法医学総論・死体現象 -...
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法 医 学 総 論 ・死 体 現 象
担当 法医学 長尾先生 プリントなし
法 医 学 総 論
法医学が扱う対象
死体
法医解剖
司法解剖:犯罪のおそれのある場合に・刑事訴訟法に基づき令状必要・外表が重要
行政解剖:死体解剖保存法に基づく・司法解剖に移行することもあり
生体
生体鑑定
物体の鑑定は科学捜査研究所がおこなう。
衛生学が社会を対象とするのに対し、法医学は個人を対象とする。
ex 損傷の診断
成傷器
成傷機転:自分か他人かの判断が重要、虐待の発見も
医療に関連する法律の解釈
死 体 現 象
死の確認:最も重要
死亡推定時間
早 期 死 体 現 象
1.体温の冷却
死により熱生産の消失→放熱とのバランスの崩壊
発見時の体温が重要である→死亡推定時間
環境温度、死体条件に影響される:季節、着衣、死因
表面積が多いほど温度が下がりやすい
死体がぬれていると温度が下がりやすい
熱中症、感染症で死亡の場合初期温度が高い
死後10hまでは1℃/h、それ以降は 0.5℃/hで低下
夏場冬場は時間を補正する必要がある
2.血液就下
紫斑:皮膚を通して確認できる
色は通常は暗褐色だが以下の場合鮮紅色
・低温(酸素の遊離が阻害されるため)
・一酸化炭素(70%を超えると目が痛くなるほど鮮やか)
急死の場合特に強く発生
死後 30m~出現 2h~全身に 10h~消退開始
死亡時に下面になっている方にでるが圧迫されている箇所には出ない(ex.床面に触れている部分、服の皺)
土中・水中・コンクリート詰めなどでは全体に圧力がかかるため生じない→生前の出血痕のみが見られる(一部のみ紫斑が見られる場合そ
こに傷害を加えられた可能性がある)
3.血液凝固
急死の場合、線溶系の作用により凝結塊がないことが多い。
4.乾燥
特徴的なのは角膜の白濁
瘡蓋の形成は乾燥を防ぐために起こるが、死後では形成されないため、死後に表皮が剥奪された場合、革皮様化が見られる
5.死体硬直
ATPの減尐によりアクチンとミオシンが解離しなくなり発生する。
基本的に全身の筋肉に発生するが可動部の大きな関節で見るのが一般的。
顎関節で見るのが多いのは気管挿管の際に開口できないことにより発見されるため。
体幹の筋肉は伸筋のが強いため背筋がまっすぐ伸びた状態になる。→棺に入れやすくなっている
四肢では屈筋が強いため曲がる。
晩 期 死 体 現 象
死体の崩壊のプロセス
1.自家融解 Autolysis
血色素浸潤:赤血球の融解→ヘモグロビンの遊離→腐敗網
胆汁沈着:緑色の沈着
胃粘膜、腸粘膜損傷
浸軟:子宮内で死亡した胎児が軟性に変化する
2.腐敗
Casperの法則:地上に比べて水中では2分の1の速度で地中では8分の1の速度で進行する
腐敗ガスの発生:巨人様観、水泡臓器、棺内分娩(妊婦死体にガスが発生することにより出産)
3.動物による損壊
ハエ:死体に産卵 蛆虫→蛹→蝿 状態により死亡時刻推定可能
キタキツネ:雪解けの後に遺体を食べる
ニセスナホリムシ:白骨化する
人間:バラバラにして遺棄
4.その他
ミイラ化:腐敗より乾燥の速度が速いとミイラ化する。
風通しのよい場所などで死亡した場合に起こりやすい。
四肢の先端などで起こりやすい。
死蝋化:体内の脂肪が融解し鹸化されることにより起こる。
不飽和脂肪酸のエポキシ化、脂肪酸の陽イオンとの結合によるとされる。
白骨化
多 型 Ⅰ ( 総 論 ・ 血 液 型 )
担当 法医学 小山先生 プリントなし
今回の講義では血液型ではなく指紋が講義された。
多 型 総 論
「生体あるいは死体、さらにはその一部が誰であるか決定すること」
異同識別
識別の対象
1.生体:身元不詳(黙秘、他人を装う、精神障害、記憶喪失、乳幼児、新生児取り違え)
2.死体:身元不詳、バラバラ、大規模災害(地震、火災、船舶航空機事故)、白骨化
3.人体由来のもの:血液、精液、尿(細胞、薬物代謝物)、便(粘膜、潜血)、唾液(血液型診断)、毛髪、汗、消化管内容物
4.人体の印象痕跡:指紋、掌紋、せき紋、口唇紋、レントゲン写真(骨格、歯)、筆跡、声紋、静脈の走行
5.その他:着衣、装具、所持品(これらは容易に偽装可能)
先天的身体特徴(容貌、体格、骨格、皮膚、毛髪)
後天的身体特徴(刺青、手術痕、治療痕、損傷痕)
指 紋
真皮の乳頭部が表皮に現れている線(隆線)が作る紋様
滑り止めになる
潜在指紋(調査によって発見される指紋)と顕在指紋(明らかに見て取れる指紋)がある
指紋の特性
1.終生不変:成長によって変化しない
2.万人不同:捜査に使える
指紋のとり方
十指指紋法
一指指紋法
担当 法医学 小山先生 プリントなし
