住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想ua.t.u-tokyo.ac.jp/yasami/tj1-2.pdf · 2 7...

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1 住宅地計画論 ハワードの田園都市構想 都市住宅論 1 1.ハワードの田園都市構想 Howard, E. (1898) To-Morrow, A Peaceful Path to Real Reform. Howard, E. (1902) Garden Cities of To-Morrow, London. 都市住宅論 2 Rockey, J. (1983) "From Vision to Reality: Victorian Ideal Cities and Modern Towns in the Genesis of Ebenezer Howard's Garden City" Town Planning Review, 54, 83-105. 土肥博至,御舩哲 (1985) 『住宅地計画』新建築学 大系20, 彰国社. イギリスの産業革命 19世紀にはロンドンやマンチェスターなどの大都市 には多くの労働者が集まり、劣悪な住環境の中で生 都市住宅論 3 政府も19世紀中期に労働者の住環境改善に乗り出し、 1841年にはロンドン市内での労働者住宅の建設に着 手、1851年には住宅の衛生水準向上のための最初の 住居法であるシャフツベリー法を制定。その後スラ ムクリアランスやモデル労働者住宅の制度化が進み、 1890年の労働者住居法に集大成。 1898年、E.ハワードは『明日-真の改 革にいたる平和な道』という著書を出版 し、田園都市(garden city )の理念と具体 都市住宅論 4 化の方策を示した。 1902 年この著書は 『明日の田園都市』と改題されて再版。 ハワードの主張 都市と農村がそれぞれの長所を結合し欠点を排除した、新 しい社会像として田園都市を建設すべき。 田園都市はその住民の雇用の場を十分備え、また広大な農 地をもって食糧の自給をはじめとした自足 自立的な独 都市住宅論 5 地をもって食糧の自給をはじめとした自足自立的な独 立都市。 全ての土地はコミュニティーの共同所有地。無制限な拡大 を抑制するため適正規模を守る。 田園都市が閉鎖的孤立的にならないため、中心都市や他の 田園都市と高速交通機関ネットワークで結ぶ。 田園都市の実現は、既存の大都市内部の人口を分散させ、 都市の悪環境の改善を可能にする条件をつくりだす。これ 以外には都市問題の解決は有り得ない。 3つの磁石 都市住宅論 6

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住宅地計画論

ハワードの田園都市構想

都市住宅論1

1.ハワードの田園都市構想

Howard, E. (1898) To-Morrow, A Peaceful Path to RealReform.

Howard, E. (1902) Garden Cities of To-Morrow,London.

都市住宅論2

Rockey, J. (1983) "From Vision to Reality: VictorianIdeal Cities and Modern Towns in the Genesis ofEbenezer Howard's Garden City" Town PlanningReview, 54, 83-105.

土肥博至,御舩哲 (1985) 『住宅地計画』新建築学大系20, 彰国社.

イギリスの産業革命

19世紀にはロンドンやマンチェスターなどの大都市

には多くの労働者が集まり、劣悪な住環境の中で生活

都市住宅論3

活。

政府も19世紀中期に労働者の住環境改善に乗り出し、1841年にはロンドン市内での労働者住宅の建設に着手、1851年には住宅の衛生水準向上のための最初の

住居法であるシャフツベリー法を制定。その後スラムクリアランスやモデル労働者住宅の制度化が進み、1890年の労働者住居法に集大成。

1898年、E.ハワードは『明日-真の改

革にいたる平和な道』という著書を出版し、田園都市(garden city )の理念と具体

都市住宅論4

g y化の方策を示した。1902年この著書は『明日の田園都市』と改題されて再版。

ハワードの主張 都市と農村がそれぞれの長所を結合し欠点を排除した、新しい社会像として田園都市を建設すべき。

田園都市はその住民の雇用の場を十分備え、また広大な農地をもって食糧の自給をはじめとした、自足 自立的な独

都市住宅論5

地をもって食糧の自給をはじめとした、自足,自立的な独立都市。

全ての土地はコミュニティーの共同所有地。無制限な拡大を抑制するため適正規模を守る。

田園都市が閉鎖的孤立的にならないため、中心都市や他の田園都市と高速交通機関ネットワークで結ぶ。

田園都市の実現は、既存の大都市内部の人口を分散させ、都市の悪環境の改善を可能にする条件をつくりだす。これ以外には都市問題の解決は有り得ない。

3つの磁石

都市住宅論6

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都市住宅論7 都市住宅論8

都市住宅論9

ハワードは5つのダイアグラムで,その理念と空間像を示すとともに、記述の大部分を事業成立可能性を説明。

田園都市のモデル 人口規模32,000人,面積2400ha

都市住宅論10

中心部の400 haの市街地の周辺を2000haの農地が取り囲む

市街地の中心に、円形広場.劇場・美術館・図書館・音楽堂・市役所といった公共施設が中央公園の中におかれ、公園の外縁にそって水晶宮(クリスタルパレス)というガラスのアーケードが建てられ、ここでは買物やレクリエーションができる。

