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様式1【公表】 1 「国際的な活躍が期待できる研究者の育成事業」 令和元年度事後評価資料(実施報告書) 整理番号 S2802 関連研究分野 (分科細目コード) 7701 (昆虫科学) 補助事業名 (採択年度) 若手研究者の日英共同「 PODS 国際研究ネットワーク」による病理・生理・細胞生物学の新 たな展開と研究プロジェクトリーダー育成(平成28年度) 代表研究機関名 京都工芸繊維大学 代表研究機関以外 の協力機関 なし 主担当研究者氏名 補助金支出額 (平成 28 年度) 23,317,311 (平成 29 年度) 36,860,000 (平成 30 年度) 32,500,000 (合計) 92,677,311 ( 公募応募当初の「事 業計画調書」に記載 ) 若手研究者の 派遣計画 (平成 28 年度) 2 (平成 29 年度) 4 2 人) (平成 30 年度) 4 4 人) (合計) 4 若手研究者の 派遣実績 (平成 28 年度) 1 (平成 29 年度) 3 1 人) (平成 30 年度) 3 3 人) (合計) 3 ( 公募応募当初の 「事業計画調書」 に記載の ) 研究者 招へい計画 (平成 28 年度) 1 (平成 29 年度) 3 1 人) (平成 30 年度) 4 3 人) (合計) 4 研究者の 招へい実績 (平成 28 年度) 1 (平成 29 年度) 3 1 人) (平成 30 年度) 5 2 人) (合計) 6 (参考) 派遣期間が 300 未満となり、最終 的に若手派遣研究 者派遣実績のカウ ントから除外され た者(外数) (平成 28 年度) 1 (平成 29 年度) 1 1 人) (平成 30 年度) 0 0 人) (合計) 1

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様式1【公表】

1

「国際的な活躍が期待できる研究者の育成事業」

令和元年度事後評価資料(実施報告書)

整理番号

S2802 関連研究分野

(分科細目コード)

7701

(昆虫科学)

補 助 事 業 名

( 採 択 年 度 )

若手研究者の日英共同「 PODS国際研究ネットワーク」による病理・生理・細胞生物学の新

たな展開と研究プロジェクトリーダー育成(平成28年度)

代表研究機関名 京都工芸繊維大学

代表研究機関以外

の協力機関 なし

主担当研究者氏名 森 肇

補助金支出額

(平成 28年度)

23,317,311円

(平成 29 年度)

36,860,000円

(平成 30 年度)

32,500,000 円

(合計)

92,677,311 円

(公募応募当初の「事

業計画調書」に記載

の )

若手研究者の

派遣計画

(平成 28年度)

2人

(平成 29年度)

4人

( 2人)

(平成 30年度)

4人

( 4人)

(合計)

4 人

若手研究者の

派遣実績

(平成 28年度)

1人

(平成 29年度)

3人

( 1人)

(平成 30年度)

3人

( 3人)

(合計)

3 人

(公 募 応 募 当 初 の

「 事 業計 画 調 書 」

に 記 載 の )研 究 者

招 へ い 計 画

(平成 28年度)

1人

(平成 29年度)

3人

( 1人)

(平成 30年度)

4人

( 3人)

(合計)

4 人

研究者の

招へい実績

(平成 28年度)

1人

(平成 29年度)

3人

( 1人)

(平成 30年度)

5人

( 2人)

(合計)

6 人

(参考) 派遣期間が 300日

未満となり、最終

的に若手派遣研究

者派遣実績のカウ

ントから除外され

た者(外数)

(平成 28年度)

1人

(平成 29年度)

1人

( 1人)

(平成 30年度)

0人

( 0人)

(合計)

1 人

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様式1【公表】

2

1 . 派 遣 ・ 招 へ い に よ る 人 的 交 流 を 通 じ て 得 ら れ た 成果の達成状況

(1)事業計画調書に記載した到達目標

(事業計画調書(3-(2))に記載した「研究課題を海外の研究グループと共同して行うことにより、国際研

究ネットワークの強化・拡大に関して客観的な指標に基づく到達目標」)

