地熱発電メルマガキャラクター...

10
地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター ちねつん もくじ 経済産業省からのお知らせ① 平成30年度の地熱関係予算について 平成30328日に、平成30度政府予算が成立しました。地熱関 係予算は以下のとおりです(カッコ内 は前年度予算額)。 これらの予算をはじめとした施策を 通じ、引き続き、地熱発電の更なる 導入促進に向けて、しっかりと取り組 んでいきます。 1)地熱資源量調査事業 90.0 億円(90.0億円) 地熱資源量の把握に向けた地表 調査や掘削調査等の初期調査に対 して支援を行うとともに、新規の有望 地点を探索するための調査を実施し、 地熱発電の更なる導入拡大を図る 事業です。 2)技術開発事業 24.5 億円(22.0億円) 地下の探査精度の向上や、掘削 効率の改善など、地熱発電の導入に おける課題を解決するための技術開 発を通じて、地熱発電の導入を後押 しする事業です。 3)理解促進事業 3 .0億円(12.0億円) 地熱発電に関する勉強会・講演会 や、地熱発電後の熱水利活用などを 通じて、地域住民等の地熱開発に 対する理解を促進する事業について 支援を行う事業です。 4)探査出資、開発債務保証 7 6.0億円(60.0億円) 地熱資源量を確認する探査事業 に対する出資や、発電設備の設置 等に対する債務保証を行う事業です。 なお、(1)及び(3)の事業に ついては、随時、公募を開始しており ます。公募に関する情報については、 資源エネルギー庁・各経済産業局・ JOGMECの各HPで、随時お知らせ していますので、ご覧ください。 09 平成 30 03 月発行 経済産業省からのお知らせ ●平成30年度の地熱関係予算について ●地熱発電に係る市町村条例のひな形 ② 九州電力株式会社の取組のご紹介 ●地熱発電に対するこれまでの取組 ●地域との共存共栄に向けたこれまでの取組 ●新たな地熱開発に向けた取組 ●今後の展望 JOGMECの取組のご紹介 ●地熱資源開発アドバイザリー委員会について ●平成30年度「地熱資源量の把握のための調査事業費助成 金交付事業」について ●平成29年度「地熱シンポジウム in 函館」開催報告 巻末特集 ●滝上バイナリー発電所などが「新エネ大賞」を受賞しました!

Upload: others

Post on 14-Sep-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン~あの町この町いろんな地熱~

地熱発電メルマガキャラクターちねつん

もくじ 経済産業省からのお知らせ①平成30年度の地熱関係予算について平成30年3月28日に、平成30年度政府予算が成立しました。地熱関係予算は以下のとおりです(カッコ内は前年度予算額)。これらの予算をはじめとした施策を通じ、引き続き、地熱発電の更なる導入促進に向けて、しっかりと取り組んでいきます。

(1)地熱資源量調査事業90.0億円(90.0億円)

地熱資源量の把握に向けた地表調査や掘削調査等の初期調査に対して支援を行うとともに、新規の有望地点を探索するための調査を実施し、地熱発電の更なる導入拡大を図る事業です。

(2)技術開発事業24.5億円(22.0億円)

地下の探査精度の向上や、掘削効率の改善など、地熱発電の導入における課題を解決するための技術開発を通じて、地熱発電の導入を後押しする事業です。

(3)理解促進事業3.0億円(12.0億円)

地熱発電に関する勉強会・講演会や、地熱発電後の熱水利活用などを通じて、地域住民等の地熱開発に対する理解を促進する事業について支援を行う事業です。

(4)探査出資、開発債務保証76.0億円(60.0億円)

地熱資源量を確認する探査事業に対する出資や、発電設備の設置等に対する債務保証を行う事業です。

なお、(1)及び(3)の事業については、随時、公募を開始しております。公募に関する情報については、資源エネルギー庁・各経済産業局・JOGMECの各HPで、随時お知らせしていますので、ご覧ください。