内輪のベルト状の住宅地の中央には、その中に学校や教会をもつ幅130 mの大アベニューが通り、その外側に工場が配置され、さらに菜園,大農場と続く。

実践: 1899年:田園都市理念を社会に広めていく運動母体として、田園都市協会を設立

1903年:田園都市建設の事業主体として、第一田園

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1903年:田園都市建設の事業主体として、第 田園都市株式会社を発足。ロンドン北郊に1550haの土地を買収して、最初の田園都市レッチワースの建設に着手。 計画設計はR.アンウィンおよびB.パーカー。

鉄道駅のある中央の市街地部分は、計画戸数7000戸、公共施設や商店街,工場等も会社が建設し、土地はすべて貸地。

都市住宅論12

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1920年:第二の田園都市ウェルウィンを建設 面積1000ha弱、市街地は700 ha

設計はL.ド・ソワッソン

ウェルウィンはレッチワースよりもロンドンに近いことも

都市住宅論13

あって、独立都市というよりも衛星都市に近い→ハワードの

いう自給自立の田園都市からは離れたが、逆にその事業を円滑化。

田園都市の成功は各国に大きな影響を与え多くの住宅地が計画、建設されたが、それらはいずれもハワードのいう自給自立の田園都市とは異なり、母都市へ通勤する人々のための郊外住宅地、いわゆる田園郊外(garden suburb)。

アンウィンやソワッソンの優美で風格のある住宅地のデザインが与えた影響も大きく、郊外住宅地に対する人々の関心を高め、都市の郊外化は 段と進行

都市住宅論14

郊外化は一段と進行。

田園郊外

1907年レッチワースと同じアンウィン,パーカー

のコンビで設計されたハムステッド(ロンドン)、遅れて1930年パーカーが設計を担当したマンチェスター郊外のワイゼンショウなど。

ハムステッド

都市住宅論15 googleマップより(2010.10.2)都市住宅論16

cf. 東急田園都市線,田園調布(渋沢栄一による)

都市住宅論17 『東京の住宅地』より googleマップより(2010.10.2) 都市住宅論18

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2.ペリーの近隣住区論

Banai-Kashanai, A.R. (1988) "Toward a Synthetic Measure ofGood Settlement Form" Environment and Planning B, 15, 399-412.

Perry, A.C. (1929) "The Neighborhood Unit: A Scheme forArrangement for the Family Life Community" Regional Study forNew York and its Environs R Sage Foundation

都市住宅論19

New York and its Environs, R. Sage Foundation. 浅見泰司 (1990)「住宅地の階層構造に関する一考察:

Alexander理論の再評価」『日本都市計画学会学術研究論文集』25, 433-438.

浅見泰司,西江史子 (1989)「居住年齢階層からみた近隣住区論の再考察」『日本不動産学会梗概集』 5, 101-104.

都市計画教科書 土肥博至,御舩哲 (1985) 『住宅地計画』新建築学大系20,

彰国社, 48-50.

1)ペリーの近隣住区論

近隣住区理論の背景 1)都市人口の増加と変質

プロテスタント系の地区にカトリック系が移民、貧しい人々はスラムを形成。中産階級は郊外へ逃げだそうとした。

2)車の保有率の増加

都市住宅論20

2)車の保有率の増加 中産階級の郊外への逃避を可能に。

3)RPAA (Regional Planning Association of America: Steinが代表)と田園都市の影響 田園都市をアメリカでもつくりたい → ラドバーン

4)同質集住・異質排除意識

近隣住区の6原則

1)規模:1つの小学校を必要とする人口規模。

当時のニューヨークの平均的郊外住宅地では半径 1/4マイル、約 160エーカー。

2)境界 周囲は十分な幅員の幹線街路で区画

都市住宅論21

2)境界:周囲は十分な幅員の幹線街路で区画。

住区の通過交通排除が目的

3)オープンスペース:住区の需要に見合う公園・レクリエーションの用地。

独立住宅の場合、住区の約10%

4)住区施設用地:中央のコモン周囲に小学校・教会・コミュニティービルディング等を配置

5)商店:人口に見合う商店群を、住区周囲の交差点近くに 隣接住区のそれと近接する形で

都市住宅論22

差点近くに、隣接住区のそれと近接する形で1ヶ所以上配置。

6)内部街路:街路網は、格子状パターンをやめ、将来の交通量に対応でき、住区内の動きを容易にし、かつ通過交通を排除するように計画。 ループやクルドサックを設ける。

近隣住区

都市住宅論23

ペリーは、当時入手可能な統計資料のほか、実地調査 大都市の市街地地域においては、近隣のまとまりを空間領域と

して識別できる

社会的,経済的に統一された性格をもっている

明確な境界もなく 統 性をもたらす空間的な特色のない住宅

都市住宅論24

明確な境界もなく、統一性をもたらす空間的な特色のない住宅地では、コミュニティとしての生活や独自性がない

住宅地における第1次集団の人間関係や集団組織が十分機能しておらず、教育やレクリエーション,社交等の生活が円滑にいっていない

→このような生活は近隣という領域に要求されている,住宅地はこれに答えるように計画されるべき

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ペリーの近隣住区の理論の基幹的部分:

