「一般物理学」の序論 -...

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1 教科書の確認:潮秀樹、上村洸「やさしい基礎物理(2) (森北出版) {講義HP 、授業中のPC、プリント、板書と筆写}の長所・短所 HP,PC:便利、きれい、再生は容易、 しかし、速過ぎる、(情報の氾濫の時代ー光と影ー) 「知識、技術は(反復作業を通じて)指先から入る」(ある大学教授) 「手は外部に出た脳である」(哲学者、E.カント) 予習・復習など学習の仕方についてのアドバイス: (1)まずは大まかに捉えるべし (2)きちんと手順を踏んで覚えるべし (3)何度も失敗を繰り返し覚えるべし (池谷裕二「記憶力を強くする」講談社、ブルーバックス、2001. P.139.より) 「一般物理学」の序論 2015/4/13 Filename=一般物理学序論150413A.ppt

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    教科書の確認:潮秀樹、上村洸「やさしい基礎物理(第2版) 」(森北出版)

    {講義HP 、授業中のPC、プリント、板書と筆写}の長所・短所 HP,PC:便利、きれい、再生は容易、 しかし、速過ぎる、(情報の氾濫の時代ー光と影ー)

    「知識、技術は(反復作業を通じて)指先から入る」(ある大学教授) 「手は外部に出た脳である」(哲学者、E.カント)

    予習・復習など学習の仕方についてのアドバイス: (1)まずは大まかに捉えるべし (2)きちんと手順を踏んで覚えるべし (3)何度も失敗を繰り返し覚えるべし (池谷裕二「記憶力を強くする」講談社、ブルーバックス、2001年. P.139.より)

    「一般物理学」の序論

    2015/4/13 Filename=一般物理学序論150413A.ppt

  • 日常の言葉と物理用語の意味の違い ―使用初めから徐々に意味が変化する場合があるー

    空間(space):空っぽの間 時間(time):時[時刻)の間、変化の媒介変数 粒子(particle):小さな粒、空間的局在が 電子(electron),陽子(proton),中性子(neutron), 光子(photon)、 フォノン( 音子、phonon) 真空:ほんとうの空っぽ(空虚),vacuum, empty space。 波動(wave) :振動が空間的に連続的に(非局所的に)伝わるという運動様式

    物理学における基本的言語は数学である

    複雑骨折的な「理解」に要注意!!

    →真意をゆがめることなく、普通の言葉(自然言語)に翻訳できる(される)かどうか!?

    ▲ 氷山の一角

  • 物理現象と物理法則

    物理法則の成り立ちの変化(進化) 現象、実験データ→ 実験公式(半経験公式)→法則

    複数の法則の関連→統一的法則、背後の原理の存在; ゲージ原理、対称性の自発的破れなど

    物理法則の2つの検証方法: 1)実験・現象を説明・理解できるかどうか 2)理論的整合性はあるかどうか→数学的方法

    法則の発展:それまでの法則を特殊な場合として含むより広い・深い法則へ ニュートン力学から相対性理論へ 電気学、磁気学、光学から電磁気学(マックスウエル理論)へ 古典物理学から量子力学へ 量子力学から量子場理論へ

  • 2015/4/13 4

  • 5

    物理学の発展の系譜(1)古代ギリシャ 紀元前600年くらい

    • 主流派:プラトン派、アリストテレス派

    現象の背後に不変の本質がある:対称性に着目。 「真空は存在しない」 「天体や宇宙は球形である、等速円運動は自然(的)である」 「宇宙は有限、地上界(地球と月)と天上界は異質である」 人間は平等ではなく、貴賎がある→社会の階層(位階)構造

    • 非主流派(原子論):デモクリトスなど。 「世界は原子(不可分の粒子)の離合集散の結果である。」 →原子が運動する舞台として真空が存在する 宇宙は無限である、世界(太陽)は無数にある

    2015/4/13

  • 6

    ニュートン力学:基礎、思想と応用・成果

    ニュートン力学(17世紀ー)ー物体粒子が主役で、時間、空間は舞台(または容器)ー 時間と空間は相互に独立である。 物体(粒子)の運動と時間・空間は独立である。 粒子の情報はある時刻におけるその位置と運動量(速度)である。 万有引力(重力)は瞬時に(=無限大の速度で)伝わる。