今回も主に指紋の講義前回の続き
最後に血液
指 紋 の 種 類
1.弓状紋 Arch A
隆線が片側より起こり反対側に流れる(出た方向には戻らない)
・普通弓状紋
・突起弓状紋
頻度 10% 示指に多い
指紋価「1」
2.蹄状紋 Loop
隆線が出た方向に戻り流れるもの
反対側にデルタ(外端がある)
・甲種蹄状紋:拇指~拇指 橈側 Radial loop 指紋価「2」
・乙種蹄状紋:小指~小指 尺側 Ulnar loop
亣差する点の数
1~7 指紋価「3」
8~11 指紋価「4」
12~14 指紋価「5」
15~16 指紋価「6」
3.渦状紋 Whorl
デルタが両端に1つずつある
亣差点が上下に3本以内「中流渦状紋」 指紋価「8」
亣差点が上に4本以上「上流渦状紋」 指紋価「7」
亣差点が下に4本以上「下流渦状紋」 指紋価「9」
4.その他
不完全紋 指紋価「?」
欠如 指紋価「0」
採 取 法 ・ 検 出 法
採取法
1.インク法
インク法をうすくつけて軽く押す
ローリング法(指紋は指の腹側半周に付いているので、指を回しながら指紋全体をとる)
2.鉛筆-セロテープ法
黒鉛の粉末でテープに指紋をとり紙に貼る
3.スキャナ・レーザースキャナ
→デジタルデータベース(照会を容易に)
検出法:遺留(潜在)指紋に
1.アルミ粉末法
ゼラチン紙に採取(指紋を乱しづらい)→黒い紙に貼る
6カ月位まで
2.ニンヒドリン法(0.5%アセトンに溶解)
指脂のアミノ酸に反応、過熱により青紫色
2カ月位まで
3.シアノアクリレート法(アロンアルファを有機溶媒に溶解)
指紋の水分に結合し固化
乾燥するまで
水回りでは難しい
4.TMB テトラメチルベンジン
血液中の酵素に反応(血液指紋)
青緑色
5.硝酸銀(3%水溶液)
汗に含まれる塩素と反応
1週間後くらい(汗が乾いても食塩が残る)
6.シリコン転写
粘土上などやわらかいものの上の場合
7.蒸気法
硝酸銀溶液を蒸気として噴霧、ヨード、塩素を検出
指 紋 を 残 さ な い よ う に す る に は ( 手 袋 が 好 ま し く 無 い 場 合 に )
・酸、アルカリ、熱で隆線を破壊
・皮膚移植
→だが指紋価「?」の損傷紋(瘢痕)が残る可能性
→やっぱり手袋を使うのが良い
手 掌 紋 P a l m p r i n t
屈曲線(後天的なもの、変化する)
・橈側縦線(生命線)
・近位横線(頭脳戦)
・遠位横線(感情線)
・(結婚腺)
特殊型
・サル線:
横線が一本にまとまっている(10人に1人)
ダウン症に高率に出現する
・シドニー線:
近位横線が左右に2分
CML(慢性骨髄性白血病)に多い
掌紋
・指の基部にある三叉の主線の行き先
・腕三叉の主線の行き先
・拇指指球部の指紋類似の隆線
・小指指球部の指紋類似の隆線
・指間部の紋の有無
足 せ き 紋 S o l e p r i n t
あまり実用化されていない
血 液
・BWの 1/13 8%
ex 70kg→5.6kg→5.2l(比重 1.055)
・体液:男 60% 女 55%、 脂肪 18%、 有機物 22%
・血液
細胞成分:各種血球
液性成分:水、蛋白質、電解質
血漿=血清+繊維素系物質
多 型 3
担当 法医学 小山先生プリントなし
主にに血液型の講義前回より続く
血 液 型 と は
血液型:血中の成分に認められる遺伝的多型
遺伝的多型:頻度が1%以上の遺伝的変異-
遺伝的変異:永久的な遺伝型質の中で外の個体と差が認められること
多 型 P o l y m o r p h i s m
定義
同じ地域に住む、同じ種族集団の中に2型以上のはっきりと区別される遺伝的変異が存在し、そのうち最低頻度を示す変異型の出現頻度
が反復突然変異だけではとうてい維持し得ない程高くなっている現象
血 液 型 の 応 用
1.個人識別
2.輸血 (型判別用の抗B血清は黄色、だが輸血血液はA型が黄色のパック)
3.不適合妊娠
4.臓器移植(HLA)
5.疾病との関連
血 液 型 の 検 査
1.抗原抗体反応
血液凝集(凝固ではない):直接クームス、間接クームスなど
2.電気泳動
アガロース、ポリアクリルアミドゲルなどを用いタンパクを検査
A B O 式 血 液 型
1900 ランドスタイナー:人の血清は他人の血球を凝集する
1901 3つのグループ(A、B、O)発見
1902 4つめのグループ(AB)の発見
表現型 遺伝子型 頻度 遺伝子頻度(p=0.272、q=0.173、r=0.555)
A AA、AO 4
B BB、BO 2
O OO 3
AB AB 1
分泌型では1型糖鎖
Le(a+,b-):非分泌型、LE(+),SE(-)
Le(a-,b+):分泌型、LE(-),SE(+)
