圧延設 のブロック化非干渉最適制御システム - hitachiatl rr20 土 5p30 +vp3 atl...

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小特集 圧延設備 圧延設 ∪.D.C.る21.771.237.01ム.3.0る3.0る5:る81.532.2′1 のブロック化非干渉最適制御システム Application of Blocked Non-lnteracting OptionalControltothe Ro=ng Mill 鉄鋼圧延制御システムに対するニーズとして多様化への対応と,いっそうの 高性能化が強く望まれている。この要求にこたえるため,現代制御理論に基づ く新制御技術の開発を進めているが,今回,その一つとしてブロック化非干渉 最適制御方式を開発した。本方式によれば,制御対象を複数のブロックに分割 し,分割された個々のブロックに対して最適制御を行うため,ブロックごとに 最適制御を並列処理できる。そのため,多変数最適制御を制御対象の規模によ らず高速で実行することが可能となる。 ブロック化非干渉最適制御方式を,コールドタンデム圧延機の根厚制御に適 用した場合についてシミュレーションを行い,本方式を用いた場合,根厚精度 を現状の±0.8%から半分の±0.4%にでき,優れた制御性能が得られることを 確認した。 鉄鋼圧延プロセスは大規模かつ複雑な系であるため,制御 技術の高度化に伴い従来から制御用コンピュータを導入し, ディジタル制御を行っている。近年,鉄鋼生産の量から質へ の転換に伴い,栃村の圧延を例にとっても,同一圧延システ ムで取り扱う材料の寸法はもとより,材質や種類も極めて多 くなl),しかも製品精度に対するニーズも更に厳しいものに なってきている。このように多様化,高度化するニーズを背 景として,制御技術に関しても古典制御理論に基づく従来の 制御方式では要求性能を満たすことが困難となI),新しい制 御方式が必要となっている。 このような背景から,圧延プロセスの制御に最適制御・適 応制御・ファジィ制御などの現代制御理論に基づく新制御技 術を適用すべく開発を進めている。 ここでは,これらの技術の中で最適制御を適用した例とし てコールドタンデム圧延機の板厚制御にスポットを当て,対 象プロセス,従来制御方式,新制御方式及びそれらのシミュ レーション結果について述べる。 対象プロセス 圧延は図1のように複数のロールから構成される圧延機ス タンド間を鋼材を通すことによって行われる。スタンドのロ ールギャップ(圧下位置により決定される。)及びロール速度は, 鋼材がスタンド出側で目標の根厚,張力となるようにそれぞ れ庄下制御装置,速度制御装置によって制御される。 タンデム圧延機は,2スタンド以上が連続配置された圧延 機である。図2に4スタンドコールドタンデム圧延機の一例 を示す。タンデム圧延機では,スタンド間張力を介して各ス ーハリ T 「-■● 荷重計 P▲ 斉藤 裕* 服部 菅* 片山恭紀** 諸岡泰男** / y〟由良〟 ふz才J∂ 滋わぶゐg 月α′わわ 1匂ぶ㍑乃0γJ&z吻叩椚α ‡七s〝0 肋γPOカα 板厚計 張力計 V月 Sp 圧下制御装置 注:略語説明 占:ロールギャップ 〟:人側板厚 ん:出側板厚 7ソ:前方張力 r占:後方張力 速度制御装置 レb Ⅴ月:ロール速度 P:圧延荷重 5p:ロールギャップ指令 Vp:ロール速度指令 図l圧延プロセス 圧延は,複数のロールから構成されるスタンド で,ロール間を鋼材を通すことによって行われる。 日立製作析大みか工場 **日,‾i)二製作所日_在研究所 95

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Page 1: 圧延設 のブロック化非干渉最適制御システム - HitachiATL rr20 土 5p30 +Vp3 ATL 十 (張力制御) (板厚制御) Vp30 十' Tr30 + Sp加 十 +t/p4 速度モニタ

小特集 圧延設備

圧延設

∪.D.C.る21.771.237.01ム.3.0る3.0る5:る81.532.2′135′1る4.2

のブロック化非干渉最適制御システムApplication of Blocked Non-lnteracting OptionalControltothe Ro=ng Mill

