ライブラリー・リソース・ガイド(lrg) 第6号/2014年 冬号

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LRG Library Resource Guide

ライブラリー・リソース・ガイド 第6号/2014年 冬号発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社

特別寄稿 熊谷慎一郎

東日本大震災と図書館

特集 嶋田綾子

図書館で学ぶ防災・災害

司書名鑑 No.2

谷合佳代子公益財団法人大阪社会運動協会 ・大阪産業労働資料館 「エル・ライブラリー」

─図書館を支援するかたち

Page 3: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

2 巻 頭 言     ラ イ ブ ラ リ ー ・ リ ソ ー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 4 年 冬 号 3巻 頭 言     ラ イ ブ ラ リ ー ・ リ ソ ー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 4 年 冬 号

『ライブラリー・リソース・ガイド』第 6 号を刊行いたします。

今 6 号は、東日本大震災発災から 3 年という節目に刊行時期が重なります。そ

こで、いま一度、東日本大震災を振り返り、また、東北だけではなく、全国どこで

も災害に遭う可能性がある日本において、図書館が果たす役割を概観したいと思

います。

さて、今 6 号では

●特別寄稿「東日本大震災と図書館-図書館を支援するかたち」 熊谷慎一郎

●特集「図書館で学ぶ防災・災害」 嶋田綾子

●司書名鑑 No.2 谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働

 資料館「エル・ライブラリー」)

の 3 本立てでお送りします。

2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は、各地に甚大な被害をもたらし

ました。図書館も例外ではありません。津波や揺れで全壊した図書館、避難所に

なった図書館などがあります。震源地から遠く離れた関東でも被害は大きく、国

立国会図書館東京本館でも、約 120 万冊の本が落下するなどの被害がありました。

特別寄稿「東日本大震災と図書館-図書館を支援するかたち」では、 深刻な被

害を受けた宮城県内の市町村図書館の復興支援に、同じ被災地に建つ図書館であ

りながらも奔走する宮城県図書館の様子を、同図書館員の熊谷慎一郎さんにご寄

稿いただきました。寄稿には震災当初の宮城県内の様子、復興に向かって図書館

が歩んできた道、そして未来を見据えて支援していく様子がまざまざと描き出さ

れています。被災者であり、支援者として現実と向き合うことで、熊谷さんが感

じ考えられた図書館のあり方を、本寄稿を機に考えていけたら幸いです。

特集「図書館で学ぶ防災・災害」では、東日本大震災を含めて、全国各地の図書

館が取り組んでいる災害アーカイブについて取り上げます。災害といっても、自

然災害だけではなく、事故や事件、公害、戦争などの有事を含みます。災害アーカ

イブは、安全が脅かされる事態になったときどのようなことが起こり、どのよう

に対処したかを記録する資料群です。

これらの資料群は、図書館の特別コレクションとして意識的に収集されること

もありますが、日常的に行う地域資料の収集が、結果として、このような災害に

対するアーカイブを形成していきます。意識的なコレクション、日常的なコレク

ション、そのどちらがより良い活動である、ということではありません。記録を

記録として残していくことが重要なのです。図書館はその機能を持っています。

そして、日々収集してきたそれらの資料を、振り返る場をつくることが重要な

のです。振り返りの場は、特集展示であったり、パスファインダーの提供であっ

たり、講演会であったり、形態はさまざまです。このようなさまざまな取り組み

について、ご紹介します。

司書名鑑 No. 2 は、公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館「エ

ル・ライブラリー」の谷合佳代子さんにご登場いただきます。エル・ライブラリー

は、前身の大阪府労働情報総合プラザが 2008 年 7 月に閉鎖された後、同年 10 月

に開館した図書館です。本誌でもたびたび事例として紹介してきましたが、どの

ような運営をされているのか、図書館にかける思いなどをご本人に伺いました。

今号では、特別寄稿と特集ともに、災害時における図書館の活動を取り上げて

います。

平常時においてはことさらに意識することのない図書館のあり方も、非常時に

こそ、問い直されます。そのとき、図書館はどのような活動ができるのか。将来に

わたって図書館が行うべき取り組みを、あらためて考える機会となれば幸いです。

編集兼発行人:岡本真

責任編集者:嶋田綾子

巻頭言災害時における図書館のあり方を考えるために

Page 4: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

巻 頭 言 災害時における図書館のあり方を考えるために [岡本真+嶋田綾子] ……… 2

特別寄稿 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち [熊谷慎一郎] ……… 7

 

特  集 図書館で学ぶ防災・災害 [嶋田綾子] …………………………………………………… 55

LRG CONTENTSLibrary Resource Guide

ライブラリー・リソース・ガイド 第6号/2014年 冬号

司書名鑑 No.2 谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」)

アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績定期報告

定期購読・バックナンバーのご案内

次号予告

…… 146

…………………………………………… 152

………………………………………………………………………… 156

………………………………………………………………………………………………………… 158

震災関連資料コーナー

ICT地域の絆保存プロジェクト[東日本大震災を語り継ぐ]

東日本大震災福島県復興ライブラリー

3.11震災文庫

震災関連資料コーナー

写真アルバムによる被災・復旧状況の発信  

東日本大震災の記録 Remembering 3.11

国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)

3がつ11にちをわすれないためにセンター

「震災記録を図書館に」キャンペーン

震災ライブラリー

………………… 56

……………… 58

… 60

…………………………… 62

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…… 71

… 72

…… 76

………………………… 78

みちのく震録伝

岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリ

東日本大震災文庫

フェニックス・ライブラリー

中越大震災資料コーナー

1.17文庫

災害アーカイブ

震災時の「看護」をテーマに情報発信

伊勢湾台風資料室

鳥取県西部地震記録保存資料一覧表

水俣病関連の資料コレクション

被爆文献資料/被爆体験証言ビデオ

………………………… 80

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… 104

戦争体験文庫

平和文庫

震災文庫

平和学コレクション/原爆・被ばく関連資料データベース

戦災記念資料室

防災・災害情報コーナー

資料展示「知ろう ! 備えよう !~図書館で防災力を身につける~」

原爆資料コーナー

企画展「災害史に学ぶ」

情報源リスト「災害から身を守るために」

宮城北部連続地震についてのアーカイブ

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… 126

……………………………… 127

[岩手県立図書館]

[東松島市図書館]

[福島県立図書館]

[仙台市民図書館]

[福島大学附属図書館]

[ゆうき図書館]

[東北学院大学図書館]

[国立国会図書館]

[せんだいメディアテーク]

[東北大学附属図書館他]

[東北大学附属図書館]

[東北大学附属図書館]

[岩手大学情報メディアセンター図書館]

[宮城県図書館]

[兵庫県立図書館]

[小千谷市立図書館]

[神戸市立中央図書館]

[長岡市立中央図書館文書資料室]

[新潟県立看護大学図書館]

[名古屋市南図書館]

[鳥取大学附属図書館]

[熊本大学附属図書館]

[広島市立中央図書館]

[奈良県立図書情報館]

[北谷町立図書館]

[神戸大学附属図書館]

[広島大学図書館]

[神戸市立兵庫図書館]

[土佐清水市立市民図書館]

[鳥取県立図書館]

[長崎市立図書館]

[千代田町立山屋記念図書館]

[山口県立山口図書館]

[東松島市図書館]

[長崎市立図書館]

[大阪府立中之島図書館]

[豊橋市中央図書館]

[飯塚市立飯塚図書館]

[大分県立先哲史料館]

[神埼市立図書館]

[神奈川県立川崎図書館]

[鹿嶋市立中央図書館]

[千葉県立中央図書館]

[宮崎県立図書館]

[長岡市立図書館]

長崎大水害の展示

展示「今、震災を考え防災を見つめ直す」

資料展「豊橋の災害誌~過去の災害と防災~」

展示「あれから10年」

コレクションを活用した資料展示

アンドレ・ジャピー遭難事故の展示

川崎公害裁判訴訟記録

常設棚「防災・地震に関する図書~いざというときのために~」

防災情報のパスファインダー

口蹄疫に関する情報提供

「語り継ぐもの」中越地震データベース

…………………… 128

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………… 141

…………… 142

… 144

Page 5: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

特別寄稿 熊谷慎一郎

─図書館を支援するかたち東日本大震災と図書館

Page 6: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

8 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 9東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災の発生から 3 年が過ぎようとしている。

2011 年 3 月 7 日、月曜日午後 2 時頃。私は南三陸町図書館にいた。南三陸町

では図書館を新しく建設する計画があり、その進捗を聞くため、また上席主幹の

S さんが 3 月で定年退職を迎えるのでひと言ご挨拶をしたい、というのが目的で

あった。図書館の事務室でひとしきり図書館の計画について話した後、仙台へ向

かった。この時は、また近いうちに来て様子を伺おうと軽く考えていた。

新しい図書館の話はとてもわくわくするという気持ちで、そして手伝えること

はあれかこれかと考えを巡らせていた。もちろん、その 4 日後に、国内最大級の

地震と大津波により、町が、いや日本が大きな被害を受け、南三陸町図書館を再

訪することができなくなる事態が起こるとはまったく思っていなかった。

2 日後の 3 月 9 日、水曜日午前 11 時 45 分。三陸沖を震源とするマグニチュー

ド 7.3 の地震が発生した。県内では栗原市、登と

米め

市し

、美里町で震度 5 弱を観測、震

度 4 から 3 を県内各地で観測した。直後に太平洋沿岸に津波注意報が出され、午

後 2 時 50 分に解除されるまで、県内でも津波を観測した。宮城県図書館では、県

内図書館に対して地震の影響に関する情報を収集したところ、本が数冊落下した

という報告が数館からあったが、それほど大きな被害はなかったことが分かった。

しかしながら、久しぶりに感じた大きな揺れは、発生が予想されていた宮城県沖

地震への備えを思い出させた。図書館の開館時間中に地震が起こったら、そして

「今日の地震より大きい、本物の宮城県沖地震だったら」と、一人恐ろしく感じた

のを覚えている。

3 月 10 日早朝 6 時 24 分、前日と同じく三陸沖でマグニチュード 6.8 の地震が

発生。県内では栗原市、丸森町、石巻市で震度 4 を観測した。この地震でも福島県

沖に津波注意報が出され、およそ 1 時間後に解除された。「今週は大きい地震が続

いている」と感じていたのは、筆者だけではないだろう。

そして 3 月 11 日、午後 2 時 46 分、大地震が発生した。

揺れは長く続いた。私は勤務する図書館の自席で、書類のチェックを行ってい

た。最初に揺れを感じてから揺れがおさまるまで、とても長く、数十分にも感じ

られた。「このまま揺れが止まらなかったらどうしようか」とまで感じられた。

実際の行動はそれでも、多少は冷静だったかもしれない。自席で揺れを感じた

瞬間、隣の班の職員とアイコンタクト、すぐにヘルメットがある位置に移動し手

にした。ただ、揺れが本格的にやってきたことで、そこで動けなくなった。揺れて

いる床面の上で、動けない。利用者がいるフロアは大変なことになっている――

と思っても、身体がまったく動かない。いつまでも揺れているような感覚がつづ

き、外へ避難すると雪が舞っていた。いや、吹雪いていたに近いかもしれない。携

帯電話がかろうじてつながっていた。避難本部がハンディマイクで「震度 6 が観

測された」とか「かなり大きな揺れがあった」とか、断片的に分かる情報を伝えて

みたものの、実際はもっと被害は大きいものだった。

その日の夜は、星がきれいに見えた。

1977年2月生。東北大学大学院国際文化研究科修了。2005年4月から宮城県教育委員会司書として宮城県図書館に勤務。2009年4月から主に市町村図書館への支援を中心とした業務を担当。東日本大震災以前から県内の図書館協力・支援に一貫して携わっている。

─図書館を支援するかたち

東日本大震災と図書館

熊谷慎一郎(くまがい・しんいちろう)

宮城県図書館の市町村図書館に対する支援

はじめに第1章

Page 7: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

10 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 11東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

真っ暗な、信号すらともっていない街を、ゆっくり車を走らせ帰宅したのは午

後 9 時過ぎだっただろうか。自宅も停電していたため、今夜はどうしようもない

と判断し、身体を休めようと横になった。ちなみに私の家の玄関には懐中電灯と

幾ばくかの水が常時置かれている。幸い水道はまだ止まっていなかったので、風

呂に汲み、家の中はいろいろなものが散乱していたものの、片付ければ大丈夫だ

ろうと思えた。「とりあえず、自分の生活はなんとかなる」。

ラジオをつけっぱなしにし、作業に差し支えない格好で横になりながら、「寄

贈本がたくさんくるのかな」と思った。思い立って、ノートパソコンを立ち上げ、

イー・モバイルの回線(★ 1)からインターネットにつないでみた。大きな地震だっ

たらしい。大きな津波が来たらしい。連絡が取れない人がたくさんいるらしい。

ツイッターを眺めてもなんだかよく分からないほどの情報が大量に流れていた。

数分で見るのをやめた。今は寝たほうがいいなと思った。

朝日とともに目覚めた。明るくなって、自宅の周りの様子も見えるようになっ

た。近所の寺の墓石が倒れているとか、電柱が微妙に傾いているとか、そんな風

景が目に入った。知人の動向が気になり、立ち寄ってみた。知人宅の家の中では

食器棚が倒れ、ガラスが散乱していた。そんな中でひと晩明かしたとのこと。大

変なことになったな、と改めて感じながら出勤した。

東北地方太平洋沖地震と名付けられたこの地震は、宮城県栗原市で最大震度 7

を観測し、国内観測史上最大級とされるマグニチュード 9.0 を記録した。激しい

揺れがいつ終わるのか分からないほど長く揺れ、その後襲来した大津波を引き起

こし、東北地方から関東地方の太平洋沿岸部を容赦なく襲い、多くの被害をもた

らした。多くの尊い命が失われ、行方不明者も多数に及んでいる。

宮城県の 2013 年 12 月 10 日現在発表(★ 2)では、文教施設の被害総額は 2,000

億円あまりであり、社会教育施設に宮城大学や文化財施設、研究施設を総合し「そ

の他文教施設」として 374 億 7,615 万 1,000 円(およそ 370 億円)と発表してい

る。 宮城県教育委員会の 2013 年 11 月 30 日現在発表(★ 3)では、「社会教育施設」

(649 施設)のみの被害額を集計しており、その額は 307 億 2,613 万 7,000 円(お

よそ 300 億円)である。図書館も社会教育施設に入っているが、図書館だけを集

計したものはない。

本稿では、東日本大震災と図書館について、宮城県内の公立図書館の動きにつ

いて、いくつかの事例とともに紹介する。第 2 章では、市町村図書館の被災状況

の概要を共有し、第 3 章では、大きな被災のあった南三陸町図書館、名取市図書

館への宮城県図書館の取り組みを中心に振り返る。それらの取り組みから得られ

る多くは、普段からの備えや防災意識がいかに重要であるかという当たり前のこ

とである。第 4 章では、図書館の復旧がどう行われてきたか、復興過程において

図書館がどう位置づけられているか、今後の図書館のあり方はどうすべきかなど、

徐々に抽象度を上げた問いかけを行う。最終的には図書館とは何かといったとこ

ろを考えざるを得ないが、できるかぎり具体的な事例を通し、震災と図書館につ

いて考えていくことにしたい。

なお本稿において、意見の部分は私の個人的な見解であり、所属する組織の見

解ではないことをあらかじめご承知いただきたい。

Page 8: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

12 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 13東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

本章では、宮城県内の市町村図書館に関する被災状況を概観していく。宮城県

内の市町村図書館はその被害の軽重はあるが、一定期間の休館を余儀なくされた。

そして、震災による図書館被害は、地震に伴って発生した大津波による被害だ

けではなく、地震の揺れによる建物被害もあることを指摘しておきたい。

東北地方太平洋沖地震で最大震度 7 を観測した栗原市は、2008 年岩手・宮城

内陸地震でも大きな被災のあった地域である。震度 6 強を観測した地点は、内陸

にも多数存在する。栗原市以外にも大崎市や川崎町、大おお

衡ひら

村むら

、蔵王町でも震度 6

強を観測している地点がある。宮城県以外で震度 6 強を観測したのは、福島県国

見町や白河市、双葉町など、茨城県日立市や高萩市、那な

珂か

市し

などでも観測された。

また、一般報道においては、津波による被災状況が大きく取り上げられている

が、図書館・図書室の被災状況は、必ずしも津波による被災と一致するものでは

ないこともあわせて指摘しておきたい。図書館は高台に設置されているところが

多く、津波による被災地域であっても、浸水を免れた図書館は多い。例えば石巻

市図書館は、市街地にありな

がら、標高の高い位置にあり、

浸水を免れている。気仙沼市

気仙沼図書館や石巻市図書館

牡鹿分館なども同様に標高の

高い位置に設置されていた。

宮城県内の市町村図書館に

おいて、図書館現職者のうち、

南三陸町図書館で死亡確認

1 名、石巻市図書館で行方不

明 1 名となっており、いずれ

の方々も津波による被災であ

る。地震当日、図書館にいた

利用者も含め、図書館内での

人的被害はなく、地震の揺れ

に伴っての死亡者はいなかっ

7

6強

6弱

5強

5弱

震 度

た。図書館開館時間中に起こった大地震にも関わらず、揺れに伴う死傷者が出な

かったことは、日頃の訓練や対策のあらわれといえるだろう。

震災以前に行っていた図書館サービスを再開するのが困難な図書館は、必ずし

も津波が原因とは限らず、揺れが原因であるところもある。なかでも建築物の応

急危険度判定において、「危険」と判定された名取市図書館は、人口 7 万人を有し

17 万冊超の蔵書を持っているにも関わらず、長きにわたり震災以前と同様のサー

ビスを展開できない状況にある。同市内の閖ゆり

上あげ

地区は津波によって大きな被災を

しているが、内陸部にある図書館は浸水被害を免れているため、いわゆる津波に

よる被災が原因ではない。また、沿岸部にある宮城郡七しち

ヶが

浜はま

町まち

は、津波によって

町の大部分が被災した自治体であるが、図書センターそのものは浸水しておらず、

地震によって建物が使えなくなった。

図 1 東北地方太平洋沖地震震度分布図 (出典: 罹災概況図(県全体)『宮城県震災復興計画』)

図 2 南三陸町図書館跡地(2011 年 7 月 28 日撮影)

宮城県内の市町村図書館の被災状況第2章

震 度 分 布 図

Page 9: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

14 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 15東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

表 1 は、宮城県内で被災度が高い主な市町村図書館・図書室をまとめたもので

ある。津波により全壊・流失した図書館・図書室は、南三陸町図書館、石巻市図

書館雄勝分館、石巻市図書館北上分館、女川町生涯教育センターである。なかで

も南三陸町図書館は、建物ごと流失している。

宮城県における図書館の被災状況をまとめると、以下の 2 点となろう。

(1)地震による被害により、震災以前の図書館サービスの再開が困難になった図

書館が多い。

(2)津波による被災地域では、図書館が高台にあり浸水を免れたところがある一

方、浸水域にあった館は被害甚大である(図 2)。

建物や施設設備の修理によって、機能が復旧した図書館は徐々に増えている。

震災から 1 年以上経過してくると、浸水域にあった図書館をどう再建し復興して

いくかという課題が相対的に大きくなってきた。

建物が使えなくなった図書館では、建物を含めた復旧はいまだにしておらず、

仮設での運営が続いており、本格的な図書館へ移行するための準備段階である。

南三陸町図書館は、南三陸町オーストラリア友好学習館内に入居しているが、仮

設図書館としての位置づけで、今後は町の中央エリアに公民館との併設で復旧す

ることも検討されている。石巻市図書館の雄勝分館や北上分館は現在も休館して

いるが、2013 年 7 月から 9 月に、それぞれの地区でまちづくり基本構想が策定さ

れた。これにより公民館・図書館を組み込んだ総合支所を整備する計画となった。

宮城県図書館では、自館の復旧を進めながら県域の市町村図書館などへの支援

を行った。情報収集と集約、直接訪問し種々の相談に応じるといった活動が主で

ある。被災者への直接支援よりも、図書館などを支援することにより間接的に被

災者へ支援するということを意識したものである。

本章では、まず次節で震災前の宮城県内の公立図書館における整備状況につい

て概略を延べ、以降、具体的に自治体への支援について振り返っていく。

宮城県における図書館法に基づく公立図書館設置率は、震災発生時の 2011 年

3 月時点で 60%(13 市 21 町 1 村のうち、図書館を設置しているのは 13 市 8 町)

と低い。市部と町村部での図書館活動の差が歴然としていた。もちろん個々の図

書館に注目すれば、活発に活動している図書館も多い。加美町の中なか

新にい

田だ

図書館は

蔵書は 30 万冊にのぼる規模であり、多くの利用者ニーズに応えられるだけの力

を持つ。また東松島市図書館は、震災直後から精力的に図書館活動を展開し、仮

設住宅の集会所に「小さな図書館」を設置したり、震災の体験談を収集したりと

精力的に事業を実施している。

公立図書館が設置されていない自治体は、公民館などの図書室を公共図書館に

類する施設として運営しているが、その規模は自治体によって大きく異なる。例

えば、大河原駅前図書館(柴田郡大河原町)、女おな

川がわ

町生涯教育センター図書室(牡

鹿郡女川町、震災により全壊、2012 年 3 月から「女川つながる図書館」として開

館)、七ヶ浜町図書センター(宮城郡七ヶ浜町、東北地方太平洋沖地震により全壊、

2011 年 9 月から七ヶ浜町中央公民館にて図書館活動を再開)、松島町勤労青少年

ホーム図書室(宮城郡松島町)は、「図書館」を名称に用いている場合もあるが、い

ずれも図書館法に基づく図書館設置条例に根拠を置かない施設である。しかしな

がら、およそ 3 万から 6 万冊という一定規模の蔵書があり、いわゆる公共図書館

に相当する機能を有している。

図書館への支援を企画する場合、このあたりの事情をあらかじめ把握しておく

必要があると考えられるが、これらの状況がつかめていた関係者がどれほどいた

第1節 宮城県内の図書館整備状況

表 1 宮城県内で被災度が高い市町村図書館・図書室

宮城県図書館の市町村図書館に対する支援第3章

建物全壊(津波)南三陸町図書館、石巻市図書館雄勝分館、石巻市図書館北上分館、女川町生涯教育センター

建築物応急危険度判定で「危険」判定名取市図書館、七ヶ浜町図書センター、涌谷町涌谷公民館

Page 10: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

16 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 17東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

のだろうか。被災の大きかった岩手県や福島県でもそれぞれに固有の事情があっ

たはずである。

南三陸町図書館の復旧と宮城県図書館の関わりについては、拙稿(★ 4)ですでに発

表したものがあるのであわせて参照されたい。本節では、当該論文と一部重複する

が、あまり触れていない支援の企画構築プロセスを中心に記述していくこととする。

南三陸町議会は 2010 年度の 9 月定例会において、当初予算のうち子育て支援

事業費の基本実施設計委託料について、3,565 万円を補正計上した。2011 年 7 月

ごろを目途に子育て支援施設、保育所と図書館を併設した施設の設計が進んでい

た。総事業費はおよそ 6 億 8,000 万円。震災がなければ――仮定の話だが、保育

所と一体的整備された図書館が新しくオープンしていただろう。

以前から南三陸町図書館は海の側にあり、津波が来たら危険だといわれていた。

2010 年 2 月 28 日、午前 9 時 33 分、チリ大地震に伴う大津波警報が太平洋沿岸

に出された。南三陸町では午前 10 時に閉館。県内では他に石巻市や七ヶ浜町で

午前中に閉館したという。

2011 年 3 月 11 日に発生した大津波は容赦なく、南三陸町図書館を襲った――

らしい、というところまでしか分からなかった。3 月 24 日(3 月 23 日の深夜とい

うべきか)、南三陸町図書館で勤務していた M さんから一報が入った。「後で詳細

を連絡する。職員は全員避難所勤務であり、数日ぶりに自宅に戻ったところであ

る。津波の後の現地を確認できていない」というものだった。この時、Y 館長はま

だ行方不明で、死亡と確認されたのはもう数日後のことだった。

電話での連絡を何度かとりながら、南三陸町へ行くための準備をした。状況を

確認するのが目的であるが、なにを確認すべきなのかを明らかにしておく必要が

ある。

図書館の「これから」のためには、「これまで」をどう整理するか、が重要である。

「これまで」とは、震災発生時にどれくらいの資料が館外貸出されていたか、相互

貸借資料はどれくらいあったか、学校へはどれくらい貸出していたか、発注して

いた図書はどれくらいあったか、無事と思われる資料はあるか、貴重資料はどの

場所にあったか、といったようなことである。図書館の運営は「これから」始まる

のではなく「これまで」の延長上にある。

5 月 6 日。南三陸町の仮設役場を訪ね、南三陸町の図書館長を兼務することに

なった生涯学習課長の O 氏と面会した。図書館を初めて任されたという O 氏は

それでも図書館をどうにかしないといけない、という思いを語ってくれた。

南三陸町図書館が図書館事業をどう考えたらいいのか、また宮城県図書館はど

のように南三陸町図書館を支援できるのかを具体的に検討するために、 M さんの

時間を 1 時間ほどもらった。5 月 20 日のことである。

その時の筆者のメモを一部引用しよう。

(1)被災していない資料群

◎歌津中学校に学校貸出していた資料(リストは学校にあるはず)

→ただ、避難所で利用されていたものもあったので、散逸している可能性

もありそう。

◎入谷小学校(リストは学校にあるはず)

◎貸出中の資料のうち、被災していない高台、山あいにお住まいの方が

持っているであろうもの。

→図書館が流失しているため、貸出中の資料が何点あるか、だれが借りて

いたか、などの情報は一切残っていない。

→広報などで、貸出中の資料を返却してください、と呼び掛けたところで、

返却本を置くスペースがとれない、という切実な問題がある。

◎昨年度末に発注した資料十数冊(未受入)

(2)図書館の耐火書庫について

◎図書館にあった耐火書庫は、一般的なプレハブの半分程度(2 ~ 3 坪程

度?)の部屋に鋼鉄製の扉を取り付け、耐火仕様にした書庫で、壁面は

おそらく木造。建物の奥のほう、職員入り口付近にあり、海に近いほう

に存在した部屋。

◎正確な資料点数は不明。入っていた資料は下記の通り。おそらく、これ

らで、5,000 点はあったかもしれない。

・チリ地震関連資料(新聞、写真、文集、関係資料)

・郷土・地域資料(地元の人が書いた本)

・行政資料(広報誌なども)

・古文書、古書類(近世~明治の刊本、写本など)

・志津川町史編纂事業で収集した古文書

第2節 南三陸町図書館への支援

Page 11: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

18 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 19東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

(3)3 月 11 日時点での相互貸借状況

◎県外から借り受けていた資料 3 点ほどあったうち、2 点は連絡がついた。

もう 1 点が、大船渡もしくは宮古のどちらか分からない。記憶が曖昧で

なんとも分からずにいる。

◎県内図書館から借り受けていた資料は、正確には不明。ちょうど県図書

館から資料が届いた次の日だったので、数人に届いた旨の連絡をしたが、

だれがリクエストしていたかは、手元に資料が残っておらず不明。

打合せを終え、まず「これまで」を整理する必要がある、と改めて確認した。支

援という言葉はともすれば「これから」のみを考えさせる。県立図書館として図

書館を支援するために必要なまず第一歩は、県内外の図書館間調整を行うことで

ある、と意識した。

M さんは打合せの終わりに言った。「新館建設の計画が復興に当たってどう評

価されるか分からない。書店は 1 ヶ所しかなく、それも流されてしまった。本や

情報を得たい場所としての図書館は必要だと思う」。

M さんとの打合せの後に、O 課長と図書館担当になる予定の Y 氏とで打合せを

もった。「3 月 11 日時点での図書館について、相互貸借など他館との調整が必要な

案件については、県図書館の調整をお願いしたい。流失した資料回収にあたって、

図書館としては積極的に動きようがない。図書館のあった場所から流れていった

先の場所もはっきり分からず、手が打てない。各種撤去に携わる人が見つけた資

料は、図書館のものであれば、警察をとおして連絡がくることになっている。建設

課の主導により、撤去の工事管理がなされ、貴重とされる資料の仮置き場は松原

グランド(図書館の隣の公園、町教委があったところの近く)である。小中学校へ

の図書支援、活動は可能であれば引き続きやりたいが、事務を調整できる人員が

いない。資料を含めて、なんとか支援をお願いしたい。そして、かつて図書館に勤

務していた Y 氏が正式に生涯学習課へ配属替えになり、図書館担当となる予定で

あるから、今後は、Y 氏と連絡を取りあいながら進めてほしい」と O 課長が言った。

続けて、「移動図書館車の提供の申し出が数件ある。うち、1 件は財団や NPO 法人

であるが、維持費などを含め、どの程度の費用負担が今後かかるのか、詳細を問い

合わせているが、返答がない。図書館振興財団はずいぶんと景気のいい話をして

いった。勧められるようなかたちで申請書を書いた。プレハブが図書館用に 2 棟

用意可能ということで返答があった。見積もりを取っているところである」と言う。

――支援の申し出が多い。支援する側の調整が必要だ、と感じていた。同じく

図書館を支援する者同士が情報を共有できる仕組みがほしい。6 月 1 日に「図書

館復興のための受援者・支援者連絡調整会議」が東北大学で開催され、ほとんど

間を置かず 11 日には「東日本大震災被災地図書館支援情報交換会」が日本図書館

協会で開催された。ようやくこのような話ができる場を小さいながらも持つこと

ができた。なぜ、一つにまとまれないのだろう、という疑問とともに。

6 月 8 日、志し

津づ

川がわ

高校避難所。Y 氏と打合せをした。Y 氏は「図書館振興財団か

らプレハブが 2 棟届いた。さらに、移動図書館車両と移動図書館車に積載するた

めの図書 3,000 冊が寄付されるかもしれない。午後からの打合せに関係者が来る

ようだが、課長が議会に出席のため、係長が対応する予定。同席して話を聞いて

ほしい」と言う。了承し、県図書館が県内外の図書館と相互貸借や予約の資料に

ついて調整を行い、おおむね各館とも話がついたことを報告した。場所を仮設役

場に移し、移動図書館車両の支援関係者と会談。維持できる、あるいは運用でき

る体制を含めて考えなければならない旨、当方から話をした。

結果的に、この移動図書館車両の提供はうまくいかなかった。この時期、震災

から 1、2 ヶ月程度たった頃、多くの支援の申し出が図書館にあらゆるルートで

寄せられた。本の寄贈はもとより、目立ったのが移動図書館車両の提供申し出で

ある。この時期に大型の車両をどのように移動図書館として運用したらいいの

か、また、どのように維持経費を費用分担するのか、という懸念もあった。7 月に

図書館振興財団から移動図書館車両が第三者リースのかたちで貸与されることに

なった。7 月 20 日に車両が引き渡された。だが、どのように運用できる体制を組

むかは課題であった。この時期、図書館は館長 1 名と職員 1 名であるが、職員は

避難所の運営をしていた。実質だれも図書館の業務を専任できていない時期であ

る。「来週から本を積んで回れるのか?」と関係者から言われたが、「無理だ」と回

答するしかなかった。実際に移動図書館事業が南三陸町図書館で始まるのは 11

月のことであった。車両は、宮城県角田市から譲渡された移動図書館車両である。

一定の蔵書を積み込むことができ便が良かったためである。県内では、石巻市も

11 月から、女川町では 2012 年 4 月から移動図書館事業が開始された。いずれも

現在も継続されている。持続可能な事業として移動図書館を運営するには、相当

の準備期間が必要である。

Page 12: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

20 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 21東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