コミュニティの問題:住宅地における人間関係や社会生活の現象,個人や家族の生活

都市住宅論25

コミュニティセンター運動における長い経験から、人々は良好な地域コミュニティの中で生活すべきであるという確固たる理念を背景に,その問題の解決を空間的,物的計画によって実現しようとしたものが近隣住区論

2)近隣住区の既成市街地への適用

既存の市街地を近隣住区理論に基づいて再構成

1950年代のアメリカの諸都市において策定されたGeneral Planには Community(地区)-住区という市街地の段階的区分を行なって 地区更新( Urban

都市住宅論26

地の段階的区分を行なって、地区更新( UrbanRenewal )や公共施設整備の手がかりとしている。

昭和40年代中頃以降、日本の諸都市において策定が急

速に普及した市町村総合計画(基本計画)においても、住区の考え方を根底においた段階的地区区分を行なって、諸施策の基本に。

ハーローのように近隣住区理論を厳格に適用した新開発計画では、町内会・自治会などの社会空間,各種公共公益施設の利用圏としての機能空間,市街地の構成要素や環境の面で同質な等質空間,通過交通の多い幹線道路等で囲まれる居住環境空間を完全に一致させることが可能。

都市住宅論27

非計画的につくられた既成市街地に住区理論を適用する際には、既成市街地の場合、社会空間・機能空間・等質空間・居住環境空間が一致しない。

これら諸空間の不一致の中で各自治体にとって一番重要な切口を手がかりに地区区分を決断しなければならない。東京都区部では、区-地区(10万人)-住区(1万人)という段階構成。

都市住宅論28

都市住宅論29 都市住宅論30

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都市住宅論31 都市住宅論32

3)近隣住区理論の変形

土肥博至,御舩哲 (1985) 『住宅地計画』新建築学大系20,彰国社, 55-56.

日笠端 (1959) 「住宅地の計画単位と施設の構成に関する研究」

都市住宅論33

研究」

高山英華(編) (1967) 『高蔵寺ニュータウン計画』, 鹿島出版会.

1960年前後を境に近隣住区理論とその計画手法についての疑問や批判

1. 近隣住区理論の根底をなしているコミュニ

都市住宅論34

近隣住区理論 根底をなし るティの概念のリアリティに関するもの

2. 小学校を中心にし、幹線道路と緑地帯で区分した図式的な空間構成についてのもの

3. 低密度の静的な環境そのもの

コミュニティの概念に関する批判

1920年代に想定していた地域における居住者の精神的

な結合は、その後の近隣住区の建設を通じても明解なかたちで実現されず、むしろ地域的な結びつきを超えた同質社会集団のまた機能的目的集団間の結び きの

都市住宅論35

た同質社会集団のまた機能的目的集団間の結びつきの強さが明らかに。

日笠 (1959) :生活圏域の調査

日本においてはこうした伝統的コミュニティ概念に対応する実体は存在していない

住民の機能的要求の充足というより具体的な目標に基づいて、生活サービス施設の利用圏を住宅地計画の基礎単位とすべきことを主張

空間構成 現代生活が要求する選択性の拡大とサービス水準の高度化に対して、完結的で閉鎖的な近隣住区では対応できない。

都市住宅論36

人々の行動圏の拡大によって、コミュニティを近隣住区という固定した空間領域に閉じこめることは不合理。

1962年に発表された日本で2番目のニュータウンである高蔵寺計画のなかでは、近隣住区といった空間構成単位をやめて、オープンコミュニティの提案。(高山, 1967)

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低密度の静的環境 都市性の欠如

ワンセンターシステム段階的な構成を排し より多くの住宅を強力なタウンセ

都市住宅論37

段階的な構成を排し、より多くの住宅を強力なタウンセンターに直結させる

第1期の最後のカンバーノルドや計画のみに終わったがフック:都市は比較的高密度にコンパクトにまとめられ、中央の直線状のタウンセンターの両側に住宅群が配置され、直接歩行者専用路でセンターにアプローチできる構成。

イギリスの第2期のニュータウン群は、いずれも規模を拡大して、中心性の都心部の都心性を強めることを意図。

ペデストリアンデッキを全域に張りめぐらし、住宅はこれに直接接するという計画:トゥー

都市住宅論38

ルーズ・ミレイユ(フランス),高蔵寺の二つのニュータウン

今日、ペリーの近隣住区理論をそのまま実際の計画に適用するようなことはないが、日本の新住宅市街地開発法において開発規模を人口(6千人 )1万人に相当する住区単位で

都市住宅論39

口(6千人~)1万人に相当する住区単位で規定していることに見られるように、その影響は依然として根強い。

4)アレグザンダー

Alexander, C. (1965) "A City Is Not a Tree"Architectural Forum, 122(1) 58-62; (2) 58-61.

Harary, F. and J. Rockey (1976) "A City Is Not aSemilattice Either" Environment and Planning A 8

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Semilattice Either Environment and Planning A, 8,375-384.

