地理歴史科新科目「歴史総合」・「日本史探究」の特徴と実践課題€¦ ·...

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特 集

1地理歴史科新科目「歴史総合」・「日本史探究」の特徴と実践課題~資質・能力ベースの歴史授業構成~

鳴門教育大学大学院学校教育研究科 教授 梅津正美

次期学習指導要領解説

日本史かわら版 第5号(2018年6月発行)

 1.資質・能力ベースの歴史授業構成

 今次の学習指導要領改訂で注目すべきことは,学校教育を通じて児童生徒が身につけるべき資質・能力を「3つの柱」として整理したことである。すなわち,①生きて働く知識・技能の習得,②未知の状況にも対応できる思考力・判断力・ 表現力等の育成,③学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養,の3つである。     地理歴史科の目標の構成は,3観点のもと8つの具体的目標に整理して示すことができる。【i知識・技能】 ①現代世界の地域的特色と日本及び世界の歴史の展開に関

する理解。②調査や諸資料にもとづいて様々な情報を調べ

まとめる技能。

【ii思考力・判断力・表現力等】①地理的・歴史的な見方・考え方を働かせる力。②地理的・

歴史的事象の意味や意義,特色や相互の関連を,概念など

を活用して多面的・多角的に考察する力。③現代的な諸課

題の解決に向けて構想(公正に選択・判断)する力。④思考・

判断したことを説明・議論する力。

【iii学びに向かう力・人間性等】 ①社会的な課題を主体的に解決しようとする態度。②多面

的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民と

しての自覚,我が 国の国土や歴史に対する愛情,他国や他国

の文化を尊重しようとすることの大切さについての自覚。

 歴史授業の改善に向けて,資質・能力ベースの 授業・単元の構成と実践が求められている。

 2.「歴史総合」の性格と内容構成

(1)性格 新必履修科目である「歴史総合」の基本的性格について,中教審答申(平成28年12月)は,「歴 史の推移や変化を踏まえ,課題の解決を視野に入れて,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する」科目であると述べている。

 こうした説明からは,より具体的に科目の3つの特徴を導くことができよう。第1は,現代的な諸課題の解決を視野に入れて,学習課題の現在性にいっそう焦点をあてて考察する科目であること。 第2は,変化や推移を視点にして,近現代の 「(マクロな)社会」の歴史的変動過程を中・長期的な時代区分により考察する科目であること。 第3は,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を,「世界」・「日本」・「地域」の重層的な関係に着目して考察する科目であることである。(2)内容構成 高等学校新学習指導要領(平成30年3月告示)に示された「歴史総合」の全体構成を,表1に示 した。そこから読み取れる内容構成の特徴を,先 に概括して述べれば,生徒たちが,近現代の社会 の歴史的変動過程とその中での現代的な諸課題の 形成過程を,概念的に考察・理解できるように学 習内容が構造化されているということである。具 体的には以下の3点を指摘することができる。 第1は,大項目に着目して,近現代の社会の歴 史的変動過程をとらえるための枠組みとして「近 代化」(18世紀後半~現在),「大衆化」(19世紀後半~現在),「グローバル化」(20世紀後半~現在)が用いられ,これら3つの転換を経て形成されてきた現代社会の諸課題を,学習の主体である生徒たちが,「現在」を生き「未来」を開いていく「私たち」の問題として考察していくように内容が構成されていることである。 第2は,中項目およびそこに配置された学習内 容((ア)(イ)で表記)に着目して,時代の社会の特質を概念で理解・説明できるように内容が構成されていることである。例えば,大項目Bでは,「近代化」という大概念を説明するために,下位概念として「工業化」「世界市場」「政治変革(市民革命や国民統合)」「立憲体制」「国民国家」「帝国

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日本史かわら版 第5号(2018年6月発行)

主義政策」などが選択され構成されている。また,大項目Cでは「大衆化」の下位概念に「総力戦」「国際協調体制」「大衆社会」「社会運動」「世界恐慌」などが取りあげられているし,大項目Dでは「グローバル化」を説明するために「冷戦」「世界経済」「地域連携」「地域紛争」「市場経済の変容と課題」などが配列されている。 第3は,現代的な諸課題の形成過程の考察とそ の解決に向けた展望を生徒の学習において実質化するために,大項目 B・C・D に中項目(4)を設けて,近現代の歴史と現代的な諸課題との関わりを考察するとともに,課題解決に向けた構想を議論する構成をとっていることである。現代的な諸課題につながる歴史的状況を考察するために

 3.「日本史探究」の性格と内容構成

(1)性格 新選択科目である「日本史探究」の基本的性格については,次のように説明されている(前掲中教審答申別添資料)。「我が国の歴史の展開について,世界の歴史や歴史を構成する様々な要素に着目して,総合的に広く深く探究する」科目である。 この科目の性格を解釈する場合に,注目すべきは,第1に,内容に関わる「総合的に広く深く」の意味内容である。その意味するところは,「原始・古代」「中世」「近世」「近代」「現代」の時代区分のもと,各時代の政治・経済・社会・文化などの各側面を扱う,いわゆる年代史(通史)編成をとること。一方で,各時代のできごとの網羅的学習にならないように,日本の歴史の展開を,地理的条件や世界の歴史と関連づけたり,諸事象の意味や意義,特色などに着目して描くことである。