1)コールドチェーン不要なワクチンに関する研究

PODS国際研究ネットワークは本プログラムで、多角体内へのノロウイルス疑似粒子を内包した多角体(ノロウ

イルス多角体)とエボラウイルスタンパク質の多角体への固定化の最適化、エボラウイルスタンパク質を固定化

した多角体(エボラウイルス多角体)を作製する。同ネットワークを形成する最大の利点として、ケンブリッジ

大学病理研究所が有するバイオセーフティーレベル 4( BSL-4)の実験環境の獲得とエボラウイルスとノロウイル

ス研究の第一人者である Ian Goodfellow教授の研究グループとのネットワーク形成によりエボラウイルス及び

ノロウイルス両多角体の経口ワクチンとしての評価が可能となることが挙げられる。また、英国にはノロウイル

スのワクチン開発のための Noro Campという治験制度があることからも、企業( Cell Guidance Systems社)を組

み入れたネットワーク形成により、途上国において深刻なウイルス感染症であり、かつ世界的な流行(アウトブ

レーク)の危険性が指摘されているエボラウイルス病の撲滅や、途上国において致死率の高いノロウイルスによ

る感染性胃腸炎の発症抑制に有効で、なおかつ途上国でも使用可能なコールドチェーン不要な経口ワクチンの開

発を 3年間を目処に行う。

2)連続した細胞分化制御系に関する研究

本学は、マウス ES細胞やヒト iPS細胞から外胚葉、中胚葉、内胚葉の三胚葉分化を経た器官形成に最適な様々

な細胞増殖因子を固定化した多角体(サイトカイン多角体)のライブラリー化を平成 29年度までに完了する。こ

のために Cell Guidance Systems社は、線維芽細胞増殖因子の全 23種類の cDNAと神経細胞の分化制御に関与する

サイトカイン数種類と骨形成に関与するサイトカインの cDNAを提供する。作製したサイトカイン多角体のライブ

ラリーを用いて、平成 29年度から実際に in vitroでの連続した細胞分化、組織・器官形成をケンブリッジ大学幹

細胞研究所で行う。

3)オーファン受容体チップに関する研究

受容体はリガンドと非常に高い結合の特異性を持っており、受容体を固定化した多角体はリガンドとの結合を

in vitroで再現できる。オーファン受容体とはリガンドが不明の受容体の総称であるが、人の疾患への関与など

、生理的に重要なものも多い。オーファン受容体多角体は培養容器などに貼り付け、細胞抽出物と反応させるこ

とで、未知のリガンドを回収できる。このような材料が開発できれば、新規リガンドの探索のための強力なツー

ルとなる。 Cell Guidance Systems社からオーファン受容体の cDNAライブラリーの提供を受け、本学でオーファ

ン受容体ライブラリー化を平成 29年度中に行い、両者間でリガンドの探索を開始する。

ところで、 2013年度から本事業応募時までに本学の研究グループが発表した論文の学術雑誌の IF値の最高は

17.493であり、また常時 IF値が 5~ 6もしくはそれ以上の学術雑誌にも論文を発表し、また、 citation (SciVal)

は主担当研究者(森)が 1,176、研究担当者(山口)が 1,292であるが、本プログラムにおいて、よりハイレベル

な学術雑誌への論文掲載とさらなる citationの上昇を目指す。

(2)上述の到達目標に対する達成状況の自己評価とその理由

【自己評価】

□期待を上回る成果を得た

■十分に達成された

□おおむね達成された

□ある程度達成された

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様式1【公表】

3

□ほとんど達成されなかった

【理由】

本学から派遣した加藤容子助教は、「コールドチェーン不要なワクチンに関する研究」を主に担当した。国内

では扱えないエボラウイルスのタンパク質を始め、ジカウイルスやノロウイルスなどのタンパク質を発現し、こ

れら発現タンパク質の PODSによる抗原作製を行った。そして、これら抗原をマウスに投与し、各抗原に対する抗

体価の上昇を確認することができた。こういった動物実験は物理的封じ込め施設が整備された研究機関でしか行

えないため、当人にとっては大変貴重な体験となった。

同様に本学から派遣した須鎗理特任助教、 Edward Bartlett特任研究員は、「オーファン受容体チップに関す

る研究」を担当し、主にタンパク質としては取り扱いが非常に困難なタンパク質、具体的には ADPリボシル化タ

ンパク質の PODSによるチップ化を行い、この ADPリボシル化タンパク質が胚発生時にどのような所で発現し、ま

たどのような機能を担っているかを解明することができた。さらに、「連続した細胞分化制御系に関する研究」

に必要となる多層構造を持つ PODS crystalの作製には PODSへのタンパク質の内包化のタイミングを調整するこ

とで、多層構造からなる PODS crystalの作製ができることを示した。

さらに、ネットワーク先のケンブリッジ大学、 Cell Guidance Systems社から何度も研究者が本学の研究室に 1

ヶ月から 2か月間滞在し、研究を行いながら情報交換を行うことができた。

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様式1【公表】

4

2.国際共同研究課題の到達目標及びその達成状況

(1)事業計画調書に記載した国際共同研究課題の研究目的及び到達目標

(事業計画調書(3-(2))に記載した国際共同研究課題の研究目的及び到達目標(「研究の学術的背景」及

び「当該研究領域における本研究課題の学術的な特色や独創的な点、及び事業期間内に何をどこまで明らかにし

ようとするのか、到達目標とその検証方法」))