浅見泰司(1990)「住宅地の階層構造に関する一考察: Alexander理論の再評価」『日本都市計画学会学術研究論文集』25, 433-438.

アレグザンダー, C.ほか (1989) 『まちづくりの新しい理論』(難波和彦・監訳)鹿島出版会.

Alexander(1965) 都市構成にグラフ理論的な概念を適用、都市はツリー構造であるべきではないと指摘。

新市街地(ニュータウン)は当時、近隣住区論の影

都市住宅論41

新市街地( ュ タウン)は当時、近隣住区論の影響もあって単調で明確な階層構造を示す。

諸機能の圏域の階層構造をグラフで表した場合にはツリー状。一方、歴史的に形成された既成市街地の都市では様々な機能圏域がいくつにも入り組んだ階層構造を持ち、ツリーよりもより複雑なセミラティス構造。

“A City Is Not a Tree” 歴史的に形成された都市とニュータウンなど人工的に計画された都市との間に人間味という点で大きな差がある

都市住宅論42

で大きな差がある

その階層構造に原因があるのではないかという問題提起。

分析方法として階層構造をグラフ(ないし集合包含関係)で記述し、ツリー状の構造とセミラティス状の構造に分類できることを指摘。

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ラティス(lattice, 束) A,B∈F⇒ A∧B,A∨B∈F

セミラティス(semi-lattice) 集合族Fにおいて、Fに含まれる任意の2つの集合A,Bについ

て、A,Bの共通集合が空でない場合にはそれが必ずFの要素として存在する場合にFはsemi lattice

都市住宅論43

して存在する場合にFはsemi-lattice。 A,B∈F,A∩B≠φ⇒A∩B∈F

ツリー(tree) 集合族Fにおいて、全体集合はFに含まれかつ、Fに含まれる 任意の2つの集合A,Bについて、(1)片方がもう一方に完全に含

まれるかまたは(2)共通部分が空であるのどちらかが必ず成立する場合にFはtree。

X∈F,A,B∈F ⇒A⊃B,A⊂BorA∩B=φ

定義よりツリー構造ならばセミラティス構造、しかし以下ではセミラティス構造という場合はツリー構造でないセミラティス構造をさすこと

にする

都市住宅論44

にする。

Alexander は計画都市について様々な圏域を集合と見なしたときにその階層構造がツリー構造であること、また歴史的に形成された都市では機能が異なると必ずしも同じ階層構造になっていないことを実例で示した。

歩車分離,職住分離,レクリエーション施設の孤立化などの計画上の考え方をもツリー状的であると批判、むしろ混合が望ましいことを指摘。

ツリー的に都市を計画する誤謬は都市計画者の心理的な無意識 内 簡略化欲求 よるも 我 計画者は自ら

都市住宅論45

無意識の内の簡略化欲求によるもので我々計画者は自ら戒める必要があることを警告。

何を要素として集合を構成するかについてAlexander が曖 昧 な ま ま 議 論 を 進 め て い る 点 は Harary andRockey(1976) が指摘。その他にAlexander が人工的に計画された都市(計画都市)と歴史的に形成された都市(自然都市)の比較で適切でなかった。

Alexander は計画都市を分析する上では空間構成といういわば一つの機能に着目してグラフを構成。この結果グラフはツリー状。

一方自然都市については様々な機能に着目しそれぞれの圏域が複雑に関連していることをグラフに表わし、セミラティス状のグラフを構成。

しかし、計画都市と自然都市それぞれについて同じ数だけの機能についてその関係を調べ、その圏域構造を比較するのでなければ意味がない 仮に自然都市であ ても単 機能に着目すればしばしば リ 状

都市住宅論46

い。仮に自然都市であっても単一機能に着目すればしばしばツリー状になるであろうし、また計画都市であっても多機能に着目すればセミラティス状になる可能性がある。

Alexander の真意は数学的に正確に記述することではなく、グラフ的に整理してその傾向を示したかったに過ぎない。

Alexander の真意をくみ取り、その分析をより精緻に行なうには単にグラフで示してツリーとセミラティスに分類するのでは足りず、そのどちらの構造に近いのかを表わす連続的な指標を用いて検討する必要がある。この分析を浅見(1990)が行った。三軒茶屋と多摩で実証分析も。

3.スタインのラドバーン・システム

Parsons, K.C. (1990) "Clarence Stein and theGreenbelt Towns: Settling for Less" Journal ofAmerican Planning Association, 56(2), 161-183.

土肥博 御舩哲 『住宅地計 』新建築

都市住宅論47

土肥博至,御舩哲 (1985) 『住宅地計画』新建築学大系20, 彰国社, 51-53.