第 09 号

平成 30 年 03 月発行

① 経済産業省からのお知らせ●平成30年度の地熱関係予算について●地熱発電に係る市町村条例のひな形

② 九州電力株式会社の取組のご紹介●地熱発電に対するこれまでの取組●地域との共存共栄に向けたこれまでの取組●新たな地熱開発に向けた取組●今後の展望

③ JOGMECの取組のご紹介●地熱資源開発アドバイザリー委員会について●平成30年度「地熱資源量の把握のための調査事業費助成金交付事業」について

●平成29年度「地熱シンポジウム in 函館」開催報告

④ 巻末特集●滝上バイナリー発電所などが「新エネ大賞」を受賞しました!

Page 2: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

経済産業省からのお知らせ②

地熱発電に係る市町村条例のひな形地熱開発は、地域の自然環境や生活環境に配慮し、地域と共生しながら進めていくことが重要です。また、地域の方々と開発事業者との調整において、自治体(市町村)の果たす役割の重要性は増しており、一部の市町村では、協議会の設置や、地熱発電条例を制定する動きも出てきています。これを受け、経済産業省では、地熱開発が行われている自治体向けに、地域社会において秩序ある持続

可能な地熱開発を進めていくための「地熱発電に係る市町村条例(以下「条例」という。)」のひな形と、その「手引き」を作成しました。条例のひな形は、下図のとおり、地熱開発が行われている地域において、秩序ある持続可能な地熱開発が行われるよう、地熱開発事業者に対して、地域住民や自治体に事業内容の説明等を行うことを求め、それを制度化したものです。

条例のひな形における手続きの流れは下図のとおりですが、地熱開発の各段階において、地域の関係者への事業計画の説明等を求めることで、地域と共生した地熱開発が進むようにしています。

この条例のひな形を活用し、北海道の弟子屈町では、「弟子屈町地熱資源の保護及び活用に関する条例」が可決されました。今後、このような動きが広がることが期待されます。

条例のひな形の全体像

条例のひな形をダウンロードできます!本ひな形は、「地熱発電の推進に関する研究会平成28年度報告書」の別添に掲載されており、以下の経済産業省のHPから、ダウンロードが可能です。http://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/geothermal/society/report_28fy/pdf/report_002.pdfなお、現在、条例の解説として、「ひな形の手引き」を作成中ですので、後日、経済産業省のHPで公表予定です。

第09号|平成30年03月発行

条例のひな形における手続きの流れ

Page 3: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

九州電力株式会社の取組のご紹介①地熱発電に対するこれまでの取組

第二次世界大戦後、復興期の深刻な電力不足解消に向け、多くの電源開発が進められる中、昭和23年、当時の商工省工業技術庁に、地熱開発審議会が設置され、地質調査所による地熱調査が日本各地で開始されました。昭和24年に九州電力㈱の前身である九州配電㈱は、九州各地で地熱地帯の予備調査を開始し、昭和25年からは、最も有望と目された大岳地区に絞って調査を進めました。昭和26年の電力再編成に伴い、九州電力㈱に再編された後も、地熱調査を電源開発の一環と捉え、地熱事業に本格的に取り組むことになりました。

昭和25~27年にかけて、大岳地区で調査を重ね、調査井4本の噴出に成功しました。しかし、当時唯一の地熱発電だったイタリアのラルデレロ発電所では、過熱蒸気を発電に利用したものの、大岳では全ての調査井から、熱水混じりの蒸気しか噴出しませんでした。さらに、昭和31年に電力中央研

究所の依頼で来日したフランスのC.G.G社(ゼネラル・ド・ゼオフィジック社)の技師が、大岳地区を視察した結果、過熱蒸気の大規模な貯留層発見の可能性は少ないとコメントしたこともあり、大岳地区での地熱調査は一時中断しました。