①研究の学術的背景

昆虫ウイルスが作るタンパク質微結晶(多角体)は、ウイルスがコードするポリヘドリンと呼ばれる多角体タ

ンパク質が会合し、立方体の結晶構造をとったものである。この多角体は内包したウイルスを保護する性質があ

ることが知られていたが、京都工芸繊維大学の研究グループは、この特徴を生かして任意のタンパク質を多角体

の中に内包(固定化)することで、熱や乾燥などの外部環境からタンパク質を保護するためのコンテナ(入れ物

)として利用する方法を開発した。具体的にはカイコ細胞質多角体病ウイルスの多角体へのタンパク質の固定化

は、ウイルスがこの多角体に内包される仕組みを利用した VP3タグと、多角体の結晶化に特に重要である H1タグ

を利用した方法で、さらに VP3タグはタンパク質の C末に、 H1タグはタンパク質の N末に融合するのが適している

ことを明らかにした。この多角体にタンパク質を内包するシステムである PODSの特徴を生かして、PODS国際研究

ネットワークは次の 3つの課題解決を目指す。

1)コールドチェーンのない途上国での感染症の状況

エボラ出血熱は、フィロウイルス科エボラウイルス属のエボラウイルスを病原体とする急性のウイルス性感染

症である。このエボラ出血熱は、致死率の高さが特徴で、20%から最高で 90%程度に達する。ウイルスの空気感

染は無いとされているが、飛沫感染は否定できず、また経口感染の可能性も重視されている。

一方、ノロウイルスはカリシウイルス科ノロウイルス属のウイルスで、非細菌性急性胃腸炎を引き起こす。感

染者の糞便や吐瀉物、あるいはそれらが乾燥したものから出る塵埃を介して経口感染するほか、河川を経由して

蓄積された貝類の摂食による食中毒の原因になる場合もある。

エボラウイルスもノロウイルスも途上国での医療環境の未整備が原因で感染の流行や致死率の高さが深刻な

問題である。もし仮にこれらのウイルスに対するワクチン開発が進んだとしても、ワクチンなどの医薬品の保存

などに必要なコールドチェーンの整備は途上国においては難しいというのが現状である。

2)幹細胞からの細胞分化

未分化の幹細胞が増殖し、それぞれの機能を持った細胞に分化していく過程はまさに連続した生命現象である

。この生体内での細胞の増殖や分化は、細胞外マトリックスに保持された細胞増殖因子が適切な時期に細胞に働

きかけることで誘導される。しかし、現状では試験管内( in vitro)で、細胞増殖因子による細胞の増殖・分化

のスイッチングを再現できる実験系が存在しない。このため、細胞の増殖や分化を制御するためには、その都度

適切な細胞増殖因子を添加しなければならないというのが現状である。

3)オーファン受容体について

細胞表面にあるオーファン受容体(リガンドが不明の受容体の総称)は、人の疾患への関与など、生理的に重

要なものも多いことから、創薬や生理機能解明のための研究対象として注目されている。しかし、リガンドが不

明であるため、世界的に見ても詳細な研究に至っていない。オーファン受容体に結合するリガンドの探索は創薬

に直結すると見込まれている。

②当該研究領域における本研究課題の学術的な特色や独創的な点、及び事業期間内に何をどこまで明らかにし

ようとするのか、到達目標とその検証方法

本プログラムでは、上記 3つの課題について、ケンブリッジ大学と同大学キャンパス内に研究所を置く Cell

Guidance Systems社と PODS国際研究ネットワークによる共同研究を行う。

1)コールドチェーン不要なワクチンに関する研究

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様式1【公表】

5

エボラウイルスは、体細胞の構成要素であるタンパク質を分解する。特に、血管を構成する細胞を破壊するこ

とで、肝臓を始めとする全身の組織・器官から出血させ、その血液・体液が感染源となる。エボラウイルスは WHO

のリスクグループ 4の病原体に指定されており、バイオセーフティーレベルは最高度の 4が要求されている。この

ため、我が国においてはワクチン開発などの研究を遂行することが困難である。また、ノロウイルスに関しては

、ウイルスの増殖や変異株の単離などに必要な同ウイルスの実験に使用できる培養細胞系が存在せず、さらにワ

クチン開発に必要な二重盲検試験を実施する環境が我が国には整備されていない。この PODS国際研究ネットワー

クの形成によって、コールドチェーンを必要としない、途上国において使用可能な経口ワクチンの開発と、その

安全性と有効性を学術的に評価する。

2)連続した細胞分化制御系に関する研究

PODS国際研究ネットワークは、未分化の細胞が増殖し、それぞれの機能を持った細胞に分化していくという連

続した過程を in vitroで再現するために、細胞の増殖や分化に必要な各種細胞増殖因子の放出や活性制御を時間

的、空間的にコントロールできる、各層に異なった細胞増殖因子を内包した革新的な細胞増殖因子の徐放剤・固

定化剤を開発する。

3)オーファン受容体チップに関する研究

受容体は創薬のターゲットや生理機構の解明などの研究対象として扱われている。そこで、PODS国際研究ネッ

トワークにおいて、多角体にオーファン受容体を固定(チップ)化するとともに、ライブラリー化を行う。これ

らを用いて実験系を構築し、新規リガンドとの特異的な結合を再現することにより、創薬に繋がる新規リガンド

の探索を目指す。

(2)上述の到達目標等に対する達成状況の自己評価とその理由

【自己評価】

□期待を上回る成果を得た

■十分に達成された

□おおむね達成された

□ある程度達成された

□ほとんど達成されなかった

【理由】

「コールドチェーン不要なワクチンに関する研究」に関しては、エボラウイルス、ジカウイルス、ノロウイル

スなどを内包化した PODS crystalの抗原性の確認を行った。また、ノロウイルス疑似粒子を内包した PODS crystal

の形成を原子間力顕微鏡で確認した。さらに、マウスノロウイルスタンパク質の PODS crystalを経皮投与した後

の中和抗体価の上昇を確認したが、感染防御能の獲得には至らなかった。これはノロウイルスの感染防除には粘

膜免疫が重要であると考えられており、今後ノロウイルスタンパク質の PODS crystalを経鼻あるいは経口投与し

た後の中和抗体価の測定と感染防御試験を行う。また、ウイルスタンパク質を内包化した PODS crystalの熱安定

性試験を行うと共に、これらノロウイルスタンパク質 PODS crystalで得られた結果をもとにエボラウイルス、ジ

カウイルス PODS crystalでも動物実験を行う計画を立てるにまで至った。

「連続した細胞分化制御系に関する研究」については、その目的に必要となる多層構造を持つ PODS crystal

の作製に成功し、現在論文作成中である。

「オーファン受容体チップに関する研究」については、まず PODSは取り扱いの困難なタンパク質をチップ化す

ることで、それを抗原として抗体作製に利用できることを示したが、これにより、ヒストン H1がセリン ADPリボ

シル化修飾されるタンパク質の一つとして同定された。今後は、DNA損傷前後で、このセリン ADPリボシルがどの

ようにクロマチン構造変換を制御しているかを解明することが大変重要であることを示すことができた。

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様式1【公表】

6

3 . 今 後 の 展 望 に つ い て

(1)人材育成の効果について

(人材育成のための計画が効果的に遂行され、今後、若手派遣研究者が国際研究ネットワークの核として活躍す

ることが期待できるか。また、人材育成のための計画が組織的な人材育成モデルとして発展し、次の世代の若手

研究者の育成につながることが期待できるか。)

