「経営戦略」策定の意義と実務上のポイント · 2018-09-28 ·...

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「経営戦略」策定の意義と実務上のポイント 松山市役所 下水道部 下水道政策課 鶴原 勇気 ©SHIN SOBUE/Dogo Onsenart2018 参考作品:VJ at CLUBKING エンライトメント VJ Night in Dogo,presented by Enlightenment祖父江慎 「部屋本 坊っちやん」

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「経営戦略」策定の意義と実務上のポイント松山市役所 下水道部 下水道政策課 鶴原 勇気

©SHIN SOBUE/Dogo Onsenart2018参考作品:VJ at CLUBKING

エンライトメント「VJ Night in Dogo,presented by Enlightenment」 祖父江慎 「部屋本 坊っちやん」

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目次1.概要(1)松山市について ・・・・・・・・・・・・・・ p.2(2)松山市下水道の沿革 ・・・・・・・・・・・・ p.3(3)松山市下水道の整備状況 ・・・・・・・・・・ p.4(4)投資規模の推移 ・・・・・・・・・・・・・・ p.5

3.松山市の経営戦略策定の流れ ・・・・・・・・・・ p.9

4.松山市下水道事業経営戦略 ・・・・・・・・・・・ p.11-1.経営戦略の概要 ・・・・・・・・・・・・・・ p.12-2.下水道事業の現状と課題 ・・・・・・・・・・ p.13-3.下水道経営の基本方針と4つの戦略 ・・・・・ p.29-4.投資・財政計画 ・・・・・・・・・・・・・・ p.35-5.経営指標と目標値 ・・・・・・・・・・・・・ p.36-6.推進体制と進捗管理 ・・・・・・・・・・・・ p.37

5.経営戦略策定の実務上のポイント ・・・・・・・・ p.38

2.経営戦略策定の意義 ・・・・・・・・・・・・・・ p.6

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1.概要

p.1

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1.概要

(1)松山市について

「現存12天守」のひとつ 松山城

日本最古の湯 道後温泉

正岡子規夏目漱石

紅まどんな せとか

p.2

・面積 429.4km2

・人口 513,207人

・世帯数 247,714世帯

※平成30年4月1日現在

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松山市の公共下水道事業は、大正初期に事業着手し、昭和33年には中央処理区のうち松山城を中心とする旧市街地を対象として、初めて下水処理場を有する公共下水道事業としての事業認可を受けた。

当時の下水排除方式は、全国的にも多くの都市が採用していた合流式(汚水と雨水を同一の管渠で排除する方式)であり、昭和37年度には、四国で初めて処理場の運転を開始した。

昭和47年からは、排除方式を分流式(汚水と雨水を別々の管渠で排除する方式)に変更するとともに、市街地全体を地形や水系などから、中央、西部、北部の3処理区に分割した基本計画を策定し、計画的に下水道整備を推進することにした。

その後、昭和59年度に西部処理区、平成7年度に北部処理区に事業着手し、さらに、平成17年1月には、市町村合併による北条処理区の追加した。また、平成29年度に上野処理区を加え、現在、中央・西部・北部・北条・上野の5処理区で事業を展開している。

(2)松山市下水道の沿革

1.概要p.3

※上野処理区は掲載していない。

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現在の下水道整備は、「第4次松山市下水道整備基本構想」(平成29年3月策定)に沿って進めており、平成29年度末の下水道処理人口普及率は62.3%となっている。また、平成29年度に新たに追加した上野処理区は、隣接する町に汚水処理の事務委任を予定しており、平成30年度から事業着手している。

(3)松山市下水道の普及状況

1.概要p.4

中央処理区 西部処理区 北部処理区 北条処理区 特環 上野処理区 計

4,194.1 2,436.3 1,067.4 979.4 46.6 5.1 8,728.9

3,204.0 2,079.2 398.1 687.3 46.6 5.1 6,420.3

整備面積(ha) 2,848.5 1,323.2 296.4 523.8 35.2 0.0 5,027.1

処理区域内人口(人) 208,773 81,365 10,708 18,221 729 0 319,796

下水道処理人口普及率(%) 62.3

全体計画面積(ha)

事業計画面積(ha)