    →その現代的な応用:スペースシャトル、弾道ミサイル他

    x y

    z

    加速度a

    質量m 力F

    t=t1 t=t2

    ( , , )x x y y z z

    ma Fma F ma F ma F

    == = =

    物理学の発展の系譜(2)17世紀・ヨーロッパ

    2015/4/13

  • 7

    化学者ドルトンの原子論-科学的原子論

    文献:大野陽朗監修/ 高村泰雄・藤井寛治・須藤喜久男編 「近代科学の源流ー物理学編I」 北海道大学図書刊行会、1976年。

    pp.244-246 諸物体の構成について: (中略)水のような物体の究極粒子は、すべて同じもの、すなわち、すべて同じ 形、同じ重さなどをもっているかどうかということはかなり重要な問題である。 今までわかっているかぎりでは、これらの粒子に多様性があると考える理由はない。 もしそのようなことが水に存在するとしたら、水を構成している元素、すなわち水素と 酸素にも同じような多様性が存在しなければならない。さて、違った諸粒子が集合して 、それと均一に同じものになると考えるのはほとんど不可能である。 (中略)したがって、すべて均質な諸物体の究極粒子は、重さ、形等々完全に同じで あると仮定してよいであろう。

    コメント:この仮定は、17世紀の哲学者・数学者のライプニッツにより不自然な仮定として 批判されたが、20世紀、場の量子論において理論的に証明された。

    2015/4/13

  • 8

    電磁気学:基礎と応用 荷電粒子は場から力を受け、荷電粒子は場を作る。 場の情報は連続的な座標全体である。 場の変動を媒介として電磁的な力が有限の速度(光速度)で伝わる。

    →現代的な応用;モーター、電灯、電磁(IH)調理器、携帯電話など

    電気力線の源としての電荷

    N S

    磁力線

    電磁波

    物理学の発展の系譜(3)19世紀・ヨーロッパ

    2015/4/13

  • 9

    物理学の発展の系譜(4)20世紀

    1905年- 特殊相対性理論 1915年- 一般相対性理論 1924-5年 量子力学 1929-35年 場の量子論(=量子力学+特殊相対論) ディラックの相対論的電子論 → 陽電子(positron)の存在の予言(→確認) 1930-1960年代:宇宙(空間)の膨張、3度K宇宙放射の発見 →超高温、超高圧の初期宇宙 (量子宇宙→火の玉宇宙→天体(星)の宇宙) 1970-1980年代: 基本的相互作用の統一的理解 宇宙初期と素粒子論の関連 自然の進化(歴史性)階層構造

    (19世紀までの物理学・自然科学は基本的には見ることができ、高速ではない自然・現象を法則化し、それで得た認識であった)

    2015/4/13

  • 10

    古典物理学と現代物理学の諸分野

    • 古典物理学 力学、熱力学・統計力学、電磁気学、流体力学、弾性体力学 相対性理論(特殊相対論、一般相対論) • 現代物理学 量子力学(と場の量子論(または量子場の理論)) →基礎物理学 素粒子物理学、原子核物理学、宇宙物理学 物性物理学(凝縮系物理学) →応用物理学 →生物物理学

    2015/4/13

  • 11

    相対性理論 光速に比べて十分遅い運動の場合にはニュートン力学を含む。 重力が十分弱い場合にはニュートンの重力理論を含む。

    → GPS(全地球位置測定システム) →軍事利用 →カーナビ、携帯電話への利用 →犯罪の防止へ利用等

    特殊相対論 光速不変の原理 (等速度系における光速は光源、観測機に関係なく等しい) 特殊相対性原理(物理法則はローレンツ変換に対して不変) →運動系における長さ収縮、時間の遅れ、質量・エネルギー等価性

    一般相対論 慣性質量・重力質量の等価原理、加速度系においても物理法則は同じ形式 →物質(質量)が時空を歪め、時空に沿って物体が運動する。 弱い重力系における時間の進み

    原子核における質量欠損→原子核エネルギー(核分裂、核融合)

