ライブラリー・リソース・ガイド(lrg) 第6号/2014年...

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54 東日本大震災と図書館 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 1 すでに携帯電話各社は通信制限を行っており、回線がスムースにつながったのはイー・モバ イル社であった。 2 東日本大震災の地震被害等状況及び避難状況について http://www.pref.miyagi.jp/site/ej- earthquake/km-higaizyoukyou.html [最終アクセス:2014 年 1 月 10 日] 3 東日本大震災に伴う公立学校等の被害状況等について(調査継続中)http://www.pref.miyagi. jp/uploaded/attachment/235955.pdf [PDF] [最終アクセス:2014 年 1 月 10 日] 4 熊谷慎一郎「東日本大震災からの図書館の復旧・復興支援 宮城県図書館の役割」情報管理 Vol. 54, No. 12 (2012) 797-807 5 片山善博[述] 学校図書館と知の地域づくり[全国教科用図書卸協同組合][2011] 6 片山善博、津久井進 (2007)災害復興とそのミッション:復興と憲法 pp.11-14 [参考資料] 以下は、2014年1月10日現在、宮城県図書館の職員が著者として各種報告を発表した図書・雑 誌記事の一覧である。3月までに本稿を含め2 本程度の記事が掲載される予定である。 熊谷慎一郎「東日本大震災からの図書館の復旧・復興支援 宮城県図書館の役割」情報管理 Vol. 54, No. 12, (2012)797-807 熊谷慎一郎「宮城県内市町村図書館等に見る東日本大震災からの復興の現状」国立国会図書館月 (617)2012.8. 11-14 熊谷慎一郎「図書館の復旧と復興のための支援と受援:宮城県図書館の取り組みを通して」図書 館界 / 日本図書館研究会 [編] 64(2)=365:2012.7. 89-93 熊谷慎一郎、宮川陽子、松岡要、他. 第13回図書館総合展 創業97周年記念フォーラム「図書館の ための事業継続計画(BCP)とは何か?:東日本大震災を踏まえて」Lisn : Library & information science news / キハラ株式会社マーケティング部編(151)2012.春. 1-23 熊谷慎一郎「図書館の役割を問い直す:東日本大震災の経験から」日本生涯教育学会年報 / 日本 生涯教育学会年報編集委員会 編(33)2012. 157-168 熊谷慎一郎「東日本大震災からの復旧・復興と宮城県図書館の取組み」情報の科学と技術 / 情報 科学技術協会 [編] 62(9)2012. 385-390 田中亮 宮城県図書館 「東日本大震災文庫」について 日本古書通信 / 日本古書通信社 [編]77 (6)=995:2012.6. 2-4 和賀修治「安全・安心な」図書館を目指して:防災の取組み 會報 / 宮城県消防設備協会 [編] 35:2013.3. 16-18 特 集 嶋田綾子 図書館で学ぶ防災・災害

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Page 1: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

54 東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

★1 すでに携帯電話各社は通信制限を行っており、回線がスムースにつながったのはイー・モバイル社であった。

★2 東日本大震災の地震被害等状況及び避難状況について http://www.pref.miyagi.jp/site/ej-earthquake/km-higaizyoukyou.html [最終アクセス:2014年1月10日]

★3 東日本大震災に伴う公立学校等の被害状況等について(調査継続中) http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/235955.pdf [PDF] [最終アクセス:2014年1月10日]

★4 熊谷慎一郎「東日本大震災からの図書館の復旧・復興支援 宮城県図書館の役割」情報管理 Vol. 54, No. 12 (2012) 797-807

★5 片山善博[述] 学校図書館と知の地域づくり[全国教科用図書卸協同組合][2011]★6 片山善博、津久井進 (2007)災害復興とそのミッション:復興と憲法 pp.11-14

[参考資料]以下は、2014年1月10日現在、宮城県図書館の職員が著者として各種報告を発表した図書・雑誌記事の一覧である。3月までに本稿を含め2本程度の記事が掲載される予定である。

熊谷慎一郎「東日本大震災からの図書館の復旧・復興支援 宮城県図書館の役割」情報管理 Vol. 54, No. 12, (2012)797-807

熊谷慎一郎「宮城県内市町村図書館等に見る東日本大震災からの復興の現状」 国立国会図書館月報 (617)2012.8. 11-14

熊谷慎一郎「図書館の復旧と復興のための支援と受援:宮城県図書館の取り組みを通して」 図書館界 / 日本図書館研究会 [編] 64(2)=365:2012.7. 89-93

熊谷慎一郎、宮川陽子、松岡要、他. 第13回図書館総合展 創業97周年記念フォーラム「図書館のための事業継続計画(BCP)とは何か?:東日本大震災を踏まえて」 Lisn : Library & information science news / キハラ株式会社マーケティング部編(151)2012.春 . 1-23

熊谷慎一郎「図書館の役割を問い直す:東日本大震災の経験から」日本生涯教育学会年報 / 日本生涯教育学会年報編集委員会 編(33)2012. 157-168

熊谷慎一郎「東日本大震災からの復旧・復興と宮城県図書館の取組み」情報の科学と技術 / 情報科学技術協会 [編] 62(9)2012. 385-390

田中亮 宮城県図書館 「東日本大震災文庫」について 日本古書通信 / 日本古書通信社 [編]77(6)=995:2012.6. 2-4

和賀修治「安全・安心な」図書館を目指して:防災の取組み 會報 / 宮城県消防設備協会 [編] 35:2013.3. 16-18

特 集 嶋田綾子

図書館で学ぶ防災・災害

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56 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 57図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

岩手県立図書館では東日本大震災に関する資料を収集し、館内に専用書架を設け「震災関連資料コーナー」として利用に供している。収集資料は図書、雑誌、新聞、臨時に出された広報、災害対策本部の情報といった行政資料、復興計画などの非売資料、避難所だより、ボランティアニュース、イベントのチラシの他、各地における震災報道の様子を知るために、震災後発行された地方新聞(2011年 3月~ 5月までの 44紙)を収集している。なお、図書館サイト内に「東日本大震災情報ポータル」を設け、イベント案内、

リンク集、新着資料情報の提供などを行っており、ウェブサイトの OPACでは「テーマ別検索」として、東日本大震災および地震災害に関する 14のテーマで所蔵資料を検索が可能である。その他、地元紙の震災関連記事索引については、発災以来継続的に収集している(採録紙:岩手日報、岩手日日新聞、盛岡タイムス、復興釜石新聞、東海新報)。2014年 1月からは、同コーナーの資料を国立国会図書館東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」に情報として提供している。

震災関連資料コーナー岩手県立図書館(岩手県盛岡市)

震災関連資料コーナー 詳細データ

●開始時期

2011年10月21日(プレオープン)

2012年4月1日(本オープン)

●収集点数(2014年1月4日現在)

図書…2,545冊 雑誌…843タイトル(6,157冊) 

一枚もの…8,960点(震災関連のポスター、チラシなど)

●運用体制

1. 収集の呼び掛け

◎館内および県内図書館でのポスター掲出とチラシ配布 、ウェブ(ホームページ、Twitter公

式アカウント、メールマガジン)での呼び掛け◎イベントでのチラシ配布 、出版社などの資

料刊行元への寄贈依頼(電話、メール、直接訪問) ◎報道機関や公的機関に対しては年に2度、

震災関連資料の提供依頼文書を発送 ◎県内市町村役場や社会福祉協議会などを直接訪問

2. 館内、館外での提供方法

館内に専用書架を設置

図書館サイトで公開

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

市販の図書や雑誌の他に震災関連のチラシやポスターも収集対象としており、発災後約3ヶ

月分の各種雑誌および全国地方紙、被災当時の航空写真なども所蔵している。

2. 収集にあたって心掛けていること

震災関連資料については、可能な限り3部収集する

●収集資料の活用事例

*下記の映画会・写真展・講演会で、震災関連資料の展示を一緒に行った(直近の10件のみを抜粋)

展 示 郷土教育資料に描かれた岩手のことば̶̶沿岸被災地を中心に̶̶ 2013年12年28日~2014月3月24日

展 示 「1097歩」~3年目の市町村~ 2013年12年28日~2014年3月24日

展 示 わたしたちの使命~赤十字の事業~ 2013年10月1日~12月26日

企画展 企画展「津波を伝える記録と文学」 2013年8月1日~9月23日

講演会 読み聞かせと講演会「東本大震災を伝える魂̶̶手づくり絵本の活用を通して̶̶」 2013年8月10日

展 示 写真展「3・11以前̶̶美しい東北を永遠に残そう̶̶」 2013年8月1日~9月23日

映画会 夏の特別映画会「3・11メモリアルフィルム ひとつ」 2013年8月3日

展 示 特別展示「震災復興ポスター展」 2013年6月1日~7月30日

講演会 復興釜石新聞編集長が語る東日本大震災~災害時における地域紙の役割~ 2013年4月20日

展 示 報道写真展示「記憶忘れてはいけないこと」 2013年4月1日~5月30日

岩手県立図書館 岩手県盛岡市盛岡駅西通 1-7-1

https://www.library.pref.iwate.jp/Tel:019-606-1730 Fax:019-606-1731

震災関連資料コーナー 提供:岩手県立図書館

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58 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 59図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東松島市図書館の「ICT地域の絆保存プロジェクト[東日本大震災を語り継ぐ]」 は、図書館振興財団の助成金約 760万円を受けて、2012年 6月から 2013年3月まで行われたプロジェクトである。プロジェクトの活動内容は、幅広く震災に関連する資料を収集する他、「語り手募集」を市民に呼び掛けて震災体験の取材協力を募ると同時に、 同図書館のスタッフが被災地に赴き、仮設住宅などで暮らす被災体験者にインタビューした動画や音声、テキストを発信している。インタビューの収録数は約 110名で、体験談投稿者は 33名である(『平成 24年度(2012

年度)事業実施概要』より)。体験談は PDF 化・映像化(承諾者のみ撮影)し、 図書館サイトではダイジェスト版を、 館内では iPadで完全版を公開している。「ICT地域の絆保存プロジェクト」は、震災の記憶を風化させることなく、一日でも早く被災された方が普段の生活を取り戻すこと、防災教育やまちづくりに役立ててもらうこと、今後の自然災害から生活を守ることなどを目的にしており、財団からの助成が終了した今も続いている。

ICT地域の絆保存プロジェクト[東日本大震災を語り継ぐ]東松島市図書館(宮城県東松島市)

ICT地域の絆保存プロジェクト[東日本大震災を語り継ぐ] 詳細データ

●開始時期

2012年6月(本格的に活動を開始)

●収集点数

震災関連図書…1,000 点 (「学校たより」などの月毎発行資料は年度毎にまとめ 、1 点とし

て収集。 これをきっかけに定期的に収集できるようになった)

伝統芸能などの映像(大曲浜獅子舞・東名塩田カルタ・統合する学校関係資料〈エジプトダン

ス・校歌など〉など…10 点

震災関連新聞記事の見出しなどの目録データ(整理済み)…3,000 件以上

地元紙・中央紙・他県から支援を得て収集した新聞…17 紙

震災体験談…市民約 110 名、体験談投稿者 …33 名

震災関連…写真 4,000 枚以上、動画 3 点 (本市の秘書広報班、市民が提供したもの。整理で

き次第公開)

 

●運用体制

1. 収集方法

図書館サイト、新聞、TV、市報などによる市民への呼び掛け

2. 館内、館外での提供方法

館内に特設コーナーを設置(紙媒体資料。体験談の動画などは、館内の視聴用タブレットで)

図書館サイトで公開(震災時の写真や体験談動画、新聞記事の見出し検索などが可能)

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

市民の震災体験談や写真を収集する他、震災の記録を残すワークショップなども開催している。

2. 収集にあたって心掛けていること

避難所・仮設住宅の住民に向けたミニコミ紙やチラシなどの他、時間と共に風化する記憶(生

の資料) を「消えていく資料」と捉え、積極的に早期に収集・整理・保存活動に取り組んでいる。

●活用事例

震災関連の講演会にて資料のパネル展示などを行い、来場者への意識啓発・推進を行っている。

県外では、震災の体験談を使った防災の意識啓発や支援の理解や促進を狙いとした上映会を開

催している。

東松島市図書館 宮城県東松島市矢本字大溜 1-1

http://www.lib-city-hm.jp/Tel:0225-82-1120 Fax:0225-82-1121

「3.11震災の記憶」コーナー 提供:東松島市図書館 みんなで印そう!津波の高さMAP 提供:東松島市図書館

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60 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 61図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災を受けて、 2012年の 4月 28日に開設した「東日本大震災福島県復興ライブラリー」は、 原発事故や放射線除染の関連資料の収集に力を入れている他、地震、津波、震災体験記、復興、防災などのテーマ別の資料を配置し、具体的には 雑誌、記録集、写真集、映像、画像、広報誌、フリーペーパー、手記、文集、ルポ、調査報告書、計画書、 説明会、相談会での配布資料など、東日本大震災に関連する資料を幅広く収集している。このライブラリーで特徴的なのが、職員が作成するライブラリーのブックガイドだ。コレクションする震災資料を職員が読んで、その概要に解題を添えて紹介するもので、同館ではこのブックガイドと資料を並べて展示するコーナーも設けており、よく利用されている。ブックガイドの発行は 2013年 2月から開始され、不定期ながら 2014年 1月までに 7号が発行されている。大震災から 3年、その関連資料を収集するだけでも膨大な作業でありながら、同館のこのような試みは、 震災復興にかける職員の切実な思いを感じることができる。なお同館の司書、鈴木史穂さんが作成したポスター「The Librarians of

Fukushima」は、震災直後から復興に向かっていく様子を時間軸で捉え、未曾有の震災に直面した被災地で活動する図書館員たちのさまざまな試行を似顔絵と一緒に紹介したもので、2013年世界図書館情報会議(WLIC)・国際図書館連盟(IFLA)年次大会において、ベストポスター賞を受賞した。

東日本大震災福島県復興ライブラリー福島県立図書館(福島県福島市)

東日本大震災福島県復興ライブラリー 詳細データ

●開始時期

2012年4月28日

●収集点数

5,539タイトル(2013年9月11日現在)

 

●運用体制

1. 収集方法

寄贈についてのチラシ・ポスターを館内に掲示する他、図書館サイトへの掲載、市町村図書

館への配布。

収集するものが特定する場合は、発行元へ直接依頼

2. 館内、館外での提供方法

特設の書架を設置

図書館サイトで公開(年に2回作成している同ライブラリーの 「資料一覧」など)

●コレクションのポイント

震災・復興関連資料の中でも、特に福島県に関係する資料については網羅的な収集を目指して

いる。福島第一原発事故を経験している図書館の責務として、原発問題、放射線、エネルギー問

題の資料も収集対象としているのが特徴である。

●活用事例

他の図書館での震災関連展示に活用してもらうよう、「出張展示」の制度がある

福島県立図書館 福島県福島市森合字西養山 1

http://www.library.fks.ed.jp/Tel:024-535-3218 Fax:024-536-4787

東日本大震災福島県復興ライブラリー 提供:福島県立図書館

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62 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 63図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災での被災から 2ヶ月後の 2011年 5月、同館では図書館の再開に合わせて、震災関連の資料を展示するコーナーを開設している。開設当初は「東日本大震災関連資料」という名前だったが、2012年 2月にリニューアルして「3.11

震災文庫」 になった。収集対象は CDや DVDなど視聴覚資料を含む記録集や写真集の他、団体・個

人の手記や体験記、広報誌、ミニコミ、パンフ、チラシ、避難所や仮設住宅に配布された資料や壁新聞、イベント、講演会、講座などで使用されたポスターや配布資料など、震災に関するあらゆるものが対象となっており、震災の記録を残すとともに、資料を収集・公開することで、復興や生活再建を支援する情報提供を行っている。なお、仙台市民図書館が入る複合文化施設 「せんだいメディアテーク」 の管理運営業務は、別組織の公益財団法人仙台市市民文化事業団が行っている。図書館機能は独自に管理しているが、所蔵する図書や映像音響ライブラリーの中には、施設内の事業で制作されたもの(CDや DVDを含む)、目や耳が不自由な方向けのサービスや学校教育・社会教育向けの教材ライブラリーも含まれている。また、例年 3月初めに行う図書館とメディアテークが共催で企画するイベント

