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日本人の宗教観 —伝承のイメージとしての妖怪と妖精から探る現代のアニミズム— 14AR020 谷口 14AR056 伊東千絵子

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日本人の宗教観 —伝承のイメージとしての妖怪と妖精から探る現代のアニミズム—

14AR020 谷口 靜

14AR056 伊東千絵子

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I. 目的地 イギリス、アイルランド

II. 目的 「あなたの宗教は何ですか」という問いがあった場合、日本人の多くは無宗教と答えるだろう。日本

国内で宗教の話をすると怪訝な顔をされることも多い。仏教や神道、またはキリスト教を信仰している

人もいるが、世代が下る毎にその数は確実に減少している。けれども、日本人の家にはたいてい仏壇が

あり神棚があり、クリスマスにはお祝いをし、結婚式は教会や神前で行う。これでは日本人が無宗教と

は言えない、そしてそこに日本人の宗教観があるのではないだろうか。日本人は古来より森羅万象に霊

魂、神が宿ると考えてきた。この考えを宗教としたのが神道で、形としたのが妖怪であると思う。柳田

國男は『妖怪談義』のなかで妖怪について、「零落した神々のすがた」と記している。つまり、妖怪とは

森羅万象と同義であった。同様に、アイルランドに住んでいたケルト人もアニミズム信仰を行っていた。

その考えを宗教としたのがドルイド教、形としたのが妖精であったと我々は考える。よって、妖怪と妖

精について理解を深めることはアニミズムへの理解を深めることに繋がる。

さまざまな事象を科学的に説明できなかった時代とは異なる現代社会において、いわゆる非科学的な

伝承などが生き残っているのは、現代社会、現代人の“恐怖心”や、“願望”のあらわれである、と我々

は考える。現代においてその感情を形式化した存在である妖怪、妖精がどのようにアニミズムと結びつ

いているかを考察することが目的である。二つ目は、現代日本の宗教観を暴くことである。日本人が本

当は無宗教ではなく多神教であるという前提の上で調べることで、現代の妖怪と妖精への思想を理解し

両国のアニミズムを探り、宗教に対する考え方を得たい。

III. 期待される成果 超自然的なものである“妖精”や“妖怪”についての概念や存在意義について理解を深めることから

アニミズム信仰がどのようにされていたか、古来の宗教観がどのようなものだったかを知ることで、現

代の宗教観とはどのようなものであるかを得ることができる。また、日本だけでなくアイルランドを調

査することで、アニミズムが影響した宗教として二つのモデルを得ることができる。

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IV. 日程

日付 滞在地 行動

2 月 10 日 福岡、ロンドン 移動:航空機(上海経由で福岡→ロンドン)

2 月 11 日 ロンドン

マン島

移動(ロンドン→マン島)

2 月 12 日 マン島

チェスター

Manx Museum へ行く

移動:航空機(マン島→リヴァプール)

移動:電車(リヴァプール→チェスター)

2 月 13 日 ダブリン 移動:電車(チェスター→ホーリーヘッド)

移動:船(ホーリーヘッド→ダブリン)

2 月 14 日 ダブリン 国立レプラホーン博物館、トリニティーカレッジ、

国立考古学・歴史博物館へ行く

2 月 15 日 ダブリン

ドロヘタ

タラの丘、ニューグレンジへ行く

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夜のダブリン市内を観光

2 月 16 日 ダブリン

キラーニー

書店めぐり

移動:電車(ダブリン→キラーニー)

2 月 17 日 キラーニー

コーク

ディングル半島へのツアーが中止となり、キラーニー国立公園へ行

移動:バス(キラーニー→コーク)

2 月 18 日 コーク

イニシュモア島

イングリッシュマーケットへ行く

移動:電車(コーク→リムリックジャンクション→ゴールウェイ)

移動:船(ゴールウェイ→イニシュモア島)

2 月 19 日 イニシュモア島

ゴールウェイ

島内を自転車で回る

移動:船(イニシュモア島→ゴールウェイ)

2 月 20 日 ゴールウェイ

クレア

シャノン

モハーの断崖、バレン、アーウィーの洞窟へ行く

移動:バス(ゴールウェイ→シャノン)

2 月 21 日 シャノン

ロンドン

移動:航空機(シャノン→ロンドン)

ロンドン市内観光

移動:航空機(上海経由でロンドン→福岡)

