lessons from the theory of judgment aggregation
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Collective Wisdom : Principles and Mechanisms Chap. 9 Lessons from the Theory of Judgment
Aggregation
CWPM 読み会2013 年 5 月 28 日 担当:日比野愛子
Christian List
Introduction
• 集合知のメカニズムを、「論理一貫性の課題」と、「(正解との)一致性の課題」に注目して明らかにする。
• コンドルセーの陪審定理 個々人が、ランダムよりはベターな判断
ができるならば、多数決による判断が事実と一致する確率は、集団サイズが大きくなるにつれて高くなる。
Christian List• http://www2.lse.ac.uk/government/
whosWho/profiles/clist@lseacuk/Home.aspx
陪審定理の日本語解説• http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/bitstream/
harp/1464/1/AA114393620503.pdf
Introduction
• 「一貫性の課題」( coherent challenge )
• 賢い判断とは何か。判断が事実と一致しているだけでは不十分。ある判断を論理一貫したやり方( coherent manner )で組織できるかどうかを評価・検討の要件に加えないといけない。
• 「判断集約理論」と「コンドルセーの陪審定理」からの示唆を用いて、集合知を考える。
Conceptual Preliminaries
• 知恵( wisdom )とは何か– 通常の捉え方・・・主体の特質( property of agent )– ここでの捉え方・・・原主体的存在の特質
• 集団は、原主体的存在たりうるか?→ 集団がどのように組織されているかによる。
意見や判断を集めるメカニズムを持っているかどうか(例: エキスパートパネルは、原主体的存在)
= 信念や判断を記号化する認知的状態を備えた存在
入力(個人の信念・判断)
出力(集合の信念・判断)
集約の手続き
• 集団が賢いと見なされるかどうかは、集約の手続きによる。
• 本稿では、「一貫性の課題」と「一致性の課題」が、いかなる集約のメカニズムによって達成されるのかを検討する。
一貫性の課題
• フランスの議会制の議論の事例
• ‘p’= 制度の安定化が望ましい。• ‘if p then q’= 二院制は、制度の安定化をも
たらす。• ‘q’= 二院制を導入することが望ましい。
• 一貫性の条件を満たせない。• Discursive Dilemma : 多数決は、一貫性の面
からみると、必ずしも集合知を保証しない。
Table 9.2
一般的困難性の原理• 論理空間で一貫性の課題を満たす条件を考える。
• 普遍性( Universality ):集約手続きは、命題に対する個人判断について、どのような組み合わせでも許可しないといけない。
• 決定性( Decisiveness ):集約手続きは、命題について、完了した判断を提出しないといけない。
• システム性( Systematicity ) : 集合的判断は、個人の判断にのみ依拠する。依拠のパタンは、すべての命題について同等でなければいけない。
→ 定理( Dietrich and List 2007 ):独裁制もしくは逆独裁制でのみ、上記の 3 条件が満たされる。
普遍性条件を緩和する
• 共通性を持った判断群のみ、入力として許可することによって、多数決メカニズムでも、一貫した集合的判断が可能になる。
• このことによって、決定性やシステム性の条件も満たすことになる。
• ただし、現実ではうまく働かない。
決定性条件を緩和する
• 命題に対する判断として、「是」も「否」も提出しない(保留する)決定を許可する。
• 非決定が許される場面は少ない。また、そもそも、こうした決定が「集合知」と言えるかどうかは、知=一貫性=演繹的推論という定義からしてもおかしい。
システム性条件を緩和する
• 判断の集約手続きにおいて、命題を、「前提部」と「結論部」に分割し、優先順位をつけることで、一般的困難性を回避できる。
• 前提条件を重視する/結論部を重視する。
• 問題点:結論が、議題設定者によって操作されやすい。
一致性の課題
• ある命題 p に対する集合知の判断のよしあしを評価するため、 2 種類の条件付き確率を考える
• 「 p が真であるとき、 p と判断する確率」
• 「 p が偽であるときに、 p でないと判断する確率」
民主化の効果
• 命題 p は以下の条件を満たすとする。
• 正確性:命題に対する成員の判断の信頼性を、0.5< r<1 とする。 (r=.6)
• 独立性:成員同士の判断は相互に独立しているとする。
→ 異なる集約手続きのもとで、集合的判断の信頼性がどのように異なるかを調べる
独裁制条件での、集合判断の信頼性
全員一致条件での、集合的判断の信頼性
Figure 9.2
Figure 9.3
多数決条件での、集合的判断の信頼性
→ Lesson 成員が独立で、かつ、真を判断する方向に偏って
いれば、いずれの集約プロセスも、命題に対する判断の信頼性を向上させる。(全員一致条件では、偽の判断を避ける。)
Figure 9.4
分解( decomposition )の効果前提ベースの推論条件での、集合的判断の信頼性
結論ベースの推論条件での、集合的判断の信頼性
Figure 9.6
Figure 9.7
→ Lesson 前提ベースの推論条件は、他の条件よりも、命題
を判断する信頼性のパフォーマンスが優れていた。命題のセットを、パートに分けてから判断集約する「分解」は、集合知を促進させうる。
脱中心化( decentralization )の効果
• 全員が同じ対象を判断するのではなく、グループの中で分割されたサブグループがめいめい判断を行なう。
• 専門特化 認知的に得?損?
Table 9.5
• 定理( List 2005, 2008 ):いかなるグループ規模 n ( k 個に分割される)に対しても、個人の信頼性のレベル r*>r が存在するとする。命題 p に専門特化することによって、命題 p に対する個人の信頼性がr* を上回るならば、 n/k専門家によるサブグループでの多数決は、 p に対する rの信頼性を備えた n 人集団での多数決の結果よりも、信頼性が高い。
→ 第 3 のシナリオからの Lesson 分割された前提ベースの判断集約プロセスは、す
べての命題に対するポジティブ/ネガティブな信頼性を最大化するという点で、優れている。
Figure 9.8
まとめ
• 集合知を「論理一貫性」と「事実との一致」という観点から考え、どのような条件のときに、両者が成り立つかを検討した。
• 普遍性、決定性、システム性の要件を緩和することで、論理一貫した集合的判断を導く集約プロセスを探索した。
• 民主化、分解、脱中心化というデザインが有効であることが示唆された。