「としょかん・メディアテークフェスティバル」では、メディアテーク1階のオープンスクエアにブースを設け、3.11震災文庫から一部資料の展示を行っている。

3.11震災文庫仙台市民図書館(宮城県仙台市)

3.11震災文庫 詳細データ

●開始時期

2011年5月(トピックコーナーに展示・貸出)

2011年6月23日(常設コーナー設置)

●収集点数

2,823点(2012年度末時点)

 

●運用体制

1. 収集の方法

図書館サイト・チラシによる寄贈の依頼

2. 館内、館外での提供方法

館内に常設コーナー「3.11震災文庫」を設置

図書館サイトで公開(「3.11震災文庫」のバナーを設け、震災関連資料検索から「書誌一覧」

を表示可能)

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

民間の広報誌・自主出版物も収集対象としている。被災地域住宅地図、被災地の震災前後の

航空写真も収集。

2. 収集にあたって心掛けていること

関連本は漏れなく収集するようにしている

●活用事例

「としょかん・メディアテークフェスティバル」での一部資料の展示など

仙台市民図書館 宮城県仙台市青葉区春日町 2-1(せんだいメディアテーク内)https://lib-www.smt.city.sendai.jp/Tel:022-261-1585 Fax:022-213-3524 E-mail:[email protected]

3.11震災文庫 提供:仙台市民図書館

関連情報としょかん・メディアテークフェスティバルhttp://www.smt.jp/toplus/?cat=1

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64 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 65図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

福島大学附属図書館は、2011年 4月に同大学が設置した「うつくしまふくしま未来支援センター」と協働して、約 1,400点の東日本大震災の関連資料を収集し、2012年 4月より 「震災関連資料コーナー」を館内に設置して資料を提供している。なおこのコーナーは、震災発生後、間もない 2011年 5月 25日に約 100冊の特設コーナー「今、知りたいこと」として 開始された展示のリニューアルである。収集内容は市販されている図書の他に、震災関係の研究における成果論考、調査研究資料、被災地への学生ボランティアの派遣といった活動記録などであり、知の拠点である大学が震災に対してどのような活動をしたのかを後世に伝える資料群ともなっている。なお、収集した所属教職員の成果物資料のうち、許諾を得たものは同大学の機関リポジトリ 「FUKURO」で電子公開している。

震災関連資料コーナー福島大学附属図書館 (福島県福島市)

震災関連資料コーナー 詳細コーナー

●開始時期

2012年4月

●収集点数

約3,100点(2014年1月現在)

 

●運用体制

1. 収集方法

図書館サイトで呼び掛け

館報による周知

所属教職員には成果物(被災時の記録、出版物、報告書など)の寄贈を文書で依頼

うつくしまふくしま未来支援センターに継続して購入経費措置、出版物などの協力を依頼

2. 館内、館外での提供方法

開架閲覧室1階にコーナーを配置(学内外の利用者が自由に閲覧できる状態となっている)

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

出版された資料を中心に、所属教員のプロジェクト報告書、教員が関わった団体の記録など

を収集する。

2. 収集にあたって心掛けていること

同学での学習教育活動、福島で生活していく方々が活用できるよう、震災、原発、ボランティ

アのテーマに留まらず、郷土、教育、科学、防災、産業などさまざまなテーマの資料群となる

よう心掛けている。今後は被災時の記録、同大学の学生が関わった活動記録なども充実して

いく予定。

福島大学附属図書館 福島県福島市金谷川1http://www.lib.fukushima-u.ac.jp/Tel:024-548-8083 Fax:024-548-2377 E-mail:[email protected]

震災関連資料コーナー 提供:福島大学附属図書館

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66 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 67図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災で被災したゆうき図書館は、震災直後から館内の被災状況をウェブアルバムサービス Picasaで公開し、日々復旧していく様子を記録した。写真は震災当日の 2011年 3月 11日から 4月 9日まで、ほぼ毎日の様子を写し出し、大量の図書が書架から崩れ落ちて足の踏み場のない様子や、それらが図書館員の手で書架に戻されていく様子の他、館の入り口に貼り出された開館予定日や臨時休館を知らせる掲示などを伝えている。本アルバムは、現在も公開されている。同館は、被災による復旧作業で約 3週間、閉館を余儀なくされた。そのとき、職員たちは利用者に公共図書館サービス(人・場所・資料など)を提供することができず、申し訳ない思いをしたのだという。そうしたなか、せめてもの思いで、被災と復旧作業の状況を利用者に公開する責任を感じ、撮影し、収集したのがこの取り組みだったが、開館した際には、アルバムを見ていた人から好意的な意見が多く寄せられたという。なお同館では、被災により仮設暮らしを経験した東北の図書館員を招き、被災時に読んで心に残った本を選定してもらい棚の展示を行うなど、被災後、毎年 3

月になると、東日本大震災にまつわる企画を行っている。

写真アルバムによる被災・復旧状況の発信ゆうき図書館(茨城県結城市)

ゆうき図書館の取り組みに関するデータ

●実施時期

2011年3月11日~4月9日

●収集点数

写真…127点

 

●館内、館外での提供方法

  図書館サイトでのみ提供

●活用事例

被災の翌月(2011年4月)の月例で行う企画展示(イベント棚)を「災害と対策」に変更し、タ

イトルバックの写真に被災状況の写真を採用。耐震や液状化現象対策、サバイバルブックや応

急手当、放射線や原子力発電など91点の資料を展示した。

ゆうき図書館 茨城県結城市国府町 1-1-1

http://lib-yuki.city.yuki.lg.jp/Tel:0296-34-0150 Fax:0296-34-0120 E-mail:[email protected]

ゆうき図書館の復旧状況(書架を下げながらの排架) 提供:ゆうき図書館

ゆうき図書館の被害状況 (書架からの資料崩落)提供:ゆうき図書館 

資料・写真の活用事例(「災害と対策」展示) 提供:ゆうき図書館 

ゆうき図書館の被害状況 (新川和江コレクションガラスケースの崩壊) 提供:ゆうき図書館 

参考情報ゆうき図書館のイベント棚 平成 23年 4月 災害と対策(ブクログ)http://booklog.jp/users/lib-yuki_event?display=front&category_id=1533141&status=0&rank=0&sort=sort_desc

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68 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 69図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

現代の防災・災害対策を後世に伝え残すこと̶̶東北学院大学図書館は、被災地における大学の使命をこのように捉え、幼稚園から大学院まで、学校法人東北学院が設置する全ての学校内で作成、生産された東日本大震災に関わる資料を、教職員などに呼び掛けて収集している。収集した資料は永久保存し、広く社会に提供するために電子化し、学校法人東北学院デジタルアーカイブ「東日本大震災の記録 Remembering 3.11」として公開している。収集対象期間は 2011年 3月 11

日から 2012年 3月 11日までの 1年間で、アーカイブの内容は手書きメモを含む資料や復旧作業記録、会議記録、各部署の連絡メールの本文など、公式な報告書などではカバーできない「生きた情報」も含む。またテキストの他に写真、動画も含まれ、利用者はその資料をキーワード検索や時系列で検索することができる。

なお同学院はデジタルアーカイブを構築するにあたり、学校法人東北学院 東日本大震災アーカイブプロジェクト委員会を設置し、依頼・収集の作業にひと工夫している。提供を呼び掛ける資料の内容やキーワード、テーマを依頼先の部署ごとに記載する他、 提供された資料を受け取る際に、資料の内容がひと目で分かるチェックリストを依頼書につけて、マッチングの精度を高め、整理の簡略化をはかっているのだ。また、同学院はこのアーカイブを生かした学術誌『震災学』や『東日本大震災 東北学院 1年の記録』などを刊行する他、専門的知識を活かして研究や助言を行っている。

東日本大震災の記録 Remembering 3.11東北学院大学図書館(宮城県仙台市)

東日本大震災の記録 Remembering 3.11 関連情報データ

●開始時期

2013年5月15日

●収集点数(2013年12月末現在)

12,485件(うち公開可能は8,795件)(2014年1月27日現在)

内訳は下記の通り

アナログ(紙ベース)データ…674件(うち公開可能は174件)※全てPDFファイルに変換

ボーンデジタルデータ…825件(うち公開可能は501件)※全てPDFファイルに変換

写真データ…10,977件(うち公開可能は8,111件)※全てJPEGファイルに変換

動画データ…9件(うち公開可能は9件)

● 運用体制

1. 収集方法

「学校法人東北学院 東日本大震災アーカイブプロジェクト委員会」より、法人設置学校全て

に対し資料の提出を依頼(資料提出先・デジタルアーカイブ構築作業は大学図書館にて担当)

大学:全学会議(部長会)を通じ、全教職員へ呼び掛け

その他学校:校長・園長を通じ所属教職員へ呼び掛け

関連諸機関:責任者を通じ構成員へ呼び掛け

2. 館内、館外での提供方法

【デジタル化データ(公開データ)】

下記の条件をクリアするものは全てウェブで公開(http://archive311.tohoku-gakuin.jp/)

個人情報・機密事項が含まれていないもの

提供部署から特別に公開否の要望がなかったもの

個人情報が含まれているが、マスキングにより公開に耐えうるもの

【デジタル化データ(非公開データ)】

デジタルアーカイブ用ハードディスクに保管

【原本】

デジタル化作業終了後、図書館事務室内専用キャビネットで保管。個人情報の関係から現時点

では図書館資料としての所蔵登録は実施していない。

●コレクションのポイント

1. 収集対象校

【学校法人東北学院 】

法人事務局

東北学院大学図書館 宮城県仙台市青葉区土樋 1-3-1

http://www.lib.tohoku-gakuin.ac.jp/Tel:022-264-6493 Fax:022-264-6489 E-mail:[email protected]

東日本大震災コーナー 提供:東北学院大学図書館

Page 9: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

70 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 71図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

【学校法人東北学院設置学校】

東北学院大学

・土樋キャンパス(仙台市青葉区)

・泉キャンパス(仙台市泉区)

・多賀城キャンパス(多賀城市)

東北学院中学校・高等学校(仙台市宮城野区)

東北学院榴ケ岡高等学校(仙台市泉区)

東北学院幼稚園(多賀城市・大学多賀城キャンパス内)

【関係諸機関】

東北学院大学教職員組合

東北学院中学校・高等学校教職員組合

東北学院榴ケ岡高等学校教職員組合

東北学院大学生活協同組合

2. 収集対象資料

【2011年3月11日~2012年3月11日に学内で作成された下記の資料(原本)】

・写真類(被災状況、復旧状況)

・動画類(被災状況、復旧状況、各種活動記録、メディア放映情報)

・文書類(会議記録、報告書、周知文、各種連絡文書、連絡メール本文/プレスリリース/震災に

係る本学関連新聞記事/手書きメモ)

・発災当時のウェブサイトデータ

【個人記憶収集フォーム(臨時・派遣・委託職員含む全教職員対象)】

・発災当時の個人ベースの行動記録(主に業務に関すること)を各自記入

●活用事例

国立国会図書館東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」とメタデータ連携を行い、ファインダビリ

ティの向上につなげている(2013年8月)。

構築したデジタルアーカイブを学内における災害資料データベースとして位置づけ、収録され

たデータを活用し学校法人としての震災記録集を作成中(2014年3月発行、発売予定)。記録集

には非公開データについても編集を加えたかたちで利用している。

2013年 3月 7日に公開された「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)」は、東日本大震災関係の関連資料のアーカイブを一元的に検索するポータルサイトである。東日本大震災に関する資料は、過去のどの災害においても例にみられないほど全国規模で情報収集が行われているが、それぞれが独自に行っているため、一元的に情報が収集できる仕組みが求められていた。ひなぎくはこうしたニーズに応えるもので、現在、全国の図書館や自治体、民間企業や各種団体など、29のアーカイブを一括で検索することができる。ひなぎくは、東日本大震災から学ぶあらゆる教訓を次世代に伝え、被災地の復旧・復興事業から今後の防災・減災に役立てることを目的とし、音声、動画、ウェブの情報などを包括的に検索することができる。同ポータルサイトは国立国会図書館と総務省が共同開発し、2013年度からは

国立国会図書館が全ての保守、運用を行っている。ひなぎくは、全国のさまざまな機関が収集した東日本大震災関係のアーカイブデータを一元的に検索できるのが特徴的で、そのほとんどが国会図書館以外の機関が収集したデータからなる。

国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)国立国会図書館(東京都千代田区)

国立国会図書館 東京都千代田区永田町 1-10-1

http://www.ndl.go.jp/Tel:03-3581-2331(代表) E-mail:[email protected]

参考情報国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)http://kn.ndl.go.jp/

Page 10: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

72 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 73図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

2001年に開館したせんだいメディアテークは 、生涯学習のための施設で、図書館や映像音響ライブラリーを中心に、ギャラリー、シアター、イベントを行う広場、スタジオなどがある複合的な文化施設である。

市民活動の拠点となるスタジオでは、震災前からデジタルメディア機器を市民の活動に生かすためのサポートをし、市民が制作した青果物をメディアテークに納めてもらうことで、市民の手によるライブラリーをまた別の市民に還元していくという、スタジオを軸にした一連の市民協働のスキームがあった。東日本大震災後、このスキームを生かしたプロジェクトが「3がつ 11にちをわすれないためにセンター」(通称:わすれン!)である。「わすれン!」は、 東日本大震災への復旧・復興のプロセスを、市民、専門家、スタッフが協働して独自に発信、記録保存し、東日本大震災に対しともに向き合い考え、復興への長い道のりを歩き出すことを目的に活動が開始された。発足の動機には、阪神大震災を経験した「わすれン!」のスタッフが、当時「当事者の視点」のないマスメディアの報道に違和感を覚えたことが一つの引き金になっているという。また、「わすれン!」が、他の東日本大震災のアーカイブの試みと異なるのは、

多くの団体が震災の記録を収集、保存することが活動の目的であるのに対し、震災を記録することが学び(生涯学習)につながると考え、記録をしたい活動者のサポートをするプロジェクトであるということだ。そのため、「わすれン!」で参加者が記録するものは、地震・津波・原発事故など災害の種類や被災度合いに関わらず全く自由で、東日本大震災に対し向き合う記録であれば、撮影する場所も、限定していないという。つまり、記録する内容は参加者の判断に委ねられ、スタッフが何か指示するような仕組みを取り入れてはいないのだ。 その分「わすれン!」では、 制作過程や、記録されたものの上映機会などを通して人が集まり、語り、交流するさまざまな場づくりに注力し、参加者の活動の活性を促している。

3がつ11にちをわすれないためにセンターせんだいメディアテーク(宮城県仙台市)

3がつ11にちをわすれないためにセンター 詳細データ

●開始時期

2011年5月3日

●収集点数

映像…659件 写真…37,536枚 音声…18件

※映像と音声は受入件数。1件の中には、複数の映像と音声が入っている場合がある。

 

●運用体制

1. 参加者募集の呼び掛け

開設から一貫して、記録をしたい活動者(市民・専門家など)を募集。

市民からセンターへ寄贈の希望がある場合は受入。ただし「記録物の収集」は広報していない

(下記の場合を除く)。

2. 写真の共同募集

センターの参加者である「NPO法人20世紀アーカイブ仙台」とは、写真の共同募集を2011

年から継続的に実施している。ただし共同募集は募集期間を限定しており、常時行っているわ

けではない。

※最近の写真共同募集事例(http://recorder311.smt.jp/information/33974/)

3. 手記の募集

センターの参加者である「レインボーアーカイブ東北」(多様な性の当事者たちの震災体験を

集積・記録・発信する団体)とは、 同団体のメンバーが東北各地の当事者に直接連絡を取り、

少しずつ手記と写真が集まりつつある。

※レインボーアーカイブ東北について(http://recorder311.smt.jp/information/33307/)

●館内、館外での提供方法

ウェブサイトで公開

日本語サイト(2011年6月末開設)で公開済のもの(http://recorder311.smt.jp/)

映像…438本 写真:1,230枚 音声:36本

※2014年1月末現在

英語サイト(2012年7月開設)に翻訳公開済みのもの(http://recorder311-e.smt.jp/)