2 月 22 日 福岡 帰国

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V. 成果報告

妖精、妖怪の定義

まず、ここでいう「妖精」、「妖怪」とは何かを定義付けたい。

ここでいう「妖精」は、アイルランド伝説にでてくる、「レプラホーン」と呼ばれるものとした。

ここでいう「妖怪」は、「不可解な怪現象や存在で、人々に祭祀されていないもの(『妖怪文化入門』/

小松和彦 より)」とした。

調査の結果

国立レプラホーン博物館(ダブリン)

ここで主に資料を見たり、調達したりする予定であったが、どちらかといえば子供向けのアトラク

ション施設であり、学術的な資料はあまり調達できなかった。一時間に一回の割合でツアーが行われ、

それに参加しながら館内を見ていく形式だった。参加者は、ヨーロッパ国籍の小学校低学年ほどの子供

が特に多かった。

このことから、妖精文化は「子供が親しみをもって触れることができるもの」であると感じた。日本

の妖怪文化は「物語」となって、アニメや絵本になり、「子供が親しみをもって触れることができるもの」

となっている共通点であると考えた。

そして、施設名からもわかるが“国立フェアリー博物館”ではなく、“国立レプラホーン博物館”であ

り、このことから、アイルランドの妖精は主にレプラホーンを指すことがわかる。レプラホーンとは、

赤い帽子をかぶった小さな靴職人の妖精で、捕まえると宝の隠し場所を教えてくれるというものである。

←この写真の右奥に居るのがレプラホーン。

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タラの丘

アイルランド人の心の故郷であるといわれる「タラの丘」。

晴天であれば、ここからはアイルランド全土の七割が見渡せる。足元はぬかるんでおり、丘を登って

行くのはなかなか大変であったが、この日は幸い天気が良く、アイルランドの大きな自然が見渡せた。

ニューグレンジ

約五千年前に建てられたと推測される墳墓。ツアーで中に入ると、石が積み上げられてつくられてお

り、狭く暗い。冬至の朝に、数分間だけ太陽の光が奥まで届く設計となっているそうである。ガイドの

方がライトで再現してくれた。中の壁には渦巻き模様、輪などのモチーフが彫られていた。

入口正面 外壁の模様

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イニシュモア島

ここでの主な目的は「妖精の家」を見ることであった。「妖精の家」とは、アイルランドの個人家の庭

に、さらに置かれている特徴的な小さな家のことである。

島内を自転車でまわるうちに、すべてではないが、何軒かは「妖精の家」を備えている

家があった。見た中では、すべてが赤い屋根、緑の窓枠を備えたものであった。大きさは、ほぼ一定(犬

小屋くらい)であったが、一軒だけ物置小屋ほどの大きさの妖精の家(の外見をしたもの)もあった。

宿泊したゲストハウスにもあり、家主の方に聞いてみると、「It’s a traditional house. Leprechaun’s

house!」との回答があった。

ゲストハウスにあった妖精の家。

大きな妖精の家(と思われるもの)

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・日本人の宗教観

・アイルランド人の宗教観

英文

総括

今回、実際にアイルランドへ実際に赴くことで、資料集めはもちろんだが、一番重視したのが“現地の

風土を体で感じること”であった。

アイルランドの国土は北海道とほぼ同じくらいである。大都会と大自然がとても近い位置に存在して

おり、どことなく日本と似ている要素があるように感じられた。“自然”が生活地に近く、“自然”の力

を知っているからこそ、アニミズム的な考えが両国に芽生え、“妖精”“妖怪”といった、似たような存

在が発生した、と考えた。

VI. 終わりに アイルランドは、旅先とは思えないほどに落ち着ける地ばかりでした。最初から最後まで計画通りに

いかない慌ただしくまた計画不足が伺える旅でしたが、現地の方々の優しさのおかげで無事帰ってくる

ことができました。研究旅行の中で、豊かな自然・温かい人々・先史時代の遺跡たちに迎えられ、資料

や文献だけでは把握することのできない妖精の息遣いや妖精と寄り添ってきた人々の生活を感じました。

実際に自分の目で遺跡や博物館の資料を見ることができたことは貴重な体験であり今後の卒業論文にも

生かしていけると考えています。

最後になりましたが、今回の旅行奨励制度を利用するにあたりお世話になりました国際文化学部の諸

先生方、関係者の方々に心より感謝しお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

参考文献