平成29年度末 319,796【下水処理人口】÷513,207【行政人口】

図表 松山市下水道の普及状況

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(4)投資規模の変遷

5467

50

97

73

108

104

151

187

286

232193

174181

147132 132

111

9378 75

58 5548

6255 58

7466

53

32.9 33.2 33.1 32.8 32.7 32.9

35.0 35.536.2

38.5

42.4

44.545.5

47.0

48.850.1

51.552.9

53.954.9

55.856.6

57.658.4

59.059.6 59.9 60.3 60.8 61.3

30.0

40.0

50.0

60.0

0

100

200

300

S61 62 63 H1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27

下水道普及率

建設事業費

建設事業費 下水道普及率

国の景気対策 (H4~H13)

(億円)(%)

平成6年に下水道整備基本構想を策定し、これまで3度の改定を実施し、積極的に普及率向上を実施してきた。特に、第7次五箇年計画(平成3年~平成7年)及び第8次五箇年計画(平成8年~平成14年)では、国による景気対策を受け、集中的な建設投資を行った結果、普及率が大幅に向上した。その後、平成20年度からは普及率の向上と経営のバランスを考慮し、建設投資額を年間65億円に抑制している。

1.概要p.5

図表 建設事業費と下水道普及率の推移

第6次 第7次 第8次 第9次 第10次 第11次計画期間 S61~H2 H3~H7 H8~H14 H15~H19 H20~H24 H25~H29

投資規模 70億円 170億円 160億円 80億円 65億円 65億円

【松山市下水道整備計画の年間投資規模平均の推移】

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2.経営戦略策定の意義

p.6

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◎経営戦略とは、そもそも何のために策定するのか?

将来にわたる下水道事業の継続

運営手法 組織形態 使用料 保有資産の適正規模 投資規模 広報 ... etc

目的

経営戦略手段コンセッション

包括的民間委託

資産維持費

資本費負担

組織統合

人口減少と普及率

経営環境は自治体によって異なっており、手段は多様である。p.7

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p.8

◎経営戦略を策定する意義とは何か?①作ること

②見直すこと

自分たちの過去・現在を振り返り、将来を想定し、見える化した経営課題に対策を講じる。

事業の進捗や社会環境の変化、国の動向等を踏まえ、計画を見直し、最善の計画とする。

現状分析・将来シミュレーション・各種WG・審議会...

普及状況・老朽化・補助金・資産維持費・PPP/PFI...

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3.松山市の経営戦略策定までの流れ

p.9

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年月 業務内容等

平成26年8月 「公営企業の経営にあたっての留意事項について」総務省通知

平成27年4月 財務分析に着手※委託業者との打合せ回数18回、中間報告会2回、最終報告会1回

平成28年4月 策定業務に着手※委託業者との打合せ回数15回、最終報告会1回

6月 松山市下水道事業経営審議会① 諮問8月 松山市下水道事業経営審議会② 将来シミュレーション提示

11月 松山市下水道事業経営審議会③ 素案提示平成29年1月 パブリックコメントの実施

2月 松山市下水道事業経営審議会④ 答申案3月 市長へ答申

松山市下水道事業経営戦略 策定・公表4月 戦略に基づく事業経営の開始

3.松山市の経営戦略策定までの流れ

・長期財政シミュレーションの策定・財務面からの投資規模の検討・施策の詳細化・推進体制及び進捗管理等の検討

・投資面からの投資規模の検討・組織及び改善方策案の検討・概要版の作成

・財務分析・ワーキンググループ検討・他都市事例の調査分析・課題と施策の整理

【主な検討事項など】

p.10

※ワーキンググループの活動や事業の進捗管理は策定過程を通じ、随時実施した。

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4.松山市下水道事業経営戦略

p.11

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4.松山市下水道事業経営戦略

4-1.経営戦略の概要H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34 H35 H36 H37 H38

第6次松山市総合計画 松山創生人口100年ビジョン先駆け戦略

松山市公共施設等総合管理計画

松山市人材育成・行政経営改革方針

第3次松山市下水道整備基本構想(H20~H34)

第4次松山市下水道整備基本構想(H29~H38)

松山市下水道事業経営戦略(H29~H38)

第10次松山市下水道整備五箇年計画

第11次松山市下水道整備五箇年計画

公共下水道事業の経営健全化のためのガイドライン(4か年計画でH25改定)

公営企業経営健全化計画(5か年計画でH19及びH24策定)

【国土交通省・農林水産省・環境省】持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想策定マニュアル(H26年1月)

【国土交通省】新下水道ビジョン(H26年7月)