そのような中、昭和33年にニュージーランドから「熱水分離方式」による発電成功のニュースが伝えられ、大岳でも調査が再開されることとなりました。併せて、熱水分離型による10MWの地熱発電を目標に、三菱重工業㈱との共同研究を開始し、坑井特性の計測を始め、汽水分離器等の諸設備の設計など、地熱発電所の設計に取り組みました。また、テストプラント的な位置づけながらも、旧火力発電所の発電機を改造して

大岳発電所(建設当時)

八丁原発電所(国内最大の110,000kW)

流用するなど、常に経済性を念頭に置いて設計が進められました。こうして昭和42年8月に、事業用及び熱水分離型として、日本で最初の地熱発電所である大岳発電所(大分県九重町)が運転を開始しました。

大岳発電所では、運転開始以降も、シリカスケールの付着や熱水の地下還元による貯留層への影響などの課題解決のため、多くの対策を講じてきました。これらの経験を通じて得られた知見・技術・ノウハウを活かし、昭和52年に八丁原1号機の運転を開始しました。ここでは引き続き、三菱重工業㈱と共同で、熱水の熱エネルギーの有効活用を図る「ダブルフラッシュ方式」の開発や、蒸気井から汽水混合流体を分離せずに発電所まで長距離輸送する「二相流体輸送方式」の採用にも踏み切りました。これらの技術は、その後、諸外国でも採用される画期的な技術でした。昭和53年に、地熱発電は研究段階を抜け出し、実用化段階に入ったとして、従来、総合研究所が行っていた業務の全てを火力部に移管しま

した。同時に、グループ会社の西日本技術開発㈱にも地熱部が設置され、計画、調査、掘削から発電所建設、運営までの一貫開発体制が整いました。この体制のもと、平成2年には八丁原2号機、平成7年には山川発電所、平成8年には大霧発電所・滝上発電所の運転を順次開始し、現在では全国の地熱発電所の設備容量の約4割を保有するに至りました。また、平成18年には、更なる地熱資源の発電利用を目的として「バイナリー方式」の発電設備を導入し、八丁原バイナリー発電所の運転を開始しました。九州電力㈱は約70年の経験と実績をもとに、今後も地熱発電の普及・拡大に積極的に取り組んでいきます。

地熱事業への参入

開発初期の苦労

大岳発電所が運転開始

たゆまぬ技術開発と事業拡大

第09号|平成30年03月発行

Page 4: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

大分県九重町の大岳(おおたけ)発電所と八丁原(はっちょうばる)発電所では、発電に利用できない蒸気で湧水を加温して温泉水を造成し、両発電所の周辺地域に無償供給しています。この温泉水は、地元において浴用・施設暖房・農業利用など、多用途に利用されています。温泉供給は、大岳発電所の建設当時(昭和37年)に地元からの要望を受けて開始し、その後の八丁原発電所でも同様の地元要望があり、運転開始当初から実施しています。地熱資源を、発電・農業・浴用利用と多段階で活用することで、発電所と立地地域との共存共栄を図っています。

鹿児島県指宿市にある山川(やまがわ)発電所では、発電に利用できない蒸気を、周辺の園芸農家に無償提供しています。本地域では、以前から温泉熱を空調熱源に利用したハウス園芸が行われており、地元から蒸気提供の相談もあったことから、九州電力㈱とハウス園芸農家組合が共同で、蒸気供給設備を設置しました(平成27年5月)。なお、本件の検討及び設備設置に際しては、経済産業省の「地熱開発理解促進関連事業支援補助金」を活用しました。

園芸ハウスでの地熱利用

園芸ハウスでの地熱利用

地熱発電の円滑な運営のためには、環境影響、特に周辺温泉に対する配慮が重要となります。九州電力㈱では、地熱発電所ごとに、影響監視項目について地元及び自治体と協議の上で定め、継続的なモニタリング監視を行っています。

また、自治体及び地元住民から成る会議体等を通じて、定期的にモニタリング結果を報告すると共に、発電所運営に係る意見交換などコミュニケーションを密にすることで、地元との良好な関係構築に努めています。

