供」は、国内外の研究者・関係機関との人的ネッ

トワークを活用して、世界の資源エネルギー情勢や産油国の法

制・税制、新規鉱区公開情報、海外の石油会社の動向等を調査・

収集・分析し、民間企業に提供する事業です。「技術開発支援」

は、幕張にある技術センターにおいて石油・天然ガスの探鉱・開

発に不可欠な共通基盤の研究開発や、油・ガス田の操業技術の

研究、技術成果の普及、技術情報の管理・教育訓練を行い、石油

開発業界の活動を技術面から支援する事業です。技術開発に

あたっては、外部研究機関と密接な協力関係を築いています。「産

油・産ガス国との協力」は、技術協力を中心に共同事業を展開

するほか、日本で開催する研修に技術者を招く教育訓練事業を

実施しています。

民間企業への油田・ガス田の探鉱開発にかかわる出資及び債務保証業務 国際石油・天然ガス探鉱開発関連情報の収集・分析・提供等

● ●

民間企業の石油・天然ガスの探鉱・開発事業及び業務にかかわる支援

事業活動

日本企業の技術開発課題克服のための技術開発 民間企業の探鉱開発プロジェクト支援のための地質構造等の調査 産油・産ガス国との共同研究 データベースを活用した地質情報等の蓄積と情報提供

● ● ● ●

石油・天然ガス探鉱開発にかかわる技術開発の推進、地質構造等の調査

1

※ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)2001年発表

※ 基準年は、一酸化二窒素(N2O)、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)は1990年度、オゾン層を破壊しないフロン類(HFCs、PFCs、SF6)は1995年度

※ 破線は基準年の排出量を表す

地球温暖化問題という世界的な危機意識を背景に、2005

年2月16日には、先進国から排出される温室効果ガスの具

体的な削減数値目標や、その達成方法等を定めた「京都議

定書」が発効し、日本は、2008年から2012年の間に

1990年比マイナス6%のCO2削減が義務づけられました。

日本は、1973年に発生した第一次石油危機以来、石油依

存度を低減させ、石油に代わるエネルギーとして、原子力や

天然ガスの導入を図ってきました。その結果、石油依存度は、

2003年度には、50%と第一次石油危機時(77%)から大

幅に改善され、かわって天然ガス(14%)、原子力(9%)の

割合が増加する等、エネルギー源の多様化が図られています。

しかしながら、京都議定書の目標を達成するためには、さら

なる取り組みが必要です。

政府は、2002年に定めたエネルギー基本計画――「安

定供給の確保」「環境への適合」「市場原理の活用」という

3つの基本方針に則った長期的、計画的なエネルギー政策

を積極的に進めています。例えば「環境への適合」としては、

「省エネルギーによるCO2等温室効果ガスの排出抑制」「原

子力や太陽光、風力、バイオマス等の新エネルギー利用の

推進」「石油・石炭からCO2排出の少ないガス体エネルギー

への転換」「石油・石炭利用効率の向上」等があげられてい

ます。

JOGMECは、これら施策に沿って、クリーンエネルギーで

ある天然ガスの普及や石油開発事業におけるCO2削減のた

めの技術開発、情報提供等を行っています。

現在、世界のエネルギー消費量は増える一方です。国際エ

ネルギー機関(IEA)の見通しによれば、2030年の世界の

エネルギー消費量は、BRICs諸国の急激な経済成長等を背

景に、16,487百万トンに達すると予測されています。

こうした背景から、現在、「化石燃料の枯渇問題」やエネル

ギー使用によって排出される温室効果ガスがもたらす「地球

温暖化問題」が世界的に懸念されています。とりわけ温室効

果ガスのなかで最も影響の大きい二酸化炭素(CO2)は、産

業革命以降、石炭・石油等の使用量とともに増加し続けており、

このままでは2100年に地球の平均気温は1.4~5.8℃上

昇するともいわれています※。

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 109

地球温暖化のしくみ 石油・石炭に比べてSOx、NOx、CO2の排出量が少ない天然ガス

天然ガス 石油 石炭

(%) 100

75

25

50

0 NOx(窒素酸化物) SOx(硫黄酸化物) CO2(二酸化炭素)

排ガスからの二酸化炭素分離回収と炭酸ガス攻法のしくみ

GTLとは

出典:IEA「Natural Gas Prospects to 2010」(1986)

排ガスの大気中への 放出をストップ 生産井

発電所で発生する排ガスからCO2を分離・回収。これによって大気中へのCO2排出量を低減します。

排ガス

石油を含む貯留岩層(油層)に炭酸ガスを圧入。これによって石油の性状を変え、流動性を与えることにより、回収率の向上を実現します。

貯留岩層 発電所

排ガス

発電所

CO2を含む 排ガス

CO2回収 石油回収

天然ガス 天然ガス液体燃料 (液状炭化水素)

GTL(液体燃料化) ●自動車用燃料 (ディーゼル、メタノール) ●民生用燃料(ストーブ用等) ●燃料電池用燃料等

●都市ガス ●発電用燃料等

適度な温室効果 温暖化が進んだ状態

太陽光

赤外線

この熱が 地球を適度な 気温に保つ

大気

排気ガス(炭酸ガス)

フロンガス製品

石炭・石油燃料の 使用(炭酸ガス)