鉄鋼圧延制御システムに対するニーズとして多様化への対応と,いっそうの

高性能化が強く望まれている。この要求にこたえるため,現代制御理論に基づ

く新制御技術の開発を進めているが,今回,その一つとしてブロック化非干渉

最適制御方式を開発した。本方式によれば,制御対象を複数のブロックに分割

し,分割された個々のブロックに対して最適制御を行うため,ブロックごとに

最適制御を並列処理できる。そのため,多変数最適制御を制御対象の規模によ

らず高速で実行することが可能となる。

ブロック化非干渉最適制御方式を,コールドタンデム圧延機の根厚制御に適

用した場合についてシミュレーションを行い,本方式を用いた場合,根厚精度

を現状の±0.8%から半分の±0.4%にでき,優れた制御性能が得られることを

確認した。

口 緒 言

鉄鋼圧延プロセスは大規模かつ複雑な系であるため,制御

技術の高度化に伴い従来から制御用コンピュータを導入し,

ディジタル制御を行っている。近年,鉄鋼生産の量から質へ

の転換に伴い,栃村の圧延を例にとっても,同一圧延システ

ムで取り扱う材料の寸法はもとより,材質や種類も極めて多

くなl),しかも製品精度に対するニーズも更に厳しいものに

なってきている。このように多様化,高度化するニーズを背

景として,制御技術に関しても古典制御理論に基づく従来の

制御方式では要求性能を満たすことが困難となI),新しい制

御方式が必要となっている。

このような背景から,圧延プロセスの制御に最適制御・適

応制御・ファジィ制御などの現代制御理論に基づく新制御技

術を適用すべく開発を進めている。

ここでは,これらの技術の中で最適制御を適用した例とし

てコールドタンデム圧延機の板厚制御にスポットを当て,対

象プロセス,従来制御方式,新制御方式及びそれらのシミュ

レーション結果について述べる。

ヨ 対象プロセス

圧延は図1のように複数のロールから構成される圧延機ス

タンド間を鋼材を通すことによって行われる。スタンドのロ

ールギャップ(圧下位置により決定される。)及びロール速度は,

鋼材がスタンド出側で目標の根厚,張力となるようにそれぞ

れ庄下制御装置,速度制御装置によって制御される。

タンデム圧延機は,2スタンド以上が連続配置された圧延

機である。図2に4スタンドコールドタンデム圧延機の一例

を示す。タンデム圧延機では,スタンド間張力を介して各ス

ーハリ

T

「-■●

荷重計

旦P▲

斉藤 裕*

服部 菅*

片山恭紀**

諸岡泰男**

ドンタス

/

y〟由良〟 ふz才J∂

滋わぶゐg 月α′わわ

1匂ぶ㍑乃0γJ&z吻叩椚α

‡七s〝0 肋γPOカα

板厚計

張力計

V月

Sp

圧下制御装置

注:略語説明 占:ロールギャップ

〟:人側板厚

ん:出側板厚

7ソ:前方張力

r占:後方張力

速度制御装置

レb

Ⅴ月:ロール速度

P:圧延荷重

5p:ロールギャップ指令

Vp:ロール速度指令

図l圧延プロセス 圧延は,複数のロールから構成されるスタンド

で,ロール間を鋼材を通すことによって行われる。

日立製作析大みか工場 **日,‾i)二製作所日_在研究所

95

Page 2: 圧延設 のブロック化非干渉最適制御システム - HitachiATL rr20 土 5p30 +Vp3 ATL 十 (張力制御) (板厚制御) Vp30 十' Tr30 + Sp加 十 +t/p4 速度モニタ

654 日立評論 VOし.70 No.6(1988-6)