① 人材育成の効果を生み出すための計画及びその実施状況

平成30年度に、若手研究者が中心となって日英間の研究ネットワーク「 PODS国際研究ネットワーク」を構築

するよう計画を見直した。また、研究プロジェクトリーダーの育成も新たに柱の一つとした。

この計画見直しに伴い、平成30年度には2名の若手研究者を追加して招へいすることとし、合計4名の若手

研究者を受け入れた。このうち、英国側の若手研究者1名と本学研究者等で国際共著論文を発表する成果を得た

。また、本事業開始時に准教授であった担当研究者の小谷英治氏は、平成30年には教授に昇進し、今後、本学

の研究を牽引する研究プロジェクト長( principal investigator)となりうるものと期待される。

② 本事業で支援した若手研究者の研究人材としての将来性について

加藤容子助教はこの海外派遣によって成果を得ることができ、それに伴い本学でテニュアが付与される見込で

ある。(令和元年8月現在審査中)須鎗理特任助教と Edward Bartlett特任研究員については、引き続き英国オ

ックスフォード大学において研究を継続し、今後、国際的な活躍が期待できる研究者としての活動が見込まれる

③ 自己資金、若しくは他の競争的資金等による海外派遣・招へい等の機会を含む若手研究者の研鑽・育成の事

業の継続・発展(又はその見込み)状況

上記の通り、引き続き共同研究を行い、その研究レベルを維持するために二国間での共同研究プログラムなど

への申請をする計画である。また、本学は、文部科学省スーパーグローバル大学創成支援事業に採択されており、

若手教員等を1年単位で海外の大学に派遣する事業を実施している。令和元年度においても、約10名の教員を

海外に派遣する予定である。

(2)国際研究ネットワークについて

(これまでの実施状況を踏まえて、事業実施期間終了後も、海外の研究機関等との研究ネットワークが継続・発

展する見込みがあるか。若手派遣研究者が今後研究ネットワークの核として活躍する見込みがあるか。また、組

織として当該研究領域における国際研究ネットワークのハブとなることが期待できるか)

① 本事業の相手側を含む海外の研究機関との研究ネットワークの継続・拡大(又はその見込み・将来構想)状

況(組織において本事業で支援した若手研究者に期待する役割も含めて)

このように若手研究者が一定期間相手側の研究室に滞在し、研究をすることは個々の若手研究者だけではな

く、研究室にいる他の研究者、大学院生らへの刺激になり、単なる 1+ 1 が 2 ではなく、 3 にもあるいは 5 や 10

にまで良い影響を及ぼすということを確認することができた。このため、こういった取り組みを継続し、さらに

発展させることが重要であることを再認識した。

また、派遣した若手研究者のうち 2 名については、引き続き英国に留まり、オックスフォード大学において研

究を継続するため、今後も日英間の国際研究ネットワークの架け橋となることが期待される。

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様式1【公表】 (資料1)

7

資料1 実施体制

① 日 本 側 研 究 グ ル ー プ 事 業 実 施 体 制

フ リ ガ ナ 担当研究者氏名 所属機関 所属部局

職名

(身分) 専門分野 備考

主担当研究者

森 E

モリ

A A E 肇 E

ハジメ

京都工芸繊維大学 応用生物学系 教授 昆虫ウイルス学

担当研究者

A E山口 E

ヤマグチ

A A E政光 E

マサミツ

京都工芸繊維大学 応用生物学系 教授 遺伝学

A E伊藤 E

イ ト ウ

A A E雅 E

マサ

A A E信 E

ノブ

京都工芸繊維大学 応用生物学系 教授 遺伝学

A E高野 E

タ カ ノ

A A E敏 E

トシ

A A E行 E

ユキ

京都工芸繊維大学 応用生物学系 教授 遺伝学

A E井上 E

イノウエ

A A E喜 E

ヨシ

A A E博 E

ヒロ

京都工芸繊維大学 応用生物学系 准教授 細胞生物学

A E小谷 E

コ タ ニ

A A E英 E

エイ

A A E治 E

京都工芸繊維大学 応用生物学系 教授 昆虫生理学

若手研究者

A E加藤 E

カ ト ウ

A A E容子 E

ヤ ス コ

京都工芸繊維大学 応用生物学系 助教 細胞生物学

A E須鎗 E

ス ヤ リ

A A E 理 E

オサム

京都工芸繊維大学 研究戦略推進本部 特任助教 遺伝学

A EEdward E

エ ド ワ ー ド

A A

EBartlett E

バ ー ト レ ッ ト

京都工芸繊維大学 研究戦略推進本部

特 任 研 究

遺伝学、細胞生

物学

計9名

② 相手側となる海外の研究グループ(海外の連携機関)

研究機関名 相手側研究者氏名

(招へいした研究者は※印を表示 )

職名

(身分) 備考

派遣した

若手研究者氏名

University of

Cambridge

Ian Goodfellow

Professor

加藤容子

須鎗 理

Edward Bartlett

Cell Guidance

Systems

Michael Jones(※)

Christian Pernstich(※)

Charlotte Marris

Raj Gandhi(※)

Ganna Yakovleva(※)

Ciara Jade Whitty(※)

Nicholas Michael James(※)

CEO

Researcher

Researcher

Researcher

Researcher

Researcher

Researcher

(H30.3.31まで )

(H29.10.2追加 )

(H29.10.2追加 )

(H30.4.1追加 )

(H30.4.1追加 )

加藤容子

Edward Bartlett

University of Ivan Ahel Senior Research 須鎗 理

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様式1【公表】 (資料1)

8

Oxford Fellow

計3機関

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様式1【公表】 (資料2)

9

資料2 双方向の人的交流にかかる資料

(1)若手研究者の選抜方針・基準、選抜方法の概要

最近の研究活動の内容や、語学力等海外に長期間滞在できるかどうかの能力によって選

抜を行った。

(2)派遣及び招へいの支援体制の概要

(日本側からの派遣者及び連携機関からの招へい者に対して組織としてどのようなバック

アップ体制をとったかについて記載してください。)