大気中に 温室効果 ガスが 増えた状態

赤外線

太陽光

CO2

原油

メタンハイドレート

Check Point

クリーンエネルギーとして注目される天然ガス。 その二酸化炭素排出量は、石炭・石油よりも少ない。

1

JOGMECは、地球にやさしい「天然ガス」の有効利用に貢献する 新しい技術の研究開発を推進しています。

R&D Report日本近海に存在する次世代エネルギー資源 「メタンハイドレート」の探査・研究

R&D Report天然ガスの利用用途を拡げる 「GTL(天然ガス液体燃料化)」技術の研究

1 2

Check Point

地球温暖化の原因は、二酸化炭素等 温室効果ガスの大気への放出にある。

2

JOGMECは、社会で発生する二酸化炭素の大気排出の抑制にも貢献する 石油開発に関する新技術の研究開発に取り組んでいます。

石油・天然ガス開発支援業務と地球環境 Activity 1

天然ガスは、高い熱量を発する一方で燃焼時の二酸化炭

素(CO2)排出量が石油や石炭に比べ少ないという大きな特

長を持っており、地球にやさしいクリーンなエネルギー資源

として注目されています。現在は、天然ガスから熱や蒸気、電

気といった複数のエネルギーを同時に生み出し、ビルや家庭

の冷暖房をはじめ、給湯、電力供給等を行うコジェネレーショ

ン・システムや、自動車用燃料電池の原料等、より幅広い分野

での活用が進められています。

R&D Report二酸化炭素の排出抑制に貢献し、 石油回収率を高める「炭酸ガス攻法」の研究

3

石油開発において、油層が持つ自然のエネルギーを利用して地

下の石油を回収する1次回収では、石油は5~25%程度しか回収

されません。今日、世界中で大規模油田の発見が難しくなり、また

探鉱・開発コストも上昇しているなか、既存の油田の油層(貯留岩

層)内に炭酸ガス(二酸化炭素)等を圧入することでエネルギーを

与え、地下の石油の性状を変化させて回収率を増やす技術──「原

油増進回収(EOR=Enhanced Oil Recovery)技術」が世界的

に期待を集めています。

JOGMECは、1970年代からこのEOR技術の研究開発に取り組

んでいます。EOR技術は、石油に与えるエネルギーの種類により「熱

攻法」「ガス攻法」「ケミカル攻法」等に大別されますが、なかでも

JOGMECが研究を進めている「炭酸ガス攻法」は高い回収率が期

待されるとともに、炭酸ガスを油層内に圧入することから、炭酸ガ

スの大気中への排出抑制、ひいては地球温暖化防止にも寄与する

技術として注目されています。

また炭酸ガス攻法で使用する二酸化炭素の調達・確保のための技

術として、これまで大気中に排出されてきた発電所等の排ガスから

二酸化炭素を分離・回収する技術が近年我が国で開発されており、

JOGMECではこの技術のEORへの適用にも注目しています。

JOGMECは、次世代のエネルギー資源として注目される「メタ

ンハイドレート」の探査・研究を推進しています。「メタンハイドレー

ト」とは、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質であり、

見た目は氷に似ているものの火をつけると燃えるため「燃える氷」

とも呼ばれています。その多くは海底にあり、土砂に混ざって存在

しています。

1m3のメタンハイドレートを分解すると172m3のメタンガスに

変わり、また、石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよ

そ半分であることや、日本近海には世界最大のメタンハイドレート

資源量があると推定されること等から、日本のエネルギー問題を

解決する有望な物質として期待が寄せられています。ただし、メタ

ンハイドレートからメタンガスを取り出すためには、石油・天然ガス

等在来型資源に用いられてきた産出試験方法とは異なる課題があ

ります。

JOGMECは、これらの課題解決のために、石油公団時代の

1995年からメタンハイドレートの研究を開始しており、「2011年

までに日本近海での生産試験を行う」

ことを掲げ、経済性、環境影響を検討

しつつ、2016年以降の実用化をめ

ざしています。

GTL(Gas to Liquids)は、天然ガスを灯油や軽油等の液体燃

料にする技術です。

GTLによってつくられる液体燃料は、天然ガスを原料としている

ことから石油に比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が少なく地球温

暖化防止に寄与するほか、大気汚染の原因となる硫黄や芳香族成

分等をほとんど含まず、石油製品より有害物質の発生量が少ないこ

とから環境負荷の小さい次世代エネルギーとして注目されています。

更に、石油よりも可採年数が長いとされる天然ガスを利用するため、

長期の安定供給が可能と見込まれています。

GTLによって天然ガスはその用途が拡大できるものと期待されてお

り、なかでも先進国では自動車向け代替燃料として有望視されています。

JOGMECでは、2001年以降、民間企業5社(2006年度からは

更に1社が加入)とともに国産GTL製造技術の開発を開始しており、

2003年には日産量7バレルのパイロットプラントの建設と生産テ

ストに成功する等、実用化に向けて着実な成果をあげています。

地球の表面には窒素や酸素等の大気が取り巻いています。

地球に届いた太陽光は、地表での反射や輻射熱として最終

的に宇宙に放出されますが、大気が存在するため、急激な気

温の変化が緩和されています。なかでも、大気中の二酸化炭

素は地表面から放出される熱を吸収し、地表面に再放射する

ことで、地球の平均気温を摂氏15度程度に保つのに大きな

役割を演じています。

しかし、近年、産業活動が活発になり、二酸化炭素、メタン、

更にはフロン類等の温室効果ガスが大量に放出され、これら

の大気中濃度が高まり熱の吸収が増えた結果、気温が上昇し

始めています。これが地球温暖化です。

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 1211

日本の非鉄金属資源使用量に対する輸入の割合

循環型社会の構築に向けた各種法律

循環型社会形成推進基本法

環境基本法

モリブデン鉱 56% 銅鉱 45%

チリ

亜鉛鉱 34% 鉛鉱 42%

オーストラリア フェロバナジウム 75% フェロクロム 54% 白金 73%

南アフリカ

ニッケル鉱 52%

インドネシア

タングステン 87%

中国

廃棄物処理法 資源有効利用促進法

容器包装リサイクル法

家電リサイクル法

建設資材リサイクル法

食品リサイクル法

自動車リサイクル法

金属資源開発支援業務と 地球環境

Activity

金属資源と地球環境問題

暮らしや産業社会に必要不可欠な金属資源を持続的に活用し続けるためには どのような対策が必要なのだろう?