地熱は、火山活動等の特殊な条件下で形成されるため、太陽光や風力と比較すると、希少かつ偏在性のある熱エネルギー資源です。特に日本国内では、地熱は古くから温泉として活用され、地熱地域独特の自然景観とも相まって、重要な観光資源として地域経済を支えています。九州電力(株)では、貴重な地熱資源を地元と共に活用していくため、地域への温泉等の供給や、地元との定期的な意見交換等を通じて、地域との共存共栄や、地元との良好な関係の構築に取り組んでいます。

キャンプ場では暖房や浴用に利用

地域との共存共栄に向けたこれまでの取組

地元への温泉供給(大岳発電所、八丁原発電所)

周辺農家への蒸気供給(山川発電所)

地元との定期的な意見交換

九州電力株式会社の取組のご紹介②

第09号|平成30年03月発行

Page 5: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

現在、九州電力㈱では、国内の7地点において地熱調査を実施しています。調査の実施にあたっては、自治体や地域住民、そして、温泉関係者など、多くの方々の理解が必要となります。そのため、定期的な温泉モニタリングや地元説明会を実施し、地域の方々の地熱開発に対する理解を深めるように努めています。さらには、自治体主催の地熱シンポジウムなどにブースを出展し、地熱発電や地域貢献策について分かりやすくPRすることや、既設発電所をご見学いただき、地熱発電所のイメージを持っていただくなど、より深くご理解をいただくための機会を設けています。

また、今年度は、新規開発地点の一つである大分県の山下池南部地点において、経済産業省の「地熱発電に対する理解促進補助金」を活用し、理解促進事業を実施しています。全7回の勉強会・見学会を通して、地熱調査・開発を切り口とした地域の活性化について、地域の方々と一緒に考えていく予定です。九州電力㈱の地熱開発が、地域の発展と共にある開発となるよう、今後も、地域の声やニーズをしっかりと捉えて、地域との共生を図ります。

新たな地熱開発に向けた取組

理解促進事業の勉強会の様子

平成28年の電力小売全面自由化後、電力業界は本格的な競争時代を迎えています。このような中、九州電力㈱では、これまで培ってきた強みを活かして、再生可能エネルギー事業を成長戦略の柱の一つと位置づけ、積極的に推進していきます。中でも地熱については、保有する技術・ノウハウを十分に発揮でき、競争優位性を有する事業分野であることから、国内外において、新規開発を積極的に展開していきます。一方、地熱開発を進めるにあたっては、地域住民や温泉関係者など、多くの方々の理解と、温泉をはじめとした自然環境の保全が不可欠です。そのため、右上の欄に記載する事項を常に念頭に置いて、開発に取り組んでいます。

九州電力㈱では、地熱の活用を通して、地域振興・活性化の一助となるよう地域共生を図り、地域のメリットを最大化していきます。また、自然環境に対して最大限の配慮を行いながら、地域に根ざした長期安定電源として、今後も積極的に開発・導入を図ることで、地熱開発目標である「2030年までに国内外で100万kW(既存設備+80万kW)」の達成に向けて取り組んでいきます。

九州電力㈱が目指す地熱開発

①地域の発展と共にある地熱開発②50年、100年と続く地域に根ざした事業

③周辺地域との調和④自然に優しい国産エネルギーの有効活用

今後の展望

本コラムに関するお問い合わせ先九州電力株式会社 ES事業統括本部 火力発電本部 地熱企画G電話番号:092-981-9041

地域との共生を目指して 電力競争時代の地熱発電

地域に根ざした安定電源として

九州電力株式会社の取組のご紹介③

第09号|平成30年03月発行

Page 6: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

委員会メンバーのご紹介①地熱資源開発アドバイザリー委員会について

JOGMECの取組のご紹介①

(1) 委員会について地熱資源開発アドバイザリー委員会(以下「委員会」という。)は、地域の方々と地熱開発事業者との調整における重要性が増している地方自治体に対して、技術的なサポートをするため、平成28年6月7日に設立されました。本委員会は、第三者の視点から助言する組織として、地熱資源開発、温泉資源の保護・利用、環境保全に関する専門家から構成されています。近年、地熱発電に参入する事業者が増加していますが、地熱資源の効率的な利用や持続可能な開発の観点から、懸念が生じている状況も存在します。そのため、地熱開発が進められている地域の各地方自治体におかれましては、本委員会の活用をご検討頂けますと幸いです。