都市計画教科書

1935年頃 経済不況 → Franklin Rooseveltは住宅建設プログラムを促進

ルーズベルトのResettlement Administration (RA)(再植民庁?)はニュータウン建設

都市住宅論48

(再植民庁?)はニュ タウン建設

New Deal計画 Public Works Administration (PWA) Tennessee Valley Authority (TVA) National Resources Planning Board (NRPB) Resettlement Administration (RA)

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1)PWA

住宅建設:連邦の金で建設(1933)

公共建設のために団体援助→ low rent

都市住宅論49

公共建設のために団体援助→ low renthousing projects

Hillside Homes (in Bronx) 1934-35 Clarence Steinが設計

Housing Act (1937) public housing program

2)TVA(1933)……social experiment

regional governmentをめざしたが、縮小され、発電,洪水,潅漑のみの機能に限定

都市住宅論50

れ、発電,洪水,潅漑のみの機能に限定

TVA New Towns(小さい):

superblock形式,foot-path とmain street の分離,cul-de-sac,short loop streetを取り入れる

総じて水力発電が有名になっただけ。

3)NRPB→National Planning Agency 1933

4)RA

Greenbelt Towns Program (1933 )

都市住宅論51

Greenbelt Towns Program (1933-) 自給自足のコミュニティーを貧乏な地方に建設

衛星都市をつくる

→結局は3都市のみ。

Greenbelt, MD; Greenhills, OH; Greendale, WN

Clarence Stein

Rochesterに生まれ、 1890年New York Cityに

Ethical Culture Society's Workingman's

都市住宅論52

Ethical Culture Society s Workingman sSchoolに入学

Columbia University (1904-1905)

Paris へ Ecole des Beaux Arts (1905-1911) community architectとしての教育

1919 Steinは自分の事務所を開く

1923 Regional Planning Association of America(RPAA) を組織

都市住宅論53

(RPAA) を組織

Sunnyside Gardens (Queens, Long Island) 街区……共有スペースの共有化 1200世帯

Radburn, New Jersey (1928~) City Housing Corporation 2平方マイルの土地取得

スーパーブロック方式,クルドサック,歩道システム 居間をグリ ンに向ける ス パ ブロ ク内

都市住宅論54

ム,居間をグリーンに向ける,スーパーブロック内の歩道をアンダーパスで他へつなげる

1 9 29~1 93 3 U.S.住宅市場の崩壊,City HousingCorporation破産

→ ラドバーン 1住区も完成できず、 400世帯程度完成したのみ

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都市住宅論55

googleマップより(2010.10.2)

都市住宅論56 googleマップより(2010.10.2)

近隣住区理論が新開発住宅地の計画に最初に適用されたのはラドバーン計画。ニューヨーク市の北西約25kmニュージャージー州ラドバーンの農村地域に1928年に建設を開始。

都市住宅論57

農村地域に1928年に建設を開始。

クラレンス・S・シュタイン及びヘンリー・ライトの設計によるラドバーン計画は、都市住宅協会(1928~1933年)により建設。イギリスにおける田園都市の理念を引き継ぎつつ、ペリーによって提案されたばかりの近隣住区方式を採用。

計画の概要

ほぼ平坦な500 haの敷地に人口密度約50人/haで約25,000人の人口の住宅地を建設。

全体は人口7500人から10 000人で半径 1/2マイル(約

都市住宅論58

全体は人口7500人から10,000人で半径 1/2マイル(約800m)の3つの近隣住区に分かれ、それぞれの住区は幹線道路によって囲まれる。

建設を開始した直後、1929年の大恐慌のあおりで開

発会社が倒産、ごく一部の完成をみただけで中止。できあがったのは、3つの住区のうちのひとつのさらに駅に近い1/4 程度の部分約20haのみ。

その唯一の住区

6つのスーパーブロック、中央に小学校やプール,運動場などのレクリエーション施設が計画。各スーパーブロックは いくつかの20戸程の住戸群から成

都市住宅論59

パ ブロックは、いくつかの20戸程の住戸群から成る。

各住戸群はスーパーブロックを囲む住区内の道路から直角に入ってくる50~100mの長さをもつクルドサックを取り囲むように配置。

各住戸はクルドサック側にはサービス空間を、主要な生活空間は反対側の庭の方に向けられる。

この庭を出るとクルドサックと並行する歩行者用のフットパスがあり、これをスーパーブロックの中側に進むと、その中央を帯状に貫く大オープンスペースにつながる。

都市住宅論60

全体として緩やかにカーブする道路と、住区中心から各スーパーブロックへとつながる豊かなオープンスペース: 従来の格子状の街路網をやめて、スーパーブロックとクルドサックの採用によって道路面積を大幅に縮小したことによって可能になったもの。

住区の南西隅に商店群が置かれている。

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計画内容は、規模,境界,オープンスペース,住区施設用地,商店,内部道路のペリーの近隣住区の6原則をいずれも満たした。

第6の原則である住区内の街路網については、ペリーはそのもつべき条件を示したのみであったのに対し、

都市住宅論61

そ も き条件を示 み あ 対 、ラドバーンではそれに具体的な手法として形を与えることに成功。

末端まで徹底した歩車動線の分離という画期的なもの、道路面積を低下させ良質な環境を実現。

ラドバーンはこれらの点で注目を集め、スーパーブロック的な扱い,機能による街路の段階分け,人と車の完全分離など自動車時代の住宅地設計の手法として後にラドバーン・システムとも呼ばれ、有名に。

