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-26- 地域銀行の業務展開と収益構造 神奈川大学 数阪孝志 (要旨) リレバンが取組まれた4年間で地域銀行の業務展開と収益構造には一定の変化があらわ れた。融資業務が中心的な位置を占めていることは変わらないものの、業務が多様化し、 非金利収入につながる業務のウエイトが高まっている。そのことが、収益構造としては、 役務取引等利益比率の急速な高まりとなってあらわれている。しかし、直接融資に結びつ かない取組みには、ビジネスマッチングのように評価を受けているものがある一方で、経 営改善支援のように本格的な取組みにまで至ったと評価しにくいものもある。地域銀行は、 本来の中小企業者向け貸出と最近伸びている消費者ローンに対するウエイトの濃淡の点だ けをみてもそれぞれ戦略に応じた多様な姿をあらわしており、今後恒久的な取組みとして 展開されるべき地域密着型金融においても、各々の特性に応じた対応が求められる。 はじめに 本稿は、2003年3月「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプ ログラム」が発表されて以降の4年間を中心に、地域銀行の業務展開と収益構造にどのよ うな変化が起こり、その特徴をどのようにとらえるべきかについて検討するものである。 1.地域銀行の組織上の変化 はじめに本稿が対象とする地域銀行の変化を組織の面から概観しておこう。 まず、地域銀行とは、業態として地方銀行(全国地方銀行協会加盟行)および第二地銀 (第二地方銀行協会加盟行)の両者を合わせたものであり、地域金融機関の中で株式会社 組織の銀行を総称するものである。 リレーションシップバンキング(以下リレバンと略)において金融庁が対象としている のは株式会社組織の地域銀行である地方銀行・第二地銀の2業態と協同組織金融機関の信 用金庫・信用組合の2業態(およびその中央組織)である。そのうち、地方銀行・第二地 銀をまとめて地域銀行と呼び、リレバン報告においても一括して取り扱われている。 従来の研究においては、地域金融機関の業態別の特徴を明らかにするためにも、地方銀 行・第二地銀を区分してきたが、業態を超える再編が進行したことから、その区分の意味 合いが変化してきた。リレバンにおいて両業態を集約して扱っているという行政上の措置 は、地域銀行をめぐる組織上の変化という背景から考えて合理性を有するといえよう。

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地域銀行の業務展開と収益構造

神奈川大学 数阪孝志

(要旨)

リレバンが取組まれた4年間で地域銀行の業務展開と収益構造には一定の変化があらわ

れた。融資業務が中心的な位置を占めていることは変わらないものの、業務が多様化し、

非金利収入につながる業務のウエイトが高まっている。そのことが、収益構造としては、

役務取引等利益比率の急速な高まりとなってあらわれている。しかし、直接融資に結びつ

かない取組みには、ビジネスマッチングのように評価を受けているものがある一方で、経

営改善支援のように本格的な取組みにまで至ったと評価しにくいものもある。地域銀行は、

本来の中小企業者向け貸出と 近伸びている消費者ローンに対するウエイトの濃淡の点だ

けをみてもそれぞれ戦略に応じた多様な姿をあらわしており、今後恒久的な取組みとして

展開されるべき地域密着型金融においても、各々の特性に応じた対応が求められる。

はじめに

本稿は、2003年3月「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプ

ログラム」が発表されて以降の4年間を中心に、地域銀行の業務展開と収益構造にどのよ

うな変化が起こり、その特徴をどのようにとらえるべきかについて検討するものである。

1.地域銀行の組織上の変化

はじめに本稿が対象とする地域銀行の変化を組織の面から概観しておこう。

まず、地域銀行とは、業態として地方銀行(全国地方銀行協会加盟行)および第二地銀

(第二地方銀行協会加盟行)の両者を合わせたものであり、地域金融機関の中で株式会社

組織の銀行を総称するものである。

リレーションシップバンキング(以下リレバンと略)において金融庁が対象としている

のは株式会社組織の地域銀行である地方銀行・第二地銀の2業態と協同組織金融機関の信

用金庫・信用組合の2業態(およびその中央組織)である。そのうち、地方銀行・第二地

銀をまとめて地域銀行と呼び、リレバン報告においても一括して取り扱われている。

従来の研究においては、地域金融機関の業態別の特徴を明らかにするためにも、地方銀

行・第二地銀を区分してきたが、業態を超える再編が進行したことから、その区分の意味

合いが変化してきた。リレバンにおいて両業態を集約して扱っているという行政上の措置

は、地域銀行をめぐる組織上の変化という背景から考えて合理性を有するといえよう。

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業態とは、金融機関が業界組織を結成し、行政上の扱いも同一基準で行うものとして、

機能してきた。全国地方銀行協会(地銀協)、第二地方銀行協会(第二地銀協)は、それぞ

れ設立の歴史的経緯が異なる銀行が作った団体であり、両協会に加盟している銀行には重

複はなく、その地域において果たす役割等にも一定の格差がみられたことから、計数をも

って実態を把握する際には業態という区分は意味を持つものとして機能してきた。

地方銀行は、明治期以来の歴史的基盤の上に、「一県一行主義」に基づく銀行合同運動の

結果、地域において中心的な地位を占めるに至った銀行と、第二次大戦後の新設銀行から

構成されている(例外は西日本シティ銀行)。一方、第二地銀は、無尽会社に端を発する戦

後の相互銀行の流れを汲む銀行で、平成元年に普通銀行へ一斉転換したグループ(例外は

八千代銀行)であり、両者の間には地盤とする地域において大枠ではその役割、性格に差

が認められてきた。

しかし2000年前後以降、金融持株会社によるグループ化の動きが大きく進展し、業態の

垣根を超える再編が現実化するに至り、グループとしてとらえた金融勢力の実勢と業態と

してとらえた銀行単位の動向との間に齟齬が目立ち始めた。

持株会社による業態を超えた再編としてりそなホールディングス(HD)の例がある。

地方銀行の大阪銀行と第二地銀の近畿銀行が合併し近畿大阪銀行(地方銀行)として新

たなスタートをきったのが1999年4月であった。2000年12月には第二地銀の奈良銀行とと

もに大和銀HDの子会社となり、その後、現在のりそなHDに至るもその構成員であり続

けている。なお、奈良銀行はりそな銀行に吸収されている。地方銀行の近畿大阪銀行は、

りそなグループの一員として機能しており、単体としての行動をそれだけ取り出して見る

ことには限界があるといえよう。

また、現在、りそなHDに属する埼玉りそな銀行は、埼玉県を地盤とし事実上地域限定

で営業する地域金融機関であるが、地銀協、第二地銀協のどちらにも加盟しておらず、全

国銀行協会の「全国銀行資本金、店舗数、役職員数等一覧表」では「都市銀行」に分類さ

れている。しかし、金融庁の「免許・登録を受けている業者一覧」では地域銀行の中の「そ

の他」に分類されており、リレバンおよび地域密着型金融の進捗状況報告においては埼玉

りそな銀行を地方銀行に含め、地方銀行を全65行と分類している。

その他、持株会社設立によるグループ化の進展で、銀行単体ベースでみた計数が必ずし

もグループとしての実態を正しく反映しないケースがいくつかみられるようになってきた。

ほくほくフィナンシャルグループ(FG)の場合、子会社銀行として北海道銀行と北陸

銀行がそれぞれ機能しており、その実態を明らかにする場合、各子会社銀行単体の計数の

持つ意味は限定的にならざるを得ないともいえる。

山形しあわせ銀行と殖産銀行によるきらやかHDの設立(2005年10月)以後、06年3月

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期、07年3月期と2期にわたりグループおよび銀行単体決算が出された後、2行がきらや