(2) 委員会の活動JOGMECは平成29年度に、委員会を4回開催し、地方自治体からの質問6件に対して助言内容を検討・回答しました。委員会の設立以降、個別対応も含めると13件の助言を実施しております。対応結果はJOGMECホームページに掲載しておりますのでご覧ください。http://geothermal.jogmec.go.jp/gathering/japan/advisory.html

委員会が発足してからほぼ1年半が経過しました。この間、地方自治体からの地熱資源開発に係る様々な相談に対応してきました。そして、委員会に相談したことで適切な対応ができたというお声もいただいていることに、適切な地熱資源管理の一助となれていると感じております。私自身は、地震や地磁気など地球の物理的な現象を解明する地球物理学を修め、それらの知識を生かした物理探査の研究や実務に長年従事してきました。地熱資源は、物理探査をはじめとして地質、地化学、貯留層工学などさまざまな分野の知識を融合して開発を行う必要があります。また、実際の開発に当たっては、地域の理解や環境の保全などが重要となってきます。委員会は、こうした異なる分野で研究や実務の経験が豊富な有識者23名が全国から参集しております。固定価格買取制度の施行により、地熱開発に他業種から新規参入する事業者が増えました。これにより業界が活性化し、地熱の発展にとってプラスに働くのはよいことですが、一方で事業者同士で開発予定地域が重複したり、環境保

護のためのモニタリングに後発事業者がどのように関与すべきか、などこれまでにない状況も生まれてきています。このような問題は、基本的には事業者間で解決すべきですが、地元との調整が必要な事項も多く、地方自治体の積極的な関与が求められるようになってきています。地方自治体の中には、協議会を作って協議を行うケースもある一方、人数や専門性が限られる協議会だけでは対応できない状況もでてきているようです。委員会は、こうした地方自治体を技術的に支援することにより、2030年に地熱資源による発電量を現在の約3倍にするという国のエネルギー政策上の目標の達成を後押ししています。地熱開発は環境とコンプライアンスを守って事業を進めることが何よりも大切です。地熱は地下資源であり、事業の伸展によっては、近傍の温泉資源や他の事業者の地熱事業へ影響する可能性のあることを考慮せずに開発を進めてはなりません。地熱開発に関して判断が難しいケースに直面されている地方自治体がありましたら、是非我々にご相談ください。

委員長 當舎 利行国立大学法人熊本大学 国際先端科学技術研究機構特任教授 JOGMEC地熱部特別顧問

地熱資源開発アドバイザリー委員会 事務局連絡先(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 地熱部電話:03-6758-8001E-mail:[email protected]

第09号|平成30年03月発行

Page 7: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

委員会メンバーのご紹介②

JOGMECの取組のご紹介②

副委員長 安川 香澄国立研究開発法人産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所再生可能エネルギー研究センター副研究センター長