クルドサックに面した住戸群(約20世帯)では車の

進入する道側にガレージや台所がおかれ、静けさを必要とする居間や寝室は人だけが歩く小径に面したテラス側に、あるいは2階に配置。

都市住宅論62

台所からは子供の遊び場も見え、監視できることが高く評価された。小径は車道と決して平面交差することなく、グランド,商店街,小学校に続いている。30代中心の高学歴・高収入の人々が入居。

→Greenbelt, Maryland へ概念は継承される

1932~1934 Hillside Homes (Bronx) 1400中産階級世帯

Valley Stream, Long Island 18000 人 用

都市住宅論63

y , g 人 用Radburn の考え方,高密(1935)

費用の研究を行う→結局財政がうまくいかず、実現せず

1935 RA ニュータウン建設にのりだす Stein:1ニュータウンのChief designer-plannerでなく、

general consultant 当時プランナーはimpractical & utopian と見られる傾

都市住宅論64

当時プランナ はimpractical & utopian と見られる傾向も

Stein はニュータウンのガイドラインには寄与。ニュータウンのデザインにはあまりかかわれず

Stein はphysical planner希望

visiting consultant を"temporarily" に引き受ける

"Appraisal of General Plans"……敷地のレイアウトの最も効率的な形を示す → "settling for less" ↓

Greenbelt MD; Greendale WN; Greenhills OHの3

都市住宅論65

Greenbelt, MD; Greendale, WN; Greenhills, OHの3つのみに

Stein はGreenbelt には強い影響、他は弱い construction and operating cost 分析により、Greenbeltの計画を根本的にくつがえしたため。

Toward New Towns for America 主にgreenbelt をとりあげる(efficient, cost-

saving)

都市住宅論66

費用面で計算が正しいことが示される

1937年までに、連邦政府所有のニュータウンが3つ完成 6000人以上居住

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1936 RA廃止 greenbelt towns は公有地のまま

WW2後これを批判される

1945 Federal Public Housing Corporationはニュータウンの処分方法を検討

都市住宅論67

タウンの処分方法を検討 → 細分化して売却することを提案

Stein は反対運動 greenbelt towns をそのままに保存できる売却案を提案 negotiated salesを許可するように求め、認められる

→ veterans' cooperativesに売却

Greenbelt homeowners' cooperative ……財政難 一部売却 → 商業的開発へ

↓G hill G d l はほとんど維持されず

都市住宅論68

Greenhills, Greendale はほとんど維持されず

Stein はdesign + preservation に貢献 プランナーとして最もやりたい物的計画から遠ざけられつつも、Stein の最も息のかかったGreenbelt がもっとも残ったのはStein の費用分析のおかげ。

4.コミュニティー論

1)コミュニティー論の流れ R.M.マッキーバー。1917年『コミュニティ』

「コミュニティの基本要件は、人間の社会的諸関係のすべてがそのなかに見いだされ得るということである。これに対してア

シ シ は 基盤にた 定 目的

都市住宅論69

ソシエーションは、コミュニティの基盤にたって、一定の目的を達成するためにその手段として派生する集団である」として、アソシエーションと対置しながらコミュニティの規定.人間の生活にとっても社会にとっても、コミュニティこそ本質的なものであると述べている。

コミュニティ:一定の地域性をもち、そのなかで社会的諸関係を伴う共同の生活が行なわれ、共通の文化と感情を持つ集団。

アソシエーション:特定の目的や関心を共にすることで結合する集団。

F.H.テンニース 社会関係の結合様態を、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトに

分類し、新しく登場した後者の矛盾を説いた。

C.H.クーリー 直接的な対面関係をもつ第1次集団(プライマリーグループ)

都市住宅論70

直接的な対面関係をもつ第1次集団(プライマリ グル プ)とそれ以外の第2次集団というとらえ方をし、後者の台頭と優勢について論じている。

アソシエーション,ゲゼルシャフト,第2次集団は、いずれも目的集団・利益集団・機能集団といった共通の近代的特質。社会の近代化が進むにつれて、こうした機能結合型が有力になり、伝統的なコミュニティが後退していくのは、自然の流れである。新しく近代的コミュニティの建設の必要性が説かれる。

R.E.パークやE.W.バーゼスなどのシカゴ学派 生態学的アプローチ

都市や近隣コミュニティの状態や第2次集団の優位性と、都市の病理的現象との関係について実証的に分析

コミュニティのもつ価値を明らかに

都市住宅論71

コミュニティ:「はっきりと現実された地域を占有している人々の集まりであり、それだけでなく制度が統合されたものである」

アメリカではセツルメント運動,教会運動,コミュニティセンター運動などが展開。いわゆるコミュニティオーガニゼーション。

近代的なコミュニティ: 地域性・共同性・社会的相互作用 フィジカルな面とノンフィジカルな面の両面

狭義のコミュニティ計画 住宅地を計画する場合の構成手法として、住宅地をいくつかの空間的,圏域的単位に区分したり、これらを組み上げて全体の市街地を構成したりする計画。

