ngoとの協働によるcsrテーマ別ベンチマーク no.006 テーマ...

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テーマ別ベンチマーク No. 006 テーマ NGOとの協働によるCSR活動 企業名 ボーダフォン、ユニリーバ、HPHSBC CSR8側面該当箇所 ⑤事業プロセス ⑦ステークホルダー・コミュニケーション ⑧社会参画とコミュニティ 本ケースの対象地域 グローバル 更新日 20092202 ガバナンスと マネジメント 3 人財育成と 知識の共有 1 ビジョンと 戦略 4 ビジネス変革と マーケティング 6 ワーク プレイス 7 ステーク ホルダー コミュニ ケーション 5 事業 プロセス 8 社会貢献と コミュニティ 参画 NGOとの協働によるCSR活動 ボーダフォン ユニリーバ HP HSBC

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Page 1: NGOとの協働によるCSRテーマ別ベンチマーク No.006 テーマ NGOとの協働によるCSR活動 企業 ボーダフォン、ユニリーバ、HP、HSBC 他 CSR8側面該当箇所

テーマ別ベンチマークNo. 006

テーマ NGOとの協働によるCSR活動

企業名 ボーダフォン、ユニリーバ、HP、HSBC 他

CSR8側面該当箇所 ⑤事業プロセス ⑦ステークホルダー・コミュニケーション ⑧社会参画とコミュニティ

本ケースの対象地域 グローバル

更新日 2009年2月20日

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ガバナンスとマネジメント

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人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

NGOとの協働によるCSR活動

■ ボーダフォン■ ユニリーバ■ HP■ HSBC

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NGOとの協働によるCSR活動

Copyright © 2009 E-Square Inc. テーマ別ベンチマーク No. 006

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ガバナンスとマネジメント

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人財育成と知識の共有

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ビジョンと戦略

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ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

1

目 次

概要 2

背景 1 NGOの発展 世界で活躍するNGOの規模 3

NGOに対する認識 ~欧米と日本のギャップ 4

2 企業とNGOの関係性の変化 対立から協働へ 6

協働によるメリット 7

企業の目的別でみた協働事例 8

事例 1 ① 問題の把握 NGOとともにサプライチェーン上の課題を調査 ~タンタル金属をめぐる実態調査ボーダフォン他ICT企業 FFI 9

2 ② 具体的ソリューションの開発 認証制度の構築 ~海のエコラベル「MSC認証」ユニリーバ 世界自然保護基金(WWF) 11

3 ② 具体的ソリューションの開発 温室効果ガス削減と製品のエネルギー効率向上のための共同イニシアチブヒューレット・パッカード(HP) 世界自然保護基金(WWF) 13

4 ③ 公共政策への提言 企業とNGOが共同で政策提言 ~米国気候アクションパートナーシップ (USCAP)15

5 ④積極的な社会貢献 資金と人、2つの側面からの社会貢献 ~HSBC気候変動パートナーシップHSBC アースウォッチ、気候グループ、スミソニアン熱帯研究所、世界自然保護基金(WWF) 17

その他の関連する企業事例 19

考察 日本企業への提言 21

参考資料 22

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NGOとの協働によるCSR活動

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人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

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ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

2

概要

NGOの企業への影響力の高まりを背景に、企業は、NGOを市民の代表者(代弁者)として認知し、その視点を取り入れることが自社

の経営を持続可能なものにする上で重要なことであると気づき始めている。

また、自社にはない専門性、ノウハウ、ネットワーク、市民からの信頼などを活かすことで、より効率的で効果的なCSR活動が展開で

きるというメリットもNGOとの協働にはある。リスクを低減する、抱えているCSR課題を解決する、さらにはより積極的に社会に貢献す

るために、NGOとの協働の道を模索する企業が現れ、企業とNGOの双方がWin-Winとなるような協働事例が近年増えつつある。

様々なタイプの協働事例がある中、今回は4つの目的別 (①問題の把握、②具体的ソリューションの開発、③公共政策への提言、

④積極的な社会貢献)に事例を紹介する。

概要

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1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