\\\ 二

ブライドルロール

人側

設備

No.3スタンド

No.2スタンド

No.1スタンド

No,4スタンド

デフレククロール

テンションリール

側 三/し

6又備

図2 4スタンドコールドタンデム圧延機概略図 タンデム圧延機は,複数のスタンドを連続的に並べたもので,鋼材は各スタンド

を通過することによって連続的に圧延される。

タンドの圧延現象が相互に干渉し合うため,仝スタンドをま

とめて一つの圧延現象として考える必要がある。

圧延現象は多入力,多出力の非線形現象であるため,圧延

制御システムは従来から非線形性を考慮して大まかな動作点

を決定するセットアップ系と,その動作点の周りで近似モデ

ルを用いてきめ細かい制御をするDDC(Direct Digital

Control)系から構成されている。セットアップ系は圧延現象

を記述する圧延モデルを用い,圧延荷重,圧下量,電動機動

力などの制約条件を考慮して生産スケジュールに基づき所定

の製品を得るためのロールギャッ70,ロール速度を決定する。

これに対し,DDC系は上記セットアップ系により決定された

動作点を中心に,外乱などに起因する制御偏差を実績値に基

づいてフィードバック制御などにより補償する。このDDC系で

は数ヘルツの周波数で変化する板厚変動を数マイクロメート

ル以下に制御する必要があー),従来からAGC(Automatic

GaugeControl:自動板犀利御)が行われていた。以下,この

DDC系での制御方式について述べる。

囚 徒来制御方式の問題点

図3に示すように,従来,板厚制御には圧延荷重からロー

ル直下の板厚変動を推定し制御を行うゲージメータAGC,ス

タンド出側板厚計によって検出される出側板厚変動をもとに

フィードバック制御を行うモニタAGC,人側根厚計により検

出される人側板厚変動を追跡し,ロール直下を通過する時点

でフィードフォワード制御を行うFF AGCがある。また,ス

タンド間張力を制御する手段としてATL(Automatic Ten-

sionLimit:張力制限制御)がある。板厚制御は,圧延荷重及びスタンド間張力を変化させるこ

96

とによって行われる。例えば,ゲージメータAGCでは,板厚

変動を荷重変動を用いて推定し,ロールギャップを変えて圧

延荷重を変化させ板厚を制御している。ところが,圧延荷重

が変化すると板に働くスタンド間張力も変動し,張力変動に

よる板厚変動が発生するため,板犀利御の効果が半減してし

まう。このように圧延現象は,圧延荷重,張力,板厚などが

複雑に干渉し合う系であるにもかかわらず,従来制御は,1入

力1出力の制御系を組み合わせたものであり,制御性能の向

上には限界があった。

このため多変数最適制御の適用が検討されていたが,タン

デム圧延機ではスタンド間張力を介して,各スタンドの圧延

現象が相互に干渉し合うため扱う状態変数が多く,10ms程度

の実時間に制御を行うことは極めて困簸であった。

8 新制御方式

従来の問題点を解決し,更に経済性と即応性,安定性を向

上させ制御性能の極限を実現するため,新制御方式としてブ

ロック化非干渉最適制御方式を開発した。図4に制御構成の

概要を示す。本制御構成には次のような特徴がある。

(1)ブロック化非干渉制御を行い,各スタンドをブロック化

し独立して扱う。

(2)ブロック化したスタンドごとに最適制御を行う。

(3)最適制御を高速に実行するため,スタンドごとに専用の

小規模なべクトル演算器を用い,並列処理を行う。

以上の結果,各スタンドごとに処理を並列化でき,演算時

間を大幅に短縮できるため従来困難であったコールドタンデ

ム圧延機の板厚制御への最適制御の適用が可能となった。以

下,その詳細について述べる。

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No.1スタンド

L/CPl

No,2スタンド

L/C

仙3スタンド

L/C

圧延設備のブロック化非干渉最適制御システム 655

No.4スタンド

+/C

5p2 5p3

+5p3-ト

5p4

+Sp4十

+Spl

タC

G

モA

トトAGC

5plO

「■一

VplO rTlO ざp21

十 +Vp2

Tp20

ATL

rr20

5p30

+Vp3

ATL

(張力制御)

(板厚制御)

Vp30

十'

Tr30

Sp加

十 +t/p4

速度モニタ

AGC

‾‾‾「,

-

-

竺竺+

セ ッ ト ア ッ プ 系

生産管理システム

注:略語説明 SD(圧下制御装置),ASR(速度制御装置),仇仙1スタンド人側板厚),山(No.~スタンド出側板厚),Pi(No.gスタンド圧延荷重)rJi(No.よスタンド出側張力),V月f(No.∫スタンド速度),5pi(No,よスタンド圧下位置指令),Vpi(No.よスタンドロール速度指令)5p川,ん叫仇0,Vpi。,r川はそれぞれセットアップ低ATL(AutomaticTens■0nJim】t:張力制限制御),AGC(AutomaticGa=ge

Control:自動板厚制御)