映像…150本 写真…395枚 音声…22本

※2014年1月末現在

DVD配架・貸出…15本(2013年12月末現在)

※現在配架しているDVDは、2011年度に参加者が制作したもの。来年度4月には2012年度に

せんだいメディアテーク 宮城県仙台市青葉区春日町 2-1

http://www.smt.jp/Tel:022-713-4483 Fax:022-713-4482 E-mail:[email protected]

Page 11: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

74 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 75図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

上映した参加者の記録映像17本がさらに配架される予定。これらの映像は、後述する上映

会を行ったものの中から権利関係がクリアになっているもので、このほとんどはウェブサイ

トで公開していない。DVDは2階の映像音響ライブラリーに配架しており、館内視聴は2階

のライブラリーだけではなく、7階のプロジェクトルームでも可能。

【関連サイト】

わすれん!DVDが館内視聴できます(http://recorder311.smt.jp/information/26341/)

●収集内容の特色

一個人が記録する点が特色である。「わすれン!」の参加者は、仙台市内だけでなく県外の人も

含まれている。例えば、瓦礫を撤去している工事業者、NPOスタッフ、アーティストなどさま

ざまな人々が「わすれン!」に「参加者」として所属している。これらの参加者=記録者のそれ

ぞれの思いや狙い、メッセージが埋め込まれた記録、つまり「アノニマス(匿名)ではない記録」

であることが特色の一つだと考える。寄せられた映像としては、 津波の被害を受けた沿岸部の

風景や、瓦礫撤去の作業風景など。また地震・津波の体験や放射能被害などについてのインタ

ビュー映像、神楽の様子や木舟を制作している大工の作業風景など震災前からその土地にあっ

た文化の復興記録もある。

●収集にあたって心掛けていること

参加者による自由な記録を心掛けているが、ウェブサイトにどの映像を掲載するかは、スタッ

フが内容や公開する時期を検討し、独自に責任を持って判断している。

また、 写真を共同募集する際は寄贈者にできるだけヒアリングを実施し、写真に込められた心

情などを記録することも心掛けている。 ヒアリングした文章は写真とあわせてウェブサイト

などで公開する。

●活用事例

写真、映像を用い、人々の対話の機会となるような下記の場を2012年から現在まで定期的に

行っている。

【3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト公開サロン】

仙台にある「NPO法人20世紀アーカイブ仙台」と一緒に行っている。この場には、撮影者本人

に来てもらい、自分の言葉で震災時の生活の様子を映した写真を紹介してもらう。

関連サイト:これまでのイベント告知とそこで語られた記録の紹介記事(http://recorder311.

smt.jp/series/teiten/)

【こえシネマ】

来場者とともに参加者本人による編集途中の映像を囲み、撮影するきっかけや経緯、撮影時に

感じたことなどを語って過ごす。市民グループ「映像サーベイヤーズ」と協働して行っている。

関連サイト:2012年~ 2013年度の告知記事(http://recorder311.smt.jp/?s=こえシネマ)

2012年度のレポート(http://table.smt.jp/?p=4119)

これら写真と映像の利活用の場では、撮影者(参加者)自身が感じている以上の意味や価値観を

イベントの来場者が発見し、語ることもある。

これらのプロジェクトはメディアテークが発行しているフリーペーパーへの掲載や、ウェブサ

イトで情報発信することで、館内外の人に対話の内容を紹介。参加者の映像は、毎年3月にシ

アターで上映する。

【関連サイト】

2013年度の上映会の内容(http://recorder311.smt.jp/information/34106/)

※「わすれン!」参加者が、一人ひとりの想い、言葉、変わっていく地域の姿など、個々のまな

ざしで記録した映像を上映している。

【学校との連携】

震災を体験していない次の世代に震災を伝えるために、「わすれン!」では仙台市内の小学校の

先生と震災教育の現状についてヒアリングを行い、 授業で活用する試作DVDを提供している。

また小学生自身が地域の大人の震災体験をインタビューする際に映像の技術的なサポートや小

学校内の記録展示室への記録提供、仙台の学校で行われている防災教育との連携を模索してい

る。

3がつ11にちをわすれないためにセンター 提供:せんだいメディアテーク

Page 12: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

76 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 77図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

震災後、被災地の図書館が連携して行う事例の一つに「震災記録を図書館に」キャンペーンがある。これは、東日本大震災に関連する資料の図書館への寄贈を募る全国キャンペーンで、連携している図書館は、公共図書館が岩手県立図書館、宮城県図書館、福島県立図書館 、仙台市民図書館の 4館、大学図書館が岩手大学情報メディアセンター図書館、東北大学附属図書館、福島大学附属図書館、神戸大学附属図書館の 4館である。キャンペーンに参加している図書館サイトには、共通のバナーが張られており、図書館のこうした取り組みを大々的にアピールする他、キャンペーンポスターは全国の図書館や自治体に配布され、各地の図書館で貼られている。なお、半年に一度程度のペースで、呼び掛け団体となっている図書館などの担当者が集まり、資料の収集、公開に関わる事項について情報交換会を開催している。

「震災記録を図書館に」キャンペーン東北大学附属図書館(宮城県仙台市)他

●運用体制

1. 収集の呼び掛け

各館でそれぞれ下記のような方法で実施している。

県内市町村役場を訪問して取り組みについて説明。図書館サイトでの寄贈依頼。チラシによる

寄贈依頼。資料刊行元への訪問依頼、電話・メールなどによる依頼。県内公立学校の校長会で

の説明。学協会にメールへの添付文書による依頼。定例記者会見で、学外からの資料提供の呼

び掛け。学内教員へメールでの呼び掛け。学内経営協議会、教育研究評議会などでの説明。

2. 館内、館外での公開状況

●コレクションのポイント

1. 活用事例

活用を促進するための取り組みとして、各館で下記のようなことを行っている

震災資料のうち何冊かをピックアップして簡単に紹介したブックガイドの作成

東日本大震災の関連資料を探すためのパスファインダーの作成

資料、新聞、写真パネルなどの展示会

講演会、ギャラリートーク、DVDの上映会

震災関連資料コーナー紹介のパンフレット作成

他館へ震災関連の本・パネル・パスファインダーなどを組みにした出張展示セットの貸出

東北大学附属図書館 宮城県仙台市青葉区川内 27-1

http://tul.library.tohoku.ac.jp/Tel:022-795-5943 E-mail:[email protected]

参考情報震災記録を図書館にhttp://www.library.tohoku.ac.jp/shinsaikiroku/

「震災記録を図書館に」キャンペーン 詳細データ※各館により事情が異なる。半年に一度程度で開催している情報交換会の提出資料などから内容をまとめた。

●開始時期

2012年1月12日(仙台国際センターで開催した「東日本大震災アーカイブ国際ワークショッ

プ(図書館連携)」で共同キャンペーンの実施を提案

2012年3月…キャンペーンポスターを、全国の自治体、公共図書館、国立大学図書館、東北地

区の大学図書館などに配布。ウェブサイトを作成し呼び掛け、団体各館の活動内容を紹介。

●収集点数

第5回の情報交換会(2013年10月23日開催)時点での資料点数は下記の通り。ただし、震災

資料コーナーのみの数字の館、複本を含んでいる館、同じ資料を雑誌、パンフレットなど異な

る資料種別として計上する館など、計上の基準や基準日がそれぞれ異なる。

図書館名 収集資料

岩手県立図書館 図書2,385冊、雑誌6,146冊(842タイトル)、チラシなど7,503点、全国地方新聞44紙(2011年3月~ 5月分)など

宮城県図書館 図書2,192冊、雑誌883冊、チラシなど1,621点、新聞27紙、CD、DVD15点など

福島県立図書館 図書5,839冊、雑誌2,470冊(チラシなども図書、雑誌のなかに数を含んでいる)。未整理のチラシ類多数あり

仙台市民図書館 図書3,281冊、雑誌250冊、チラシなど150点、航空写真など

岩手大学情報メディアセンター図書館 図書1,500冊、雑誌80冊、その他チラシなど1,080点、電子ファイル126点など

福島大学附属図書館 図書2,870冊、雑誌74冊など

東北大学附属図書館 図書2,378冊、雑誌650冊、その他チラシなど約2,000点

図書館名 震災資料コーナーの名称 備考

岩手県立図書館 震災関連資料コーナー

宮城県図書館 東日本大震災文庫

福島県立図書館 東日本大震災福島県復興ライブラリー

仙台市民図書館 3.11震災文庫

岩手大学情報メディアセンター図書館 自然災害関連資料コーナー 自然災害一般を扱う。オンラインで公開している

資料がある。

福島大学附属図書館 震災関連資料コーナー

東北大学附属図書館 震災ライブラリー オンラインで公開している資料がある。

Page 13: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

78 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 79図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では、2012年 3月 12日より「震災ライブラリー」を開設し、震災の記録を役立て後世に引き継ぐ取り組みをしている。「震災ライブラリー」は約 600冊の図書や雑誌をそろえてスタートし、現在は「震災記録を図書館に」のキャンペーンとも連携し 5,130点を収集している。収集した資料は館内の特設コーナーで公開する他、2013年 3月 18日から「震災ライブラリーオンライン版」で、インターネットでの公開許諾を得た資料の公開を開始し、現在 1,370件が公開されている。大学図書館なので、学術的な資料は通常どおり購入、寄贈受入をしている。加

えて写真集や絵本など、普段は選定対象にならない資料についても可能な範囲で収集しているという。また収集にあたっては、震災直後の刊行資料はどの資料も重要度が高いという考えもあり、可能な範囲で広く資料収集を行ってきたが、震災から 3年を迎えるにあたり、今後は、資料が日常的に活用され、大学での日々の学びや研究に震災の経験が生かされるよう、大学の授業カリキュラムや研究の内容を見据えたうえで、資料収集に取り組むという。

震災ライブラリー東北大学附属図書館(宮城県仙台市)

震災ライブラリー 詳細データ

●開始時期

資料収集の明確な開始時期はないが、2011年6月から7月頃にかけて、震災関連資料の購入・

寄贈受入の動きが本格化。

●収集点数(2013年12月現在)

図書…約2,400冊 雑誌…約660冊 CD、DVD…約70点 

チラシ、パンフレット類…約2,000点 (うち約3,200点を公開)

 

●運用体制

1. 収集方法

販売されている資料は、通常資料と同様に館内の収書委員会、ワーキンググループで選定、購入。

非売品資料は、約270の国内学協会に資料寄贈をメールで依頼。また、個別に資料を特定し、

刊行元に寄贈依頼。

ウェブサイトを見た方からの寄贈(数は少ない)。

みちのく震録伝の「みちのく・いまを伝え隊」の活動で収集したチラシ・パンフレット類の受入。

2. 館内、館外での提供方法

本館に特設コーナーを設置(2013年12月現在、約3,200点を公開)

「震災ライブラリーオンライン版」で、インターネットでの公開許諾を得た資料の公開を開始

(2013年12月現在、1,370点を公開)

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

大学図書館なので、学術的な資料は通常通り購入、寄贈受入をしている。加えて、写真集や絵本

など、普段は選定対象にならない資料についても可能な範囲で収集している。

●活用事例

通常の利用の他、館内における展示での利用

東北大学附属図書館 宮城県仙台市青葉区川内 27-1

http://tul.library.tohoku.ac.jp/Tel:022-795-5943 E-mail:[email protected]

参考情報震災ライブラリー オンライン版http://dbr.library.tohoku.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000002shinsai

震災ライブラリー 提供:東北大学附属図書館

Page 14: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

80 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 81図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東北大学の「みちのく震録伝」は、東日本大震災に関するあらゆる記憶、記録、事例、知見を収集するだけではなく、東北地方の過去・未来の災害についてもアーカイブする。収集した資料は、東日本大震災の実態解明と復興に関する知見の提供、低頻度巨大災害への対策管理を進展させ、今後、発生が懸念される東海・東南海・南海地震の防災など、分野横断的な研究に役立てられている。この取り組みは、2007年に設立された東北大学防災科学研究拠点(現・東北大学災害科学国際研究所。東日本大震災を機に 2012 年 4 月に現組織へ移行)が文部科学省や日本アイ・ビー・エム株式会社などの産官学と連携し、災害アーカイブのグローバルスタンダードを目指して、2011年 6 月頃より開始した(正式リリースは 2011

年 9月)。協力・賛同機関は、2013年 9月時点で 110機関を超える。資料の収集は「震災資料を図書館に」キャンペーンを通じて、附属図書館で収集を呼び掛けている。同アーカイブはすでに存在する情報を収集するだけではなく、本取り組みを行う災害科学国際研究所が各自治体、賛同協力機関、新聞社などのメディア関連企業と協力して情報を収集や整理を行う他、現地の方を雇用してフィールド調査を行う「みちのく・いまをつたえ隊」を 2012年 1月から始めている。宮城県沿岸の15自治体に 16名が派遣され、活動内容は、地域住民への聞き取り、被災地の現状を撮影する他、現地の人が保有しているさまざまな震災資料の収集をしている。「みちのく・いまをつたえ隊」が収集したチラシ、パンフレットなど約 800点は東北大学附属図書館に提供され、同館が整理、公開する予定である。また同館は、それら資料を電子化もしており、「みちのく震録伝」としてウェブ上で公開している。

みちのく震録伝東北大学附属図書館(宮城県仙台市)

みちのく震録伝(主に図書館と連携している部分についてのみの情報)

1.開始時期

2011年9月12日(本格始動のプレスリリースを開始)

(http://www.dcrc.tohoku.ac.jp/surveys/20110311/docs/tohokuuniv-press20110912.

pdf)

●収集点数

「みちのく・いまをつたえ隊」の活動により収集したチラシ、パンフレットなど約800点。

現在データベース上で公開されている資料としては、研究者が撮影した写真や「みちのく・い

まをつたえ隊」が撮影した写真などが多数を占めている。図書館電子化作業分のチラシ、パンフ

レット類は、600点程度を「みちのく震録伝」でも公開中(「震災ライブラリーオンライン版」で

は、この600点を含む1,370点を公開中)。

●運用体制

1. 収集方法

「みちのく・いまをつたえ隊」の活動では、沿岸被災地でインタビューや写真撮影といった記

録の作成作業を実施しているが、その際、現地で配布されているチラシやパンフレット類の

収集をあわせて行っている。

2. 館内、館外での提供方法

「みちのく・いまをつたえ隊」の活動により収集したチラシ、パンフレット類の原本は、図書

館で整理・公開する予定だがまだ未整理で非公開。インターネット公開の許諾を得た資料は、

東北大学附属図書館の「震災ライブラリーオンライン版」で公開している他、あわせて「みち

のく震録伝」でもインターネット公開する運用をしている。

東北大学附属図書館 宮城県仙台市青葉区川内 27-1

http://tul.library.tohoku.ac.jp/Tel:022-795-5943 E-mail:[email protected]

関連情報みちのく震録伝http://shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/

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82 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 83図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館は岩手大学地域防災研究センターと連携し、所蔵している岩手県の自然災害および、東日本大震災に関する資料が検索できる「岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリ」を設置している。図書館が所蔵する資料は、館内の「自然災害関連資料コーナー」に置かれ、閲覧・貸出ができる。また地域研究資料センターの資料は、図書館で手続きをとれば閲覧のみ可能。レポジトリの収録件数は図書 1,626点、雑誌 96点、一枚ものやパンフレットなどの報告書が約1,100点、電子で保存されているものが 26点、写真が 2,000点超となっている。岩手県は、地震・津波・洪水・土砂災害・火山・冷害など、自然災害が多い地

域のため、同大には火山や土砂災害の専門家も多い。それを踏まえ、収集対象は東日本大震災に限らず、「自然災害全般に関する資料」としているのが特徴である。なお岩手大学地域防災センターは、工学部自然災害の研究や減災システムの開発、小・中学校での防災教育の支援を行っていたが、2013年 4月、東日本大震災を受けて岩手大学の管轄に置かれ、文理融合型の全学組織として再スタートした機関である。

岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリ岩手大学情報メディアセンター図書館(岩手県盛岡市)

岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリ 詳細データ

●開始時期

2012年1月(収集開始)*図書に関しては、2011年4月から

2013年4月(サイト公開)

●収集点数(2014年1月23日現在)

図書…1,626点(内2011年4月以降受入分1,410点) 雑誌…96点 

パンフレット・報告書など…約1,100点 電子資料(写真を除く)…26点 

電子資料(写真)…2,000点超

 

●運用体制

1. 収集方法

本学教員には学内メールおよび、グループウェアで定期的に依頼

学外へは提供依頼の広報は行っていないが、各種情報をもとに個別に依頼

2. 館内、館外での提供方法

図書館所蔵の図書・雑誌・パンフレット・報告書などは、館内に特設書架を設けて公開している。

パンフレット・報告書などのうち、電子公開許諾の取れたものは電子公開を進めている(点数

は少ない)。

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

岩手は、地震・津波・洪水・土砂災害・火山・冷害など、自然災害が多い地域のため、本学には

火山や土砂災害の専門家も多い。それを踏まえ、収集対象は東日大震災に限らず、「自然災害全

般に関する資料」している。

2013年4月に学内に設置された「地域防災研究センター」と連携し、研究者が被災地で収集

した資料を図書館で整理する他、地域防災研究センター既所蔵の資料の整理も行っており、将

来的には岩手大学自然災害資料サイト(http://rndd.iwate-u.ac.jp/)で、図書館所蔵資料とと

もに、地域防災研究センター所蔵資料も検索できる予定である。

2. 収集にあたって心掛けていること

学内教員に定期的に依頼するほか、SNSも含めた各種メディアをもとに幅広くチェックし、

個別に依頼している。

岩手大学情報メディアセンター図書館 岩手県盛岡市上田 3-18-8

http://www.lib.iwate-u.ac.jp/Tel:019-621-6082 Fax:019-621-6088

関連情報岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリhttp://rndd.iwate-u.ac.jp/

自然災害関連資料コーナー 提供:岩手大学情報メディアセンター図書館

Page 16: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

84 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 85図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

宮城県図書館は、東日本大震災に関連する資料を 2012年度より収集し、 収集した資料を「震災文庫」と名付け、2012年 7月から館内に「東日本大震災関連本コーナー」を設けて展示している。収集点数は 2013年の 12月末時点で図書が2,286点。防災対策や震災復興に役立てることを目的として、現在も図書館サイトで収集を呼び掛けており、収集対象は記録集、写真集、録画などの映像資料、調査報告書、論文、救助、復旧活動などの活動書、避難所だより、壁新聞などである。相談会やイベントなど配布資料、手記、体験記録、文集、儀式での式辞や答辞、誓いの言葉、復旧活動の報告書、セミナーのチラシ、体験記録、フリーペーパー、学校だより、会報や広報誌など、あらゆる震災関係資料を収集している。同館では関係資料の収集・保存と同時に、震災前からのネットワークを生かして、直接的・間接的に県内の図書館からの情報を集め、県内の被災図書館の支援に力を入れており、全国的な復興支援の動きと被災図書館の仲介を担っている。

東日本大震災文庫宮城県図書館(宮城県仙台市)

東日本大震災文庫 詳細データ

●開始時期

2012年7月

●収集点数(2013年12月末現在)

図書…2,286冊 雑誌…905冊 視聴覚資料…20点 新聞…27点

チラシ類(チラシ・ポスター・写真など)…1,677点 

●運用体制

1. 収集方法

寄贈依頼のポスターを館内に掲示

各カウンターなどにチラシやパンフレットを設置

ポスター、チラシを県内公共図書館、学校、企業などの各種団体や宮城県社会福祉協議会を通

じて県内市町村社会福祉協議会に配布。

災害ボランティア団体の会議や、県内小中学校長会、県立学校長会、各種団体や企業などに出

向き、震災資料について説明し、寄贈依頼。

2. 館内、館外での公開状況

既存の開架書架を使ってコーナー化して資料を配架。「東日本大震災文庫」資料は館内利用に

限定しているため、資料を複数部収集し、館外貸出用資料を別書架に配架している。

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

非売図書・雑誌やチラシ、ポスター類を積極的に収集し、整理を行っている

2. 収集にあたって心掛けていること

現地でのみ入手可能な資料は、出向いて収集を行うなど、宮城県内での震災に関わる記録を網

羅的に収集するよう心掛けている。

●活用事例

国土地理院が撮影した震災直後からの宮城県内沿岸部空中写真を展示。

今年度(2013年秋開催)の「みやぎ県民大学」にて、『災害資料と図書館』と題して、担当職員が講

義を行った。

宮城県図書館 宮城県仙台市泉区紫山 1-1-1

http://www.library.pref.miyagi.jp/Tel:022-377-8441(代表) Fax:022-377-8484 E-mail:[email protected]

震災文庫 提供:宮城県図書館

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86 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 87図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

兵庫県立図書館では、1995年 1月 17日の阪神・淡路大震災の発生を受けて、この震災に関連するあらゆる資料の収集を開始し、同年11月には「フェニックス・ライブラリー」として、館内に特設コーナーを設けた。コーナーでは、図書資料を中心に、生々しい爪痕を報じた新聞の号外や、当時の避難所で配布されたミニコミ誌、チラシなどを公開している。被災地の県立図書館として、県民が経験したこの災害の記憶を後世に伝え継ぐことが目的である。収集は図書館の復旧作業のかたわら、 職員が地道に行ったという 。震災後2年で、収集した震災関連資料は約 6,000点を超え、同館ではこれらの

資料のさらなる活用を促すため、1997年 3月に『阪神・淡路大震災関連資料目録』(兵庫県立図書館編) を刊行している。また震災から 10年目にあたる 2005年1月、同館が作成した記事名、執筆者、雑誌名での検索が可能なデータベース「フェニックス・ライブラリー震災関連雑誌記事索引」を図書館サイト上で公開し、5,365件を採録した。資料のデジタル化については「フェニックス・ライブラリー」図書書誌データとリンクさせることで、これまで以上に震災関連図書の活用の促進が図られると考えられることから、2013年度中の公開を目指して、現在、許諾などの作業が進められているという。しかし、許諾依頼先が不明になっているもの、個人情報などの問題のため、計画どおりには進んでいない状態とのことである。なお、 神戸大学附属図書館の「震災文庫」が構築している「震災資料横断検索シ

ステム」に、同館が収蔵する図書資料の情報を 2012年 3月より提供しており、震災関係の資料を一括して検索できるようになっている。

フェニックス・ライブラリー兵庫県立図書館(兵庫県明石市) 

フェニックス・ライブラリー 詳細データ

●開始時期

1995年1月(収集は、図書館復旧と並行して開始)

1995年11月(郷土資料室内に「フェニックス・ライブラリー」と名付けて公開開始)

●収集点数(2013年3月31日現在)

図書…約2,700点(うち304点はデジタル化しているが公開はせず) 雑誌…約400点

チラシ・パンフレット類…約4,900点 

その他(ポスター・地図・空中写真・ビデオテープ他)…約1,000点 

●運用体制

1. 収集方法

職員の他、ボランティア団体による収集や、ライブラリー開設のマスコミの報道を見た方からの

寄贈。

兵庫県立図書館 兵庫県明石市明石公園 1-27

http://www.library.pref.hyogo.jp/Tel:078-918-3366(代表) Fax :078-913-9229

フェニックス・ライブラリー 提供:兵庫県立図書館 

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88 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 89図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

●コレクションのポイント

1. 収集対象

収集対象は図書、雑誌、新聞、ビラ、チラシ、パンフレット、ミニコミ誌、ボランティア情報、避難

所だより、手記、文集、地図、空中写真、視聴覚資料など刊行されたあらゆる震災関連資料。

●活用事例

『阪神・淡路大震災関連資料目録』(兵庫県立図書館編、1999年3月)の刊行

毎年1月に、震災関連企画講座を開催

調べ学習や教材研究などに活用できるように教科、分野ごとにテーマを決め、30冊程度のセッ

トを用意し、主に県内高等学校へ団体貸出。

徳島県立図書館、鳥取県立図書館など県域を越えたネットワークを生かし、 資料を県外で展示

する他、東日本大震災の被災地の図書館との交換展示。

東日本大震災の被災地に居住している方に「フェニックス・ライブラリー震災関連雑誌記事索

引」データベースを利用した雑誌記事の提供。

2004年 10月 23日に発生した新潟県中越地震で、新潟県中越地方に位置する小千谷市は震度 6強の多大な被害を受けた。小

千ぢ

谷や

市立図書館では、震災の記憶を長く語り継ぐために、新潟県中越地震の関連資料を収集・公開し、一部の資料は貸出も行っている。震災資料は図書約が 440冊の他、パンフレットや報道の録画など視聴覚資料、

雑誌の記事、震災復旧を知らせる地元スーパーのチラシなど多岐にわたる。収集した資料は「中越大震災資料コーナー」として特設コーナーを館内に設置し、図書館サイト上では「中越大震災関連資料」として PDFでリストを公開、OPACからは「震災資料」でテーマ別検索ができるようにもなっている。同館では、震災から 10年が経過する現在でも関連資料の収集を市民に募っている。また、2011年11月には、震源となった現地をツアー応募者とめぐる『被災地まるごとバスツアー』を公益社団法人中越防災安全推進機構との連携で企画実施するなど、震災関係の展示を多角的に行っている。

中越大震災資料コーナー小千谷市立図書館(新潟県小千谷市)

小千谷市立図書館 新潟県小千谷市土川 1-3-7

http://www.city.ojiya.niigata.jp/site/library/Tel:0258-82-2724 Fax:0258-82-8915

Page 19: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

90 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 91図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神戸市立中央図書館は 1995年の阪神・淡路大震災の発災後、震災関連資料要網を定め、この震災に関連する資料の収集を行っている。中央図書館神戸ふるさと文庫内に「阪神・淡路大震災関連資料(1.17文庫)」を配架し、震災後建て替えた 2号館に「震災関連資料室」を開設した。また 2000年 1月には『神戸市立中央図書館所蔵震災関連資料目録(1.17文庫)』を刊行している。収集された資料には図書と現物資料があり、図書資料は中央図書館 2階の特設

コーナー「1.17文庫」で、現物資料(止まったままの時計など)は同館 2号館の震災関連資料室で展示をしている。また東日本大震災後、被災した利用者から、阪神・淡路大震災の教訓から学べる情報についての問い合わせがあったため、図書館サイトで公開していた 1.17

文庫のブックリストを、被災者の生活や支援に関連するキーワード(食事、備蓄、トイレ、避難所、ミニコミ誌、広報誌など、救援物質、県外避難者など)から検索できるように整理し、公開している。阪神・淡路大震災のような未曾有な震災の現場に居合わせ、さまざまな形で関わった人々の試行錯誤は、のちの震災で生かされるべき教訓でもあるのだ。

1.17文庫神戸市立中央図書館(兵庫県神戸市)

1.17文庫 詳細データ

●開始時期

1997年6月(中央図書館神戸ふるさと文庫内に配架)

●収集点数(2013年12月現在)

約3,500冊

●運用体制

1. 収集方法

自費出版などは直接寄贈をお願いしている

2. 館内、館外での提供方法

館内の専用書架に配架(一部閉架資料あり)

図書館サイトに「震災関連資料リスト」を掲載

●収集にあたって心掛けていること

震災直後から週刊誌などの収集を開始。網羅的に収集、保存することを目標とし、出版情報など

の収集に努めている。

●活用事例

東日本大震災後に、被災地の図書館からの見学受け入れ

神戸市立中央図書館 兵庫県神戸市中央区楠町 7-2-1

http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/Tel:078-371-3351 Fax:078-371-5046

1.17文庫 提供:神戸市立中央図書館 

1.17文庫 提供:神戸市立中央図書館

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92 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 93図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館にある文書資料室は、新潟県中越地震に対し「歴史的資料の救済」と「震災関連資料の収集」の二本柱で対応し、災害対応、災害関係の資料を収集する取り組み「災害アーカイブ」を行っている。収集内容は新潟県中越地震の他、新潟県と福島県で起こった豪雨災害(2004年 7月 13日)、新潟県中越沖地震の関連資料、長岡市に関わる東日本大震災の資料が中心である。文書資料室自体は、1998年 4月に長岡市史編さん室の業務、資料を継承して開

設し、災害の記憶と風化を防ぎ、次の世代に伝えることを目的の一つとしている。資料は現在も継続して収集しており、市民にも提供を呼び掛けている。また、資料の整理にはボランティアも募り、市民と協力して活動を行っている。同室では、『新潟中越大震災と史料保存(1)長岡市立中央図書館文書資料室の試み』や『新潟県中越大震災と史料保存(2)被災資料が地域を語る 1刈羽郡桐沢村青柳家文書』などの資料も刊行している。

災害アーカイブ長岡市立中央図書館文書資料室(新潟県長岡市)

長岡市立中央図書館文書資料室 新潟県長岡市坂之上町 3-1-20(互尊文庫 2階)https://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/Tel:0258-36-7832 Fax:0258-37-3754 E-mail:[email protected]

新潟歴史資料救済ネットワークによる避難所資料の整理作業 提供:長岡市立中央図書館文書資料室 

新潟県中越大震災時の長岡市立中央図書館避難所の掲示物 提供:長岡市立中央図書館文書資料室 

Page 21: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

94 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 95図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

7・13水害(新潟・福島豪雨)、新潟県中越大震災、新潟県中越沖地震、東日本大震災に関す

る災害アーカイブであること。

長岡市内に開設された避難所のアーカイブ(掲示物・配布物、避難所本部事務文書、引き継

ぎメモなど)が中核になっていること。

長岡震災アーカイブセンターきおくみらい、新潟大学、神戸大学などの関係機関・大学など

と連携して収集・整理を進めていること。

長岡市内に開設された避難所のアーカイブは、長岡市資料整理ボランティア、新潟歴史資料

救済ネットワークと市民協働で整理作業を行っていること。

2.収集にあたって心掛けていること

長岡市の機関として、市施設(学校、コミュニティセンター、市役所など)に集積された災害

記録を積極的に収集すること。

避難所資料の収集にあたっては、運営の妨げにならないように連絡・調整のうえ行うこと。

将来の長岡市史編さんなどで活用できるように、紙媒体の資料を中心に、掲示物・配布物、

事務文書、写真などの一次資料の収集に努めること。

●活用事例

【主な出版物】 

長岡市史双書№48『新潟県中越大震災と史料保存(1)長岡市立中央図書館文書資料室の試み』

(2009年)

矢田俊文・長岡市立中央図書館文書資料室編『震災避難所の史料 新潟県中越地震・東日本大

震災』(新潟大学災害・復興科学研究所危機管理・災害復興分野、2013年)

【主な展示会】

災害アーカイブス展「避難所の記録と記憶」

会期 2008年10月19日~ 11月9日

会場 長岡市立中央図書館2階ホール

中越大震災被災地連携企画 震災アーカイブ展 中越大震災5周年特別企画「復興の軌跡」-おこ

す よりそう つたえる つなぐ かんがえる -

会期 2009年10月20日~ 10月27日

会場 長岡市美術センター(長岡市立中央図書館2階)

【主な講座】

歴史講座「中越大震災~史料保存の現場から」(連続5回)

第1回 中越大震災の記録と記憶(講師:中央図書館・文書資料室職員)

期日 2009年10月20日

会場 長岡市立中央図書館

災害アーカイブ 詳細データ

●開始時期

2004年10月23日( 新潟県中越大震災発生以降から収集)