【総務省】公営企業の経営に当たっての留意事項について(H26年8月)「経営戦略」の策定推進について(H28年1月)

●国の方向性

整合

反映

●関連計画●上位計画

本市の上位計画である「第6次松山市総合計画」や「松山創生人口100年ビジョン先駆け戦略」、「松山市公共施設等総合管理計画」、「松山市人材育成・行政経営改革方針」など各種の関連計画を反映している。また、「第11次松山市下水道整備五箇年計画」及び「公共下水道事業の経営健全化のためのガイドライン」の取組を基礎とし、国土交通省や総務省など関係省庁のビジョン等との整合を図り策定している。平成29年度からは、整備計画である「基本構想」と経営計画である「経営戦略」の2つの計画で事業運営している。

経営戦略の位置付け

p.12

図表 松山市の上位計画等と経営戦略の位置付け

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4-2.下水道事業の現状と課題

経営課題の整理

現状及び将来の経営課題を抽出するため、国の動向も見据えながら、現状分析、各課ヒアリング・他都市照会、将来シミュレーションを実施し、課題を4つの視点(資産・業務、組織・人材、財務、広報)で取りまとめる。

4.松山市下水道事業経営戦略p.13

図表 経営課題の整理体系

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4-2.下水道事業の現状と課題

総括

(1)改築更新需要の増大に伴う建設改良費の増加(2)職員の減少と年齢構成の変化(3)人口減少に伴う使用料収入の減少(4)下水道利用者の理解促進

4.松山市下水道事業経営戦略p.14

コンセッション包括的民間

委託

資産維持費

資本費負担

組織統合

人口減少と普及率

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4-2.下水道事業の現状と課題(1)資産・業務に係る現状と課題

管渠の現状と老朽化状況平成27年度末時点の管渠総延長は約1,500kmとなっており、その整備ペースは現在、年間20km弱である。管渠老朽化率は、類似平均と比べると比較的低いが、平成初期に整備した多くの管渠が年々老朽化してくるため、今後は増加する傾向にある。

図表 管渠の敷設年度別延長 図表 管渠老朽化率

4.松山市下水道事業経営戦略p.15

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0102030405060708090

S33

S36

S39

S42

S45

S48

S51

S54

S57

S60

S63

H03

H06

H09

H12

H15

H18

H21

H24

H27

H30

H33

H36

H39

H42

H45

H48

H51

H54

H57

単年度布設延長(実績) 50年で単純更新した場合の更新需要(予測)

( )

図表 年度別管渠整備延長実績、標準耐用年数で更新した場合の更新需要予測

更新事業費が増加

(km)

⇒ 管の法定耐用年数は50年であり、仮に、法定耐用年数どおりに更新した場合、平成57年頃に更新のピークを迎え、事業費が増加する見込みである。

4.松山市下水道事業経営戦略p.16

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4-2.下水道事業の現状と課題(2)組織・人材に係る現状と課題

組織体制企業会計職員は、平成23年度の101人から平成27年度94人と、7人減少しており、年齢別人員構成では、若年層(35歳以下)は非常に少なく、中堅層(36~50歳)で支えられている状況であり、このままでは現行体制の維持が困難になると予測される。そのため、業務マニュアルの作成や、技術継承の仕組みづくりが急務となっている。

図表 職種別職員数の推移図表 年齢別人員構成

33 30 29 30 29

4439 38 38 40

78 7 7 6

56 6 6 7

11 1 1 1

55 5 6 6

66 5 6 5

101 95 91 94 94

0

20

40

60

80

100

H23 H24 H25 H26 H27

事務職 土木職 機械職 電気職 建築職 化学職 作業員等

4.松山市下水道事業経営戦略p.17

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4-2.下水道事業の現状と課題(3)財務に係る現状と課題

①経営成績等の推移単年度収支は、平成22年度から概ね改善傾向であり、平成27年度から黒字を達成している。これは、料金改定や支払利息の減少が主な要因である。この支払利息の減少は、元利均等償還方式による返済後年度の利子分が減少したことや補償金免除繰上償還の活用が要因である。

図表 単年度収支と累積欠損金の推移 図表 借入金残高と元金償還額・支払利息の推移

4.松山市下水道事業経営戦略

-251 -290

823 1,048 1,292

-7,617 -7,058

-6,010

-4,718

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

H25 H26 H27 H28 H29

単年度収支 累積欠損金

(決算見通し)

(百万円)