図3 コールドタンデム圧延機の従来の圧延制御 生産スケジュールに基づき,圧延スケジュールを決定するセッ

トアップ系,圧延スケジュールに基づき板厚,張力制御を行うDDC系から構成される。

No.2スタンド

L/C+f)2

No.3スタンド

+/C+f〕3

No.4スタンド

+/C+P4

+r/1

ASR +VRl

SD

+T/2

ASR +Ⅴ月2

SD

+丁'J3

ASR +Ⅴ兄3

SD

+r/4

ASR +V月4

+Spl +l/pl +上ごp2 +Vp2 +Sp3 +l/p3 +Jp4 』Vp4

ブ ロ ッ ク 化 非 干 渉 制 御 系(VPU)

「1--●●+

2スタンド

最適制御系

(VP〕)

3スタンド

最適制御系

(VP〕)

4スタンド

最適制御系

(VP〕)

「一

-●■■+

並列処理

注:略語説明

VPU(Vector Prooessor Unit:

ベクトル演算器)+Pi(No.Jスタンド圧延荷重偏差)+5pi(No.∠スタンドロールギャッ71旨令)

+んi(No.fスタンド出側板厚偏差)+Vpl(No-gスタンドロール速度指令)

+rJi(No.よスタンド出側張力偏差)』V虎t(No.iスタンドロール速度偏差)

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656 日立評論 〉0+.70 No.6(1988-6)

4.1プロセスモデル

圧延機の制御モデルは,前述のセットアップ系から与えら

れる動作点の周りで線形化することにより次に示すような状

態方程式として求まる。

昔=A・X+8・∪…・・ここで,X=〔ズ1,X2,X3,ズ。〕1

A=

All一句12 0 0

A21A22A23 0

0 A32A33A34

0 0 A43A44

U二〔ul,∪2,U3,∪4〕r

B=

ズ才=〔』ん才,』P乙』1/1桁,』抑〕1

∠肋才:出側板厚偏差

』朽:圧延荷重偏差

』lノブ古:ロール速度偏差

』7苅:出側張力偏差

イ1)

8110 0 0

0 822 0 0

0 0 B33 0

0 0 0 B44

∪オ=〔』J勃才,』l勿オ〕T

』5妙オ:ロールギャップ指令値

』略言:ロール速度指令値

(なお,添字オはぎスタンドを意味する。)

Aか∈R4×4,8オブ∈R4×2

(1)式の状態方程式で明らかなように,4スタンドタンデム

圧延機の場合でも状態変数としては16個あり,リアルタイム

(10ms程度)で圧延機全体を最適制御することは困難である。

本解決策として,(1)式をスタンドごとにブロック化して分割

し,各スタンド単位に最適制御が行えるブロック化非干渉制

御を開発した。

4.2 ブロック化非干渉制御

図5にブロック化非干渉制御の概略を示す。前述の(1)式の

中でAむ(才≠ノ)の項は,ノブロックの状態がオブロックの状態に

与える影響項である。ブロック化非干渉制御では状態の物理

的な意味を変えずに,この干渉による状態変化を打ち消すよ

うにフィードバック補償要素D・Xを加える。本補償要素を加

えることによって,~ブロックのこ状態方程式は以下のように変

形される。

晋=Aオ才・ズ汁似X什B才g・∪汁8オブ・DかXノ・‥イ2)(2)式で,

Aむ+B才オ・D乙7=0…‥‥‥・ …(3)が成立するようにDむを決定すれば,タブロックの状態に対する

ノブロックの影響は除去され,各ブロック(スタンド)ごとの状

態方程式に分割される。

4.3 ブロック内最適制御

ブロック化非干渉制御によりタンデム圧延機はスタンド単

位に制御でき,最適制御もスタンドごとに並列処理が可能と

なった。ブロック化非干渉制御によりダスタンドの状態方程式

は(4)式のようになる。

晋=A才才・X汁8宮川オ・また,評価関数として(5)式を定義する。

Jオ=仔〔xオT・Q・X才十リオr・R・∪才〕諺…

ただし,Q∈R4×4,R∈R2×2は重み行列である。

98

・(4)

イ5)

月Il

Ul

U2

β12

1スタンド

圧延現象

A12

β21

月22

A21

2スタンド

圧延現象

ズ1

ズ2

注:略語説明

g`〔よスタンド状態ベクトル(=[』んi,』れ』Ⅴ別,』Tノ.]T)〕肌〔よスタンド操作量(=[』5恥』Vp▲]r)〕Aり∈R4×4,月日∈月2×2

図5 ブロック化非干渉制御 スタンド間の干渉は,操作量にブロ

ック化非干渉制御出力D・ズを加えることにより除去できる。

(5)式を最小にする操作量リオは,最適レギュレータ理論から

次式で与えられる。

∪才=-R‾1・Bオブr・P才・Xわ‥‥…‥‥・‥…・(6)

