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Page 1: タイ地方自治研究の10年: 定性的研究と ... - 京都大学 · タイ地方自治研究の10年: 定性的研究と定量的研究 治学 第56回東南 アジアの社会と文化研究会

2012/8/1

1

タイ地方自治研究の10年:

定性的研究と定量的研究

第56回「東南アジアの社会と文化研究会」

2012年7月27日(金)

話題提供者: 永井史男(大阪市立大学大学院法学研究科・教授)

1

今日の話題

タイの地方自治・地方分権をどう分析すればよいか?

意味のある問いの設定とは何か?

定性的研究と定量的研究との関係は?

タイだけでなくフィリピンやインドネシアの自治体を対象とした大規模調査の意義と問題点

(ここまで行くかどうかわかりませんが)政治学と地域研究との関係

2

研究の来歴1

1990年~ 19世紀タイ近代政治外交史の研究に着手

1994~95年 タマサート大学政治学部

1995~97年 東南アジア研究センター

1997~99年 タイ国の住民登録制度形成の研究に従事

1997年10月~ 大阪市立大学法学部に異動

1999年~2003年 アジア経済研究所でAPEC/EVSL及びFTA政策の共同研究

3

研究の来歴2

2000年4月~7月 タイ地方行政能力向上プロジェ

クトの総合計画策定に従事するため、タイ内務省地方行政局にJICA短期専門家として派遣

2000年4月~2001年3月 JICA国際協力総合研修所(JICA

研究所の前身)で「地方行政と地方分権」研究会(タイ、フィリピン、インドネシア、日本:行財政)

2000年8月~2002年8月 「タイ地方行政能力向上のための日タイ共同研究会」(日本から6名、タイから6名の研究者参集。4分野についての政策提言。自治体間協力が採択課題となり、現在まで3フェーズに及ぶプロジェクトに発展)

4

研究の来歴3

2002年8月~11月 タイ北部ラムパーン県で地方政治構造の変容に関して調査研究(日本財団APIフェローシップ) 2003年、フィリピン、インドネシアで地方自治体調査実施

2004年~2005年 英国滞在

2006年6月~7月 日本貿易振興機構アジア経済研究所の海外委託研究で、タイ地方自治体を対象としてエリート・サーヴェイ実施(郵送法、35%の回収率)。

2009年4月 科学研究基盤研究A(海外学術)「東南アジア地方自治サーヴェイ調査: タイ、インドネシア、フィリピンの比較」(~2013年3月) 2012年3月 フィリピンとインドネシアでの調査票回収作業終了。フィリピンでは300自治体を対象に回収率99%、インドネシアでもジャワ島だけで官房長官からの回収率91%。

5

タイの地方自治と地方分権

何が、どう変わったのか?

1994年以前のタイの地方制度

1990年代以降の地方分権

2000年代半ば以降のタイ地方(自治)制度

6

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タイの地方自治制度1: 1994年以前

国家行政: 中央行政ー地方行政(県・郡)ー地方自治 地方自治に対する県知事・郡長の管理監督 郡のもとには行政区(タムボン)、村: 行政区長や村長は住民から選ばれる地方名望家

1994年以前は都市部中心、中央政府の後見的色彩が濃厚 ◎バンコク都: 1986年から都知事公選制。

○フルセットの基礎自治体(テーサバーン): 都市部にのみ設置(約150カ所)。インフラ整備、小中学校、保健所、所得増進(生業支援)

△準自治体としての衛生区: テーサバーンに次ぐ準都市部に設置(約980カ所)。カムナン、郡長が委員長、あるいは顧問。

△県自治体: 県議会議員は住民直接選挙。しかし、県自治体長は内務官僚である県知事が兼任。

地方財政比率は、歳出ベースで10%弱。

7

タイの地方分権

1992年5月流血事件 → 9月の総選挙で民主化・地方分権化が焦点(県知事公選制、村長の5年選挙制、県自治体長の民選化、タムボンの法人化・自治体化)