6 月下旬、大量の図書がプレハブに運び込まれていた。支援ということで、数多

くの段ボールに入った図書がそこにあった。新しい本も古い本も、たくさんあっ

た。これらを整理する必要がある。もし、プレハブがなかったら、これらの本はど

こに置かれていたのだろうか。整理作業場所として、蔵書仕分けやフィルムコー

トを掛ける作業を想定、総合体育館(通称:ベイサイドアリーナ)内で、机やイス

を置くことができ、パソコンなど端末電源を確保できる場所があるかどうかがポ

イントである。ベイサイドアリーナの一室を使えないかという調整をすることに

なった。

まだ、避難所が完全になくなったわけではないので、Y 氏も図書館業務に専念

できないでいた。南三陸町では、8 月までに仮設住宅に入居してもらえるように

動いていたのとあわせ、2 学期から志津川高校は現在地で授業を再開することに

なっていた。これで、少なくとも 8 月の中旬にはなんとか見通しが立てられるか

もしれないという見込みが立ってきた。8 月には非常勤職員が配置され、9 月か

ら本格的な作業をすることができそうなかたちになってきた。

6 月から 7 月にかけて一つ注目すべき支援がある。中国地方郵便局長協会が、

図書館の資料整備のために南三陸町に支援金を寄付したのである。東日本大震災

からの一日も早い復興を願って義援金 3,000 万円を用意した。当時の片山総務大

臣はまとまった善意の寄付金を十分に活用し復興に役立たせるため、大きな被害

を受けた市町村の公立図書館の蔵書購入に充てることを提案、岩手県陸前高田市、

大おお

槌つち

町ちょう

、野田村および宮城県南三陸町にそれぞれ 750 万円が寄付されることに

なった(★ 5)。図書館の資料費をまとまった金額で、目的を限定したかたちで寄付

された例は多くない。この資金は、10 月に再開する際に大きな力となった。

8 月から非常勤職員が配置されることになったとしても、どう仕事をつくって

いくかが分からないと相談されていた。これはつまるところ、図書館をどう運営

するか、という点にかかっている。図書そのものは毎日のように送られてくるが、

ほとんど手つかずのまま、プレハブに保管されている。一方で前述のようにまと

まった資料購入費もある。蔵書についてはあまり心配はないだろう、と判断した。

まずは再開させよう、と O 館長以下、思いを共有していた。非常勤職員の作業見

込みをつける必要がある。図書館での勤務経験はない。まずは蔵書を仕分けるこ

とから始めるしかないだろう。「8 月に職員が配置されたら、まず各所にある資料

を片っ端から集めて貰いたい。図書館で利用できるかどうかは後で仕分ければい

いので、物資として届いているものや、避難所に送られたもので、余っているも

のについて、集めてほしい」と依頼した。完璧ではないにしろ、図書について一元

的な管理を目指すことを方向性として打ち出した。

図書を仕分け、ある程度の質を保つために選書し、その間、図書館家具や什器

を揃えることにした。図書の仕分けは難しかった。図書の内容でどう選書するの

か、という部分は人によるし、ある程度の経験や勘が必要である。ずっと私たち

が付いているわけにもいかない。いずれ、自分たちで図書館を運営する日が来る

のだから、一定の力はつけてもらわなくてはならない。仕分けの第一段階として、

明らかに汚れているものを中心によけてもらった。少なくとも、みんなが手にし

ようと思わないくらいの汚れがついている本は仕分けてもらった。そこから先は

内容に踏み込む必要がある。本来ならば、どのような図書館を目指すのかによっ

て蔵書形成を考える必要があるが、その部分を詰められていない。できるだけ一

緒に選書作業を行い、まずは再開時に開架に並べることができそうな本を中心に

仕分けていった。

さらに、図書は、必要に応じブックコーティングをすることにし、なんらかの

作業を非常勤職員にやってもらうようにした。選書以外の作業も必要であった。

ブックコーティングのための講習会を実施するよう調整したのもこのためである。

日本図書館協会が「HELP-TOSHOKAN」という支援事業を実施していたが、その一

つにブックコーティングの講習や作業支援があった。日本ブッカー社に協力を依

頼し、8 月の日程を押さえてもらった。8 月 20 日から 21 日にかけてブックコー

ティングの講習会を実施。21 日は宮城県図書館でボランティアを募集し、マイク

ロバスを借りて県内外の図書館関係者約 20 名とともに作業にあたった。この 8

月 21 日は南三陸町図書館のために多くの図書館関係ボランティアが入ることに

なり、以降の作業にも大きなはずみとなった。文房具を寄付してくれたり、さま

ざまな物品を持ってきてくれたりと、単なる作業以外にも支援が寄せられた。

さて、図書の整理にあたり、蔵書を管理するシステムが必要であるとの認識は

みな一致していたが、本格的なシステムの導入は資金的にハードルが高かった。

一時、無料で図書館システムを一定期間使用できるという支援事業もあったが、

今後の運用を考慮するとなかなか踏み切れずにいた。そんななか、紹介されたの

が Enju である。Project Next-L による Enju が南三陸町図書館の管理システムと

して、当初の期間導入する方向で話が進んだ。本格的なシステムが導入されるま

でのつなぎ、という意味もあった。南三陸町図書館としてもおおむね了承し、2 年

目以降の保守料金も考慮するということで導入の準備が進んでいった。

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22 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 23東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

項番 項 目 概 要

1 運営関係 図書館運営上必要な規則や内規を作成する

2 未開梱の箱選別未開封の段ボール箱を開けて、図書館で使うかどうかの分別を行う

3 書架にある資料の選別プレハブ I の書架に並んでいる資料について、受け入れるかなどの選別をする

4 書架まわり プレハブ I の書架について、装飾などを行う

5 閲覧スペースまわり プレハブⅡについて、閲覧室、カウンターの装飾などを行う

6 外まわり BM について装飾を行う

7 プレハブ外まわり プレハブ 2 棟の外まわりの装飾などを行う

8 事務室まわり トレーラーハウスを事務室、執務室にする

9 歌津の倉庫作業 図書館の倉庫として使用する歌津の倉庫の掃除と整頓

10 名足小学校の作業物資置き場となっている名足小学校から図書館で使えそうな図書を持ってくる

システムの導入は通常、数ヶ月かかるものである。8 月 7 日から 8 日にかけ、

Enju 開発担当の T 氏が南三陸町を訪ねてくれた。システムの環境調査、端末の設

定計画などの打合せを現地で持つことができた。無線 LAN や端末の設定の相談

をし、システムの調整を進めていった。システム周りの多くの調整を T 氏が行っ

てくれたことで、私の負担はだいぶ減ったと思う。

この時期はかなりの頻度で南三陸町に通っていた。宿泊場所があるわけではな

いので、仙台から片道およそ 80 キロメートルを往復していた。多いときは週の

半分を南三陸町に出張し、さまざまな調整にあたった。

――10 月 5 日を再開の日にしよう。

9 月 3 日にそう決めた。O 館長がやる、と決意した。プレハブで再開する。なに

もなかったプレハブに、書架が入った。図書も、図書購入費用もある。人もなんと

か配置できた。あとは、サービスを少しでも回復させる。そんな中での決意だっ

た。

9 月 3 日の打合せに参加したメンバーに、プロジェクト管理を専門とする人が

いた。彼は工程表を作成し、職員にヒアリングをしながらガントチャートをつく

り、やるべきことを書き上げていく。決して図書館の専門家ではないが、丁寧に

ヒアリングを続け、大まかな計画ができていった。

人手を確保し、集中的に作業することにしたい。そう考え、すぐに県図書館に

電話をし、内部調整を図ってくれるよう依頼した。移動手段のバスを 3 日分交渉

してもらい、ボランティアの呼びかけの段取りを付けた。帰館後すぐに上司へ説

明し、了解をとり、9 月の集中作業に向けて準備を調えていった。

筆者は、この集中作業日の計画を立てた。プロジェクト管理の基本である WBS

(Work Breakdown Structure)の手法を用い、全体作業と個別の作業を分解し、一

つの作業を数人であたれるようにしていく作業である。今回の作業にあたって分

解した項目は(表 2 )のとおりである。

これらの項目に対して、それぞれに具体的な作業フローを設定していく。その

後、スケジュールに落とし込んでいく。これから取り組む作業なので、想定でき

る作業フローでしかないが、このフローを考えられるのは図書館の専門職にしか

できないことである。参加する人がある程度確定したら、次に作業に人を割り当

てていった。各団体のリーダーからヒアリングし、ある程度のまとまりができる

ような割振りを行い、実際に作業しながら臨機応変に組み替えていくというスタ

イルを採用した。このようにして作成した原案(図 3)をもとに、3 日間の作業に

入った。

私は、この集中作業期間、ほとんどを各作業の進捗管理に充てた。すべての項

目を 3 日間で行ったわけではないが、この集中作業で想定した分はかなりの進展

をみた。10 月にオープンするまでもう少し、というのが実感できるほどであった

と思う。

集中作業は 9 月 25 日までだが、そのまま 10 月 5 日の再開を待つわけではな

い。直前まで準備が必要である。図書館の再開館式の段取りは南三陸町でつけて

もらった。当時の参加者へ配布するため、南三陸町図書館の沿革を記した。

表 2 集中作業日に設定した WBS 一覧

Page 14: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

24 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 25東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

アリーナ内

ミーティング室

今回の活動の拠点

装備・

装飾作成作業など

装備・

装飾作成作業など

仮置き場所

大きい

装飾作成など

事務室環境の整備

システム関係整備

プレハブ1

(書架)の整備

プレハブ2

(閲覧室)の整備

移動図書館車の

整備

図書館の

仮置き倉庫として

使う場所の整理

物資として

届いている

図書の整理

アリーナ内

和室

アリーナ内

体育館

トレーラーハウス

プレハブ1

プレハブ2

BM

民俗資料館

(歌津の倉庫)

名足小学校

全体ミーティング 9月23日10時30分〜

運営関係 ・規則 ・運営内規

廃棄分紙ひもで縛りリサイクルセンターへ

すぐに受入可能な資料の装備

ラベル作成,印字

蔵書印を押す

外まわり・外観デコレーション・内装・各種案内サイン・事務用品配置

配架作業

仮置き資料の運び込み・整理整頓

書架まわり・書架分類サイン・各種案内サイン・書架デコレーション 配架作業

プレハブ外まわり・飾り作成 ・デコレーション・各種案内サイン

閲覧スペースまわり・カウンターの整備・各種案内サイン・デコレーション

事務室まわり・ファイリング・文房具・消耗品・テーブルレイアウト

受入ファイルのマーク

資料の分類移動

移動 片付け・掃除

・事務用品配置・閲覧デスク・新聞,雑誌架

未開梱の箱選別

書架にある資料の選別

24日以降は進歩を進捗を見ながら前日に確定

資料の装備(ブッカー)

資料の装備(システム登録)

資料の装備(蔵書印)

資料の装備(付録の処理)

再開館がゴールではない。この後、図書館を運営していく必要がある。O 館長

は、「次は、移動図書館車を動かしたい」という。次の目標は、11 月中に移動図書

館を稼働させることになった。その次が、歌津地区への図書館設置。館長の頭に

は、市外の仮設へ避難している方々へのサービスも考えているようだった。見捨

てられたように思われないために、という配慮があった。開館後も先の寄付金が

あったので、それを一般書の購入にまわし、約 5,000 冊の新刊書が継続的に納品

される予定であった。スペースの余裕はなかったが、それでも図書館の運営を再

開させたことで、新しい段階に入ったといえる。

以上が震災発生から再開させるまでの概況である。

図 3 集中作業期間におけるスケジュールとワークフロー原案(一部)

図 4 2011 年 9 月の作業の様子 (1)

図 5 2011 年 9 月の作業の様子 (2)

Page 15: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

26 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 27東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

図 6 再開館時の配布物

図 8 再開館日(2011 年 10 月 5 日)の様子

図 7 再開当時の図書館

Page 16: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

28 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 29東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

――建物がない。

図書館が図書館として成立するために必要不可欠なものがない。蔵書は残って

いる。職員も少ないがいる。名取市図書館の最大のニーズは「建物がほしい」で

あった。私はこのニーズをどうやって叶えたらいいかと考えていた。以下に、そ

の調整過程を記していく。ここで明らかにしたいのは、仮設図書館の整備までに

行われた会談や打合せ、多くの人との調整のうえに動いていたプロジェクトで

あるということだけではない。図書館の関係団体以外の団体や事業主体が中心と

なって話がまとまっていったプロジェクトである、ということである。

名取市では図書館を新規に建設し、移転するという計画があった。順当に行け

ば震災発生時には開館していたと思われる。だが、震災発生時は築 50 年を超え

る旧市役所庁舎を転用した図書館であった。度重なる激しい揺れに耐えられな

かったのだろう。応急危険判定で「危険」と判定され、建物の継続的な使用はでき

ないと判断された。震災発生時は蔵書点検中で、利用者はいなかった。

2011 年 4 月、図書館の 2 階に置かれていた蔵書の重みに建物が耐えられない

かもしれないという指摘に対し、資料をすべて箱詰めして下ろす、という作業が

始まった。北海道石狩市や北広島市の職員が作業を手伝ってくれた。他にも図書

館用品メーカーの社員やボランティアが多く駆けつけた 1 ヶ月だった。この動き

は図書館関係のメーリングリストでも紹介されていたが、当時は建物をどうする

か、といった疑問を持つ支援関係者はいなかった。私はボランティアの動きは評

価しつつ、図書館の運営に必要な建物を再建しなければならないと考え、またこ

の再建は仮設のサービスポイントでも構わないと考えた。仮設のサービスポイン

トを設置するには人手も資金も必要である。

5 月の中頃、あるプロジェクトを紹介された。東海大学チャレンジセンターに

よる「3.11 生活復興支援プロジェクト」の「震災復興応急住宅モデル どんぐりハ

ウス」である。初めてこのプロジェクトを紹介されたときは、中身もまったく分

からず、流失した図書館の代わりに使えないか、といったものであった。この時

の規模では、まったく図書館のサービスには耐えられないもので、可能性がある

ものの、どう転ぶか判断がつかなかった。

2011 年 7 月 22 日。宮城県公立図書館等連絡会議が開催された。ようやく県内

の図書館などの関係者を参集した会議を開くことができ、久しぶりに顔を合わせ

る関係職員もいた。午前の部が終わったとき、名取市図書館の S 館長と S 司書か

ら話しかけられた。「私たち、そろそろ帰ろうかと思います。ここにいる図書館と

自分たちの図書館の状態にあまりにも差があって……」。「午後から震災の話をし

ます。もう少し参加されませんか? そして、もう一つ聞きたいことがあります。

名取市の図書館に仮設の建物を建てて図書館を再開する気持ちはありますか。予

算とかそういう話ではなく、気持ちとして」と私が聞くと、二人とも「あります」

と力強く回答した。午後の部では、各館から震災以後の状況について、順に話を

してもらった。名取市図書館からは「名取市図書館の状況は、午前中に報告いた

だいた状況である。新図書館の整備計画を進めるにあたり、視察に行った石狩市・

北広島市の図書館から声をかけていただき、復旧にあたった。その他、災害ボラ

ンティアや企業からの応援もあって、延べ 150 名ほどの支援があった。建物に利

用者は入れておらず、カーテンの端から見える本があると、早く入れるようにせ

よ、とお叱りを受けることもある。昔の市役所を転用したもので、築 53 年に至っ

ていることもあり、2 階は本の重みに耐えられないため、一般室の一部の書架を

取り払い箱詰めして置いている。なによりも、建物は重要であることを認識した。

建物がないと、図書館は運営できない。建物がほしい、という状況である」との発

言があった。

名取市図書館に必要なものははっきりしている。――建物である。方向性はこ

れしかないと思った。5 日後の 7 月 27 日、午後 6 時。仙台市中央市民センターの

一角で「公民館復興のための受援者・支援者連絡調整会議」に出席していた元文

部科学省社会教育課長の K 氏と会談した。先のどんぐりハウスの話を紹介してく

れた方である。K 氏に名取市の状況を話し、図書館振興財団から 20 平米程度の

プレハブが来ることも説明した。名取市図書館の要望としては、40 坪程度の広さ

を持った建物が必要というもの。ここである程度のカウンター、閲覧スペースを

まかない、現在 BM を活用して週に 3 回開館している状況を脱したいと考えてい

ることを伝えた。どんぐりハウスの先行例は岩手県大船渡市にある。旧三陸町の

集落に設置されたそれはおよそ 26 坪で、名取市が求める広さに達していないが、

広さを変更する分には問題ないということであった。問題はむしろ資金であるこ

とがこの場でも確認された。

必要な資金をどう調達するか、が課題として認識された。約 3,000 万円を見込

第3節 名取市図書館への支援

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30 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 31東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

む資金が必要だったが、この課題を解決しなくては、名取市図書館の再建は進ま

ないと思い、さまざまな人に話をした。「何か支援したい」と申し出てくれた方々

に率直に話をもっていくと、「それは無理」と言われた。現実的ではないのか、と

思いつつも、あきらめるわけにはいかない。8 月上旬、名取市と東海大学で打合せ

がもたれ、おおむねの方向性は一致した。仮設図書館をどんぐりハウスで設置す

るという方向である。

資金がうまく調達できないということで、一時この話が頓挫しかかった。

8 月 26 日、私は宮城大学に出向いた。事業構想学部の S 助教、まちづくり政策

フォーラムの A 氏と会談した。復興関係の情報交換ということで話をしていたの

だが、思い切って名取市図書館について聞いてみた。S 助教は名取市の復興計画

に関わっていると聞いたからだ。すると、S 助教は「被災した公共施設などは、震

災復興とは異なる枠組みで捉えられている。図書館の被災状況について、復興計

画の策定会議などで話題に上がったことは一度としてない。読み聞かせやおはな

し会を行っている団体はそれなりにあるが、図書館の整備を、という話になると

支援活動ではあまり聞かれない。図書館の活動が停滞していることを知らない人

が多すぎると思われる」という。現実はいつもこうで、図書館について市民が常

に話題にしているわけではない。震災で図書館がどんな被害を受け、どんな状況

にあるか、という話題は関係者が思っているほど大きな話題にはなっていない。

図書館のことが図書館以外のところで話題になっていないことが問題なのであ

る。まちづくりのコーディネートを行っている人たちの間で、かつ、名取市で支

援活動を精力的に行っている人たちの間ですら、名取市図書館のことが知られて

いなかった。A 氏からは、さまざまな助成金の情報をいただいた。公共図書館と

して再建したいという思いと、うまく助成目的が合うかどうかは分からなかった

が、女性支援や子ども支援の関係団体を紹介してもらうことができた。A 氏は RQ

被災地女性支援センターを登米市に設置し、広く被災者への支援、とくに経済的

な自立への支援を行っていた。S 助教は、空き店舗を利用して図書館をやっては

どうか、などのアイディアを話し、まちの活性化に図書館を生かすような動きを

とってはどうかとの提案をしてくれた。マイクロ・ライブラリーともいえる図書

館活動であるが、公立の図書館がこういった活動を主体とするのはかなり難しい

が、面白いアイディアである。この会談は、名取市図書館の仮設図書館設置への

大きなきっかけとなった。

この会談後 1 時間ほどして、A 氏から電話があった。「国際ボランティア団体

が被災地域での集会所の建設などをしているそうである。被災地の施設再建費

150 万円から 470 万円でデザインから施工費までを含み、被災地域のコアになる

ショップ、施設などの設置について企画アイディアを募集しているが、どうだろ

うか」というものだった。実際に気仙沼市本吉で先行して設置の動きがあるらし

かった。助成の目的には合致しているが、金額があまりに足りない。名取市図書

館は仮設の図書室の広さ 40 坪を譲れないラインとしていた。児童書を開架で 3

万冊配架することを目標にするなら、やはりこのくらいの広さは必要だろうと思

う。

資金獲得の進展がないまま 1 週間が過ぎ、9 月 2 日。名取市図書館で打合せ

をもった。saveMLAK の岡本真氏も同席したこの打合せの際、目標が再確認され

た。目標は「どんぐりハウスによる図書館サービス再開」である。名取市図書館と

しては、どんぐりハウスにシンボル的な意義を感じており、そのための財源が確

保できるのであれば、市の予算を執行しなくてもいい、ということを生涯学習課

と話をつけているという。ここでいう市の予算というのは、仮設のプレハブを設

置するための費用である。市の予算は、どんぐりハウスではなく、普通のプレハ

ブを 40 坪程度設置した場合の見込みであった。ある助成金をあてにしているた

め、12 月 1 日に契約着工できていることが条件になる。もとめる図書室を設置す

るとなると、建築確認が必要な規模のため、その手続きに 1 ヶ月程度を見込むと、

できれば 9 月、遅くても 10 月まではなんとか資金の目処がつかないと実現しな

いということであった。この日の打合せでは、現時点で復旧を図書館振興財団か

ら 20 坪程度のプレハブを支援してもらうため、その設置に必要な基礎工事が開

始されていた。プレハブ以外の部分は、市費でまかなうことができたことや、岩

見沢市から廃車になる移動図書館車両を寄贈してもらうことで話がまとまりそう

ということを聞いた。さまざまな環境が整ってきている。資金の見込みをつけな

ければいけない。

日付は前後するが、9 月 1 日、A 氏からメールがあった。一緒に活動しているメ

ンバーの I 氏が図書館の状況を知りたいという。建造物や図書などについての被

害状況、再建の目処などについてとのオーダーがあった。この情報を求めていた

のは、国連大使を務めていた T 氏であった。I 氏が会談を持つため、図書館の状況

を求めていたのであった。すぐに、資料を送ることにした。9 月 2 日には T 氏と

の会談があったそうで、話は伝わった模様であった。

Page 18: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

32 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 33東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

9 月 6 日、I 氏からメールがあった。

――名取の仮設図書館建設に、ユニセフが建設費を出す可能性を調整中です。

もしかすると、ユニセフから直接熊谷さんに連絡が入るかもしれません。

もしかしたら、うまくいくかもしれない、と思った。いや、きっとうまくいく、

とも思い直した。日本ユニセフ協会から連絡があり、9 月 16 日に打合せを持つこ

とになった。宮城県図書館に来ていただき、1 時間ほど担当の N 氏と会談した。

私は「名取市図書館は、建物が震災によって使えない状況にある。震災後は、移

動図書館車を用いて、図書館サービスを再開させた。もちろん、移動図書館車の

みでは足りないため、一般利用者へのサービスに考えた 20 坪程度のプレハブで

仮設図書室を 10 月までに用意する。児童サービス用途をメインに考えた 40 坪程

度の仮設図書室を用意したいと考えているが、資金的な目処が立っていない。子

ども向けにしろ、一般利用者向けサービスにしろ、名取の図書館が震災前から

持っている蔵書を生かしたいということであって、なにもないところから、つま

り、資料を収集するところからの図書館活動ではない。東海大学による図面は既

にあり、3,400 万円という見積が既にある。この 3,400 万円を支援したいという企

業があったが、いろいろ考えて断った経緯がある」という話をした。

N 氏は「話がある程度まとまっているので、検討しやすい。東京での会議に提

案し検討する。少々額が大きいかもしれない」と言いつつも、気にしていたのは

「名取の図書館の意識はどれほどか」という点であった。この点については、図書

館を再建する意識は強い、と念押しした。

日本ユニセフ協会は女川町で「ちゃっこい絵本館」を起ち上げたり、各避難所

に児童書などを配布したりという支援活動を行っていた。「子ども支援」という枠

で動いているとのことで、図書館支援というよりは子ども支援、という部分を強

調されていて、名取市の目的と合致する。

9 月 21 日。N 氏から「本部で検討した結果、『前向きに検討しよう』との結論が

出た。ついては、さらなる詳細などについて、名取市の担当者と打合せをしたい。

連絡先などを教えて欲しい」というものだった。後日、名取市図書館 S 館長から「9

月 29 日に日本ユニセフ協会と打合せをすることになった」と連絡があり、あとは

大丈夫だろう、と思えるようになった。

日本ユニセフ協会は、名取市図書館の仮設図書室の建設資金を拠出することが

決まった。仮設の図書館を東

海大学の「どんぐりハウス」

として選定するのは、すんな

り決まったわけではない。図

書館の建設には、さまざまな

事業者の提案を比較検討して

のことであった。こうしたプ

ロセスを経て、支援の大枠が

固まった。日本ユニセフ協会

は建設のための資金を拠出、

蔵書や本棚などは現図書館のものを流用、新規に調達しなければならない備品類

はかながわ東日本大震災ボランティアステーションによる調達もほぼ確定した。

11 月 2 日に S 館長は「年内(クリスマス)を目標に、建設します」と言った。「大

丈夫ですか?」と聞いても「頑張りますので」と力強いひと言が返ってきた。あと

2 ヶ月もない、ということで不安になったが、すぐに「きっと大丈夫だろう」と

思った。

図 9 組手什の組み立て作業(上・次ページとも 2011 年 12 月)

Page 19: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

34 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 35東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

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36 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 37東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

そして私は、そろそろ自分たちは手を引く頃である、というのも同時に思っ

た。図書館の建設は既に資金拠出団体、設計者、施工業者、さまざまな団体調整を

リレーションしてくれる団体(saveMLAK)がそろっていた。次のことを考えると、

現場の作業に人手が必要かと思い、そちらの調整をしておくべきかと考えていた。

天候に恵まれたというべきだろう。11 月下旬から実際に工事が始まり、着々と

建設が進んでいった。そのころ筆者は、名取市の仮設図書館の開館準備をするた

めにボランティアを一緒にできないかと宮城大学に調整をはかっていた。南三陸

町図書館の開館準備を手伝ってもらった宮城大学の職員と継続的に情報交換をし

ており、一定の規模の作業ボランティアを学生たちに呼び掛けて集めることがで

きる、ということを聞いていた。話はまとまり、12 月 25 日に竣工した「どんぐり

子ども図書室」の什器を組み立てる作業と、本を運ぶ作業に宮城大学の学生ボラ

ンティアが参加することになった。

12 月 26 日から 28 日まで宮城県図書館からも職員が参加し、組く

手で

什じゅう

と呼ばれ

る組み立て式の書架を組み立てる作業を実施。木製のパーツを組み合わせる書架

の組み立て作業を手伝った。

年が明けて 1 月 4 日と 5 日は、子ど

も図書室開室にあたって必要な図書の

配架を行い、およそ 2 万冊の本を 2 日

間で移動し、並べ替えを行った。「どん

ぐり子ども図書室」の開館は 1 月 6 日。

直前の追い込みであった。宮城大学の

学生を始め、2 日間でのべ 70 名にの

ぼった。

1 月 6 日。いよいよ開館である。筆

者も出席させてもらった。名取市教育

長挨拶に続き、saveMLAK プロジェク

トリーダーの岡本氏による経過説明の

なかで、名取市の仮設図書館の開設に

あたった関係団体の紹介があり、宮城

県図書館も支援団体の中核として言及

された。中間支援を活動の中核に据え

た成果の一つが明らかになった瞬間と

いえる。中間支援に力点を置くことに

反対はなかったものの、もっと具体的

なこととして支援をしたいという意見

も館内には多くあった。何をしている

か分からない、といったもっともな批

判もあった。だが、県立図書館として

の支援をどのようにかたちづくるか、

あるいは、他の事業主体と異なる自分

たちの強みを生かすのはどのようなか

たちなのか、といった点を意識してい

た。館内には説明を繰り返し行い、理

解を得ようと努めたが、完全に理解が

得られたわけではないだろう。この点

は徐々に実績を積むしかないと考えて

いた。図 10 どんぐり子ども図書室への配架作業風景(4 枚とも 2012 年 1 月)

Page 21: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

38 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 39東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号図 11 名取市図書館「どんぐり子ども図書室」竣工(2011 年 12 月 24 日撮影)