持続可能な資源利用をめざして――― 循環型社会の構築を推進

金属資源は、国民生活や産業活動を営むために必要不可

欠な資源です。ところが、日本は鉱物資源に乏しく、その大部

分を海外からの輸入に頼っています。

鉱石は採掘していると必ず枯渇してしまうため、長期にわたっ

て安定して確保し続けるためには、絶えず新しい鉱山を開発

しなければなりません。その一方で、近年は国際的な金属資

源の価格高騰や鉱山の低品位化(埋蔵する鉱物量が少ない、

または不純物を多量に含む)が進んでいます。

こうしたなか、海外からの鉱物資源が安定的に日本に供給

されるよう、我が国では海外における探鉱開発の推進をはじ

め、さまざまな施策を実施しています。その一方で、製品に

加工され、その役割を終えた金属資源のリサイクルも注目を

集めています。

従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄型社会」にかわり、

今後めざすべき社会像として、循環型社会―――天然資源

の消費量を減らし、環境負荷をできるだけ少なくした社会―――

の構築が求められています。2000年6月には、ごみの「3R(リ

デュース:減量、リユース:再利用、リサイクル:再資源化)」を

促進する基本的な枠組みを制定した「循環型社会形成推進

基本法」が施行され、2001年4月には「家電リサイクル法」

が、更に2005年1月には「自動車リサイクル法」が施行され

ました。この循環型社会を支える重要なリサイクル資源のひ

とつが金属資源です。上記2法案を含む、一連のリサイクル

法案の施行によって、今日、日本の金属関連企業は、積極的に

リサイクル事業へ進出しています。リサイクルによって廃棄

物から有価金属やレアメタルを調達する等、調達方法が多様

化することで、鉱石だけに依存することのない安定的な資源

確保を実現することができます。こうした情勢を背景に、

JOGMECは金属リサイクルを支える技術開発やリサイクル

システムの構築に取り組んでいます。

便利で快適な現代社会に金属資源が果たす役割は大きなも

のがあります。日本はかつて銅の世界一の産出国でしたが、今

日では銅はもとより、ほかの金属資源も枯渇あるいは採算が取

れなくなったため閉山が相次ぎ、我が国には金属鉱山がほとん

ど残っておらず、必要な金属資源の大部分を輸入に頼っています。

こうしたなか、JOGMECは、金属資源の安定供給のために、

「探鉱・調査活動支援」「資金支援」「情報収集、分析・情報提供」

「技術開発支援」等の事業を行っています。

「探鉱・調査活動支援」は、資源の安定供給を図るために、日

本企業の非鉄金属鉱物資源の探鉱開発を地質構造調査により

戦略的・効果的に支援しています。「資金支援」は、探鉱リスク

が高い探鉱事業に関して、民間企業を支援することを目的に、

出融資債務保証を行う事業です。「情報収集、分析・情報提供」

は、日本企業が金属資源の探鉱や開発を推進する際に必要な

海外の地質・鉱床や探鉱・開発・生産状況、各国の鉱業政策や

鉱業関係法規、主要金属の需給動向、世界の非鉄企業の動向、

鉱業にかかわる環境問題等に関する情報の収集や分析を行い、

民間企業等に提供しています。また、「技術開発支援」として、

非鉄金属鉱物資源開発に関する政策的必要性の高いテーマや

日本企業のニーズに対応するテーマについて技術開発を実施

しています。更に、資源国との関係強化や情報収集等を目的と

して、開発途上国・地域の研究機関と共同で技術開発等を行っ

ています。

海外における非鉄金属鉱物資源の開発等に関する情報の収集・分析・提供 民間企業の探鉱開発プロジェクト支援のための地質構造等の調査 探鉱技術開発の推進等

● ● ●

民間企業の探鉱開発事業及び業務にかかわる支援

非鉄金属鉱物資源開発にかかわる技術開発の推進

民間企業による探鉱・開発プロジェクトへの出資・融資・債務保証

事業活動

2

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 1413

自動車リサイクル法に基づく各関係者の役割と位置づけ

製錬/リサイクルハイブリッドシステム ニッケル水素電池の市場規模予測

(年度)

(万台) 300

100

200

0 20001998 2004 20102006

所有者

回収品 購入

廃自動車

回収品

報告 報告

シュレッダー ダスト

情報管理センター

払い戻し

報告 報告

引取 解体 フロン 回収

破砕

資金管理法人

自動車メーカー・輸入業者

銅の乾式製錬と湿式製錬

燃料 排気ガス、 SO2、CO2

SO2

製錬

製錬

液体となって溶け出してきた「マット」を「粗銅」にする

製錬炉 (高温で鉱石を溶融)