3

NGOの発展

■ 世界で活躍するNGOの規模

背景 1

急速なグローバル化により顕著化する社会問題、地球環境問題を背景に、市民の声を代弁する組織としてNGOはその規模を拡大して

いる。1992年の国連環境開発会議(リオサミット)ではNGOがパートナーとして参画、以降、世界におけるNGOの存在感は一層大きなも

のとなっている。日本でいうNPO法人との規模の違いを見るため、代表的な環境・人権NGOの会員数、年間の活動費を表したのが下

図である。環境保護で世界的に有名なNGOである世界自然保護基金(WWF)は、世界に450万人以上の会員を有し、その年間活動費

は約610億円にのぼる。活動の資金源としては、主に会員からの会費や寄付、企業・政府からの助成、自主プログラムからの収益など

があるが、NGOによっては、例えばグリーンピースなど、独立性を保つため、特定の企業や団体からの寄付や資金援助を受けない方

針をもつ組織もある。それでも、これだけの規模の活動を可能としているのは、その活動理念に共感し積極的に支持をする市民が世界

中にいるからだと言えるだろう。また、各地域で以前より活動を展開してきた市民団体が、国際NGOの地域支部としてネットワーク化す

ることで発展し、NGOもまたグローバル化してきた。

NGO

活動範囲:100カ国以上会員:100万人以上活動費:約405億円

貣困撲滅

オックスファム

NGO

活動範囲:150カ国以上会員:220万人以上活動費:約48億円

人権擁護

アムネスティ・インターナショナル

NGO

活動範囲:100カ国以上会員:450万人以上活動費:約610億円

環境保護WWF

(世界自然保護基金)

NGO

活動範囲:70カ国以上(支部)会員:200万人活動費:約3億円(インターナショナルのみで)

環境保護

FoE(フレンズ・オブ・ジ・アース)

NGO

活動範囲:40カ国(支部)会員:290万人活動費:約250億円

環境破壊防止

グリーンピース

各団体のアニュアルレポート(2007年度版)をもとに作成

背景

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ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

4

■ NGOに対する認識 ~欧米と日本のギャップ

左図は、世界各地を対象とした意識調査の結果である。「各主要組織・機関が正しいことを行なっていると、どれほど信頼できますか?」との設問に対し、欧州・米国ともに、企業や政府、メディアよりもNGOを信頼するという結果となっている。欧州においては、企業を大きく引き離してのトップである。

一方、日本で最も信頼されているのは企業(66%)であり、次に政府(41%)、メディア(41%)、NGO(40%)となっている。市民社会の成熟度の違いを指摘する専門家もいるが、日本におけるNGOの存在感の薄さは、世界においても特異な状況となっている。グローバルに展開する日本企業が、海外でのNGOの力の違いに驚くというケースは尐なくない。日本国内で捉えられているNGOと、世界での存在感は異なることをまず押さえておきたい。

2006年エデルマントラストバロメーター調査(信頼性調査)調査対象: 世界主要国11カ国・合計1,950人のオピニオンリーダー※

(日本、韓国、中国、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ブラジル)

※オピニオンリーダー:年齢35~64歳、世帯収入75,000ドル(日本円で約900万円)以上の大卒学歴で、報道や経済・政治的課題に関心の高い人

調査手法: 電話インタビュー(各25分間)実施主体: エデルマン(PRコンサルティング会社) http://www.edelman.com/出典:エデルマン「Annual Edelman Trust Barometer 2006」

背景

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ガバナンスとマネジメント

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人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

5

企業とNGOの関係性の変化

■ 対立から協働へ

背景 2

90年代、市民社会からの支持を背景に、NGOは世界において大きな発言力を持つまでに発展してきたが、一方で、グローバリゼー

ションの発展により、企業もその規模を拡大しており、一国のGDPを凌ぐ売上を上げる多国籍企業も尐なくない。その結果、企業が

サプライチェーンを通じて社会に対して与える負の影響(環境問題、务悪な労働環境、汚職など)が問題となるようになった。

NGOの活動のタイプには、主に政策提言/問題提起型、事業実施型、調査研究型などがあるが、なかでも政策提言/問題提起型

は、社会正義の促進や人権擁護、環境保全のためには企業を変える必要があるということで、それまで主に政府に対して向けられ

ていた働きかけは、企業にも向けられ、一部のNGOでは企業の反CSR的行動を告発する役割も担うようになる。インターネットなど

の情報手段の発達により、こうしたNGOが発信する情報は瞬時に世界中に伝えられ、大規模な抗議活動やボイコット(不買運動)に

展開する場合もあり、有名な事例が1990年代に起きたナイキに対する労働人権問題の告発・ボイコットである。

こうしたNGOの企業への影響力の高まりを背景に、企業は、NGOを市民の代表者(代弁者)として認知し、その視点を取り入れるこ

とが自社の経営を持続可能なものにする上で重要なことであると気づき始めている。また、自社にはない専門性、ノウハウ、ネットワ

ーク、市民からの信頼などを活かすことで、より効率的で効果的なCSR活動が展開できるというメリットもある。リスクを低減する、抱

えているCSR課題を解決する、さらにはより積極的に社会に貢献するために、NGOとの協働の道を模索する企業が現れ、企業と

NGOの双方がWin-Winとなるような協働事例が近年増えつつある。

背景

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ビジネス変革とマーケティング

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ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

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事業プロセス

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社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