Page 22: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

40 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 41東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

開館式典後の茶話会・昼食会で、今後の大きな課題として、名取市図書館の一

般向け資料の提供する場を拡大すること、新館の移転整備計画の凍結を解除し本

設の図書館を早期に整備することが話題となった。あくまでもこの「どんぐり子

ども図書室」は仮設の図書館である。

先を考えると、まだまだ名取市の図書館が完全に復旧したわけではない。次の

一手が必要だった。次の一手を探しながら 2 月になった。saveMLAK の岡本氏か

ら大きな資金援助が見込めるかもしれない、「カナダ政府が支援先を募集してい

る」という連絡があった。この情報は「どんぐり子ども図書室」の設計をした東海

大学の S 教授からであり、名取市図書館の一般室、その他の自治体でも、図書館

をつくりたいというところはないだろうか、と問合せがあったとのこと。これを

受け、いくつかの自治体に打診したが、うまく調整がつかず、名取市のプロジェ

クトを申請、これが受理され、オープンのために動き始めた。

約半年の間に、仮設図書館のための支援協力を得るまでの動きは上述のとおり

である。細かい点は書き切れないが、流れは理解いただけるだろう。その後は、名

取市が主体となって調整を進め、2013 年 1 月には「どんぐりアン・みんなの図書

室」を開室。現在は、新館移転を視野にしつつ、図書館サービスを行っている。

その後、築 50 年を超える本館は解体された。

もちろん、宮城県図書館は、直接的な支援のみではなく、間接的な支援も行っ

ている。間接支援について少し述べておこう。宮城県図書館では、直接的に個別

の市町村の図書館運営の企画支援の他に、県下の図書館を参集した連絡会議や図

書館職員を対象にした研修会を行うなどの事業も展開した。本稿ではこれを称

して、間接支援という。2011 年 7 月に開催した「宮城県公立図書館等連絡会議」

は、震災後初の連絡会議ということもあり、参加館から活発な意見交換が行われ

た。このように関係者が一同に集まる場を提供するのも県立図書館の役割であろ

う。また多くの図書館では、資料の落下に伴い資料補修の必要性があったことか

ら、本の修理についての研修会を日本図書館協会や国立国会図書館を始め関係団

体の協力を得て、4 回ほど開催した。

また、東日本大震災により被災した宮城県内の図書館などが震災から復興する

にあたって、必要な地域資料を整備するための支援を行う事業として「みやぎデ

ポジットライブラリー」を開始した。市町村図書館に通知をしたのが 2013 年 3

月だが、2012 年 10 月ごろには企画案をほぼ詰めていた。まるごと資料が流失し

た地域の図書館では、これらの地域に関する資料の整備が必要であることや、落

下による資料破損も無視できない。地域の資料を十分に収集・整理・保存するこ

とがそもそもの業務である。大きな被災のあった図書館は、震災からおよそ 1 年

半を経過し、建物や、蔵書を備え、一定規模の図書館活動を行えるようになって

宮城県図書館

【収集】◎統廃合する学校◎組織改組する機関

【再整備】◎被災した市町村図書館等◎落下により破損した資料 なども対象とする

収集した郷土資料の在庫状況を図書館向けに公表し、必要に応じて申込をするシステムを用意。市町村図書館等へは発送もしくは直接届ける。

郷土資料は、非売品や非商業出版物がおおいため、学校や行政機関の改組などで不要となった図書を収集

図 12 名取市図書館の外観(手前が「どんぐり・アンみんなの図書室」、奥が「どんぐり・子ども図書室」、左手は解体される本館、2012 年 12 月 23 日撮影)

第4節 間接支援

図 13 みやぎデポジットライブラリーの事業イメージ

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42 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 43東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

きた。この時期だからこそ、地域資料を整備し、地域の人々が利活用するために

資料をそろえていくべきであり、宮城県図書館はそのために必要な地域資料の再

整備を支援しようということで展開された。必要な資料が簡易な手続きで申し

込めるように注意し、同時に、在庫リストの作成と申込の仕組みをシステム化し、

できるだけ県図書館の業務負担にならないように配慮した。一方、大事なのは、

復興を目指す図書館の歩みにあわせることである。資料の送付も、送りっぱなし

で倉庫に眠っていることがないよう資料整理を考慮し、県図書館から直接持参し、

資料の整理も支援することに気をつけた。このような事業は、図書館が通常サー

ビスで手一杯の図書館が存在することを考慮し、おおむね復旧期から復興期にか

けて行われるべき事業であろう。

本章ではこれまで述べてきた支援事業を例に、支援事業の企画について述べて

みたい。組織として支援活動を行う場合は、必ず事業計画を作成したい。さまざ

まなリスクや課題を想定しないまま、いきあたりばったりに事業を遂行すると、

事業の体をなしていないばかりか、多くの迷惑を多くの人にかけることになりか

ねない。

事業の計画や評価をするには、少なくとも、以下の項目を詰めていかなくては

ならない。

(1) 事業計画の基本(図 14)

事業計画の基本であり、事業を語るために必要となる要素といってもいいだろ

う。5W1H(Why、What、Who、Where、 When、How)がきちんとしていなければ、

事業計画としては不完全である。

Why(なぜ)

Who(誰と)

What(何を)

Where(どの分野で)

How(どうやって)

When(いつ)

(2) 事業の評価:妥当性(図 15)

緊急度と重要度をそれぞれに軸を取り、「どれほど緊急度が高いか」「どれほど

重要な事業であるか」というものである。特に震災支援ということを考えると、

今やらなければならないほど重要であるか、という説明に合理性が求められよう。

(3) 事業の評価:効率性(図 16)

効率的な事業推進のための体制整備も必要な要素である。どんな人が、どんな

風に、事業を進める体制を整えるのか、という点に合理性が求められよう。

(4) 事業の評価:効果性(図 17)

営利事業かそうでないかに関わらず、投入したリソースに対して、きちんと成

果が見込めるか、ということは考えなくてはならない。「やりっぱなし」ではなく、

アウトカムを意識した事業計画が必要であろう。

(5) 事業の評価:自立発展性(図 18)

支援事業はいずれ受援者が自活できるような形で終息することが求められる。

そのために必要な要素として、自立発展のために必要な要素であり、受援側に伝

えられなければならない要素でもある。

重要度低 △ ×

高 ○ △

高 低

緊急度 戦略(strategy)

人材(staff)

体制(system)

投入 成果共通するミッション(shared value)

組織構造(structure)

組織風土(style)

技術(skill)

第5節 支援事業の企画

図 14 事業計画の基本要素 図 18 効率的な組織運営のための 4 つの「S」図 17 投入リソースと成果のバランス

図 15 重要度と緊急度のマトリックス 図 16 効率的な組織体制整備のための 3 つの「S」

Page 24: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

44 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 45東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

以上を踏まえ、宮城県図書館による名取市図書館への支援について分析をして

みたい。

(1) 事業計画(図 19)

5W + 1H に従って、それぞれについて具体的に記述していく。事業としては、

「地震で図書館サービスが再開できない市立図書館を看過せず、再開に向けた支

援を行う必要があり(Why)、関係する団体などと(Who)、図書館のサービス機能

を回復する支援を行う(What)、子ども図書室の建設設置に関する調整をメイン

に(Where)、2011 年中にリリース(When)するため、さまざまな支援者と打合せ

を行い、名取市へ引き合わせる(How)」とした。

(2)妥当性の分析(図 20)

宮城県図書館は、県域の市町村図書館へあらゆる支援を惜しまないという組織

のミッションがあり、人口 7 万人、蔵書 17 万冊を存分に活用できない事態を解

決するためには急ぐ必要があり、サービスの再開ができないという問題は、これ

が解決しないと他のサービス展開ができないため、重要度は高いと判断される。

(3) 効率性の分析(図 21)

宮城県図書館から市町村図書館の復旧復興へは最大限投資する。職員間の事務

分担バランスなど配慮し、主担当 1 名と副担当 1 名を充てた。ただ、実際のとこ

ろ負担が大きく、特定職員に負荷がかかっていたのは否めない。

即取りかかり、2011年内中に建設支援者と打ち合わせを行い、名取市図書館と引き合わせる

子ども図書室の建設設置に関する調整

図書館のサービス機能を回復する支援を行う

関係する団体などと

Why WhoWhat

Where HowWhen

地震で図書館サービスが再開できない市立図書館を看過ごせず再開に向けて支援を行う必要がある

(4) 効果性の分析(図 22)

子ども図書室の建設が実現したことに対する投入資源としては、適切と考えら

れる。これには、saveMLAK やかながわ東日本大震災ボランティアステーション

など宮城県図書館以外の事業主体へのリレーションがうまく行われていたことも

大きな要因である。ただし、子ども図書室のみでは、完全に名取市図書館のサー

ビスが回復しているわけではないから、次の策を講じる必要があることに留意し

なければならない。

重要度

名取市の子ども図書室建設

低 △ ×

高 △

高 低

緊急度 戦略(strategy)

人材(staff)

体制(system)

市町村図書館の復旧復興へ最大限投資。事務分担バランスなど配慮。

企画協力班6名(市町村支援主担当1名、副担当1名)

◎資金提供団体への アプローチ◎建設資金は寄付◎saveMLAKへのリレー◎事業コーディネート

☆図書館の蔵書を活用できる場所が確保できた。☆児童書を中心に2万冊開架できる場所ができた。子どもの読書をとりまく環境を整備できた。▲一般利用者むけのサービスは完全ではない。

宮城県図書館による調査

子ども図書室設置(2012年1月6日開館)

図 19 事業計画の基本要素への当て込み 図 20 重要度と緊急度のマトリックスへの当て込み 図 21 効率的な組織体制整備のための 3 つの「S」への当て込み

図 22 投入リソースと成果のバランス への当て込み

Page 25: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

46 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 47東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

(5) 自立発展性の分析(図 23)

名取市では、すでに自分たちでなすべきことを描き、ミッションやビジョンを

職員が共有していた。震災後、図書館員の定数は減っているが、館長や司書の連

携がしっかりしているため、組織風土の点についてはあまり心配する必要はな

かった。また、技術も特段移転するべきものではなく、あくまで支援団体へのリ

レーションが求められていた。この項については、宮城県図書館のコミット度合

いは少ない。

支援事業の企画とその評価を行うことは、次なる事業への企画につながってい

く。さまざまな人や団体とつながりが増していくにつれ、より幅の広い支援事業

が可能になってくる。特に、図書館に関係する団体以外との積極的な連携が必要

である、と私は考えている。

名取市図書館の体制◎ミッション◎組織構造◎組織風土◎技  術

→ 建物があれば、基本的に図書館サービスを自ら展開することができる。  → あらたにサービスの場を必要とする場合の交渉などを自らすることができる。   ・ 打合せのプロセスを共有する   ・ 自分たちでできることは自分たちで行う

→ ミッションはあらかじめ名取市側で策定→ 館長と司書の連携がある。震災後に定数は減っている。→ 新たに醸成する必要がなかった。→ 司書はキャリア十分。

共通するミッション(shared value)

組織構造(structure)

組織風土(style)

技術(skill)

震災から 3 年を目前に、津波によって失われた地区の復興をどう進めていくか、

そして、図書館を含む社会教育のあり方はどう位置づけられるべきか、という課

題に日々直面する。

津波によって何もかもが失われた地域では、復興へ歩みを進める中で、図書館

の位置づけが問われている。一方で、こう思うこともある――そもそも問われて

いないのかもしれない、と。

終章となる本章では、前章で振り返った具体的な支援の取り組みをもとに、都

道府県立図書館の役割の再検討や図書館支援のありようを整理していく。

第 3 章では、宮城県図書館が直接的に南三陸町図書館、名取市図書館へ震災か

らの復旧支援の様子を中心に概述してきた。

これまでにはあまり語られてこなかった「図書館を支援する」というあり方の一

端を示せたのではないだろうか。少なくとも、本を寄贈するとか、ボランティアで

作業を手伝う、という部分にとどまらない支援が求められていたのである。その

点をフォローするのが司書であり、県立図書館の本来的役割であると考えている。

さまざまな機会を捉え、私は震災後の市町村図書館の取り組みと都道府県立図

書館の役割について述べてきた。

被災地の県立図書館として、市町村図書館あるいは図書室の運営を支援する

ことにできるだけ重点を置くことはもちろん、被災者への直接的な支援(例えば、

避難所へ本を提供する、おはなし会を行うなどといったサービス)は行っていな

い。誤解のないようにしていただきたいが、このような活動を軽視したのではな

い。宮城県図書館は、図書館活動そのものを直接的に行うのではなく、図書館や

図書館活動をしている個人・団体と協力し支援することで、被災者を間接的に支

援できると強く意識したのである。図書館の復旧・復興のモデルケースを確立し、

来るべき災害に備えるということも視野に入れ、中間組織として機能する都道府

県立図書館を再確認したい(図 24)。

図 23 効率的な組織運営のための 4 つの「S」への当て込み

第1節 都道府県立図書館の役割

図書館を活用する復興を目指して第4章

Page 26: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

48 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 49東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

県立図書館は、県内の図書館などへの協力を日々業務として行っている。これ

は間接的な図書館サービスともいわれ、外からは見えにくい。東日本大震災以降、

県立図書館の機能や役割がよりはっきりしてきたのではないだろうか。

本章が、震災を経験した図書館に対し、中間組織がどれほど必要か、そしてその

役割を担うことが県立図書館には可能であることを示す一つの証左となるだろう。

災害が発生した際、情報が錯綜することは今回の震災で明らかになったとおり

である。復興に向けた初動体制づくりに向けた取り組みが重要であることも明ら

かになった。非常時の初動対応を速やかに立ち上げるためには、事前に関係者同

士が互いの情報を共有し、ある程度の役割を決めておくことが鍵となる。「災害に

備えて互いに顔の見える関係をつくっておく」という意識は非常に重要で、各地

のネットワークが生きてくる。多くは都道府県の範域を単位にしておきたい。ま

た、普段は福祉や教育などに取り組んでいる団体と顔をつないでおき、災害時に

連携がとれるような関係を築くのもいいだろう。

震災後、多くの支援活動が宮城県を始め被災地で展開された。図書館をめぐる

支援活動も枚挙にいとまがない。これらの支援活動を一つひとつ事例として取り

上げ検証するには紙幅が足りない。

ここでは、図書館をとりまく支援のあり方を検討するために、さまざまな支援

事業をどう整理するか試みたい。

宮城県図書館

中間組織として機能市町村

図書館等

◎支援調整◎ニーズ把握◎支援情報提供◎各種支援 (マッチングを重視)

◎ニーズの提供◎各種照会への応答◎支援情報の提供 (人的・物的・金銭的)

◎市町村図書館の情報集約◎各種支援情報の集約・提供◎連絡会議・研修会等◎震災関係資料の収集・書籍情報の提供

支援関係団体等

まず支援対象別に、図書館への支援、図書館活動への支援、これらを包括する

支援に整理した。3 番目の「これらを包括する支援」というのはいわば中間支援に

あたり、図書館あるいは図書館活動への支援を行いたい主体に対する支援を指す。

さらに支援の内容的に、図書館への支援、あるいは図書館活動への支援は類型

化すると、本や資料の寄贈に代表される物的支援と図書館の運営や行事など、な

んらかの活動そのものを直接的に、あるいは間接的に実施するソフト支援に大別

される。ソフト支援は、人的支援・物的支援から構成されると言い換えてもいい

だろう(図 25)。

支援対象が図書館であれ、図書館活動であれ、本の寄贈件数は相当数に上る。

本の寄贈以外の支援もあり、その内容は多岐にわたるが、復旧から復興にかけて

設置者が自ら図書館を運営できる、あるいは自ら図書館活動を行えるためにも、

むしろ重要な支援であるといえる。

図 25 の表中にある中間支援という位置づけは、あまり表出されることがなかっ

たが、今回の震災でよく耳にするようになった用語である。従前から、中間支援

団体は国際 NGO 活動、地域における NPO 活動やまちづくり活動で、各種主体

間における情報提供、コーディネート、人材育成など重要な役割を果たしていた。

今回の震災においても、直接的な事業を行うのではなく、実際に支援をしたい団

体と受援側の間で調整を行う役割が欲せられ、図書館関係への支援においてもそ

の必要があった。中間支援は一定の地域や業界を対象として成立可能であり、県

第2節 図書館支援の整理に向けて

図 24 中間組織として機能する都道府県立図書館のモデル図

図 25 支援対象・支援内容別事業類例

図書館への支援 図書館活動への支援これらを包括する支援

(中間支援)

物的支援

・ 図書、書架、建物、移動図書館車などの寄付

・ 運営に必要なPC、事務機器等の寄付

・ 図書、簡易書架、異動運搬用車両などの寄付

――

ソフト支援(人的・金銭的)

・ 図書購入費用の寄付・ 行事などの講師、運営

費用の支援・ 図書館運営のための

助言

・ 避難所における読み聞かせ活動

・ 仮設団地への配本・ 集会所での図書を用い

た行事やイベント・ 絵本・紙芝居の作製

・ 人的資源の集約、仲介・ 金銭的資源の仲介・ 各種情報の集約

Page 27: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

50 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 51東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

域においては県立図書館がその役割を負うことが可能である。県域を越えた場合

の調整をどのように行うか、といった機能が図書館関係の支援においては、発災

直後は特に機能しなかった。それぞれがそれぞれに直接的に活動を組み立て、実

施していたからであるが、この時期にしっかり図書館を支える基盤を構築してお

きたかった。

さらに、時間軸という軸も考慮する必要があろう。

一般に、災害から復興を達成するための段階として、「復旧期」「復興期」「発展

期」を設定することが多い(図 26)。宮城県の震災復興計画では、それぞれ 3 年、4

年、3 年を充てており、10 年間の復興計画としている。市町村の復興計画もこれ

に準じているものが多く、それぞれの期に適切な支援事業が組み立てられなくて

はならない。

3 年目を迎える現在、新たな課題として、各種支援団体による活動の終息をど

う意識するか、という点がある。支援活動は始めるよりも良いかたちで終わらせ

るのが難しく、地域にとってより良い状況で終えるための支援が必要と思われる。

復興期から発展期にかけての支援には、このような支援も存在するのだ。

また、活動の終息とともに団体自体が解散する場合もある。これは、支援活動

に関する膨大な記録が散逸しかねないことにつながる可能性を内包する。本稿で

は、震災の記録を残す活動についての考察はしていないが、図書館の重要な役割

の一つであることは間違いなく、活動団体の記録の散逸というのは、震災の記憶

を語り継ぐという点で、大きな検討課題として上げられよう。

復旧期平成25年度まで3か年

復興期平成29年度まで4か年

発展期平成32年度まで3か年

災害復興に限らず、ビジョンやミッションを共有することは大事なことである。

ビジョンやミッションを共有しないまま進行するアクション、あるいはビジョ

ンやミッションを意識しないアクションは、その団体の事業として相応しくない

ことも多く、いずれ綻びが生じてくる。

少々長いが、鳥取県知事(当時)の片山善博氏が災害復興とミッションがいか

に大切かということを訴えていることを紹介したい。

今日は、知事として神戸のみなさんに震災・災害のことをお話しする最後の

機会ですので、災害復興を考えるうえで最も大事だと思っている「災害復興の

ミッションとは何か」ということについて、みなさんと一緒に考えてみたいと

思っています。といいますのは、私は県庁職員のみなさんに、常に「県政のミッ

ションを忘れるな。ミッションを再認識しよう」と問いかけてきました。本来、

世の中にはミッションがあるはずなのに、それを忘れてしまったり、誤った

ミッションをもっていたりすることが多く、そのために失敗したり、混乱した

り、ズレたりすることがよくあります。もちろん、これは企業も同様ですが、特

に行政の場合に多いのだろうと思います。(中略)

さて、みなさんはいかがでしょうか。組織に属している方もいない方も含め

て、自分のミッションはなんだろうかと問いかけた時、さっと答えることがで

きますか。

(中略)私は、図書館には生涯学習の拠点としての役割もありますが、それだ

けではないと思っています。むしろ、それは図書館の役割の一部であって、本

当は個人の自立を支える知的拠点としての役割が図書館本来の役割であるべき

だと考えています。最近「企業支援」を行う図書館がボツボツ出始め、それがあ

たかも図書館が特別のサービスを始めたように喧伝されることが多いのですが、

もともと図書館の業務の一環ないし業務そのものだと言っても過言ではありま

せん。企業支援とは、個人の経済面での自立を支える知的サービスにほかなら

ないからです。アメリカの鉄鋼王カーネギーの成功物語は図書館での勉強から

始まったというのは有名な話で、後年彼が全米のみならず出身地のスコットラ

ンドにまで図書館を寄贈したのも、彼の図書館に対する感謝の念と、自分の後

進を育てる役割を図書館に期待したからにほかなりません。図 26 宮城県震災復興計画における期間設定

第3節 災害復興のミッション

Page 28: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

52 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 53東日本大震災と図書館 ─図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

病気で気が弱くなった人に対し、同じような病に苦しみ、しかし、その病を

克服し、あるいは克服はできなかったけれども心の平安を得た人たちの手記を

提供することによって、その人が生きていく力を取り戻すことだって大いにあ

りうることです。これは心の自立を支えることにつながります。

というようなことで、図書館の役割が個人の自立支援だと多くの人が認識す

るようになれば、図書館に対する世間や行政関係者の見る目も評価も大きく

違ってくるはずです。逆に、ミッションがあやふやだったり、ズレていたりす

ると、本来大切な機能や施策であるにも関わらず、世間の力強い支援を受けら

れないということをよく認識しておかなければなりません。(中略)

このようにミッションは、とても大事であるにもかかわらず、私たちは、普

段それを余り考えていないのではないでしょうか。災害復興について、いろい

ろな議論やアプローチの仕方があっていいし、アプローチの仕方は同じでも考

え方は違うということもありうることで、それはそれでいいと思います。しか

し、往々にして議論が混乱・拡散したりズレたりすることが少なくないのは、

やはり関係者が災害復興のミッションを共有していないからではないか、と最

近つくづく思います。(中略)

では、ミッションとはなにか。それはひと言で言えば「使命」「真の役割」の

ことですが、もっと具体的にいえば、「だれのために、何の目的で、その仕事や

業務があるのか」ということだと思います。ですから、災害復興のミッション

を考える場合は、「災害復興は、いったいだれのために、何の目的で、行うのか」

ということになります。このことをきちんと押さえて、これを共通認識にして

おけば、後の議論はかなり整理しやすいはずですし、逆に、「だれのために、何

の目的で」という部分が明確でなかったり混乱している場合は、議論もなかな

か収束しないのではないかと思います。(★ 6)

図書館も、図書館を支援する団体も、中期計画や行動計画において、自組織の

ビジョンやミッションを意識しておく必要がある。

このことは、図書館だけが意識するのでは不足している。図書館は自治体の一

部の機能でもあるから、その自治体の復興過程の中でどのように図書館が位置づ

けられているか、が重要な点である。

それぞれの市町村が策定した復興計画の中で、図書館の位置付けは、触れられ

ていないか、抽象的な記述にとどまっている。図書館はこの震災における非常時、

被災地にあっても「コミュニティの中核」として、人々が集う場をつくってきた。

図書館は、本来的にその地域の「情報の拠点」となるべきものである。

復旧期から復興期へ段階を経る中で、地域のために、図書館は地域住民(復興

の主体)をサポートすることができるはずだ。課題解決支援を担う図書館の役割

を発揮すべきである。このことは、被災地以外の図書館でも十分に可能である。

震災前に図書館が暮らしに根付いていた地域では、図書館の復旧を望む声が

上がり、そうでない地域では声が上がっていない。社会的に図書館の役割が認知

されていない、ということは事実として捉え、これを改善するよう取り組みたい。

復興は住民が震災と向きあい、人と人とがつながり、さまざまな団体と有機的な

結びつきを得てコミュニティを形成していく過程にあるといえる。図書館には、

復興期に発揮できる重要な機能を備えているのだ。これを積極的に訴え、自治体

の中で、きちんと位置づけていく必要がある。

本稿では、震災と図書館について、宮城県図書館の取り組みを事例に、支援の

あり方を考えてきた。また「図書館を支援する」ということがどのようなプロセ

スを経て行われていたのかについて、復旧期の活動を中心に振り返り、考察した。

これにより、図書館を支援する事業のあり方の整理がされた。さらに、都道府県

立図書館の役割がより一層明確になった。

本来ならば、図書館の大きな役割の一つである資料の保存についても触れるべ

きだったが、稿を改めることにする。

東日本大震災から 3 年を迎えようとしているいま、改めて、図書館を復興に活

かす取り組みを積極的に行っていきたい。これまで支えてくれた皆様に感謝申し

上げ、これからの活動にも、多くのご支援をお願いしたい。

第4節 おわりに

Page 29: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

54 東日本大震災と図書館 ─ 図書館を支援するかたち  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

★1 すでに携帯電話各社は通信制限を行っており、回線がスムースにつながったのはイー・モバ

イル社であった。★ 2 東日本大震災の地震被害等状況及び避難状況について http://www.pref.miyagi.jp/site/ej-

earthquake/km-higaizyoukyou.html [最終アクセス:2014 年 1 月 10 日]★3 東日本大震災に伴う公立学校等の被害状況等について(調査継続中) http://www.pref.miyagi.

jp/uploaded/attachment/235955.pdf [PDF] [最終アクセス:2014 年 1 月 10 日]★4 熊谷慎一郎「東日本大震災からの図書館の復旧・復興支援 宮城県図書館の役割」情報管理

Vol. 54, No. 12 (2012) 797-807★5 片山善博[述] 学校図書館と知の地域づくり[全国教科用図書卸協同組合][2011]★6 片山善博、津久井進 (2007)災害復興とそのミッション:復興と憲法 pp.11-14

[参考資料]

以下は、2014 年 1 月 10 日現在、宮城県図書館の職員が著者として各種報告を発表した図書・雑

誌記事の一覧である。3 月までに本稿を含め 2 本程度の記事が掲載される予定である。

熊谷慎一郎「東日本大震災からの図書館の復旧・復興支援 宮城県図書館の役割」情報管理 Vol.