    2015/4/13

  • 12

    地球:半径は6400キロメートル 光は1秒間に地球を7回り半進む 太陽と惑星:地球から太陽まで光でも約8分かかる! 太陽は現在約50億才で、今後約50億年は 燃え続ける! 銀河:数千億ー1兆個の太陽(=恒星)を含む 私たちの宇宙:数千億ー1兆個の銀河を含む 私たちの宇宙は光が通過するのに約140億年が必要なくらい 広大である! 各階層ごとに独自の構造がある

    私たちの宇宙の広大さと豊かさ

    2015/4/13

  • 13

    水滴から原子へ ー自然の階層構造ー

    水滴、雨粒 (約1㎜)

    水中の種々の分子とイオン

    水素原子(1Å=10-10m)

    毛髪(100分の1㎜=10-6m=100μm)

    もしも原子の大きさが「1cm」とすると、人間は「地球の20倍の大きさ」となる!

    2015/4/13

  • 14

    原子から原子核へ

    10万倍に拡大

    原子核

    原子

    陽子 中性子

    電子

    原子核が「1cm」とすると、原子は「1km」の大きさで、 原子のほとんどはスカスカの真空!

    原子核という質量の芯、 力の中心がある「独裁的」な系

    2015/4/13

  • 15

    原子以下の世界の「大きさ」 ヒトの全細胞数は約60兆個(6x1013個)、 1個の細胞は約100億から1兆個(1010-1012個)の原子を含む

    http://particleadventure.org/particleadventure/edumat.html

    原子の大きさ

    クォークの大きさ

    原子核の大きさ

    陽子の大きさ

    2015/4/13

  • 16

    量子力学 ーミクロな世界の法則ー

    原子分子、電子系への適用 →半導体→集積回路(IC) →電卓→大型コンピュータ→コンピュータの小型化、高性能化 →社会の電子化 →生産力の高度化(→省力化→労働力過剰?) →ネット犯罪の多様化、巧妙化 →人間観、仕事間、社会間の変容、言語運用能力の崩れ? →半導体製造過程における有機溶媒洗浄処理液はどこへ? 原子核への適用→原子核エネルギーの発見→ 太陽など恒星のエネルギー源は核融合 核兵器、 原子力発電

    2015/4/13

  • 17

    身の回りのアインシュタイン

    相対性理論によってGPSに必要な時計の超高精度の補整が可能になった

    光電効果は太陽電池や電子光検出器の基礎となっている

    光の誘導放出はレーザーの基礎である。

    GPS=global positioning system

    GPS:カーナビシステム(car-navigating system)を支えるシステム

    原子力発電は電力の40%以上を生成している。(九州電力)。 原子力エネルギー=原子核分裂エネルギー。 核分裂の際の質量欠損m→mc2=E エネルギー:特殊相対論の結論の1つ c:光速度

    2015/4/13

  • 物理量の表し方

    2015/4/13 18

    1)物理量は一般に、英文字またはギリシャ文字で表され、明示的に表されなく とも、「数値」×「単位」と いう内容を意味する。印刷では斜体(イタリック、 italic)で示されるので注意すること。

    2)単位(unit) 国際単位系(SI)

    組み立て単位

    実用単位: 電力の単位=(ワット,W)=J/s。 電力量の単位=(キロワット時、kWh)=3.6×106 J

    印刷では立体(ローマン、roman)で示されるので、注意すること。

    長さの単位=メートル、m。 質量の単位=キログラム、kg。 時間の単位=秒、s。 電流の単位=アンペア、A。

    温度の単位=ケルビン、K。

    物質量の単位=モル、mol。

    速度の単位=m/s 力の単位=、ニュートン、N=kg m/s2

  • 2015/4/13 19

    3)次元(dimension) 長さ(length)をL、質量(mass)をM、時間(time)をTで表す。 空間の1次元、2次元、3次元という概念を拡張して、次元という。 力学における物理量の単位は、長さの単位m、質量の単位kg、時間の単位sの 組み合わせで表される。例えば、ある物理量Yの単位が、makgbsc だとすると、 記すと)の単位[LaMbTc]をこの物理量Yの次元という。 例:速度の次元は[LT-1]、力の次元は[LMT-2]である。