8,2079,017 9,225

10,908

8,979

2,963 2,841 2,696 2,450 2,297

138,817136,647

134,095 131,333128,041

70,000

80,000

90,000

100,000

110,000

120,000

130,000

140,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

H25 H26 H27 H28 H29

元金償還額 支払利息 借入金残高(単位:百万円)(決算見通し)

p.18

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4-2.下水道事業の現状と課題(3)財務に係る現状と課題

②下水道使用料小口使用者は汚水排出量の約6割を占め、その割合は増加傾向にあり、今後も人口減少や節水機器の進展により小口使用者の割合が増加していく可能性が高い。また、業種別では、商業用及び医療用の減少が顕著に表れており、使用料体系(固定費配賦率)の検討が必要である。

図表 汚水排出量区分別水量割合 図表 業種別排水量(使用者上位100者)の推移

4.松山市下水道事業経営戦略p.19

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図表 中核市における下水道使用料の現状

4.松山市下水道事業経営戦略p.20

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4-2.下水道事業の現状と課題(3)財務に係る現状と課題

③採算性経費回収率は、平成22年度から概ね改善傾向であり、平成28年度には108.1%まで上昇している。内訳を見ると、維持管理費にかかる経費回収率は、中核市平均や普及率同程度の比較対象都市の中でも高い一方で、資本費は、中核市平均より低く、比較対象都市の中では最も低い水準であり、資本費を回収しきれていない状況を示している。

図表 経費回収率の推移 図表 経費回収率(維持管理費)

311.0

240.2

126.7

195.3 182.5207.1

226.9

176.8

237.6272.0

0

50

100

150

200

250

300

350

松山市

大分市

一宮市

高松市

豊橋市

宇都宮市

宮崎市

岐阜市

長崎市

金沢市

(%)

中核市平均217.0

137.6 141.0 159.2 155.8 144.9

333.5

147.1 159.9

246.1

141.9

0

50

100

150

200

250

300

350

松山市

大分市

一宮市

高松市

豊橋市

宇都宮市

宮崎市

岐阜市

長崎市

金沢市

(%)

中核市平均200.2

図表 経費回収率(資本費)

4.松山市下水道事業経営戦略p.21

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4-2.下水道事業の現状と課題(3)財務に係る現状と課題

④財務安全性「処理区域内人口1人当たり借入金残高」は、中核市平均と比べ、220.3千円高い435.0千円となっており、普及率同程度の都市と比べても高い。「借入金残高対使用料収入倍率」も同様の傾向が見られ、本市の借入金の多さが経営を圧迫していることが分かる。

図表 処理区域内人口1人当たり借入金残高 図表 借入金残高/使用料収入

435.0

321.6 331.4 337.5

129.2158.0

261.9

168.9

230.5

345.2

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

松山市

大分市

一宮市

高松市

豊橋市

宇都宮市

宮崎市

岐阜市

長崎市

金沢市

(千円/人)

中核市平均214.7

23.9

18.8

35.8

22.9

10.1 9.6

19.2

13.2 11.6

21.9

0

5

10

15

20

25

30

35

40

松山市

大分市

一宮市

高松市

豊橋市

宇都宮市

宮崎市

岐阜市

長崎市

金沢市

(倍)

中核市平均14.4

4.松山市下水道事業経営戦略p.22

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(億円)

(%)

(年度)

6年間 14年間

普及率12.6%上昇 普及率12.0%上昇

短期間に大幅な普及拡大を行い、借入金残高も増加

4.松山市下水道事業経営戦略p.23

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4-2.下水道事業の現状と課題(3)財務に係る現状と課題

⑤長期財政シミュレーション収益的収支の長期財政シミュレーションの主な前提条件

項目 計上方法

収益的

収入

下水道使用料 水量区分ごとに、過去の動向を加味して推計

一般会計繰入金 現行制度(総務省繰出基準)に基づき算出

長期前受金戻入 固定資産台帳から算出(新規分は投資計画を基に算出)

収益的支出

職員人件費 過去数年の動向に基づき算出

その他維持管理費 動力費、薬品費等は処理水量の増加等を見込み、修繕費や委託料等は過去の動向に基づき算出

減価償却費 固定資産台帳から算出(新規分は投資計画を基に算出)

支払利息建設債は借入期間30年(5年据置、元利均等方式)で算出し、資本費平準化債・特別措置分は、借入期間10~20年(1年据置、元金均等方式)で算出。金利は、過去10年の平均金利とする。