54, No. 12, (2012)797-807

熊谷慎一郎「宮城県内市町村図書館等に見る東日本大震災からの復興の現状」 国立国会図書館月

報 (617)2012.8. 11-14

熊谷慎一郎「図書館の復旧と復興のための支援と受援:宮城県図書館の取り組みを通して」 図書

館界 / 日本図書館研究会 [編] 64(2)=365:2012.7. 89-93

熊谷慎一郎、宮川陽子、松岡要、他 . 第 13 回図書館総合展 創業 97 周年記念フォーラム「図書館の

ための事業継続計画(BCP)とは何か ?:東日本大震災を踏まえて」 Lisn : Library & information

science news / キハラ株式会社マーケティング部編(151)2012. 春 . 1-23

熊谷慎一郎「図書館の役割を問い直す:東日本大震災の経験から」日本生涯教育学会年報 / 日本

生涯教育学会年報編集委員会 編(33)2012. 157-168

熊谷慎一郎「東日本大震災からの復旧・復興と宮城県図書館の取組み」情報の科学と技術 / 情報

科学技術協会 [編] 62(9)2012. 385-390

田中亮 宮城県図書館 「東日本大震災文庫」について 日本古書通信 / 日本古書通信社 [編]77

(6)=995:2012.6. 2-4

和賀修治「安全・安心な」図書館を目指して:防災の取組み 會報 / 宮城県消防設備協会 [編]

35:2013.3. 16-18

特 集 嶋田綾子

図書館で学ぶ防災・災害

Page 30: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

56 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 57図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

岩手県立図書館では東日本大震災に関する資料を収集し、館内に専用書架を設

け「震災関連資料コーナー」として利用に供している。収集資料は図書、雑誌、新

聞、臨時に出された広報、災害対策本部の情報といった行政資料、復興計画など

の非売資料、避難所だより、ボランティアニュース、イベントのチラシの他、各地

における震災報道の様子を知るために、震災後発行された地方新聞(2011年 3月

~ 5月までの 44紙)を収集している。

なお、図書館サイト内に「東日本大震災情報ポータル」を設け、イベント案内、

リンク集、新着資料情報の提供などを行っており、ウェブサイトの OPACでは

「テーマ別検索」として、東日本大震災および地震災害に関する 14のテーマで所

蔵資料を検索が可能である。

その他、地元紙の震災関連記事索引については、発災以来継続的に収集してい

る(採録紙:岩手日報、岩手日日新聞、盛岡タイムス、復興釜石新聞、東海新報)。

2014年 1月からは、同コーナーの資料を国立国会図書館東日本大震災アーカイ

ブ「ひなぎく」に情報として提供している。

震災関連資料コーナー岩手県立図書館(岩手県盛岡市)

震災関連資料コーナー 詳細データ

●開始時期

2011年10月21日(プレオープン)

2012年4月1日(本オープン)

●収集点数(2014年1月4日現在)

図書…2,545冊 雑誌…843タイトル(6,157冊) 

一枚もの…8,960点(震災関連のポスター、チラシなど)

●運用体制

1. 収集の呼び掛け

◎館内および県内図書館でのポスター掲出とチラシ配布 、ウェブ(ホームページ、Twitter公

式アカウント、メールマガジン)での呼び掛け◎イベントでのチラシ配布 、出版社などの資

料刊行元への寄贈依頼(電話、メール、直接訪問) ◎報道機関や公的機関に対しては年に2度、

震災関連資料の提供依頼文書を発送 ◎県内市町村役場や社会福祉協議会などを直接訪問

2. 館内、館外での提供方法

館内に専用書架を設置

図書館サイトで公開

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

市販の図書や雑誌の他に震災関連のチラシやポスターも収集対象としており、発災後約3 ヶ

月分の各種雑誌および全国地方紙、被災当時の航空写真なども所蔵している。

2. 収集にあたって心掛けていること

震災関連資料については、可能な限り3部収集する

●収集資料の活用事例

*下記の映画会・写真展・講演会で、震災関連資料の展示を一緒に行った(直近の10件のみを抜粋)

展 示 郷土教育資料に描かれた岩手のことば——沿岸被災地を中心に—— 2013年12年28日〜2014月3月24日

展 示 「1097歩」〜3年目の市町村〜 2013年12年28日〜2014年3月24日

展 示 わたしたちの使命〜赤十字の事業〜 2013年10月1日〜12月26日

企画展 企画展「津波を伝える記録と文学」 2013年8月1日〜9月23日

講演会 読み聞かせと講演会「東本大震災を伝える魂——手づくり絵本の活用を通して——」 2013年8月10日

展 示 写真展「3・11以前——美しい東北を永遠に残そう——」 2013年8月1日〜9月23日

映画会 夏の特別映画会「3・11メモリアルフィルム ひとつ」 2013年8月3日

展 示 特別展示「震災復興ポスター展」 2013年6月1日〜7月30日

講演会 復興釜石新聞編集長が語る東日本大震災〜災害時における地域紙の役割〜 2013年4月20日

展 示 報道写真展示「記憶忘れてはいけないこと」 2013年4月1日〜5月30日

岩手県立図書館 岩手県盛岡市盛岡駅西通 1-7-1

https://www.library.pref.iwate.jp/Tel:019-606-1730 Fax:019-606-1731

震災関連資料コーナー 提供:岩手県立図書館

Page 31: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

58 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 59図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東松島市図書館の「ICT地域の絆保存プロジェクト[東日本大震災を語り継

ぐ]」 は、図書館振興財団の助成金約 760万円を受けて、2012年 6月から 2013年

3月まで行われたプロジェクトである。プロジェクトの活動内容は、幅広く震災

に関連する資料を収集する他、「語り手募集」を市民に呼び掛けて震災体験の取材

協力を募ると同時に、 同図書館のスタッフが被災地に赴き、仮設住宅などで暮ら

す被災体験者にインタビューした動画や音声、テキストを発信している。インタ

ビューの収録数は約 110名で、体験談投稿者は 33名である(『平成 24年度(2012

年度)事業実施概要』より)。体験談は PDF 化・映像化(承諾者のみ撮影)し、 図

書館サイトではダイジェスト版を、 館内では iPadで完全版を公開している。

「ICT地域の絆保存プロジェクト」は、震災の記憶を風化させることなく、一日

でも早く被災された方が普段の生活を取り戻すこと、防災教育やまちづくりに役

立ててもらうこと、今後の自然災害から生活を守ることなどを目的にしており、

財団からの助成が終了した今も続いている。

ICT地域の絆保存プロジェクト[東日本大震災を語り継ぐ]

東松島市図書館(宮城県東松島市)

ICT地域の絆保存プロジェクト[東日本大震災を語り継ぐ] 詳細データ

●開始時期

2012年6月(本格的に活動を開始)

●収集点数

震災関連図書…1,000 点 (「学校たより」などの月毎発行資料は年度毎にまとめ 、1 点とし

て収集。 これをきっかけに定期的に収集できるようになった)

伝統芸能などの映像(大曲浜獅子舞・東名塩田カルタ・統合する学校関係資料〈エジプトダン

ス・校歌など〉など…10 点

震災関連新聞記事の見出しなどの目録データ(整理済み)…3,000 件以上

地元紙・中央紙・他県から支援を得て収集した新聞…17 紙

震災体験談…市民約 110 名、体験談投稿者 …33 名

震災関連…写真 4,000 枚以上、動画 3 点 (本市の秘書広報班、市民が提供したもの。整理で

き次第公開)

 

●運用体制

1. 収集方法

図書館サイト、新聞、TV、市報などによる市民への呼び掛け

2. 館内、館外での提供方法

館内に特設コーナーを設置(紙媒体資料。体験談の動画などは、館内の視聴用タブレットで)

図書館サイトで公開(震災時の写真や体験談動画、新聞記事の見出し検索などが可能)

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

市民の震災体験談や写真を収集する他、震災の記録を残すワークショップなども開催している。

2. 収集にあたって心掛けていること

避難所・仮設住宅の住民に向けたミニコミ紙やチラシなどの他、時間と共に風化する記憶(生

の資料) を「消えていく資料」と捉え、積極的に早期に収集・整理・保存活動に取り組んでいる。

●活用事例

震災関連の講演会にて資料のパネル展示などを行い、来場者への意識啓発・推進を行っている。

県外では、震災の体験談を使った防災の意識啓発や支援の理解や促進を狙いとした上映会を開

催している。

東松島市図書館 宮城県東松島市矢本字大溜 1-1

http://www.lib-city-hm.jp/Tel:0225-82-1120 Fax:0225-82-1121

「3.11震災の記憶」コーナー 提供:東松島市図書館 みんなで印そう!津波の高さMAP 提供:東松島市図書館

Page 32: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

60 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 61図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災を受けて、 2012年の 4月 28日に開設した「東日本大震災福島県

復興ライブラリー」は、 原発事故や放射線除染の関連資料の収集に力を入れてい

る他、地震、津波、震災体験記、復興、防災などのテーマ別の資料を配置し、具体

的には 雑誌、記録集、写真集、映像、画像、広報誌、フリーペーパー、手記、文集、

ルポ、調査報告書、計画書、 説明会、相談会での配布資料など、東日本大震災に関

連する資料を幅広く収集している。

このライブラリーで特徴的なのが、職員が作成するライブラリーのブックガイ

ドだ。コレクションする震災資料を職員が読んで、その概要に解題を添えて紹介

するもので、同館ではこのブックガイドと資料を並べて展示するコーナーも設

けており、よく利用されている。ブックガイドの発行は 2013年 2月から開始さ

れ、不定期ながら 2014年 1月までに 7号が発行されている。大震災から 3年、そ

の関連資料を収集するだけでも膨大な作業でありながら、同館のこのような試み

は、 震災復興にかける職員の切実な思いを感じることができる。

なお同館の司書、鈴木史穂さんが作成したポスター「The Librarians of

Fukushima」は、震災直後から復興に向かっていく様子を時間軸で捉え、未曾有の

震災に直面した被災地で活動する図書館員たちのさまざまな試行を似顔絵と一緒

に紹介したもので、2013年世界図書館情報会議(WLIC)・国際図書館連盟(IFLA)

年次大会において、ベストポスター賞を受賞した。

東日本大震災福島県復興ライブラリー福島県立図書館(福島県福島市)

東日本大震災福島県復興ライブラリー 詳細データ

●開始時期

2012年4月28日

●収集点数

5,539タイトル(2013年9月11日現在)

 

●運用体制

1. 収集方法

寄贈についてのチラシ・ポスターを館内に掲示する他、図書館サイトへの掲載、市町村図書

館への配布。

収集するものが特定する場合は、発行元へ直接依頼

2. 館内、館外での提供方法

特設の書架を設置

図書館サイトで公開(年に2回作成している同ライブラリーの 「資料一覧」など)

●コレクションのポイント

震災・復興関連資料の中でも、特に福島県に関係する資料については網羅的な収集を目指して

いる。福島第一原発事故を経験している図書館の責務として、原発問題、放射線、エネルギー問

題の資料も収集対象としているのが特徴である。

●活用事例

他の図書館での震災関連展示に活用してもらうよう、「出張展示」の制度がある

福島県立図書館 福島県福島市森合字西養山 1

http://www.library.fks.ed.jp/Tel:024-535-3218 Fax:024-536-4787

東日本大震災福島県復興ライブラリー 提供:福島県立図書館

Page 33: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

62 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 63図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災での被災から 2ヶ月後の 2011年 5月、同館では図書館の再開に

合わせて、震災関連の資料を展示するコーナーを開設している。開設当初は「東

日本大震災関連資料」という名前だったが、2012年 2月にリニューアルして「3.11

震災文庫」 になった。

収集対象は CDや DVDなど視聴覚資料を含む記録集や写真集の他、団体・個

人の手記や体験記、広報誌、ミニコミ、パンフ、チラシ、避難所や仮設住宅に配布

された資料や壁新聞、イベント、講演会、講座などで使用されたポスターや配布

資料など、震災に関するあらゆるものが対象となっており、震災の記録を残すと

ともに、資料を収集・公開することで、復興や生活再建を支援する情報提供を行っ

ている。

なお、仙台市民図書館が入る複合文化施設 「せんだいメディアテーク」 の管理

運営業務は、別組織の公益財団法人仙台市市民文化事業団が行っている。図書館

機能は独自に管理しているが、所蔵する図書や映像音響ライブラリーの中には、

施設内の事業で制作されたもの(CDや DVDを含む)、目や耳が不自由な方向け

のサービスや学校教育・社会教育向けの教材ライブラリーも含まれている。

また、例年 3月初めに行う図書館とメディアテークが共催で企画するイベント

「としょかん・メディアテークフェスティバル」では、メディアテーク1階のオー

プンスクエアにブースを設け、3.11震災文庫から一部資料の展示を行っている。

3.11震災文庫仙台市民図書館(宮城県仙台市)

3.11震災文庫 詳細データ

●開始時期

2011年5月(トピックコーナーに展示・貸出)

2011年6月23日(常設コーナー設置)

●収集点数

2,823点(2012年度末時点)

 

●運用体制

1. 収集の方法

図書館サイト・チラシによる寄贈の依頼

2. 館内、館外での提供方法

館内に常設コーナー「3.11震災文庫」を設置

図書館サイトで公開(「3.11震災文庫」のバナーを設け、震災関連資料検索から「書誌一覧」

を表示可能)

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

民間の広報誌・自主出版物も収集対象としている。被災地域住宅地図、被災地の震災前後の

航空写真も収集。

2. 収集にあたって心掛けていること

関連本は漏れなく収集するようにしている

●活用事例

「としょかん・メディアテークフェスティバル」での一部資料の展示など

仙台市民図書館 宮城県仙台市青葉区春日町 2-1(せんだいメディアテーク内)

https://lib-www.smt.city.sendai.jp/Tel:022-261-1585 Fax:022-213-3524 E-mail:[email protected]

3.11震災文庫 提供:仙台市民図書館

関連情報としょかん・メディアテークフェスティバルhttp://www.smt.jp/toplus/?cat=1

Page 34: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

64 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 65図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

福島大学附属図書館は、2011年 4月に同大学が設置した「うつくしまふくしま

未来支援センター」と協働して、約 1,400点の東日本大震災の関連資料を収集し、

2012年 4月より 「震災関連資料コーナー」を館内に設置して資料を提供している。

なおこのコーナーは、震災発生後、間もない 2011年 5月 25日に約 100冊の特設

コーナー「今、知りたいこと」として 開始された展示のリニューアルである。

収集内容は市販されている図書の他に、震災関係の研究における成果論考、調

査研究資料、被災地への学生ボランティアの派遣といった活動記録などであり、

知の拠点である大学が震災に対してどのような活動をしたのかを後世に伝える資

料群ともなっている。

なお、収集した所属教職員の成果物資料のうち、許諾を得たものは同大学の機

関リポジトリ 「FUKURO」で電子公開している。

震災関連資料コーナー福島大学附属図書館 (福島県福島市)

震災関連資料コーナー 詳細コーナー

●開始時期

2012年4月

●収集点数

約3,100点(2014年1月現在)

 

●運用体制

1. 収集方法

図書館サイトで呼び掛け

館報による周知

所属教職員には成果物(被災時の記録、出版物、報告書など)の寄贈を文書で依頼

うつくしまふくしま未来支援センターに継続して購入経費措置、出版物などの協力を依頼

2. 館内、館外での提供方法

開架閲覧室1階にコーナーを配置(学内外の利用者が自由に閲覧できる状態となっている)

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

出版された資料を中心に、所属教員のプロジェクト報告書、教員が関わった団体の記録など

を収集する。

2. 収集にあたって心掛けていること

同学での学習教育活動、福島で生活していく方々が活用できるよう、震災、原発、ボランティ

アのテーマに留まらず、郷土、教育、科学、防災、産業などさまざまなテーマの資料群となる

よう心掛けている。今後は被災時の記録、同大学の学生が関わった活動記録なども充実して

いく予定。

福島大学附属図書館 福島県福島市金谷川1

http://www.lib.fukushima-u.ac.jp/Tel:024-548-8083 Fax:024-548-2377 E-mail:[email protected]

震災関連資料コーナー 提供:福島大学附属図書館

Page 35: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

66 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 67図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災で被災したゆうき図書館は、震災直後から館内の被災状況をウェ

ブアルバムサービス Picasaで公開し、日々復旧していく様子を記録した。写真は

震災当日の 2011年 3月 11日から 4月 9日まで、ほぼ毎日の様子を写し出し、大

量の図書が書架から崩れ落ちて足の踏み場のない様子や、それらが図書館員の手

で書架に戻されていく様子の他、館の入り口に貼り出された開館予定日や臨時休

館を知らせる掲示などを伝えている。本アルバムは、現在も公開されている。

同館は、被災による復旧作業で約 3週間、閉館を余儀なくされた。そのとき、職

員たちは利用者に公共図書館サービス(人・場所・資料など)を提供することが

できず、申し訳ない思いをしたのだという。そうしたなか、せめてもの思いで、被

災と復旧作業の状況を利用者に公開する責任を感じ、撮影し、収集したのがこの

取り組みだったが、開館した際には、アルバムを見ていた人から好意的な意見が

多く寄せられたという。

なお同館では、被災により仮設暮らしを経験した東北の図書館員を招き、被災

時に読んで心に残った本を選定してもらい棚の展示を行うなど、被災後、毎年 3

月になると、東日本大震災にまつわる企画を行っている。

写真アルバムによる被災・復旧状況の発信ゆうき図書館(茨城県結城市)

ゆうき図書館の取り組みに関するデータ

●実施時期

2011年3月11日〜4月9日

●収集点数

写真…127点

 

●館内、館外での提供方法

  図書館サイトでのみ提供

●活用事例

被災の翌月(2011年4月)の月例で行う企画展示(イベント棚)を「災害と対策」に変更し、タ

イトルバックの写真に被災状況の写真を採用。耐震や液状化現象対策、サバイバルブックや応

急手当、放射線や原子力発電など91点の資料を展示した。

ゆうき図書館 茨城県結城市国府町 1-1-1

http://lib-yuki.city.yuki.lg.jp/Tel:0296-34-0150 Fax:0296-34-0120 E-mail:[email protected]

ゆうき図書館の復旧状況(書架を下げながらの排架) 提供:ゆうき図書館

ゆうき図書館の被害状況 (書架からの資料崩落)提供:ゆうき図書館 

資料・写真の活用事例(「災害と対策」展示) 提供:ゆうき図書館 

ゆうき図書館の被害状況 (新川和江コレクションガラスケースの崩壊) 提供:ゆうき図書館 

参考情報ゆうき図書館のイベント棚 平成 23年 4月 災害と対策(ブクログ)http://booklog.jp/users/lib-yuki_event?display=front&category_id=1533141&status=0&rank=0&sort=sort_desc

Page 36: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

68 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 69図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

現代の防災・災害対策を後世に伝え残すこと̶̶東北学院大学図書館は、被災

地における大学の使命をこのように捉え、幼稚園から大学院まで、学校法人東北

学院が設置する全ての学校内で作成、生産された東日本大震災に関わる資料を、

教職員などに呼び掛けて収集している。収集した資料は永久保存し、広く社会に

提供するために電子化し、学校法人東北学院デジタルアーカイブ「東日本大震災

の記録 Remembering 3.11」として公開している。収集対象期間は 2011年 3月 11

日から 2012年 3月 11日までの 1年間で、アーカイブの内容は手書きメモを含む

資料や復旧作業記録、会議記録、各部署の連絡メールの本文など、公式な報告書

などではカバーできない「生きた情報」も含む。またテキストの他に写真、動画も

含まれ、利用者はその資料をキーワード検索や時系列で検索することができる。

なお同学院はデジタルアーカイブを構築するにあたり、学校法人東北学院 東日

本大震災アーカイブプロジェクト委員会を設置し、依頼・収集の作業にひと工夫

している。提供を呼び掛ける資料の内容やキーワード、テーマを依頼先の部署ご

とに記載する他、 提供された資料を受け取る際に、資料の内容がひと目で分かる

チェックリストを依頼書につけて、マッチングの精度を高め、整理の簡略化をは

かっているのだ。また、同学院はこのアーカイブを生かした学術誌『震災学』や『東

日本大震災 東北学院 1年の記録』などを刊行する他、専門的知識を活かして研究

や助言を行っている。

東日本大震災の記録 Remembering 3.11東北学院大学図書館(宮城県仙台市)

東日本大震災の記録 Remembering 3.11 関連情報データ

●開始時期

2013年5月15日

●収集点数(2013年12月末現在)

12,485件(うち公開可能は8,795件)(2014年1月27日現在)

内訳は下記の通り

アナログ(紙ベース)データ…674件(うち公開可能は174件)※全てPDFファイルに変換

ボーンデジタルデータ…825件(うち公開可能は501件)※全てPDFファイルに変換

写真データ…10,977件(うち公開可能は8,111件)※全てJPEGファイルに変換

動画データ…9件(うち公開可能は9件)

● 運用体制

1. 収集方法

「学校法人東北学院 東日本大震災アーカイブプロジェクト委員会」より、法人設置学校全て

に対し資料の提出を依頼(資料提出先・デジタルアーカイブ構築作業は大学図書館にて担当)

大学:全学会議(部長会)を通じ、全教職員へ呼び掛け

その他学校:校長・園長を通じ所属教職員へ呼び掛け

関連諸機関:責任者を通じ構成員へ呼び掛け

2. 館内、館外での提供方法

【デジタル化データ(公開データ)】

下記の条件をクリアするものは全てウェブで公開(http://archive311.tohoku-gakuin.jp/)

個人情報・機密事項が含まれていないもの

提供部署から特別に公開否の要望がなかったもの

個人情報が含まれているが、マスキングにより公開に耐えうるもの

【デジタル化データ(非公開データ)】

デジタルアーカイブ用ハードディスクに保管

【原本】

デジタル化作業終了後、図書館事務室内専用キャビネットで保管。個人情報の関係から現時点

では図書館資料としての所蔵登録は実施していない。

●コレクションのポイント

1. 収集対象校

【学校法人東北学院 】

法人事務局

東北学院大学図書館 宮城県仙台市青葉区土樋 1-3-1

http://www.lib.tohoku-gakuin.ac.jp/Tel:022-264-6493 Fax:022-264-6489 E-mail:[email protected]

東日本大震災コーナー 提供:東北学院大学図書館

Page 37: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

70 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 71図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

【学校法人東北学院設置学校】

東北学院大学

・土樋キャンパス(仙台市青葉区)

・泉キャンパス(仙台市泉区)

・多賀城キャンパス(多賀城市)

東北学院中学校・高等学校(仙台市宮城野区)

東北学院榴ケ岡高等学校(仙台市泉区)

東北学院幼稚園(多賀城市・大学多賀城キャンパス内)

【関係諸機関】

東北学院大学教職員組合

東北学院中学校・高等学校教職員組合

東北学院榴ケ岡高等学校教職員組合

東北学院大学生活協同組合

2. 収集対象資料

【2011年3月11日〜2012年3月11日に学内で作成された下記の資料(原本)】

・写真類(被災状況、復旧状況)

・動画類(被災状況、復旧状況、各種活動記録、メディア放映情報)

・文書類(会議記録、報告書、周知文、各種連絡文書、連絡メール本文/プレスリリース/震災に

係る本学関連新聞記事/手書きメモ)

・発災当時のウェブサイトデータ

【個人記憶収集フォーム(臨時・派遣・委託職員含む全教職員対象)】

・発災当時の個人ベースの行動記録(主に業務に関すること)を各自記入

●活用事例

国立国会図書館東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」とメタデータ連携を行い、ファインダビリ

ティの向上につなげている(2013年8月)。

構築したデジタルアーカイブを学内における災害資料データベースとして位置づけ、収録され

たデータを活用し学校法人としての震災記録集を作成中(2014年3月発行、発売予定)。記録集

には非公開データについても編集を加えたかたちで利用している。

2013年 3月 7日に公開された「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひな

ぎく)」は、東日本大震災関係の関連資料のアーカイブを一元的に検索するポータ

ルサイトである。東日本大震災に関する資料は、過去のどの災害においても例に

みられないほど全国規模で情報収集が行われているが、それぞれが独自に行って

いるため、一元的に情報が収集できる仕組みが求められていた。ひなぎくはこう

したニーズに応えるもので、現在、全国の図書館や自治体、民間企業や各種団体

など、29のアーカイブを一括で検索することができる。

ひなぎくは、東日本大震災から学ぶあらゆる教訓を次世代に伝え、被災地の復

旧・復興事業から今後の防災・減災に役立てることを目的とし、音声、動画、ウェ

ブの情報などを包括的に検索することができる。

同ポータルサイトは国立国会図書館と総務省が共同開発し、2013年度からは

国立国会図書館が全ての保守、運用を行っている。ひなぎくは、全国のさまざま

な機関が収集した東日本大震災関係のアーカイブデータを一元的に検索できるの

が特徴的で、そのほとんどが国会図書館以外の機関が収集したデータからなる。

国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)

国立国会図書館(東京都千代田区)

国立国会図書館 東京都千代田区永田町 1-10-1

http://www.ndl.go.jp/Tel:03-3581-2331(代表) E-mail:[email protected]

参考情報国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)http://kn.ndl.go.jp/

Page 38: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

72 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 73図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

2001年に開館したせんだいメディアテークは 、生涯学習のための施設で、図

書館や映像音響ライブラリーを中心に、ギャラリー、シアター、イベントを行う

広場、スタジオなどがある複合的な文化施設である。

市民活動の拠点となるスタジオでは、震災前からデジタルメディア機器を市民

の活動に生かすためのサポートをし、市民が制作した青果物をメディアテークに

納めてもらうことで、市民の手によるライブラリーをまた別の市民に還元してい

くという、スタジオを軸にした一連の市民協働のスキームがあった。東日本大震

災後、このスキームを生かしたプロジェクトが「3がつ 11にちをわすれないため

にセンター」(通称:わすれン!)である。

「わすれン!」は、 東日本大震災への復旧・復興のプロセスを、市民、専門家、

スタッフが協働して独自に発信、記録保存し、東日本大震災に対しともに向き合

い考え、復興への長い道のりを歩き出すことを目的に活動が開始された。発足の

動機には、阪神大震災を経験した「わすれン!」のスタッフが、当時「当事者の視

点」のないマスメディアの報道に違和感を覚えたことが一つの引き金になってい

るという。

また、「わすれン!」が、他の東日本大震災のアーカイブの試みと異なるのは、

多くの団体が震災の記録を収集、保存することが活動の目的であるのに対し、震

災を記録することが学び(生涯学習)につながると考え、記録をしたい活動者の

サポートをするプロジェクトであるということだ。そのため、「わすれン!」で参

加者が記録するものは、地震・津波・原発事故など災害の種類や被災度合いに関

わらず全く自由で、東日本大震災に対し向き合う記録であれば、撮影する場所も、

限定していないという。つまり、記録する内容は参加者の判断に委ねられ、スタッ

フが何か指示するような仕組みを取り入れてはいないのだ。 その分「わすれン!」

では、 制作過程や、記録されたものの上映機会などを通して人が集まり、語り、交

流するさまざまな場づくりに注力し、参加者の活動の活性を促している。

3がつ11にちをわすれないためにセンターせんだいメディアテーク(宮城県仙台市)

3がつ11にちをわすれないためにセンター 詳細データ

●開始時期

2011年5月3日

●収集点数

映像…659件 写真…37,536枚 音声…18件

※映像と音声は受入件数。1件の中には、複数の映像と音声が入っている場合がある。

 

●運用体制

1. 参加者募集の呼び掛け

開設から一貫して、記録をしたい活動者(市民・専門家など)を募集。

市民からセンターへ寄贈の希望がある場合は受入。ただし「記録物の収集」は広報していない

(下記の場合を除く)。

2. 写真の共同募集

センターの参加者である「NPO法人20世紀アーカイブ仙台」とは、写真の共同募集を2011

年から継続的に実施している。ただし共同募集は募集期間を限定しており、常時行っているわ

けではない。

※最近の写真共同募集事例(http://recorder311.smt.jp/information/33974/)

3. 手記の募集

センターの参加者である「レインボーアーカイブ東北」(多様な性の当事者たちの震災体験を

集積・記録・発信する団体)とは、 同団体のメンバーが東北各地の当事者に直接連絡を取り、

少しずつ手記と写真が集まりつつある。

※レインボーアーカイブ東北について(http://recorder311.smt.jp/information/33307/)

●館内、館外での提供方法

ウェブサイトで公開

日本語サイト(2011年6月末開設)で公開済のもの(http://recorder311.smt.jp/)

映像…438本 写真:1,230枚 音声:36本

※2014年1月末現在

英語サイト(2012年7月開設)に翻訳公開済みのもの(http://recorder311-e.smt.jp/)

映像…150本 写真…395枚 音声…22本

※2014年1月末現在

DVD配架・貸出…15本(2013年12月末現在)

※現在配架しているDVDは、2011年度に参加者が制作したもの。来年度4月には2012年度に

せんだいメディアテーク 宮城県仙台市青葉区春日町 2-1

http://www.smt.jp/Tel:022-713-4483 Fax:022-713-4482 E-mail:[email protected]

Page 39: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

74 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 75図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

上映した参加者の記録映像17本がさらに配架される予定。これらの映像は、後述する上映

会を行ったものの中から権利関係がクリアになっているもので、このほとんどはウェブサイ

トで公開していない。DVDは2階の映像音響ライブラリーに配架しており、館内視聴は2階

のライブラリーだけではなく、7階のプロジェクトルームでも可能。

【関連サイト】

わすれん! DVDが館内視聴できます(http://recorder311.smt.jp/information/26341/)

●収集内容の特色

一個人が記録する点が特色である。「わすれン!」の参加者は、仙台市内だけでなく県外の人も

含まれている。例えば、瓦礫を撤去している工事業者、NPOスタッフ、アーティストなどさま

ざまな人々が「わすれン!」に「参加者」として所属している。これらの参加者=記録者のそれ

ぞれの思いや狙い、メッセージが埋め込まれた記録、つまり「アノニマス(匿名)ではない記録」

であることが特色の一つだと考える。寄せられた映像としては、 津波の被害を受けた沿岸部の

風景や、瓦礫撤去の作業風景など。また地震・津波の体験や放射能被害などについてのインタ

ビュー映像、神楽の様子や木舟を制作している大工の作業風景など震災前からその土地にあっ

た文化の復興記録もある。

●収集にあたって心掛けていること

参加者による自由な記録を心掛けているが、ウェブサイトにどの映像を掲載するかは、スタッ

フが内容や公開する時期を検討し、独自に責任を持って判断している。

また、 写真を共同募集する際は寄贈者にできるだけヒアリングを実施し、写真に込められた心

情などを記録することも心掛けている。 ヒアリングした文章は写真とあわせてウェブサイト

などで公開する。

●活用事例

写真、映像を用い、人々の対話の機会となるような下記の場を2012年から現在まで定期的に

行っている。

【3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト公開サロン】

仙台にある「NPO法人20世紀アーカイブ仙台」と一緒に行っている。この場には、撮影者本人

に来てもらい、自分の言葉で震災時の生活の様子を映した写真を紹介してもらう。

関連サイト:これまでのイベント告知とそこで語られた記録の紹介記事(http://recorder311.

smt.jp/series/teiten/)

【こえシネマ】

来場者とともに参加者本人による編集途中の映像を囲み、撮影するきっかけや経緯、撮影時に

感じたことなどを語って過ごす。市民グループ「映像サーベイヤーズ」と協働して行っている。

関連サイト:2012年〜 2013年度の告知記事(http://recorder311.smt.jp/?s=こえシネマ)

2012年度のレポート(http://table.smt.jp/?p=4119)

これら写真と映像の利活用の場では、撮影者(参加者)自身が感じている以上の意味や価値観を

イベントの来場者が発見し、語ることもある。

これらのプロジェクトはメディアテークが発行しているフリーペーパーへの掲載や、ウェブサ

イトで情報発信することで、館内外の人に対話の内容を紹介。参加者の映像は、毎年3月にシ

アターで上映する。

【関連サイト】

2013年度の上映会の内容(http://recorder311.smt.jp/information/34106/)

※「わすれン!」参加者が、一人ひとりの想い、言葉、変わっていく地域の姿など、個々のまな

ざしで記録した映像を上映している。

【学校との連携】

震災を体験していない次の世代に震災を伝えるために、「わすれン!」では仙台市内の小学校の

先生と震災教育の現状についてヒアリングを行い、 授業で活用する試作DVDを提供している。

また小学生自身が地域の大人の震災体験をインタビューする際に映像の技術的なサポートや小

学校内の記録展示室への記録提供、仙台の学校で行われている防災教育との連携を模索してい

る。

3がつ11にちをわすれないためにセンター 提供:せんだいメディアテーク

Page 40: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

76 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 77図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