【派遣者に対する支援体制】

事務局の国際課、人事労務課及び研究推進課が中心となり、派遣中の給与送金ならび

に査証取得手続き等の支援を行った。これらの支援により、派遣者が研究に集中できる

環境を整えることができた。

【招へい者に対する支援体制】

事務局の国際課、経理課及び研究推進課が中心となり、航空券や宿泊先の手配ならび

に滞在中の旅費支払等の各種手続きを行った。これらの支援により、限られた招へい期

間を有効に活用でき、研究を円滑に遂行することができた。

(3)若手研究者の海外派遣計画及び研究者の招へい計画の見直し(増減)状況とその理由

【派遣計画】

応募時には4名(助教2名及び特任研究員2名)を派遣予定であったが、助教のうち

高木圭子(派遣者①)が健康上の理由により平成30年度の派遣を取りやめたことに伴

い、最終的な派遣人数は3名となった。なお、高木助教が派遣中に行う予定であった研

究は、派遣者④Edward Bartlett 特任研究員が行ったため、オーファン受容体チップに

関する研究は当初の計画どおり進めることができた。

【招へい計画】

当初4名の研究者を招へい予定であったが、Ian Goodfellow 教授と Charlotte Marris

研究員が都合により渡日できなくなった。その代わりとして、Raj Gandhi 研究員(招へ

い者⑥)、Ganna Yakovleva 研究員(招へい者⑦)、Ciara Jade Whitty 研究員(招へい

者⑧)及び Nicholas Michael James 研究員(招へい者⑨)の4名の若手研究員を追加招

へいした。これにより、当初計画を2名上回る、6名を招へいすることができた。

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様式1【公表】 (資料2)

10

(4)若手研究者が果たした役割にかかる成果の概要

① 派遣された若手研究者の成果

(資料4に記載するような研究成果の発信状況等だけではなく、国際共同研究における役割を含め、将

来的に当該研究領域において中核的な役割を担う活躍が見込まれるか等の観点も含めて記載してくだ

さい。)

現在、派遣期間中の研究内容については、論文投稿中である。本学は工科系大学であり、

こういった海外の一流大学のウイルス研究所、病理研究所との共同研究、特に若手研究者

を長期間派遣することでの共同研究は大きな成果を生み出すことがわかった。特に、派遣

者②加藤容子助教については本学のテニュアを獲得する見込(令和元年8月現在審査中)

であるが、今後は本学の中心的な研究者へステップアップするものと期待される。

② 派遣した機関・組織の成果

(機関等として組織的に若手研究者を育成する枠組みが構築されたか、また本事業による派遣・招へい

が今後も維持・継続されるか等の観点も含めて記載してください。)

現在、大学は若手教員を増やす方向で、人事計画を進めているが、もちろんそれは質の

確保も大変重要である。こういった制度を活用し、その採用された若手教員が一流大学で

学ぶことができる機会は非常に重要であると考える。

そういった観点から、このような取り組みへの応募を大学全体として支援し、採択後は

大学全体がその進捗を支えることが重要である。

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様式1【公表】 (資料2)

11

(5)若手研究者の派遣実績の詳細【 氏 名 の み 非 公 表 】 ※派遣者毎に作成すること。

派遣者②:助教

(当該若手研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:連続した細胞分化制御系に関する研究

・多層構造多角体の作製

・ノロウイルス疑似粒子の多角体への固定化

・エボラウイルスタンパク質の多角体への固定化

・ノロウイルス・エボラウイルス多角体のマウスへの経口投与

・ショウジョウバエ個体内における卵巣発育の解析

(具体的な成果)

当初は多層構造多角体に関する研究を担当したが、後半は主にウイルスタンパク質を内

包化した PODS crystal に関する研究を担当した。エボラウイルス、ノロウイルス、ジカ

ウイルスの構成タンパク質の PODS crystal の作製とそれを用いた免疫試験、具体的には

抗体価及び中和抗体価の測定、感染防御試験を行った。卵黄遺伝子発現調節領域から母

性遺伝子発現調節領域への変更、また卵黄タンパク質が卵に取り込まれる性質を持つこ

とから、卵黄遺伝子とレポーター遺伝子の融合タンパク質を発現するベクターの構築を

行った。また、昆虫培養細胞を用い、CRISPR/Cas9 によるゲノム編集技術による新たな

細胞株の樹立を行った。

派遣先

(国・地域名、機関名、部局名、受入研究者)

派遣期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

英 国 、 Cell Guidance Systems、 Michael

Jones

21日

89日

90日

200日

英国、University of Cambridge、Institute

of Pathology 、 Ian Goodfellow

10日

50日

40日

100日

派遣者③:特任助教

(当該若手研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:コールドチェーン不要なワクチンに関する研究、連続した細胞分化制御系に

関する研究

・多層構造多角体の作製

・取扱が困難なタンパク質のチップ化

・同チップを用いたショウジョウバエ個体内に ADP リボシル化タンパク質の解析

(具体的な成果)

発現時期の調整による複数タンパク質の PODS crystal への内包化による多層構造多角体

の作製に成功した。また、PODS は取り扱いの困難なタンパク質をチップ化することで、

それを抗原として抗体作製に利用できることを示した。また、この PODS チップを用いて

ヒストン H1 がセリン ADPリボシル化修飾されるタンパク質の一つとして同定することが

できた。今後は、DNA 損傷前後で、このセリン ADP リボシルがどのようにクロマチン構

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様式1【公表】 (資料2)

12

造変換を制御しているかを調べるかが重要であることを示した。

派遣先

(国・地域名、機関名、部局名、受入研究者)

派遣期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

英国、University of Cambridge、Institute

of Pathology 、 Ian Goodfellow

200日

91日

291日

英国、University of Oxford、Sir William

Dunn School of Pathology、 Ivan Ahel

131日

271日

402日

派遣者④:特任研究員

(当該若手研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:連続した細胞分化制御系に関する研究、オーファン受容体チップに関する研

