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近年、賃貸住宅の空室が増加傾向にある中、住人の趣味やライフスタイルに合わせた物件が現れ、注目を集めている。こうした物件は、共通の趣味 に基づいて、住人やオーナーの間に積極的な交流が生まれるという利点をもつ。一方で、こうした交流は建物の中で完結しがちであり、住人・オーナー と地域との関わりが乏しい場合も少なくない。 これらを踏まえ、本計画では、住人とオーナーが共通の趣味や価値観を有しながら、地域の特性を活かしたライフスタイルを楽しめる3つの賃貸住宅 を提案する。 Musashino Apartment 地域に参加する住まい方をもつ 3 つの集合住宅 ライフスタイルのイメージ 農業指導 作品制作 宿泊 買い物・展覧会 カルチャー教室 食堂利用 農の家 【農地エリア】 【学生街エリア】 【繁華街エリア】 分譲住宅 マルシェ開催 農作業 カルチャー教室 食堂の利用 地域の特色を活かした用途 一時的に移り住む / 利用する 地域との関係 生活拠点となる住まい 他の家の住人が移り住む住まい DIY作業 展覧会開催 商の家 オ-ナ-住宅 工の家 賃貸住宅 賃貸住宅 美大生 分譲住宅 ファミリ-~シニア 工房 レンタルルーム 食堂 レンタルルーム オ-ナ-住居 ゲストハウス テナント レンタルルーム 美大生 地域住民 地域住民 地元農家 旅行客 買い物客 『工の家』の住人、『農の家』の美大生、『商の家』のオーナーの一週間のライフスタイルをイメージする。それぞれの住人は、3つの集 合住宅の施設をを利用、または短期間移り住み、余暇活動を楽しむ。週末には『商の家』でイベントを開催し、3つの集合住宅の住人の 住人の交流を深める。 農の家 工の家 商の家 農作業 『工の家』の展覧会 『商の家』オーナー 『工の家』美大生 利用する / 短期間移り住む 『農の家』住人 地域性を活かしたライフスタイル / 3つの集合住宅の連携 設計主旨 異なる特色をもつ敷地に建つ、3つの集合住宅に移り住むことが可能なライフスタイルを計画する。住人とオーナーは、平日はそれぞれ生活拠 点となる家に住み、休日は他の場所の施設を利用して余暇活動を行うことが出来る。また、それぞれの集合住宅には簡易的に宿泊出来るレンタ ルルームがあり、他の場所の住人が短期間移り住むことができる。この様に、住人とオーナーが3カ所の集合住宅を移り住むことで、異なる地 域性を楽しみながら趣味や価値観を共有する住まい方が可能となる。 計画地 ここは付近に武蔵野美術大学が立地することから、一 人暮らしの学生が多く住む地域である。大学で行われ る学園祭などのイベントは地域との交流を生んでいる。 東京都小平市・小金井市・武蔵野市に存在する【学生街】【農地】【繁華街】という異なる地域性をもつ3つの敷地を抽出する。全長 10km の間に点在しており、自転車での移動が可能な範囲とする。 ここは広い農地が広がる地域である。農家が通りに 農作物の直売所を構える『江戸の農家みち』が買い 物客を引き込み、地域住民と農家を結びつけている。 吉祥寺駅近くの買い物客で賑わう繁華街と住宅街の混 在する地域である。様々な用途の建物が密集して建つ 地域であり、雑然とした町並みをつくりだしている。 【学生街エリア】東京都小平市 【農地エリア】東京都小金井市 【繁華街エリア】東京都武蔵野市 カルチャー教室 食堂の利用 創作活動 ここでは、多様化するライフスタイルに合わせた集合住宅の事例をあげ、考察する。図1は、バイクや車を住戸中に持ち込める集合住宅の例である。ここでは、オー ナーがツーリングなどのイベントを開催し、住人のコミュニティづくりを積極的に行っている。しかし、ここで行われている交流は、建物の中で完結しており、地域と の接点はみられない。図2は、共用部である食堂を地域に開放し、住人と地域が結びついた集合住宅の例である。ここでは、食堂を介して住人と地域住民の 間に交流が生まれている。図3は、サーファーのためのセカンドハウス的集合住宅の例である。2つの住まいをもつことで、それぞれの地域性を楽しみなが ら、2つの地域コミュニティに所属することを可能としている。 これらの事例は、今までの集合住宅にはない、コミュニティやライフスタイルを生んでおり、集まって住むことのあらたな豊かさを示している。 多様化するライフスタイルと集合住宅  5 4 図2. 「食堂付きアパート」 所在地:東京都目黒区 設計:仲俊治・宇野悠里 地域住民 住人 食堂 シェアオフィス 図1. 「クレエ浮間舟渡」 所在地:東京都板橋区 設計:不動建設株式会社 地域住民 オーナー 住人 住人 住人 出典:HEYAZIN HPより 図3. 「房総の馬場家と連棟」 所在地:千葉県長生郡一宮町 設計:Open A 自宅 会社 東京都 千葉県 セカンドハウス 地元住民(サ-ファ-) 移り住む 1 2 3