副委員長 藤光 康宏国立大学法人九州大学 大学院工学研究院地球資源システム工学部門地球熱システム学研究室 教授

JOGMECの地熱資源開発アドバイザリー委員会の活動開始から今年の6月で2年になりますが、私が当初想像していた以上の相談件数に、地熱資源開発に関して苦労している自治体が少なくないと感じております。私の専門は地熱工学で、地熱貯留層シミュレーターの開発と地熱系の数値モデリングで学位を取得しましたが、電力中央研究所に勤務していた時は物理探査のグループに所属しており、電気探査やMT(地磁気地電流)法探査などの研究開発や、主に電力土木分野での物理探査業務に従事しました。その傍ら、所内の次世代地熱発電プロジェクトである秋田県雄勝町(現:湯沢市)での高温岩体発電実験に参加しました。その後、九州大学に移ってからは、(地熱発電所地域規模ではなく)火山地域を対象とした広領域地熱系の数値モデリングや、衛星画像及び地上リモートセンシングによる地熱地域からの放熱量測定を主な研究テーマとしております。また、当研究室で力を入れているのが、

精密重力測定による地熱貯留層や温泉帯水層のモニタリングです。これは、対象地域に設置した複数の測定点で精密重力測定を繰り返し実施することで、地熱貯留層内での流体の相変化(例えば熱水生産に伴う貯留層圧力低下による熱水から蒸気への気化など)や、温泉帯水層内の水位変化の分布を、重力の平面分布の経時変化として捉える手法です。現在はまだ相変化や水位変化の定性的な議論に限られていますが、地熱貯留層や温泉帯水層の数値モデリングと組み合わせて、熱水の質量収支の見積もりを行うなど、定量的な議論ができるようになることを目指しています。地熱エネルギーは長く使ってこそ、その真価が発揮されます。減価償却がとうの昔に終わってもまだまだ元気に稼働を続ける施設も現存します。15年という固定価格での買取期間にどうしても意識が向きがちですが、アドバイザリー委員会では地熱資源が長く使える、いわゆる持続可能なエネルギーとなるような助言を心がけます。

地質調査所(現・産総研)に就職して以来、ずっと地熱の研究に携わっています。最初の研究は、地熱貯留層内の熱と流体の流動シミュレーション。地熱井での測定データと計算結果が一致するまで、何度も数値モデルを改良して完成させ、さらに将来予測を行う研究です。やりがいはありましたが、地熱事業者さんから温度・圧力データをご提供いただいて机上計算のみ行う研究だったため、自分でも現場を歩いて屋外調査を行いたいと感じていました。そこで、1991年に米国ローレンス・バークレー研究所に留学したのをきっかけに、自然電位データを数値モデルに組み込む研究を始め、帰国後は現場での自然電位調査を始めました。地下で水が流れると、一緒に電流が流れます。この電流を地表で測定し、地下の熱水の流れを調べる研究です。その後、イタリアやインドネシア、韓国等との共同研究で海外の現場もいろいろ経験し、国内外のどこでも出張先では個性的な温泉と美しい風景を堪能できる地熱研究に魅了されてしまいました。だから、地熱の研究予算がゼロになり冬の

時代と呼ばれた時期も、細々と地熱研究を続けたのです。経済産業省の環境政策課に2年間出向し、産総研に戻ると環境省事業「温泉共生型地熱貯留層管理システム実証研究」のリーダーを務める機会を得ました。その成果を地元説明に役立てようと、地熱と温泉の地化学的つながりについて論文(安川・野田(2017))にまとめました。高校時代から化学の落第生だった自分が、まさか地化学の論文を書けるとは。共著者の野田徹郎さんのきめ細かな指導あってこそです。ところで今は空前の地熱ブーム。資金のあるところには、様々な思惑をもった人が集まってくるものです。そしてネット社会。あらゆる情報が簡単に手に入る一方、十分な裏付けもないまま情報が広がる可能性もあるでしょう。そんな現代、見えない地下にある地熱資源に関しては本当に判断が難しく、専門家でも解らないことはあります。しかし、少なくとも現時点で最も合理的な判断を行えるのが、このアドバイザリー委員会ではないでしょうか。副委員長として、それに少しでもご協力できれば幸いです。

第09号|平成30年03月発行

Page 8: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

JOGMECの取組のご紹介③

平成30年度「地熱資源量の把握のための調査事業費助成金交付事業」の公募について平成30年度事業の主な留意点平成30年度の本事業の助成制度について、主な留意点をまとめました。申請の際には、以下の点について、十分にご注意ください。