1994年3月 タムボン評議会及びタムボン自治体法

1997年タイ王国憲法 → 地方分権の推進(第78条)、第9章地方自治

1999年: 地方分権推進法(2000年に地方分権委員会設置)、地方自治体関連法の改正・新規採択

2001年: (第一次)地方分権計画実施(5年間)

2003年: 自治体首長直接公選の導入

2006年9月19日 クーデタ、タックシン政権崩壊

8

タイの地方自治制度(1995年3月時点)

9

【出典】:永井「地方分権改革:「合理化なき近代化」の帰結」玉田・船津編『タイの政治・行政の変革-1991-2006年』アジア経済研究所、2008年.

1995年~97年: 急速なタムボンの法人化・自治体化(タムボン自治体設置

1997年憲法第9章「地方自治」(1)

内容 法律の新規策定または改訂

第282条 住民自治、団体自治の原則

第283条 必要最小限の管理監督

第284条 地方分権計画及び手続きの法策定

1999年地方分権計画及び手続き規程法(地方分権推進法)

第285条 首長及び議長は住民の選挙に基づく。

地方選挙法

① 1999年衛生区をテーサバーンに格上げする法律、

② 1994年タムボン自治体法改正、

③ 1999年パッタヤー特別市行政組織法、

④ cf.1997年県自治体法

10

1997年憲法第9章「地方自治」(2)

第286条 自治体首長および地方議員のリコール

1999年地方議員または自治体執行委員を免職させるための投票法

第287条 条例制定の請求 1999年地方自治体条例提案署名法

第288条 地方自治体職員人事委員会の設置

1999年地方自治体人事行政法

第289条 地方の文化、叡智の保全、教育

第290条 天然資源環境の保全

11

第一次地方分権計画の権限移譲の中身

部門 内訳 関係省・局の数(注1)

修了

未着手

1 インフラ関連 交通・運輸、公共事業、公共施設、都市計画、建物管理など

87業務

7省17局

71 16

2 生活の質向上促進関連

生業振興、社会保障関連業務、スポーツ振興、教育、公衆衛生、スラム改善・居住地整備など

103業務

7省26局

69 34

3 共同体・社会の秩序と安全関連

民主主義・平等・自由権促進、地域開発への住民参加促進、災害予防軽減、生命・財産の秩序・安全維持など

17業務

6省9局

9 8

4 計画策定、投資奨励、商業・観光関連

計画策定、技術開発、投資奨励、商業、工業開発、観光など

19業務

4省9局

14 5

5 天然資源・環境保護関連

天然資源保護・森林育成保護、環境・公害管理、公共の場所の管理保護など

17業務

4省9局

15 1

(注2)

6 芸術文化、伝統習慣、地方の叡智関連

考古学的移籍、遺物、国立博物館の保護・管理・維持など

2業務

1省1局

2 -

12 【出典】:永井「地方分権改革」2008年。

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タイ地方自治体の職員・雇員数(2006年頃)

13

【出典】永井史男「タイの地方自治」船津・永井編『変わりゆく東南アジアの地方自治』アジア経済研究所、2012年2月、p.115.

タイの地方制度(2002年10月以降:2006年頃)

14

財政分権の状況

2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度

自治体自己徴税歳入

17,701.88 21,084.47 22,258.28 24,786.27 27,018.96 29,110.41

11.1% 12.0% 12.1% 10.2% 9.6% 8.9%

地方税 55,651.90 58,143.52 60,217.71 82,623.37 95,370.34 110,189.59

34.8% 33.1% 32.7% 34.1% 33.8% 33.7%

分与税 12,669.00 19,349.00 35,504.44 43,100.00 49,000.00 61,800.00

7.9% 11.0% 19.3% 17.8% 17.4% 18.9%

補助金 73,729.80 77,273.30 66,085.56 91,438.00 110,610.70 126,013.00

46.2% 43.9% 35.9% 37.8% 39.2% 38.5%

合計(A) 159,752.58 175,850.29 184,065.99 241,947.64 282,000.00 327,113.00

国家歳入(B) 772,574.00 803,651.00 829,495.56 1,063,600.00 1,200,000.00 1,360,000.00

%(100×A/B) 20.68% 21.88% 22.19% 22.75% 23.50% 24.05%

15

【出典】:永井史男「地方分権改革:「合理化なき近代化」の帰結」玉田・船津編『タイの政治・行政の変革-1991-2006年』アジア経済研究所、2008

年.