乾式

湿式 (SX-EW法) 有機溶剤

循環利用 循環利用

銅を含む溶液から不純物を取り除き溶液中の銅濃度を高める

採鉱

電解採取

電解精製

地金 電気分解

鉱石にバクテリアを含む希硫酸液を散布

ハイブリッド自動車

廃自動車

スラグ再資源化技術

希少有価金属回収技術

ニッケル 水素電池

シュレッダー ダスト スラグ

フロンガス

ダイオキシン ボディや シャシー等

鉛バッテリー

鉄系素材 鉛 銅、鉛、亜鉛

ニッケル

コバルト

ミッシュメタル

建設骨材※

その他の パーツ

回収 回収

回収

回収 ※コンクリート用材、 道路用材等

焼却

利用

Check Point

例えば、自動車リサイクル。 循環型社会の構築に向けた新しいルールづくりが進展している。

自動車は、廃車後、解体業者や破砕業者によって1台あた

り総重量の約80%がリサイクルされています。残りの約

20%はシュレッダーダスト(自動車の解体・破砕後に残るゴ

ミ)として主に埋立処分されていますが、埋立処分費用の高

騰等が原因で不法投棄や不適正処理が増加し、社会問題と

なっています。また、カーエアコンの冷媒に利用されている

フロン類は、適正な処理を施さないとオゾン層の破壊や地球

温暖化問題を引き起こします。更に、エアバッグ類は、安全に

処理するためには専門的な技術を必要とします。

これらシュレッダーダスト、フロン類、エアバッグ類を適正

に処理し、自動車のリサイクルを促進するために、2005年1

月より「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リ

サイクル法)」が本格施行され、自動車の所有者、関連事業者、

自動車メーカー・輸入業者の役割が定められました。

JOGMECは、「自動車リサイクルの促進」に貢献する 新しいリサイクルシステムの構築を支援しています。

R&D Report

金属資源の効率的な製錬を実現する 「バイオリーチング」の研究開発を推進

金属資源開発支援業務と地球環境 Activity 2

自動車リサイクルを促進する 「製錬/リサイクルハイブリッドシステム」の構築 JOGMECは、ハイブリッド自動車からの「希少有価金属回収技術」

と廃自動車リサイクルに貢献する「スラグ再資源化技術」の研究を

推進するとともに、この2つの技術を組み合わせた「製錬/リサイ

クルハイブリッドシステム」の構築を通じて、自動車リサイクルの促

進に貢献していきます。

ガソリンエンジンと電気モーターを複合して使用するハイブリッ

ド自動車は、近年急激に普及が進んでおり、2010年には250万台

という市場規模になると試算されています。

JOGMECは、このハイブリッド自動車の需要本格化を見すえて、

電気モーター用の電源として使用されるニッケル水素電池から、

ニッケルやコバルト、ミッシュメタル(混合レアアース)等の有価金属

を回収する新しい技術開発に取り組んでいます。この技術を用い

ることで、これまで回収が困難であったニッケル、コバルト、ミッシュ

メタル等の希少金属の95%以上がリサイクル利用できる状態で

回収できるようになります。

JOGMECはこの技術の実用化に向けて、2002年度から2006

年度を最終年度とする実証試験を推進しています。

廃自動車は、これまでシュレッダー(裁断機)にかけられ、そのほ

とんどが埋立処分されてきました。ところが、近年は埋立処分場の

逼迫等の事情から廃棄物の減容化が要請されており、また不適切

な焼却を原因とするダイオキシンの類の発生防止も求められてい

ます。

こうしたなか、JOGMECは、年間100万トンもの量が排出され

るシュレッダーダストを焼却・溶融して有価金属を回収するだけで

なく、溶融の際に副産物としてできるスラグ(溶融した金属から出る

かす)のクリーン化技術の開発に取り組んでいます。スラグは通常、

コンクリート用材や道路用材等として有効利用されていますが、さ

らなる有効利用に向けて、これに含まれる鉛等の重金属や亜鉛、

塩素、そしてダイオキシン等を除去・回収する技術の確立に取り組

んでいます。

ハイブリッド自動車からのリサイクル――― 「希少有価金属回収技術」の研究開発

1

シュレッダーダスト燃焼処理後のスラグを有効利用――― 「スラグ再資源化技術」の研究開発

2

有価金属を含有する石を「鉱石」と呼び、鉱石の集積は「鉱床」、

鉱石に含まれている金属の割合は「品位」と呼ばれます。

近年、高品位な銅鉱床はすでに開発が進み、今後は地下の

深い場所や奥地等の開発リスクが高い鉱床や、不純物を多く

含む低品位な鉱床が中心になるものと考えられています。

こうしたなか、低品位鉱床における効率的な製錬(鉱石等か

ら目的の金属を取り出す)技術への期待が高まっています。そ

こで現在注目されているのが「バイオリーチング」です。これは、

鉄酸化バクテリアを利用して銅鉱石から銅を効率的に取り出

す技術であり、従来の製錬方法では経済性が確保できないよ

うな低品位鉱床等に適した技術です。

また、バイオリーチングは、乾式製錬(高熱で鉱石から金属を

溶かし出す)に比べ、溶鉱炉等を使用しない湿式製錬であるた

め、大幅な省エネルギーを実現するとともに、CO2排出を削減

できることから地球温暖化防止に寄与します。更に、乾式製錬

では鉱石に含まれる硫黄等が燃焼して有害な亜硫酸ガスが発

生しますが、バイオリーチングではこれも発生しません。

JOGMECは、海外における日本企業の銅鉱山開発を技術

支援するため、2005年度から金属資源技術研究所(秋田県

小坂町)においてバイオリーチング技術の基礎的な実証試験

を開始しています。今後は、これまで蓄積してきた共通基盤技

術をもとに鉱山評価モデルを構築し、民間企業が取り組む鉱

山への本格的な技術支援を行っていく計画です。

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 1615

石油備蓄基地

石油ガス備蓄基地

レアメタル備蓄倉庫

苫小牧東部

むつ小川原

久慈

高萩

神栖 倉敷

波方

菊間

福島

秋田

七尾

福井

白島

上五島

串木野

志布志

国家備蓄施設一覧(2006年3月末現在)