か銀行として合併したのは07年5月である。

北海道の第二地銀である北洋銀行と札幌銀行が札幌北洋HDを設立したのは01年4月、そ

れ以後、両銀行は合併せず、銀行単体として機能している(08年10月に合併予定)。

地方銀行の紀陽銀行と第二地銀の和歌山銀行による紀陽HDの設立が06年2月、その後

06年10月には合併し、銀行単体ベースでは紀陽銀行に統一されている。

第二地銀のせとうち銀行と広島総合銀行によるもみじHDでは、両行の合併により銀行

単体ベースでは04年5月にもみじ銀行となったが、06年10月には山口FGとの統合により、

単体ベースでみて業態として地方銀行と第二地銀の2行を傘下におさめる金融持株会社が

誕生することとなった。

また、業態の異なる親和銀行と九州銀行による九州親和HDは03年4月に合併し、単一の

子会社銀行(地方銀行として親和銀行)を擁する形となったが、07年10月にふくおかFG

との統合によって、グループとしては横浜銀行を超える 大規模の地域銀行グループとな

ることが決定されている。なお、ふくおかFGは、業態の異なる福岡銀行、熊本ファミリ

ー銀行を傘下に擁しており、07年10月以降は、あわせて3行の銀行子会社を擁することと

なる。

札幌北洋HD、きらやかHD、紀陽HDの場合、グループ化といってももともとの銀行営

業エリアが北海道、山形県、和歌山県という1道県にとどまっており、地域限定の性格が

極めて濃い。それに対し、ほくほくFG、山口FG、ふくおかFGの場合には、県境を超

えた広域的なグループ化であり、地域銀行の広域展開戦略の嚆矢として、地域金融機関が

地盤とする地域の範囲をどのようにとらえるのかという問題を考える上で新たな動きとい

える。

なお、地方銀行の関東銀行と第二地銀のつくば銀行の合併による関東つくば銀行の誕生

(03年4月)は業態の垣根を超えるとはいうものの茨城県内をベースとする銀行同士の合

併であり、持株会社方式を採用しておらず、03年4月以降、銀行単体ベースでも関東つく

ば銀行に集約されている。

それに対し、福岡県をベースとする地方銀行の西日本銀行と第二地銀の福岡シティ銀行

が合併したケース(04年10月)では、同様に持株会社形式を採用していないが、西日本シ

ティ銀行は長崎銀行を子会社とし、また経営の悪化した豊和銀行に資本供与をするなど、

九州北部におけるもう一方の広域的な再編の核となっている。

地域金融機関が地元を意識する場合、従来は本店の所在する都道府県を単位とすること

がほとんどだったが、このような持株会社方式によるかあるいは資本関係の形による広域

展開がみられるようになってきた中で、地元戦略はどのように立てられるべきなのか、あ

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らためて問題とされねばならないであろう。

なお、泉州銀行は三菱UFJ・FGの連結子会社であり、中京銀行・岐阜銀行は同じく

三菱UFJ・FGの持分法適用関連会社、みなと銀行・関西アーバン銀行は三井住友FG

の連結子会社となっており、大手メガバンクによる地域銀行の系列化の動きもすでに進ん

でいる。

なお、リテール金融業務に特化したネット型銀行や中小企業金融への特化を標榜する日

本振興銀行、新銀行東京など、新たな形態の銀行が誕生しているが、これらの銀行はリレ

バンの対象外とされており、地域銀行の範疇には入らないので、本稿でも検討の対象とし

ないこととする。

従来、地域金融機関の動向を把握する場合、各協会加盟を基本とする業態という区分は

有効な側面を有していた。それは、業態としてまとまった計数を協会毎に発表し、業態と

しての特徴がつかみやすかったという面にもあらわれている。

しかし、持株会社形式による場合や合併による場合、資本系列化による場合など、業態

の垣根を超えた再編が相当数現実化したことにより、銀行単体ベースの計数を合計した業

態という区分が実態と齟齬をきたすケースが多くなった。

そこで、本稿では、地方銀行および第二地銀の両者を合計した地域銀行を地域金融機関

における銀行組織の総称とする。しかし、計数のベースは銀行単体とし、グループ化して

いる場合でも、地域における銀行活動が単体ベースを基本としている現状を踏まえて、連

結ベースに拠っていない。このことから、07年3月期決算における地域銀行は、地銀協加

盟64行プラス埼玉りそな銀行の65行、第二地銀46行のあわせて111行となるが、それ以前の

決算期については、合併があった場合には合併行の決算数値を単純合算する方法で処理し、

計数調整を行った場合と、協会発表の計数をそのまま利用している場合の両方のケースが

ある。

2.地域銀行の決算

(1)地域銀行決算の概況

地域銀行の決算状況を集計値としてみてみよう。

表1は、03年3月期から07年3月期までの決算状況をまとめたものである。地方銀行は

地銀協加盟64行ベースの数値で、各年度決算の集計を協会が公表したものであり、合併に

よる合算修正を行っていない。また、第二地銀も第二地銀協加盟行ベースであり、各期毎

に行数が異なっている。地域銀行合計は、地方銀行と第二地銀の合計値に埼玉りそな銀行

の各期の計数を合算したものである。なお、埼玉りそな銀行は旧あさひ銀行から03年3月

に分離したため、03年3月期決算では実質的に03年3月1ヶ月間だけの数値が合算されて

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いる。

業務粗利益および業務純益については、国債等債券関係損益(いわゆる債券5勘定尻)

と一般貸倒引当金繰入額を控除したコア・ベースで記載している。また、資金利益、役務

取引等利益は国内業務部門および国際業務部門の合計をとっている。

臨時損益の中では不良債権処理額のうち個別貸倒引当金繰入額と貸出金償却をとりあげ、

それと株式等関係損益の推移が記載されている。

表1では03年3月期以降を示しているが、02年3月期には地方銀行・第二地銀ともに経常

利益・当期純利益でマイナスの赤字決算、それ以前にも地域銀行の決算状況は00年3月期

に地方銀行が大幅な赤字決算となっていた。第二地銀は当期純利益ベースで数年間にわた

り赤字決算を続けるなど、芳しいものではなかった。

03年3月に発表されたリレバン方針の背景には、このように地域銀行や信用金庫など中

小企業金融と地域金融を支えてきた金融機関の体力低下が進行していたことが指摘できる。

体力低下の原因は不良債権問題とその処理による収益低下にあったが、地域金融機関にお

ける業務の中心をなす融資業務の後退が金融機能の後退をあらわす深刻な問題であった。

図1から明らかなように、地域銀行および信用金庫の貸出金伸び率(対前年同月比、月

次ベース)の推移をみると、1999年末より急速な落ち込みをみせ、2005年に至るまでマイ

ナスの状況が続いた(この図は、日本銀行発表の時系列データ「民間金融機関の資産・負

債」に基づいており、地域銀行には埼玉りそな銀行は含まれていない。)

