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桜の開花予想に関する考察 埼玉支部 大貫信彦

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Page 1: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

桜の開花予想に関する考察

埼玉支部 大貫信彦

Page 2: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

はじめに

☆桜の開花予想

温度変換日数法(DTS)による・・・ 気象庁は1994年~2009年まで実施 民間の気象会社による独自の開花予想が定着

時として予想が1週間もずれてしまう・・・

精度の改善は

可能か!?

12/3/8 7時41分 2

全国で統一的な手法で行われるようになった!

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1.従来の開花予想の手法

解説資料第24号「新しいサクラの開花予想」 青野・小元(農業気象学会)

温度変換日数法?

DTS = exp { } 9.5×103(Ti-Ts)

Ti×Ts

DTS : the number of days transformed to standard temperature

Ti : 日平均気温(K) Ts : 標準温度(288.15K)

12/3/8 7時41分 3

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1.従来の開花予想の手法…②

12/3/8 7時41分 4

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1.従来の開花予想の手法…③

1.ある任意の期間の各年において、任意の日から開花日までのDTSの積算を求める。

2.各年のDTSの積算値の差が最小になる日を起算日とし、各年のその日から実際の開花日までのDTS積算値の平均を求め、その値に達した日を開花予想日とする。

3.この開花予想日と実際の開花日には若干のずれが存在している。

4.このずれの補正をするために、秋から冬にかけてどの程度の寒さを経過してきたかを、チルユニットの値を求めて補正する。

5.チルユニットの値の積算開始日は、その積算値が最小になる日とし、そこから各年のチルユニットの値を任意の同じ日(終算日)まで積算し、その値と各年の開花までに必要だった実際のDTSとの相関が最高になる日を求めて、その日を終算日として回帰式を求めて開花予想日の補正をする。

6.当年における実際の開花予想日の算出には、開花予想を実施する日までの実気温を使用して回帰式から開花までに必要なDTSを求め、そこから開花予想日までの期間には予想気温を使って必要なDTSに達した日を開花予想日とする。

開花予想作業の過程

12/3/8 7時41分 5

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1.従来の開花予想の手法…④

チルユニットの補正

12/3/8 7時41分 6

気温(℃) チルユニットの値(時間)

≦ 1.4 0

1.5~2.4 0.5

2.5~9.1 1.0

9.1~12.4 0.5

12.5~15.9 0

16.0~18.0 -0.5

18.1 ≦ -1.0

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2.今回の推定手法

1.統計処理のための期間を、1981年~2010年の30年間とした。

2.本州、四国、九州の25カ所を解析地点とした。

3.DTS起算日を、年ごとのDTS積算の差が最小になる日とせずに、解析結果による誤差が最良となる日とした。

4.DTSを算出する際の毎日の気温を、日平均気温だけでなく、日最高気温と最低気温との両方を使用して解析してみた。

5.チルユニットの補正に使う毎時の気温を、日最高気温と最低気温の直線近似から求めて使用した。※作業の簡素化

6.チルユニットの終算日を、DTSとの相関が最高になる日ではなく、解析結果による誤差が最良となる日とした。※3との関連性から

7.開花までに必要なDTSのかわりに、単純積算温度も使用して解析してみた。

8.寒さの補正として、チルユニットのかわりにDTSや単純積算温度も使用してみた。※相関が逆になる(マイナスではなくてプラス)

12/3/8 7時41分 7

Page 8: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

2.今回の推定手法…②

今回の解析の8パターン

No 暖かさの見積り 寒さの補正 使用温度データ 備考

(1) DTS チルユニット 日平均気温 ※気象庁

(2) DTS チルユニット 日最高・最低気温

(3) DTS DTS 日平均気温

(4) DTS DTS 日最高・最低気温

(5) 積算温度 チルユニット 日平均気温

(6) 積算温度 チルユニット 日最高・最低気温

(7) 積算温度 積算温度 日平均気温

(8) 積算温度 積算温度 日最高・最低気温

※暖かさの見積りでDTS、積算温度の起算日は、結果が最良となる日とした。 ※寒さの補正の起算日、終算日は同様に結果が最良となる日とした。 ※積算の基準温度はそれぞれの地点で結果が最良となる値を求めた。