石油備蓄地上タンク

石油備蓄地下岩盤タンク

タングステン鉱保管状況 高萩備蓄倉庫

石油備蓄洋上タンク

石油ガス備蓄地下岩盤タンク

石油ガス備蓄地上低温タンク

資源備蓄業務と 球環境地球環境 資源備蓄業務と地球環境 Activity

エネルギー・資源備蓄の現状

JOGMECは、暮らしや産業社会に必要不可欠な 石油・石油ガス、レアメタルの国家備蓄の責務を担っています。

アメリカ、中国、ロシアに次ぐ世界第4位のエネルギー消費

国である日本にとって、石油はその半分近くを占める極めて重

要な資源です。しかし、石油は国際政治や経済活動の影響を受

けやすい国際商品であり、その99.7%を輸入に頼っている我

が国にとって、石油の安定供給を確保することは極めて重要な

課題となっています。

石油備蓄は、この課題に対応するための制度で、我が国では

第一次石油ショックを契機に1972年度から民間備蓄事業が、

1978年度から国家備蓄事業が始まりました。我が国では石油

の国家備蓄として約5,000万S、民間備蓄として約4,000万S、

合計約9,000万Sの原油及び石油製品が備蓄されています。

また、レアメタルも、石油と同様、われわれの生活に必要不可

欠な資源です。レアメタルとは、地球上での存在が稀、あるいは

その抽出が経済的・物理的に非常に困難な金属資源を指し、家

庭用品から産業機械、ハイテク分野等幅広く利用されています。

こうしたなか、JOGMECは、石油をはじめ、石油ガス(LPガ

ス)、レアメタルの備蓄業務を行っています。安全や効率性、周

辺環境に配慮しながら備蓄物資と備蓄施設を管理するほか、緊

急時に機動的に備蓄物資を放出できる体制を維持することで、

安定した国民生活を支えています。

備蓄物資及び備蓄施設の安全かつ適切、効率的な管理 緊急時等の機動的な放出 石油ガス国家備蓄基地の着実な整備と操業準備 民間企業による石油・石油ガス備蓄への融資等

● ● ● ●

石油・石油ガス、希少金属鉱物備蓄の管理、民間備蓄の支援

事業活動

3

JOGMECは、国からの委託を受け、石油の国家備蓄基地

10基地を一元的に管理しています。石油備蓄は、地理的条

件を踏まえて、地上・地中・洋上・地下岩盤タンクの4つのタ

イプがあります。危険物である大量の原油を保管しているこ

とから、いずれも安全防災・環境保全対策には万全を期して

おり、無事故・無災害を継続しています。また、緊急時には14

日以内に放出できるよう、緊急放出訓練、放出体制のチェック、

放出マニュアルの整備等に取り組んでいます。

一方、石油ガス(プロパン、ブタン)備蓄について、日本は

現在、国家備蓄として150万トンの備蓄目標を掲げています。

JOGMECは、国からの委託を受け、全国5ヵ所で国家備蓄基

地の管理と建設を行っています。備蓄基地は、地下岩盤・地

上低温タンクの2方式があり、建設においては、コスト削減の

観点から、既存設備の有効利用や運営業務の委託を前提に、

民間石油ガス輸入基地の隣接地での建設を進めています。

レアメタルの備蓄 国の備蓄政策の実施機関として、JOGMECでは、政情不

安な国への偏在性が高いレアメタルの短期的な供給障害に

備えることを目的に、1983年よりレアメタル7鉱種(ニッケ

ル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バ

ナジウム)について、茨城県高萩市にある国家備蓄倉庫で一

元的に保管・管理しています。

また、備蓄物資の安全で適切な管理に役立てるために、定

期的に品質検査を行い、経年劣化の兆候を分析調査すると

ともに、緊急時の効率的な放出への対応、更に備蓄物資の荷

崩れ等の防止のために積み替えや移動を行っています。

石油・石油ガスの備蓄

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 1817

備蓄倉庫

側溝

場外側溝へ

沈殿槽

沈殿した汚泥

レアメタル備蓄倉庫の環境配慮

オイルフェンス フローティングルーフ 中仕切り堤

流出油等防止堤

油回収船

防油堤

ずり仮置場: 散水による土埃の発生防止

ずり選別装置: 防音壁による騒音の拡散防止

周辺海域: 水質調査(サンプル採取状況)

周辺地域: 騒音、振動測定(24時間測定)

オイルフェンス

フローティングルーフ

グランドフレアー

防油堤

油回収船

VOC(揮発性有機化合物)の排出を抑制する

原油備蓄タンクの中にVOCの層ができないように、原油量の増

減に伴ってタンクの屋根部分が上下する「フローティングルーフ」

を採用しています。

国家石油備蓄基地では、建設時から洋上備蓄基地と地下備蓄基

地を対象に、VOC排出ゼロをめざして「グランドフレアー」を設置し

ています。グランドフレアーとは、地上置き

の円筒状の炉で、余剰ガスを集めて有機化

合物が放出しないように燃焼させる設備で

あり、騒音や輻射熱を抑えられる構造となっ

ています。

設備の健全性を維持するために、タンクをはじめとする設備の定

期的な安全点検を実施しています。また、万一油が流出した際でも

周辺に環境負荷を与えないよう、タンクからの漏油を基地内で受け

止める中仕切り堤・防油堤・流出油等防止堤と、海域への油流出を

想定して、油を受け止めるオイルフェンスを配備しています。

近隣海域への油流出時に、効率良く流出油を回収する油回収船

を配備し、万一の事態に備えています。

茨城県高萩市にあるレアメタル備蓄倉庫では、構内路の砂、ゴミ

及び構内作業等によって生じる備蓄物資の金属微粉が、公共水域

へ流出するのを防止するため、構内2ヵ所に沈殿槽を設置し、水の

汚れを除去したのちに排水しています。

このような体制を維持・管理するために、2ヵ月に1回、第三者機

関に委託して水質検査を実施しています。

また、沈殿槽の下層部に溜まった汚泥は、事業廃棄物とともに法

律(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)による産業廃棄物として、

適切に管理しています。

エネルギーの安定供給を支える石油、石油ガス備蓄施設。 産業社会に必要不可欠なレアメタルを備蓄する備蓄施設。 そこでは、さまざまな環境配慮がなされています。

備蓄施設の環境保全

JOGMECでは、現在建設中の地下岩盤石油ガス備蓄基地

(波方基地及び倉敷基地)において、周辺地域の環境保全と地

域住民の安全確保に努めています。具体的には、水質や騒音

振動等の環境測定項目を定め、地元関係機関と環境関連の協

定を作成し、協定遵守に向けた調査・監視を行っています。ま

た倉敷基地では、騒音の発生源であるずり※選別装置の周辺

に搬入道路を含め防音壁を設置して騒音防止に努めるととも

に、工事用道路・ずり仮置場に適宜散水を行い、土埃の飛散防

止を図っています。

T O P I C S

「石油ガス備蓄基地の建設」と環境保全

資源備蓄業務と地球環境 Activity 3

フローティングルーフ

グランドフレアー

油回収船

防油堤、オイルフェンス等

万一の油流出による環境汚染を防止する

※ トンネルを掘ったときに出てくる岩石や土砂

レアメタル備蓄倉庫の環境配慮

石油備蓄基地の環境配慮(イメージ)