・多層構造多角体の作製

・取扱が困難なタンパク質のチップ化

・同チップを用いたショウジョウバエ個体内に ADP リボシル化タンパク質の解析

(具体的な成果)

PODS に内包化するタンパク質の発現時期を調整することで複数タンパク質の PODS

crystal への内包化による多層構造多角体の作製に成功した。具体的には、H1/EGFP を持

続的に発現する細胞に polyhedrin を発現するウイルスを感染させた後、さらに H1/DsRed

を発現するウイルスを感染させることで、多角体内部に H1/EGFP が、またその外部に

H1/DsRed が内包された多層構造多角体が得られることを明らかにした。さらに、DNA 損

傷前後でのセリン ADP リボシルによるクロマチン構造変換の制御の解明が重要であるこ

とを見出した。

派遣先

(国・地域名、機関名、部局名、受入研究者)

派遣期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

英 国 、 Cell Guidance Systems、 Michael

Jones

45日

183日

228日

英国、University of Oxford、Sir William

Dunn School of Pathology、 Ivan Ahel

30日

182日

212日

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様式1【公表】 (資料2)

13

【参考】派遣期間が 300 日未満となり、最終的に若手派遣研究者派遣実績のカウントか

ら除外された者

準派遣者:助教

(当該若手研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:コールドチェーン不要なワクチンに関する研究、オーファン受容体チップに

関する研究

・オーファン受容体の多角体への固定化とそのライブラリー化

・生体抽出物からのリガンド探索

・新規リガンド探索

(具体的な成果)

PODS crystal を構成するタンパク質 polyhedrin 分子内のランダムコイルのアミノ酸 3

残基を除去することで空隙を有する変異 PODS crystal を作製した。ホルモン受容体をこ

の変異 PODS crystal に内包化し、リガンドであるホルモンとの結合能を調べた。

派遣先

(国・地域名、機関名、部局名、受入研究者)

派遣期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

英国、University of Cambridge、Institute

of Pathology 、 Ian Goodfellow

20日

20日

40日

英 国 、 Cell Guidance Systems、 Michael

Jones

27日

28日

55日

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様式1【公表】 (資料2)

14

(6)研究者の受入実績の詳細【 氏 名 の み 非 公 表 】 ※招へい者毎に作成すること。

招へい者①:研究員

(当該研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:連続した細胞分化制御系に関する研究

・多層構造多角体の機能改変

・機能改変した多層構造多角体への細胞増殖因子の固定化

(具体的な成果)

多層構造多角体を用いて、内層と外層にどのような細胞増殖因子を内包化することで連

続した細胞の応答、具体的には幹細胞からの細胞分化を誘導するかなどの検討を行うと

共に、内層の H1/EGFP と外層の DsRed の分布を共焦点レーザー顕微鏡を用いて詳細に解

析した。

招へい元(機関名、部局名、国名)及び日本

側受入研究者(機関名)

受入期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

Cell Guidance Systems、英国

森 肇(京都工芸繊維大学)

16日

15日

31日

招へい者③:CEO

(当該研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:連続した細胞分化制御系に関する研究

・多層構造多角体の機能改変

・機能改変した多層構造多角体への細胞増殖因子の固定化

(具体的な成果)

本学において、細胞増殖因子を入れた多角体による細胞の増殖及び分化制御に関する研

究打合せ、さらに PODS の事業化についても検討した。

招へい元(機関名、部局名、国名)及び日本

側受入研究者(機関名)

受入期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

Cell Guidance Systems、英国

森 肇(京都工芸繊維大学)

8日

20日

16日

44日

招へい者⑥:研究員

(当該研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:連続した細胞分化制御系に関する研究

・多層構造多角体の機能改変

・機能改変した多層構造多角体への細胞増殖因子の固定化

(具体的な成果)

本学において、細胞増殖因子を入れた多角体による細胞の増殖及び分化制御に関する実

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様式1【公表】 (資料2)

15

験を行った。特に、BMP-2 を内包化した多角体による骨再生に関する実験を行った。

招へい元(機関名、部局名、国名)及び日本

側受入研究者(機関名)

受入期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

Cell Guidance Systems、英国

森 肇(京都工芸繊維大学)

16日

16日

招へい者⑦:研究員

(当該研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:コールドチェーン不要なワクチンに関する研究、連続した細胞分化制御系に

関する研究

・ノロウイルス疑似粒子の多角体への固定化

・エボラウイルスタンパク質の多角体への固定化

・ノロウイルス・エボラウイルス多角体のマウスへの経口投与

(具体的な成果)

本学において、マウスノロウイルスタンパク質を内包化した PODS crystal の表面構造を

原子間力顕微鏡で観察した。

招へい元(機関名、部局名、国名)及び日本

側受入研究者(機関名)

受入期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

Cell Guidance Systems、英国

森 肇(京都工芸繊維大学)

20日

20日

招へい者⑧:研究員

(当該研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:連続した細胞分化制御系に関する研究

・多層構造多角体への細胞増殖因子の固定化

・作製した多層構造多角体での細胞増殖および分化制御

上記、研究に関する打ち合わせと、本学研究室での実験を行う。

(具体的な成果)

本学において、多角体に内包化された細胞増殖因子がどのような仕組みで徐放されるの

かについての実験を行った。

招へい元(機関名、部局名、国名)及び日本

側受入研究者(機関名)

受入期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

Cell Guidance Systems、英国

森 肇(京都工芸繊維大学)

18日

18日

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様式1【公表】 (資料2)

16

招へい者⑨:研究員

(当該研究者の国際共同研究における役割を含めた具体的な研究活動)