Le(a-,b-):両方、LE(-),SE(?)→この結果だけでは Seの発現は分からない
分泌型は 3/4
造血組織(血球表面)では2型糖鎖
前駆体→H抗原なし:ボンベイ型
↓フコース転移
O型
↓アセチルガラクトサミン転移
A型
O型
↓ガラクトース転移
B型
O型
↓フルクトース転移
LeY
R h 式 血 液 型
膜表面に出ているアミノ酸で判定
D C c E eの5種
Dには対立遺伝子なし
膜表面のタンパクの2カ所のアミノ酸
D Ser Ala
ce Pro Ala
cE Pro Pro
Ce Ser Ala
CE Ser Pro
血 清 型
1.ハプトグロビン Hb と特異的に結合:16長腕上
1-1 1-2 2-2
2.GC ビタミンD結合蛋白:4長腕上
6種類
3.PI プロテアーゼインヒビター:14長腕上
6種類
4.GM IgGの H鎖:14上
表現型は9種
赤 血 球 酵 素 型
1.PGM ホスホグルコムターゼ1型
2.AcP 酸性フォスファターゼ:2短腕
3.EsD エステラーゼD:13長腕
4.ALT:8上
血 液 型 以 外 の 遺 伝 的 多 型
1.味盲:
PTC、フェニルチオカルバミド(キャベツの苦みのような味)で検査
表現型 遺伝子型 頻度
T TT Tt 90
t tt 10
他の味:サッカリン(甘)、アスピリン(苦)
2.耳垢
型 日本人 ドイツ人
dry 8 1
wet 2 9
東アジアでは80~95%がdry
欧米では0~3%
ABCC 538G→A AAでdry
中 毒 Ⅰ
毒 性 学 の 分 類
環境毒性学
実用毒性学
法医学的毒性学:診断、法医学・裁判化学的な分野、毒性分析学も一部含む
毒 物 の 定 義
生体にとって異物であり、摂取されるとき生体に対して化学的及び生理学的に作用して生体の正常機能を障害するもの
毒物により機能が害されること→中毒
死に至るもの→中毒死
中 毒 の 種 類
急性毒性:毒作用が短時間で発現 青酸、農薬、フグ毒、毒キノコ
慢性毒性:長期間にわたり毒物を摂取 重金属(鉛、砒素)、乱用薬物
遷延性毒性:毒との接触が無くなった後時間経過で発現 シリカ粉塵、アスベスト珪肺、石綿肺、中皮腫 (石綿障害予防規則2005年施
行)
催奇形性(発生毒性) 相乗効果 発癌性
法医中毒学的に問題なのは上2つ
薬 毒 物 の 分 類
法的分類
薬事法
毒物及び劇物取締法
麻薬及び向精神薬取締法・覚せい剤取締法・大麻取締法・あへん法
生理的作用による分類
腐食毒:組織の破壊
実質毒:細胞変性
酵素毒:酵素阻害
血液毒:血液に作用
神経毒:中枢神経に作用
中 毒 死 の 動 向
年間3000人程度
一酸化炭素が最大(火災、排気ガス自殺、練炭自殺)
昭和60年より農薬が一時上昇(パラコート)
法 中 毒
薬毒物の摂取の有無と死亡との因果関係を薬物分析を通して説明する(自殺、他殺、医療事故など)
急性死の所見しかない場合中毒死を疑うべき
急性死のトリアス
血液暗赤色、流動血
粘膜、漿膜に溢血
臓器に浮腫
スクリーニング→定性・定量分析
検査資料
1)生体 血液(血漿、全血:20ml以上)、尿(20ml以上)、胃内容物(吐瀉物、洗浄液)、その他(糞便、唾液など) 生体から継時的に採取
できれば治療の参考になる(薬物代謝速度など)
2)死体 血液(心臓内血、大腻動静脈血:20ml以上)、尿、胃内容物、諸臓器(50g程度)脂肪組織(毒物の種類によっては非常に移行し
易い)、脳脊髄液、毛髪、爪、骨、眼房水など
3)保存 凍結保存ー70℃(継時的変化を防ぐ)
4)検査 全体の1/3を残して検査に使用(再検査、再鑑定の可能性)
Triageスクリーニングキット
抗原抗体反応を利用して尿に含まれる薬物を確認(約10分)
感度はスクリーニングできる程度
保険摘要なし(4000円程度)
薬 物 分 析
機器分析法
薬毒物の分離分析を行う(尿中、血液中から)
GC:熱を加えガス化してカラムを通す→親和性の違いにより分離
HPLC:熱に弱い物、揮発性の低い物に使用
分離した後に化合物をイオン化し質量分析を行う→質量/電荷のフラグメントパターンから薬物の種類が分かる(官能基などによりパターン
が異なる)→定性的に確認
GCーMS
HPLCーMS
MSで行うイオン化の方法
GCの場合
EI:電子をぶつける。反応が激しいため分裂することが多い
CI:反応ガス(メタンなど)をいれてぶつける。反応がソフトなため分子量が分かりやすい
HPLCの場合
ESI:窒素ガスを用いて霧状にして電圧をかける。霧が細かくなると1分子として検出できる(全体の分子量測定)。
MALD:レーザーによりサンプルをイオン化(シナピン酸を加えるとイオン化し易い)、蛋白、核酸をイオン化できる。