2008年8月(一部公開…4,763点)※以降、整理・目録作成が終了した資料を公開。現在、9,651

点を公開。災害アーカイブの概要については、表1のとおり。

●運用体制

1. 収集方法

災害アーカイブの各資料群の収集方法は表1の通り。その他、チラシ、市政だより、機関紙

「長岡あーかいぶす」「災害アーカイブス通信」などを通じて広報を行い随時収集。

2. 館内、館外での提供方法

「07 図書資料」は文書資料室の閲覧室内の書架に配架。「07 図書資料」以外の公開資料は、

書庫内に保管。目録を閲覧室内に配架し、請求があった場合に閲覧に供している。

●コレクションのポイント

1.収集内容の主な特色

分類番号 資料群名 概要 主な収集方法 点数

01 長岡市立中央図書館文書資料室収集資料

行事のチラシ・ポスターなど、個人・企業より寄贈され他に分類できないもの 随時収集・受け入れ 322

02 長岡市内避難所資料 避難所で掲示・配布・作成されたもの 中央図書館は閉鎖時に依頼、呼びかけ文送付・訪問調査 395

03 長岡市役所資料 市役所各課・施設から提供された災害対応業務に関するもの

歴史公文書の収集などで呼びかけ 2,278

04 長岡市内小・中・高等学校・特別支援学校資料

市内の学校から提供された写真・文書・刊行物など

事前アンケート・訪問調査(2006・2007年度) 4,012

05 新聞資料 新聞(原紙) 購入、市内図書館より移管 619

06 行政刊行資料 自治体の刊行物・チラシ・ポスターなど 随時収集・受け入れ 整理中

07 図書資料 図書・雑誌・広報誌・体験談・報告集など

随時収集・受け入れ、「住民生活に光をそそぐ交付金」(2010年度)で購入

429

08 地図資料 災害に関する地図 随時収集・受け入れ 7

09 写真資料 被害状況・復旧作業など写真(個人撮影) 随時収集・受け入れ 整理中

10 長岡市内コミュニティセンター資料

市内のコミュニティセンターから提供された写真・文書・刊行物など

事前アンケート・訪問調査(2009年度) 1,589

11 長岡市内東日本大震災避難所資料

避難所で掲示・配布・作成されたもの、避難所写真

避難所開設・閉鎖時に訪問調査(2011年度) 整理中

合      計 9,651

表1 文書資料室の災害アーカイブ(2013年1月現在) 

※災害に関する長岡市の非現用文書は歴史公文書として収集・保存しているため除く

Page 22: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

96 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 97図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では、2004年に発生した新潟県中越地震、2007年に発生した新潟県中越沖地震時における看護問題に関連する図書を重点的に収集している。これは看護大学に付属する図書館として、収集した資料を自校の活動や学生の学びに役立てるためである。資料は館内の特設コーナーに常設され、図書館サイト上でも「新潟県中越大震災特設ページ」として、1「災害看護・地震関係図書リスト」(新潟県立看護大学図書館所蔵のもの)、2「災害(地震)看護雑誌論文リスト」、3「東日本大震災に関する文献情報」の文献リスト(医学中央雑誌刊行会作成リストへのリンク)の他、中越地震や中越沖地震を含む新潟県の災害についての記述が含まれる雑誌の目次情報の紹介、関連サイトへのリンクなどを行っている。収集した資料は、雑誌や映像資料も含め約 550点におよび、現在も継続して収集している『日本災害看護学会誌』は、創刊号から所蔵している図書館が少ないという事情もあり、全国的に利用されている。電気も水もない状況で看護をせざるをえない状況は、先の東日本大震災の発生時でも起きている。中越での経験をアーカイブした同館の豊富な資料が、その後、被災に見舞われた地に情報支援として届いているだろうことは想像に難くない。

震災時の「看護」をテーマに情報発信新潟県立看護大学図書館(新潟県上越市) 

新潟県立看護大学図書館の震災への取り組み 詳細データ

●開始時期

2012年11月1日(特設書架を設置)

●収集点数(2014年1月現在)

550点

●運用体制

1. 収集方法

購入図書は、学内の関係教員へ呼び掛けと図書館員の選書したものを教員による図書委員会

で購入の可否を検討している。

その他、図書館サイトで寄贈を呼び掛け、行政資料・非売品は個別に寄贈依頼

2. 館内、館外での提供方法

館内に特設の書架を設置

図書館サイトで所蔵リストの公開

※その他、医中誌Webの文献リストを版元の了解を得てサイトに公開

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震に関する資料を中心とした新潟県にお

ける災害看護資料がメインだが、災害看護に役立つと思われるものは「新潟県」「看護」に関

わらず、国内の災害であれば、福祉や心理学など関連分野も含めて収集している。

2. 収集にあたって心掛けていること

行政資料や非売品など、一般的に流通せず、発行部数も限られている資料を積極的に収集す

ること。

公立大学の使命として、学生・教員および、地域の看護職者の看護研究と活動に役立てても

らうために、新潟県の災害に関する保健医療福祉資料を意識的に収集すること。

新潟県立看護大学図書館 新潟県上越市新南町 240

http://lib.niigata-cn.ac.jp/Tel:025-526-1169 Fax:025-526-3607 E-mail:[email protected]

災害看護・地震関係資料コーナー提供:新潟県立看護大学図書館 

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98 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 99図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

名古屋市南図書館は南図書館改築時に、日ごとに散逸しがちな伊勢湾台風の被災資料を一堂に収集し調査研究に役立てるよう、1992年 3月、伊勢湾台風資料室を設置した。収集しているのは、気象、被害状況、救援活動、復旧対策事業、体験記、手記、文集、社史、行政資料、新聞、雑誌記事の他、市内 12区の小学校で作成された災害の記録や体験記、文集など、当時の様子がうかがえる多角的な資料の他、カメラマンの佐伯義勝さん、名古屋市南区在住の郷土史家・小川金雄さんらが当時撮影した写真の寄贈を受け、保管している。どれも当時の被害のすさまじさや生々しさが伝わってくる資料で、これらの写真はパネルにして展示、紹介している。資料の多くは開設当時に収集されており、それ以降は蔵書に大きな増加はなかったが、伊勢湾台風襲来 50周年を迎えた 2009年とその翌年には関連資料の寄贈が多数あったようだ。資料は閲覧や貸出(特別貸出)しており、市民だけではなく、研究者やテレビ関係者、映画製作関係者にも利用されている。

伊勢湾台風資料室名古屋市南図書館(愛知県名古屋市)

伊勢湾台風資料室 詳細データ

●開始時期

1992年3月

●収集点数(2013年7月現在)

図書(複本含む)…985冊、視聴覚資料…15点(ビデオテープ11点、DVD4点)

マイクロフィルム…13点、16ミリフィルム…2点

写真パネル…286点、写真(ネガフィルム)など

●運用体制

1. 収集方法

【図書・雑誌新聞記事】

「愛知県郷土資料総合目録」「名古屋市鶴舞図書館:伊勢湾台風資料目録」「国立国会図書館所

蔵主題別目録」などの文献目録より資料をリストアップし、購入・寄贈・複製により収集。

学校や行政機関・県下の図書館への資料照会、古書店回り

開設時の新聞報道などで開設を知った市民からの寄贈

【映像資料】

ビデオテープ・16ミリフィルム・マイクロフィルムを、それぞれ「建設省中部地方建設局」「愛

知県広報課」「名古屋市鶴舞中央図書館」所蔵の資料から許可を得て複製し、所蔵している。

【その他】

新聞記事クリッピングや写真および写真集は、個人・機関からの寄贈。写真パネルは写真の一

部から作成。

2. 館内、館外での提供方法

館内にある専用の小部屋(閲覧申込制)

※当初は常時開室のオープンな運営方式だったが、管理上の問題から閲覧申込制に変更。

●収集にあたって心掛けていること

被災経験者、関係者の高齢化が進み、当時の資料収集が困難になっているが、資料室のPRに努め

ながら、さらなる資料の収集に努めている。

伊勢湾台風に関する新しい出版物の他、関連する展示会などのイベント資料の収集にも努めて

いる。

●活用事例

南図書館展示コーナーで毎年9月、写真のパネル展示を開催

展示会など、イベントを開催する他、機関や各種団体へ貸出

名古屋市南図書館 愛知県名古屋市南区千竃通 2-10-2

http://www.library.city.nagoya.jp/Tel:052-821-1732 Fax:052-821-3364

伊勢湾台風資料室 提供:名古屋市南図書館 

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100 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 101図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館は、2000年 10月に発生した鳥取西部地震を記録した資料コレクションを所蔵している。この資料は、阪神淡路大震災での教訓をもとに、鳥取県西部地震の記録を散逸させずに後世に残すべく、鳥取大学工学部の西田良平教授と鳥取県が収集し、2002年から公開しているものである。資料は個人が収集整理してきたものから、行政が作成・収集してきたものなどである。専門家の調査報告書から、小学生が調べてまとめたものなど、内容は多岐にわたる。資料コレクションのリストは全てウェブで公開しており、冊子体で収集された原資料は、特設ではなく閉架で保存されている。なお、この冊子体の原資料は、CD-ROMにデジタルアーカイブとして保存され、鳥取県立図書館など県内各地の図書館にも所蔵されている。また鳥取大学附属図書館では、鳥取県西部地震の記録をもとに 1943年 3月の鳥取地震について調査した『鳥取地震調書』という全 10冊の私家版も寄贈を受け、その複製本を同館の郷土資料室で配架している。この原本は、鳥取大地震に関する県立博物館や市立博物館の展示などで利用された。

鳥取県西部地震記録保存資料一覧表鳥取大学附属図書館(鳥取県鳥取市)

鳥取県西部地震記録保存資料一覧表 詳細データ

●開始時期

2002年(公開開始)

●収集点数

93点

●運用体制

1. 収集状況

現在は収集対象ではないが、新しく資料が出版されれば、通常の図書館資料として所蔵する

可能性あり。

2. 館内、館外での提供方法

冊子資料は、館内の閉架書庫で、専用キャビネットに保管

デジタルアーカイブはCD-ROMでの館内閲覧

【参考情報】  

平成12年鳥取西部地震(危機管理局の鳥取県の危機管理の鳥取県西部地震関係)

http://www.pref.tottori.lg.jp/seibujisin/

●活用事例

学生の卒論などでの利用

西田良平教授による授業・講座などでの利用

●活用事例

南図書館展示コーナーで毎年9月、写真のパネル展示を開催

展示会など、イベントを開催する他、機関や各種団体へ貸出

【参考資料】

鳥取県西部地震記録保存資料一覧表(http://www.lib.tottori-u.ac.jp/list/seibu_jishin.htm)

図書館報 No.103 p.8-9(http://www.lib.tottori-u.ac.jp/kanpo/kanpofile/kanpoNo.103.pdf)

鳥取大学附属図書館 鳥取県鳥取市湖山町南 4-101

http://www.lib.tottori-u.ac.jp/Tel:0857-31-5672 Fax:0857-28-6346 E-mail:[email protected]

参考情報鳥取県西部地震記録保存資料一覧表http://www.lib.tottori-u.ac.jp/list/seibu_jishin.htm

「平成12年鳥取県西部地震」記録集配架の様子 提供:鳥取大学附属図書館

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102 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 103図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では、熊本大学医学部が研究している水俣病関連の資料コレクションの一部を水俣病公式確認 50年を期して、2006年から公開している。公開されたのは、熊本大学医学部が所蔵する水俣病関係の研究資料などの目録と新聞記事データベース。目録に掲載されている研究資料は、熊本大学附属図書館の医学系分館でほぼ閲覧することができる。原資料については被害者の個人情報に関するものも多く、公開していないが、特に研究目的などでの利用は、図書館での確認を経て閲覧・複写が可能である。新聞記事のデータベースは、熊本日日新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞に掲

載された 1971年までの水俣病関係の記事からなり、記事の見出しを年代ごとに整理している。著作権の許諾がとれたものは、サイト上で原文を見ることも可能。この取り組みは、「水俣病関係学術資料の収集・整理」をテーマの一つに掲げて、

1999年より活動している熊本大学学術資料研究調査推進室が行っており、現在も整理が進められている。研究業績の収集とともに、被害者、加害者、医学、行政などの一次資料を重視して収集が行われており、現在約 90,000点の資料がある。

水俣病関連の資料コレクション熊本大学附属図書館(熊本県熊本市)

水俣病関連の資料コレクション 詳細データ

●開始時期

1999年10月(公開は2006年6月)

●収集点数

約90,000点

●運用体制

1. 収集方法

一般的な呼び掛けはせず、資料の所有者、保有機関などに個別に提供を要請

2. 館内、館外での提供方法

被害者の個人情報に関するものも多いため、原資料の公開はせず

特に研究目的などで必要な場合で、同館にて研究目的、使用状況など確認できる場合には、閲

覧・複写は可能。

被害者のプライバシーに関わるものは複写できないものがある

個人に関わりの少ない歴史的事件史的(チッソ、行政、医学などに関わる)資料はPDF画像で

提供できるものもある。

通常の公刊図書類は図書館蔵書で扱う

●コレクションのポイント

医学、化学、政治、経済、法、社会など幅広く収集

●収集にあたって心掛けていること

研究者、学生(院生レベル以上)、教師、関心ある人々への一次資料提供が主で、図書館(熊本大学

学術資料調査研究推進室〈水俣病部門〉)自らの展示、講座などは適宜行うが恒常的ではない。

熊本大学附属図書館 熊本県熊本市黒髪 2-40-1

http://www.lib.kumamoto-u.ac.jp/Tel:096-342-2272 Fax:096-342-2210

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104 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 105図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

被爆都市ヒロシマに建つ図書館として、同館は被爆体験の継承と平和意識の高揚を願い、広島や長崎の被爆文献資料を広く収集している。収集の資料は図書、逐次刊行物(雑誌、紀要、新聞、同人誌他)などで、資料数は図書・雑誌など 33,140点。所蔵資料は図書館サイトからテーマ別に調べることができる他、OPACでも検索可能である。また広島平和記念資料館の平和データベースからも検索できる。また同館では、広島市教育センターと広島市の各学校の協力を仰ぎ、それぞれが保管していた被爆体験談の録画ビデオの収集とデジタル化(DVD化)を 2008

年に広島市教育委員会と行っている。このビデオは、小中学校の平和教育で取り組まれている「地域の被爆体験継承事業」で作成されたビデオである。デジタル化した映像は学校を始め、広く市民へも貸出しており、図書館のサイトでも公開している。現在サイトで公開されている映像は 21本である。

被爆文献資料/被爆体験証言ビデオ広島市立中央図書館(広島県広島市)

被爆文献資料 詳細データ

●開始時期

1961年11月1日(「原爆資料室・郷土資料室」の開設)

1974年10月27日(広島市立中央図書館移転開館「広島資料室」に改称)

●収集点数

33,140冊(2013年3月31日現在)

図書館サイト公開の目録冊数

●収集内容

広島、長崎市の被爆に関する資料

広島市および、長崎市での被爆の体験記などの文学的資料

広島市・長崎市以外の地域での被爆(被曝)に関する資料

広島市および長崎市での被爆状況を理解するうえで参考となる資料

平和に関する資料(ただし、広島市・長崎市との関連が深いものに限る)

その他

●運用体制

1. 収集方法

購入可能な資料は発行元や個人から購入。非売品については、発行元や個人へ寄贈の依頼。

広島資料室のパンフレットに「地域資料の収集について」を掲載し、市民に寄贈などによる協

力を仰ぐ。

2. 館内、館外での提供方法

広島資料室内に特設書架を設置(地域資料との区別を図るため、独自の分類を与えている。別

置記号を与えた分類 地域資料…H 被爆文献資料…A)

図書館サイトで公開(特別コレクションとして「被爆文献資料」の項目をつくり、テーマごと

に一覧で表示)

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

広島や長崎の被爆による人的・物的被害を記述したあらゆる資料ならびに、関連する多様な

資料と平和に関する資料を積極的に、網羅的に収集。

2. 収集にあたって心掛けていること

収集する資料は、できる限り3部(被爆文献資料用、貸出用、保存用)以上収集すること

書籍の形態だけでなく、新聞(号外や特報など)、パンフレット、絵はがきなど幅広く収集すること

書籍、雑誌の内容の一部に、被爆に関する記事の記載がある資料についても収集すること広島市立中央図書館 広島県広島市中区基町 3-1

https://www.library.city.hiroshima.jp/Tel:082-222-5542(代表) Fax:082-222-5545

広島資料室内の被爆文献資料書架 提供:広島市立中央図書館 

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106 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 107図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

自費出版で一般に流通しない資料も多くあることから、発行情報の収集に努めること

●活用事例

企画展や講演会の開催(被爆体験継承事業として毎年8月6日を中心に、被爆の実相および広

島市の復興を伝えるとともに、平和意識の高揚を図るため企画展と講演会を開催している)。

【企画展】

「こどもたちの見たヒロシマ」(2013年7月20日~9月1日)