沈殿槽による水質の汚濁防止

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 2019

2つの鉱害防止対策

坑廃水が流出しないようにプラグで坑道をふさぎます。

坑廃水処理の様子① 中和処理 炭酸カルシウム等を使って坑廃水を中和します。

坑廃水処理の様子② 固液分離 中和処理で発生した中和殿物と上澄水を分離します。

対策例② 露天掘跡埋戻し及び被覆工事 鉱物が露出している露天掘跡を被覆し、整形、覆土、植栽します。

対策例① 坑道耐圧密閉

坑廃水処理

坑廃水処理施設

たい積場 浸透水

地下水

坑内採掘跡 たい積場

強酸性水

鉱化帯

降雨

降雨 地表水 坑内水

地下水

雨水

地下水

雨水

流出

放流 たい積場へ

沈殿物

発生源対策

施工前 施工後

施工前 施工後

中和槽

固液分離槽

鉱害防止支援業務と地球環境 Activity

鉱害発生のメカニズムと鉱害防止対策

主として硫化鉱物を採掘する金属鉱山では、閉山後も採

掘跡に黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱等の鉱物が残り、こ

れらが地下水や空気中の酸素と反応し、重金属を含んだ酸

性の坑廃水を発生することがあります。

また、鉱業活動によって発生する廃石(ずり)等のたい積

場においては、雨水等によってずりに含まれる有害重金属等

が溶出し、鉱害の発生源となるほか、ずり自体の流出や風に

よる飛散等も問題となることがあります。これらを防止する

鉱害防止対策は、大きく「発生源対策」と「坑廃水処理」の2

つに分けられます。

鉱山は、さまざまな面で地域社会の総合的な振興を促します

が、一方で地域住民の生活環境に大きな影響を与える環境問

題――「鉱害」をもたらすことがあります。鉱害は、一般の工場

施設とは異なり、鉱山での操業が停止した後も水質汚染や有害

廃棄物等周辺環境に悪影響を与えるおそれがあるため、放置し

ておくことはできません。

かつて有数の鉱山国であった我が国では、各地に7,000ヵ

所にも及ぶといわれる「休廃止鉱山」が存在します。そのうち

約450ヵ所は、鉱山の操業が停止した後、何らかの鉱害防止事

業を実施中、あるいはその必要があるとされています。

こうしたなか、JOGMECは、1973年から鉱害防止事業に

取り組む地方公共団体や企業等に対する技術面や情報面、資

金面での支援に取り組んできました。「鉱害防止と環境保全」

をキーワードに、鉱害の発生源対策から坑廃水処理施設の運営

管理まで、これまで培ってきた鉱害防止のノウハウを活かして、

鉱害防止事業を行う地方公共団体や企業へ、鉱害防止対策に

関する技術指導、技術開発、情報提供等の支援を行い、環境の

保全等に貢献しています。

民間企業による鉱害防止事業への融資 鉱害防止調査・指導 地方公共団体からの坑廃水処理施設の運営管理受託 鉱害防止積立金・鉱害防止事業基金の管理

● ● ● ●

鉱害防止事業を実施する地方公共団体及び民間企業への支援

事業活動

4 発生源対策 坑廃水処理 坑廃水による環境負荷を抑えるために、発生場所の周辺

で水質の改善や水量の減少を図っています。具体的には、坑

道耐圧密閉や露天掘跡・たい積場の整形・覆土・植栽等を行っ

ています。

●坑道耐圧密閉 坑道の耐圧密閉による止水・減水及び水質改善

●整形・覆土・植栽、山腹水路工事 露天掘跡地やたい積場の浸透水の低減及びたい積物や土砂等の流出防止による水質改善

坑廃水処理とは、坑廃水が流入する水域の環境に影響を

与えないように、重金属等の成分濃度が一定の基準値以下

になるよう処理することです。坑廃水処理の効率化(殿物の

減容化とコスト削減)が技術開発上の大きなテーマです。

●中和処理 酸性坑廃水の中和処理、カドミウム・ヒ素等の重金属の除去

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 2221

JOGMECの鉱害防止支援事業一覧(2005年度実績)

鉱害防止技術のトレンド

幌別硫黄鉱山

伊達鉱山

精進川鉱山

尾太鉱山

松尾鉱山 吉乃鉱山

高旭鉱山

幸生永松鉱山

西吾妻鉱山

調査指導:2件 2鉱山

調査設計:5件 5鉱山

工事支援:4件 10鉱山

運営管理:1件 1鉱山

● ■

■ 尾花沢鉱山 ■

赤山鉱山 ■

■ 大谷鉱山 ● 馬上鉱山

土呂久鉱山

富高鉱山 ●

●コスト削減

●鉱害防止効果の さらなる向上

省人化 技術

技術トレンド

効率化 技術

省エネ化 技術

たい積場、坑廃水 対策技術

通常の中和処理で生成する、細粒で含水率が高い中和殿物(左)を粗粒で含水率が低くなるように高濃度化し、送泥電力の低減と貯泥ダムの長寿化を図ります。

鉄酸化バクテリア(顕微鏡写真) バクテリア回収槽

現在の松川と北上川の合流点(2002年) 旧松尾鉱山から流出した坑廃水によって汚染された松川と北上川の合流点(1974年)