6

NGOの活動のタイプ

政策提言/問題提起 事業実施 調査研究

政府や企業に対し問題点を指摘し、改善案を提言。

途上国支援、地域での災害援助、環境保全活動など、現場でプロジェクトを企画・実行。

調査研究活動を通して、社会的議論の科学的根拠を提供。

企業とNGOの関係

NGOからの企業批判の例 NGOと企業の協働の例

シェル グリーンピースvs

北海への海上油田設備投棄計画に反対活動→計画変更

シティグループ RAN (レインフォレストアクションネットワーク)

vs

融資における環境配慮を求める活動→環境方針設定

Dell 他 CAFODvs

サプライチェーンでの労働問題を指摘→電子機器産業共通の行動規範策定

ユニリーバ WWF+

WWFとともに海産物におけるエコラベル制度「MSC認証」を構築

HP(ヒューレッド・パッカード)

WWF+

WWFとともに温室効果ガスの削減、気候変動の問題に対するベストプラクティスを推進

住友林業 複数のNGO+

木材調達基準を複数のNGOの意見をもとに策定

背景

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ビジョンと戦略

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ビジネス変革とマーケティング

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ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

7

■ 協働によるメリット

協働に至るには、企業・NGOの双方にとってメリットのある、Win-Winの関係を構築することが不可欠である。各々の側にとってのメリット

にはどのようなものがあるのかを下図にまとめた。最終的には、単独で行うよりも、共に取り組む方が、お互いの目的を効率的・効果的

に達成することができる状況をつくりだすことが重要になる。

企業にとってのメリット

問題の先取りとリスク回避

企業は、NGOとの協働を通して、NGOの情報収集力や問題意識を取り入れることで、問題が顕在化する前に認識し、対応することができる。

透明性の確保と信用の外部担保

市民からの信頼を得ているNGOによる第三者視点を取り込むことで、企業は、自社の活動または当該プロジェクトの透明性を高めることができ、社会からの信頼を得ることができる。

専門性・ノウハウの獲得

当該分野において蓄積されたNGOの専門性、課題に対するアプローチとノウハウ、経験知、世界からの情報を活用できれば、企業は一からそれらを蓄積する必要がない。

ネットワークの活用

例えば、途上国支援に関するプロジェクトを行う場合、その対象地域の事情をよく把握し、人的ネットワークをもつNGOと協働することで、企業は当該プロジェクトをより効果的に展開することができる。

PR効果

中立的な立場を取るNGOの信用力を通して、自社の活動を社会に伝える、PR効果も期待される。

NGOにとってのメリット

自らの活動理念の実現

社会に対し影響力の大きい企業自身を変えていくことで、当該NGOが掲げている活動理念(社会正義の促進や人権保護、環境保全など)の実現に寄与することができる。また、他企業や消費者、社会全体への波及効果がある。

活動資金の獲得

活動のための資金として企業から支援を受けることができる。

企業の技術・マーケティング・人材の活用

企業の持つ技術力やノウハウ、販売網、広報宣伝力などを活用することで、より大規模なプロジェクトを展開することができる。また、社員ボランティアなど、実際のプロジェクト運営のための人材を確保することができる。

背景

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ビジネス変革とマーケティング

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ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

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事業プロセス

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社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

8

■ 企業の目的別でみた協働事例

多様な協働のかたちがあるが、本ベンチマークでは、以下4つの異なったタイプの協働事例を取り上げ、次頁以降に紹介していきたい。

① 問題の把握

② 具体的ソリューションの開発

③ 公共政策への提言

④ 積極的な社会貢献

社会への働きかけ

事業との関連性

強い

弱い

強い

弱い

NGOとともにサプライチェーン上の課題を調査~タンタル金属をめぐる実態調査

ボーダフォン

認証制度の構築~海のエコラベル「MSC認証」

ユニリーバ

温室効果ガス削減と製品のエネルギー効率向上のための共同イニシアチブ

HP

企業とNGOが共同で政策提言~ 米国気候アクションパートナーシップ (USCAP)

複数企業

資金と人、2つの側面からの社会貢献~HSBC気候変動パートナーシップ

HSBC

背景

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人財育成と知識の共有

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ビジョンと戦略

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ビジネス変革とマーケティング

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ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

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事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

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事例 1

2001年から2003年にかけて国連安全保障理事会の専門委員会から「タンタル金属の価格高騰に伴いコルタン鉱が豊富なアフリカ中央・コンゴ民主共和国(旧ザイール)の東部で採掘が活発に行われはじめ、森林の破壊や動物の殺りくだけでなく、内紛の激化や人権侵害などが頻発している」との報告書が複数回に分けて発行された。

メディアの過剰な報道も影響し、タンタル金属を小型コンデンサに利用している携帯電話(会社)に非難が集中した。

ボーダフォンは自らが所属する、 ICTとサステナビリティをテーマに活動するイニシアチブGeSI(Global e

Sustainability Initiative)に呼びかけ、国際的な動植物保護団体であるFFI(Fauna & Flora International)にコンゴ民主共和国におけるタンタル金属及びそれを取り巻く社会状況について調査を依頼し、2003年に報告書を共同発行した。この調査は、国際環境計画(UNEP)と国際電気通信連合(ITU)の支援を受け実施された。