ただし,P才∈R4x4は,(7)式のリカソテ方程式を満足する実

対称正走値解である。

A才才T・Pオ+P才・A才才一Pオ・B宮古・R‾1・Bgグ・P才

+Cオr・Q・Cオ=0…・ ・‥…(7)制御ゲイン行列K∈R2×4は(6)式から次式となる。

K=一R‾1・BオオT・Pオ…‥‥‥ =・…・イ8)

(5)式の重み行列を適切に選択することによって,設計目標

を満足する制御ゲインを得ることができる。

図6にブロック化非干渉最適制御方式のシステム構成を示

す。制御ゲイン演算はセットアップ系計算機,例えばHIDIC V

90,でパススケジュールごとに実施する。ブロック化非干渉最適

制御はDDC系のPLC(Plant Controller),例えばHISEC-04M

とVPU(Vector Processor Unit:ベクトル演算器)で演算を

並列処理することによって,制御周期10msで実現している。

b シミュレーション結果及びその検討

今回開発した制御システムの性能評価のためにシミュレー

ションを行った。シミュレーションの対象は4スタンドタン

デム圧延機とした。圧延機各スタンドの庄下制御装置及び速

度制御装置を一次遅れ系で近似し,一次遅れの時定数は仝ス

タンドそれぞれ20ms,100msとした。外乱としてNo.1スタ

ンドの人側板厚変動に60ドm(p-p値),2Hzグ)正弦波1サイク

ルだけを加えた。

図7は根厚制御をかけない場合(自然減衰)で,最終スタン

ドの出側板厚偏差が,11.叫m(p-p値)となることを示す。図8

は従来制御系を用いた場合で,最終スタンド出側根厚偏差が

6.1卜mとなることを示す。これに対し,ブロック化非干渉最

適制御を加えたのが図9である。この場合,最終スタンド出

側根厚偏差は1.9トunとなり,従来制御と比較して制御偏差は

約÷となった。

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圧延設備のブロック化非干渉最適制御システム 657

パススケジュール

H旧IC V90 パススケジュール(セッ

ズ=Aズ+月U

リズ(丘+1)=Aズ(丘)十月び(り

状態方程式作成・離散倍化

最適ゲインF〃を求める。

最適ゲイン演算

「-■■-:■一---

トアップ系)

圧延スケジュール

「■-■---】-■一■-■-一■●●+

「--■-一

t叩

ごとに処理

(10s)

非干渉ゲイン

βiiを求める。

非干;歩ゲイン演算

A=,一臥i 仇i

速度附こ対して補間処理により,Fii,Aif,月H,仇上の値を演算する。

補間処理

Fパ

Uf=Fり・gi

(VPU)

最適制御(10ms)

l

+班堅L

Ui

O4M

/\

ズi

U上

Aii,βii

板厚+んJを推定

ズi一方f

(VP])

オブザーバー

ズi

U仇

仇i

U仇=仇iズf

(VP〕)

非干渉制御(5ms)

十 打仇

+5p

圧 下 制 御

+Vp

ロール速度制御

l+聖旦型_+

ズi

状態量

注:略語説明

U仇〔gスタンド非干潮欄出力(g=卜4)〕

Ui(gスタンド最適制御出力)

ズi(ズiの推定値)

図6 ブロック化非干渉最適制御システム構成 最適ゲイン,非干渉ゲイン演算はセットアップ系,最適制御,非干渉制御はDDC系で行って

いる。

のL

N【

¢

m

O

m-

¢-

功1

NL-の「-

(∈ユ)稚嘩峰山彗零召+八仇K寸・〇Z■寸

の×

(⊆ユ)稚嘩世塵二辱甲+∴吼ぺMdZ.m

寸+

のr

N「

¢

叩-

の-

の-

NL-の【-

のr

Nr

00

m

O

M-

¢-

(∈ユ)棚準蝉蜜コ牢召+入札ぺNdZ.N

M

の-

N「-

の「-

ON

爪ご

N〔

寸-

∞-

(∈ュ)咄喋蜂蜜蚕ヨ一+八竹代;Zご

Nr-

竺-

ON-

Om

寸N

のr

N「

∽-

Nr-

(∈1)稚些世塵安中

のの「

∞「-

寸N-○の-

母材板厚偏差

No.2スタンド出側板厚偏差

No.4スタ ンド出側板厚偏差

=L

No.3スタンド出側板厚偏差

No.1スタンド出側板厚偏差

0505200∩)0 0.75 1.00 1.25 1.50

時 間(s)