内閣府が発表している景気基準日付によると1999年1月を谷とし2000年11月を山とする

1年10ヶ月間の短い景気上昇局面のあと、2002年1月の谷までの1年2ヶ月間の景気下降

局面を経て、その後戦後 長の景気拡大局面が継続したことになる。

しかし、図1にあらわれているように、1999年から2000年にかけての景気上昇局面で地

域銀行・信用金庫の貸出金は急激にマイナスの方向に転じ、その後2002年以降の長期にわ

たる景気上昇局面では回復傾向をみせながらも、伸び率がプラスに転じるのは05年に入っ

て以後である。

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表1 地域銀行の損益状況(単体ベース) (単位:億円)

地方銀行 03.3 04.3 05.3 06.3 07.3コア業務粗利益 36,793 37,375 37,500 38,311 38,616

資金利益 32,896 32,768 32,594 32,704 32,871役務取引等利益 3,596 3,918 4,209 4,887 5,266国債等債券関係損益 886 -70 -77 -388 -398

一般貸倒引当金繰入額 1,363 1,068 -888 -189 -192経費 23,383 22,837 22,708 22,880 23,096コア業務純益 10,682 12,402 16,569 15,807 15,904臨時損益 -14,430 -14,467 -6,369 -4,106 -3,826

個別貸倒引当金繰入額 5,946 8,777 4,851 3,439 3,605貸出金償却 3,064 4,657 1,813 1,872 1,395株式等関係損益 -4,518 963 1,040 1,629 1,505

経常利益 -1,507 -1,072 9,229 11,119 11,478特別損益 507 294 1,465 1,985 891当期純利益 -2,073 -6,577 6,868 8,414 7,430第二地銀 03.3 04.3 05.3 06.3 07.3

(53行ベース)(50行ベース)(48行ベース)(46行ベース)(46行ベース)

コア業務粗利益 12,294 11,929 11,703 11,634 11,628資金利益 11,702 11,262 10,771 10,659 10,653役務取引等利益 602 636 730 923 1,030国債等債券関係損益 276 159 69 -167 -33

一般貸倒引当金繰入額 241 -257 -252 -92 359経費 8,204 7,652 7,379 7,339 7,453コア業務純益 3,966 4,535 4,486 4,063 3,624臨時損益 -5,876 -3,284 -2,803 -1,499 -2,402

個別貸倒引当金繰入額 3,241 2,713 2,445 1,578 1,638株式等関係損益 -1,628 295 304 757 373

経常利益 -1,752 1,408 1,840 2,719 1,376特別損益 223 159 -3 82 127当期純利益 -1,812 794 892 1,569 264地域銀行合計 03.3 04.3 05.3 06.3 07.3コア業務粗利益 49,191 50,432 50,426 51,334 51,726

資金利益 44,685 45,002 44,425 44,520 44,768役務取引等利益 4,212 4,693 5,108 6,023 6,549国債等債券関係損益 1,162 85 9 -585 -440

一般貸倒引当金繰入額 1,603 850 -1,164 -323 177経費 31,640 31,214 30,806 30,911 31,258コア業務純益 14,700 17,340 21,559 20,566 20,301臨時損益 -20,326 -18,008 -9,287 3,549 -6,333

個別貸倒引当金繰入額 9,191 11,627 7,353 5,098 5,304貸出金償却 1,448 5,026 2,228 2,718 1,794株式等関係損益 -6,269 2,390 2,885 4,354 2,894

経常利益 -1,251 -810 9,656 11,755 12,253特別損益 -1,305 1,061 2,340 3,578 1,153当期純利益 -2,045 -6,531 7,097 8,751 7,794

注)地方銀行は全国地方銀行協会加盟行64行ベース、地域銀行合計には埼玉りそな銀行を含む。  埼玉りそな銀行の03年3月期決算数値は、あさひ銀行からの分割後実質的に1ヶ月間の計数のみを  合算している。出所)全国地方銀行協会、第二地方銀行協会の決算概要およびりそなHD決算説明資料、各年版より 作成。

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景気上昇とはいいながらも地域銀行や信用金庫が地盤とする地方、および主な融資対象

とする中小企業層にまで拡大基調が波及せず、資金需要が伸びなかったことがこのような

形であらわれたといえよう。

(2)中小企業数と債務者数の減少

この間、中小企業においても変化が起こっている。

『中小企業白書』2006年版によれば、2001年と04年との比較で、3年間に全国の中小企

業数は企業ベース(会社数+個人事業所)でマイナス7.8%の減少を示している。その中で

もとくに、総従業者20人以下(卸売業、小売業、飲食店、サービス業では5人以下)の会

社および個人事業者からなる小規模企業が減少数の90%を占めている。この減少傾向は、

程度の差はあるものの、1990年代から継続しており、構造的な問題である。

中小企業金融の分野では、対象とする企業数の減少によって、金融機関が活動する地盤

が不安定化しているといえよう。

地域銀行のリレバン、地域密着型金融の「経営改善支援の取組実績」の報告では、対象

とする債務者の期初における数が記載されているので、それをもとに03年4月期初と06年

10月期初の3年半にわたる債務者数の変化をみると、表2の通りとなる(地方銀行は埼玉

りそな銀行を含む65行ベース)。

ここで債務者数とは、個人事業者を含む取引先企業数であり、個人ローン・住宅ローン

のみの取引先は含まれない。期初債務者総数はリレバンが始まってからの3年半で8.8%の

減少を示している。

数の上で も多いのが債務者区分で正常先に分類されている先であるが10.8%も減少し

図1 地域金融機関の貸出金の推移(対前年同月比、%)

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07

出所)日本銀行「民間金融機関の資産・負債」より作成。

(%

) 地域銀行

信用金庫

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ていることが問題であろう。実質破綻先、破綻先債務者が大幅に減少しているのは、企業

が破綻し消滅した結果、銀行との取引がなくなった場合が多いといえるが、要管理先数が

大幅に減少しているのは景気上昇局面で業績を回復したものや経営改善支援の取組みが功

を奏し債務者区分が上昇したものが含まれていると考えられる。各地域銀行の経営改善支

援の詳細については後述する。

表2 地域銀行の債務者数の推移  (単位:先数、%)