震災後、被災地の図書館が連携して行う事例の一つに「震災記録を図書館に」

キャンペーンがある。これは、東日本大震災に関連する資料の図書館への寄贈を

募る全国キャンペーンで、連携している図書館は、公共図書館が岩手県立図書館、

宮城県図書館、福島県立図書館 、仙台市民図書館の 4館、大学図書館が岩手大学

情報メディアセンター図書館、東北大学附属図書館、福島大学附属図書館、神戸

大学附属図書館の 4館である。キャンペーンに参加している図書館サイトには、

共通のバナーが張られており、図書館のこうした取り組みを大々的にアピールす

る他、キャンペーンポスターは全国の図書館や自治体に配布され、各地の図書館

で貼られている。なお、半年に一度程度のペースで、呼び掛け団体となっている図

書館などの担当者が集まり、資料の収集、公開に関わる事項について情報交換会を

開催している。

「震災記録を図書館に」キャンペーン東北大学附属図書館(宮城県仙台市)他

●運用体制

1. 収集の呼び掛け

各館でそれぞれ下記のような方法で実施している。

県内市町村役場を訪問して取り組みについて説明。図書館サイトでの寄贈依頼。チラシによる

寄贈依頼。資料刊行元への訪問依頼、電話・メールなどによる依頼。県内公立学校の校長会で

の説明。学協会にメールへの添付文書による依頼。定例記者会見で、学外からの資料提供の呼

び掛け。学内教員へメールでの呼び掛け。学内経営協議会、教育研究評議会などでの説明。

2. 館内、館外での公開状況

●コレクションのポイント

1. 活用事例

活用を促進するための取り組みとして、各館で下記のようなことを行っている

震災資料のうち何冊かをピックアップして簡単に紹介したブックガイドの作成

東日本大震災の関連資料を探すためのパスファインダーの作成

資料、新聞、写真パネルなどの展示会

講演会、ギャラリートーク、DVDの上映会

震災関連資料コーナー紹介のパンフレット作成

他館へ震災関連の本・パネル・パスファインダーなどを組みにした出張展示セットの貸出

東北大学附属図書館 宮城県仙台市青葉区川内 27-1

http://tul.library.tohoku.ac.jp/Tel:022-795-5943 E-mail:[email protected]

参考情報震災記録を図書館にhttp://www.library.tohoku.ac.jp/shinsaikiroku/

「震災記録を図書館に」キャンペーン 詳細データ※各館により事情が異なる。半年に一度程度で開催している情報交換会の提出資料などから内容をまとめた。

●開始時期

2012年1月12日(仙台国際センターで開催した「東日本大震災アーカイブ国際ワークショッ

プ(図書館連携)」で共同キャンペーンの実施を提案

2012年3月…キャンペーンポスターを、全国の自治体、公共図書館、国立大学図書館、東北地

区の大学図書館などに配布。ウェブサイトを作成し呼び掛け、団体各館の活動内容を紹介。

●収集点数

第5回の情報交換会(2013年10月23日開催)時点での資料点数は下記の通り。ただし、震災

資料コーナーのみの数字の館、複本を含んでいる館、同じ資料を雑誌、パンフレットなど異な

る資料種別として計上する館など、計上の基準や基準日がそれぞれ異なる。

図書館名 収集資料

岩手県立図書館図書2,385冊、雑誌6,146冊(842タイトル)、チラシなど7,503点、全国地方新聞44紙(2011年3月〜 5月分)など

宮城県図書館 図書2,192冊、雑誌883冊、チラシなど1,621点、新聞27紙、CD、DVD15点など

福島県立図書館図書5,839冊、雑誌2,470冊(チラシなども図書、雑誌のなかに数を含んでいる)。未整理のチラシ類多数あり

仙台市民図書館 図書3,281冊、雑誌250冊、チラシなど150点、航空写真など

岩手大学情報メディアセンター図書館

図書1,500冊、雑誌80冊、その他チラシなど1,080点、電子ファイル126点など

福島大学附属図書館 図書2,870冊、雑誌74冊など

東北大学附属図書館 図書2,378冊、雑誌650冊、その他チラシなど約2,000点

図書館名 震災資料コーナーの名称 備考

岩手県立図書館 震災関連資料コーナー

宮城県図書館 東日本大震災文庫

福島県立図書館 東日本大震災福島県復興ライブラリー

仙台市民図書館 3.11震災文庫

岩手大学情報メディアセンター図書館

自然災害関連資料コーナー自然災害一般を扱う。オンラインで公開している資料がある。

福島大学附属図書館 震災関連資料コーナー

東北大学附属図書館 震災ライブラリー オンラインで公開している資料がある。

Page 41: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

78 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 79図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では、2012年 3月 12日より「震災ライブラリー」を開設し、震災の記録を

役立て後世に引き継ぐ取り組みをしている。「震災ライブラリー」は約 600冊の図

書や雑誌をそろえてスタートし、現在は「震災記録を図書館に」のキャンペーン

とも連携し 5,130点を収集している。収集した資料は館内の特設コーナーで公開

する他、2013年 3月 18日から「震災ライブラリーオンライン版」で、インターネッ

トでの公開許諾を得た資料の公開を開始し、現在 1,370件が公開されている。

大学図書館なので、学術的な資料は通常どおり購入、寄贈受入をしている。加

えて写真集や絵本など、普段は選定対象にならない資料についても可能な範囲で

収集しているという。また収集にあたっては、震災直後の刊行資料はどの資料も

重要度が高いという考えもあり、可能な範囲で広く資料収集を行ってきたが、震

災から 3年を迎えるにあたり、今後は、資料が日常的に活用され、大学での日々

の学びや研究に震災の経験が生かされるよう、大学の授業カリキュラムや研究の

内容を見据えたうえで、資料収集に取り組むという。

震災ライブラリー東北大学附属図書館(宮城県仙台市)

震災ライブラリー 詳細データ

●開始時期

資料収集の明確な開始時期はないが、2011年6月から7月頃にかけて、震災関連資料の購入・

寄贈受入の動きが本格化。

●収集点数(2013年12月現在)

図書…約2,400冊 雑誌…約660冊 CD、DVD…約70点 

チラシ、パンフレット類…約2,000点 (うち約3,200点を公開)

 

●運用体制

1. 収集方法

販売されている資料は、通常資料と同様に館内の収書委員会、ワーキンググループで選定、購入。

非売品資料は、約270の国内学協会に資料寄贈をメールで依頼。また、個別に資料を特定し、

刊行元に寄贈依頼。

ウェブサイトを見た方からの寄贈(数は少ない)。

みちのく震録伝の「みちのく・いまを伝え隊」の活動で収集したチラシ・パンフレット類の受入。

2. 館内、館外での提供方法

本館に特設コーナーを設置(2013年12月現在、約3,200点を公開)

「震災ライブラリーオンライン版」で、インターネットでの公開許諾を得た資料の公開を開始

(2013年12月現在、1,370点を公開)

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

大学図書館なので、学術的な資料は通常通り購入、寄贈受入をしている。加えて、写真集や絵本

など、普段は選定対象にならない資料についても可能な範囲で収集している。

●活用事例

通常の利用の他、館内における展示での利用

東北大学附属図書館 宮城県仙台市青葉区川内 27-1

http://tul.library.tohoku.ac.jp/Tel:022-795-5943 E-mail:[email protected]

参考情報震災ライブラリー オンライン版http://dbr.library.tohoku.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000002shinsai

震災ライブラリー 提供:東北大学附属図書館

Page 42: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

80 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 81図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東北大学の「みちのく震録伝」は、東日本大震災に関するあらゆる記憶、記録、

事例、知見を収集するだけではなく、東北地方の過去・未来の災害についてもアー

カイブする。収集した資料は、東日本大震災の実態解明と復興に関する知見の提

供、低頻度巨大災害への対策管理を進展させ、今後、発生が懸念される東海・東

南海・南海地震の防災など、分野横断的な研究に役立てられている。この取り組

みは、2007年に設立された東北大学防災科学研究拠点(現・東北大学災害科学国

際研究所。東日本大震災を機に 2012 年 4 月に現組織へ移行)が文部科学省や日

本アイ・ビー・エム株式会社などの産官学と連携し、災害アーカイブのグローバ

ルスタンダードを目指して、2011年 6 月頃より開始した(正式リリースは 2011

年 9月)。協力・賛同機関は、2013年 9月時点で 110機関を超える。資料の収集

は「震災資料を図書館に」キャンペーンを通じて、附属図書館で収集を呼び掛け

ている。

同アーカイブはすでに存在する情報を収集するだけではなく、本取り組みを行

う災害科学国際研究所が各自治体、賛同協力機関、新聞社などのメディア関連企

業と協力して情報を収集や整理を行う他、現地の方を雇用してフィールド調査を

行う「みちのく・いまをつたえ隊」を 2012年 1月から始めている。宮城県沿岸の

15自治体に 16名が派遣され、活動内容は、地域住民への聞き取り、被災地の現

状を撮影する他、現地の人が保有しているさまざまな震災資料の収集をしている。

「みちのく・いまをつたえ隊」が収集したチラシ、パンフレットなど約 800点は

東北大学附属図書館に提供され、同館が整理、公開する予定である。また同館は、

それら資料を電子化もしており、「みちのく震録伝」としてウェブ上で公開してい

る。

みちのく震録伝東北大学附属図書館(宮城県仙台市)

みちのく震録伝(主に図書館と連携している部分についてのみの情報)

1.開始時期

2011年9月12日(本格始動のプレスリリースを開始)

(http://www.dcrc.tohoku.ac.jp/surveys/20110311/docs/tohokuuniv-press20110912.

pdf)

●収集点数

「みちのく・いまをつたえ隊」の活動により収集したチラシ、パンフレットなど約800点。

現在データベース上で公開されている資料としては、研究者が撮影した写真や「みちのく・い

まをつたえ隊」が撮影した写真などが多数を占めている。図書館電子化作業分のチラシ、パンフ

レット類は、600点程度を「みちのく震録伝」でも公開中(「震災ライブラリーオンライン版」で

は、この600点を含む1,370点を公開中)。

●運用体制

1. 収集方法

「みちのく・いまをつたえ隊」の活動では、沿岸被災地でインタビューや写真撮影といった記

録の作成作業を実施しているが、その際、現地で配布されているチラシやパンフレット類の

収集をあわせて行っている。

2. 館内、館外での提供方法

「みちのく・いまをつたえ隊」の活動により収集したチラシ、パンフレット類の原本は、図書

館で整理・公開する予定だがまだ未整理で非公開。インターネット公開の許諾を得た資料は、

東北大学附属図書館の「震災ライブラリーオンライン版」で公開している他、あわせて「みち

のく震録伝」でもインターネット公開する運用をしている。

東北大学附属図書館 宮城県仙台市青葉区川内 27-1

http://tul.library.tohoku.ac.jp/Tel:022-795-5943 E-mail:[email protected]

関連情報みちのく震録伝http://shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/

Page 43: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

82 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 83図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館は岩手大学地域防災研究センターと連携し、所蔵している岩手県の自然災

害および、東日本大震災に関する資料が検索できる「岩手県の自然災害と東日本

大震災に関する資料リポジトリ」を設置している。図書館が所蔵する資料は、館

内の「自然災害関連資料コーナー」に置かれ、閲覧・貸出ができる。また地域研究

資料センターの資料は、図書館で手続きをとれば閲覧のみ可能。レポジトリの収

録件数は図書 1,626点、雑誌 96点、一枚ものやパンフレットなどの報告書が約

1,100点、電子で保存されているものが 26点、写真が 2,000点超となっている。

岩手県は、地震・津波・洪水・土砂災害・火山・冷害など、自然災害が多い地

域のため、同大には火山や土砂災害の専門家も多い。それを踏まえ、収集対象は

東日本大震災に限らず、「自然災害全般に関する資料」としているのが特徴である。

なお岩手大学地域防災センターは、工学部自然災害の研究や減災システムの開

発、小・中学校での防災教育の支援を行っていたが、2013年 4月、東日本大震災

を受けて岩手大学の管轄に置かれ、文理融合型の全学組織として再スタートした

機関である。

岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリ岩手大学情報メディアセンター図書館(岩手県盛岡市)

岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリ 詳細データ

●開始時期

2012年1月(収集開始)*図書に関しては、2011年4月から

2013年4月(サイト公開)

●収集点数(2014年1月23日現在)

図書…1,626点(内2011年4月以降受入分1,410点) 雑誌…96点 

パンフレット・報告書など…約1,100点 電子資料(写真を除く)…26点 

電子資料(写真)…2,000点超

 

●運用体制

1. 収集方法

本学教員には学内メールおよび、グループウェアで定期的に依頼

学外へは提供依頼の広報は行っていないが、各種情報をもとに個別に依頼

2. 館内、館外での提供方法

図書館所蔵の図書・雑誌・パンフレット・報告書などは、館内に特設書架を設けて公開している。

パンフレット・報告書などのうち、電子公開許諾の取れたものは電子公開を進めている(点数

は少ない)。

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

岩手は、地震・津波・洪水・土砂災害・火山・冷害など、自然災害が多い地域のため、本学には

火山や土砂災害の専門家も多い。それを踏まえ、収集対象は東日大震災に限らず、「自然災害全

般に関する資料」している。

2013年4月に学内に設置された「地域防災研究センター」と連携し、研究者が被災地で収集

した資料を図書館で整理する他、地域防災研究センター既所蔵の資料の整理も行っており、将

来的には岩手大学自然災害資料サイト(http://rndd.iwate-u.ac.jp/)で、図書館所蔵資料とと

もに、地域防災研究センター所蔵資料も検索できる予定である。

2. 収集にあたって心掛けていること

学内教員に定期的に依頼するほか、SNSも含めた各種メディアをもとに幅広くチェックし、

個別に依頼している。

岩手大学情報メディアセンター図書館 岩手県盛岡市上田 3-18-8

http://www.lib.iwate-u.ac.jp/Tel:019-621-6082 Fax:019-621-6088

関連情報岩手県の自然災害と東日本大震災に関する資料リポジトリhttp://rndd.iwate-u.ac.jp/

自然災害関連資料コーナー 提供:岩手大学情報メディアセンター図書館

Page 44: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

84 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 85図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

宮城県図書館は、東日本大震災に関連する資料を 2012年度より収集し、 収集

した資料を「震災文庫」と名付け、2012年 7月から館内に「東日本大震災関連本

コーナー」を設けて展示している。収集点数は 2013年の 12月末時点で図書が

2,286点。

防災対策や震災復興に役立てることを目的として、現在も図書館サイトで収集

を呼び掛けており、収集対象は記録集、写真集、録画などの映像資料、調査報告書、

論文、救助、復旧活動などの活動書、避難所だより、壁新聞などである。相談会や

イベントなど配布資料、手記、体験記録、文集、儀式での式辞や答辞、誓いの言葉、

復旧活動の報告書、セミナーのチラシ、体験記録、フリーペーパー、学校だより、

会報や広報誌など、あらゆる震災関係資料を収集している。

同館では関係資料の収集・保存と同時に、震災前からのネットワークを生かし

て、直接的・間接的に県内の図書館からの情報を集め、県内の被災図書館の支援

に力を入れており、全国的な復興支援の動きと被災図書館の仲介を担っている。

東日本大震災文庫宮城県図書館(宮城県仙台市)

東日本大震災文庫 詳細データ

●開始時期

2012年7月

●収集点数(2013年12月末現在)

図書…2,286冊 雑誌…905冊 視聴覚資料…20点 新聞…27点

チラシ類(チラシ・ポスター・写真など)…1,677点 

●運用体制

1. 収集方法

寄贈依頼のポスターを館内に掲示

各カウンターなどにチラシやパンフレットを設置

ポスター、チラシを県内公共図書館、学校、企業などの各種団体や宮城県社会福祉協議会を通

じて県内市町村社会福祉協議会に配布。

災害ボランティア団体の会議や、県内小中学校長会、県立学校長会、各種団体や企業などに出

向き、震災資料について説明し、寄贈依頼。

2. 館内、館外での公開状況

既存の開架書架を使ってコーナー化して資料を配架。「東日本大震災文庫」資料は館内利用に

限定しているため、資料を複数部収集し、館外貸出用資料を別書架に配架している。

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

非売図書・雑誌やチラシ、ポスター類を積極的に収集し、整理を行っている

2. 収集にあたって心掛けていること

現地でのみ入手可能な資料は、出向いて収集を行うなど、宮城県内での震災に関わる記録を網

羅的に収集するよう心掛けている。

●活用事例

国土地理院が撮影した震災直後からの宮城県内沿岸部空中写真を展示。

今年度(2013年秋開催)の「みやぎ県民大学」にて、『災害資料と図書館』と題して、担当職員が講

義を行った。

宮城県図書館 宮城県仙台市泉区紫山 1-1-1

http://www.library.pref.miyagi.jp/Tel:022-377-8441(代表) Fax:022-377-8484 E-mail:[email protected]

震災文庫 提供:宮城県図書館

Page 45: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

86 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 87図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

兵庫県立図書館では、1995年 1月 17日の阪神・淡路大震災の発生を受けて、

この震災に関連するあらゆる資料の収集を開始し、同年11月には「フェニックス・

ライブラリー」として、館内に特設コーナーを設けた。コーナーでは、図書資料を

中心に、生々しい爪痕を報じた新聞の号外や、当時の避難所で配布されたミニコ

ミ誌、チラシなどを公開している。被災地の県立図書館として、県民が経験した

この災害の記憶を後世に伝え継ぐことが目的である。収集は図書館の復旧作業の

かたわら、 職員が地道に行ったという 。

震災後2年で、収集した震災関連資料は約 6,000点を超え、同館ではこれらの

資料のさらなる活用を促すため、1997年 3月に『阪神・淡路大震災関連資料目録』

(兵庫県立図書館編) を刊行している。また震災から 10年目にあたる 2005年1月、

同館が作成した記事名、執筆者、雑誌名での検索が可能なデータベース「フェニッ

クス・ライブラリー震災関連雑誌記事索引」を図書館サイト上で公開し、5,365件

を採録した。

資料のデジタル化については「フェニックス・ライブラリー」図書書誌データ

とリンクさせることで、これまで以上に震災関連図書の活用の促進が図られると

考えられることから、2013年度中の公開を目指して、現在、許諾などの作業が進

められているという。しかし、許諾依頼先が不明になっているもの、個人情報な

どの問題のため、計画どおりには進んでいない状態とのことである。

なお、 神戸大学附属図書館の「震災文庫」が構築している「震災資料横断検索シ

ステム」に、同館が収蔵する図書資料の情報を 2012年 3月より提供しており、震

災関係の資料を一括して検索できるようになっている。

フェニックス・ライブラリー兵庫県立図書館(兵庫県明石市) 

フェニックス・ライブラリー 詳細データ

●開始時期

1995年1月(収集は、図書館復旧と並行して開始)

1995年11月(郷土資料室内に「フェニックス・ライブラリー」と名付けて公開開始)

●収集点数(2013年3月31日現在)

図書…約2,700点(うち304点はデジタル化しているが公開はせず) 雑誌…約400点

チラシ・パンフレット類…約4,900点 

その他(ポスター・地図・空中写真・ビデオテープ他)…約1,000点 

●運用体制

1. 収集方法

職員の他、ボランティア団体による収集や、ライブラリー開設のマスコミの報道を見た方からの

寄贈。

兵庫県立図書館 兵庫県明石市明石公園 1-27

http://www.library.pref.hyogo.jp/Tel:078-918-3366(代表) Fax :078-913-9229

フェニックス・ライブラリー 提供:兵庫県立図書館 

Page 46: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

88 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 89図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

●コレクションのポイント

1. 収集対象

収集対象は図書、雑誌、新聞、ビラ、チラシ、パンフレット、ミニコミ誌、ボランティア情報、避難

所だより、手記、文集、地図、空中写真、視聴覚資料など刊行されたあらゆる震災関連資料。

●活用事例

『阪神・淡路大震災関連資料目録』(兵庫県立図書館編、1999年3月)の刊行

毎年1月に、震災関連企画講座を開催

調べ学習や教材研究などに活用できるように教科、分野ごとにテーマを決め、30冊程度のセッ

トを用意し、主に県内高等学校へ団体貸出。

徳島県立図書館、鳥取県立図書館など県域を越えたネットワークを生かし、 資料を県外で展示

する他、東日本大震災の被災地の図書館との交換展示。

東日本大震災の被災地に居住している方に「フェニックス・ライブラリー震災関連雑誌記事索

引」データベースを利用した雑誌記事の提供。

2004年 10月 23日に発生した新潟県中越地震で、新潟県中越地方に位置する

小千谷市は震度 6強の多大な被害を受けた。小お

千ぢ

谷や

市立図書館では、震災の記憶

を長く語り継ぐために、新潟県中越地震の関連資料を収集・公開し、一部の資料

は貸出も行っている。

震災資料は図書約が 440冊の他、パンフレットや報道の録画など視聴覚資料、

雑誌の記事、震災復旧を知らせる地元スーパーのチラシなど多岐にわたる。収集

した資料は「中越大震災資料コーナー」として特設コーナーを館内に設置し、図

書館サイト上では「中越大震災関連資料」として PDFでリストを公開、OPACか

らは「震災資料」でテーマ別検索ができるようにもなっている。同館では、震災か

ら 10年が経過する現在でも関連資料の収集を市民に募っている。また、2011年

11月には、震源となった現地をツアー応募者とめぐる『被災地まるごとバスツ

アー』を公益社団法人中越防災安全推進機構との連携で企画実施するなど、震災

関係の展示を多角的に行っている。

中越大震災資料コーナー小千谷市立図書館(新潟県小千谷市)

小千谷市立図書館 新潟県小千谷市土川 1-3-7

http://www.city.ojiya.niigata.jp/site/library/Tel:0258-82-2724 Fax:0258-82-8915

Page 47: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

90 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 91図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神戸市立中央図書館は 1995年の阪神・淡路大震災の発災後、震災関連資料要

網を定め、この震災に関連する資料の収集を行っている。中央図書館神戸ふるさ

と文庫内に「阪神・淡路大震災関連資料(1.17文庫)」を配架し、震災後建て替え

た 2号館に「震災関連資料室」を開設した。また 2000年 1月には『神戸市立中央

図書館所蔵震災関連資料目録(1.17文庫)』を刊行している。

収集された資料には図書と現物資料があり、図書資料は中央図書館 2階の特設

コーナー「1.17文庫」で、現物資料(止まったままの時計など)は同館 2号館の震

災関連資料室で展示をしている。

また東日本大震災後、被災した利用者から、阪神・淡路大震災の教訓から学べ

る情報についての問い合わせがあったため、図書館サイトで公開していた 1.17

文庫のブックリストを、被災者の生活や支援に関連するキーワード(食事、備蓄、

トイレ、避難所、ミニコミ誌、広報誌など、救援物質、県外避難者など)から検索

できるように整理し、公開している。阪神・淡路大震災のような未曾有な震災の

現場に居合わせ、さまざまな形で関わった人々の試行錯誤は、のちの震災で生か

されるべき教訓でもあるのだ。

1.17文庫神戸市立中央図書館(兵庫県神戸市)

1.17文庫 詳細データ

●開始時期

1997年6月(中央図書館神戸ふるさと文庫内に配架)

●収集点数(2013年12月現在)

約3,500冊

●運用体制

1. 収集方法

自費出版などは直接寄贈をお願いしている

2. 館内、館外での提供方法

館内の専用書架に配架(一部閉架資料あり)

図書館サイトに「震災関連資料リスト」を掲載

●収集にあたって心掛けていること

震災直後から週刊誌などの収集を開始。網羅的に収集、保存することを目標とし、出版情報など

の収集に努めている。

●活用事例

東日本大震災後に、被災地の図書館からの見学受け入れ

神戸市立中央図書館 兵庫県神戸市中央区楠町 7-2-1

http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/Tel:078-371-3351 Fax:078-371-5046

1.17文庫 提供:神戸市立中央図書館 

1.17文庫 提供:神戸市立中央図書館

Page 48: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

92 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 93図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館にある文書資料室は、新潟県中越地震に対し「歴史的資料の救済」と「震災

関連資料の収集」の二本柱で対応し、災害対応、災害関係の資料を収集する取り

組み「災害アーカイブ」を行っている。収集内容は新潟県中越地震の他、新潟県

と福島県で起こった豪雨災害(2004年 7月 13日)、新潟県中越沖地震の関連資料、

長岡市に関わる東日本大震災の資料が中心である。

文書資料室自体は、1998年 4月に長岡市史編さん室の業務、資料を継承して開

設し、災害の記憶と風化を防ぎ、次の世代に伝えることを目的の一つとしている。

資料は現在も継続して収集しており、市民にも提供を呼び掛けている。また、資

料の整理にはボランティアも募り、市民と協力して活動を行っている。

同室では、『新潟中越大震災と史料保存(1)長岡市立中央図書館文書資料室の

試み』や『新潟県中越大震災と史料保存(2)被災資料が地域を語る 1刈羽郡桐沢

村青柳家文書』などの資料も刊行している。

災害アーカイブ長岡市立中央図書館文書資料室(新潟県長岡市)

長岡市立中央図書館文書資料室 新潟県長岡市坂之上町 3-1-20(互尊文庫 2階)

https://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/Tel:0258-36-7832 Fax:0258-37-3754 E-mail:[email protected]

新潟歴史資料救済ネットワークによる避難所資料の整理作業 提供:長岡市立中央図書館文書資料室 

新潟県中越大震災時の長岡市立中央図書館避難所の掲示物 提供:長岡市立中央図書館文書資料室 

Page 49: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

94 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 95図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

7・13水害(新潟・福島豪雨)、新潟県中越大震災、新潟県中越沖地震、東日本大震災に関す

る災害アーカイブであること。

長岡市内に開設された避難所のアーカイブ(掲示物・配布物、避難所本部事務文書、引き継

ぎメモなど)が中核になっていること。

長岡震災アーカイブセンターきおくみらい、新潟大学、神戸大学などの関係機関・大学など

と連携して収集・整理を進めていること。

長岡市内に開設された避難所のアーカイブは、長岡市資料整理ボランティア、新潟歴史資料

救済ネットワークと市民協働で整理作業を行っていること。

2.収集にあたって心掛けていること

長岡市の機関として、市施設(学校、コミュニティセンター、市役所など)に集積された災害

記録を積極的に収集すること。

避難所資料の収集にあたっては、運営の妨げにならないように連絡・調整のうえ行うこと。

将来の長岡市史編さんなどで活用できるように、紙媒体の資料を中心に、掲示物・配布物、

事務文書、写真などの一次資料の収集に努めること。

●活用事例

【主な出版物】 

長岡市史双書№48『新潟県中越大震災と史料保存(1)長岡市立中央図書館文書資料室の試み』

(2009年)

矢田俊文・長岡市立中央図書館文書資料室編『震災避難所の史料 新潟県中越地震・東日本大

震災』(新潟大学災害・復興科学研究所危機管理・災害復興分野、2013年)

【主な展示会】

災害アーカイブス展「避難所の記録と記憶」

会期 2008年10月19日〜 11月9日

会場 長岡市立中央図書館2階ホール

中越大震災被災地連携企画 震災アーカイブ展 中越大震災5周年特別企画「復興の軌跡」−おこ

す よりそう つたえる つなぐ かんがえる −

会期 2009年10月20日〜 10月27日

会場 長岡市美術センター(長岡市立中央図書館2階)

【主な講座】

歴史講座「中越大震災〜史料保存の現場から」(連続5回)

第1回 中越大震災の記録と記憶(講師:中央図書館・文書資料室職員)

期日 2009年10月20日

会場 長岡市立中央図書館

災害アーカイブ 詳細データ

●開始時期

2004年10月23日( 新潟県中越大震災発生以降から収集)

2008年8月(一部公開…4,763点)※以降、整理・目録作成が終了した資料を公開。現在、9,651

点を公開。災害アーカイブの概要については、表1のとおり。

●運用体制

1. 収集方法

災害アーカイブの各資料群の収集方法は表1の通り。その他、チラシ、市政だより、機関紙

「長岡あーかいぶす」「災害アーカイブス通信」などを通じて広報を行い随時収集。

2. 館内、館外での提供方法

「07 図書資料」は文書資料室の閲覧室内の書架に配架。「07 図書資料」以外の公開資料は、

書庫内に保管。目録を閲覧室内に配架し、請求があった場合に閲覧に供している。

●コレクションのポイント

1.収集内容の主な特色

分類番号 資料群名 概要 主な収集方法 点数

01長岡市立中央図書館文書資料室収集資料

行事のチラシ・ポスターなど、個人・企業より寄贈され他に分類できないもの

随時収集・受け入れ 322

02 長岡市内避難所資料 避難所で掲示・配布・作成されたもの中央図書館は閉鎖時に依頼、呼びかけ文送付・訪問調査

395

03 長岡市役所資料市役所各課・施設から提供された災害対応業務に関するもの

歴史公文書の収集などで呼びかけ

2,278

04長岡市内小・中・高等学校・特別支援学校資料

市内の学校から提供された写真・文書・刊行物など

事前アンケート・訪問調査(2006・2007年度)

4,012

05 新聞資料 新聞(原紙) 購入、市内図書館より移管 619

06 行政刊行資料 自治体の刊行物・チラシ・ポスターなど 随時収集・受け入れ 整理中

07 図書資料図書・雑誌・広報誌・体験談・報告集など

随時収集・受け入れ、「住民生活に光をそそぐ交付金」(2010年度)で購入

429

08 地図資料 災害に関する地図 随時収集・受け入れ 7

09 写真資料 被害状況・復旧作業など写真(個人撮影) 随時収集・受け入れ 整理中

10長岡市内コミュニティセンター資料

市内のコミュニティセンターから提供された写真・文書・刊行物など

事前アンケート・訪問調査(2009年度)

1,589

11長岡市内東日本大震災避難所資料

避難所で掲示・配布・作成されたもの、避難所写真

避難所開設・閉鎖時に訪問調査(2011年度)

整理中

合      計 9,651

表1 文書資料室の災害アーカイブ(2013年1月現在) 

※災害に関する長岡市の非現用文書は歴史公文書として収集・保存しているため除く

Page 50: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

96 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 97図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では、2004年に発生した新潟県中越地震、2007年に発生した新潟県中越