イオン化したものはQMS、TOFで分子量を測定。
使用例
メタンフェタミンは体内でアンフェタミンに代謝(両方を証明)
↓
トリフルオロ酢酸を反応させる(揮発性をあげる)
↓
GCーMSで分析、両方のピークが観察される
一 酸 化 炭 素 C O
無色、無味、無臭、水に難溶
不完全燃焼(火災、ガソリン車の排ガスの6%、ディーゼル車では0。01%)
家庭用のガスが天然ガスガスに切り替わりCO中毒は減った
排ガス自殺ではCOだけでなく他の物質も多い
1)COーHb形成(内部窒息)
COーHbの反応速度
結合1/10 解離1/2500(酸素との比較)
Haldaneの法則
(COHb)/(O2Hb)=250*pCO/pO2
2)Hb解離曲線を左にシフト
抹消組織での酸素が減る
ヘムタンパクと結合
サイトクロムA3に結合してミトコンドリア機能を阻害
ミオグロビンに結合して心筋機能阻害
↓
虚血から回復時にラジカル発生→組織障害
ヘビースモーカーでは疼痛を起こすほどのCOをすっている
ジクロロメタン(ペンキの剥離剤)を吸引することによっても体内でCOが発生する
ビリルビン1分子生成とともにCO1分子生成
40%~ 幻覚、錯乱
60%~ 心機能低下
70%~ 昏睡、死亡
間歇型CO中毒
初回中毒時(脳への影響あり)から2~3週後にふたたび症状が発生→ガスが消えたからといって安心できない
C O 中 毒 死 の 所 見
流動血
COーHbにより鮮紅色(紫斑も臓器も鮮紅色)
脳浮腫、点状出血
脳の白質の脱髄
心筋や肝臓の脂肪変性
組織をホルマリンに浸けても鮮紅色
焼 死 体
火災現場からまるこげになって出てきた死体の総称
生きて焼かれた場合
気管中にスス付着、COHb↑
焼死:COHb40%
火傷死:COHb40%、火傷によるショックで死亡
CO中毒死:COHb濃度>60%
中 毒 I I
中毒 Iに併記
中 毒 3
担当 前野先生
C O 中 毒
プリントと前回参照
死斑と心臓内血液
窒息死では暗赤紫色←→CO中毒死では赤
焼死遺体の臓器をホルマリン固定しても色は赤い
焼 死 体
燃焼血腫:
血液の熱変性による血腫、死後に生じ限局していない
生前の血腫との鑑別が重要
燃焼血腫 最新医学辞典より
焼死体の頭蓋内において,熱の強く加わった側に生じる一種の硬膜外血腫.脳実質や硬膜が熱凝固によって収縮し,硬膜が剥離してでき
る間隙に静脈洞内の血液が圧出され熱作用を受けたもの.煉瓦様赤色ないしは赤褐色の鎌状でもろく,硬膜よりも頭蓋骨に付着する.法
医学上,外傷性硬膜外血腫との鑑別を要する.外傷性硬膜外血腫は光沢ある暗赤色の紡錘形で弾力性があり,硬膜に密着し,周囲に生
活反応を伴う損傷を認める.
焼死の所見:気道、食道内のススの付着、ひどい場合は気管支、肺まで達する
焼身自殺:自分で燃料をかぶって焼く、COHb10%、気管内にススは尐ない、ショックが原因で死亡が多い
青 酸 中 毒
青酸化合物は強アルカリ
古い大学などで記録漏れのものもある
金属メッキ工場が多い
新建材火災でも発生
青酸配糖体を含んだ食べ物を食べ過ぎても中毒は起こる
KCNを経口摂取した場合の粘膜腐食も一つの所見(アルカリ腐食)
自殺現場でアーモンド臭:人によって感じ方が違うので気づかない場合もある
実際にはCN中毒では尐ない量で死亡するためCO中毒ほど血液は赤くならない
予備試験:シェーンバイン・パーゲンステッヘル反応(グアヤク試験紙)、10円玉の還元
定量:GC、HPLC、ピクリン酸法
解毒法
亜硝酸ナトリウム:CNHb形成阻害
チオ硫酸ナトリウム:SCNを形成させCNHb分解
硫 化 水 素 中 毒
温泉で頭が痛くなるのはこれによる中毒
腐乱臭、比重1。19、水溶性、脂溶性
蛋白の酸化・腐敗、化学薬品工業の硫化物、有機物処理の副産物(マンホールの中など)で発生
中毒作用
呼吸器粘膜より吸収→チオ硫酸塩、硫化物として尿中に
メトHbと結合してSHb形成
多量になると、Cytochrome Oxdaseの活性阻害
頸動脈小体の刺激作用で反射的な窒息
濃度依存的に悪化
6ppmで不快臭気
100ppm< 脱出限界濃度(30分以内の脱出が不可能)、硫黄温泉付近
500ppm<中毒症状
850ppm<中毒死
900ppm<数秒以内に死亡
解剖所見
急死の所見+死斑(帯緑暗赤褐色:SHb・SメトHbの色ではない←急死だから?、大脳皮質に及ぶ)、肺水腫、腐卵様臭
検査
肺からの硫化水素の検出:沸点が低いので普通の温度においておくとすぐ検出できなくなる
チオ硫酸塩の証明
硫化水素中毒死
腹に緑色っぽい死斑
気管に浮腫がみられた
溢血点あり(急死の所見)
酢酸鉛試験紙が硫化鉛生成により黒変
シ ン ナ ー 中 毒
トルエンが主成分(ベンゼンが使用禁止になったため)
メタノールの毒性により失明もある