鉱害防止支援業務と地球環境 Activity 4

調査設計

バクテリアを活用した坑廃水の 処理技術の開発

エネルギー使用合理化坑廃水処理技術の開発/ エネルギー使用合理化総合鉱害防止技術の開発

休廃止鉱山の調査指導から、鉱害防止工事の設計、 工事支援、運営管理まで、最先端の鉱害防止技術を駆使して

適切な鉱害防止対策の実施を支援しています。

JOGMECの鉱害防止支援事業

鉱害防止のための技術開発を推進

JOGMECは、鉱害防止の専門家がいない地方公共団体の依頼

に応じて、個々の休廃止鉱山ごとに鉱害の現況調査や鉱害防止対

策の必要性の判断、対策内容の検討・提言等を行っています。検討

方針や提言内容については、外部専門家で構成される委員会によ

る助言や審査を受ける等、技術面での妥当性を確保するように努

めています。

また、JOGMECは、鉱害防止事業にかかわる関係組織を対象に、

鉱害防止対策に関する情報提供や技術指導等を行っています。

国の補助金を利用して地方公共団体が坑廃水処理施設等を建設

する際、JOGMECは地方公共団体の委託を受けて鉱害防止対策

の基本方針に基づく技術的な調査解析を行い、具体的な対策工法

を決定します。また、地方公共団体が工事を実施する際には設計図

書の基礎資料も作成します。

JOGMECは、地方公共団体が実施する休廃止鉱山の鉱害防止

工事の施工現場において、技術的な助言や、施工前・後の水質状況

のモニタリング等を行っています。

JOGMECは、義務者不存在鉱山のなかでも最も処理水量が多

い旧松尾鉱山新中和処理施設(岩手県八幡平市)の運営管理業務

を岩手県から受託しています。運営管理にあたっては、松尾管理事

務所を設置し、確実な水処理に努めるとともに、多くの新技術を導

入して処理コストの低減を図っています。また、施設の耐震構造化

や災害リスク評価、緊急時対応の訓練等にも注力しています。更に、

同地ではたい積場の整備、露天掘跡地の覆土緑化等も進めており、

植生や景観が回復しつつあります。

調査指導 1

2

工事支援 3

施設運営管理 4 JOGMECは、休廃止鉱山における鉱害防止対策の効率化

と費用の低減に向けた技術の開発、実用化の研究に取り組ん

でいます。

1970~80年代は、鉱山跡地の修復、坑廃水の発生源対策、

中和殿物の処理に関する技術の開発が中心でしたが、1990

年代以降は、複数の坑廃水処理場の集中管理による省人化・

効率化をはかる「複数鉱山坑廃水集中管理技術」、鉱山の立地

条件や各種坑廃水に適応した中和処理プロセスのガイドライ

ンを提示する「坑廃水最適中和処理システム技術」等、主とし

て坑廃水の処理に関する技術の開発に取り組んできました。

近年では、とくに坑廃水処理の省エネルギー化に注力しており、

鉱害防止対策の費用削減に大きく貢献しています。

酸性の坑廃水を処理する場合、一般に中和剤として消石灰

が用いられていますが、大量の坑廃水を処理するときには中

和剤費用が大きな負担となります。消石灰に比べて安価な中

和剤として炭酸カルシウムがありますが、通常、炭酸カルシウ

ムだけでは十分な処理ができません。

こうした背景のもと、JOGMECは鉄酸化バクテリアを利用

した坑廃水の中和処理技術の開発に取り組んできました。こ

のバクテリアは、坑廃水に含まれる鉄を酸化させるため、炭酸

カルシウムによる中和処理の効率を高めます。これによって

炭酸カルシウムの減量化を促進するため、中和剤費用が低減

できるのです。1982年に旧松尾鉱山に導入された新中和処

理施設は、酸化槽で1ccあたり1億程度に増殖させた鉄酸化

バクテリアの働きによって中和処理を効率化しています。

更に、この鉄酸化バクテリアを利用する処理方法には、中和

殿物の量を減らす効果があることも分かってきました。坑廃水

処理によって発生する中和殿物は、通常たい積場や貯泥ダム等

で処分しますが、将来にわたってたい積場を確保し続けること

は簡単なことではありません。そのため、現在JOGMECが取り

組んでいる、鉄酸化バクテリアを利用する中和殿物削減技術の

開発には大きな期待がよせられています。

JOGMECは、坑廃水処理の省エネルギー化にも取り組ん

でおり、生石灰を利用して無撹拌で中和する「高速反応中和剤」

や、中和殿物を処理工程内で循環させることで殿物濃度を上

げ、容積を減少させる「殿物の高濃度化技術」等を開発して

います。

また、旧松尾鉱山の新中和処理施設において実施した省エ

ネルギー総合実証試験では、さまざまな省エネルギー技術を

坑廃水処理設備に導入することによって、電力量の26%削減

を実現しました。これにより、年間約4,000万円の費用が低減

できるとともに、放流水の水質も従来以上に良好なものとなっ

ています。

現在は、高吸水性ポリマーを利用した「坑廃水流出抑制技術」

や、排水基準改訂への対応を目的とした「新規規制物質の坑

廃水処理技術」の開発に取り組んでいます。

2423 環境報告書 2006 Environmental Report 2006

電気使用量

技術センター 3,406,848kwh

本部 625,856kwh

全体 4,032,704kwh

紙使用量

技術センター 6,350kg

本部 25,133kg

全体 31,483kg

ごみ搬出量

技術センター 30,707kg

本部 35,307kg

全体 66,014 kg

(kg)

オフィス活動における環境パフォーマンス及びHSE目的・目標達成状況

オフィス活動における環境パフォーマンス※ HSE目的・目標達成状況

項目 目的(到達点) 2005年度の目標 2005年度の取り組み 成果概要

省資源推進

緊急時対応

技術センター 管理

契約者管理

技術センター 研究室管理

HSE指向 調査・研究

石油業界 動向調査

安全確保 ●職場環境の改善 ●鉱害防止支援業務におけるリスクの回避・低減

●紙使用量削減 ●緊急時対応計画 ●石油備蓄におけるHSEリスクの回避・低減

●石油・石油ガス備蓄におけるHSEリスクの回避・低減

●国家石油ガス備蓄地上基地の総合試運転におけるHSE緊急時対応

●技術センター管理業務におけるHSEリスクの回避・低減

●石油探鉱におけるHSEリスクの回避・低減

●新規出融資債務保証事業におけるHSEリスクの回避・低減(金属部門)