沖地震時における看護問題に関連する図書を重点的に収集している。これは看護

大学に付属する図書館として、収集した資料を自校の活動や学生の学びに役立て

るためである。

資料は館内の特設コーナーに常設され、図書館サイト上でも「新潟県中越大震

災特設ページ」として、1「災害看護・地震関係図書リスト」(新潟県立看護大学図

書館所蔵のもの)、2「災害(地震)看護雑誌論文リスト」、3「東日本大震災に関す

る文献情報」の文献リスト(医学中央雑誌刊行会作成リストへのリンク)の他、中

越地震や中越沖地震を含む新潟県の災害についての記述が含まれる雑誌の目次情

報の紹介、関連サイトへのリンクなどを行っている。収集した資料は、雑誌や映

像資料も含め約 550点におよび、現在も継続して収集している『日本災害看護学

会誌』は、創刊号から所蔵している図書館が少ないという事情もあり、全国的に

利用されている。

電気も水もない状況で看護をせざるをえない状況は、先の東日本大震災の発生

時でも起きている。中越での経験をアーカイブした同館の豊富な資料が、その後、

被災に見舞われた地に情報支援として届いているだろうことは想像に難くない。

震災時の「看護」をテーマに情報発信新潟県立看護大学図書館(新潟県上越市) 

新潟県立看護大学図書館の震災への取り組み 詳細データ

●開始時期

2012年11月1日(特設書架を設置)

●収集点数(2014年1月現在)

550点

●運用体制

1. 収集方法

購入図書は、学内の関係教員へ呼び掛けと図書館員の選書したものを教員による図書委員会

で購入の可否を検討している。

その他、図書館サイトで寄贈を呼び掛け、行政資料・非売品は個別に寄贈依頼

2. 館内、館外での提供方法

館内に特設の書架を設置

図書館サイトで所蔵リストの公開

※その他、医中誌Webの文献リストを版元の了解を得てサイトに公開

●コレクションのポイント

1. 収集内容の特色

2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震に関する資料を中心とした新潟県にお

ける災害看護資料がメインだが、災害看護に役立つと思われるものは「新潟県」「看護」に関

わらず、国内の災害であれば、福祉や心理学など関連分野も含めて収集している。

2. 収集にあたって心掛けていること

行政資料や非売品など、一般的に流通せず、発行部数も限られている資料を積極的に収集す

ること。

公立大学の使命として、学生・教員および、地域の看護職者の看護研究と活動に役立てても

らうために、新潟県の災害に関する保健医療福祉資料を意識的に収集すること。

新潟県立看護大学図書館 新潟県上越市新南町 240

http://lib.niigata-cn.ac.jp/Tel:025-526-1169 Fax:025-526-3607 E-mail:[email protected]

災害看護・地震関係資料コーナー提供:新潟県立看護大学図書館 

Page 51: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

98 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 99図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

名古屋市南図書館は南図書館改築時に、日ごとに散逸しがちな伊勢湾台風の被

災資料を一堂に収集し調査研究に役立てるよう、1992年 3月、伊勢湾台風資料室

を設置した。収集しているのは、気象、被害状況、救援活動、復旧対策事業、体験

記、手記、文集、社史、行政資料、新聞、雑誌記事の他、市内 12区の小学校で作成

された災害の記録や体験記、文集など、当時の様子がうかがえる多角的な資料の

他、カメラマンの佐伯義勝さん、名古屋市南区在住の郷土史家・小川金雄さんら

が当時撮影した写真の寄贈を受け、保管している。どれも当時の被害のすさまじ

さや生々しさが伝わってくる資料で、これらの写真はパネルにして展示、紹介し

ている。

資料の多くは開設当時に収集されており、それ以降は蔵書に大きな増加はな

かったが、伊勢湾台風襲来 50周年を迎えた 2009年とその翌年には関連資料の寄

贈が多数あったようだ。資料は閲覧や貸出(特別貸出)しており、市民だけではな

く、研究者やテレビ関係者、映画製作関係者にも利用されている。

伊勢湾台風資料室名古屋市南図書館(愛知県名古屋市)

伊勢湾台風資料室 詳細データ

●開始時期

1992年3月

●収集点数(2013年7月現在)

図書(複本含む)…985冊、視聴覚資料…15点(ビデオテープ11点、DVD4点)

マイクロフィルム…13点、16ミリフィルム…2点

写真パネル…286点、写真(ネガフィルム)など

●運用体制

1. 収集方法

【図書・雑誌新聞記事】

「愛知県郷土資料総合目録」「名古屋市鶴舞図書館:伊勢湾台風資料目録」「国立国会図書館所

蔵主題別目録」などの文献目録より資料をリストアップし、購入・寄贈・複製により収集。

学校や行政機関・県下の図書館への資料照会、古書店回り

開設時の新聞報道などで開設を知った市民からの寄贈

【映像資料】

ビデオテープ・16ミリフィルム・マイクロフィルムを、それぞれ「建設省中部地方建設局」「愛

知県広報課」「名古屋市鶴舞中央図書館」所蔵の資料から許可を得て複製し、所蔵している。

【その他】

新聞記事クリッピングや写真および写真集は、個人・機関からの寄贈。写真パネルは写真の一

部から作成。

2. 館内、館外での提供方法

館内にある専用の小部屋(閲覧申込制)

※当初は常時開室のオープンな運営方式だったが、管理上の問題から閲覧申込制に変更。

●収集にあたって心掛けていること

被災経験者、関係者の高齢化が進み、当時の資料収集が困難になっているが、資料室のPRに努め

ながら、さらなる資料の収集に努めている。

伊勢湾台風に関する新しい出版物の他、関連する展示会などのイベント資料の収集にも努めて

いる。

●活用事例

南図書館展示コーナーで毎年9月、写真のパネル展示を開催

展示会など、イベントを開催する他、機関や各種団体へ貸出

名古屋市南図書館 愛知県名古屋市南区千竃通 2-10-2

http://www.library.city.nagoya.jp/Tel:052-821-1732 Fax:052-821-3364

伊勢湾台風資料室 提供:名古屋市南図書館 

Page 52: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

100 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 101図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館は、2000年 10月に発生した鳥取西部地震を記録した資料コレクションを

所蔵している。この資料は、阪神淡路大震災での教訓をもとに、鳥取県西部地震

の記録を散逸させずに後世に残すべく、鳥取大学工学部の西田良平教授と鳥取県

が収集し、2002年から公開しているものである。資料は個人が収集整理してきた

ものから、行政が作成・収集してきたものなどである。専門家の調査報告書から、

小学生が調べてまとめたものなど、内容は多岐にわたる。

資料コレクションのリストは全てウェブで公開しており、冊子体で収集され

た原資料は、特設ではなく閉架で保存されている。なお、この冊子体の原資料は、

CD-ROMにデジタルアーカイブとして保存され、鳥取県立図書館など県内各地

の図書館にも所蔵されている。

また鳥取大学附属図書館では、鳥取県西部地震の記録をもとに 1943年 3月の

鳥取地震について調査した『鳥取地震調書』という全 10冊の私家版も寄贈を受け、

その複製本を同館の郷土資料室で配架している。この原本は、鳥取大地震に関す

る県立博物館や市立博物館の展示などで利用された。

鳥取県西部地震記録保存資料一覧表鳥取大学附属図書館(鳥取県鳥取市)

鳥取県西部地震記録保存資料一覧表 詳細データ

●開始時期

2002年(公開開始)

●収集点数

93点

●運用体制

1. 収集状況

現在は収集対象ではないが、新しく資料が出版されれば、通常の図書館資料として所蔵する

可能性あり。

2. 館内、館外での提供方法

冊子資料は、館内の閉架書庫で、専用キャビネットに保管

デジタルアーカイブはCD-ROMでの館内閲覧

【参考情報】  

平成12年鳥取西部地震(危機管理局の鳥取県の危機管理の鳥取県西部地震関係)

http://www.pref.tottori.lg.jp/seibujisin/

●活用事例

学生の卒論などでの利用

西田良平教授による授業・講座などでの利用

●活用事例

南図書館展示コーナーで毎年9月、写真のパネル展示を開催

展示会など、イベントを開催する他、機関や各種団体へ貸出

【参考資料】

鳥取県西部地震記録保存資料一覧表(http://www.lib.tottori-u.ac.jp/list/seibu_jishin.htm)

図書館報 No.103 p.8-9(http://www.lib.tottori-u.ac.jp/kanpo/kanpofile/kanpoNo.103.pdf)

鳥取大学附属図書館 鳥取県鳥取市湖山町南 4-101

http://www.lib.tottori-u.ac.jp/Tel:0857-31-5672 Fax:0857-28-6346 E-mail:[email protected]

参考情報鳥取県西部地震記録保存資料一覧表http://www.lib.tottori-u.ac.jp/list/seibu_jishin.htm

「平成12年鳥取県西部地震」記録集配架の様子 提供:鳥取大学附属図書館

Page 53: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

102 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 103図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では、熊本大学医学部が研究している水俣病関連の資料コレクションの一

部を水俣病公式確認 50年を期して、2006年から公開している。公開されたのは、

熊本大学医学部が所蔵する水俣病関係の研究資料などの目録と新聞記事データ

ベース。目録に掲載されている研究資料は、熊本大学附属図書館の医学系分館で

ほぼ閲覧することができる。原資料については被害者の個人情報に関するものも

多く、公開していないが、特に研究目的などでの利用は、図書館での確認を経て

閲覧・複写が可能である。

新聞記事のデータベースは、熊本日日新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞に掲

載された 1971年までの水俣病関係の記事からなり、記事の見出しを年代ごとに

整理している。著作権の許諾がとれたものは、サイト上で原文を見ることも可能。

この取り組みは、「水俣病関係学術資料の収集・整理」をテーマの一つに掲げて、

1999年より活動している熊本大学学術資料研究調査推進室が行っており、現在

も整理が進められている。研究業績の収集とともに、被害者、加害者、医学、行政

などの一次資料を重視して収集が行われており、現在約 90,000点の資料がある。

水俣病関連の資料コレクション熊本大学附属図書館(熊本県熊本市)

水俣病関連の資料コレクション 詳細データ

●開始時期

1999年10月(公開は2006年6月)

●収集点数

約90,000点

●運用体制

1. 収集方法

一般的な呼び掛けはせず、資料の所有者、保有機関などに個別に提供を要請

2. 館内、館外での提供方法

被害者の個人情報に関するものも多いため、原資料の公開はせず

特に研究目的などで必要な場合で、同館にて研究目的、使用状況など確認できる場合には、閲

覧・複写は可能。

被害者のプライバシーに関わるものは複写できないものがある

個人に関わりの少ない歴史的事件史的(チッソ、行政、医学などに関わる)資料はPDF画像で

提供できるものもある。

通常の公刊図書類は図書館蔵書で扱う

●コレクションのポイント

医学、化学、政治、経済、法、社会など幅広く収集

●収集にあたって心掛けていること

研究者、学生(院生レベル以上)、教師、関心ある人々への一次資料提供が主で、図書館(熊本大学

学術資料調査研究推進室〈水俣病部門〉)自らの展示、講座などは適宜行うが恒常的ではない。

熊本大学附属図書館 熊本県熊本市黒髪 2-40-1

http://www.lib.kumamoto-u.ac.jp/Tel:096-342-2272 Fax:096-342-2210

Page 54: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

104 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 105図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

被爆都市ヒロシマに建つ図書館として、同館は被爆体験の継承と平和意識の

高揚を願い、広島や長崎の被爆文献資料を広く収集している。収集の資料は図

書、逐次刊行物(雑誌、紀要、新聞、同人誌他)などで、資料数は図書・雑誌な

ど 33,140点。所蔵資料は図書館サイトからテーマ別に調べることができる他、

OPACでも検索可能である。また広島平和記念資料館の平和データベースからも

検索できる。

また同館では、広島市教育センターと広島市の各学校の協力を仰ぎ、それぞれ

が保管していた被爆体験談の録画ビデオの収集とデジタル化(DVD化)を 2008

年に広島市教育委員会と行っている。このビデオは、小中学校の平和教育で取り

組まれている「地域の被爆体験継承事業」で作成されたビデオである。デジタル

化した映像は学校を始め、広く市民へも貸出しており、図書館のサイトでも公開

している。現在サイトで公開されている映像は 21本である。

被爆文献資料/被爆体験証言ビデオ広島市立中央図書館(広島県広島市)

被爆文献資料 詳細データ

●開始時期

1961年11月1日(「原爆資料室・郷土資料室」の開設)

1974年10月27日(広島市立中央図書館移転開館「広島資料室」に改称)

●収集点数

33,140冊(2013年3月31日現在)

図書館サイト公開の目録冊数

●収集内容

広島、長崎市の被爆に関する資料

広島市および、長崎市での被爆の体験記などの文学的資料

広島市・長崎市以外の地域での被爆(被曝)に関する資料

広島市および長崎市での被爆状況を理解するうえで参考となる資料

平和に関する資料(ただし、広島市・長崎市との関連が深いものに限る)

その他

●運用体制

1. 収集方法

購入可能な資料は発行元や個人から購入。非売品については、発行元や個人へ寄贈の依頼。

広島資料室のパンフレットに「地域資料の収集について」を掲載し、市民に寄贈などによる協

力を仰ぐ。

2. 館内、館外での提供方法

広島資料室内に特設書架を設置(地域資料との区別を図るため、独自の分類を与えている。別

置記号を与えた分類 地域資料…H 被爆文献資料…A)

図書館サイトで公開(特別コレクションとして「被爆文献資料」の項目をつくり、テーマごと

に一覧で表示)

●コレクションのポイント

1. 収集資料の特色

広島や長崎の被爆による人的・物的被害を記述したあらゆる資料ならびに、関連する多様な

資料と平和に関する資料を積極的に、網羅的に収集。

2. 収集にあたって心掛けていること

収集する資料は、できる限り3部(被爆文献資料用、貸出用、保存用)以上収集すること

書籍の形態だけでなく、新聞(号外や特報など)、パンフレット、絵はがきなど幅広く収集すること

書籍、雑誌の内容の一部に、被爆に関する記事の記載がある資料についても収集すること広島市立中央図書館 広島県広島市中区基町 3-1

https://www.library.city.hiroshima.jp/Tel:082-222-5542(代表) Fax:082-222-5545

広島資料室内の被爆文献資料書架 提供:広島市立中央図書館 

Page 55: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

106 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 107図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

自費出版で一般に流通しない資料も多くあることから、発行情報の収集に努めること

●活用事例

企画展や講演会の開催(被爆体験継承事業として毎年8月6日を中心に、被爆の実相および広

島市の復興を伝えるとともに、平和意識の高揚を図るため企画展と講演会を開催している)。

【企画展】

「こどもたちの見たヒロシマ」(2013年7月20日〜9月1日)

「ヒロシマと交通−暮らしと復興のなかで−」(2012年7月28日〜8月31日)

「広島とスポーツ−廃墟からの復興−」(2011年7月15日〜8月28日)

「被爆65周年:平和記念公園をめぐって」(2010年8月1日〜8月28日)

「広島市制施行120周年・広島平和記念都市建設法60周年記念:うつりゆく広島 つながる心」

(2009年8月1日〜8月30日)

【講演会】

「次の世代に伝えたいこと」講師:前田耕一郎氏(前広島平和記念資料館館長)(2013年度)

「路面電車が語るヒロシマ」講師:加藤一孝氏(街づくり研究会代表)(2012年度)

「カープ誕生とヒロシマ」講師:長谷部稔氏(広島カープOB会会長)、紙芝居演者:阿部頼繁氏

(劇団花子ちゃんとそのお友だち主宰)(2011年度)

「被爆65周年平和祈念事業 ヒロシマからのメッセージ『原爆で失ったもの』」講師:田邊雅章

氏(平和公園復元映像製作委員会代表・広島修道大学特別客員教授)(2010年度)

「核兵器廃絶のために私たちは今」講師:浅井基文氏 (広島平和研究所長)(2009年度)

被爆体験証言ビデオ 詳細データ

●開始時期

2008年(現在は収集していない)

●収集点数

21点

●コレクションのポイント

1.収集内容の特色

広島市内の学校で被爆者が講演を行った際の証言ビデオをデジタル化したもので、被爆者の

表情と生の声が伝わる貴重な資料となっている。

2.活用事例

広島にゆかりの深い文学者21名の図書や自筆原稿などを収集展示している「広島文学資料

室」のサテライト展示「生誕100年 栗原貞子−私は広島を証言する−」(2013年3月1日〜

4月29日)の際に、展示会場において同氏の証言DVDを上映した。

サテライト展示…図書館入口近くの展示ホール前で行うミニ展示のこと

被爆体験継承事業での企画展の様子 提供:広島市立中央図書館 

Page 56: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

108 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 109図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

奈良県立図書情報館では、「戦争体験文庫」として戦争体験を風化させることな

く次世代に伝えていくために、1996年から戦争体験の資料を全国から寄贈によっ

て収集している。これら資料は、先の戦争を直接体験した世代が現役をリタイア

後、自費出版などによって自らの体験をまとめたものが多く、その子どもから遺

品というかたちで提供されることが多くなっているという。

当初、このアーカイブは奈良県福祉部福祉政策課が行っていたが、2001年か

ら新館の建設が進んでいた同館での公開を目指し、業務が移された。現在、約

56,000点の資料を所蔵しており、収集資料は満州事変からサンフランシスコ講和

条約までの「体験」に関するもので、具体的には戦争に関わる体験および、当時の

社会や生活の様子を記録した図書や雑誌、教科書などの教育関連資料の他、当時

の日記、ハガキ、証明書などの実物資料を収集している。文庫所蔵資料点数の約

9割にあたる図書については OPACで検索可能な他、NACSIS-CATにも登録して

いるので、CiNiiからの検索も可能となっている。残る 1割の非図書資料につい

ては、資料目録の整備、公開はしていないが、年 4回のテーマ展示によって紹介

するようにしている。

館内では「戦争体験文庫」という特設コーナーを設け、常設展示を行っている。

戦争関係の刊行物を多く所蔵する類縁機関の場合、閉架制をとっていることが多

いのに対して、同館の場合、専用の広い開架スペースを設け、状態が悪いものな

どを除いて、直接手に取って資料を選べている。また原則的に簡単な図録を作成・

配布する他、展示内容をウェブ公開することによってアーカイブの蓄積を図って

いる。

戦争体験文庫 奈良県立図書情報館(奈良県奈良市)

戦争体験文庫 詳細データ

●開始時期

2007年(文庫開設)

※準備開始は1996年から

●収集点数(2013年末現在)

約56,000点

●運用体制

1. 収集方法

戦友会などの団体に個別に資料寄贈を依頼

報道機関や広報媒体を積極的に使用し、広く個人への寄贈を呼び掛け

※現在は、積極的な資料提供の呼び掛けは行っていないが、資料の寄贈は続いている

●コレクションのポイント

府県レベルでは、福祉行政における平和祈念事業が平和博物館に結び付いた例は多いが、同館の

ように図書館と結びつくかたちで展開した例は少なく、同館の戦争体験文庫所蔵資料の希少性、

独自性につながっている。

●活用事例

日常的に資料を使ったテーマ展示を行い、それを図書館サイトで公開

放送や出版、研究などにおいて活用

奈良県立図書情報館 奈良県奈良市大安寺西 1-1000

http://www.library.pref.nara.jp/Tel:0742-34-2111 (代表) Fax:0742-34-2777 E-mail:[email protected]

戦争体験文庫 提供:奈良県立図書館情報館

Page 57: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

110 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 111図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

先の大戦で沖縄戦の上陸拠点となり激しい戦火にさらされた北ちゃ

谷たん

町は、1995

年の戦後 50年を記念して、10月 22日(町の一部が、占領から解放された日)を

「北谷町民平和の日」と制定し、町の主要施策に平和文庫の設立をうたった。それ

を受けて、同館では館内に「平和文庫」コーナーを設置し、 平和への願いと「命ぬち

どぅ

宝」の精神を町民のモットーとして、戦争と平和に関する資料を積極的に収集し

ている。

収集点数は 3,036点。内容は戦争の記録と反戦・平和を扱った図書、戦争の記

録を収めた視聴覚資料、戦争を扱ったその他の資料(紙芝居、パンフレット)など

で、図書館サイトからは平和文庫だけを検索できる OPACを公開している。

なお慰霊の日である 6月 23日と、北谷町平和推進旬間である 10月 22日から

31日までの期間は、平和についての「絵本の読み聞かせ会」や「平和についての

講話」を行っており、催しに合わせて平和文庫を活用した展示を行っている。

平和文庫北谷町立図書館(沖縄県北谷町)

平和文庫 詳細データ

●開始時期

1995年10月22日(平和文庫の設立が町の主要施策にうたわれる)

●収集点数(2013年12月現在)

3,036点

●館内、館外での提供方法

図書館入口近くに「平和文庫コーナー」として特設の書架を設置

●活用事例

「平和絵本の読み聞かせ会」や「平和についての講話」などの行事に合わせた資料展示

北谷町立図書館 沖縄県北谷町字桑江 467-1

http://www.chatan.jp/library/Tel:098-936-3542 Fax:098-936-4567

平和文庫 提供:北谷町立図書館 

Page 58: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

112 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 113図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神戸大学附属図書館は、阪神・淡路大震災に関する資料をアーカイブする「震

災文庫」という取り組みを行っている。震災文庫は阪神・淡路大震災が発生した

1995年の 5月から収集が開始され、10月 7日に公開。館内に資料を閲覧するこ

とができる専用の部屋を設置する他、専用のサイトを設けウェブでも検索可能に

している。また、資料の利活用を目的としたデジタルアーカイブにも力を入れて

おり、震災記録写真や動画、震災当日の車内アナウンスの音声など約 5,000件の

デジタル資料に、サイトなどからアクセスすることができる。

「震災文庫」は災害復興や地震研究、防災研究に役立ててもらうことを目的とし

ており、阪神・淡路大震災の発生から 20年を迎える現在でも、震災に関する幅

広い情報の収集に努め、新聞記事での情報収集や震災関係機関へのアプローチな

どを通して、資料の提供を受けている。

震災に対する同館のこのような実績と経験は、東日本大震災が発生した際に、

復興関係資料の無償提供や震災文庫のノウハウを提供するなど、情報援助として

被災地へ届けられた。また同館では、阪神・淡路の資料を収集している兵庫県立

図書館と阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターと連携し、3館が所蔵する

震災資料の情報を一つのプラットフォームで調べることができる「震災資料横断

検索システム」を構築し提供している。これは 14機関で横断検索を行っていた

「震災ライブラリー・ネット」の後を継ぐプラットフォームである。

震災文庫神戸大学附属図書館(兵庫県神戸市)

震災文庫 詳細データ

●開始時期

1995年10月30日(一般公開開始)

●収集点数

51,518件(うちデジタル化資料5,053件)

※写真資料はアルバム1冊を1件とカウント。中の写真枚数は約24,000枚。

【参考情報】

神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ「震災文庫」(http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/doc/

EarthquakeDataList/Top.html)

●収集体制

図書館サイトに寄贈依頼を掲載

Twitter公式アカウントで呼び掛け(年数回)

震災文庫担当が図書・雑誌の出版情報、新聞記事、兵庫県と神戸市の記者発表、阪神・淡路大

震災関連のイベントなどを日々チェック。CiNii、ひなぎくなどのデータベース、学内生産物な

どはワーキンググループメンバーで分担してチェック。

●コレクションのポイント

阪神・淡路大震災に関連する印刷物資料を網羅的に収集。非流通資料から絵本・漫画、その他

刊行物までを対象。

東日本大震災関連の資料でも、阪神・淡路と比較されたものは収集。

復興支援のために始まった「神戸ルミナリエ」と「神戸マラソン」関連の資料も収集対象として

いる。

●活用事例(特集展示や講座の開催など)

電子化資料の二次利用(申請件数:2008年度…49件、2009年度…87件、2010年度…61件、

2011年度…29件、2012年度…23件)。

「被災地図書館との震災資料の収集・公開に係る情報交換会」開催(2012月2月)

「国立国会図書館東日本大震災アーカイブひなぎく」へのメタデータ提供(2013年3月〜)など

【参考情報】

2004年、2009年の資料展示会

(http://lib.kobe-u.ac.jp/www/html/tenjikai/kakonotenji.html)

神戸大学附属図書館 震災文庫 兵庫県神戸市灘区六甲台町 2-1 神戸大学社会科学系図書館 管理棟 3階

http://lib.kobe-u.ac.jp/ Tel:078-803-7342

震災文庫 撮影:岡本真 撮影日:2010年12月17日 

※同館は現在改装中であり、写真は移転、改装前のものである。

震災文庫での保管状態 撮影:岡本真 撮影日:2010年12月17日 

Page 59: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

114 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 115図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

広島大学図書館は被爆 60周年を記念して、広島大学平和科学研究センターが

発足以来収集してきた図書を中心として、広島大学が所蔵する平和学関連資料を

展示する「平和学コレクションコーナー」を館内に設置している。図書は原爆な

どの核兵器、軍縮、国際政治に関する資料群の他、イマニュエル・カント の『永

久平和のために』やサン・ピエールの『永久平和論』の初版本など貴重な資料が含

まれる。収集点数は約 10,000点。本コレクションのための専門予算があるわけで

はなく、購入資料の中から関連のある図書をピックアップし、現在もコレクショ

ンを増加させている。2005年 10月 18日には、「被ばく 60周年記念講演会:原爆

報道・戦後体制と平和構築-広島大学図書館平和学コレクションの自著を語る-」

(講師:モニカ・ブラウ、広渡清吾、松尾雅嗣)を開催している。

また同館では、原爆、被爆に関連する資料のデータベースを 2004年 6月に公

開している。データベースには、原爆と被爆に関連する新聞切り抜き記事が約

41,000点(中国新聞、毎日新聞、朝日新聞、読売新聞の 1967年から 1979年まで

の記事)、米国陸軍病理学研究所(AFIP)から返還された医学的写真資料が約 1,200

点、原爆・被ばく関連の図書資料の書誌事項が約 6,200点、原爆被爆物理試料デー

タが約 1,200点、米国および旧ソ連核実験実施記録データが約 1,800点である。

これらは広島大学原爆放射線医科学研究所が所蔵する資料を電子化したものであ

る。

このデータベースは、日本学術振興会の 2007年度、2008年度の科学研究費補

助金(研究成果公開促進費)の交付を受けて作成された。書誌事項以外の資料は

電子化したものを全てデータベース化しているが、現在はシステム更新に伴って

公開されていない。再公開は来年度の予定。また、新聞切り抜き記事の利用は制

限されており、事前に利用登録をしたうえで、調査・研究目的に限り検索・閲覧

が可能である。

平和学コレクション/原爆・被ばく関連資料データベース広島大学図書館(広島県東広島市)

広島大学図書館 広島県東広島市鏡山 1-2-2

http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/Tel:082-424-6214 E-mail:[email protected]

上下ともに「平和学コレクション」 撮影:熊﨑由衣 撮影:2014年1月27日

Page 60: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

116 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 117図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

1945年、7,000人以上の犠牲者を出した神戸空襲などの記録を残すため、神戸

市立兵庫図書館では、戦災記念資料室を開設している。

同資料室は、もともと 1981年に神戸市立中央図書館で開室されたが、1995年

の阪神・淡路大震災で同館が半壊し閉鎖されため、神戸市立兵庫図書館に移転さ

れ、1997年に再開室された経緯をもつ。

常時の展示資料は「神戸空襲を記録する会」から寄託された約 500点で、展示

替えは図書館ではなく、寄託者が行っており、図書資料の他にも鉄兜、焼夷弾の

破片、焼けただれた一升瓶、罹災証明書、医療切符など、戦時中の暮らしを物語る

遺品などの現物資料の他、写真パネルなども保存されている。なお毎年 8月、神

戸市行財政局が中央図書館のロビーを利用して行う「戦災関連資料展」では、「神

戸空襲を記録する会」が寄託資料の一部資料を借り受けて展示を行っている。

戦災記念資料室神戸市立兵庫図書館(兵庫県神戸市)

戦災記念資料室 詳細データ

●開始時期

1981年4月1日(中央図書館にて開室)※1995年1月17日阪神・淡路大震災により中央図書館

旧館半壊により閉鎖

1997年3月18日(兵庫図書館に移設開室)

●収集点数

1,029点(2013年12月現在)

●運用体制

開館中、常時開室(常設展示は約500点)

※資料は「神戸空襲を記録する会」から寄託されたもので、展示替えは寄託者が行っている。

神戸市立兵庫図書館 兵庫県神戸市兵庫区駅南通 5-1-1

http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/Tel:078-682-9501 Fax:078-682-9502

戦災記念資料室 提供:神戸市立中央図書館 

戦災記念資料室 提供:神戸市立中央図書館 

Page 61: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

118 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 119図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

土佐清水市立市民図書館では、地域の住人の暮らしを支援する情報として、「防

災・災害情報コーナー」を館内に常設し、防災関連の資料をまとめて閲覧できる

ようにしている。内容は、災害の記録や災害マニュアル本、防災関係の資料、行政

の発行する防災計画やリーフレットといった図書資料の他、DVDなどの視聴覚

資料も提供している。図書館サイトでは資料リストを公開するとともに、自治体

サイトなどの防災情報サイトのリンク集を紹介している。

駿河湾から土佐湾までの南海トラフのプレート境界は、歴史的に見て 100年前

後の周期でマグニチュード 8以上の巨大地震を引き起こしているため、高知県内

では今後予想される大地震や津波の発生を想定し、自治体のサイトでも防災情報

を発信している。

大地震が多発する活動期に入ったともいわれ、ある意味、全国どこでも災害に

よる被害が予想される日本列島において、地域の図書館が災害から生活を守るた

めの情報を常に発信していくことは、今後、ますます重要になっていくだろう。

防災・災害情報コーナー土佐清水市立市民図書館 (高知県土佐清水市)