皮膚粘膜刺激作用:化学熱傷
脂溶性が高いため中枢神経に移行しやすい
D1レセプター活性化により精神依存
中毒症状
急性ではトルエン濃度に依存
血中で 50μg/g<なら呼吸中枢抑制、致死的
特異的な剖検所見はない
急死所見+有機溶剤臭
慢性では脳の変性
検査
トルエンの検出
代謝は馬尿酸→尿に
シンナー中毒死 症例
心臓HEでわずかに収縮帯
有機溶剤臭
脂肪組織、脳、肝臓に高濃度のトルエン
ア ル コ ー ル の 法 医 学
担当 前野先生 プリントなし
意義
1)死因
急性アルコール中毒死
エタノール(血中、尿中)濃度を調べる
2)生前、犯行時の状態
事後のアルコール濃度を測定、当時の酩酊度を推定
轢き逃げ被害者が道路で寝ていた可能性など
3)飲酒後の経過
飲酒後からどの程度たってから事件をおこしたか推定(血中、尿中濃度)
吸収
胃:20% 小腸:80%
代謝
95%が代謝(肝臓で)
残りは尿中、汗、呼気に排泄
→呼気中濃度の約2000倍が血中濃度
→呼気中の濃度から 0.15-0.25mg/l検知されれば酒気帯び運転
アルコールを経口投与した場合、投与後の 30-60分で最大値となり以後は減尐して行く
アルコール分布係数
γ=A/C0・P
A:アルコールの量
C0:摂取時に瞬時にアルコールが均等に分布した場合の濃度
水分の多い組織に分布し易い
日本人の平均値 0.7
濃度の低下はほぼ一定の傾きを示す
β=(C-Ct)/t
日本人の平均値 0.16
→事故時の酩酊度の推定
代謝経路
C2H5OH
↓ADH(NAD→NADH + H+) Km=2mM 欧米人のが活性が低い
MEOS Km=10mM 多量の飲酒ではこちらが誘導される(薬の代謝に影響)
CH3CHO
↓ALDH2 1型(N)は活性が高い、2型(D)は低い(組み合わせによりアルコールに対する強さが決まる)
依存症は NN型の人が 95% ND型が 5%
CH3COOH
二日酔いはアルコール代謝により補酵素が欠乏することにより、代謝に影響(糖新生など)することによるともされる
血中アルコール濃度による酩酊度
0.5mg/dl 日本酒一合
1.0-1.5mg/dl 最も事故を起こし易い(自信過剰に)
2.5mg/dl 千鳥足に
4.5- mg/dl 昏睡、呼吸抑制→死亡
尿中の濃度は血中に遅れてピークに達し、ピークの高さも高い。
死後に細菌によって産生されるエタノールがある。
腐敗した遺体では飲酒によるものと区別する必要がある。
→nプロパノールを検出すれば腐敗による可能性があると推測される。(nプロパノールの20倍までのエタノールは死後のものとされる)
前頭葉が最も早く抑制される。次いで頭頂葉、後頭葉、小脳、間脳、脳幹網様体と順に抑制されて行く。
ヒ素
食中毒様の症状が洗われるが、食中毒よりはやい(摂取直後)
乱 用 薬 物
担当 前野先生
薬物乱用:社会的常識、特に医学的常識を逸脱して薬物を使用すること
覚醒剤、大麻、LSD、向精神薬(トリアゾラムなど)、ヘロイン、コカインなど
押収量として覚醒剤が最大
薬物依存:薬物の使用を止めようと思ってもやめられない状態
精神的依存
身体的依存
あへん、モルヒネ、ヘロイン、ペチジンは精神的、身体的依存をしめす
覚醒剤は精神的依存をしめし耐性を得やすい
覚せい剤
日本で多く使われるのはメタンフェタミン
薬理作用
神経終末からのカテコールアミン、特にドーパミンの遊離促進
再取り込み阻害
MAO活性阻害
中枢神経興奮 メタンフェタミン>アンフェタミン
亣感神経興奮 アンフェタミン>メタンフェタミン
中枢神経症状
多弁、過敏、幻覚、錯乱、常同行動、性欲亢進
亣感神経症状
頻脈、発汗、瞳孔散大、食欲不振
心臓血管系症状
不整脈、高血圧、心筋症
その他
排尿困難、高体温(死後の直腸音が高い場合→覚せい剤使用)、ミオグロビン尿症、腎不全
代謝、排泄
未変化体が最も多く尿に排泄
60-80%が投与後48時間内に排泄
代謝は水酸化、脱メチル化が主(メタンフェタミンがアンフェタミンに代謝される)
髪の毛に移行することもある
剖検所見
急死の所見+肺水腫、高体温
クモ膜下出血、脳内出血を伴うことがある。
肥大型心筋症類似の病理所見が見られる。
アンフェタミン類似の化合物は麻薬指定される傾向にある。
覚せい剤を使用している患者などをみても医師には届け出義務はない(麻薬の場合は都道府県知事にとどける)。守秘義務が優先、通報
はプライバシー侵害。→だが2005年最高裁により通報しても守秘義務違反にならないとの判決あり。
治療のためにもプライバシーを優先するべき場合もある。
捜査協力の依頼があっても、任意であるので拒否できる。
コカイン
剖検所見
急死の所見
致死量 1.2g
大麻
剖検所見
急死の所見