まとめ: タイの地方自治・地方分権の特徴

1990年代半ば以降、地方分権が漸進的に行われてきた(インドネシアと対照的)

(バンコク都を例外として)地方自治体の数がきわめて多く、規模が小さい(フランスに近く、日本やスウェーデン、インドネシアと違う)。

地方分権にもかかわらず、教育・公衆衛生の重要な対人社会サービスが移譲されず。→ 移譲されたのはインフラ整備や所得増進などのこまごまとした業務。

従って、財政分権もほとんど進まず、地方財政比率は25%で足踏み。人の移譲も2003年、2004年の約4500人以外に行われていない。

依然として中央行政・地方行政の管理監督が強い。

自治体財政の自律性が低い。地方財政の中央依存、自由度が減少。特定補助金の費目増大、高齢者手当を使途が決まっている一般補助金に参入。

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先行研究の特徴と問題点

1. 自治体の種類ごとの権限・義務の記述 ← 地方自治を一つのまとまった制度として議論しない(例:タイ人研究者の研究(Kowit; Thanet etc)、橋本卓氏の研究(1999年))

2. 地方行政(県知事、郡長、カムナン、村長)との関係を視野に入れず、自治体分析だけで閉じる傾向。

3. フォーマルな(公式の)制度を問題にしない研究。汚職や影響力者ばかりを問題にする研究(特に西洋人の研究に多い)。

4. 地方自治や地方分権、地方政治の動態的な側面を視野に入れず、静態的な研究が多い。

5. 客観的・統計的分析に依拠せず、印象的・個別的分析に終始。

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新制度論によるタムボン自治体創設の設置

新制度論: 「制度」がゲームのルールを提供し、政治的アクターが自らの利益を最大化させるために合理的な行動をとるという前提

問1: なぜタムボン自治体が創設されることになったのか?( 永井史男「タイの民主化と地方分権化-タムボン自治体創設の制度論的説明-」玉田・木村編『民主化とナショナリズムの現地点』ミネルヴァ書房、2006年、pp. 103-124. )

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政治アクターの利益

カムナン・村長: 準都市部に衛生区が設置されているように、農村部にも自分たちで開発計画を立て、契約を締結し予算執行ができる法人格をもった自治体を運営したい。

国会議員: 票の取りまとめ人であるカムナンや村長の支持を引きとめたい。

内務省: 県知事任命制の維持、後見的形態が維持できるのであれば、衛生区的な自治体運営に強く反対しない。カムナン・村長制度の維持は死守したい。

19

制度、利益、アクター

2006年以降、タムボン自治体からテーサバーン(タムボン)への格上げ事例が増えている。

タムボン自治体 議員定数: タムボン内の村の数×2

平均人口: 6000人~7000人。

議員数の平均: 約23人

テーサバーン 議員定数: 人口規模に応じて、12、18、24人

なぜ議員数の低下を伴うにもかかわらず、テーサバーンへの格上げ事例が増えるのか?

20

ケース

ウボンラーチャターニー県のカームヤイ・タムボン自治体の格上げ事例( 永井史男「政党、選挙、地方政治:タイ国の地方分権化を事例に」高橋伸夫、竹中千春、山本信人編『現代アジア研究 2 市民社会』慶応義塾大学出版会、2008年)

村の数が21(議員数42) → 格上げすると42の議員定数が12に減少。タムボン自治体内が格上げ賛成派と反対派に分かれ、一度は議会内で否決された。→ しかし、賛成派の首長候補者が当選すると、一気に格上げへ。なぜか?