4.松山市下水道事業経営戦略p.24

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4-2.下水道事業の現状と課題(3)財務に係る現状と課題

⑤長期財政シミュレーション更新事業費算出における前提条件

項目 計上方法

再取得価格固定資産台帳を基に、各資産の取得価格に物価上昇を加味した金額(国土交通省 建設工事費デフレータを算出)

再取得時期 運用実績や他市事例を参考に設定した使用可能年数を経過した後に再取得する計算とする。

費用の平準化 国の指針等を参考に10年単位で平準化

更新財源 国庫補助金(現行制度の交付額を算定)を充当した上で、不足分は企業債充当で計算

0

100

200

300

400

500

H28 H33 H38 H43 H48 H53 H58 H63 H68 H73

管渠 ポンプ場 処理場平成50年度頃に大規模更新時代(ピーク時:約385億円程度)を迎えるため、10年単位で平準化しています。

0

100

200

300

400

500

H28 H33 H38 H43 H48 H53 H58 H63 H68 H73

管渠 ポンプ場 処理場

約131億

約83億 約83億

更新費用を平準化したとしても、現在の投資規模(65億円)の約2倍の費用が将来必要になると見込まれます。

約66億

約47億約23億約21億

平準化

平準化後

(億円)

※なお、これらは現在把握している資産の情報、知見に基づき推計したものであり、今後変更になる場合があります。

平準化

H76

H76

(億円)

図表 更新投資の平準化

4.松山市下水道事業経営戦略p.25

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松山市独自の推計値によると、2010年(平成22年)から50年後の2060年(平成72年)には約9.4万人減少し、国立社会保障・人口問題研究所の推計手法に準拠した推計値では、約16.7万人の減少が見込まれる。

図表 松山市人口の将来見込

4.松山市下水道事業経営戦略p.26

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4-2.下水道事業の現状と課題(3)財務に係る現状と課題

経営戦略の期間

松山創生人口100年ビジョン

-400.00

-300.00

-200.00

-100.00

0.00

100.00

200.00

300.00

400.00

-40.00

-30.00

-20.00

-10.00

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

当年度純損益 累積損益

②赤字化(H48)

(棒グラフ) (折れ線グラフ)

①累積欠損金解消(H34)

③累積欠損金発生(H63)

④累積欠損金△243億円(H76)単年度損失△18億円(H76)

(億円)

40

30

20

10

0

-10

-20

-30

-40

400

300

200

100

0

-100

-200

-300

-400

4.松山市下水道事業経営戦略p.27

図表 50年間の長期財政シミュレーション

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4-2.下水道事業の現状と課題(4)広報に係る現状と課題

図表 出前教室及び浄化センター見学

全国的に下水道整備が進んだ結果、下水道は「あって当たり前のもの」と思われ、その必要性や役割を意識されにくい状況となっている。そうした中、耐震化や老朽化による改築更新費用の増大により、今後、より厳しくなる経営状況等について、利用者の理解を得る必要がある。

図表 大学生との意見交換会

これまで、小学生向けの出前教室、浄化センターへの施設見学の受け入れなどを実施し、平成28年度には大学生との意見交換会も実施し、下水道事業に対する理解促進や積極的な広報活動に取り組んでいる。

4.松山市下水道事業経営戦略p.28

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(1)改築更新需要の増大に伴う建設改良費の増加⇒ ストックマネジメントの導入推進、投資規模の縮減

(2)職員の減少と年齢構成の変化⇒ 確実な技術継承と職員の事務レベル向上

(3)人口減少に伴う使用料収入の減少⇒ 使用料体系の見直し検討、資産維持費の導入検討

(4)下水道利用者の理解促進⇒ 広報活動の充実

4.松山市下水道事業経営戦略p.29

4-3.下水道経営の基本方針と4つの戦略(総括事項への対応)

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4-3.下水道経営の基本方針と4つの戦略

(1)資産・業務戦略

官民連携の推進や防災対策等を充実し、業務効率化やリスク管理強化を行うほか、長寿命化や資産・資源の有効活用を推進し、資産の安全性や効率性を目指す。また、将来の人口減少社会を見据え、適切な施設規模を追求する。

災害に備えた「松山市下水道BCP(業務継続計画)」について、新規配属の職員への周知や定期訓練等でより実行性を高める必要があるとともに、関係機関(県や近隣自治体)との緊急時の連携体制を進め、危機管理体制をより強固なものにしていく必要がある。