  2003年4月期初債務者数   2006年10月期初債務者数 3年半の地方銀行 第二地銀 小計 地方銀行 第二地銀 小計 増減率

正常先 1,029,240 472,995 1,502,235 898,482 440,951 1,339,433 -10.8要注 その他注意先 180,629 94,222 274,851 211,287 90,029 301,316 9.6意先 要管理先 25,226 9,266 34,492 11,139 4,479 15,618 -54.7破綻懸念先 34,960 16,752 51,712 36,356 16,232 52,588 1.7実質破綻先 22,630 11,680 34,310 18,919 8,922 27,841 -18.9破綻先 11,416 6,864 18,280 6,233 3,426 9,659 -47.2合計 1,304,101 611,779 1,915,880 1,182,416 564,039 1,746,455 -8.8

注)各協会および埼玉りそな銀行の「経営改善支援取組み実績」より作成。

ちなみに信用金庫について債務者数の変化をみると、同期間ではなく03年4月期初と06

年4月期初の3年間の変化となるので直接の比較はできないが、債務者総数は3.6%の減少、

うち正常先はわずか0.7%の減少に止まっており、地域銀行と比べても債務者数減少のペー

スが緩やかであると考えられる。先にみた企業ベースの中小企業数の減少がほとんど小規

模企業の減少であったが、その小規模企業を も取引先ターゲットとしている信用金庫で

債務者数の減少が地域銀行より緩やかであるという点は、独自に検討すべきものといえる

が、ここではこれ以上立ち入らないこととする。

リレバンの目的として中小企業者への支援が掲げられ、実際、支援活動は成果をあげて

いることも事実であるが、中小企業者数のマクロの減少を食い止めることはできていない。

中小企業者数の減少問題は、金融面の支援だけで対応できるものではないといわざるを得

ず、地域金融機関が減少の責任を負う性格の問題ではない。がしかし、資金面の対応と経

営改善支援の効果を無視してよいというのではなく、求められる役割を果たすことによっ

て中小企業活動の活発化の素地を豊かにする必要があり、それがリレバンの本来の意義と

いえよう。

(3)地域銀行貸出金の推移

地域銀行全体の貸出金の動向は、すでに図1でみたように、対前年比でプラスに転じる

のは05年に入ってからであるが、リレバン方針以後ということでみると、03年3月末から

07年3月末の4年間で、8兆円超、4.6%の伸びを示している。

業態別(合併調整前)にみるならば第二地銀が約1兆円、2.3%の貸出金減少に対し、地

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方銀行は約9兆円、6.8%の増大を示している。しかし、この期間中に、福岡シティ銀行、

つくば銀行、和歌山銀行、九州銀行の第二地銀4行が地方銀行との合併によって業態別では

地方銀行に算入されることになった。また、奈良銀行はりそな銀行に吸収されているので

地方銀行・第二地銀の業態別数値にそもそもあらわれなくなっている。

したがって、03年3月末決算時点での奈良銀行の貸出金を第二地銀の貸出金合計から控

除し、さらに合併4行の貸出金合計3兆3954億円を第二地銀の貸出金合計から控除した上で、

地方銀行の貸出金合計に追加して増減率を求めると、4年間に地方銀行で4.2%増、第二地

銀で6.5%増となる。

07年3月期に残った第二地銀46行ベースでは、リレバン導入以後の4年間に地方銀行を

上回る貸出金伸び率が達成されている。

なお、貸出金増大の内訳を貸出先別にみようとする場合、業態データがそろっている地

方銀行64行ベース(4行合併調整前)でみると、03年3月末から07年3月末の4年間で、

個人向けは23.8%、地方公共団体向けは30.1%の伸びを示しているのに対し、法人向けは

マイナス1.5%となっている。貸出全体が回復基調にあるとはいうものの、法人向けは伸び

ておらず、個人向け、地公体向けの伸びが顕著にあらわれている。

地公体向け貸出の貸出金全体に占めるシェアも5.8%から7.0%へと上昇しているが、と

くに地方銀行上位・中位行で伸びが顕著である。これは、道府県や市の指定金融機関とな

っている地元有力地方銀行が地公体向け取引を伸ばしていることのあらわれといえよう。

地域貢献・地元貢献の期待にこたえる一つの結果ともいえる。

貸出先業種別にみた場合、個人向け・地公体向け以外で伸び率が高いのが不動産業向け

19.5%、運輸業向け11.3%である。これに対して、建設業向け-19.6%、卸売・小売業向

け-6.0%、製造業向け-4.9%と、中小企業融資先として も中心的な業種部分では軒並

みマイナスであり、各種サービス業向けは0.9%増となっているが、これも合併調整を考慮

すればマイナスとなる。つまり、典型的な中小企業者への融資業種ではいずれもマイナス

になっているのであり、貸出金の伸びが本来の中小企業金融の回復を示しているものでは

ないことがわかる。

(4)地域銀行の収益力と収益構造

さて、先の表1に基づいて地域銀行の決算で銀行の収益力を示すコア業務粗利益、コア

業務純益の推移をみると、コア業務粗利益は、03年3月期と07年3月期を比較した場合、

5.2%増加と緩やかに増大しているのに対し、コア業務純益は38.1%もの急激な増加を示し

ている。経費がほぼ横這いに推移しているため、コア業務粗利益の増加分が業務純益の増

加分にストレートに反映され、比率を高くしているといえる。

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この時期、金利は低水準で推移し、貸出金もすでにみたように減少から増加に転じる時

期であるが、コア業務粗利益の内訳では資金利益がほぼ横這いなのに対し、役務取引等利

益が55.5%と大幅な伸びを示している。コア業務粗利益の拡大はほとんど役務取引等利益

の拡大で説明しうる状況である。

臨時損益は05年3月期まで大幅なマイナスを記録している。その中心は個別貸倒引当金

繰入額であり、不良債権処理のウエイトが高い。貸出金償却は04年3月期に大きな額に上

っており、臨時損益額が業務純益を上回り、経常利益、当期純利益ともに、04年3月期ま

で赤字決算となっている。05年3月期以降の決算では経常利益が順調に拡大しており、地

域銀行経営が安定的に推移していることをあらわしている。

コア業務粗利益が緩やかながらも拡大していることは、地域銀行の基礎的な収益力が決

して弱体化しているのではないことをあらわしている。

役務取引等利益が急速な伸びを示しているとはいいながら、銀行収益の中心は資金利益

にあることは表3にあらわれているように、コア業務粗利益に対する資金利益比率が地域

銀行全体で80%台と高い割合を占めていることからもわかる。

資金利益は、貸出金利息および有価証券配当・利息から構成されるが、その中心は預貸

金収支である。地方銀行64行ベースでは資金利益に占める預貸金収支のシェアは03年3月

期の82.7%から07年3月期の76.8%まで低下しているとはいいながらも、4分の3を占め

ている。第二地銀では07年3月期に81.6%と高いシェアを占めている。

表3 地域銀行の収益構造 (単位:%)