①埋坑作業について埋坑作業についても、6事業年度以内に実施することが必要です。

②事業実施体制等の書面提出平成29年度の地表調査事業において、違法伐採事案が発生したことを踏まえ、今後の申請においては、事業者の組織・体制、主たる職員の実務経験・経歴、法令運用に関する規制当局との調整状況を確認できる書面を提出してください。

③調査地点の座標値での表示調査区域が他の事業者と重複していないことを確認するため、今後は調査地点を座標値での表示してください。

④長期発電計画等の提示エネルギーミックスの導入目標達成に向けて確実な事業実施を図るため、発電に至るまでの長期計画及び発電

事業を実施する予定者を、明確にお示しいただくことが必要です。

⑤助成対象者の欠格条項これまでも留意点として周知しておりましたが、「国又は政府関係機関からの補助金交付の停止又は契約に係る指名停止等の行政処分を受けている事業者」は助成を受けることができません。

本事業に関するお問い合わせ先(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)地熱部電話 : 03-6758-8001E-mail : [email protected] URL:http://geothermal.jogmec.go.jp/

JOGMECは、平成30年度「地熱資源量の把握のための調査事業費助成金交付事業」の公募を開始しています。本事業は、事業者等が地熱資源量調査を行う場合に負担する調査費の一部(地質調査・物理探査・地化学調査等に関する経費や、坑井掘削調査等に関する経費)を助成金として交付する支援制度です。平成29年度には、全国で27件の事業に対し、助成金を交付しました。http://www.jogmec.go.jp/geothermal/geothermal_10_000007.html

本事業の平成30年度の公募要領は、JOGMECのHPで公開していますので、ご覧ください。http://www.jogmec.go.jp/geothermal/field_surveys_001.html

助成対象発電を目的とした地熱資源開発調査事業に係る文献調査、地質調査、物理探査、地化学調査、地温測定調査等の地表調査等事業、環境事前調査、坑井掘削(噴気試験を行うものを除く)、それに伴う調査及び附帯工事等坑井掘削事業、既存温泉への影響を把握するためのモニタリング調査に要する経費。

公募期間<第1回公募> 公募終了2月19日(月)~3月9日(金)<第2回公募>4月上旬~下旬(予定)※ 交付見込額が予算額を超過する場合には、申請締切前であっても公募を終了します。

※ 第3回以降は予算の執行状況を勘案し、随時公表します。

第09号|平成30年03月発行

Page 9: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

「地熱シンポジウム in 函館」開催結果報告

JOGMECの取組のご紹介④

地熱発電実演模型

「森らいす」と森町産トマトを試食梶谷町長の講演後、ステージでは森町名物「森らいす」と森町産トマトの試食が行われました。ゲストでフリーアナウンサーの木佐彩子さんは、「森らいす」について「トマト度が高い。濃厚でとてもおいしい。」と絶賛、トマトは「さわやか。甘みがあって酸味もあり、ジュースのよう。北海道の大地を感じてとても幸せ。」と感想を語り、森町の食を満喫した様子でした。

会場の函館市民会館大ホール

試食する木佐彩子氏(中央)と、森町の梶谷町長(右)

主催 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)共催 日本地熱学会後援 資源エネルギー庁、農林水産省、環境省、北海道、北海道函館市、北海道森町、

地方独立行政法人北海道立総合研究機構地質研究所、日本地熱協会

JOGMECは、平成 29年 10月17・18日に、北海道函館市において「地熱シンポジウム in 函館 地熱発電と地方創生を考える~期待が高まる北海道~」を開催しました。国内最大級の地熱開発エリアとして期待される北海道では、4ヵ所の地熱発電所が稼働しているほか、道南を中心に地熱資源量調査が15ヵ所で進められています。本シンポジウムでは、これまでの道内の地熱発電と地域における地熱活用事例を振り返りつつ、今後の地熱開発と地方創生について展望しました。