この調査で、タンタル金属の利用に伴うコンゴ民主共和国での問題とタンタル金属が携帯電話だけでなく多くの産業で用いられていることが明らかになり、タンタル金属を適性に取り引きするための基準の作成が必要であること、及び、タンタル金属を利用する産業界全体での取り組みが必要であることが報告された。

2003年2月、ボーダフォンは自社のサプライヤー企業とタンタル金属を取り巻くコンゴ民主共和国の問題についてワークショップを行い、この問題についての認識の共有と協働の取り組みについて議論を行った。

CSRコンパス世界の企業事例 No.005「タンタル金属をめぐる実態調査」

ボーダフォン 他ICT企業企業概要 :英国に本社のある世界最大の多国籍携帯電話事業会社

FFI (Fauna & Flora International)団体概要 : 1903に設立された国際的な動物保護団体。アフリカを中心に、地域コミュニティの生活の質を向上しながら生態系を保全する道を追求している。

NGOとともにサプライチェーン上の課題を調査~タンタル金属をめぐる実態調査

① 問題の把握

事例

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ビジネス変革とマーケティング

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ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

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事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

所見

自社の携帯電話事業に関る鉱物資源に関する社会・環境的問題の解決に向けたアプローチに対して、業界団体、慈善団体、国際公的機関などと協働したことが本ケースの特徴である。これらの団体と協働することで、取り組みに対する協力体制と公平性が得られただけでなく、取り組みの実施において自社が抱える負担を軽減・分散させることにも貢献した。

本ケースは、社会からの要請に応える形で第三者的な外部のNGOと共同調査し、課題を明確にしたことで、自社の事業に関わる資源の安定供給に向けた取り組みを開始した好事例といえる。

10

調査により、この問題が携帯電話産業による努力だけでは問題解決に至らないことを明らかにしたことで、タンタル金属の利用に伴うコンゴ民主共和国における数々の問題について、携帯電話(会社)に対する非難の集中を避けることができた。

NGOの現地でのネットワーク、情報収集力、問題分析力などを活用することで、課題を浮き彫りにすることができた。

中立的な視点での調査結果として社会的に認められるものとなった。

事例 1

企業にとってのメリット

タンタル金属の利用に伴うコンゴ民主共和国における問題について、情報を社会に発信したことで問題の原因と解決のための対策をたてる糸口を提案することができた。

タンタル金属の適切な取り引きについてサプライヤーや関係組織、また、その他の組織や団体に呼びかけることで、タンタル金属の採掘に伴う、また、その他の事柄から生じるコンゴ民主共和国における紛争拡大、人権侵害、環境破壊などの問題についての関心を高めることができた。

NGOにとってのメリット

NGOとともにサプライチェーン上の課題を調査~タンタル金属をめぐる実態調査

事例

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ビジネス変革とマーケティング

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ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

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事例 2

国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、世界の主要な水産資源のうち24%が過剰捕獲であり、52%が緊急措置が必要であると指摘されている。現行の漁業慣行を続けると、2048年には水産資源は壊滅的な状況になると予測されている。

ユニリーバは当時、世界最大規模の白身魚のバイヤーであったことから、持続的な水産資源の確保、つまり持続可能な漁業の確立が事業戦略上の重要な課題となっていた。

ユニリーバは、1996年から、国際環境NGOであり水産資源の枯渇に警鐘を鳴らしていた世界自然保護基金(WWF)との協働を開始。1997年に海洋管理協議会(Marine Stewardship Council:MSC)を設立し、持続可能な漁業に対する認証スキームを構築した。

MSCは、国連食糧農業機関(FAO)の「責任ある漁業のための行動規範」を基に作成した「持続可能な漁業のための原則と基準」により持続可能な漁業のあり方を定義している。

漁業者および水産加工業者は、MSCにより認定された独立機関による審査を受け、この原則と基準に則した漁業であることが認められると、MSC認証が付与され、MSC認定ラベルを商品に表示することが出来る仕組みとなっている。

海洋管理協議会は、1999年以降は非営利団体としてとして独立した組織となっている。独立した第三者機関を設けることで、市場全体が利用可能な認証プログラムとなっている。

ユニリーバはサプライヤーに対しこの取得を奨励。2001年にニュージーランドの漁場にて初のMSC認証がなされ、MSC認証ラベルつきの商品の販売を開始した。2005年には、世界最大規模のアラスカ漁場が認証を取得。これにより、ユニリーバが欧州で提供する魚加工商品は46%がMSC認証商品となった。