03.3 04.3 05.3 06.3 07.3資金利益比率 地方銀行 89.4 87.7 86.9 85.4 85.1

第二地銀 95.2 94.4 92.0 91.6 91.6地域銀行 90.8 89.2 88.1 86.7 86.5

役務取引等 地方銀行 9.8 10.5 11.2 12.8 13.6利益比率 第二地銀 4.9 5.3 6.2 7.9 8.9

地域銀行 8.6 9.3 10.1 11.7 12.7OHR 地方銀行 63.6 61.1 60.6 59.7 59.8

第二地銀 66.7 64.1 63.1 63.1 64.1地域銀行 64.3 61.9 61.1 60.2 60.4

注)資金利益比率、役務取引等利益比率、OHRともにコア業務粗利益ベース。

出所)表1に同じ。

06年以降の長期金利の上昇が有価証券利息収入に一定の影響を与えているとはいえ、預

貸金収支が中心であるということは、地域銀行においては融資業務が収益源泉の 大のも

のである実態が変わらないことを意味している。

また、そのウエイトは地方銀行と第二地銀とでは常に5%ポイント程度の差がある。こ

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のことの裏返しとして、役務取引等利益では地方銀行が第二地銀よりも常に5%ポイント

程度高くなっている。

また、効率性を示す指標としてコア業務粗利益ベースのOHRの推移をみると、地域銀

行全体で03年3月期の64.3%から07年3月期の60.4%まで、着実に低下している。OHR

は、分子に経費、分母にコア業務粗利益をもって算出するので、経費がほぼ横這いであっ

ても、分母のコア業務粗利益が増加すればそれだけ分数の値は低下する。

しかし、OHRの推移も地方銀行と第二地銀に分けてみれば、地方銀行の方が第二地銀

よりも構造的に低い値を示しており、収益効率性が高いといえる。

これらの指標を比較する限り、地方銀行、第二地銀という業態別の区分が一定の説明力

を有しているともいえる。

(5)地域銀行の役務取引等利益と非金利業務

ここではリレバン進展下で急速にウエイトを高めてきた役務取引等利益の状況について

みてみよう。

役務取引等利益の内訳をその源泉となる業務でみると、預金・貸出業務、為替業務、証

券関連業務、代理業務、保護預り・貸金庫業務、保証業務から発生している。資金業務以

外のこれらの業務ウエイトが高まることによって、表3においてみたように地域銀行にお

ける役務取引等利益比率が近年急速に上昇している。

役務取引等利益は、上記各業務から各種手数料収入を得ていることを反映しているので、

その比率が高いことは銀行が融資業務を中心とした業務構成からより多様化した業務構成

へと変化をとげていることを表す。多様化の進展度は、地域銀行が多様な業務展開をいか

に実現させているかによるが、それが可能なのは地域銀行に各種業務メニューに対応でき

る体制がなくてはならず、その意味できわめて単純ながら、規模の大きな銀行が業務メニ

ューを豊富に有しており、そのため役務取引等利益比率が高いという関係があらわれる。

役務取引等利益比率と資産規模の相関係数は0.5664と正の値を示している。

図2においてコア業務粗利益ベースでみた資金利益比率と役務取引等利益比率の関係を

みると、この両者では強いマイナスの相関関係が出ている(111行ベース、相関係数-

0.8753)。つまり、資金利益比率の高い銀行では役務取引等利益比率が低く、その逆は逆と

いう結果である。これは銀行収益の構成比の主要な2項目の関係をみているので、当たり

前の結果であるといえる。

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出所)各行、決算説明資料より作成。

しかし、その傾向から乖離幅の大きな地域銀行が存在し、特徴的な構成を示している。

図中の回帰線からの乖離が大きい銀行を、残差の絶対値でみると、残差がプラスの値で

大きな銀行には、南都銀行、百五銀行、荘内銀行、肥後銀行、滋賀銀行が含まれ、マイナ

スの値で大きな銀行には、東京都民銀行、北陸銀行、琉球銀行、もみじ銀行、親和銀行、

鳥取銀行、横浜銀行、長崎銀行が含まれる。

残差がプラスというのは役務取引等収益比率が回帰線よりも高いことを示しており、マ

イナスというのは役務取引等収益比率が回帰線よりも低いことを示している。

この場合、資金利益と役務取引等利益以外の「その他業務利益」が大きな割合を占めて

いるわけである。 も残差がマイナスで大きかった東京都民銀行でみると、役務取引等利

益と「その他業務利益」を合算して非金利収支としている。東京都民銀行の場合、非金利

収支の内訳は法人取引においては外国為替関連収益、対顧デリバティブ収益、私募債引受

手数料等、個人向け取引においては投信販売手数料、生命保険販売手数料、外貨預金関連

収益が中心となっている。

「その他業務利益」の内訳をみると、債券5勘定尻以外に外国為替売買益、商品有価証

券売買益、金融派生商品収益が含まれる。残差がマイナスで大きな値を示している銀行は、

これら多様な取扱業務による「その他業務利益」の割合が一定水準あり、非金利収入のウ

エイトの高い銀行といえる。

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表4では個別行において特徴的な構成比と伸び率を示している銀行を取り上げている。

表の左側は、2005年3月期決算から07年3月期決算までの3期分の数値の平均で、コア業

務粗利益ベースの役務取引等利益比率が高い順に並べている。役務取引等利益の比率が

13%を超える27行がとくに手数料関連収益のウエイトの高い銀行といえる。

27行を業態別に区分すると、埼玉りそな銀行を含む地方銀行が23行、第二地銀が4行と、

地方銀行が多い。しかし、役務取引等利益比率の高いこの27行についてみると、銀行規模

の大きさ(05年3月末~07年3月末の3期末残高の平均)との相関関係はあらわれていな

い(相関係数0.0123)。地方銀行の中には規模でみて地銀上位行が含まれているが、同時に

中下位行も含まれており、第二地銀の4行も北洋銀行、みなと銀行という上位と大東銀行、

東京スター銀行という上位以外の銀行も顔を出している。

表4 役務取引等利益の状況 (単位:%)

銀行名コア業務粗利益ベース

比率伸び率 銀行名

コア業務粗利益ベース

比率伸び率

宮崎 18.0 13.8 茨城 2.6 983.3荘内 17.5 25.5 徳島 2.2 393.5中国 16.7 34.3 大光 2.1 194.0三重 16.5 86.5 沖縄海邦 4.3 166.5横浜 16.3 15.6 長野 3.3 157.7北海道 16.3 12.4 びわこ 8.8 121.4関東つくば 16.2 29.3 池田 8.9 113.0福岡 16.1 11.5 熊本ファミリー 4.7 109.1北洋 16.1 12.9 関西アーバン 7.9 108.5北陸 16.1 27.1 近畿大阪 9.2 105.3大分 16.0 17.3埼玉りそな 15.4 49.7足利 15.1 18.7第四 14.9 24.5みなと 14.6 85.2大垣共立 14.5 34.3広島 14.4 36.6東京都民 14.1 32.5北国 14.0 41.7大東 13.8 66.0福井 13.6 22.6八十二 13.5 19.0静岡 13.4 6.6鹿児島 13.2 17.3群馬 13.1 39.2東京スター 13.0 -17.5百五 13.0 25.9

注)コア業務粗利益ベース比率は、05年3月期~07年3月期の3期平均。

  伸び率は、05年3月期と07年3月期の比較。

出所)各行決算説明資料より作成。

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まとめていうと、全体としてみれば役務取引等利益比率は銀行規模との正の緩やかな相