都市住宅論72

比較的明確な人口数や敷地の大きさで表されるものが単位であり、多くのコミュニティ計画において頻繁に用いられるのは近隣住区単位

住宅地やニュータウンを、例えばハーローのように、住宅群-近隣住区-住区クラスター-都市と、いくつかのレベルの単位を段階的に組み合わせる方法も、コミュニティ計画の一つの方法。

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ミルトンケインズ 区域全域をほぼ1km間隔の網の目状の道路網で覆い、それぞれの区画は

住宅の供給方式や建築方式、それぞれに配置される社会サービス施設などによって特色をもたせる。

構造的なヒエラルキーは意図せず居住者は各区画に拘束されずに、道路網と歩行者路網によってどこのサービスも選択できる。

都市住宅論73

この網の目を一斉に建設するのではなく、人々の定着に合わせて部分的に建設し、それを順次拡大する。住宅については、供給は公共・民間それぞれ半分、所有形式も分譲・賃貸それぞれ半分といったバラエティをもたせ、全体としてフレキシブルな進め方を計画。

コミュニティづくりのための社会開発の方法を展開。建設過程での町づくりへの住民参加,既存集落との関係の調整,人口定着に合わせた社会施設の設置,住民に対する町づくりの詳細な情報提供などを積極的に。こうした傾向は計画という行為の内容の変化を示すもの。従来の固定的な概念のプランに対して、プログラムを含んだダイナミックなプロセスプランニングの方法が導入されてきたことを示す。

ミルトンケインズ

都市住宅論74

都市住宅論75 googleマップより(2010.10.2)

コミュニティをより実体的に、その構成員の間の親密な人間関係の有無という原点に帰ってとらえ直す

都市住宅論76

→タウンハウスの計画や計画的小集団開発

より広い意味のコミュニティ計画

居住者の生活を優先的に考える姿勢に基づく居住環境の計画。

住民の計画づくりや町づくり の直接的 間接的な

都市住宅論77

住民の計画づくりや町づくりへの直接的,間接的な参加と住民の生活要求から生じるさまざまな環境改善の要求に対する柔軟な対応という条件を満たさなければならない。

建設を居住と生活の展開に応じて、終始繰り返される環境と人間生活との調整の作業とみなす。

→ダイナミックなプランニング

・1970年前後を契機に、既成市街地を対象とした一般の地域で、コミュニティづくり,コミュニティ計画の必要性が盛んに論じられた。 国民生活審議会 (1969) 「コミュニティ生活の場における人間性の

回復」

都市住宅論78

自治省 (1970) 「コミュニティ(近隣社会)に関する対策案」

自治省 (1971) 「同対策要綱」

社会教育審議会 (1971) 「急激な社会構造の変化に対応する社会教育のあり方について」,中央社会福祉審議会 (1971) 「コミュニティ形成と社会福祉」

1974~76年の厚生白書

1975年の経済白書

1976年の国民生活白書がコミュニティ問題を取り上げている。

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1969年地方自治法改定→総合計画 シビルミニマムの明確化やコミュニティ計画を策定。 自治省のモデルコミュニティ事業:

コミュニティセンター(公民館),公園・遊び場などの建設である (森村 1980)

都市住宅論79

である。(森村, 1980)

建設省 1975年から住環境整備モデル事業 1974年からは過密住宅地区更新事業 1975年から居住環境整備事業などを発足

居住地域の環境を改善し、新しい施設を付加することによって良好なコミュニティの育成を狙ったもの、施設づくりの面が強調されすぎているのが実情。

自治体では具体的なコミュニティの圏域を設定

多くはその圏域は小学校区に対応。

都市住宅論80

生活環境図集,コミュニティカルテ

都市化とコミュニティー 2)Keane (1991)の研究 コミュニティー

都市化して失われる? 都市化して社会的な交流の可能性が増える?

既存研究 1)人口規模:両方の結果がでている

都市住宅論81

1)人口規模:両方の結果がでている 2)人口密度: a) internal density (人/室) b) building density (戸/棟or人/棟) c) neighbourhood density (戸/地区or人/地区) 3)異質性

人は同質性を好む,異質性→ストレスが増加する可能性 同質的でない限り近隣との交流は表面的なものだけ

Keane (1991)の研究 expressive

電話,小包みの受け渡し,非公式に訪問,助言を仰ぐ,パーティ・映画に行く

instrumental 食事・家事の助け合い,買い物をしてあげる,子供の世話,病気時の助け合い,

台所用品の貸し借り

都市住宅論82

台所用品 貸 借り

結果: 男性 expressive 社会的交流 ← 年齢↑,地区人口密度↑ instrumental社会的交流 ← 学歴↑,居住年数↑ 女性 expressive 社会的交流 ← 建物規模↑,年齢↑,フルタイム就業率↑, 結婚率↑ instrumental社会的交流 ← 建物規模↑,年齢↑,フルタイム就業率↑, 地区人口密度↓,団地規模↓,異質性↓

充分大きな住宅地で異質な者が多く集まっているのが理想的

小さな規模で異質同士の集まった建物に

都市住宅論83

小さな規模で異質同士の集まった建物にいるほど他の地区で社会的接触を保とうとする。

→人口規模,密度は交流機会を高めるので+の要因に

5.合理化技術と住宅地計画論

大量供給のための住宅地計画技術 高度成長期に日本住宅公団(現在の都市基盤整備公団)などによっ

て住宅が大量供給 効率的に住宅を供給するための技術が模索

住宅の標準設計の研究 住宅地に必要な施設の種類と原単位などその適正な設計基準

都市住宅論84

住宅地に必要な施設の種類と原単位などその適正な設計基準 住宅団地における人口予測手法の開発

土肥博至, 吉武泰水ほか「住宅地における人口構造1~5」『日本建築学会論文報告集』106~109, 1964-1965.