注:母材栃原偏差(No_1スタンド

人側板厚偏差)

図7 板厚制御なLの場合

の出側板厚偏差(自然減衰)母材板厚偏差60いmが4スタ

1・75 2・00 2・25 2・50ンドの自然減衰でIl.1仰にな

ることが分かる。

99

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658 日立評論 VO+.70 No.6(1988-6)

N

(∈ユ)

咄準世蜜蚕声+八仏ぺ寸.〇Z

■寸

の-

(1⊃

l

N「-

のL-

の「

N「

m

O

M-

(∈ユ)咄喋世蜜「雫召+八仇K寸.〇Z

¢-■寸

¢-N【-

のL-

(∈ま)

(∈ヱ

N

O

M-

咄準鍵盤蚕召+八仏K門口Z

(Y)(⊂)

l

+ の

l

Nr-

のr-

N「

m

O

m-

(∈土)棚撃世心彗宰召+入吼KM.〇Z

の-■叩

①-

NL-

のr-

N

のー

咄準畔此育蚕ヨ+八仇ぺN.〇Z

り-

.N

(Y)

勺 ロ〉

-

N「-

の「-

N「

M

O

m-

(∈ュ)咄煙世潜コ革召+八仇ぺN.〇Z

∽-.N

M

⑦-

N「-

の「-

⊂)

N

く⊂〉

N「

(∈ュ)

寸-

雌蝶蜂蜜コ撃召+八吼K「呈ご

00ー

N

N【-

爪ご-

ON-

ON

N「

寸-(∈ま)咄準錬磨二率召+八仇KrdZ

∞-

N「-

爪ごー

ON-

L

N

O

⊂)

m

N

∞L

(∈ユ)

N「

岨-

N「-

咄煙蜂蜜‡中

の∞「

∞L-

寸N-

○の-

母材板厚偏差

No.2スタンド出側板厚偏差

No.4スタンド出側板厚偏差

6.=lm

No.3スタンド出側板厚偏差

No.1スタンド出側板厚偏差

520000

OM

寸N

の「

Nr

①-

(∈1)咄準蜂蜜‡申

£r

ーNr

▼・・・・-

l

O竺l

寸N

l

⊂⊃

いつ

0.50 0.75 1.00

母材板厚偏差

1.25 1.50 1.75 2.00 2.25 2.50

時 間(s)

No.2スタンド出側板厚偏差

No.4スタンド出側板厚偏差

1.9トm

No.3スタンド出側板厚偏差

No.1スタンド出側板厚偏差

0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 2.00 2_25 2.50

時 間(s)

8 結 言

以上,圧延プロセス制御の新技術の一つとして,ブロック

化非干渉最適制御方式についてその概要,及びタンデム圧延

機に適用した例を紹介した。シミュレーションによって本制

御方式は従来制御に比べで性能が優れており,現状の平均的

板厚精度±0.8%を半分の±0.4%とできることを確認した。

本制御方式によれば,制御対象の規模に合わせてベクトル演

算器を用意することによって最適制御が可能となることから

柔軟な制御システムが構成できる。

100

図8 従来制御を適用した

場合の出側板厚偏差 従

来制御によれば,No.1スタン

ド出側板厚偏差は改善されて

いるものの,スタンド間の干

渉により中間スタンド(No.2,

No.3スタンド)で板厚変動が発

生L,波形が乱れていること

が分かる。

図9 ブロック化非干渉最

適制御系を適用した場合の

出側板厚偏差 スタンド間

非干渉制御によって,干渉に

よる板厚変動が発生していな

いことが分かる。

今後は本制御システムを更に広い分野に適用していくとと

もに,適応制御,ファジィ制御などの現代制御理論を圧延プ

ロセス制御に適用し,より高性能な制御システムを構築して

いく考えである。

参考文献

1)片山外:圧延制御用ブロック化非干渉最適制御方式の開発,

第30回自動制御連合講演会,3059(1987)

2)服部,外:圧延制御用ブロック化非干渉最適制御方式の開発,

第30回自動制御連合論横合,3060(1987)