関関係を有しているが、その比率が高い銀行だけを取り出してみるとまったく相関関係は

見出しえないのである。

つまり、役務取引等利益比率のとくに高い銀行では、規模によらず、経営戦略をはじめ

とする要因によって業務多様化が実現されているといえる。

では、役務取引等利益の伸び率(05年3月期と07年3月期の収益額の伸び率)との関係

はどうか。伸び率の高い銀行は、各種手数料収入関連業務への傾注が著しい銀行といえる

が、表4の右側の10行は伸び率が100%を超える、つまり05年3月期と07年3月期との2年

間の比較で2倍以上に伸びた銀行である。

このグループで地方銀行は池田銀行と近畿大阪銀行の2行で残り8行は第二地銀である。

そして、役務取引等利益比率が比較的低いのが特徴である。役務取引等利益比率が低い水

準であったところ、強化の結果、高い伸び率が実現されたといえる。とくに、近畿大阪銀

行、池田銀行、びわこ銀行の比率は07年3月期には12%前後に達している。

なお、愛媛銀行の場合、05年3月期で役務取引等利益がマイナス1億7300万円で07年3

月期には17億0800万円にまで増加させているので伸びが高いが、出発時点がマイナスであ

るため他と同様に伸び率計算が出来ないので、この表からは除外している。

愛媛銀行の例もあるが、図2からもわかるように役務取引等利益比率がマイナスの地域

銀行が3行存在する。長崎銀行は05年3月期から07年3月期までの3期すべてでマイナス

であり、福岡中央銀行、佐賀共栄銀行は05年3月期・06年3月期の2期でマイナスであっ

た。なお、南日本銀行、豊和銀行は05年3月期の1期、マイナスとなっている。これらは

すべて九州に所在する第二地銀であるが、役務取引等利益でもマイナスになるケースがあ

るという点に留意する必要があろう。

(6)中小企業者向け貸出と消費者ローン

地域銀行においては依然として融資業務が中心であると指摘したが、それではどのよう

な融資業務を展開しているか、その内訳をみてみよう。

地域銀行の貸出を中小企業者向け貸出と消費者ローンとに分けてみた場合、次のような

傾向がわかる。第一に貸出の中で中小企業者向け貸出が中心であるとはいえ、その比率は

近年わずかながら低下している。(地方銀行05年3月末47.90%→06年3月末46.91%→07

年3月末46.02%、第二地銀05年3月末56.49%→06年3月末55.46%→07年3月末55.25%)。

地方銀行と第二地銀とで業態別に分けた場合に、両者の間で9%ポイントほどの格差がみ

られる。地方銀行において比率が低く、第二地銀において比率が高いのは、地方銀行では

中堅、大企業向け貸出や地方公共団体(地公体)向け貸出など、融資先により多様性がみ

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られるためである。

図3は、07年3月期決算を出している地域銀行111行(埼玉りそな銀行を含む)について、

銀行単体ベースで、05年・06年・07年各3月末の中小企業者向け貸出比率と消費

者ローン比率の平均値を出し、その分布をみたものである。

出所)各行、決算説明資料より作成。

消費者ローン比率は、各銀行の決算説明資料において「消費者ローン残高」(あるいは「個

人向けローン残高」)として公表している計数の各年3月末貸出金に占める割合を3期単純

平均したものである。

中小企業者向け貸出比率とは、各銀行の決算説明資料において「中小企業等貸出比率」

として公表されている比率から先の消費者ローン比率を引いたものである。決算説明資料

における「中小企業等貸出比率」には企業向けだけでなく個人事業者向けや個人向け貸出

が含まれているので、そこから個人向け貸出に相当する消費者ローン比率を引き、本来の

中小企業・個人事業者向けの事業性貸出金のみの比率としたものである。

なお、地域銀行によっては決算説明資料で「中小企業等貸出比率」だけが公表されてい

る場合と、その残高実数も公表されている場合の2パターンあるが、ここではすべて「比

率」を用い、残高実数から算出していない。

地域銀行が貸出業務において中核となる中小企業者向け貸出と近年急速に伸びている消

費者ローンとの組み合わせで、どのような構成をみせているのか、その特徴から銀行を分

類すると、次の5つのタイプに分けることができる。

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第1は住宅ローン特化型である。消費者ローン比率が50%を超え、中小企業者向け貸出