研究内容:連続した細胞分化制御系に関する研究

・ノロウイルス GI 遺伝子型及び GII 遺伝子型主要キャプシドタンパク質の発現と PODS

作製

・上記、研究に関する打ち合わせと、本学研究室での実験を行う。

(具体的な成果)

本学において、細胞増殖因子を入れた多角体による細胞の増殖及び分化制御に関する研

究打合せ、さらに PODS の事業化についても検討した。

招へい元(機関名、部局名、国名)及び日本

側受入研究者(機関名)

受入期間

合計 平成 28 年度 平成 29 年度 平成 30 年度

Cell Guidance Systems、英国

森 肇(京都工芸繊維大学)

12日

12日

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様式1【公表】 (資料3)

17

資料3 国際共同研究の計画概要・方法

(1)実施期間中における研究のスケジュールと実施内容の概要

1)コールドチェーン不要なワクチンに関する研究 スケジュール: ・エボラウイルスタンパク質 PODS crystal 作製(H28~H29) ・ノロウイルスタンパク質 PODS crystal 作製(H28~H29) ・ジカウイルスタンパク質 PODS crystal 作製(H28~H29) 実施内容: ・エボラウイルスタンパク質 4 種類の PODS crystal を作製した。(H28~H29) ・ヒトノロウイルスタンパク質の 2 種類の PODS crystal を作製した。(H28~H29) ・マウスノロウイルスタンパク質 2 種類の PODS crystal を作製した。(H28~H29) ・ジカウイルスタンパク質 4 種類の PODS crystal を作製した。(H28~H29) ・各 PODS crystal をマウスに経皮投与し、それぞれの抗原性を調べた。 ・マウスノロウイルス PODS crystal については、中和抗体価の測定及び感染防御試験

を行った。 2)幹細胞からの細胞分化 スケジュール: ・サイトカイン内包化 PODS crystal 作製 実施内容: ・サイトカインを内包化した PODS crystal(約 80 種類)を作製し、その生物活性を評

価した。 ・連続した細胞分化を制御するために必要となる複数種類のタンパク質を別々の層に内

包化した多層構造多角体を作製する系を構築した。 3)オーファン受容体について スケジュール:

・PODS crystal を構成するタンパク質 polyhedrin 分子内のランダムコイルのアミノ酸

3 残基を除去することで空隙を有する変異 PODS crystal を作製する。 実施内容:

・ホルモン受容体をこの変異 PODS crystal に内包化し、リガンドであるホルモンとの

結合能を調べた。 (2)成果の概要

エボラウイルス、ノロウイルス、ジカウイルスの各ウイルスタンパク質を内包化した

PODS crystal は抗原性を示すことがわかった。ただし、各タンパク質間での抗原性につい

ては差が見られた。 ヒトノロウイルス主要 capsid タンパク質を内包化した PODS crystal の場合、その表面

を原子間力顕微鏡で観察した所、図 1 に示すようにウイルス様疑似粒子が PODS crystalの表面に埋め込まれているような像が観察された。ノロウイルスの免疫反応の誘導にはこ

のようなウイルス様疑似粒子の形成が重要であることが知られており、この PODS crystalはワクチンとして使用できる可能性が示唆された。

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様式1【公表】 (資料3)

18

図 1 ノロウイルス様疑似粒子を内包化した PODS crystal の表面 左は上から、右は斜めから観察したイメージ

そこで、最も動物試験がやりやすいマウスノロウイルスの主要 capsid タンパク質を内包

化した PODS crystal を用いて、マウスでの中和抗体の誘導と感染防御試験を行った。そ

の結果、中和抗体の誘導が見られたが、感染を防御するまでには至らなかった。ノロウイ

ルスのワクチンは免疫誘導ができることが重要であることから、現在、このマウスノロウ

イルス PODS crystal の経鼻及び経口投与による中和抗体の誘導と感染防御能を調べてい

る。 多層構造多角体を用いて、内層と外層に別々の細胞増殖因子を内包化することで連続し

た細胞への刺激による連続した細胞分化を制御するために PODS crystal の内層と外層に 2種類の蛍光タンパク質を層状に内包化する系を構築した。図 2 は PODS crystal の内層の

H1/EGFP と外層の DsRed の分布を共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した結果である。

図 2 内層に EGFP、外層に DsRed を内包化した PODS crystal

一方、bone morphogenetic protein の中で BMP-2, BMP-4, BMP-7 を内包化した PODS crystal を用いて動物(競走馬)の骨折治療の試験がまもなくケンブリッジ大学で開始され

る計画である。

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様式1【公表】 (資料3)

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(3)本事業を契機として新たに始まった国際共同研究

(件)

合計 うち、相手先機関以外

1 0

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様式1【公表】 (資料4)

20

資料4.共同研究成果の発表状況

①学術雑誌等(紀要・論文集等も含む)に発表した論文又は著書

論文名・著書名 等 (論文名・著書名、著者名、掲載誌名、査読の有無、巻、最初と最後の頁、発表年(西暦)について記載してください。)

(以上の各項目が記載されていれば、項目の順序を入れ替えても可。)

・査読がある場合、印刷済及び採録決定済のものに限って記載してください。査読中・投稿中のものは除きます。

・本事業の研究成果で、DP(ディスカッション・ペーパー)、Web等の形式で公開されているものなど速

報性のあるものも、3件以内で付記することができます。

・さらに数がある場合は、欄を追加してください。

・著者名について、責任著者に「※」印を付してください。また、主担当研究者には二重下線、担当研究者に

は 下線 、派遣した若手研究者には 波線 、海外の主要連携研究者には斜体・太下線、連携研究者には

斜体・破線 を付してください。

・共同研究の相手側となる海外の研究機関との国際共著論文等には、番号の前に「◎」印を、また、それ以外

の国際共著論文については番号の前に「○」印を付してください。

・当該論文の被引用状況について特筆すべき状況があれば付記してください。

・上記のうち、主な発表論文のコピー(A4判)を2件以内で添付し、添付したコピーの右上にそれぞれに「事

業番号」を記載するとともに、当該論文の番号の前に「★」印を付してください。

1 Crystal engineering of self-assembled porous protein materials in living cells. Abe, S., Tabe, H., Ijiri, H., Yamashita, K., Hirata, K., Atsumi, K., Shimoi, T., Akai, M., Mori, H., Kitagawa, S., *Ueno, T. ACS Nano(査読あり)11, 2410–2419. (2017)