・投資の平準化と予防保全型の維持管理

下水道施設を適切に管理し、中長期的な改築需要を見通すことが不可欠であるため、ストックマネジメントの導入により、維持管理費の低減や安全性の向上を図る。また、ストックマネジメントの実施にあたり、各施設の重要度や影響度などで修繕及び点検の優先順位を付け、事業費の平準化を図る。

・防災対策の充実、危機管理等の体制整備

4.松山市下水道事業経営戦略p.30

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4-3.下水道経営の基本方針と4つの戦略

(2)組織・人材戦略

各業務のマニュアル化や研修の実施により、技術力などの維持・継承を行うとともに、若手職員などの活躍機会の拡大やアンケートの実施により、組織を活性化させる。

熟練した技術職員の技術・ノウハウを確実に引き継ぐための取組を行うほか、再雇用等の活用により、技能やノウハウの円滑な継承も合わせて図るとともに、業務の引継ぎを定型化し、各業務のマニュアル化を進める。

・技術継承

お客様の下水道事業に対する理解向上と職員のモチベーションの維持向上を図るほか、若手や女性職員などの発想を生かす活躍機会の場をつくり、仕事に対する意欲向上を図る。また、職員満足度アンケートなどを実施し課題の解決を図り、不祥事等の発生しない風通しの良い職場環境づくりに努める。

・職員のモチベーションの維持及び向上

4.松山市下水道事業経営戦略p.31

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4-3.下水道経営の基本方針と4つの戦略(3)財務戦略コスト削減や収益拡大のための施策を展開し、健全経営を維持するとともに、建設投資規模の削減等により借入金の削減や財務の安全性を確保する。

積極的な接続勧奨や滞納整理等を行うことで、使用料収入の増加を図るとともに、将来の財源確保を目的とした下水道使用料(体系)の適切な見直しや、新たな収入確保のための研究も進めていく。

・経営基盤の強化

今後、改築更新費の増大が懸念される中、将来世代への負担を減らすためには、大規模な改築更新が始まるまでに借入金をできるだけ削減しておく必要があり、経営改善策として、企業債の発行条件を「元利均等方式」から「元金均等方式」に変更し、また、企業債の据置期間を5年から0年に変更する。

・経営の効率化

今後の下水道使用料改定方針

・「使用料対象経費回収率」100%以上を目標

・小口使用者に配慮したうえで、使用者全体(大口使用者に依存しない)で負担する使用料体系への移行検討

・資産維持費の導入検討 ・長期財政SMで将来の経営成績などを見通した上で検討

4.松山市下水道事業経営戦略p.32

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4-3.下水道経営の基本方針と4つの戦略(3)財務戦略

借入方式の変更により、累積欠損金の発生時期を遅らせ、シミュレーション最終年度の累積欠損金を改善することができる。ただし、シミュレーション期間での収支ギャップ解消には至らないため、更なる経営改善策の取組が必要である。

【企業債の借入方式の変更による改善効果】

4.松山市下水道事業経営戦略p.33

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4-3.下水道経営の基本方針と4つの戦略(4)広報戦略お客様に対する積極的な情報公開や発信を行うことで説明責任を果たす。また、経営成績や財政状態の公開をさらに進め、下水道事業に対する理解向上に努めるとともに、満足度の向上を図るため、お客様対応業務の拡大を研究するほか、アンケート等の実施により、幅広いお客様ニーズの把握に努める。

これまで実施してきた広報活動の充実はもちろん、これまでより情報量を拡大することが必要である。また、お客様の知りたい情報等を積極的に公開するとともに、本市下水道事業の現状と課題の理解促進に努める。

・広報、広聴の充実

今後は、お客様の下水道事業の理解促進のため、お客様目線での情報公開や情報の見える化の推進を行う。また、職員研修など、現在取り組んでいる人材育成等の取組についても、定期的にホームページ上で公開し、さらに、現在の経営成績や財政状態に加え、将来の課題などについて、分かりやすく説明していく。

・下水道事業の見える化の推進

4.松山市下水道事業経営戦略p.34

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4-4.投資・財政計画投資規模の縮減

図表 主要指標に関する分析(平成26年度末)

未普及解消等の投資面での事業費の確保及び財務面での各種経営指標の改善するなど、長期財政シミュレーション(50年間)で明らかになった収支ギャップを改善することができるため、今後の投資規模を、財政と投資のバランスを考えた60億円にした。