「ヒロシマと交通-暮らしと復興のなかで-」(2012年7月28日~8月31日)

「広島とスポーツ-廃墟からの復興-」(2011年7月15日~8月28日)

「被爆65周年:平和記念公園をめぐって」(2010年8月1日~8月28日)

「広島市制施行120周年・広島平和記念都市建設法60周年記念:うつりゆく広島 つながる心」

(2009年8月1日~8月30日)

【講演会】

「次の世代に伝えたいこと」講師:前田耕一郎氏(前広島平和記念資料館館長)(2013年度)

「路面電車が語るヒロシマ」講師:加藤一孝氏(街づくり研究会代表)(2012年度)

「カープ誕生とヒロシマ」講師:長谷部稔氏(広島カープOB会会長)、紙芝居演者:阿部頼繁氏

(劇団花子ちゃんとそのお友だち主宰)(2011年度)

「被爆65周年平和祈念事業 ヒロシマからのメッセージ『原爆で失ったもの』」講師:田邊雅章

氏(平和公園復元映像製作委員会代表・広島修道大学特別客員教授)(2010年度)

「核兵器廃絶のために私たちは今」講師:浅井基文氏 (広島平和研究所長)(2009年度)

被爆体験証言ビデオ 詳細データ

●開始時期

2008年(現在は収集していない)

●収集点数

21点

●コレクションのポイント

1.収集内容の特色

広島市内の学校で被爆者が講演を行った際の証言ビデオをデジタル化したもので、被爆者の

表情と生の声が伝わる貴重な資料となっている。

2.活用事例

広島にゆかりの深い文学者21名の図書や自筆原稿などを収集展示している「広島文学資料

室」のサテライト展示「生誕100年 栗原貞子-私は広島を証言する-」(2013年3月1日~

4月29日)の際に、展示会場において同氏の証言DVDを上映した。

サテライト展示…図書館入口近くの展示ホール前で行うミニ展示のこと

被爆体験継承事業での企画展の様子 提供:広島市立中央図書館 

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108 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 109図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

奈良県立図書情報館では、「戦争体験文庫」として戦争体験を風化させることなく次世代に伝えていくために、1996年から戦争体験の資料を全国から寄贈によって収集している。これら資料は、先の戦争を直接体験した世代が現役をリタイア後、自費出版などによって自らの体験をまとめたものが多く、その子どもから遺品というかたちで提供されることが多くなっているという。当初、このアーカイブは奈良県福祉部福祉政策課が行っていたが、2001年から新館の建設が進んでいた同館での公開を目指し、業務が移された。現在、約56,000点の資料を所蔵しており、収集資料は満州事変からサンフランシスコ講和条約までの「体験」に関するもので、具体的には戦争に関わる体験および、当時の社会や生活の様子を記録した図書や雑誌、教科書などの教育関連資料の他、当時の日記、ハガキ、証明書などの実物資料を収集している。文庫所蔵資料点数の約9割にあたる図書については OPACで検索可能な他、NACSIS-CATにも登録しているので、CiNiiからの検索も可能となっている。残る 1割の非図書資料については、資料目録の整備、公開はしていないが、年 4回のテーマ展示によって紹介するようにしている。館内では「戦争体験文庫」という特設コーナーを設け、常設展示を行っている。戦争関係の刊行物を多く所蔵する類縁機関の場合、閉架制をとっていることが多いのに対して、同館の場合、専用の広い開架スペースを設け、状態が悪いものなどを除いて、直接手に取って資料を選べている。また原則的に簡単な図録を作成・配布する他、展示内容をウェブ公開することによってアーカイブの蓄積を図っている。

戦争体験文庫 奈良県立図書情報館(奈良県奈良市)

戦争体験文庫 詳細データ

●開始時期

2007年(文庫開設)

※準備開始は1996年から

●収集点数(2013年末現在)

約56,000点

●運用体制

1. 収集方法

戦友会などの団体に個別に資料寄贈を依頼

報道機関や広報媒体を積極的に使用し、広く個人への寄贈を呼び掛け

※現在は、積極的な資料提供の呼び掛けは行っていないが、資料の寄贈は続いている

●コレクションのポイント

府県レベルでは、福祉行政における平和祈念事業が平和博物館に結び付いた例は多いが、同館の

ように図書館と結びつくかたちで展開した例は少なく、同館の戦争体験文庫所蔵資料の希少性、

独自性につながっている。

●活用事例

日常的に資料を使ったテーマ展示を行い、それを図書館サイトで公開

放送や出版、研究などにおいて活用

奈良県立図書情報館 奈良県奈良市大安寺西 1-1000

http://www.library.pref.nara.jp/Tel:0742-34-2111 (代表) Fax:0742-34-2777 E-mail:[email protected]

戦争体験文庫 提供:奈良県立図書館情報館

Page 29: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

110 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 111図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

先の大戦で沖縄戦の上陸拠点となり激しい戦火にさらされた北ちゃ

谷たん

町は、1995

年の戦後 50年を記念して、10月 22日(町の一部が、占領から解放された日)を「北谷町民平和の日」と制定し、町の主要施策に平和文庫の設立をうたった。それを受けて、同館では館内に「平和文庫」コーナーを設置し、 平和への願いと「命

ぬち

どぅ宝」の精神を町民のモットーとして、戦争と平和に関する資料を積極的に収集している。収集点数は 3,036点。内容は戦争の記録と反戦・平和を扱った図書、戦争の記

録を収めた視聴覚資料、戦争を扱ったその他の資料(紙芝居、パンフレット)などで、図書館サイトからは平和文庫だけを検索できる OPACを公開している。

なお慰霊の日である 6月 23日と、北谷町平和推進旬間である 10月 22日から31日までの期間は、平和についての「絵本の読み聞かせ会」や「平和についての講話」を行っており、催しに合わせて平和文庫を活用した展示を行っている。

平和文庫北谷町立図書館(沖縄県北谷町)

平和文庫 詳細データ

●開始時期

1995年10月22日(平和文庫の設立が町の主要施策にうたわれる)

●収集点数(2013年12月現在)

3,036点

●館内、館外での提供方法

図書館入口近くに「平和文庫コーナー」として特設の書架を設置

●活用事例

「平和絵本の読み聞かせ会」や「平和についての講話」などの行事に合わせた資料展示

北谷町立図書館 沖縄県北谷町字桑江 467-1

http://www.chatan.jp/library/Tel:098-936-3542 Fax:098-936-4567

平和文庫 提供:北谷町立図書館 

Page 30: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

112 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 113図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神戸大学附属図書館は、阪神・淡路大震災に関する資料をアーカイブする「震災文庫」という取り組みを行っている。震災文庫は阪神・淡路大震災が発生した1995年の 5月から収集が開始され、10月 7日に公開。館内に資料を閲覧することができる専用の部屋を設置する他、専用のサイトを設けウェブでも検索可能にしている。また、資料の利活用を目的としたデジタルアーカイブにも力を入れており、震災記録写真や動画、震災当日の車内アナウンスの音声など約 5,000件のデジタル資料に、サイトなどからアクセスすることができる。「震災文庫」は災害復興や地震研究、防災研究に役立ててもらうことを目的としており、阪神・淡路大震災の発生から 20年を迎える現在でも、震災に関する幅広い情報の収集に努め、新聞記事での情報収集や震災関係機関へのアプローチなどを通して、資料の提供を受けている。震災に対する同館のこのような実績と経験は、東日本大震災が発生した際に、復興関係資料の無償提供や震災文庫のノウハウを提供するなど、情報援助として被災地へ届けられた。また同館では、阪神・淡路の資料を収集している兵庫県立図書館と阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターと連携し、3館が所蔵する震災資料の情報を一つのプラットフォームで調べることができる「震災資料横断検索システム」を構築し提供している。これは 14機関で横断検索を行っていた「震災ライブラリー・ネット」の後を継ぐプラットフォームである。

震災文庫神戸大学附属図書館(兵庫県神戸市)

震災文庫 詳細データ

●開始時期

1995年10月30日(一般公開開始)

●収集点数

51,518件(うちデジタル化資料5,053件)

※写真資料はアルバム1冊を1件とカウント。中の写真枚数は約24,000枚。

【参考情報】

神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ「震災文庫」(http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/doc/

EarthquakeDataList/Top.html)

●収集体制

図書館サイトに寄贈依頼を掲載

Twitter公式アカウントで呼び掛け(年数回)

震災文庫担当が図書・雑誌の出版情報、新聞記事、兵庫県と神戸市の記者発表、阪神・淡路大

震災関連のイベントなどを日々チェック。CiNii、ひなぎくなどのデータベース、学内生産物な

どはワーキンググループメンバーで分担してチェック。

●コレクションのポイント

阪神・淡路大震災に関連する印刷物資料を網羅的に収集。非流通資料から絵本・漫画、その他

刊行物までを対象。

東日本大震災関連の資料でも、阪神・淡路と比較されたものは収集。

復興支援のために始まった「神戸ルミナリエ」と「神戸マラソン」関連の資料も収集対象として

いる。

●活用事例(特集展示や講座の開催など)

電子化資料の二次利用(申請件数:2008年度…49件、2009年度…87件、2010年度…61件、

2011年度…29件、2012年度…23件)。

「被災地図書館との震災資料の収集・公開に係る情報交換会」開催(2012月2月)

「国立国会図書館東日本大震災アーカイブひなぎく」へのメタデータ提供(2013年3月~)など

【参考情報】

2004年、2009年の資料展示会

(http://lib.kobe-u.ac.jp/www/html/tenjikai/kakonotenji.html)

神戸大学附属図書館 震災文庫 兵庫県神戸市灘区六甲台町 2-1 神戸大学社会科学系図書館 管理棟 3階http://lib.kobe-u.ac.jp/ Tel:078-803-7342

震災文庫 撮影:岡本真 撮影日:2010年12月17日 ※同館は現在改装中であり、写真は移転、改装前のものである。

震災文庫での保管状態 撮影:岡本真 撮影日:2010年12月17日 

Page 31: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

114 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 115図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

広島大学図書館は被爆 60周年を記念して、広島大学平和科学研究センターが発足以来収集してきた図書を中心として、広島大学が所蔵する平和学関連資料を展示する「平和学コレクションコーナー」を館内に設置している。図書は原爆などの核兵器、軍縮、国際政治に関する資料群の他、イマニュエル・カント の『永久平和のために』やサン・ピエールの『永久平和論』の初版本など貴重な資料が含まれる。収集点数は約 10,000点。本コレクションのための専門予算があるわけではなく、購入資料の中から関連のある図書をピックアップし、現在もコレクションを増加させている。2005年 10月 18日には、「被ばく 60周年記念講演会:原爆報道・戦後体制と平和構築-広島大学図書館平和学コレクションの自著を語る-」(講師:モニカ・ブラウ、広渡清吾、松尾雅嗣)を開催している。また同館では、原爆、被爆に関連する資料のデータベースを 2004年 6月に公

開している。データベースには、原爆と被爆に関連する新聞切り抜き記事が約41,000点(中国新聞、毎日新聞、朝日新聞、読売新聞の 1967年から 1979年までの記事)、米国陸軍病理学研究所(AFIP)から返還された医学的写真資料が約 1,200

点、原爆・被ばく関連の図書資料の書誌事項が約 6,200点、原爆被爆物理試料データが約 1,200点、米国および旧ソ連核実験実施記録データが約 1,800点である。これらは広島大学原爆放射線医科学研究所が所蔵する資料を電子化したものである。このデータベースは、日本学術振興会の 2007年度、2008年度の科学研究費補

助金(研究成果公開促進費)の交付を受けて作成された。書誌事項以外の資料は電子化したものを全てデータベース化しているが、現在はシステム更新に伴って公開されていない。再公開は来年度の予定。また、新聞切り抜き記事の利用は制限されており、事前に利用登録をしたうえで、調査・研究目的に限り検索・閲覧が可能である。

平和学コレクション/原爆・被ばく関連資料データベース広島大学図書館(広島県東広島市)

広島大学図書館 広島県東広島市鏡山 1-2-2

http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/Tel:082-424-6214 E-mail:[email protected]

上下ともに「平和学コレクション」 撮影:熊﨑由衣 撮影:2014年1月27日

Page 32: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

116 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 117図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

1945年、7,000人以上の犠牲者を出した神戸空襲などの記録を残すため、神戸市立兵庫図書館では、戦災記念資料室を開設している。同資料室は、もともと 1981年に神戸市立中央図書館で開室されたが、1995年の阪神・淡路大震災で同館が半壊し閉鎖されため、神戸市立兵庫図書館に移転され、1997年に再開室された経緯をもつ。常時の展示資料は「神戸空襲を記録する会」から寄託された約 500点で、展示

替えは図書館ではなく、寄託者が行っており、図書資料の他にも鉄兜、焼夷弾の破片、焼けただれた一升瓶、罹災証明書、医療切符など、戦時中の暮らしを物語る遺品などの現物資料の他、写真パネルなども保存されている。なお毎年 8月、神戸市行財政局が中央図書館のロビーを利用して行う「戦災関連資料展」では、「神戸空襲を記録する会」が寄託資料の一部資料を借り受けて展示を行っている。

戦災記念資料室神戸市立兵庫図書館(兵庫県神戸市)

戦災記念資料室 詳細データ

●開始時期

1981年4月1日(中央図書館にて開室)※1995年1月17日阪神・淡路大震災により中央図書館

旧館半壊により閉鎖

1997年3月18日(兵庫図書館に移設開室)

●収集点数

1,029点(2013年12月現在)

●運用体制

開館中、常時開室(常設展示は約500点)

※資料は「神戸空襲を記録する会」から寄託されたもので、展示替えは寄託者が行っている。

神戸市立兵庫図書館 兵庫県神戸市兵庫区駅南通 5-1-1

http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/Tel:078-682-9501 Fax:078-682-9502

戦災記念資料室 提供:神戸市立中央図書館 

戦災記念資料室 提供:神戸市立中央図書館 

Page 33: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

118 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 119図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

土佐清水市立市民図書館では、地域の住人の暮らしを支援する情報として、「防災・災害情報コーナー」を館内に常設し、防災関連の資料をまとめて閲覧できるようにしている。内容は、災害の記録や災害マニュアル本、防災関係の資料、行政の発行する防災計画やリーフレットといった図書資料の他、DVDなどの視聴覚資料も提供している。図書館サイトでは資料リストを公開するとともに、自治体サイトなどの防災情報サイトのリンク集を紹介している。駿河湾から土佐湾までの南海トラフのプレート境界は、歴史的に見て 100年前後の周期でマグニチュード 8以上の巨大地震を引き起こしているため、高知県内では今後予想される大地震や津波の発生を想定し、自治体のサイトでも防災情報を発信している。大地震が多発する活動期に入ったともいわれ、ある意味、全国どこでも災害による被害が予想される日本列島において、地域の図書館が災害から生活を守るための情報を常に発信していくことは、今後、ますます重要になっていくだろう。

防災・災害情報コーナー土佐清水市立市民図書館 (高知県土佐清水市)

防災・災害情報コーナー 詳細情報データ

●開始時期

2006年頃

●収集点数(2014年1月現在時点)

図書・視聴覚資料…約170冊

●運用体制

1.収集方法

市役所の防災担当課などの関係機関が資料を発行した際に、提供を依頼

2.館内、館外での提供方法

館内に特設の書架を設置

図書館サイトで公開

【参考情報】

土佐清水市立市民図書館 ウェブサービス

(http://opac.city.tosashimizu.kochi.jp/opac/wopc/pc/pages/ThemeSearch.jsp?srv=)

※「テーマ別検索」の「防災情報」URLから、専用コーナーの所蔵状況を確認できる。

●コレクションのポイント

1.収集内容の特色

流通している図書に加え、地域資料や関係機関が発行したリーフレット類も収集

2.収集にあたって心掛けていること

幅広い年代の市民に役立つよう網羅的に収集すること

個人だけでなく、事業者の危機管理意識の向上に役立つ図書を収集すること

書誌のように高価で個人では購入できない二次資料(予算の範囲内で)を収集すること

●活用事例

毎年9月の「防災月間」で特集展示を実施

土佐清水市立市民図書館 高知県土佐清水市幸町 4-19

http://www.tosashimizu-public-library.jp/Tel:0880-82-4151 Fax:0880-82-4160 E-mail:[email protected]