住様式や住戸計画,住棟の空間構成,住宅団地における生活実態を調査し空間構成と活動領域の関係を調べたり,居住者像や居住者の意識,アンケートによるコミュニティー形成過程の研究,適正な密度と集合方式の研究など 日本建築学会(編)『集合住宅計画研究史』日本建築学会, 1989. 日笠端「住宅地の計画単位と施設の構成に関する研究」学位論文,

1959.

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公団にみる住宅地計画の変遷(1)

都市住宅論85 都市住宅論86

googleマップより(2010.10.2)

公団にみる住宅地計画の変遷(2)

FS=Frontage-Saving:間口節約 間口を狭め、奥行きを伸ばした住戸プラン

密度は稼げるが、居住環境はやや犠牲になる

都市住宅論87

団地サイズ 標準的な寸法に満たない寸詰まりの畳や家具、敷物などの寸法のこと

80cm×160cmというモジュール(63型)

→88cm×176cmへ(1970年代以降)

住宅地の多様化

機能性,画一性の反省→住宅地に多様性

1970年代:

周辺地域に開けた住宅団地の計画の模索

住宅 質を重視した多様な住宅(規模 拡大 タウ

都市住宅論88

住宅の質を重視した多様な住宅(規模の拡大,タウンハウス)の供給

1980年代以降:

余裕室の配置

住戸プランの個性化

可変型住宅

共同住宅の高密度化

高密度な住宅地の設計方法 初期の公団住宅:中層住棟を平行に配置していく手法 私的な庭を 小限にしぼったタウンハウス 高密な住宅地としての高層・超高層住宅

高層居住:

都市住宅論89

高層居住: 子どもの自立性を弱めたり,外に出たがらない子どもが増えるなどの

弊害が指摘されたり,既存住民の見下ろされることへの抵抗感や眺望の妨げへの批判も

中層住棟を主とするような高密化設計手法(中低層混合,中高層混合,街区型)も 自動車の保有率もほぼ100%のもとでは,大規模な地下駐車場を設けな

いと住棟の足元には道路と駐車場ばかりが目に付く.

地価の高い地区においては,人工地盤と超高層・高層住宅の組み合わせという住宅開発形態も

社会変化への対応

高齢者や身障者への対応

住戸内のバリアフリー化

歩道部分の段差解消

車椅 通行 慮 た歩道 有効幅員 確保

都市住宅論90

車椅子通行に配慮した歩道の有効幅員の確保

横断歩道の時間的対応

認知しやすいサインシステム

視覚障害者のための誘導システム

公衆便所等の効果的な配置

上下移動の簡易化対応など

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多様なライフスタイルへの対応

可動間仕切り

家具やドアによる空間の弾力的な構成

都市住宅論91

家具やドアによる空間の弾力的な構成

個性的な住戸設計

駆体と内装を分離して,内装は入居者の嗜好に合わせて設計するSI住宅

集合住宅への入居者が設計段階から参加するコーポラティブ住宅など

地球環境問題への対応

エネルギー消費や廃棄物の削減を目指した環境共生住宅 環境共生住宅推進協議会(編)『環境共生住宅A-Z』ビオシティ,

1998.

都市住宅論92

建物の長寿命化,建物のライフサイクルに配慮した建材や建設方法 尾島俊雄(監修)『完全リサイクル型住宅』早稲田大学出版部, 1999.

都市構造の探求も 川村健一・小門裕幸『サステイナブル・コミュニティ』学芸出版社,

1995.

6.既成市街地整備の計画論

既成市街地整備

木造密集地域の再生

都心住宅地の再建

都市住宅論93

都心住宅地の再建

敷地共同化

建替問題

自力更新など

対象地域の実態から改善のための支援施策という視点のみにとらわれ,やや対処療法的な施策の提言に

計画論のパラダイムシフト

1980年代後半~:計画論のパラダイムシフトが論じられる 単一な計画論では普遍的に市街地改善に役立たない

多くの関係主体が共同で計画 更新していく必要性

都市住宅論94

多くの関係主体が共同で計画,更新していく必要性 計画論研究会「計画論の動向:パラダイム・シフトの視点から」『都市計画』153, 1988.

合意形成過程が重要 所有権・賃借権・開発権に対する意識改革,共同で計画を立案する動機付けなど

浅見泰司(1998)「住宅市街地形成論:交渉進行型住宅市街地整備システム」『都市住宅学』23, 17-22.