収益性(経費回収率)

普及率

コスト

生産性(損益勘定職員1人当たり使用料収入)

安全性①(自己資本構成比率)

安全性②

(下水道処理人口普及率)

(処理区域内人口1人当たり汚水維持管理費)

180%

100%

5,000円

180,000千円

70%

50千円

(処理区域内人口1人当たり借入金残高)

松山市(H26末)

類似中核市平均収益性(経費回収率)

普及率

コスト

生産性(損益勘定職員1人当たり使用料収入)

安全性①(自己資本構成比率)

安全性②

(下水道処理人口普及率)

(処理区域内人口1人当たり汚水維持管理費)

松山市(H43末)

類似中核市平均(H26末)

180%

100%

5,000円

180,000千円

70%

50千円

(処理区域内人口1人当たり借入金残高)

松山市(H38末)

図表 主要指標に関する分析(平成38年度末及び平成43年度末見込)

4.松山市下水道事業経営戦略p.35

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4-5.経営指標と目標値(資産・業務戦略)

4.松山市下水道事業経営戦略

(組織・人材戦略)

p.36

指標名数値目標等(H29~33)

数値目標等(H34~38)

望ましい方向

水洗化率 92.5%以上 93.0%以上

損益勘定職員1人当たり使用料収入 1億2,300万円以上 1億2,600万円以上

管渠の改築更新率 長寿命化計画の計画終了年度の改築更新率100%

指標名数値目標等(H29~33)

数値目標等(H34~38)

望ましい方向

外部講習会参加率100.0%(毎年度)

100.0%(毎年度)

引継ぎ実施率 100.0% 100.0%

マニュアル化率 100.0% 100.0%

(財務戦略)

指標名数値目標等(H29~33)

数値目標等(H34~38)

望ましい方向

処理区域内人口1人当たり汚水維持管理費

6,090円以下(毎年度)

6,090円以下(毎年度)

経常収支比率 107.0%以上 115.0%以上

累積欠損金 - 累積欠損金の解消

流動比率 89.0%以上 100.0%以上

借入金残高対使用料収入倍率 20.0倍未満 16.5倍未満

企業債依存度60.0%未満(毎年度)

60.0%未満(毎年度)

処理区域内人口1人当たり借入金残高

362千円以下 292千円以下

自己資本構成比率 53.6%以上 58.8%以上

(広報戦略)

指標名数値目標等(H29~33)

数値目標等(H34~38)

望ましい方向

延べ情報発信回数(ホームページ除く)

5回(毎年度) 5回(毎年度)

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4-6.推進体制と進捗管理等

4.松山市下水道事業経営戦略

図表 推進体制

10年間の計画を前期・後期に分け、中間年の平成33年度に前期5年間の取組や投資計画を検証し、後期の5年間の施策や目標等の見直しと後期の計画の詳細化を行う。なお、各施策には、今回立ち上げ、今後の取組を研究していくものも含まれており、現時点では効果や目標数値が明らかにならない施策もあり、これらの施策は、実施が可能と判断できる段階で、施策内容を具体化し、順次、目標数値の設定を行う。

図表 戦略の見直しスケジュール

p.37

下水道事業経営会議

組織運営

広報戦略

ストックマネジメント

広域化・共同化・最適化

民間の資金及びノウハウ

資産活用

コスト削減

リスクマネジメント

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5.経営戦略策定の実務上のポイント

p.38

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(3条の主な要素)

5.実務上のポイント

5.経営戦略策定の実務上のポイント

「木を見て森を見ず」とならないよう、収支構造上の主な要素を捉えることが大切である。下記の要素を現状の成り行きベースでプロットするだけでも、将来の大きな経営環境が見えてくる。

①収支計画の主な要素を捉える

【収入】 下水道使用料 + 繰入金

【支出】 維持管理費 + 資本費

【収入】 補助金 + 企業債 +繰入金

【支出】 建設改良費 + 元金償還金

(4条の主な要素)

これらの要素を成り行きベースでプロットするだけでも、将来の大きな流れが見えてくる。

p.39

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5.実務上のポイント

5.経営戦略策定の実務上のポイント

長期財政シミュレーションの管理ツールは、PDCAを円滑に働かせるため、できる限りシンプルに構築する。複雑化することで、緻密なシミュレーションを構築できるが、後年度の見直し作業時に煩雑化するため、見直しによるツールの変更箇所等を適切に把握・管理・伝承していく必要がある。