CSRコンパス世界の企業事例 No.001「持続可能な漁業に向けたサプライチェーンでの取り組み」

ユニリーバ企業概要 :家庭用品、パーソナルケア、食品分野において400ブランドを有する世界最大級の消費財メーカー。

世界自然保護基金(WWF)団体概要 : 50カ国以上に拠点を持ち、100カ国以上で活動を展開、会員は450万人以上。主な活動領域は、野生生物の保護、森林保全、地球温暖化対策など。

認証制度の構築~海のエコラベル「MSC認証」

② 具体的ソリューションの開発

事例

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3

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ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

12

事例 2

所見

サプライチェーンにおける基準作りをNGOをはじめとした様々なステークホルダーとともに行い、かつ誰もが利用できる認証スキームとして一般化したことが本ケースの特徴である。自ら市場ルールを確立し、先駆的に取り組むことで先行者メリットを得ている。

NGOと共に制度設計を行いうことで中立性と透明性を担保し、世界的に広く活用される認証制度を構築することができた。

認証制度という業界共通の基準ができたことで、自社のサプライチェーンマネジメントがしやすくなった。

協働のプロセスで得られた専門知識やノウハウを自社のサプライチェーンマネジメントに活用している。

WWFは森林において同様の認証スキーム(SFC認証)を構築した経験があり、そのノウハウがMSC設立に活かされた。

企業にとってのメリット

NGOと共に制度設計を行いうことで中立性と透明性を担保し、世界的に広く活用される認証制度を構築することができた。

認証制度という業界共通の基準ができたことで、自社のサプライチェーンマネジメントがしやすくなった。

協働のプロセスで得られた専門知識やノウハウを自社のサプライチェーンマネジメントに活用している。

WWFは森林において同様の認証スキーム(SFC認証)を構築した経験があり、そのノウハウがMSC設立に活かされた。

NGOにとってのメリット

認証制度の構築~海のエコラベル「MSC認証」

事例

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3

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ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

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事例 3

2006年11月、HPとWWFは温室効果ガス削減と製品のエネルギー効率向上のための共同イニシアチブを発表。両者は協力関係を結び、世界中のHPの各事業所からの温室効果ガス排出の削減、ベストプラクティスを普及させるための教育・啓発活動の推進、WWF主導の自然保護の取り組みに対するHPの最新テクノロジーの提供等を宣言した。

具体的な行動計画として、以下のような点が挙げられている。

WWFとHPはエネルギー消費量を削減するために最適な技術とベストプラクティスを検討する。

HPは製品カテゴリーごとのエネルギー効率測定手法を開発する。この測定基準に基づき、WWFと共同で製品の省エネ化のための目標値を設定し、目標達成に向けての進捗状況を公表する。

WWFとHPは主要なステークホルダーと共に、気候変動に対応するための教育プロジェクトを策定・実行し、消費者や企業が採用しているベストプラクティスの普及に努める。

WWFとHPは、HPの最新技術を気候変動への適応力と抵抗力を養うための科学の振興と実践に活用する。

HPは2007年5月パートナーシップの一環として、WWFが実施する気候変動問題の原因や影響度を調査・分析する3種類のプロジェクトに対し、200万ドルの資金とノートPCやデジタルカメラ、プリンターなど最新のHP製品の提供を開始した。

CSRコンパス世界の企業事例 No.058「環境NGOとのパートナーシップによる気候変動への取り組み」

ヒューレット・パッカード(HP)企業概要 :個人、企業、官公庁などを対象に、幅広いIT総合ポートフォリオを提供している世界最大規模のIT企業。

世界自然保護基金(WWF)団体概要 : 50カ国以上に拠点を持ち、100カ国以上で活動を展開、会員は450万人以上。主な活動領域は、野生生物の保護、森林保全、地球温暖化対策など。

温室効果ガス削減と製品のエネルギー効率向上のための共同イニシアチブ

② 具体的ソリューションの開発

事例

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NGOとの協働によるCSR活動

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2

ガバナンスとマネジメント

3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

14

事例 3

所見

WWFは他にも「クライメートセイバーズ」という企業とNGOの協働により企業の気候変動対策の策定・推進活動を進めているが、この枠組みへの参加企業はWWFのように専門性のある国際NGOと協働することで、その専門性やノウハウを自社の活動推進において活かすことができるということ、また、自社の独断ではない目標設定と活動推進により、対外的な信頼性が向上することをメリットとして期待している。HPとWWFの共同イニシアチブは「クライメートセイバーズ」の枠組みから更に一歩踏み出し、社会への影響も考慮し自社の技術やノウハウを提供するという、企業とNGOとの間でWin-Winの関係が出来ているケースである。

世界的な環境保護のスペシャリストとして定評のあるWWFとパートナーシップを結ぶことによりHPの活動の信頼性が向上する。

WWFと共同で環境目標や行動計画を立てることで、主要なステークホルダーの要求に明確に応えられるCSR活動が可能となっている。

自社の専門性を生かした活動を行うことで、最新テクノロジー、製品を効果的にPRする機会となっている。

HPが自社の独断ではなく、気候変動の実態を把握しているWWFの科学的かつ専門的なアドバイスに基づいて、温室効果ガスの削減目標や行動計画を策定することにより、信頼性・実効性の高い活動が期待できる。