比率が低く、図3では左上方に飛び出している3つの銀行がある。図で一番左上に出てい

るのがスルガ銀行、その次が泉州銀行、さらに埼玉りそな銀行である。

消費者ローンの内訳をみるとその中心は住宅ローンである。地域銀行111行の3期平均で

消費者ローンの全貸出金に占める割合は30.1%、住宅ローンは26.0%であり、消費者ロー

ンの実に86.5%が住宅ローンである。その平均水準からみてこの3行は飛びぬけて消費者

ローン比率、とりわけ住宅ローン比率が高く、住宅ローン特化型ということができる。

スルガ銀行で住宅ローン比率は貸出金全体の62.9%(消費者ローン比率は71.8%)、泉州

銀行で58.0%(同67.3%)、埼玉りそな銀行で54.50%(同56.0%)に達している。

すでにみたように泉州銀行は三菱UFJ・FGの連結子会社であり、大阪南部において

思い切った事業特化戦略を打ち出している。また、埼玉りそな銀行もりそなHDの一員と

して埼玉県内において住宅ローンに傾注した業務展開を行っている。それに対し、スルガ

銀行は他銀行のグループの一員という形ではなく独立した戦略をとれる立場にあり、地元

静岡県だけでなく隣接する神奈川県に進出し、そこで住宅ローンを中心とした事業展開を

行っている。

第2のタイプは、第1と反対に、中小企業者向け貸出特化型といえる銀行である。中小

企業者向け貸出の貸出金全体に占める割合は、地域銀行111行ベース、3期平均で、48.4%

である。そこで、中小企業者向け貸出比率が高く、かつ消費者ローン比率が平均以下とい

う意味で、中小企業者向け貸出比率が60%以上、消費者ローン比率が30%未満を中小企業

者向け貸出特化型と分類する。この分類には、福岡中央銀行、静岡中央銀行、熊本ファミ

リー銀行、筑邦銀行、香川銀行、もみじ銀行、島根銀行、徳島銀行、豊和銀行、宮崎太陽

銀行、福島銀行、愛媛銀行、茨城銀行など地方にある小規模第二地銀と東京の八千代銀行、

地方銀行では阿波銀行、親和銀行、東北銀行、東京都民銀行などが入る。

中小企業者向け貸出比率が高いのは地盤とする地元企業との取引関係が強固であり、鮮

明に中小企業特化を打ち出している東京都民銀行や同じく東京を地盤とし中小企業取引志

向が強い八千代銀行のようなケースもあるが、地方に所在する比較的小規模な第二地銀の

場合、消費者ローンの相対的な遅れを反映しているとも考えられるケースもある。

第3のタイプは、第1のタイプほど消費者ローンの比率が高くないが、中小企業者向け貸

出比率が50%未満である一方で、消費者ローン比率が30%を超える、消費者ローン強化型

である。

このタイプには、地域銀行 大手の横浜銀行、千葉銀行、それに地方銀行では山形銀行、

みちのく銀行、北海道銀行、荘内銀行、近畿大阪銀行、武蔵野銀行、京都銀行、沖縄銀行

などが入り、さらに第二地銀では大手の北洋銀行、京葉銀行に加え、長崎銀行、仙台銀行、

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大正銀行などの小規模銀行も入る。

横浜銀行、千葉銀行の場合、地元優良企業との取引で優位であると同時に、さらに首都

圏立地という条件を活かして消費者ローン、住宅ローンの積極的拡大にも成功していると

いうケースである。その他、首都圏、近畿圏に所在する地域銀行の場合、消費者ローン、

住宅ローン拡大が可能な地域条件を活かしているといえよう。また、その他の地域では住

宅ローン強化の経営戦略によるものと考えられる。

第4のタイプは、中小企業者向け貸出比率も消費者ローン比率もともに平均水準よりも

低く、それ以外の中堅・大企業および地公体向け貸出のウエイトが高い銀行である。具体

的に図上で分類すると、中小企業者向け貸出比率が50%未満でかつ消費者ローン比率が

30%未満の領域にあたる。このタイプには、岩手銀行、鹿児島銀行、東邦銀行、南都銀行、

七十七銀行、山梨中央銀行、青森銀行、肥後銀行、第四銀行、常陽銀行など、地方にある

それぞれ地元No.1の地方銀行が多く含まれている。地元での優位な立場が地元優良企業お

よび地公体との取引におけるシェアの高さとなってあらわれている。(第四銀行、七十七銀

行の例は『金融ジャーナル』2007年3月号・4月号参照)

第5のタイプは、その他の領域に区分される銀行で、中小企業者向け貸出比率と消費者ロ

ーン比率のバランス型ということもできよう。ここには、地方銀行上位層の銀行が多く入

る。

この中小企業者向け貸出比率と消費者ローン比率の分布を地方銀行、第二地銀という業

態で分けてみた場合、両者には違いがあらわれる。業態毎の分布に対し相関係数をとると、

地方銀行では-0.5858、第二地銀では-0.7078となる。

第二地銀の方が中小企業者向け貸出比率と消費者ローン比率の間により強い負の相関関

係がみとめられる。つまり、第二地銀において両比率は強い代替関係にあり、中小企業者

向け貸出比率と消費者ローン比率のどちらかにウエイトを置くスタイルをとることになる。

それに対し、地方銀行ではさきにみたタイプ4のように、中堅・大企業向けや地公体向け

など多様な融資先を有しているケースが地元有力地方銀行になるほど多くなる。

3.地域銀行におけるリレバンの取組み

(1)リレバン取組みの死角

日本銀行は2001年3月以降、日銀当座預金残高を目標値とする量的緩和政策に転換し、

以後06年3月までの5年間そのスタンスを維持した。この時期、03年9月から06年7月ま

での約5年間、公定歩合を0.1%とし、超低金利を維持することによって事実上金利機能を

押さえ込んだ。

しかし、デフレが進行している場合、資金需給に影響を与える実質金利は、名目金利が

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ほぼゼロであったとしても、そのデフレの分だけプラスの値を示すことになる。そして、

その実質金利水準はデフレ率が大きかったことから一定の水準を維持したとされる。

情報の非対称性に関する理論に基づけば、融資先の中小企業者と資金提供者の地域銀行

との間で情報の非対称性が存在する場合には、信用割当が発生する。つまり、地域銀行は

融資先のリスクに対する評価が完全に行えないことから、高い金利水準でも資金供給を制

限してしまうのである。

2005年までの期間、地域銀行の貸出金が減少し続けたのは、需要が減少したのが原因か、

信用割当によって供給が押さえつけられたのが原因か、リレバンの内容を検討する際にも

ポイントとなる問題である。というのも、需要が減少したのが原因であるとするならば、

中小企業者向け貸出を量的に伸ばす有力な対応策は、中小企業者の資金需要を拡大させる

景気浮揚策ということになる。反対に、信用割当が発生したのが原因であるとするならば、

情報の非対称性を緩和させるような方策をもって地域銀行に対し供給拡大を促すことが有

力な対応策となる。

ただし、資金供給拡大とは、単に量的に貸出額を増加させることを追及するのであれば、

不十分な事業計画に基づく資金需要にも応えることを意味し、競争に基づく中小企業者の

淘汰が行われなくなる。やがて事業に行き詰まりをみせる段階に至ると、貸出を行った金

融機関にとって不良債権となり、むしろ経営悪化の要因となってします危険がある。

リレバン計画では、他方で、金融機関の健全性の確保、収益性の向上に基づく体質強化

が課題とされており、不良債権処理の推進がその も基礎的な作業となっている。そのこ

とからすれば、新たな不良債権を生じかねない貸出を行う行動に出ることはできない。

貸出を行う際にも当該事業が持続可能な事業であり、不良債権化しないことが必須であ

る。ただし、それは、優良貸出先のみに眼をやり、貸出先の選別を強めることだけを意味

するものではない。選別の基準として、従来は、融資先企業の規模等量的指標に重点を置

いていた考え方を改め、事業の将来性やキャッシュ・フローの確実性など、「質的」側面を

基準とすることによって、選別の意味そのものを変化させることによって貸出を行う対象

を広げることができる。

リレバン計画において地域銀行が取組んだ行動は、各金融機関の規模や地盤とする地域

経済の特性を踏まえたものとして、多様性に富む内容を含んでいる。これらの取組みは、

中小企業者向け貸出を「質的」に強化する内容であるとはいえ、直接に「量的」に拡大す

ることをうたったものではない。中小企業者への融資が基本的に需給関係に基づくもので

あるならば、超過供給をおこすような量的拡大の動きはむしろ本来淘汰されるべき中小企

業者を延命させるだけに過ぎないからである。

ここでは、以上の点を念頭に置いて、地域銀行の中小企業金融の再生に向けた取組みを

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みてみよう。それらの取組みは要約すると、第1に創業・新事業支援機能等の強化、第2