12/3/8 7時41分 8

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3.東京の解析結果

東京 30年精度

(日) 起算日

秋の補正

起算日

秋の補正

終算日 積算

基準温度

単相関

係数

(1) 1.00 2/6 2/3 -0.63

(2) 0.87 2/3 1/20 -0.71

(3) 0.87 1/28 10/13 1/29 0.76

(4) 0.73 1/25 10/13 1/23 0.84

(5) 1.10 2/14 1/20 1.9℃ -0.51

(6) 1.00 2/5 1/16 3.1℃ -0.64

(7) 0.63 1/28 10/13 2/24 2.3℃ 0.91

(8) 0.60 1/25 10/13 2/20 4.2℃ 0.93

実際の解析表へ

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3.東京の解析結果…②

(1) 気象庁に準ずる

DTS チルユニット 日平均気温

12/3/8 7時41分 10

Page 11: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

3.東京の解析結果…③

(1)気象庁に準ずる

DTS チルユニット 日平均気温

12/3/8 7時41分 11

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3.東京の解析結果…④

(8)

積算温度 積算温度補正 日最高・最低気温

12/3/8 7時41分 12

Page 13: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

3.東京の解析結果…⑤

(8)

積算温度 積算温度補正 日最高・最低気温

12/3/8 7時41分 13

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4.全国25地点の解析結果

12/3/8 7時41分 14

仙台 福島

新潟 長野

宇都宮 水戸

熊谷 銚子

東京 甲府

福井 静岡

名古屋 京都

大阪 鳥取

岡山 広島

高松 松山

高知 福岡

熊本 宮崎

鹿児島

(合計 25点)

Page 15: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

4.全国25地点の解析結果…②

30年精度(単位:日)

12/3/8 7時41分 15

Page 16: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

25地点平均で最も良い精度を示すのは!

(8)日最高・最低気温を使用して積算温度を積算温度で補正をする

次いで(4)日最高、最低気温を使用してDTSをDTSで補正する

4.全国25地点の解析結果…③

30年精度(単位:日)

1.00日を下まわる

30年精度

25地点平均で最も精度が劣るのは?

(5)日平均気温を使用して積算温度をチルユニットで補正をする

次いで(7)日平均気温を使用して積算温度を積算温度で補正する

最良となることも…

地点別ではある!

12/3/8 7時41分 16

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4.全国25地点の解析結果…④

30年精度(単位:日)

12/3/8 7時41分 17

Page 18: 桜の開花予想に関する考察 · 3.dts起算日を、年ごとのdts積算の差が最小になる日とせずに、解 析結果による誤差が最良となる日とした。

チルユニットを使うか使わないか!

(1)(2)(5)(6)と(3)(4)(7)(8)との比較

4.全国25地点の解析結果…⑤

30年精度(単位:日)

使わない方が

精度が良い?

日平均気温を使うか最高・最低を使うか?

(1)(3)(5)(7)と(2)(4)(6)(8)との比較

日最高・最低を

使うべきだ!

12/3/8 7時41分 18

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DTSを使うか積算温度を使うか?

(1)(2)(3)(4)と(5)(6)(7)(8)との比較

顕著な差はないが、(5)は明らかに精度が劣る!

4.全国25地点の解析結果…⑥

30年精度(単位:日)

なんとも

言い難い?

12/3/8 7時41分 19

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4.全国25地点の解析結果…⑦

各地点解析パターン順位表

12/3/8 7時41分 20

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推定精度上位の(4)と(8)との比較

(4)は全体的に精度は良いが九州などで精度が落ちる

(8)は東北で下位の精度になることもあるが関東以西で良好となる

4.全国25地点の解析結果…⑧

日本の気候上の

地域差が原因?

各地点解析パターン順位表

12/3/8 7時41分 21

地域別でさまざまな違いが見られた

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5.考察・問題点

1.開花予想の手法について、DTSやチルユニットにこだわらずとも同等かあるいはそれ以上の推定精度で、開花予想が可能であることがわかった。

2.今後はそれぞれの手法に関して開花予想ができるシステムを作り上げ、実際に改善できるかどうか検証をしてみたい。

3.それと同時により推定精度の向上に寄与できるような開花推定の手法がないかどうかさらに検討してみたい。

例.DTSにおける変換特性値(9500)の検討

温度以外に開花に及ぼす影響がないかどうか

開花観測の現場の問題点

4.近似したチルユニットの補正→実際に毎時のデータを使用して補正

12/3/8 7時41分 22

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6.参考文献など

1.気象庁解説資料第24号「新しい開花予想」1996

2.気象庁ホームページ http://www.jma.go.jp/

3.青野靖之・小元敬男1990:農業気象45、243-249

12/3/8 7時41分 23

ご清聴ありがとうございます…