企業にとってのメリット

HPの最新機器がWWFの気候変動研究の最前線で活用されることにより、研究の効率が向上し、精度・質の高い研究成果が迅速に社会に届けられる。

調査・活動資金を確保することができた。

HPとWWFが検討した気候変動対策のベストプラクティスが公開されることで、活動の波及効果が期待できる。

気候変動問題の原因や影響度を調査・分析するプロジェクトの活動資金と最新のIT機器を得ることができた。

NGOにとってのメリット

温室効果ガス削減と製品のエネルギー効率向上のための共同イニシアチブ

事例

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ガバナンスとマネジメント

3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

15

事例 4

2007年1月、GE、デュポン、アルコア、PG&Eなど10社の米国大手企業と、世界資源研究所(WRI)、エンバイロンメンタル・ディフェンスなど4つの有力な非営利団体の連携によって活動を始めた米国気候アクション・パートナーシップ(USCAP)は記者会見を開き、米国の連邦政府に対して早期のキャップ・アンド・トレード制度をはじめとして、温室効果ガス排出削減に向けた法制化の実現を呼びかけた。

米国の連邦政府に対する政策提言「A Call for Action(行動への呼びかけ)」では、市場メカニズムを活用することにより、最も効果的かつ効率的に温室効果ガスを削減することができるとしており、最終的に米国がそのような制度を導入することは、技術的革新を引き起こし、グローバル市場における米国のリーダーシップの強化に繋がるとしている。

USCAPのメンバーは早期の法制化を呼びかけ、15年以内に10~30%の削減を目標とすべきだとしつつ、最終的には、2050年までに2007年比で、60~80%の排出削減への道筋をつくる法体系を政府が確立することを促している。

2009年1月には新たに政策提言「Blueprint for Legislative Action」を発表した。今回の提言の中心は温室効果ガス排出枠を取引するキャップ・アンド・トレード制度の導入。2050年までに2005年比で80%の温室効果ガス排出量削減目標を提示しており、この実現のためには米国産業界の大規模な排出削減努力が必要であると訴えている。レポートでは効果的なキャップ・アンド・トレード制度の制定に向けた具体的な政策案が提示されている。

GE、 Dupont、 Alcoa、 Caterpillar Inc.、Duke Energy、 FPL group、Lehman Brothers、 PG&E Corporation、PNM Resources など

世界資源研究所(WRI)、Environmental Defense、 Natural Resources Defense Council、 Pew Center on Global Climate Change

企業とNGOが共同で政策提言~米国気候アクションパートナーシップ (USCAP)

③ 公共政策への提言

出典:USCAPのWebサイトより

事例

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ガバナンスとマネジメント

3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

16

事例 4

所見

国の政策に対し、規制強化を後押しする提言を企業とNGOが共同して働きかけるという新しい動きである。気候変動の問題は、スターンレビュー※で明らかになったように、対策が遅れるほど大幅なコスト負担を強いられることになる。逆に早期にビジネスの枠組みを整備し、フェアな競争環境を整えることで、国際的な競争力を逸早く身に付けることができることに気づき実際に行動に移している好事例である。

※スターンレビュー:2006年10月に英国財務相が発表した、気候変動がもたらす経済的影響を包括的に調査した報告書。元世界銀行チーフエコノミストであるニコラス・スターン(Nicholas Stern)氏に調査が委託されたことから、「スターン・レビュー(Stern Review)」と呼ばれている。

NGOが取りまとめ役を担ったことで、多数の企業が参画し、発言の影響力を増すことができた。

WRIなどの調査研究型NGOの専門性を活用することで、自社として気候変動に積極的に取り組むと同時に政策に働きかけ競争基盤を整えることが自社にとっても社会全体にとってもメリットがあることを明らかにすることができた。

企業にとってのメリット

経済的に影響の大きな企業とともに共同提言をまとめることで、国に対するプレッシャーを増すことができ、政策面への反映が期待できる。

NGOのメッセージは得てして理想論としてとらえられがちだが、企業との共同声明として発信することで、経済的な側面も考慮した上で、実現可能な解決策として社会に提示されることとなる。

NGOにとってのメリット

企業とNGOが共同で政策提言~米国気候アクションパートナーシップ (USCAP)

事例

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NGOとの協働によるCSR活動

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ガバナンスとマネジメント

3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

17

事例 5

HSBCでは、 2002年より「自然への投資」(5,000万ドル)の活動を展開し、環境保護団体の活動を支援してきたが、2007年からは、5年間にわたる「HSBC気候パートナーシップ」を開始。1億ドル(110億円:1ドル110円換算)の資金を投じ、アースウォッチ、気候グループ、スミソニアン熱帯研究所、WWFの4団体とともに、右記の目標に向けて活動を進めている。