防災・災害情報コーナー 提供:土佐清水市立市民図書館 

Page 34: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

120 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 121図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

鳥取県立図書館では鳥取大震災から 70年の節目にあたる 2013年に、資料展示「知ろう!備えよう!~図書館で防災力を身につける~」を行った。日程は 2013

年 9月 1日から 9月 29日までで、鳥取大震災の日(9月 10日)の他、防災の日(9

月 1日 )や防災週間(8月 30日~ 9月 5日)など住民の防災意識が高まる時期に合わせて開催している。展示は「過去の教訓に学ぶ」「いざという時に備える」という 2つのテーマで、鳥取県の過去の災害や他府県の地震を中心とした歴史資料を紹介する他、住民生活で実際に役立つハザードマップやリーフレットなど実用的な資料も展示し、過去を振り返るだけではなく、これからにつなげることを意識した展示となっている。展示点数は 193点(うち、郷土資料は新聞のスクラップやハザードマップを含め 53点)である。なお期間中は、他機関との交流企画展や講演会、座談会と連携することで展示内容の充実、PR効果の向上を図っている。また同館では、2階の郷土資料室内に小中学生にも使いやすい基本的な郷土資

料を集めた「ふるさと情報コーナー」を新設し、そこにも災害をテーマとした棚を設け、県民に提供している。

資料展示「知ろう!備えよう!~図書館で防災力を身につける~」鳥取県立図書館(鳥取県鳥取市) 

鳥取県立図書館 鳥取県鳥取市尚徳町 101

http://www.library.pref.tottori.jp/Tel:0857-26-8155 Fax:0857-22-2996 E-mail:[email protected]

関連企画

1. 講演会・座談会「鳥取大震災から70年 震災の記憶を語り継ぐ」

(「震災の記憶を語り継ぐ」シリーズ)

日時 2013年9月7日 午後1時30分~3時30分

会場 鳥取県立図書館2階 大研修室

講師 浅井秀子 氏(鳥取大学工学研究科准教授)         

主催 鳥取県立図書館

参加者数 80名

内容 前半は基調講演「震災体験の聞き取りから」(浅井准教授)、後半は体験者への聞き取り

(体験者:7名、聞き手:浅井准教授)

※「震災の記憶を語り継ぐ」シリーズは現在3回目。記録はCD化し、録音資料として提供。3回

目の内容も準備でき次第、提供予定。

2. 特別展示「鳥取県地震防災展」

期間 2013年9月1日~9月29日

会場 鳥取県立図書館2階 特別資料展示室

主催 鳥取県危機管理局

展示内容 鳥取大学工学研究科制作の研究結果パネル10点。鳥取県制作の1943年鳥取地震

のパネル8点。被害状況写真5点。

3. 特別展示「兵庫県!!震災・防災・減災 ~阪神淡路大震災からの教訓~」

期間 2013年9月1日から10月9日まで

会場 鳥取県立図書館 1階 閲覧室奥

主催 鳥取県立図書館、兵庫県立図書館

展示内容 阪神・淡路大震災被災地の記録写真(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター

所蔵)。当館所蔵の阪神・淡路大震災関係資料。兵庫県内各地の観光ポスターおよび観光パン

フレットなど。

特別展示「兵庫県!!震災・防災・減災 ~阪神淡路大震災からの教訓~」 提供:鳥取県立図書館 

図書展示「知ろう!備えよう!~図書館で防災力を身につける~」 提供:鳥取県立図書館 

Page 35: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

122 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 123図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

長崎市立図書館では、先の大戦で原爆によって被爆した地域に建つ図書館の使命として、原爆の記憶を後世に伝えるため、原爆に関わるさまざまな資料を収集し、館内に「原爆資料コーナー」を設置している。これは 2008年 1月 5日の開館当初から設置しているコーナーで、資料は書店や古書店での購入や寄贈によって集められ、収集点数は 2,758点(2012年度末時点)である。この資料群だけのブックリストはないが、図書館の資料検索と同様にOPACから検索が可能である。同館はこの取り組みについて特別な告知はしてないが、図書館サイトの施設の紹介ページで、原爆資料コーナーを知らせている。また、同じ市内にある長崎原爆資料館と連携し、原爆資料の活用と保存を行っている。その他、館内には原爆投下時にこの地に建っていた新興善小学校に設けられた救護所を再現した「救護所メモリアル」も常設している。

原爆資料コーナー長崎市立図書館 (長崎県長崎市)

原爆資料コーナー 詳細データ

●開始時期

2008年1月2日(開館時から)

●収集点数

2,758点(2012度末現在)

●運用体制

1.収集方法

書店・古書店からの購入と寄贈

2.館内、館外での提供方法

館内に特設コーナーを設置

図書館サイトで資料検索可能

長崎市立図書館 長崎県長崎市興善町 1-1

http://lib.city.nagasaki.nagasaki.jp/Tel:095-829-4946 Fax:095-829-4948 E-mail:[email protected]

原爆資料コーナー 提供:長崎市立図書館 

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124 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 125図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

群馬県千代田町にある同館では、2012年と 2013年に企画展「災害史に学ぶ」を実施した。これは 2011年に発生した東日本大震災を受けて、東日本大震災を対岸の火事にすることなく、災害を身近に感じ、防災に役立てもらうため防災の日に合わせて開催された。このうち 2013年の実施では、防災や災害、地震、台風、水害などへの対応に関するさまざまな資料を紹介する他、群馬県下で起きた災害・防災関係のパンフレット、千代田町洪水ハザードマップの配布を行っている。また、展示で紹介した計 40点余りの資料は、図書館サイトでブックリストを公開している。群馬県は県境にある浅間山が噴火を繰り返してきた歴史がある。また、町内を流れる利根川は何度か洪水を繰り返し、犠牲者を出してきた。同館の展示は災害の歴史を振り返り、災害を身近に感じることで、災害が多発する地域において、防災に役立てる情報を積極的に発信するための取り組みといえる。なお、これら展示で紹介された災害関連資料の収集は、日ごろの図書館活動における地域資料収集の一環として行われ、地域に関連した記述のある資料については、常に関係各位に呼び掛けを行い、収集している。

企画展「災害史に学ぶ」千代田町立山屋記念図書館(群馬県千代田町)

企画展「災害史に学ぶ」 詳細データ

●展示時期

第1回 2012年9月1日~23日

第2回 2013年9月1日~29日

●展示点数

40点

●収集にあたって心掛けていること

地元に則した内容の記述があれば、なるべく収集する

地域の歴史愛好家の方の意見を参考にしている

●活用事例

特集展示の他、学童の自由学習や生涯学習などで活用 

千代田町立山屋記念図書館 群馬県千代田町大字赤岩 1895-1

http://www.town.chiyoda.gunma.jp/tosyokan/Tel:0276-86-2885 E-mail:[email protected]

企画展「災害史に学ぶ」 提供:千代田町立山屋記念図書館 

企画展「災害史に学ぶ」 提供:千代田町立山屋記念図書館 

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126 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 127図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館は県立図書館として、山口県に関する資料を積極的に収集しており 、その一環として、地域の災害に関する資料も収集しているが、このような日常的な業務を生かし、大きな災害が起こった際や、他機関での災害に関する行事にちなんで、災害に関する地域資料などの展示やパスファインダーの作成などを行い、所蔵資料の利活用を図っている。

2007年4月のソロモン諸島沖地震に関する展示の際には、「災害から身を守るために」という情報源リストを作成し、ウェブサイトで公開している(現在は更新なし)。この情報源リストは、 図書館が所蔵する震災関連資料や自治体・企業などが提供する震災情報ウェブサイトの URLを紹介するもので、「発災から被災後まで」という時間軸に沿ったテーマで編集されている。また 2013年 5月には、資料展示「山口県 昭和・平成の災害記録」(山口県文

書館 第 8回中国・四国地区アーカイブズウィーク「山口県災害記」関連展示)にちなんで「山口県の災害について調べる」というパスファインダーを作成、公開している。内容は山口県内の災害に関する資料が中心となり、より最新の情報と資料に基づいている。こちらはウェブ版(HTML、PDF)の他、紙版(館内で配布)がある。

情報源リスト「災害から身を守るために」山口県立山口図書館(山口県山口市)

山口県立山口図書館 山口県山口市後河原 150-1

http://www.library.pref.yamaguchi.lg.jp/Tel:083-924-2111(代表) Fax:083-932-2817 E-mail:[email protected]

関連情報災害から身を守るために(http://library.pref.yamaguchi.lg.jp/hp/usr/pass/disaster.htm)山口県の災害について調べる(http://www.library.pref.yamaguchi.lg.jp/ymg_disaster)資料展示「山口県 昭和・平成の災害記録」(http://library.pref.yamaguchi.lg.jp/shiryotenji/201306)山口県文書館 第8回中国・四国地区アーカイブズウィーク 山口県災害記 ̶過去の記録に学ぶ (̶http://ymonjo.ysn21.jp/index/page/id/357)

2003年 7月 26日、宮城県北部(旧・鳴瀬町〈現・東松島市〉、旧・矢本町〈現・東松島市〉、旧・河南町〈現・石巻市〉周辺)を震源に、最大震度 6弱を超える地震が 1日の内に 3回発生した。同館ではこの宮城県北部連続地震の発生直後、震災関連の新聞記事のスクラッピングや、出版物の収集を行う他、館内の被害状況と復旧の様子、矢本町(現・東松島市)の崖崩れ、道路の陥没の様子などを図書館サイトから発信した。これらの写真は現在も公開されている。また、この震災を契機に危機管理コーナーを図書館に設ける他、全国から届いた応援メッセージの保存も行っている。こうした活動は、東日本大震災の発生時において、資料のアーカイブのみならず、被災者にインタビューして体験談を収集するなど、同館の震災への取り組みを発展させていく土壌となっている。

宮城北部連続地震についてのアーカイブ東松島市図書館(宮城県東松島市)

東松島市図書館 宮城県東松島市矢本字大溜 1-1

http://www.lib-city-hm.jp/Tel:0225-82-1120 Fax:0225-82-1121

参考情報宮城北部地震の記録http://www.lib-city-hm.jp/lib/2003.7zisin/zisin2003.html

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128 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 129図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では地域資料を収集する一環として、長崎大水害に関連する資料を収集している。長崎大水害は、1982年 7月 23日から翌日 24日未明、長崎市を中心に発生し

た集中豪雨で、この災害による死者・行方不明者は長崎市内を中心に長崎県内で299名、被害総額は約 3,000億円といわれる。日本の水害史においても未曾有の雨量は、現在、気象庁で発表している「記録的短時間大雨情報」が発表されるきっかけとなった。長崎市では、毎年、7月 23日に前後して、 この未曾有の大水害を振り返るために市役所や支所、行政コーナーにおいてこの水害を記録した写真展示を行っているが、 2013年に初めて、長崎市立図書館のロビーで展示を行った(開催期間は2013年 7月 18日から 22日まで)。行政が市民への周知活動として、 人が集まる場所である図書館を有効に活用した例といえる。

長崎大水害の展示長崎市立図書館(長崎県長崎市)

長崎市立図書館 長崎県長崎市興善町 1-1

http://lib.city.nagasaki.nagasaki.jp/Tel:095-829-4946 Fax:095-829-4948 E-mail:[email protected]

長崎大水害写真展 提供:長崎市立図書館 

同館の大阪資料・古典籍室では、大阪に関する資料や江戸期から明治初期を中心とした近世の古典籍資料を収集しているが、東日本大震災を受けて、2011年 5

月、所蔵する資料の中から災害に関するものをピックアップし、津波や地震などの自然災害に対する備えを見つめ直すためのテーマ展示を行った。「今、震災を考え防災を見つめ直す」と題されたこの展示では、同館の閲覧室を会場として、全国の防災マニュアルや帰宅支援マップ、企業の防災対策、災害資料関係、活断層関係資料、大阪府内の自治体の防災計画、防災マップ、ハザートマップなど豊富な資料が紹介された。また展示で紹介した資料はブックリストを作成し、ウェブで公開している。このリストがあることで、大阪府内の自治体が公表している資料を、展示が終わった後も一覧することができる。東日本大震災発災から 3年が経過する 2014年、中央図書館でも「歴史地震に学ぶ『震災と復興』展」を兵庫県立図書館や福島県立図書館の協力を得て開催している。こちらは、大阪府立中央図書館と中之島図書館が収集している大阪付近の歴史的災害の資料の他、現在の災害を振り返り、防災意識を高める資料を展示した。

展示「今、震災を考え防災を見つめ直す」大阪府立中之島図書館(大阪府大阪市)

大阪府立中之島図書館 大阪府大阪市北区中之島 1-2-10

http://www.library.pref.osaka.jp/site/nakato/Tel:06-6203-0474(代表)

参考情報今、震災を考え防災を見つめ直すhttp://www.library.pref.osaka.jp/nakato/osaka/booklist/005_bousai.html

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130 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 131図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災を受けて同館では、 2013年 10月 26日から 12月 8日まで、図書館資料展「豊橋の災害誌~過去の災害と防災~」を開催した。この資料展は豊橋の過去の災害の歴史を振り返るもので、主として自然災害に関する災害の歴史をパネルにして紹介した他、図書や写真などの資料、市が発行している津波洪水マップや災害ハザードマップなど約 100冊を展示した。展示会開催中には、関連企画として市の防災危機管理課の職員を招き、過去の災害や災害時の避難方法、注意点を学び、自宅の地質、標高、避難場所などの状況を調べ、避難地図をつくるワークショップ「親子で避難計画をつくろう」も行っている。豊橋市では 1999年の巨大竜巻、1945年の三河地震、1953年の台風 13

号など、過去にいくつかの大きな災害を経験しており、こうした地域の震災の歴史を振り返る同館の展示は、今後の防災の備えを喚起し、その意義を提起するものだ。なお、同館では東日本大震災で避難を余儀なくされ、住所や氏名の確認証を持たない被災者に向けて、本人からの申し出を受ければ貸出券を発行するサービスを行っている。

資料展「豊橋の災害誌~過去の災害と防災~」豊橋市中央図書館 (愛知県豊橋市)

豊橋市中央図書館 愛知県豊橋市羽根井町 48

http://www.library.toyohashi.aichi.jp/Tel:0532-31-3131 Fax:0532-31-4254 E-mail:[email protected]

「豊橋の災害誌」展示会場 提供:豊橋市中央図書館

「豊橋の災害誌」関連ワークショップ 提供:豊橋市中央図書館

参考情報豊橋の災害誌~過去の災害と防災~(http://www.library.toyohashi.aichi.jp/oshirase/sonota/H25saigaishi/H25saigaishi.htm)ワークショップ「親子で避難計画をつくろう」(http://www.library.toyohashi.aichi.jp/oshirase/sonota/H25saigaishi/H25saigaishigyoji.htm)

Page 40: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

132 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 133図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

2003年 7月 18日から 19日にかけて、九州北部を襲った記録的な集中豪雨は「7・19集中豪雨」と呼ばれ、福岡県飯塚市も甚大な被害をうけた。飯塚図書館も、約 85,000冊(CD・ビデオ含む)の蔵書が水に浸り、半年以上の休館を余儀なくされている。同館では2013年6月26日から7月31日、発災から10年が経ったことを機に「あれから 10年」というテーマで展示を行っている。展示内容は、大判写真と飯塚大水害を記録した写真ファイル 2冊、飯塚大水害の関連資料、新聞記事クリッピング(毎日新聞、西日本新聞、朝日新聞、読売新聞)、イイヅカコミュニティセンター所蔵の写真集が 5冊の他、災害関連書籍が紹介された。こうした展示物の中には、図書館が作成した資料もある。展示は、災害当時の資料を紹介することで、市民が被災状況を知り、防災への備えや河川に対する意識の向上をはかるために行われた。なおこの展示は、同年 7月 7日に飯塚市の主催で行われた「7・19大水害10周年兼第 5回飯塚防災フェア」に開催が合わせられた。