麻薬中毒
受診時に麻薬の使用に起因する身体又は精神の異常を認めるばあい
麻薬及び向精神薬取締法
平成15年7月現在 79物質が向精神薬指定
催眠剤
バルビツール酸
フェノバルビタールが多い
向精神薬
ベンゾジアゼピン
大量服薬でも比較的安全性が高い。
多剤併用による死亡が多い。
悪性症候群
向精神薬の投与中、高熱、頻脈、意識障害、筋硬直、発汗、重篤なすいたいがいろ障害
発生率1%前後だが死亡率20%
D2レセプターのブロックによる。
農薬
有機リン系農薬
有機溶媒に溶け易い、水に溶けにくい
加水分解され易い
アルカリに不安定
チオリン酸エステル→大気中で酸化→リン酸エステル(毒性増大)
古い農薬に注意
アセチルコリンエステラーゼの選択的阻害
→アセチルコリンの蓄積
構造によっては自然回復しづらい
老化(エイジング):はずれなくなる→PAMで強制的にはずす
代表的な中毒所見
縮瞳
PAMが無効となる理由
Aging
PAMの半減期が短い
BBBを通過しづらい(中枢で症状が出る)
量の不足
縮瞳:有機リン、麻薬、バルビツール、クロルプロマジン
散瞳:アトロピン、候ヒスタミン、シアン、CO、CO2
縮瞳は死後の経過によりなくなっていく
遅発性神経障害
投与後 1-3週の神経病変(後遺症として残る)
下肢の知覚マヒ、しびれ、運動障害
脊髄や延髄、小脳の神経細胞の代謝障害(Aging)による。
栄養を軸索末梢に送れない
変性が末梢から生じる
中毒に気が付かない場合、多発性硬化症とされる
パラコート
体内から洗浄されたとしてもその後、肺繊維症を起こすことがある。
効果的な治療は今のところない。
法 歯 学
担当 神奈川歯科大学 山田先生 プリントなし
総 論
目的は個人の識別(まずは歯次にDNA、血液)
法医学では死因の究明
多数の身元不明死体の場合に即効性が高い
歯科カルテ、レントゲン、スタディモデルを使用
タイの津波災害の身元確認(TTVI)
2248名中50%が歯により判明
まだ作業継続中、今後DNAの割合が高くなっていくと考えられる
WTCテロでは50%がDNA
検査がほぼ完了したためにDNAの割合が高くなっている
歯科治療が行われていない場合、身元判明に時間がかかる
費用もDNAが高い
身元不明死体
部分遺体→DNA
完全遺体腐敗なし→指紋
完全遺体腐敗あり歯科治療あり→歯
完全遺体腐敗あり歯科治療なし→DNA
御巣鷹山の事故の際はDNAの技術はなかったため帰宅できなかった部分遺体も多数あった
司 法 解 剖 時 の 歯 科 的 作 業
口腔内写真
口腔内X線写真
歯根の状態など
オドントグラム
これらの資料の生前と死後の対照
生前の資料
歯科診療録(5年保存義務):
X線写真(2年保存義務):
表面が焦げていても歯根の状態が手掛かりになる
パノラマX線写真は治療前の写真が多いので治療内容を考えて確認
最近のX線写真はデジタルで撮影でき被曝量も1/10程度で済む
パノラマで埋伏歯の存在が見られると大きな手掛かりになる
スタディモデル:三次元的なので非常によい資料だが保管がかさ張る、本人が持っている可能性も
その他
歯からの年齢推定
12歳位までは乳歯の後ろに生える永久歯の状態で推定
25歳位までなら親不知の状態で推定
それ以降は噛み合わせの具合で推定
DNA鑑定
大 規 模 災 害 の お け る 個 人 識 別
なだしお事件
カルテおよびパントモグラムを収集
あらかじめ特徴的所見をまとめておく
歯科医師により遺体の口腔所見をとる
御巣鷹山事件
部分遺体が多く判明しない遺体も多くあった
個 人 識 別 事 例
坂本弁護士事件
遺体の歯は比較的保存されていた(犯人による破壊は多尐あった)
下顎の1本のみしか特徴的所見なし
あとは情況証拠
ルーシーブラックマンさん事件
頭部はコンクリート詰め
遺体の歯列弓がV字型→日本人には尐ない
イギリスで撮ったパノラマとの比較では欠損および治療痕の相違点があった
イギリスより治療結果報告書を入手して鑑定
さらにDNA鑑定
特 徴 的 な 治 療 に よ る 個 人 識 別
インプラント
歯列矯正
DNA鑑定するまでもない場合がある
明 ら か な 否 定
遺体パノラマX線写真では健全な歯だが遺体と思われる人の写真では欠損、虫歯あり→別人
他人の保険証をつかって治療を受けた場合に発生する
D N A
担当 神奈川歯科大学 山田先生 プリントなし
個人の鑑定は基本的には歯や指紋で行う
白骨化、焼死などで
顔貌が見分けられない
歯科治療が古いまたはない
身元を確認するものがない
などの場合に母親とのDNA鑑定で個人識別
口腔粘膜の有用性
非破壊(抜歯には令状必要)
操作が容易
横田めぐみさん事件
キムヘギョンとキムヨンナムの母親との関係を鑑定
鑑定に用いた遺伝子