資金と人、2つの側面からの社会貢献~HSBC気候変動パートナーシップ

④積極的な社会貢献CSRコンパス世界の企業事例 No.093「HSBC気候変動パートナーシップ」

HSBC企業概要 :世界有数の金融グループの1つ。全世界の顧客数は1億を超え、世界各地域に約1万の店舗を

展開

アースウォッチ団体概要 : 野生生物や生態系など環境保全研究を進める科学者の野外調査を「資金と人手」の両面で支援する世界最大級の国際NGO。

気候グループ団体概要 : 地方政府・NGO・金融機関・エネルギー会社などにより設立。地球温暖化問題解決に向けてのネットワーキング、啓発活動、政策提言などを実施。

スミソニアン熱帯研究所団体概要 : 熱帯生態系に関する代表的な研究機関。専任の科学者約40名、世界40カ国以上で活動。

世界自然保護基金(WWF)団体概要 : 50カ国以上に拠点を持ち、100カ国以上で活動を展開、会員は450万人以上。主な活動領域は、野生生物の保護、森林保全、地球温暖化対策など。

「HSBC気候パートナーシップ」の活動においては、HSBCの従業員の参加を重視しており、気候変動への対応に関わる各地域のプロジェクトに25,000人の従業員がボランティアとして参加、アースウォッチの1~2週間の実地調査に2,000人もの従業員を派遣するなど、人的側面からの支援も行っている。

事例

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ガバナンスとマネジメント

3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

18

事例 5

所見

「HSBC気候パートナーシップ」の活動においては、環境NGO等に対して資金面からの支援を行うだけでなく、従業員の参加という側面を重視している点が大きな特徴であり、企業による社会・環境への貢献と人材育成の2つの側面を持っているということができる。こうしたアプローチにより、気候変動への取り組みに対して人的な側面からサポートを行うと同時に、HSBCの従業員は、教育プログラムや当該分野の研究者との交流等を通じて、気候変動に対する理解や事業活動と気候変動の関わりについての理解を深めることができる。さらに、実地調査に参加した従業員は、習得した知識を活かした事業開発の機会を与えられていることも注目すべき点である。

世界の各地域において、NGOを通してコミュニティとのつながりを重視しながら気候変動に関わる活動が進められることにより、地域社会におけるHSBCに対する認識や評価が高まることが期待される。

従業員がNGOの現場でボランティア経験をすることで、環境問題への意識向上、リーダーシップやチームワーク、関係構築・維持、変化への対応といったマネジメントスキルの向上に役立っている。また、こうした活動の意義を従業員が認識し、積極的に支援する企業へのロイヤリティが向上するなどの効果が生まれている。

企業にとってのメリット

資金面や人的な支援を受けることにより、活動の充実を図ることができる。

NGOにとってのメリット

資金と人、2つの側面からの社会貢献~HSBC気候変動パートナーシップ

事例

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ガバナンスとマネジメント

3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

19

関連するコンパスの事例 (2009年1月現在)

世界の企業事例No. 企業名 ケースタイトル

No.087ブリティッシュ・アメリカン・タバコ

「NGOとの協働による生物多様性保全活動」

No.061 テトラパック 「途上国での「開発を支援する食品」プログラム」

No.083 ホーム・デポ 「NPOとの協働による子供の遊び場設置活動」

No.077キャドバリー・シュウエップス

「責任あるカカオ調達の実現にむけたコミュニティ支援」

No.057 ダノングループ「水問題をテーマにしたコーズ・リレーティッド・マーケティング 「1リッター for 10リッター」プログラム」

No.055 BTグループ 「本業分野での戦略的フィランソロピー「ベターワールドキャンペーン」」

No.046 イケア 「持続可能な木材調達に向けた取り組み」

No.031 フォード 「業界初の気候変動レポートの発行」

No.004ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー

「浄化剤「PUR」による途上国での飲料水の供給」

「CSRコンパス」の企業事例では、他にもNGOとの協働に関連した事例を紹介しています。2009年1月現在、企業事例データベースに登録

のある該当事例は以下の通りです。(個別ケースの詳細は検索してPDFをダウンロードしてください。)

その他の関連する企業事例

関連する

企業事例

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ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

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社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

20

関連するコンパスの事例 (2009年1月現在)

メンバー企業の事例No. 企業名 ケースタイトル

No.026 三菱商事 「「海の熱帯林」サンゴ礁の保全 」

No.018 東京ガス 「「防災ドロップ」によるガスメーター安全機能の周知」

No.087 アサヒビール 「児童養護施設やNPOとの協働によるボランティア活動 -KIDSプロジェクト-」

その他の関連する企業事例

関連する

企業事例

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3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