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Post on 10-May-2020

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 近年、賃貸住宅の空室が増加傾向にある中、住人の趣味やライフスタイルに合わせた物件が現れ、注目を集めている。こうした物件は、共通の趣味

に基づいて、住人やオーナーの間に積極的な交流が生まれるという利点をもつ。一方で、こうした交流は建物の中で完結しがちであり、住人・オーナー

と地域との関わりが乏しい場合も少なくない。

 これらを踏まえ、本計画では、住人とオーナーが共通の趣味や価値観を有しながら、地域の特性を活かしたライフスタイルを楽しめる3つの賃貸住宅

を提案する。

Musashino Apartment地域に参加する住まい方をもつ 3つの集合住宅

ライフスタイルのイメージ

農業指導 作品制作

宿泊 買い物・展覧会

カルチャー教室食堂利用

農の家

【農地エリア】 【学生街エリア】

【繁華街エリア】分譲住宅

マルシェ開催

農作業

カルチャー教室

食堂の利用

地域の特色を活かした用途

一時的に移り住む / 利用する

地域との関係

生活拠点となる住まい

他の家の住人が移り住む住まい

DIY作業

展覧会開催

商の家オ-ナ-住宅

工の家賃貸住宅

賃貸住宅美大生

分譲住宅ファミリ-~シニア 工房

レンタルルーム

食堂

レンタルルーム

オ-ナ-住居

ゲストハウステナント

レンタルルーム

美大生

地域住民地域住民

地元農家

旅行客 買い物客

『工の家』の住人、『農の家』の美大生、『商の家』のオーナーの一週間のライフスタイルをイメージする。それぞれの住人は、3つの集

合住宅の施設をを利用、または短期間移り住み、余暇活動を楽しむ。週末には『商の家』でイベントを開催し、3つの集合住宅の住人の

住人の交流を深める。

農の家

月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日工の家

商の家

農作業 『工の家』の展覧会『商の家』オーナー

『工の家』美大生利用する /短期間移り住む

『農の家』住人

地域性を活かしたライフスタイル / 3つの集合住宅の連携設計主旨異なる特色をもつ敷地に建つ、3つの集合住宅に移り住むことが可能なライフスタイルを計画する。住人とオーナーは、平日はそれぞれ生活拠

点となる家に住み、休日は他の場所の施設を利用して余暇活動を行うことが出来る。また、それぞれの集合住宅には簡易的に宿泊出来るレンタ

ルルームがあり、他の場所の住人が短期間移り住むことができる。この様に、住人とオーナーが3カ所の集合住宅を移り住むことで、異なる地

域性を楽しみながら趣味や価値観を共有する住まい方が可能となる。

計画地

ここは付近に武蔵野美術大学が立地することから、一人暮らしの学生が多く住む地域である。大学で行われる学園祭などのイベントは地域との交流を生んでいる。

東京都小平市・小金井市・武蔵野市に存在する【学生街】【農地】【繁華街】という異なる地域性をもつ3つの敷地を抽出する。全長

10km の間に点在しており、自転車での移動が可能な範囲とする。

ここは広い農地が広がる地域である。農家が通りに農作物の直売所を構える『江戸の農家みち』が買い物客を引き込み、地域住民と農家を結びつけている。

吉祥寺駅近くの買い物客で賑わう繁華街と住宅街の混在する地域である。様々な用途の建物が密集して建つ地域であり、雑然とした町並みをつくりだしている。

【学生街エリア】東京都小平市 【農地エリア】東京都小金井市 【繁華街エリア】東京都武蔵野市

カルチャー教室

食堂の利用

創作活動

ここでは、多様化するライフスタイルに合わせた集合住宅の事例をあげ、考察する。図1は、バイクや車を住戸中に持ち込める集合住宅の例である。ここでは、オー

ナーがツーリングなどのイベントを開催し、住人のコミュニティづくりを積極的に行っている。しかし、ここで行われている交流は、建物の中で完結しており、地域と

の接点はみられない。図2は、共用部である食堂を地域に開放し、住人と地域が結びついた集合住宅の例である。ここでは、食堂を介して住人と地域住民の

間に交流が生まれている。図3は、サーファーのためのセカンドハウス的集合住宅の例である。2つの住まいをもつことで、それぞれの地域性を楽しみなが

ら、2つの地域コミュニティに所属することを可能としている。

これらの事例は、今までの集合住宅にはない、コミュニティやライフスタイルを生んでおり、集まって住むことのあらたな豊かさを示している。

多様化するライフスタイルと集合住宅 

5

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図2.「食堂付きアパート」 所在地:東京都目黒区 設計:仲俊治・宇野悠里

地域住民

住人

食堂

シェアオフィス

図1.「クレエ浮間舟渡」 所在地:東京都板橋区 設計:不動建設株式会社

地域住民オーナー 住人

住人住人

出典:HEYAZIN HPより

図3.「房総の馬場家と連棟」 所在地:千葉県長生郡一宮町 設計:Open A

自宅

会社

東京都 千葉県

セカンドハウス

地元住民(サ-ファ-)