核DNA
常染色体(1/4が遺伝)
X染色体(母親のXが有効)
法医学領域におけるDNA鑑定
個人識別、親子鑑定←DNA多型:対立遺伝子の識別
性別判定←性染色体遺伝子の識別
人獣鑑別←
利点
試料を選ばない:すべての有核細胞より採取
多型性が高い部分が多く個人識別が容易
種特異性が高い
判定法
PCR法が基本
電気泳動:断片の長さを比較、今ではキャピラリー電気泳動が主流
D N A 多 型
挿入欠失多型
ある繰り返しの領域の中で反復回数の相違によって生じる多型→アリルの種類が多く多型性が高い
利点:電気泳動だけで判定
欠点:突然変移がまれに発生
ミニサテライト
DNAフィンガープリント:1個のマルチローカスプローブで多種を同時に検出
VNTR:1種のサテライトをシングルローカスプローブで選択的に検出
使用例
出生前の親子鑑定診断:絨毛よりDNAを採取して診断→倫理的な問題により1例のみ
父親死後の親子鑑定
部分遺体の同一人由来かどうかの鑑定
サザンブロットの性質上サンプルの状態によっては鮮明な結果が得られない→親子鑑定以外では使えない→PCRで増やして検出(MCT1
18)→長い産物は増幅率が悪い→より短いマイクロサテライトで鑑定
Y染色体上のSTR
男性しかできないが1アリルしかない→特異性が高い
単一塩基多型(SNPs)
塩基置換、欠失を検出
欠点:多型性が低い場合が多い
利点:突然変移がおきづらい
PCRーPFLP法:ABO遺伝子型判定など
PCR
で増幅して制限酵素で切断して電気泳動
ミトコンドリアDNA多型
1細胞内に2000個→検出感度が高く、微量試料からも検出
核蛋白で保護されていないため突然変異がおこり易い
母親からのみ遺伝
個人差が大きい(特に D-loop)
シークエンス法で分析
核DNA
MCT118:16の塩基を1単位 多量のサンプル
HLADQα:リバースドットブロット 尐量のサンプル
STR:微量のサンプル
ミトコンドリアDNA
超微量のサンプル
法 医 学 試 料 の 性 状
微量→増幅可能
試料の汚染:周囲の化学物質、他人のものの混入など
試料の分解:DNaseにより時間と共に分解→ある程度は増幅により対処可能
DNA鑑定を前提とした試料採取により試料の汚染は改善されつつある
最 新 の D N A 分 析
オートメーション化
数値のデジタル化
国際統一規格
形 質 人 類 学
担当 京都大学 片山先生
個人識別
白骨で性別を判断
死亡年齢の鑑定:若くして死んだ場合小さい誤差で、大人になると難しくなる
骨年齢:一度成人してエージングしている骨を鑑定するのは難しい
その人の生活によっても異なる
推定身長や顔貌を調べることも重要
アメリカなど他民族の国では特に有意義(性別、年齢、人種)
歯、骨折、出産経験、軸足などもわかる
ミトコンドリアDNAのかけらなども見られる。
Forensic Anthropology:骨を調べて事件性を疑う。戦没者遺骨を判別する。
鑑定のポイント
全身の骨がそろっているか、どんな状態で残っているか
(残存状況、破損状況)
骨の破損状態を調べる、できたのが死亡の後か前かを鑑定:仮骨形成の有無など
骨にも性差があり性判別は容易だが子供(第二次性徴前)では至難
死亡年齢は~25までは細かく推定できるが(骨年齢を調べる)、それ以後ではむずかしいし意義に乏しい
骨年齢:個人差が大きい
身長の推定四肢の長骨(大腻骨はもっとも身長との相関がある、上腕骨などでも)の長さにより推定可能
筋肉の付着部位により筋肉、体格を推定
歯病痕、骨折痕などは簡単に分かる
生活痕:スポーツなどであらわれる
習慣的姿勢:蹲踞(和式トイレで習慣的に)
死後経過年数:わからない(100年単位なら放射性炭素測定で可能)
頭骨があれば生前の写真とスーパーインポーズ、あるいは復顔術も行える
人獣骨鑑別:犬の骨の場合も
個体数が2つ以上のばあいもあるので注意する
グリーンボーン(フレッシュボーン):体内の骨、死んで間もない骨、ナイフで切れる、水分が多い、酸につけるとすじ肉が残る
ドライボーン:古い骨、ナイフで切れない
日本の土壌は酸性土壌→骨も歯も溶解していく
損 傷
総論は長尾先生
各論は学生による講義
総 論
創と傷との違い
創;開放性
傷:非開放性
刺創と挫創の違い:架橋状残存があるかないか
挫創裂創は下部に支持組織を持つ(頭部に多い)
外出血:体外に血液が流出(頭部顔面では小さな傷でも出血が多い→臓器が貧血性に)
内出血:胸腔内、腹腔内に血液が貯留
窒 息
前回同様学生による講義
死体検案書の書き方についてプリント配布あり。
脳 死 ・臓 器 移 植
背景
1.和田心臓移植 1968
日本で初めての心臓移植だが問題点も
1)ドナー 海で溺死し脳死に(本当に脳死だったのか?)