21

本ベンチマークでは、主に国際NGOと企業の連携に焦点をあて、様々なタイプ

の協働事例があることを紹介してきた。一方、日本国内での協働事例を見て

みると、人道支援や途上国援助、地域の自然保護活動など実践型NGOと協

働し社会貢献としてのプロジェクトを推進するケースが多い。

企業側からは、NGOとの協働をしたくても日本には協働先として適切な団体が

ないという声も聞こえる。日本では、約3万のNPO法人があるといわれるが、そ

の活動分野を見ると、福祉、教育、まちづくり、文化振興、環境保全など、実践

型のものが多くを占め、全体の半数近くが会員数も30人未満という小さな団体

である。何百万人の会員を持ち、安定した活動資金もあり、優秀な専従スタッ

フを抱えることのできる海外のNGOと比較すると、依然その差は大きい。日本

での協働が社会貢献的なものに限定されてしまう理由は、こうしたNGOの違い

もあるだろう。

しかし、日本企業でもグローバルに展開する企業では、国際NGOの力を活用

し、自社のCSR活動を向上させている企業もある。例えば、ソニーや佐川急便

は、WWFとともに自社のCO2削減計画を策定している。

NGOと企業の関係を専門とする拓殖大学の長坂寿久教授は「半歩先の世界

の課題・ニーズはNGOが知っている」と言う。日本国内だけでなく国際舞台で

活躍するNGOとの接点を持ち、彼らの視点や情報、ネットワークを活用して自

社のCSR活動を磨いていくことは、近い将来におけるリスク回避であり、競争

優位性にもつながると言えるだろう。

日本企業への提言考察

企業にとってのメリット

問題の先取りとリスク回避

企業は、NGOとの協働を通して、NGOの情報収集力や問題意識を取り入れることで、問題が顕在化する前に認識し、対応することができる。

透明性の確保と信用の外部担保

市民からの信頼を得ているNGOによる第三者視点を取り込むことで、企業は、自社の活動または当該プロジェクトの透明性を高めることができ、社会からの信頼を得ることができる。

専門性・ノウハウの獲得

当該分野において蓄積されたNGOの専門性、課題に対するアプローチとノウハウ、経験知、世界からの情報を活用できれば、企業は一からそれらを蓄積する必要がない。

ネットワークの活用

例えば、途上国支援に関するプロジェクトを行う場合、その対象地域の事情をよく把握し、人的ネットワークをもつNGOと協働することで、企業は当該プロジェクトをより効果的に展開することができる。

PR効果

中立的な立場を取るNGOの信用力を通して、自社の活動を社会に伝える、PR効果も期待される。

考察

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NGOとの協働によるCSR活動

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ガバナンスとマネジメント

3

人財育成と知識の共有

1

ビジョンと戦略

4

ビジネス変革とマーケティング

6

ワークプレイス

7ステークホルダーコミュニケーション

5

事業プロセス

8

社会貢献とコミュニティ参画

概要

背景

事例

考察

参考資料

関連する

企業事例

22

• 企業とNGOの協働に関する手引書「Guide to Successful Corporate-NGO Partnerships」

Global Environmental Management Initiative (GEMI)、国際NGOの環境防衛基金(EDF) 2008年11月発行

http://www.gemi.org/resources/GEMI-EDF%20Guide.pdf

デュポンや3M、コカコーラなど大手企業が参加しCSRのテーマに取り組むGlobal Environmental Management Initiative (GEMI)と、国際NGO

の環境防衛基金(EDF) は、企業とNGOの協働に関する手引書「Guide to Successful Corporate-NGO Partnerships」を発行した。この手引書

では、EDFの20年に及ぶ企業との協働の実績と、GEMI参加企業の経験に基づき、企業とNGOの協働を成功に導くポイントと実際の事例を紹

介している。

• 書籍「グローバリゼーションとNGO・NPO - 「政府=NPO=企業」の新たな協働関係-」 長坂 寿久、DTP出版

• 調査報告書、平成18年度「NPO法人の活動に関する調査研究(NPO法人調査)」 平成19年3月、独立行政法人 経済産業研究所

http://www.rieti.go.jp/jp/projects/npo/2006/2.pdf

• 海洋管理協議会(MSC:Marine Stewardship Council) http://www.msc.org/

• 米国気候アクションパートナーシップ (USCAP) http://www.us-cap.org/

• HSBC気候パートナーシップ http://www.hsbccommittochange.com/environment/climate-partnership/

主な参考資料

団体データベース

「CSRコンパス」には、世界の主要なNGO、研究機関など社会に対し影響力のある団体を登録したデータベースがあります。キーワードを入力いただくか、テーマや地域を選択していただくと、該当する団体を検索し一覧で表示いたします。また、各団体の概要がご覧いただけます。ぜひご活用ください。

参考資料