防災・災害情報コーナー 詳細情報データ

●開始時期

2006年頃

●収集点数(2014年1月現在時点)

図書・視聴覚資料…約170冊

●運用体制

1.収集方法

市役所の防災担当課などの関係機関が資料を発行した際に、提供を依頼

2.館内、館外での提供方法

館内に特設の書架を設置

図書館サイトで公開

【参考情報】

土佐清水市立市民図書館 ウェブサービス

(http://opac.city.tosashimizu.kochi.jp/opac/wopc/pc/pages/ThemeSearch.jsp?srv=)

※「テーマ別検索」の「防災情報」URLから、専用コーナーの所蔵状況を確認できる。

●コレクションのポイント

1.収集内容の特色

流通している図書に加え、地域資料や関係機関が発行したリーフレット類も収集

2.収集にあたって心掛けていること

幅広い年代の市民に役立つよう網羅的に収集すること

個人だけでなく、事業者の危機管理意識の向上に役立つ図書を収集すること

書誌のように高価で個人では購入できない二次資料(予算の範囲内で)を収集すること

●活用事例

毎年9月の「防災月間」で特集展示を実施

土佐清水市立市民図書館 高知県土佐清水市幸町 4-19

http://www.tosashimizu-public-library.jp/Tel:0880-82-4151 Fax:0880-82-4160 E-mail:[email protected]

防災・災害情報コーナー 提供:土佐清水市立市民図書館 

Page 62: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

120 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 121図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

鳥取県立図書館では鳥取大震災から 70年の節目にあたる 2013年に、資料展示

「知ろう!備えよう!~図書館で防災力を身につける~」を行った。日程は 2013

年 9月 1日から 9月 29日までで、鳥取大震災の日(9月 10日)の他、防災の日(9

月 1日 )や防災週間(8月 30日~ 9月 5日)など住民の防災意識が高まる時期に

合わせて開催している。

展示は「過去の教訓に学ぶ」「いざという時に備える」という 2つのテーマで、

鳥取県の過去の災害や他府県の地震を中心とした歴史資料を紹介する他、住民生

活で実際に役立つハザードマップやリーフレットなど実用的な資料も展示し、過

去を振り返るだけではなく、これからにつなげることを意識した展示となってい

る。展示点数は 193点(うち、郷土資料は新聞のスクラップやハザードマップを

含め 53点)である。なお期間中は、他機関との交流企画展や講演会、座談会と連

携することで展示内容の充実、PR効果の向上を図っている。

また同館では、2階の郷土資料室内に小中学生にも使いやすい基本的な郷土資

料を集めた「ふるさと情報コーナー」を新設し、そこにも災害をテーマとした棚

を設け、県民に提供している。

資料展示「知ろう!備えよう!~図書館で防災力を身につける~」鳥取県立図書館(鳥取県鳥取市) 

鳥取県立図書館 鳥取県鳥取市尚徳町 101

http://www.library.pref.tottori.jp/Tel:0857-26-8155 Fax:0857-22-2996 E-mail:[email protected]

関連企画

1. 講演会・座談会「鳥取大震災から70年 震災の記憶を語り継ぐ」

(「震災の記憶を語り継ぐ」シリーズ)

日時 2013年9月7日 午後1時30分〜3時30分

会場 鳥取県立図書館2階 大研修室

講師 浅井秀子 氏(鳥取大学工学研究科准教授)         

主催 鳥取県立図書館

参加者数 80名

内容 前半は基調講演「震災体験の聞き取りから」(浅井准教授)、後半は体験者への聞き取り

(体験者:7名、聞き手:浅井准教授)

※「震災の記憶を語り継ぐ」シリーズは現在3回目。記録はCD化し、録音資料として提供。3回

目の内容も準備でき次第、提供予定。

2. 特別展示「鳥取県地震防災展」

期間 2013年9月1日〜9月29日

会場 鳥取県立図書館2階 特別資料展示室

主催 鳥取県危機管理局

展示内容 鳥取大学工学研究科制作の研究結果パネル10点。鳥取県制作の1943年鳥取地震

のパネル8点。被害状況写真5点。

3. 特別展示「兵庫県!!震災・防災・減災 〜阪神淡路大震災からの教訓〜」

期間 2013年9月1日から10月9日まで

会場 鳥取県立図書館 1階 閲覧室奥

主催 鳥取県立図書館、兵庫県立図書館

展示内容 阪神・淡路大震災被災地の記録写真(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター

所蔵)。当館所蔵の阪神・淡路大震災関係資料。兵庫県内各地の観光ポスターおよび観光パン

フレットなど。

特別展示「兵庫県!!震災・防災・減災 〜阪神淡路大震災からの教訓〜」 提供:鳥取県立図書館 

図書展示「知ろう!備えよう!〜図書館で防災力を身につける〜」 提供:鳥取県立図書館 

Page 63: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

122 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 123図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

長崎市立図書館では、先の大戦で原爆によって被爆した地域に建つ図書館の使

命として、原爆の記憶を後世に伝えるため、原爆に関わるさまざまな資料を収集

し、館内に「原爆資料コーナー」を設置している。これは 2008年 1月 5日の開館

当初から設置しているコーナーで、資料は書店や古書店での購入や寄贈によって

集められ、収集点数は 2,758点(2012年度末時点)である。この資料群だけのブッ

クリストはないが、図書館の資料検索と同様にOPACから検索が可能である。

同館はこの取り組みについて特別な告知はしてないが、図書館サイトの施設の

紹介ページで、原爆資料コーナーを知らせている。また、同じ市内にある長崎原

爆資料館と連携し、原爆資料の活用と保存を行っている。

その他、館内には原爆投下時にこの地に建っていた新興善小学校に設けられた

救護所を再現した「救護所メモリアル」も常設している。

原爆資料コーナー長崎市立図書館 (長崎県長崎市)

原爆資料コーナー 詳細データ

●開始時期

2008年1月2日(開館時から)

●収集点数

2,758点(2012度末現在)

●運用体制

1.収集方法

書店・古書店からの購入と寄贈

2.館内、館外での提供方法

館内に特設コーナーを設置

図書館サイトで資料検索可能

長崎市立図書館 長崎県長崎市興善町 1-1

http://lib.city.nagasaki.nagasaki.jp/Tel:095-829-4946 Fax:095-829-4948 E-mail:[email protected]

原爆資料コーナー 提供:長崎市立図書館 

Page 64: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

124 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 125図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

群馬県千代田町にある同館では、2012年と 2013年に企画展「災害史に学ぶ」

を実施した。これは 2011年に発生した東日本大震災を受けて、東日本大震災を

対岸の火事にすることなく、災害を身近に感じ、防災に役立てもらうため防災の

日に合わせて開催された。

このうち 2013年の実施では、防災や災害、地震、台風、水害などへの対応に関

するさまざまな資料を紹介する他、群馬県下で起きた災害・防災関係のパンフ

レット、千代田町洪水ハザードマップの配布を行っている。また、展示で紹介し

た計 40点余りの資料は、図書館サイトでブックリストを公開している。

群馬県は県境にある浅間山が噴火を繰り返してきた歴史がある。また、町内を

流れる利根川は何度か洪水を繰り返し、犠牲者を出してきた。同館の展示は災

害の歴史を振り返り、災害を身近に感じることで、災害が多発する地域において、

防災に役立てる情報を積極的に発信するための取り組みといえる。

なお、これら展示で紹介された災害関連資料の収集は、日ごろの図書館活動に

おける地域資料収集の一環として行われ、地域に関連した記述のある資料につい

ては、常に関係各位に呼び掛けを行い、収集している。

企画展「災害史に学ぶ」千代田町立山屋記念図書館(群馬県千代田町)

企画展「災害史に学ぶ」 詳細データ

●展示時期

第1回 2012年9月1日〜23日

第2回 2013年9月1日〜29日

●展示点数

40点

●収集にあたって心掛けていること

地元に則した内容の記述があれば、なるべく収集する

地域の歴史愛好家の方の意見を参考にしている

●活用事例

特集展示の他、学童の自由学習や生涯学習などで活用 

千代田町立山屋記念図書館 群馬県千代田町大字赤岩 1895-1

http://www.town.chiyoda.gunma.jp/tosyokan/Tel:0276-86-2885 E-mail:[email protected]

企画展「災害史に学ぶ」 提供:千代田町立山屋記念図書館 

企画展「災害史に学ぶ」 提供:千代田町立山屋記念図書館 

Page 65: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

126 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 127図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館は県立図書館として、山口県に関する資料を積極的に収集しており 、その

一環として、地域の災害に関する資料も収集しているが、このような日常的な業

務を生かし、大きな災害が起こった際や、他機関での災害に関する行事にちなん

で、災害に関する地域資料などの展示やパスファインダーの作成などを行い、所

蔵資料の利活用を図っている。

2007年4月のソロモン諸島沖地震に関する展示の際には、「災害から身を守る

ために」という情報源リストを作成し、ウェブサイトで公開している(現在は更

新なし)。この情報源リストは、 図書館が所蔵する震災関連資料や自治体・企業な

どが提供する震災情報ウェブサイトの URLを紹介するもので、「発災から被災後

まで」という時間軸に沿ったテーマで編集されている。

また 2013年 5月には、資料展示「山口県 昭和・平成の災害記録」(山口県文

書館 第 8回中国・四国地区アーカイブズウィーク「山口県災害記」関連展示)に

ちなんで「山口県の災害について調べる」というパスファインダーを作成、公開

している。内容は山口県内の災害に関する資料が中心となり、より最新の情報と

資料に基づいている。こちらはウェブ版(HTML、PDF)の他、紙版(館内で配布)

がある。

情報源リスト「災害から身を守るために」山口県立山口図書館(山口県山口市)

山口県立山口図書館 山口県山口市後河原 150-1

http://www.library.pref.yamaguchi.lg.jp/Tel:083-924-2111(代表) Fax:083-932-2817 E-mail:[email protected]

関連情報災害から身を守るために(http://library.pref.yamaguchi.lg.jp/hp/usr/pass/disaster.htm)山口県の災害について調べる(http://www.library.pref.yamaguchi.lg.jp/ymg_disaster)資料展示「山口県 昭和・平成の災害記録」(http://library.pref.yamaguchi.lg.jp/shiryotenji/201306)山口県文書館 第8回中国・四国地区アーカイブズウィーク 山口県災害記 ̶過去の記録に学ぶ (̶http://ymonjo.ysn21.jp/index/page/id/357)

2003年 7月 26日、宮城県北部(旧・鳴瀬町〈現・東松島市〉、旧・矢本町〈現・

東松島市〉、旧・河南町〈現・石巻市〉周辺)を震源に、最大震度 6弱を超える地

震が 1日の内に 3回発生した。

同館ではこの宮城県北部連続地震の発生直後、震災関連の新聞記事のスクラッ

ピングや、出版物の収集を行う他、館内の被害状況と復旧の様子、矢本町(現・東

松島市)の崖崩れ、道路の陥没の様子などを図書館サイトから発信した。これら

の写真は現在も公開されている。

また、この震災を契機に危機管理コーナーを図書館に設ける他、全国から届い

た応援メッセージの保存も行っている。こうした活動は、東日本大震災の発生時

において、資料のアーカイブのみならず、被災者にインタビューして体験談を収

集するなど、同館の震災への取り組みを発展させていく土壌となっている。

宮城北部連続地震についてのアーカイブ東松島市図書館(宮城県東松島市)

東松島市図書館 宮城県東松島市矢本字大溜 1-1

http://www.lib-city-hm.jp/Tel:0225-82-1120 Fax:0225-82-1121

参考情報宮城北部地震の記録http://www.lib-city-hm.jp/lib/2003.7zisin/zisin2003.html

Page 66: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

128 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 129図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

同館では地域資料を収集する一環として、長崎大水害に関連する資料を収集し

ている。

長崎大水害は、1982年 7月 23日から翌日 24日未明、長崎市を中心に発生し

た集中豪雨で、この災害による死者・行方不明者は長崎市内を中心に長崎県内で

299名、被害総額は約 3,000億円といわれる。日本の水害史においても未曾有の

雨量は、現在、気象庁で発表している「記録的短時間大雨情報」が発表されるきっ

かけとなった。

長崎市では、毎年、7月 23日に前後して、 この未曾有の大水害を振り返るため

に市役所や支所、行政コーナーにおいてこの水害を記録した写真展示を行って

いるが、 2013年に初めて、長崎市立図書館のロビーで展示を行った(開催期間は

2013年 7月 18日から 22日まで)。行政が市民への周知活動として、 人が集まる

場所である図書館を有効に活用した例といえる。

長崎大水害の展示長崎市立図書館(長崎県長崎市)

長崎市立図書館 長崎県長崎市興善町 1-1

http://lib.city.nagasaki.nagasaki.jp/Tel:095-829-4946 Fax:095-829-4948 E-mail:[email protected]

長崎大水害写真展 提供:長崎市立図書館 

同館の大阪資料・古典籍室では、大阪に関する資料や江戸期から明治初期を中

心とした近世の古典籍資料を収集しているが、東日本大震災を受けて、2011年 5

月、所蔵する資料の中から災害に関するものをピックアップし、津波や地震など

の自然災害に対する備えを見つめ直すためのテーマ展示を行った。「今、震災を考

え防災を見つめ直す」と題されたこの展示では、同館の閲覧室を会場として、全

国の防災マニュアルや帰宅支援マップ、企業の防災対策、災害資料関係、活断層

関係資料、大阪府内の自治体の防災計画、防災マップ、ハザートマップなど豊富

な資料が紹介された。また展示で紹介した資料はブックリストを作成し、ウェブ

で公開している。このリストがあることで、大阪府内の自治体が公表している資

料を、展示が終わった後も一覧することができる。

東日本大震災発災から 3年が経過する 2014年、中央図書館でも「歴史地震に

学ぶ『震災と復興』展」を兵庫県立図書館や福島県立図書館の協力を得て開催し

ている。こちらは、大阪府立中央図書館と中之島図書館が収集している大阪付近

の歴史的災害の資料の他、現在の災害を振り返り、防災意識を高める資料を展示

した。

展示「今、震災を考え防災を見つめ直す」大阪府立中之島図書館(大阪府大阪市)

大阪府立中之島図書館 大阪府大阪市北区中之島 1-2-10

http://www.library.pref.osaka.jp/site/nakato/Tel:06-6203-0474(代表)

参考情報今、震災を考え防災を見つめ直すhttp://www.library.pref.osaka.jp/nakato/osaka/booklist/005_bousai.html

Page 67: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

130 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 131図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

東日本大震災を受けて同館では、 2013年 10月 26日から 12月 8日まで、図書

館資料展「豊橋の災害誌~過去の災害と防災~」を開催した。この資料展は豊橋

の過去の災害の歴史を振り返るもので、主として自然災害に関する災害の歴史

をパネルにして紹介した他、図書や写真などの資料、市が発行している津波洪水

マップや災害ハザードマップなど約 100冊を展示した。

展示会開催中には、関連企画として市の防災危機管理課の職員を招き、過去の

災害や災害時の避難方法、注意点を学び、自宅の地質、標高、避難場所などの状況

を調べ、避難地図をつくるワークショップ「親子で避難計画をつくろう」も行っ

ている。豊橋市では 1999年の巨大竜巻、1945年の三河地震、1953年の台風 13

号など、過去にいくつかの大きな災害を経験しており、こうした地域の震災の歴

史を振り返る同館の展示は、今後の防災の備えを喚起し、その意義を提起するも

のだ。

なお、同館では東日本大震災で避難を余儀なくされ、住所や氏名の確認証を持

たない被災者に向けて、本人からの申し出を受ければ貸出券を発行するサービス

を行っている。

資料展「豊橋の災害誌~過去の災害と防災~」豊橋市中央図書館 (愛知県豊橋市)

豊橋市中央図書館 愛知県豊橋市羽根井町 48

http://www.library.toyohashi.aichi.jp/Tel:0532-31-3131 Fax:0532-31-4254 E-mail:[email protected]

「豊橋の災害誌」展示会場 提供:豊橋市中央図書館

「豊橋の災害誌」関連ワークショップ 提供:豊橋市中央図書館

参考情報豊橋の災害誌〜過去の災害と防災〜(http://www.library.toyohashi.aichi.jp/oshirase/sonota/H25saigaishi/H25saigaishi.htm)ワークショップ「親子で避難計画をつくろう」(http://www.library.toyohashi.aichi.jp/oshirase/sonota/H25saigaishi/H25saigaishigyoji.htm)

Page 68: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

132 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 133図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

2003年 7月 18日から 19日にかけて、九州北部を襲った記録的な集中豪雨は

「7・19集中豪雨」と呼ばれ、福岡県飯塚市も甚大な被害をうけた。飯塚図書館も、

約 85,000冊(CD・ビデオ含む)の蔵書が水に浸り、半年以上の休館を余儀なく

されている。

同館では2013年6月26日から7月31日、発災から10年が経ったことを機に「あ

れから 10年」というテーマで展示を行っている。展示内容は、大判写真と飯塚大

水害を記録した写真ファイル 2冊、飯塚大水害の関連資料、新聞記事クリッピン

グ(毎日新聞、西日本新聞、朝日新聞、読売新聞)、イイヅカコミュニティセンター

所蔵の写真集が 5冊の他、災害関連書籍が紹介された。こうした展示物の中には、

図書館が作成した資料もある。展示は、災害当時の資料を紹介することで、市民

が被災状況を知り、防災への備えや河川に対する意識の向上をはかるために行わ

れた。なおこの展示は、同年 7月 7日に飯塚市の主催で行われた「7・19大水害

10周年兼第 5回飯塚防災フェア」に開催が合わせられた。

展示「あれから10年」飯塚市立飯塚図書館(福岡県飯塚市)

展示「あれから10年」 詳細データ

●展示期間

2013年6月26日〜7月31日

●展示点数

大判写真…9枚 

飯塚大水害(2003年7月19日)の記録…写真ファイル2冊

飯塚大水害(2003年7月19日)の関連記事…新聞記事(毎日・西日本・朝日・読売)

イイヅカコミュニティセンター(中央公民館)所蔵…写真集5冊           

飯塚大水害関係だけでなくその他の災害関連書籍

●展示のポイント

7.19大水害から10周年を迎え、水害当時の資料などを展示し、市民が被災状況を知ることで

災害への備えを忘れることのないよう、防災への普及啓発や河川に対する意識向上を図るため

に行った。展示にあたり写真などを多用し、防災について分かりやすく視覚で訴え認識しても

らうことを心掛けた。

飯塚市立飯塚図書館 福岡県飯塚市飯塚 14-67(イイヅカコミュニティセンター1階)

http://www.iizuka-library.jp/Tel:0948-22-5552 Fax:0948-22-5770 E-mail:[email protected]

展示「あれから10年」 撮影:岡本真 撮影日:2013年7月27日

Page 69: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

134 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 135図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

大分県立先哲史料館は、県立図書館と県立公文書館とともに、複合施設「豊の

国情報ライブラリー」の中に入る史料館である。大分県立図書館と合同企画を

行っているため、今回の特集に入れる。

同館は大分県に関連する史料を広く収集しているが、東日本大震災を受けて、

所蔵資料の中から「大分県で起きた自然災害」に関する史料をピックアップして

展示を行っている。「豊の国情報ライブラリー」で行われた「大分のアーカイブズ

―資料にみる大分の災害―」(2012年 2月 3日から 3月 20日まで)は、同館と県

立図書館、公文書館の 3館による合同企画で、 3館が入る複合施設、大分の過去

の災害記録を紹介する展示である。

また先哲史料館は、他機関への史料提供も行っており、大分県埋蔵文化財セ

ンターと共催で行った大分空港のロビー展示「豊の国を襲った地震・津波」では、

近世以降に大分県内を襲った地震(津波)に関する史料を展示した(展示史料は

レプリカ)。なお同内容の展示は、大分県社会教育総合センターでも実施している

(2013年 3月 1日~ 3月 31日)。

このような展示は、日常的に行う情報収集から必要な情報をキュレーションし、

ことあるごとに利用者に発信する取り組みとして重要だろう。災害資料をことさ

らに集めていなくても、通常業務として収集している地域資料の中にある災害資

料を、防災意識の醸成に役立てればよいのである。

なお同館は 2013年度中に、大分県内の地震・津波に関する過去の記録をまと

めたガイドブックを刊行する予定である。

コレクションを活用した資料展示大分県立先哲史料館(大分県大分市)

大分県立先哲資料館の資料展示 詳細データ

●コレクションの活用事例

「豊の国を襲った地震・津波」展

会期 2012年12月1日〜 2013年1月31日

展示点数 5点(柴山勘兵衛記・イエズス会士日本通信・豊城世譜・宝永四亥年高潮之記録〈浦

白浦成松庄屋文書〉・嘉永七甲寅年十一月(色利浦文書〈塩月家文書〉)

三館合同展「大分のアーカイブズ」

会期 2012年2月3日〜 3月20日

展示規模 平常展展示コーナー

開催日数 40日間

入館者数 4,713人(1日平均118人 )

史料保存セミナー

日時 2011年8月5日 10:30 〜 16:00

場所 大分県立図書館 視聴覚ホール

テーマ 「災害と史料保存を考える」

登壇者  平井義人(県立先哲史料館長)、芦刈政治(豊後大野市)、久米忠臣(杵築市・郷土史家)、

橋本竜輝(天草市立天草アーカイブズ主事)

聴講者数 81人

内容 大分県歴史資料保存活用連絡協議会(会員、市町村の文化財保護担当課および文書管理

担当課・県公文書館・別府大学アーカイブズ講座・県立先哲史料館)および県内の記録史料所

蔵機関・県民を対象に、古文書や公文書の保存・管理についてのセミナーを実施した。

大分県立先哲史料館 大分県大分市王子西町 14-1

http://kyouiku.oita-ed.jp/sentetusiryokan-b/Tel:097-546-9380 Fax:097-546-9389 E-mail:[email protected]

ロビー展示「豊の国を襲った地震・津波」 提供:大分県立先哲史料館

Page 70: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

136 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 137図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神埼市立図書館は 2012年、地域に語り継がれるべき事故として、アンドレ・

ジャピーの遭難事故 に関する展示を行った。

この事故は 1936年、福岡県福岡市早良区と佐賀県神埼市との境に位置する脊せ

振ふり

山の中腹に、フランス人の冒険飛行家、アンドレ・ジャピーが運転する小型飛

行機が墜落した飛行機事故である。この事故でジャビーは重傷を負ったが、村民

らの手厚い介抱で一命をとりとめ、これをきっかけに日仏の交流が生まれている。

展示資料は事故機の破片や当時の写真などで、同じ神埼市内にある公共施設脊

振ふれあい会館から借り受けたもの。同館では展示が終わった現在も、この事故

を POPで紹介している。また関連する資料も所蔵している。

その地域で起きた事件や事故を語り継いでいくこと。それは、地域の安全を考

えることにつながると同時に、かつてその地域に住んでいた人々に思いをはせ、

地域への愛着を深めることにつながるだろう。

なお神埼市立図書館は、『次郎物語』の作家・下村湖人を始めとする郷土作家の

作品リストなども図書館サイトで公開しており、地域の情報発信に積極的である。

アンドレ・ジャピー遭難事故の展示神埼市立図書館(佐賀県神埼市)

神埼市立図書館 佐賀県神埼市神埼町鶴 3388-5

http://library.kanzaki.ed.jp/Tel:0952-53-2325 E-mail:[email protected]

展示の様子 提供:神埼市立図書館 

事故機の破片などが展示されいてる脊振ふれあい館 提供:神埼市立図書館 

Page 71: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

138 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 139図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

神奈川県立川崎図書館では川崎公害裁判の資料を保存し、館内に専用のコー

ナーを設置して、一部資料を開架に出している。これは裁判の和解から 2年後の

2001年 5月 18日に、 「歴史を風化させたくない」「地元の市民や研究者に役立て

てもらえるように、地元で記録を公開してもらいたい」という川崎公害裁判の原

告団と弁護団の希望で寄贈された裁判資料だ。

内容は 1982年 3月の第 1次提訴から 1999年 5月に和解が成立するまで、17

年にもおよんだ川崎公害裁判の訴訟記録で、原告・被告の証言、主張、関連資料

など、約 500冊が複製、製本され、公害裁判の全容を知ることができる極めて価

値の高い記録資料である。

川崎公害裁判訴訟記録神奈川県立川崎図書館(神奈川県川崎市)

川崎公害裁判訴訟記録 詳細データ

●開始時期

2001年5月18日(川崎公害訴訟原告団・弁護団から寄贈の受入)

●収集点数

約500冊前後

●運用体制

1階閲覧室の公開書架に一部を配架し、その他は書庫内配架(館内閲覧のみ、貸出不可)

OPACで書誌情報の検索可。

図書館サイトの「利用案内」にコレクション概略を紹介。

●コレクションのポイント

一般にはアクセスしにくい裁判記録だが、製本され、手に取りやすい形で並べている。

証拠編に含まれる文献資料などの内容細目一覧を図書館で作成、閲覧に便利を図っている。

個人情報も含み扱いに注意を要する資料だが、川崎公害訴訟原告団・弁護団の「この記録を市

内で公開したい」という強い思いを受けて実現しているコレクションである。

神奈川県立川崎図書館 神奈川県川崎市川崎区富士見 2-1-4

http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/Tel:044-233-4537(代表) Fax:044-210-1146

川崎公害裁判訴訟記録資料 提供:神奈川県立川崎図書館

Page 72: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

140 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 141図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

鹿嶋市立中央図書館では、館内に「防災・地震に関する図書~いざというとき

のために~」という棚を設けて、防災関係の資料を 2008年ころから常設し、市民

の防災意識を醸成する取り組みをしている。配架数は 48冊である。

なお同市にある鹿島港は、先の東日本大震災でも被害が出ており、震災の時に

は震災関連資料を集めてコーナーをつくっていたが、現在は、震災前から行って

いた防災の棚を継続している。

特別な予算はついていないが、日常的な選書で購入した図書から職員が必要な

ものを選んで、棚をつくっている。

常設棚「防災・地震に関する図書~いざというときのために~」鹿嶋市立中央図書館(茨城県鹿嶋市)

鹿嶋市立中央図書館 茨城県鹿嶋市宮中 2398-1

http://opac.city.kashima.ibaraki.jp/Tel:0299-83-2510 Fax:0299-83-2529 E-mail:[email protected]

防災・地震に関する図書コーナー 提供:鹿嶋市立中央図書館 

千葉県立中央図書館では、2013年 7月にパスファインダー(調べ方案内)を

作成し、千葉県で起きた過去の災害の歴史について同館が収蔵する図書や雑誌・

新聞を案内している他、千葉県庁が発信している防災情報も紹介している。パス

ファインダーは館内で配布している他、図書館サイトでも公開している。

パスファインダーはブックリストのような文献リストとは違い、利用者が探し

ているテーマに関連する資料の調べ方を一覧する目的でつくられるものである。

パスファインダーは新しい情報が集まるごとに更新され、大きくても A3サイズ

のリーフレット(1枚もののチラシ)の体裁をとることが多く、利用者は自由に

リーフレットを持ち帰ることができる。

2000年代の始めごろから、図書館の役割が貸出のみならず、課題解決を支援

することも視野に入れ始めたときに、その課題を解決する一つの方法としてパス

ファインダーが注目され、さまざまな図書館が実践し、今にいたる試みとなった。

なお千葉県立図書館は、東日本大震災の被災地に建つこともあり、被災直後か

ら震災関連の展示を積極的に行っている。大震災から 3年を迎えた 2014年 2月

には、東部図書館(千葉県旭市)が「語り継ぐ震災の記憶と記録―いのちを守るま

ちづくり―」というテーマの講演会も開催している。

防災情報のパスファインダー千葉県立中央図書館(千葉県千葉市)

千葉県立中央図書館 千葉県千葉市中央区市場町 11-1

http://www.library.pref.chiba.lg.jp/Tel:043-222-0116 Fax:043-225-8355

パスファインダー 提供:千葉県立中央図書館 

Page 73: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

142 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 143図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

2010年に発生し、宮崎県内の畜産農家や関係団体、県民に甚大な被害と大きな

不安を与えた口蹄疫は、終息から 4年がたったいまなお、その悲劇の記憶は色濃

い。口蹄疫が発生した際、休館を余儀なくされた宮崎県立図書館では、現在も口

蹄疫について調べるパスファインダーを用意し、口蹄疫の正しい知識と予防、復

興対策への理解を深める取り組みをしている。

口蹄疫発生時、同館では「口蹄疫に関する最新情報」と題して、速報的な情報

発信を行い、その情報をのちにパスファインダーにまとめている。パスファイン

ダーは、口蹄疫に関する文献・資料だけでなく、防疫や復興などの記録を網羅的

に収集・整理し、宮崎県の重要な事実の記録として後世に伝え、県民や関係機関

に活用してもらうことで、今後の復興や再発の防止などに役立てるものである。

パスファインダーの項目には「新聞記事を調べる」「雑誌記事を調べる」「図書館

を調べる」などの 11項目があり、口蹄疫の概要や対策、被害の状況を振り返るこ

とができる。情報提供だけではなく、口蹄疫に関する資料も収集しており、現在、

図書、雑誌、ビデオで約 160点を所蔵している。内容は、畜産・防疫関連の専門書・

マニュアルの他、地元紙の関係記事の切り抜きをまとめたもの、報道機関が作成

した防疫の記録、口蹄疫体験の作文コンクールでの作品集や絵本など、幅広いも

のとなっている。

また、口蹄疫に関する知識だけではなく、食や畜産について、子どもも理解を

深めるような工夫を施した展示「口蹄疫からの復興企画展 心を一つに防ごう口

蹄疫 2012」(2012年 6月 12日~ 24日開催)などを 2011年以降、毎年行っている。

口蹄疫に関する情報提供宮崎県立図書館(宮崎県宮崎市) 