②データの複雑化を避ける

図表 本市シミュレーションツール

p.40

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5.実務上のポイント

5.経営戦略策定の実務上のポイント

本市経営戦略の使用料収入の算出基礎となる行政人口推移には、本市全体の人口施策である「松山創生人口100年ビジョン」を採用している。人口推移の基準数値は、将来の収支に大きく影響を与えるため、選定にあたっては十分に検討・議論を要する。

③人口推移の選定

経営戦略の期間

松山創生人口100年ビジョン

-400.00

-300.00

-200.00

-100.00

0.00

100.00

200.00

300.00

400.00

-40.00

-30.00

-20.00

-10.00

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

当年度純損益 累積損益

②赤字化(H48)

(棒グラフ) (折れ線グラフ)

①累積欠損金解消(H34)

③累積欠損金発生(H63)

④累積欠損金△243億円(H76)単年度損失△18億円(H76)

(億円)

40

30

20

10

0

-10

-20

-30

-40

400

300

200

100

0

-100

-200

-300

-400 -400.00

-300.00

-200.00

-100.00

0.00

100.00

200.00

300.00

400.00

-40.00

-30.00

-20.00

-10.00

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

当年度純損益 累積損益

②赤字化(H48)

(棒グラフ) (折れ線グラフ)

①累積欠損金解消(H34)

経営戦略の期間

国立社会保障・人口問題研究所

③累積欠損金発生(H61)

④累積欠損金△376億円(H76)単年度損失△25億円(H76)

(億円)

40

30

20

10

0

-10

-20

-30

-40

400

300

200

100

0

-100

-200

-300

-400

図表 本市人口ビジョンに基づく長期財政シミュレーション(再掲)

(参考)図表 社人研の人口推移に基づく長期財政シミュレーション

p.41

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5.実務上のポイント

5.経営戦略策定の実務上のポイント

本市の経営戦略における経営指標は、4つの基本戦略ごとに設定しており、特に「借入金残高」を管理するための財務戦略の指標に重点を置いており、財務の安全性向上を経営上の重点目標の一つとしている。これは、現状分析による他都市比較、及び長期財政シミュレーションによる将来の改築更新需要の増大を踏まえ、財務の安全性を重視しているためである。

④経営指標と目標数値の設定

✔ 何を重視するのか

目標数値を設定する際の基準には、「絶対的基準」と「相対的基準」の2つがあると考える。説明責任を果たすため、全国平均や中核市平均といった「相対的基準」を採用することで、明確な根拠に基づき説明することができる。一方で、相対的な位置付けに拠らず、自治体独自の経営判断に基づき「絶対的基準」を設定することで、自治体(公営企業)としてのあるべき姿を目指すことができる。

✔何に基準を置くのか

p.42

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5.実務上のポイント

5.経営戦略策定の実務上のポイント

⑤投資計画と財政計画の統合H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34 H35 H36 H37 H38

第6次松山市総合計画 松山創生人口100年ビジョン先駆け戦略

松山市公共施設等総合管理計画

松山市人材育成・行政経営改革方針

第3次松山市下水道整備基本構想(H20~H34)

第4次松山市下水道整備基本構想(H29~H38)

松山市下水道事業経営戦略(H29~H38)

第10次松山市下水道整備五箇年計画

第11次松山市下水道整備五箇年計画

公共下水道事業の経営健全化のためのガイドライン(4か年計画でH25改定)

公営企業経営健全化計画(5か年計画でH19及びH24策定)

【国土交通省・農林水産省・環境省】持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想策定マニュアル(H26年1月)

【国土交通省】新下水道ビジョン(H26年7月)

【総務省】公営企業の経営に当たっての留意事項について(H26年8月)「経営戦略」の策定推進について(H28年1月)

●国の方向性

整合

反映

●関連計画●上位計画

投資と財政は表裏一体であり、その計画も本来は一つの事業計画として作成することで、アカウンタビリティーの向上が図られるとともに、内部の管理計画も一元化され、組織内の意志統一も図られる。本市では平成28年度末に、投資計画である「第4次松山市下水道整備基本構想」と財政計画である「松山市下水道事業経営戦略」を策定し、現在、2つの計画を進捗管理している。

※経営戦略の「投資・財政計画」は、基本構想の実施に向けての必要投資額を使用している。

p.43