2 Bioengineered silkworms with butterfly cytotoxin-modified silk glands produce sericin cocoons with a utility for a new biomaterial.Otsuki, R., Yamamoto, M., Matsumoto, E., Iwamoto, S., Sezutsu, H., Suzui, M., Takaki, K., Wakabayashi, K., *Mori, H., *Kotani, E. Proc. Natl. Acad. Sci. USA(査読あり)114, 6740–6745. (2017)

3 Neuron-specific knockdown of the Drosophila fat induces reduction of life span, deficient locomotive ability, shortening of motoneuron terminal branches and defects in axonal targeting.Nakamura, A., Tanaka, R., Morishita, K., Yoshida, H., Higuchi, Y., Takashima, H., *Yamaguchi, M. Genes Cells(査読あり)22 (7), 662-669,

( ) 4 Frequencies of chromosome inversions changed in Drosophila melanogaster after the Fukushima Dai-ichi Nuclerar Power Plant Accident. Itoh, M., Kajihara, R., Kato, Y., Takano-Shimizu, T., and Inoue, Y. PLOS ONE ( 査 読 あ り )https://doi.org/10.1371/ journal.pone.0192096

5 Structure of in cell protein crystals containing organometallic complexes. Abe, S., Atsumi, K., Yamashita, K., Hirata, K., Mori, H., Ueno, T. PCCP. 20, 2986-2989. (2018) 査読有

6 Supramolecular protein cages constructed from a crystalline protein matrix. Negishi, H., Abe, S., Yamashita, K., Hirata, K., Niwase, K., Boudes, M., Coulibaly, F., Mori, H., Ueno, T. Chem. Commun., 54, 1988-1991. (2018) 査読有

◎7

Raman spectroscopy insight into Norovirus encapsulation in Bombyx mori cypovirus cubic microcrystals. Mori, H., Oda, H., Abe, S., Ueno, T., Zhu, W. L., Pernstich, C., Pezzotti, G. Spectrochim. Acta A, 203, 19-30. (2018) 査読有

8 Mutations in COA7 cause spinocerebellar ataxia with axonal neuropathy. Higuchi, Y., Okunushi, R., Hara, T., Hashiguchi, A., Yuan, J., Yoshimura, A., Murayama, K., Ohtake, A., Ando, M., Hiramatsu, Y., Ishihara, S., Tanabe, H., Okamoto, Y., Matsuura, E., Ueda, T., Yoda, T., Yamashita, S., Yamada, K., Koide, T., Yaguchi, H., Mitsui, J., Ishiura, H., Yoshimura, J., Doi, K., Morishita, S., Sato, K., Nakagawa, M., Yamaguchi, M., Tsuji, S. and Takashima, H. Brain, 141 (6), 1622-1636, (2018) (doi: 10.1093/brain/awy104) 査読有

9 The P element Invaded Rapidly and Caused Hybrid Dysgenesis in Natural Populations of Drosophila simulans in Japan. Yoshitake, Y., Inomata, N., Sano, M., Kato, Y., Itoh, M. Ecology and Evolution 8, 9590-9599. (2018) 査読有

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様式1【公表】 (資料4)

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②学会等における発表

発表題名 等 (発表題名、発表者名、発表した学会等の名称、開催場所、口頭発表・ポスター発表の別、審査の有無、発

表年月(西暦)について記載してください。)

(以上の各項目が記載されていれば、項目の順序を入れ替えても可。)

・発表者名は参加研究者を含む全員の氏名を、論文等と同一の順番で記載すること。共同発表者がいる場合

は、全ての発表者名を記載し、主たる発表者名は「※」印を付してください。発表者名について主担当研

究者には二重下線、担当研究者には 下 線 、派遣した若手研究者には 波 線 、海外の主要連携研

究者には斜体・太下線、連携研究者には斜体・破線を付してください。

・口頭・ポスターの別、発表者決定のための審査の有無を区分して記載してください。

・さらに数がある場合は、欄を追加してください。

・共同研究の相手側となる海外の研究機関の研究者との国際共同発表には、番号の前に「◎」印を、また、

それ以外の国際共同発表については番号の前に○印を付してください。

1 The construction of three-dimensional epithelial model with FGF-7-incorporated silk material. Maruta, R., Takaki, K., Sezutsu, H., Kotani, E., Mori, H. 第 41 回日本分子生物学会年会(横浜市、11/28-30, 2018)(ポスター)審査有

2 Challenging the rare intractable neurological diseases by Drosophila models. Yamaguchi M. Symposium in Cell and Developmental Biology Meeting 2018, 東京、審査有、2018 年 6 月審査有

3 Regulation of yorkie gene expression through its own non-coding region. Yoshida H., Umegawachi T., Koshida H., Yamada M., Ohkawa Y., Sato T., Suyama M., Krause H.M., Yamaguchi M. Workshop in Cell and Developmental Biology Meeting 2018, 東京、口演、審査有、2018 年 6 月

4 織田睦、吉武祐作、伊藤雅信、近藤るみ;日本のオナジショウジョウバエ自然集団における転移因子 P-element の動態調査 第 41 回日本分子生物学会年会(横浜市、11/28-30, 2018)(ポスター)審査有

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