宮崎県立図書館 宮崎県宮崎市船塚 3-210-1

http://www.lib.pref.miyazaki.jp/Tel:0985-29-2911(代表 ) E-mail:[email protected]

口蹄疫に関する情報提供 詳細データ

●開始時期

2011年1月(資料収集の開始)

2011年4月(情報提供の開始)

●運用体制

1. 収集方法

県庁各課・市町村の関係部局や報道機関などに広く資料情報の提供を呼び掛け

2. 館内、館外での提供方法

常設コーナーは設けていないが、2011年以降、毎年企画展示を開催し、関連資料を展示

●コレクションのポイント

口蹄疫に関する資料は、図書、雑誌、ビデオで約160点を所蔵しており、畜産・防疫関連の専門書・

マニュアルだけでなく、地元紙の関係記事の切り抜きをまとめたもの、報道機関が作成した防疫

の記録、口蹄疫体験の作文コンクール作品集や絵本など、幅広い。

● 活用事例

資料の貸出

企画展示・関連講座などを他機関と連携して開催(文献・パネルなどの展示、防護服の展示・着

用体験、スライドショー、DVD放映、 朗読、消毒体験の講座などを複数回開催)

関連情報のパスファインダー作成・提供

「口蹄疫からの復興企画展〜心を一つに防ごう口蹄疫 2012〜」展示風景 提供:宮崎県立図書館 

Page 74: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

144 図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 145図書館で学ぶ防災・災害  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

長岡市立地域図書館 7館の指定管理者である株式会社図書館流通センターは

「語り継ぐもの・中越地震データベース構築事業 実行委員会」を立ち上げ、中越

地震による被災者の体験などをデータベース化している。このデータベースは

「語り継ぐもの」と名付けられ、被災体験者の体験談や写真など、被災者の生の声

を収集している。この取り組みは、公益財団法人図書館振興財団から約 700万円

の助成を受けており、データベース化にあたっては「語り継ぐもの・中越地震デー

タベース構築事業実行委員会」を結成、2012年 4月に公開された。助成金は 2010

年の 6月から 2012年 3月までだが、その後は実行委員会でデータベースの運用

を継続し、図書館内でチラシを配布するなどして PRを行う他、2013年 9月には、

新聞などのメディアに向けてニュースリリースも行っている。データベースは全

資料がデジタル化されており、体験談集などの関連資料も許諾が取れたものはデ

ジタル化して公開している。

一方、図書館流通センターの指定管理から外れる長岡市立中央図書館では、中

越地震などの「災害アーカイブス」を公開している。これは、7・13水害や中越大

震災、中越沖地震の被害・救援・復旧・復興関連する記録の他、 東日本大震災に

よる被災者を受け入れている市内の避難所で収集した資料をアーカイブしている。

「語り継ぐもの」中越地震データベース長岡市立図書館(新潟県長岡市)

「語り継ぐもの」中越地震データベース

●開始時期

2012年4月(データベースの公開開始)

●収集点数(2013年7月現在)

公募原稿、写真…139件

取材記事…33件

個別体験談…287件

体験談集(PDF)…12冊

●運用体制

1. 収集体制

体験談の収集は公募や取材による

公募では市内図書館やコミュニティセンターに募集要綱、ポスター、チラシの配布の他、図書

館サイトに募集要項を掲載。

市政だよりへ募集チラシの折り込み、全戸配布

新潟日報社OB記者を同行して取材

※既刊の体験談集については、発行者を訪問し、許諾を得ている。

2. 館内、館外での提供方法

図書館サイト上のデータベースで公開

※「語り継ぐもの・中越地震データベース構築事業」実行委員会でデータベースの運用を継続

し、図書館内でチラシを配布するなどしてPRを行っている。2013年9月には、新聞などのメ

ディアに向けてニュースリリースも行っている。

長岡市立図書館 (語り継ぐもの・中越地震データベース構築事業実行委員会)新潟県長岡市坂之上町 3-1-20 長岡市立互尊文庫内http://kataritsugumono.jp/Tel:0258-35-7981 Fax:0258-35-7982

参考情報「語り継ぐもの」中越地震データベースhttp://kataritsugumono.jp/

Page 75: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

146 司書名鑑 No.2  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 147司書名鑑 No.2  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

とになりました。新聞記事を収集するバイトを続けてはや 3 年、周りからは「谷合

さんなら、仕事が分かってるはず」と思われていたようですが、バイトでする仕事

とは全く違いました。司書資格を持っていなかったので、そもそも目録の採り方

も分かりませんでした。

――途中で司書資格を取られていますが、そのきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

谷合:私は図書館学の体系を知らないので、日々の業務をしていても「木を見て森を見

ず」という状態で、自分の仕事のやり方が本当に正しいのか非常に不安でした。だ

から、司書資格を取って学びたいと思ったのです。それに、将来きっとなにかの

役に立つ、とも思っていました。それに大学でもう一度学びたいという思いもあ

りました。そこで、バイトから正職員になっていましたが、またバイトにしても

らって、出勤日数を減らしてもらい、自費で資格を取りに行きました。

   1 年で資格を取る予定だったのですが、途中で妊娠が発覚して、つわりがひどく、

立ち上がれないようになり、仕事も夜間の講習も行ける状態ではなくなってしま

いました。1 年目はそのような状態で、2 年目で挽回しようと思ったのですが、赤

ちゃんを抱えた状態での受講は大変でした。ベビーカーに赤ちゃんを乗せて講習

に連れて行ったこともあるし、義母に赤ちゃんを預けて受講したこともあります。

実習中に授乳したり、書庫の中で搾乳していました。3 年目には 2 人目の子どもが

できて、文字どおり這うように受講して、資格を取りましたね。

――大変な状況のなかで資格を取得されたんですね。

谷合:ええ。でも、3 年がかりで取った司書の講習は本当に良かったです。自分が図書館

員になるという自覚ができました。 広くて深い図書館の世界を初めて知りましたね。

   これがもし、学生時代に単位のためだけに授業に出ていたら、身に付かなかった

と思います。すべての講義が面白かったので、非常に熱心に受講しましたし、こ

れまでの自己流でやっていた仕事を、改めて学び直すことができました。

   さらに幸福だったのは、司書の講習を受けた後、専門図書館協議会(専図協)に入っ

たのがきっかけとなり仲間ができたことです。孤独なワンパーソンライブラリー

が、そこでやっと横の世界を知りました。だから、専図協にはすごく恩義を感じ

ています。いま、私が十年以上も専図協関西地区協議会で委員長をやっているの

――図書館員になった経緯からお聞きしてよろしいでしょうか。

谷合:図書館員になったのは、偶然なんです。もともと司書を目指して勉強していたわ

けではなく、京都大学文学部で現代史学を専攻し、明治以降の歴史について学ん

でいました。大学を卒業した後、大学院に進むことにしたのですが、試験に落ち

てしまい、院浪することになってその間、生活費を稼ぐために始めたアルバイト

が、財団法人大阪社会運動協会(現・公益財団法人大阪社会運動協会)の資料収集

のアルバイトだったんです。

   当時は『大阪社会労働運動史』の編纂が始まったばかりで、私は明治時代から昭和

戦前期の新聞を読んで、記事をコピーして索引をつくるという仕事をしていまし

た。歴史の勉強にもなり、学びと実益を兼ねるバイトでしたね。

――大学院を受験するまでのアルバイトのつもりが、そのままそこに居ついてしまったんですね。

谷合:その通りです。バイトを始めたのが 1982 年ですが、1985 年には資料室の責任者に

なりました。私が 27 歳の時です。

   もともと資料室は非公開で、図書館という趣きではありません。労働運動史の執

筆者だけが閲覧する資料室です。図書館で扱うにはややこしい資料を扱っていま

した。これらは、いまでこそアーカイブズ資料といわれますが、いわゆる原資料

です。そういった資料を扱って、見よう見まねで仕事をしていました。

   責任者の仕事に就くことになったいきさつはこうです。

   前任の責任者が退職することになったのですが、後任がおらず、私が引き継ぐこ

▶図書館員になったのは偶然

司書名鑑 No.2谷合佳代子さん公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」

前号から始まった新企画「司書名鑑」のNo.2は、公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」の館長、谷合佳代子さんをご紹介します。

Directory of librarian

Page 76: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

148 司書名鑑 No.2  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 149司書名鑑 No.2  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

は、恩返しのつもりなんです。ただし今年度いっぱいで辞めることに決めました。

長く同じ人がやっているというのは問題があると思うし、若い方にやってもらい

たい。こちらも仕事を減らさないと、頭も体ももちませんしね(笑)。

――司書資格を取得してからの活動を教えていただけますか?

谷合:2000 年に大阪社会運動協会資料室は大阪府労働情報総合プラザと統合し、公開型

の図書館になりました(名称は「大阪府労働情報総合プラザ」)。それまでは非公

開の資料室だったので、一般的な意味での「利用者」という存在がいなかったんで

す。図書館の運営というものを知ったのは、実質的にはこのときからです。戸惑

うことが多かったです。たとえば、情報提供した結果に対して嫌がらせを受けた

り、図書館とは別のフロアでトラブルがあったりしました。でもやりがいも感じ

ましたね。レファンレスを担当した利用者の方が覚えていてくださって、次のと

きにも指名をしていただいたりしました。

   2000 年から大阪府労働情報総合プラザが閉館するまでの 8 年間に、図書館の利

用者を 4 倍にできたのは、インターネットを活用したことが要因の一つでしょう。

2000 年というと、ちょうどインターネットが爆発的なブームになったころですが、

まだ情報プラザには図書館サイトがなかったのです。いまだにウェブサイトを公

開してない図書館もありますね。図書館サイトは、私が 1 日でつくったんですよ。

朝、ウェブ制作ソフトを買ってきて、1 日中マニュアルを読んで、夕方には公開

しました。ブログも同様です。ちなみに専門図書館で最初にブログをつくったの

は当館です。専図協で開催された岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド

株式会社代表取締役/プロデューサー)のセミナーを聞いて、帰ってきた次の日

からすぐに始めました。電子化の波に乗れたと思います。ネットを積極的に活用

して、思いついたらすぐに実行するフットワークの軽さを大切にしました。また、

重要なのは宣伝なんです。ネットのおかげで、館内外での宣伝を積極的に行うこ

とができました。

――2008 年、府の財政再建策で廃館した大阪府労働情報総合プラザを、エル・ライブラリーとして立ち上げ、軌道に乗せるまで、いろいろなご苦労があったんじゃないですか?

谷合:2008 年 7 月にプラザが廃止されて、2008 年 10 月にエル・ライブラリーを立ち上

げるめまぐるしい動きのなかで、とにかく前向きに、さまざまな試行錯誤をした

ことは確かです。もともとの性格というのもあるけど……へこたれないんです。

   図書館が廃止になった時、もうひとりの職員である千本沢子さんに、お給料を出

せないかもしれないよと言ってもついてきてくれました。赤本忠司理事長(当時)

も私財をはたいて、頑張ろうと。

   ありがたかったのはエル・ライブラリー立ち上げの時、ボランティアで助けてく

れる方たちがすぐに現れたことですね。その方たちは開館間もなくからずっと私

たちを助けてくれています。百何十名の労働研究者の方たちのお世話もさせてい

ただいてきたので、その方たちも助けてくれました。そういったスタッフやボラン

ティアの力が、すごく大きいと思います。図書館というのはひとりではできません。

仲間の力が本当に大切です。そして、私たちが仲間の力で頑張れば、支援者も増え

ます。そして支援者が増えるとますます頑張ろうと思えますし、相乗効果ですよね。

――辞めてしまうという選択肢もあったかと思いますが、その選択をしなかったのはなぜでしょうか?

谷合:貴重な資料というのは何十年もかけて集めていますが、諦めて捨てたら一晩でな

くってしまいます。そこまでの何十年分かの努力は全部水の泡。それに「この図書

館にお願いすれば、永久に資料を保存してくれる」と信じて持ってきてくださっ

た方の資料を守って次の世代に渡すのは、私たちの責任だと思っているんです。

ここで諦めたらその責任を果たせませんから。ここ 5、6 年間、私は責任を果たす

ために図書館を続けています。

   でも、正直、エル・ライブラリーの運営にお金がいくらかかるか分かりませんで

したから、とても悩みました。資金を集められなければ、給料はゼロです。とはい

え、ともかく家賃さえ払えれば、図書館は残せます。その場合は非公開にして書

庫だけ残す。そして資料を散逸させないために、引き取ってくれる大学図書館な

どをとにかく探せばいい。私たちは 3 年は我慢しようと思いました。3 年間我慢し

たら、次の大阪府知事選挙などもあり、様子が変わるかもしれない、そういう話

し合いを重ねました。

   なんとか図書館は開けられましたが、閲覧席も 5 分の 1 程度になり、来館者数は閉

館前の 15 分の 1 になってしまいました。新聞購読をやめたことや館内スペースが

狭くなったことで、新聞を見に来たり、時間調整のために来たりする方たちの来

館がなくなったんですね。絶対に、ここの資料じゃないと困るという方たちだけ

が来館するようになったんです。そういった意味では、専門性が高まったともい

えます。また、以前の図書館は大阪府の委託事業だったので、府民以外には貸出

せないなどの制限があったのですが、委託から外れたのを契機に、郵送貸出など

の遠隔地サービスを始めたんです。来館しなくても利用できるようになったこと

も、来館者数が減った原因でもあるでしょう。

▶図書館廃止、そしてエル・ライブラリーへ

▶資料室から図書館へ

Page 77: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

150 司書名鑑 No.2  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 151司書名鑑 No.2  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

谷合佳代子(たにあい・かよこ)

公益財団法人大阪社会運動協会・大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」大阪市中央区北浜東 3-14 エル・おおさか(府立労働センター)4 階http://shaunkyo.jp/Tel : 06-6947-7722(図書係) Fax : 06-6809-2299 E-mail : [email protected]

エル・ライブラリー館内

――普段のお仕事をお聞きしてもよろしいでしょうか。

谷合:細かい事務の他にイベントの企画を考えたり、見学の受け入れ準備をしたり、同

時に資金調達も行っています。図書館を開けているだけでは、お金は入ってきま

せんから。また、私は法人の常務理事でもあるので、 理事会を招集したり、議案書

を書いたり、予算や決算の仕事などもしています。一般の図書館などでは、図書

館員は経理などあまり考えないと思いますが、そういったこともやらなければな

りません。経理のほとんどの部分は館長補佐の千本さんがやってくれていますし、

顧問税理士もいますが、これらのことをすべてこなしていかなければならないの

で、頭がグルグル状態です。個人としては、原稿の締切に追われる毎日です。常に

原稿依頼があります。その他にも講演の準備や、専図協などでの企画の立案もし

ています。でも、やらなければならないんです。やれているかどうかは分かりま

せんが……。

   図書館業務は、私を含め職員 2 名、週 2 回のアルバイトスタッフが 1 名と、大学か

ら派遣されてくるアルバイトで回しています。他に定期的に来てくれるボラン

ティアが 3 名、不定期のボランティアが 3 名くらいいらっしゃって、すごく助かっ

ています。そういった方たちに支えられて、なんとか切り盛りしています。

――エル・ライブラリーの今後と、図書館の未来について思うことをお聞かせください。

谷合:エル・ライブラリーの今後ということであれば、悩みはつきません(笑)。

   一番大きな悩みは、若い方を雇えないことです。5 年以内に新しいスタッフを雇え

ないと、考えないといけません。次の世代の職員を雇えないことには、未来につ

なげることができないのですから。5 年くらいが勝負だと思っています。どうすれ

ば財政面をしっかりさせられるか、これも重要な課題です。

   エル・ライブラリーとしては、「資料を次の世代に伝える」というのが最大の使命

なので、それを達成するためになにが最適な方法なのか、今はいろいろ迷ってい

ます。「資料を次の世代に伝える」という使命さえ果たせれば、組織としての法人

を守らなくても、資料を例えばどこかの大学に渡してもいいわけですから。いろ

いろな選択肢を考えます。

   図書館の未来ということであれば、業界全体の底上げを図っていかなければな

らないと思っています。恩返しだと思って務めてきた専図協の委員長は、今年度

いっぱいで辞めることに決めました。若い方にやってもらいたいんです。委員長

を辞めたからといって、専図協を辞めるわけではないし、後輩たちも陰で支えて

いきます。一方で、最近、日本図書館協会(日図協)に復帰しました。年齢的にも

後輩を育てる立場にあると思うので、いろいろなところで、自分のできることを

企画する立場に入らないと、と思っています。

   根性とか気合いとかは必要だと思っていますが、それだけでは前に進まないし、

実際のネットワーク面に生かそうと思ったら、技術が必要なんです。また、人と

人とを結ぶいろいろな工夫というのは、仕掛けがあります。そういう技術や仕掛

けを伝えていかなければならないと思っています。

   これまで、空手家図書館員の井上昌彦さん[LRG 第 5 号 司書名鑑 No.1 で紹介]の

ような強力な助っ人にたくさん助けられてきました。いろいろな立場の方がそ

れぞれのやり方で手伝ってくれます。それがすごくありがたいです。多くの方々

の助けを借りながら、資料を残していくこと、人を育てていくことを考えながら

日々の業務に励んでいます。

偶然から始まった図書館員人生から、2008 年の閉館の危機を乗り越えて、今なお走り続けている谷合館長。資料を残すことが私たちの責任です、という言葉が胸に重く響きます。今を見据え、将来を見据えて、資料を残すこと、そのために人と人とのつながり、人を育てていくことを真剣に考えていらっしゃる姿が印象的でした。

(インタビューアー:嶋田綾子)

▶未来への思い

▶図書館での仕事

Page 78: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

152 ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 153ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

『ライブラリー・リソース・ガイド』の発行元であるアカデミック・リソース・

ガイド株式会社の最近の業務実績のうち、対外的に公表可能なものをまとめてい

ます。各種業務依頼はお気軽にご相談ください。

第 5 回目の開催となる今回は、2013 年 12 月に沖縄県恩納村で「島の図書館、旅と図書

館─日本の島の情報環境を考える-」をテーマに開催しました。

今回はゲストとして、鯨本あつこさん(離島経済新聞社主宰『離島経済新聞』『季刊リト

ケイ』編集長)、森田洋平さん(沖縄科学技術大学院大学(OIST)広報担当副学長代理、日

本最初のホームページを設置)、呉屋美奈子さん(恩納村文化情報センター準備室)のお三

方を迎え、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の最高の研究環境の中での開催となりました。

弊社でホスティングしているアカデミック・リソース・ガイド(ARG)Web インテリジェ

ンスとインタラクション研究会の第 3 回研究会と、今回初の試みとなった第 1 回ステー

ジ発表を開催しました。研究会では、「Web とジャーナリズム」をテーマに赤倉優蔵さん

(JCEJ:日本ジャーナリスト教育センター)と立薗理彦さん(有限会社ネオローグ)によ

るご講演も行われました。

2013 年 12 月、第 5 回目となる「ニコニコ学会βシンポジウム」が開催され、弊社では、

従来に引き続き、事務局業務を担当しました。●主   催:ライブラリーキャンプ実行委員会

●企画・運営:アカデミック・リソース・ガイド株式会社

●日   時:2013 年 12 月 8 日(日)~ 9 日(月)

●会   場:沖縄科学技術大学院大学(OIST)、恩納村博物館、沖縄美ら海水族館ほか

●受 講 者 数:18 名(※スタッフ含む)

●主   催:アカデミック・リソース・ガイド(ARG)Web インテリジェンスとインタラクショ

       ン研究会

●事 務 局:アカデミック・リソース・ガイド株式会社

●日   時:2013 年 12 月 12 日(木)~ 14 日(土)

●会   場:さくら WORKS <関内>

●参 加 者:約 80 名

アカデミック・リソース・ガイド株式会社業務実績 定期報告

ライブラリーキャンプ 2013 in 恩納村「創る図書館を創る、未来の図書館をつくる」の開催

ARG 第 3 回 Web インテリジェンスとインタラクション研究会の開催

第 5 回ニコニコ学会βシンポジウムの開催

●主   催:ニコニコ学会β実行委員会

●事 務 局:アカデミック・リソース・ガイド株式会社

●日   時:2013 年 12 月 21 日(土)

●会   場:ニコファーレ

Page 79: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

154 ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号 155ARG 業務実績 定期報告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

2013 年 12 月、ア カ デ ミ ッ

ク・リソース・ガイド株式会社

は自社オフィスである「さくら

WORKS < 関 内 > 408」を 開 設

し、2014 年 1 月から、この新オ

フィスで正式に業務を開始しま

した。

弊社はこれまで代表の岡本真

が理事を務める NPO 法人横浜

コミュニティデザイン・ラボの立場で共同プロデュースした協働・創発型シェアオフィ

ス「さくら WORKS <関内>」に入居していましたが、業務体制の変化などを受け、この

たび自社オフィスに移転しました。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

総務省から弊社代表の岡本真が委嘱を受けている地域情報化アドバイザーの派遣制度

に基づき、鹿児島県指宿市(2014 年 1 月~ 3 月)、宮城県名取市(2014 年 2 月)、岐阜県

中津川市(2014 年 2 月)に講演・助言などにうかがいました。

なお、2014 年度は、他にも宮城県(2013 年 8 月~ 12 月)、秋田県(2013 年 11 月)、岡

山県瀬戸内市(2013 年 10 月~ 12 月)での講演・助言などを実施しています。

自社オフィスである「さくら WORKS <関内> 408」を開設

総務省委嘱地域情報化アドバイザー派遣を複数回実施

弊社代表の岡本真、また雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド』編集担当の嶋田綾子

が以下の各種研修・講義・講演などに登壇し、また以下の媒体に寄稿しました(年内実

施予定を含む)。

●「本屋で年越し~ book topic of the year 2013 ~」

●流通科学大学有朋会第 14 回実学サロン「WEB サービスをプロデュースする- Yahoo!

知恵袋の企画意図と設計」

● OIST セミナー "Libraries Today, and the Library of Tomorrow"

●大阪府立男女共同参画・青少年センター講座「ネットの闇から女性・子どもを守る!

-ストーカー事件、出会い系サイト、リベンジポルノ」。

●茨城県図書館協会県央鹿行地区部会研修「図書館 100 連発から考える図書館の工夫」

●学校図書館担当事務職員(学校司書)実務研修「学校図書館の魅せ方─児童・生徒を惹

きつける展示と装飾」など。

岡本真「ライブラリーキャンプ-図書館業界に贈る別次元の『学び』のデザイン」(『図書

館雑誌』2014 年 1 月号、日本図書館協会)

各種研修・講義・講演などでの登壇、各種媒体への寄稿

研修・講義・講演などでの登壇

各種媒体への寄稿

  mail:[email protected] 

全  般:070-5467-7032(岡本)

LRG 関係:090-8052-0087(嶋田)

〒 231-0012 神奈川県横浜市中区相生町 3-61 泰生ビル さくら WORKS <関内> 408

弊 社 業 務 問 合 せ 先

Page 80: ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第6号/2014年 冬号

LRG Library Resource Guideライブラリー・リソース・ガイド

定 期 購 読

●誌名:ライブラリー・リソース・ガイド(略称:LRG)  ●発行:アカデミック・リソース・ガイド株式会社●刊期:季刊(年4回)  ●定価:2,500円(税別) ●ISSN:2187-4115●詳細・入手先:http://fujisan.co.jp/pc/lrg

「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」はアカデミック・リソース・ガイド株式会社が、2012年11月に創刊した、新しい図書館系専門雑誌です。さまざまな分野で活躍する著者による特別寄稿と、図書館に関する事例や状況を取り上げる特集の2本立てで展開していきます。第5号からは「司書名鑑」も連載を開始しました。

最新情報は公式Facebookページでお知らせしています。公式Facebookページ:https://www.facebook.com/LRGjp

定価 2,500円(税別)B A C K I S S U E

特別寄稿は、前号(第3号)での特集「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」を受けて、実際に資金調達を行っている組織からの視点、資金調達のサービスを提供する事業者からの視点と、より理論的に図書館での資金調達に迫る。第4号が理論編、第3号が実践編という位置づけであり、2号併せて読むことをお勧めする。特集は、創刊号で大きな反響を呼んだ「図書館100連発」の第2弾。さまざまな図書館で行われている小さくてもきらりと光る工夫や事業から、創刊号以降の1年で集めた100個を紹介する。

岡本真 ・ 鎌倉幸子 ・ 米良はるか「図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来」

特別寄稿

嶋田綾子「図書館100連発 2」

特 集

内 容

第4号・2013年夏号(2013年8月発行)

特別寄稿「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」は、「これからの街の本屋」をコンセプトにした本屋「B&B」を運営するnumabooks代表の内沼晋太郎さん、自宅を開放する「住み開き」を提唱する日常編集家のアサダワタルさん、「ビブリオバトル」を考案した立命館大学の谷口忠大さんの3名にお話をいただく。特集は、「本と人をつなぐ図書館の取り組み」として、図書館で行われている、本と人とをつなぐさまざまな取り組みについて紹介する。新連載「司書名鑑」は、関西学院 聖和短期大学図書館の井上昌彦さんを紹介する。

内沼晋太郎 ・ アサダワタル ・ 谷口忠大「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」

特別寄稿

No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)司書名鑑

嶋田綾子「本と人をつなぐ図書館の取り組み」

特 集

内 容

第5号・2013年秋号(2013年11月発行)

東海大学の水島久光さんによる「『記憶を失う』ことをめぐって~アーカイブと地域を結びつける実践~」は、著者自身の私的アーカイブの試みからの気づき、夕張・鹿児島・東北の地域の記憶と記録を巡って、地域アーカイブの役割と重要性を論じている。特集は「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」として図書館での資金調達の取り組みを紹介。昨今の自治体財政状況により、図書館の予算も十分とは言い難い。そのなかでさまざまな手段を講じて資金を集め、事業を行っていこうとする図書館の取り組みを集めた。この特集を受けて第4号では、実際に資金調達を行っている側からの視点と、資金調達のサービスを提供している事業者側からの視点によりさらに議論を深め、これからの図書館の資金調達のあり方を論じている。第3号と第4号は、ぜひ併せてお読みいただきたい。

水島久光「『記憶を失う』ことをめぐって    ~アーカイブと地域を結びつける実践~」

特別寄稿

嶋田綾子・岡本真「図書館における資金調達(ファンドレイジング)」

特 集

内 容

第3号・2013年春号(2013年5月発行)

フリーライターのみわよしこさんによる「『知』の機会不平等を解消するために-何から始めればよいのか」は、社会的に弱い立場とされる人々の知識・情報へのアクセス状況を概観し、知のセーフティーネットであるべき公共図書館の役目を考える特別寄稿となっている。特集では、株式会社カーリルの協力により、図書館のシステムの導入状況を分析している。全国の図書館では、それぞれ資料管理用のシステムを導入しているが、その導入の実態を分析する、これまでにないものとなっている。

みわよしこ「『知』の機会不平等を解消するために         ──何から始めればよいのか」

特別寄稿

嶋田綾子(データ協力:株式会社カーリル)「図書館システムの現在」

特 集

内 容

第2号・2013年冬号(2013年2月発行)

創刊号・2012年秋号(2012年11月発行) ※品切れ

残部稀少

残部稀少

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1年4号分の定期購読を受付中です。好きな号からのお申し込みができます。●定価:10,000円(税別) ●問い合わせ先:090-8052-0087(嶋田) /[email protected]

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LRG

LRG 7号 2014年5月 発行予定

Library Resource Guide

ライブラリー・リソース・ガイド

次回予告

LRGライブラリー・リソース・ガイド

定価(本体価格2,500円+税)

アカデミック・リソース・ガイド株式会社

特別寄稿

特 集「学びの場をつくる図書館」(仮)特別寄稿と連動し、コモンズとしての図書館を実現するために行われている図書館の取り組みの他、個人や民間が行っている学びの場づくりやコミュニティ形成の事例を紹介することで、コモンズを志向するこれからの社会における図書館の役割を考えます。

「コモンズとしての図書館」(仮)図書館の役割は、「個人がする読書」から、さまざまな属性を持つ人々が集まり、それぞれの体験や知を交換しながら、共に学び合う場へとシフトしています。それを実現するのは、「知る」「学ぶ」「集う」「考える」「創る」「共有する」という機能を有する、コモンズ(=共有空間)としての図書館です。これからの図書館のあり方を論じるうえで欠かせない、コモンズとしての図書館を考えます。

158 次号予告  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 冬号

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第6号/2014年 冬号

無断転載を禁ず

発 行 日

発 行 人

編 集 人

責任編集

編  集

デザイン

発  行

2014年2月28日

岡本真

岡本真

嶋田綾子

大谷薫子

アルファデザイン (佐藤理樹+小野寺志保)

アカデミック・リソース・ガイド株式会社

Academic Resource Guide, Inc.

〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61泰生ビル さくらWORKS<関内> 408

Tel.090-8052-0087(嶋田)http://www.arg.ne.jp/[email protected]

ISSN 2187-4115

阿部美津夫 プロフィール

1950 年 4 月宮城県石巻市に生まれる。石巻市で建築関係の会社を経営していたが、

東日本大震災により事業の継続を断念。津波では、家と娘と孫を失う。生きる望みを

絶たれた深い悲しみの中でも写真を撮り続け、津波で大切なアルバムを流出された

方々に、新しい素敵な想い出を残していただくお手伝いをするために写真家に転身。

手元に残った 3 台のカメラで撮った写真は 3,000 枚以上にのぼる。全国各地を回りな

がら、震災の体験を若い世代に語り継いでいる。

  https://www.facebook.com/mitsuo.abe.3

表紙・裏表紙写真/阿部美津夫(写真家)

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