21

制度的要因

タムボン自治体の首長直接公選制の導入: 2003年末のタムボン自治体法改正により、首長は議員の互選でなく、住民直接選挙に変更 → 首長候補者は直接住民に支持を訴える。

テーサバーンとタムボン自治体の一般補助金額の大きな違い: 格上げによって自治体予算が大幅に増えることが期待

カムナン・村長の支持: テーサバーン・タムボンに格上げになっても、カムナン・村長制度は引き続き維持

プラチャーコム(公聴会)での住民の支持

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制度の重要性

公式の制度の重要性 → 行財政制度の中に(地方)政治家のインセンティブ構造が埋め込まれている。 → 地方自治を全体的な一つの制度として、また地方行政との関連とのつながりの中で理解することの重要性。

動態的研究の重要性: なぜ変化が生じたのか? ← 法制度の変化によって、インセンティブ構造が変わり、政治家の動機付けが変わった。

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自治体エリート・サーヴェイ調査

アジア経済研究所が2006年6月、7月にタイ国タマサート大学政治学部にタイの地方自治体(但し、バンコク都とパッタヤー特別市は除く)に対し、郵送法による悉皆調査を委託(船津鶴代編『タイ地方自治体調査の集計表』アジア経済研究所、2008年)。

方法: 自治体の首長及び助役に対して質問文を送り、それに対して回答を送り返してもらう。

質問票の策定: 2005年9月~2006年3月にかけて作成。プレテストを30カ所近くで実施。

研究の意図: 地方自治体は、中央行政、地方行政、あるいは住民などとの接触が多いほど、能力を高め、ひいては自律性も高める。

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質問票の中身

首長版: 首長の認識や行動パターン 首長自身の来歴

地方分権に対する考え方

中央の政治家、官僚、地方行政官、地方政治家、住民との接触パターン

環境問題に対する取り組み

当選の要因

予算獲得行動

助役版: 自治体のハード・データの獲得(予算、社会・経済指標)。部分的には首長版と同一

25

【出典】Fumio Nagai, Nakharin Mektrairat and Tsuruyo Funatsu eds, Local

Government in Thailand ― Analysis of the Local Administrative Organization

Survey―, (Joint Research Program Series No.147) IDE-JETRO, 2008, appendix.

質問票の回収率

PAO Thesaban Tambon

Population

(2006)

75 1156 6624

Respondents

(2006)

25

(33.33%)

408

(35.29%)

2244

(33.88%)

26

【Source】Fumio Nagai, Kazuhiro Kagoya, and Tsuruyo Funatsu, 'Central-Local

Government Relationships in Thailand,' Fumio Nagai, Nakharin Mektrairat and

Tsuruyo Funatsu eds, Local Government in Thailand ― Analysis of the Local

Administrative Organization Survey―, (Joint Research Program Series No.147) IDE-

JETRO, 2008, pp. 1-30. [in English]

自治体エリート・サーヴェイ調査の難しさ(1)

(特にタイの場合)

質問票作成段階: プレテストの少なさ(不適切な質問)

記述式回答項目の多さ(変数処理ができない)

データ入力の際の問題

サンプリングの問題: 予算やアクセスの問題から恣意的に県を選んでいる。ランダム・サンプリングになっていない。

ハード・データの決定的不足(地方行政単位と自治体単位の不一致、財政データの不備、パフォーマンス指数の不足、村落基本データも当てにならない)

27

自治体エリート・サーヴェイ調査の難しさ(2)

(特にタイの場合)

財政データがきちんと整理されていない。

補助金配分システムが十分に整理されていない

社会経済指数も十分に取れない。

⇒ エリート・サーヴェイ調査でできること・わかること

1.エリートの認識と行動パターン

2.探索的に相関関係(因果関係ではない!)を見いだす。

28

思わぬ成果(1)(あまり誉められたものではないが・・・)

29

【出典】Fumio Nagai and Kazuhiro Kagoya, 'Local Innovation in Thailand,'

Anttiroiko, Ari-Veikko, Bailey, Stephen J. & Valkama, Pekka. (eds.) Innovative

Trends in Public Governance in Asia, Amsterdam: IOS Press, 2011, pp. 137-150.