展示「あれから10年」飯塚市立飯塚図書館(福岡県飯塚市)

展示「あれから10年」 詳細データ

●展示期間

2013年6月26日~7月31日

●展示点数

大判写真…9枚 

飯塚大水害(2003年7月19日)の記録…写真ファイル2冊

飯塚大水害(2003年7月19日)の関連記事…新聞記事(毎日・西日本・朝日・読売)

イイヅカコミュニティセンター(中央公民館)所蔵…写真集5冊           

飯塚大水害関係だけでなくその他の災害関連書籍

●展示のポイント

7.19大水害から10周年を迎え、水害当時の資料などを展示し、市民が被災状況を知ることで

災害への備えを忘れることのないよう、防災への普及啓発や河川に対する意識向上を図るため

に行った。展示にあたり写真などを多用し、防災について分かりやすく視覚で訴え認識しても

らうことを心掛けた。

飯塚市立飯塚図書館 福岡県飯塚市飯塚 14-67(イイヅカコミュニティセンター1階)http://www.iizuka-library.jp/Tel:0948-22-5552 Fax:0948-22-5770 E-mail:[email protected]

展示「あれから10年」 撮影:岡本真 撮影日:2013年7月27日

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134 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 135図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

大分県立先哲史料館は、県立図書館と県立公文書館とともに、複合施設「豊の国情報ライブラリー」の中に入る史料館である。大分県立図書館と合同企画を行っているため、今回の特集に入れる。同館は大分県に関連する史料を広く収集しているが、東日本大震災を受けて、

所蔵資料の中から「大分県で起きた自然災害」に関する史料をピックアップして展示を行っている。「豊の国情報ライブラリー」で行われた「大分のアーカイブズ―資料にみる大分の災害―」(2012年 2月 3日から 3月 20日まで)は、同館と県立図書館、公文書館の 3館による合同企画で、 3館が入る複合施設、大分の過去の災害記録を紹介する展示である。また先哲史料館は、他機関への史料提供も行っており、大分県埋蔵文化財セ

ンターと共催で行った大分空港のロビー展示「豊の国を襲った地震・津波」では、近世以降に大分県内を襲った地震(津波)に関する史料を展示した(展示史料はレプリカ)。なお同内容の展示は、大分県社会教育総合センターでも実施している(2013年 3月 1日~ 3月 31日)。このような展示は、日常的に行う情報収集から必要な情報をキュレーションし、ことあるごとに利用者に発信する取り組みとして重要だろう。災害資料をことさらに集めていなくても、通常業務として収集している地域資料の中にある災害資料を、防災意識の醸成に役立てればよいのである。なお同館は 2013年度中に、大分県内の地震・津波に関する過去の記録をまとめたガイドブックを刊行する予定である。

コレクションを活用した資料展示大分県立先哲史料館(大分県大分市)

大分県立先哲資料館の資料展示 詳細データ

●コレクションの活用事例

「豊の国を襲った地震・津波」展

会期 2012年12月1日~ 2013年1月31日

展示点数 5点(柴山勘兵衛記・イエズス会士日本通信・豊城世譜・宝永四亥年高潮之記録〈浦

白浦成松庄屋文書〉・嘉永七甲寅年十一月(色利浦文書〈塩月家文書〉)

三館合同展「大分のアーカイブズ」

会期 2012年2月3日~ 3月20日

展示規模 平常展展示コーナー

開催日数 40日間

入館者数 4,713人(1日平均118人 )

史料保存セミナー

日時 2011年8月5日 10:30~ 16:00

場所 大分県立図書館 視聴覚ホール

テーマ 「災害と史料保存を考える」

登壇者  平井義人(県立先哲史料館長)、芦刈政治(豊後大野市)、久米忠臣(杵築市・郷土史家)、

橋本竜輝(天草市立天草アーカイブズ主事)

聴講者数 81人

内容 大分県歴史資料保存活用連絡協議会(会員、市町村の文化財保護担当課および文書管理

担当課・県公文書館・別府大学アーカイブズ講座・県立先哲史料館)および県内の記録史料所

蔵機関・県民を対象に、古文書や公文書の保存・管理についてのセミナーを実施した。

大分県立先哲史料館 大分県大分市王子西町 14-1

http://kyouiku.oita-ed.jp/sentetusiryokan-b/Tel:097-546-9380 Fax:097-546-9389 E-mail:[email protected]

ロビー展示「豊の国を襲った地震・津波」 提供:大分県立先哲史料館

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136 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 137図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神埼市立図書館は 2012年、地域に語り継がれるべき事故として、アンドレ・ジャピーの遭難事故 に関する展示を行った。この事故は 1936年、福岡県福岡市早良区と佐賀県神埼市との境に位置する脊

振ふり

山の中腹に、フランス人の冒険飛行家、アンドレ・ジャピーが運転する小型飛行機が墜落した飛行機事故である。この事故でジャビーは重傷を負ったが、村民らの手厚い介抱で一命をとりとめ、これをきっかけに日仏の交流が生まれている。展示資料は事故機の破片や当時の写真などで、同じ神埼市内にある公共施設脊振ふれあい会館から借り受けたもの。同館では展示が終わった現在も、この事故を POPで紹介している。また関連する資料も所蔵している。その地域で起きた事件や事故を語り継いでいくこと。それは、地域の安全を考えることにつながると同時に、かつてその地域に住んでいた人々に思いをはせ、地域への愛着を深めることにつながるだろう。なお神埼市立図書館は、『次郎物語』の作家・下村湖人を始めとする郷土作家の

作品リストなども図書館サイトで公開しており、地域の情報発信に積極的である。

アンドレ・ジャピー遭難事故の展示神埼市立図書館(佐賀県神埼市)

神埼市立図書館 佐賀県神埼市神埼町鶴 3388-5

http://library.kanzaki.ed.jp/Tel:0952-53-2325 E-mail:[email protected]

展示の様子 提供:神埼市立図書館 

事故機の破片などが展示されいてる脊振ふれあい館 提供:神埼市立図書館 

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138 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 139図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神奈川県立川崎図書館では川崎公害裁判の資料を保存し、館内に専用のコーナーを設置して、一部資料を開架に出している。これは裁判の和解から 2年後の2001年 5月 18日に、 「歴史を風化させたくない」「地元の市民や研究者に役立ててもらえるように、地元で記録を公開してもらいたい」という川崎公害裁判の原告団と弁護団の希望で寄贈された裁判資料だ。内容は 1982年 3月の第 1次提訴から 1999年 5月に和解が成立するまで、17

年にもおよんだ川崎公害裁判の訴訟記録で、原告・被告の証言、主張、関連資料など、約 500冊が複製、製本され、公害裁判の全容を知ることができる極めて価値の高い記録資料である。

川崎公害裁判訴訟記録神奈川県立川崎図書館(神奈川県川崎市)

川崎公害裁判訴訟記録 詳細データ

●開始時期

2001年5月18日(川崎公害訴訟原告団・弁護団から寄贈の受入)

●収集点数

約500冊前後

●運用体制

1階閲覧室の公開書架に一部を配架し、その他は書庫内配架(館内閲覧のみ、貸出不可)

OPACで書誌情報の検索可。

図書館サイトの「利用案内」にコレクション概略を紹介。

●コレクションのポイント

一般にはアクセスしにくい裁判記録だが、製本され、手に取りやすい形で並べている。

証拠編に含まれる文献資料などの内容細目一覧を図書館で作成、閲覧に便利を図っている。

個人情報も含み扱いに注意を要する資料だが、川崎公害訴訟原告団・弁護団の「この記録を市

内で公開したい」という強い思いを受けて実現しているコレクションである。

神奈川県立川崎図書館 神奈川県川崎市川崎区富士見 2-1-4

http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/Tel:044-233-4537(代表) Fax:044-210-1146

川崎公害裁判訴訟記録資料 提供:神奈川県立川崎図書館

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140 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 141図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

鹿嶋市立中央図書館では、館内に「防災・地震に関する図書~いざというときのために~」という棚を設けて、防災関係の資料を 2008年ころから常設し、市民の防災意識を醸成する取り組みをしている。配架数は 48冊である。なお同市にある鹿島港は、先の東日本大震災でも被害が出ており、震災の時には震災関連資料を集めてコーナーをつくっていたが、現在は、震災前から行っていた防災の棚を継続している。特別な予算はついていないが、日常的な選書で購入した図書から職員が必要なものを選んで、棚をつくっている。

常設棚「防災・地震に関する図書~いざというときのために~」鹿嶋市立中央図書館(茨城県鹿嶋市)

鹿嶋市立中央図書館 茨城県鹿嶋市宮中 2398-1

http://opac.city.kashima.ibaraki.jp/Tel:0299-83-2510 Fax:0299-83-2529 E-mail:[email protected]

防災・地震に関する図書コーナー 提供:鹿嶋市立中央図書館 

千葉県立中央図書館では、2013年 7月にパスファインダー(調べ方案内)を作成し、千葉県で起きた過去の災害の歴史について同館が収蔵する図書や雑誌・新聞を案内している他、千葉県庁が発信している防災情報も紹介している。パスファインダーは館内で配布している他、図書館サイトでも公開している。

パスファインダーはブックリストのような文献リストとは違い、利用者が探しているテーマに関連する資料の調べ方を一覧する目的でつくられるものである。パスファインダーは新しい情報が集まるごとに更新され、大きくても A3サイズのリーフレット(1枚もののチラシ)の体裁をとることが多く、利用者は自由にリーフレットを持ち帰ることができる。

2000年代の始めごろから、図書館の役割が貸出のみならず、課題解決を支援することも視野に入れ始めたときに、その課題を解決する一つの方法としてパスファインダーが注目され、さまざまな図書館が実践し、今にいたる試みとなった。なお千葉県立図書館は、東日本大震災の被災地に建つこともあり、被災直後から震災関連の展示を積極的に行っている。大震災から 3年を迎えた 2014年 2月には、東部図書館(千葉県旭市)が「語り継ぐ震災の記憶と記録―いのちを守るまちづくり―」というテーマの講演会も開催している。

防災情報のパスファインダー千葉県立中央図書館(千葉県千葉市)

千葉県立中央図書館 千葉県千葉市中央区市場町 11-1

http://www.library.pref.chiba.lg.jp/Tel:043-222-0116 Fax:043-225-8355

パスファインダー 提供:千葉県立中央図書館 

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142 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 143図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

2010年に発生し、宮崎県内の畜産農家や関係団体、県民に甚大な被害と大きな不安を与えた口蹄疫は、終息から 4年がたったいまなお、その悲劇の記憶は色濃い。口蹄疫が発生した際、休館を余儀なくされた宮崎県立図書館では、現在も口蹄疫について調べるパスファインダーを用意し、口蹄疫の正しい知識と予防、復興対策への理解を深める取り組みをしている。口蹄疫発生時、同館では「口蹄疫に関する最新情報」と題して、速報的な情報

発信を行い、その情報をのちにパスファインダーにまとめている。パスファインダーは、口蹄疫に関する文献・資料だけでなく、防疫や復興などの記録を網羅的に収集・整理し、宮崎県の重要な事実の記録として後世に伝え、県民や関係機関に活用してもらうことで、今後の復興や再発の防止などに役立てるものである。パスファインダーの項目には「新聞記事を調べる」「雑誌記事を調べる」「図書館を調べる」などの 11項目があり、口蹄疫の概要や対策、被害の状況を振り返ることができる。情報提供だけではなく、口蹄疫に関する資料も収集しており、現在、図書、雑誌、ビデオで約 160点を所蔵している。内容は、畜産・防疫関連の専門書・マニュアルの他、地元紙の関係記事の切り抜きをまとめたもの、報道機関が作成した防疫の記録、口蹄疫体験の作文コンクールでの作品集や絵本など、幅広いものとなっている。また、口蹄疫に関する知識だけではなく、食や畜産について、子どもも理解を

深めるような工夫を施した展示「口蹄疫からの復興企画展 心を一つに防ごう口蹄疫 2012」(2012年 6月 12日~ 24日開催)などを 2011年以降、毎年行っている。

口蹄疫に関する情報提供宮崎県立図書館(宮崎県宮崎市) 

宮崎県立図書館 宮崎県宮崎市船塚 3-210-1

http://www.lib.pref.miyazaki.jp/Tel:0985-29-2911(代表 ) E-mail:[email protected]

口蹄疫に関する情報提供 詳細データ

●開始時期

2011年1月(資料収集の開始)

2011年4月(情報提供の開始)

●運用体制

1. 収集方法

県庁各課・市町村の関係部局や報道機関などに広く資料情報の提供を呼び掛け

2. 館内、館外での提供方法

常設コーナーは設けていないが、2011年以降、毎年企画展示を開催し、関連資料を展示

●コレクションのポイント

口蹄疫に関する資料は、図書、雑誌、ビデオで約160点を所蔵しており、畜産・防疫関連の専門書・

マニュアルだけでなく、地元紙の関係記事の切り抜きをまとめたもの、報道機関が作成した防疫

の記録、口蹄疫体験の作文コンクール作品集や絵本など、幅広い。

● 活用事例

資料の貸出

企画展示・関連講座などを他機関と連携して開催(文献・パネルなどの展示、防護服の展示・着

用体験、スライドショー、DVD放映、 朗読、消毒体験の講座などを複数回開催)

関連情報のパスファインダー作成・提供

「口蹄疫からの復興企画展~心を一つに防ごう口蹄疫 2012~」展示風景 提供:宮崎県立図書館 

Page 46: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号・特集「図書館で学ぶ防災・災害」

144 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 145図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

長岡市立地域図書館 7館の指定管理者である株式会社図書館流通センターは「語り継ぐもの・中越地震データベース構築事業 実行委員会」を立ち上げ、中越地震による被災者の体験などをデータベース化している。このデータベースは「語り継ぐもの」と名付けられ、被災体験者の体験談や写真など、被災者の生の声を収集している。この取り組みは、公益財団法人図書館振興財団から約 700万円の助成を受けており、データベース化にあたっては「語り継ぐもの・中越地震データベース構築事業実行委員会」を結成、2012年 4月に公開された。助成金は 2010

年の 6月から 2012年 3月までだが、その後は実行委員会でデータベースの運用を継続し、図書館内でチラシを配布するなどして PRを行う他、2013年 9月には、新聞などのメディアに向けてニュースリリースも行っている。データベースは全資料がデジタル化されており、体験談集などの関連資料も許諾が取れたものはデジタル化して公開している。一方、図書館流通センターの指定管理から外れる長岡市立中央図書館では、中越地震などの「災害アーカイブス」を公開している。これは、7・13水害や中越大震災、中越沖地震の被害・救援・復旧・復興関連する記録の他、 東日本大震災による被災者を受け入れている市内の避難所で収集した資料をアーカイブしている。

「語り継ぐもの」中越地震データベース長岡市立図書館(新潟県長岡市)

「語り継ぐもの」中越地震データベース

●開始時期

2012年4月(データベースの公開開始)

●収集点数(2013年7月現在)

公募原稿、写真…139件

取材記事…33件

個別体験談…287件

体験談集(PDF)…12冊

●運用体制

1. 収集体制

体験談の収集は公募や取材による

公募では市内図書館やコミュニティセンターに募集要綱、ポスター、チラシの配布の他、図書

館サイトに募集要項を掲載。

市政だよりへ募集チラシの折り込み、全戸配布

新潟日報社OB記者を同行して取材

※既刊の体験談集については、発行者を訪問し、許諾を得ている。

2. 館内、館外での提供方法

図書館サイト上のデータベースで公開

※「語り継ぐもの・中越地震データベース構築事業」実行委員会でデータベースの運用を継続

し、図書館内でチラシを配布するなどしてPRを行っている。2013年9月には、新聞などのメ

ディアに向けてニュースリリースも行っている。

長岡市立図書館 (語り継ぐもの・中越地震データベース構築事業実行委員会)新潟県長岡市坂之上町 3-1-20 長岡市立互尊文庫内http://kataritsugumono.jp/Tel:0258-35-7981 Fax:0258-35-7982

参考情報「語り継ぐもの」中越地震データベースhttp://kataritsugumono.jp/