初日の基調講演では、北海道立総合研究機構地質研究所の高橋徹哉氏が、北海道の地域特性を踏まえ、「地熱発電は北海道に最適な地域エネルギー」と講演しました。続いて、森町の梶谷惠造町長が、農業での熱水利用の経緯と効果について説明しました。講演後には森町の農産物等の試食が行われました。このほか、JOGMECより、成果が見え始めた北海道内及び全国での支援事業の状況等を紹介しました。特別セッションでは、弟子屈町「野村北海道菜園」から、バイナリー発電後の温水を暖房に使ったハウス栽培による「温泉そだち」野菜と事業が紹介されました。また、パネルディスカッションでは、自治体、地域、地熱事業者等のそれぞれの立場のパネラーから、北海道の地熱発電と地方創生における課題や今後の展望について発言し、活発な討論が行われました。

期間中は、一般参加者向け「地熱見学ツアー」、函館市内の大学生を中心とするワークショップ、日本地熱学会の矢野会長による「市民のための地熱講座」、地元自治体・地熱事業者・JOGMEC等11社が出展する「地熱展示会」などのイベントも開催されました。参加した多くの人々に、さまざまな角度から地熱発電の意義や魅力を伝える2日間となりました。

パネルディスカッションの様子 地熱見学ツアーの様子

【お知らせ】次回の地熱シンポジウムは、鹿児島県で開催予定です!皆様奮ってご参加ください!

●開催日(予定)平成30年8月8日(水)

●場所(予定)鹿児島県鹿児島市城山観光ホテル

第09号|平成30年03月発行

Page 10: 地熱発電メルマガキャラクター 地熱発電メールマガジン地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~ 地熱発電メルマガキャラクター

地熱発電メールマガジン ~あの町この町いろんな地熱~

巻末特集

本メールマガジンに関するお問い合わせ先資源エネルギー庁 資源・燃料部政策課電話:03-3501-2773

本メールマガジンのバックナンバーは、資源エネルギー庁のHPからご覧ください。http://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/geothermal/mail_magazine/

滝上バイナリー発電所などが「新エネ大賞」 を受賞しました!

メルマガは来年度もお届けするっチ!

皆さん受賞おめでとうだっチ!!

地熱発電メールマガジンキャラクター ちねつん

平成29年度の「新エネ大賞」について、滝上バイナリー発電所など、3件の地熱関連案件が受賞し、平成30年2月14日に、表彰式が開催されました。「新エネ大賞」は、新エネルギーの一層の導入促進と普及・啓発を図るため、新エネルギーに係る商品及び新エネルギーの導入、あるいは普及啓発活動を広く募集し、そのうち

優れた事例を表彰するものです。数多くの企業・団体等から応募案件があり、厳正な審査の結果、経済産業大臣賞1件、資源エネルギー庁長官賞1件、新エネルギー財団会長賞8件、審査委員長特別賞1件の合計11件が選ばれました。今回、最高賞である経済産業大臣賞には、地熱案件では初めてとなる、出光大分地熱株式会社の滝

上バイナリー発電所が選ばれるとともに、新エネルギー財団会長賞として、地熱案件2件が選ばれました。

平成29年度「新エネ大賞」を受賞した地熱関連案件■経済産業大臣賞出光大分地熱株式会社「滝上発電所還元熱水を活用した地熱バイナリー発電システムの導入」■新エネルギー財団会長賞株式会社オリエンタルランド、株式会社ホッコウ、株式会社アグリス「温泉熱を用いた、イチゴ通年栽培の実現による顧客体験価値最大化への取り組み」株式会社元気アップつちゆ「東日本大震災から温泉街の復興・再生をめざし再エネ事業とともに立ち上がる」

滝上バイナリー発電所(5,050kW)

表彰式の様子(出典:新エネルギー財団HP)

第09号|平成30年03月発行