●技術センター研究業務におけるHSEリスクの回避・低減

●天然ガスの有効利用 ●HSEに関する調査の実施

●整理整頓の実施 ●地質調査用具等の整理整頓基準、整理整頓チェックリストの作成 ●情報収集 ●安全対策マニュアルの作成・運用 ●情報提供資料のメールマガジン化 ●過去の大型震災時の被害状況等を踏まえた防災対策上の重要事項の取りまとめ(図書室) ●図書館内危険源への注意標示作成・掲示 ●図書館利用ガイド及び図書館運営マニュアル作成・運用 ●災害発生時の避難マニュアルの作成 ●研修生緊急時対応マニュアルの運用監視及び避難訓練方法の検討 ●避難訓練の実施とマニュアルの見直し ●技術センター緊急時対応計画の拡充 ●技術センター防災訓練実施後の体制見直し ●広報危機管理訓練の計画作成及び実施・評価 ●規定類の遵守と実行 ●安全査察の実施 ●安全環境推進交流会等の実施 ●緊急放出訓練の実施 ●緊急連絡系統の策定 ●緊急連絡訓練計画の作成 ●緊急連絡訓練の実施・報告及び見直し ●委託業者が管理するHSE活動に関連するファイルの一覧リスト作成 ●委託業者が実施するHSE活動に関する報告方法の検討及び導入 ●HSE活動管理支援ツールの導入検討 ●法規制による届出、現行の機器点検表拡充 ●点検実施(日常・月1回・法定点検年1回) ●掘削会社の選定・管理方法にかかわる情報収集 ●過去の調査における掘削会社選定・管理方法の見直し ●GS-HSEMSの改訂・運用 ●調査内容の検討 ●アンケート調査実施及びアンケート調査結果集計 ●情報収集・分析 ●手順書の作成・運用・見直し ●状況調査 ●有効活用・廃棄 ●天然ガス有効利用に関する調査・研究開発を継続し、フィージビリティスタディ等を通じて技術の適用性を検討

●「石油・天然ガスレビュー」等へのHSE情報掲載

●本部における整理整頓の推進 ●地質調査用具等の整理整頓 ●現地調査における安全対策マニュアルの作成

●情報提供資料のメールマガジン化による紙使用量の削減

●図書室(5階)及び金属資源情報センター(7階図書館)の防災・安全管理体制の整備

●緊急時対応計画の運用・訓練及び見直し(研修生用)

●緊急時対応計画の運用・訓練及び見直し(職員、来訪者用)

●国家石油備蓄基地の非常時における対外対応の充実

●無事故無災害の継続 ●安全性の確認 ●安全環境推進の徹底 ●緊急放出能力及び緊急時対応能力の評価

●緊急連絡系統の策定及び訓練実施 ●委託業者のHSE活動管理の促進 ●微量PCB法規制遵守・機器の安全運転及び監視

●GS-HSEMSの運用・改善 ●出融資債務保証先企業のHSE問題への取り組み実態調査

●出資・融資・債務保証プロジェクトの採択における審査基準の調査・検討

●試薬の廃棄処理対応 ●研究終了後未使用資材の有効活用・廃棄促進

●技術調査・研究開発の継続的実施 ●関連業界に対するHSE情報提供

●毎月HSEパトロールを実施し、整理整頓を確認 ●地質調査用具等の整理整頓についてチェックリストを作成・運用 ●「現地調査における安全対策・事故対応マニュアル」の作成及び良好な運用 ●メールマガジン移行により、従来のFAX配信は2005年8月末をもって終了 ●図書室利用時の防災マニュアルを作成 ●図書館危険源への注意標示を作成・掲示及び図書館運営マニュアルを作成・運用 ●図書館利用ガイドを完成し、配布中 ●研修生避難訓練を3回実施・記録し、防災訓練手引書を作成 ●防災訓練を実施し、「防災訓練手引書(概要)」を作成 ●白島及び上五島基地において、本部・現場合同で広報危機管理訓練及び評価を実施 ●現地事務所による操業サービス会社の安全環境管理状況を確認 ●安全環境管理のまとめ ●緊急放出訓練を上五島基地にて実施 ●緊急連絡系統の策定及び緊急連絡訓練計画を作成 ●緊急連絡訓練は七尾基地、福島基地、神栖基地について実施・報告済み ●緊急連絡訓練の見直しを完了 ●関連ファイルを整備し、内容を充実 ●ヒアリングを実施 ●委託業者のHSE活動サポートソフト(エネルギー管理支援ツール)について検討 ●千葉市及び関東通産局への微量PCB混入電気機器使用届出を完了 ●微量PCB機器監視に関しては定期点検(日常・月次)を実施中 ●掘削会社や団体が保有するHSEに関するマニュアルを収集し、分析の上GS-

HSEMSのOperational Policy for Drilling Operationを作成 ●出融資債務保証先企業4社へのアンケート調査実施及び各社ホームページからの情報収集結果とりまとめ

●我が国の非鉄金属会社のISO14001の取得状況調査を実施 ●プロジェクト採択時のHSE活動の審査を検討 ●廃棄シート及びグループ内固有手順書を作成・運用 ●研究終了後の装置類を実施中の研究に使用し、不要な資材を整理 ●天然ガス有効利用研究について、2004年度より継続して実施するとともに、成果は年報で報告予定

●「石油・天然ガスレビュー」2006年3月号に『エネルギー憲章条約』に関する論文を掲載し、エネルギーの効率化、環境対策についての情報提供を実施

※ 2005年度に本部のHSE活動を本格的に開始したこと、また、2005年6月に春日事務所を本部へ移動・統合したこと等から集計範囲が一致しないため、前年度比は記載していません。

一般廃棄物(可燃) リサイクル 産業廃棄物

本部

技術センター

合計

1,686

10,325

12,011

31,606

15,619

47,225

2,015

4,763

6,778

環境報告書 2006 Environmental Report 2006 2625

本 部 〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー TEL.044-520-8600 FAX.044-520-8710

技術センター 〒261-0025 千葉県千葉市美浜区浜田1丁目2番2号 TEL.043-276-9212 FAX.043-276-4061

金属資源技術研究所 〒017-0202 秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山宇古館9番地3 TEL.0186-29-3829 FAX.0186-29-3849

http://www.jogmec.go.jp/

この報告書は、古紙配合率100%再生紙及び大豆インクを使用しています。 また、印刷工程で有害廃液を出さない水なし印刷方式で印刷しています。