    注意: 計算の途中や結果に出てくる数式、例えば、A=Bの左辺Aと右辺Bの次 元は常に同じでなければならない! →計算結果の式の両辺の次元が同じかどうかを調べることは、計算結果が 正しいかどうかの一つのチェックになる。 →次元解析(dimension analysis)

    念のため:次元が異なる2つの量の乗除はできるが、加減はできない。 次元が同じ量の加減はできるが、異なった単位で表された2つ の量の計算を行うには、換算して2つの単位をそろえる必要がある。

  • 2015/4/13 20

    例:0.01 、 3 、1985を三桁の有効数字で、8.96を二桁の有効数字で表すと

    4)有効数字または有効桁数(significant figure)

    0.01→(有効数字三桁で) 0.010または1.00×10-2 3→(有効数字三桁で) 3.00 1985→ (有効数字三桁で) 1.99×103 8.96→(有効数字二桁で) 9.0

    ある物理量を同じ条件で繰り返し測定すると、測定値にはばらつきがある。 これらの測定値の平均値は、この物理量の最良推定値である。多くの場合、 測定値は平均値のまわりにつりがね型の正規分布とよばれる分布を示す。 このように、不確かさがあるので、平均値の桁数をむやみに多くしても意味が ない。 そこで意味のある数値を有効数字という。 測定値をa×10n と表すとき、aとして になるようにした有効数値を 使う。

    1 |a|

  • 等号「=」:場合により次の意味のどれかになる。 (1)A=B; 両辺のA,Bの値が一致すること。 物理学などでは,左辺Aと右辺Bの次元は常に同じでなければならない。 (2)A=B=B’ 式の変形 例えば、次の「=」を見て下さい。 2 + 3 = 5 この場合の「=」は、左側の式とを変形すると右側の式になることを表して います。そして、その変形は誰がやっても(この場合足し算のやり方を知っ ている人なら誰でも)、同じ結果になります。 (3) A=B ; Aの値としてBを代入すること。 代入記号(情報、コンピュータのプログラム文などでも使用される。) (4)関係式または法則。複数の物理量の組み合わせの間の関係式。 以下のケースのイコールを見て下さい。 2a + 3b = 0 aとbという未知数の間に満たされるべき関係式を意味しています。 (5)定義式(→ 恒等式を意味する を用いる場合もある) 変数xのある関数 f(x)=2x2+3x+4

    等号などの意味を考える

    def

    =

  • (6)二重波線 は両辺の値が大体ー近似的に,桁数が一致するー等しいという意味 (7)3本イコール 等号「=」と混同しないように、 定義式または等価式の意味で使われる場合がある。

    参考: 等号「=」に秘められた意味。 http://ameblo.jp/tta33cc/entry-11356986368.html http://ist.ksc.kwansei.ac.jp/~nishitani/Lectures/Maple/SuperIntro/SuperIntro3.pdf 数式処理ソフトMaple入門(III)ー式と変形ー 関西学院大学理工学部 西谷滋人 等号の意味を問う

  • 23

    物理法則と定数、単位

    2

    mMF Gr

    =

    質量m、Mの二つの物体が距離r だけ離れている場合の、 重力(万有引力)の大きさF

    112

    kg kg6.6742 10

    Nm

    m MF

    r−

    = ×

    211

    2

    N m6.6742 10(kg)

    G − ⋅= ×

    物理量は斜体(italic )で、単位は立体(roman)で記す。 同じ単位のものしか加減はできない。違う単位の物理量でも割り算、掛け算はできる。

    重力定数(万有引力定数)

    2015/4/13

    スライド番号 1日常の言葉と物理用語の意味の違い�―使用初めから徐々に意味が変化する場合があるー物理現象と物理法則スライド番号 4物理学の発展の系譜(1)古代ギリシャ � 紀元前600年くらいニュートン力学:基礎、思想と応用・成果化学者ドルトンの原子論-科学的原子論電磁気学:基礎と応用物理学の発展の系譜(4)20世紀 古典物理学と現代物理学の諸分野 相対性理論スライド番号 12水滴から原子へ�ー自然の階層構造ー原子から原子核へ原子以下の世界の「大きさ」量子力学�ーミクロな世界の法則ー身の回りのアインシュタイン物理量の表し方スライド番号 19スライド番号 20スライド番号 21スライド番号 22スライド番号 23