脳死の概念事態は確立されていたが社会的にはこの事件を契機とする
脳死の判定法が社会的、医学的に問題に(当時は判定基準なし)
アメリカでの判定基準を用いた?
2)レシピエント 心臓疾患で悩んでいた(臓器移植しかなかったのか?)
功名心に逸ったのではないか?
3)脳死 ヒトの死?個体死とは?
死についての定義に対する議論
2.免疫抑制剤の開発(シクロスポリンの臨床応用) 1976
臓器の生着率が飛躍的に向上
当時、日本にはアメリカからUS腎が輸入されていたが瀬居着率が向上したため輸入数激減
→腎臓を手にいれる必要
→脳死をヒトの死として認めてもらいたい
→立法化が必要との議論
その後
1.厚生省内に脳死に対する研究班を立ち上げる
竹内基準をまとめる 1985
脳死の判定基準がまとめられるが脳死はヒトの死とは書かれていなかった(書けなかった?)
1984にはアメリカで心臓移植を受けた人がいた
当時の日本の技術は务っていたわけではないと思われるが、社会的には行えない状況であった(和田移植の二の舞いに)
帰国したレシピアントを国民は拍手で迎えた(国外で行われることには抵抗がない?)→倫理的な問題?(臨床治験でも同じような状態にな
っている)
2.日本医師会の生命倫理懇談会がたちあげられる
報告書がまとめられる 1986
ヒトの死には心臓死だけでなく脳死を含めてもよいだろうと初めて公式の文署に書かれた(二元論)→議論を呼ぶ
この後もしばらく移植は行われなかった。
3.政府内に脳死臨調たちあげ 1989
報告書 1992
主として欧米の実情を調査してまとめた
結論は生命倫理懇談会と同じ
大半の委員は脳死をヒトの死と認めることに賛成していたが反対派もいた(だが限りなく死に近い状態なので臓器移植に反対はしない)→二
元論を踏襲
イギリスなどでの一元論はあまり触れられていない(調査の跡がない)
この後もまだ心臓移植は行われなかった。
4.立法化 臓器の移植に関する法律(臓器移植法)
議員立法でまとめる方向で議論(委員長中山太郎)
中山案:脳死は臓器移植にかかわらずヒトの死
金田案:移植に関する時に限り脳死判定することができる(違法性阻却)
衆議院 1997.4.24
中山案 賛成 320反対 148
金田案 賛成 74反対 399
参議院 1997.6.17
猪熊案(金田案と同じ)否決
修正案(猪熊案より厳しい) 賛成 181反対 67
修正案通過→衆議院に回付
衆議院で修正案賛成多数
→法律案として公布 7.16
→施行 10.16
問題を多く抱える
1)個体死の定義
移植する時:医学的脳死→ヒトの死
移植しない時:医学的脳死→ヒトの死ではない、心臓死がヒトの死
矛盾の存在:
移植される脳死者の心臓を止める→死体損壊
移植されない脳死者の心臓を止める→殺人
2)家族の同意
ドナーカードを持っていても家族が反対したら移植は行えない→家族の意志が本人の意思より上
家族の範囲はどこまでかという定義がない
3)死亡時刻
脳死の判定、尐なくとも6時間以降にもう一度確認→死亡時刻は?
現状2回目の判定時を死亡時刻にしている→医師の都合で死亡時刻が変化する
酸素を生命に不可欠な要素と考えるとこれを摂取、分配する器官、およびをそれを利用する器官が重要である
→肺、心臓、脳の3つは対等な存在(生命の環)
→そう考えれば脳死はなんら特別なものではないともいえる
個体の死の定義
「肺、心臓、あるいは脳のいずれか一つが不可逆的に機能停止をした最初の時を個体の死とする」(3つの器官が同等)
一時的心停止、4-7分後拍動開始→拍動が停止しているうちに脳機能が不可逆的に停止→定義上個体の死
永久的心停止、3分以内に代用心臓を用いる→脳の機能は消失しなく活動可能→定義上個体の死だが死んでいると言えるか?
この矛盾が生じるのは定義に問題があるからと思われる。
新たな個体の死の定義
「脳(脳幹)の不可逆的機能停止をもって固体の死とする」
個体死=脳死(一元論)
脳の移植あるいは代用脳は現状の医学レベルでは考えられない
→可能になれば半永久的に生き続けることもできるかもしれない
→個体の死の定義は時の医学レベルにより変化する
死の 3徴
「呼吸運動停止、心臓拍動停止、脳機能停止」
これは死の定義ではなく確認に過ぎない
死亡時刻の設定は財産相続などの面で大きな意味合いを持ってくる(どちらが先に死んだかで相続財産が変わってくる)
脳死の死亡時刻
移植対象者のみ判定を行う
2回目の確認の時を死亡時刻とする
→2回目の確認者の都合により変化しうる
→相続上の問題発生
愛媛の事例
病院の倫理委員を通っていない。
→倫理的問題に対する意識の不足