「自由・制限」「平等・格差」「開発・保全」「統合・分化」「対立・協調」といった概念的な枠組みが例示され,それらを視点に学習の主題と内容の焦点化がはかられている。

表1 「歴史総合」の全体構成

表2 「日本史探究」の全体構成

A 歴史の扉 (1)歴史と私たち (2)歴史の特質と資料B 近代化と私たち (1)近代化への問い (2)結び付く世界と日本の開国  (ア)18世紀のアジアの経済と社会   (イ)工業化と世界市場の形成 (3)国民国家と明治維新  (ア)立憲体制と国民国家の形成   (イ)列強の帝国主義政策とアジア諸国の変容 (4)近代化と現代的な諸課題C 国際秩序の変化や大衆化と私たち (1)国際秩序の変化や大衆化への問い (2)第一次世界大戦と大衆社会  (ア)総力戦と第一次世界大戦後の国際協調体制   (イ)大衆社会の形成と社会運動の広がり (3)経済危機と第二次世界大戦  (ア)国際協調体制の動揺   (イ)第二次世界大戦後の国際秩序と日本の国際社会への復帰 (4)国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題D グローバル化と私たち (1)グローバル化への問い (2)冷戦と世界経済 (ア)国際政治の変容 (イ)世界経済の拡大と経済成長下の日本の社会 (3)世界秩序の変容と日本 (ア)市場経済の変容と課題 (イ)冷戦終結後の国際政治の変容と課題 (4)現代的な諸課題の形成と展望  

A 原始・古代の日本と東アジア (1)黎明期の日本列島と歴史的環境 (2)歴史資料と原始・古代の展望 (3)古代の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈, 説明,論述)B 中世の日本と世界 (1)中世への転換と歴史的環境 (2)歴史資料と中世の展望 (3)中世の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈, 説明,論述)C 近世の日本と世界 (1)近世への転換と歴史的環境 (2)歴史資料と近世の展望 (3)近世の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈, 説明,論述)D 近現代の地域・日本と世界 (1)近代への転換と歴史的環境 (2)歴史資料と近代の展望 (3)近現代の地域・日本と世界の画期と構造 (4)現代の日本の課題の探究

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日本史かわら版 第5号(2018年6月発行)

 本稿で検討してきた高校歴史新科目の内容構成 の特徴をふまえ,「アクティブ・ラーニング」と しての学習過程を組んでいくことを,2単位(70 単位時間)科目の「歴史総合」と3単位(105単位時間)科目の「日本史探究」でどのように実現していくのかが中心的な課題となろう。新科目を資質・能力ベースの歴史授業として展開するためには,明確な主題にもとづく単元学習を組み立てていかねばならない。 また,必履修科目と選択科目とをどのように接 続・関連させるのか,必履修科目「歴史総合」「地 理総合」「公共」の内容をどのように接続・関連 させるのかなど,地理歴史科・公民科のカリキュ ラム・マネジメントに関する検討も不可欠である。

 第2は,方法に関わる「探究する」の意味内容である。それは,知識の伝達・暗記という従来型の教授活動中心の授業に対して,明確な課題にもとづいて生徒が主体的に解釈を考察・構想・説明・議論していく学習活動中心の授業へと転換していくことを意味していよう。(2)内容構成 新学習指導要領における「日本史探究」の全体構成を,表2に示した。先に論じたように「日本史探究」は,基本的には年代史編成をとっている。そうした編成のもとで,内容構成に関する大きな2つの特徴を指摘することができる。 第1は,授業が事象・できごとの網羅的な伝達と暗記に終始しないように,歴史的事象の内容編成の軸として,「歴史的環境」「時代の展望」「時代の国家・社会の展開」「画期」「転換」「現代の日本の課題の探究」を組み込んでいることである。すなわち,地理的環境や国際的環境(歴史的環境)などをふまえて,時代を通観する学習課題を見いだし(展望),それらの課題を究明することを通じて時代に関わる諸事象の意味や意義,時代の特色をつかむ(時代の国家・社会の展開),そして大項目に示された時代のひとまとまりの学習を終えて次の時代の学習へ移るときには,変化,推移,差異などを視点に歴史の大きな流れ(画期・転換)をとらえることができるように内容を構成している。それらの学習をふまえて,大項目Dの中項目(4)で現代の日本の課題を探究・理解して科目の学習を締めくくるのである。 第2は,歴史資料の活用・解釈・説明・論述といった「歴史の学び方」を学習内容として組み込んでいることである。

4.学習過程・方法の改善

 新学習指導要領では,汎用性のある知識・技能の習得・活用や思考力・判断力・表現力等を育成するために,「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の視点からの学習過程・方法の改善の方向性がうち出されている。生徒たちによる「主体的・対話的で深い学び」を支える

のは言語能力であり,その能力を発揮させる言語活動である。 「歴史総合」「日本史探究」を含めて社会系教科・科目の授業における言語活動は,次のような手順で展開していくことを考えることができる。①記述:社会的・歴史的事象に関する諸事実を正確に読み 取り記述する。

②説明:見いだされた諸事実の関係を説明する。③解釈:諸事実の関係をふまえ,社会的事象の意味・意義 や特色などを解釈する。

④選択・判断:社会的課題に対応する解決策を,事実を根 拠に選択・決定する。

⑤論述:社会的・歴史的事象についての解釈や社会的課題 に対する自分の主張(選択・判断)を根拠にもとづいて論

述する。

⑥議論:根拠にもとづいてたがいの解釈や主張を論じ合う。

 ①から⑥に向かう言語活動は,資質・能力における知識のレベルでは事実・情報などに関わる知識の習得・活用→概念・理論に関わる知識の習得・活用→価値・評価に関わる知識の吟味・選択へ,思考・判断のレベルでは事実判断→推論→価値判断・意思決定→メタ思考(知識・思考のふり返り)へと生徒の学習が深まっていく過程に対応しているとみることができる。

5.「歴史総合」「日本史探究」の実践課題

 

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