思わぬ成果(2)(あまり誉められたものではないが・・・)

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東南アジア地方自治体サーヴェイ調査-タイ、インドネシア、フィリピンの比較(1)

インドネシア フィリピン タイ

地方分権の契機

1998年スハルト政権崩壊。国家統合を維持するため、大胆な地方分権を2001年実施

1986年エドサ革命でマルコス政権を倒したアキノ政権の看板政策。1991年地方政府法

1992年以降地方分権が重要なイシューに。1997年タイ王国憲法で初めて国家の基本政策として位置付け。1999年地方分権推進法

権限・義務 広域自治体、基礎自治体とも包括的(但し、警察は国)。

保健と社会保障が自治体に。教育と警察は以前として国。

道路・橋梁などインフラ整備と生業推進が主。教育・保健もほとんど分権されず。

首長の選出 2004年以来、二元代表制

1991年以来、二元代表制

2003年末以降、二元代表制(特別自治体を除く)

地方歳出比率 約3割強 約2割 約2割5分

財政調整制度 財政フォーミュラ(2004年法律第35号)

財政フォーミュラ(1991年地方政府法)

地方分権委員会で毎年決定。

31

東南アジア地方自治体サーヴェイ調査-タイ、インドネシア、フィリピンの比較(2)

インドネシア フィリピン タイ

地方分権の特徴

世界銀行からBig

Banアプローチと

称されるほど大胆な分権化。「国家統合の維持のための地方分権」。

マルコス権威主義体制の再来防止。首長は3期連続当選まで。開発評議会やバランガイの重視

漸進的アプローチ。2000年に地方分権計画(第1次)を策定し、権限移譲、人の移譲、財政分権実施(バンコク都除く)。

地方分権・地方自治の問題

2004年に入ってから再中央集権化。

自治体の分裂・増殖に歯止めが効かない。

汚職の蔓延。

住民参加が謳われているが。実施していない自治体も少なくない。

保健医療予算の不足により病院を中央政府に返還するところも。

自治体の受け皿能力強化を十分に考えることなく、学校や保健所の移譲を計画し頓挫。

人の移譲はほとんど進まず。

その他の課題

三層目に位置する村が中途半端。

官僚組織の能力底上げ。 中央政府の出先である県や郡がきわめて強い。

32

東南アジア地方自治体サーヴェイ調査-タイ、インドネシア、フィリピンの比較(3)

フィリピンとインドネシアでは2011年度中に修了。タイは今年中に実施予定。

目的: ローカル・ガバナンスの変容と、自治体の能力を規定する要因の抽出

方法: 調査票による面接・郵送の両方による調査。現地の調査会社に依頼。

フィリピン: 基礎自治体300カ所

インドネシア: ジャワ島内の自治体113カ所

チーム編成の特徴

33

まとめと課題(1)

サーヴェイ調査の意義

地域研究者の発想がきわめて重要。

新しい質的調査へのきっかけに。

異分野研究者の交流の楽しさ。

自治体サーヴェイ調査の難しさ

組織を対象とすることの難しさ。

因果関係でなく、相関関係の探索に留まる。

先進国との比較対象は思った以上に困難。

東南アジア3カ国の比較も簡単ではない。

34

まとめと課題(続き)

問題設定が陳腐だと、あまり意味がない ⇒ Research Question を明確にすることの重要性。

社会経済のハード・データの重要性(cf. 選挙研究についてもあてはまる)。

35

ご清聴ありがとうございました。 * 一部現在進行形の研究が含まれていますので、報告者の許可なく本発表の引用はお断りします。

36