移り住む

1

2

3

工の家

プログラム工房は入居する美大生だけではなく、『商の家』のオーナー、『農の家』の住人も利用できる。また、ここではカルチャー教室や展覧会が行われ地域住人が日常的に訪れることができる場となる。

DIY作業 展覧会

カルチャー教室カルチャー教室

工の家賃貸住宅

賃貸美大生 工房

レンタルルーム

地域住民

『商の家』オーナー

『農の家』住人

【学生街エリア】であるこの地域には、付近に立地する美術大学に通う学生が多く居住することから、ここにはものづくりやデザインを指向する美大生が入居する、工房付き賃貸住宅を計画する。

来客者動線

生活動線

工房

個室 (8 部屋 )

レンタルルーム1F

2F

屋上

玉川上水の緑道から見る。アトリエの活動が外へとつながり、賑やかな場をつくる。

三階平面図 S=1/150

二階平面図 S=1/150

a: 個室 c: シャワー室 d: 図書スペースb: レンタルルームe: 小アトリエ f: 物干テラス g: アトリエテラス配置図兼一階平面図 S=1/100

来客者動線

玉川上水の緑道からのアプローチ

生活動線

アトリエ 3

屋内広場

リビング /ダイニング

アトリエ1

レンタルルーム  駐車場 アトリエ 2

aa a

aa a a ab

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f

g

計画地計画地は武蔵野美術大学にほど近い玉川上水の緑道に面した住宅地である。付近には多くの美大生が居住している緑道は散歩道として多くの地域住民に利用されている。

全体構成

地域の人が通り抜けのできる屋内広場は作品製作やカルチャー教室、展覧会場など、様々な用途で使うことができる。

玉 川 上 水

計画地

30m

農業指導

食堂の利用

農の家分譲住宅

分譲住宅食堂

レンタルルーム

地域住民

地元農家

農作業

食堂の利用

『商の家』オーナー

『工の家』美大生

『商の家』のオーナーと『工の家』の住人も地元農家の指導のもと、農業体験を行うことができる。食堂は3つの集合住宅の住人と農家、地域住人の交流の場でもある。

計画地は多くの農家が通りに野菜の直売所を開いている『江戸の農家みち』沿いの敷地とする。計画地に隣接する『ポモナ農園』では農業体験教室を行っている。

【農地エリア】であるこの地域は、農地や農作物の直売所が多くみられることから、ここには農業体験をしながら暮らすことのできる、独立性の高い分譲住宅及び食堂を計画する。

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三階平面図 S=1/200

2F 住戸は大きな開口と吹き抜けによって住戸全体がワンルームとなっている。

食堂

住戸

共用部

レンタルルーム

来客者動線

農作業動線1F

2F

屋根伏

通りに面して開かれた食堂と野菜の直売所が、地域住民を引き込む。

a

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b

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b

二階平面図 S=1/200

夫婦2人タイプ

3人家族タイプ

シニア夫婦タイプ

4人家族タイプ

食堂へのアプローチ

農作業動線 ポモナ農園へのアプローチ

倉庫

住戸3

住戸4

住戸2

共用リビング

食堂

流し場

ポモナ農園(既存)

倉庫

駐車場

駐車場住戸1

配置図兼一階平面図 S=1/150

計画地

ポモナ農園

江戸の農家みち

農の家

プログラム

計画地 全体構成

30m

a: 居間 c: 水回り d: 吹き抜けb: 台所・ダイニングe: 寝室 f: 子供室 g: テラス

ここでは『工の家』の美大生が展覧会、『農の家』の住人がマルシェなどを行うことができる。3つの集合住宅の住人と繁華街の買い物客、旅行客など、多くの交流を生む場となる。

宿泊

買い物・展覧会

商の家オ-ナ-住宅

オ-ナ-住居

ゲストハウステナント

レンタルルーム

旅行客

買い物客

マルシェの開催

展覧会の開催

『農の家』住人

『工の家』美大生

【繁華街エリア】であるこの地域は、商業施設のひしめく繁華街に位置することから、ここにはテナント店舗、ゲストハウス、オーナー住居を計画する。                     

共用キッチン テラス

EVシャワー室

リビング /ダイニング

書斎 応接間

テラス

二階平面図 S=1/150配置図兼一階平面図 S=1/100

EV

ゲストルーム

ゲストルーム

ゲストルーム

業務用洗濯室子供室

寝室

三階平面図 S=1/150

広場 

テナント

オーナー住居

ゲストハウス

通り抜け

1F

2F

3F

ガラス張りのファサードによって、屋内の活動が街へ映し出される。

計画地は吉祥寺駅近くの繁華街に位置する『中道通り商店街』と『井の頭通り』を結ぶ路地沿いの敷地とする。

屋内広場

テナント1

テナント3

倉庫 EVwc

カフェ兼ゲストハウス受付

テナント2

駅からのアプローチ

オーナー住居へのアプローチ

貸しギャラリー

計画地

商の家

プログラム

計画地 全体構成

30m

屋内広場:屋内広場はイベント時に多目的な使い方ができる。『工の家』の展覧会の時は、高い吹き抜けを利用して大きな作品の展示が可能である。買い物客や旅行客など多くの人がゆるやかに集まる場となる。