に取引先企業の経営相談・支援機能の強化、第3に早期事業再生に向けた取組み、第4に

新しい中小企業金融方式として担保・保証に過度に依存しない融資の促進があげられる。

(2)地域銀行の創業・新事業支援

融資業務の拡大に資する新たな方式として、第1に創業・新事業支援機能等の強化があ

げられる。従来、ベンチャー企業への融資には銀行は必ずしも積極的ではなかった。それ

は、新興の企業が銀行によって評価される過去の実績を持たないこと、そのほとんどが小

規模企業として始まっていることから担保となる物件を持たないこと、新しく開発された

技術や事業アイデアに対する評価をすることが困難であったこと、などの理由からである。

過去の実績がないことに対しては、新技術・アイデアに対する将来価値の評価をするこ

とによってカバーできるが、そのためには地域銀行内にいわゆる目利きを育成することが

必要になる。内部に独自人材を持つことが難しい場合には、外部評価を利用することによ

って、目利きの役割を補完することができる。いずれにしても、ベンチャー企業の場合に

は、その独創性を理解することなしに融資することができないので、この評価という面が

重要になる。

また、ベンチャー企業は、いくら評価しうる技術・アイデアを持っていたとしても、そ

れがすぐに採算ベースに乗るということはなく、研究開発に長期の期間を有する場合もあ

り、スタートアアップ時から黒字ベースに持っていくのに一定の期間がかかることが多い。

さらに、一定の時間をかけたとしても、研究開発型のベンチャーの場合には、必ず採算

ベースに乗る製品化が実現できるとは限らない面も持つ。つまり、相当のリスクを考慮し

なければならないというわけである。このような場合、リスクの高い事業先に長期にわた

って融資を行うことは従来の銀行融資姿勢では困難となる。

そこで、リスクを銀行本体とは切り離す形でベンチャー企業向け資金の提供が可能な方

式を生み出す必要も生じ出てくる。つまり、地域銀行が主体となって、ベンチャーキャピ

タルを設立するというものである。実際に、地域銀行の中には、地盤とする地域のベンチ

ャーキャピタルを立ち上げているケースがみられる。

また、新規融資分野の開拓を行うことで、融資拡大の糸口をつかもうとする動きもあら

われていきている。将来の少子・高齢化社会に対応するべく今後伸びが期待できる医療・

介護・福祉分野に積極的に進出しようとする地域銀行もある。とくに、NPO法人による

事業展開は特定非営利活動促進法以来活発化している。2007年6月末までに認証を受けた

NPOは、内閣府所轄のものも含め3万を超えている。内閣府所轄を除く都道府県所轄分

のみを地域別にみると、その半数近くの48.5%が、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の

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首都圏および大阪府・兵庫県、それに愛知県の3大都市圏に集中している。(内閣府「特定

非営利活動促進法に基づく申請受理数および認証数、不認証数等」による。)

その活動分野をNPO法人の定款に掲げられている分野でみると(複数分野にまたがる

NPO法人が84%にのぼる)、保健・医療又は福祉の増進を図る活動58.2%、社会教育の推

進を図る活動45.9%、まちづくりの推進を図る活動40.2%、以下となる。すでに、医療・

介護・福祉分野の活動を展開しているNPO法人が全国に1万8千以上ある計算になる。

(内閣府「特定非営利活動法人の活動分野について 2007年6月30日現在」による。)

今後とも高齢化が進展することから、このような活動はますます需要も高まり、数が増

えることが予測できる。しかし、法人組織になっているとはいえ、企業とは異なり、多く

の場合、従来の銀行の融資対象とはなりにくい状況であった。それは、たとえば、事業計

画がきちんとしたものではなかったり、経理処理に慣れていないために事業内容の把握が

簡単ではないなどの銀行側からみた問題があったからである。その点を地域銀行側が意識

的に補完、支援することができれば、社会的な需要に十分応える事業活動として融資対象

にしうる。

(3)地域銀行の経営相談・支援機能

リレバンにおいて取組まれたポイントとして、第2に取引先企業の経営相談・支援機能

の強化があるが、具体的な項目としては、ビジネスマッチングの成約、株式公開や社債発

行の支援、M&A支援があげられる。

ビジネスマッチングの成約件数は、地域銀行(埼玉りそな銀行を含む)で2002年度中に

1,380件に過ぎなかったが、リレバン計画が公表されて以後、03年度5,741件、04年度8,997

件、05年度12,799件、06年度19,542件と急速な増加を示している。金融庁の金融機関利用

者アンケートによれば経営相談・支援機能は積極的な評価を得ているが、その中でもとく

にビジネスマッチングが高く評価されている。

ビジネスマッチングにおいてはとくに地域銀行の貢献が大きい。06年度に限ってみると、

埼玉りそな銀行を除く地域銀行110行の成約件数は18,206件であるのに対し、信用金庫は

4,240件であった。06年4月期初の事業性取引の債務者数を比べると、地域銀行で175万9749

先、信用金庫は170万9980先とその数は非常に近いが、ビジネスマッチングの成約件数では

4倍以上の開きがある。

これは、ビジネスマッチングを必要とする事業者が、ごく小規模な零細事業者よりもあ

る程度の事業範囲と規模を持つ事業者を中心とし、ちょうどそれが地域銀行の取引層に当

たるためであるといえる。業態別にビジネスマッチング成約件数を06年4月期初の事業性

債務者数で割った比率を求めると、地方銀行1.30%、第二地銀0.47%、信用金庫0.24%と、

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とくに地方銀行で盛んにビジネスマッチングが取組まれ、評価の基となっていることがわ

かる。

このビジネスマッチングにおいては、特徴的な事例として、2005年、06年に、複数の地

方銀行が合同して、中国の上海で商談会を開催している。個別金融機関の枠を超え、しか

も開催場所も海外で行うという、画期的な催しといえる。また、地方銀行8行合同で、「食」

に絞った商談会として地方銀行フードセレクションが06年に開催され、07年11月にも予定

されている。

商工会議所等が主催する商談会も各地で催されているが、金融機関が中心となって開か

れる商談会が一定の実績をあげており、取引企業の事業促進につながる活動の意味が大き

いことがわかる。

(4)地域銀行の経営改善支援

経営支援の機能については、ビジネスマッチングのように事業促進の面と同時に、事業

の建て直しに直接関わる経営改善支援の取組みが行われている。

経営改善支援は、売上低迷、収益悪化など経営不振に陥っている取引先に一定期間集中

的に改善支援を行うものであり、成功の場合には企業自身が息を吹き返すと同時に、取引

先の債務者区分がランクアップすることによって銀行側にもプラスの効果がもたらされる。

表5はリレバン計画が導入されて以後の4年間における経営改善支援実績を業態毎にみ

たものである。なお、ここでの地方銀行は埼玉りそな銀行を含まない64行ベースである。

表5 経営改善支援の取組み実績

  03年4月~05年3月   05年4月~07年3月

経営改善支援取組み先

数α

経営改善支援取組み比率(%)

αのうち期末に債務者区分が上昇

した先

ランクアップ比率(%)

経営改善支援取組み先

数α

経営改善支援取組み比率(%)

αのうち期末に債務者区分が上昇

した先

ランクアップ比率(%)

要注 その他注意先 17,014 9.4 3,669 21.6 14,138 7.5 2,874 20.3地 意先 要管理先 5,667 22.5 1,976 34.9 3,657 24.3 1,241 33.9方 破綻懸念先 3,360 9.6 581 17.3 3,185 8.8 644 20.2銀 実質破綻先 222 1.0 55 24.8 248 1.3 34 13.7行 破綻先 60 0.5 16 26.7 51 0.7 11 21.6

 小計 30,168 9.6 6,297 23.9 23,154 8.0 4,804 22.6要注 その他注意先 8,334 8.8 1,823 21.9 8,623 10.1 1,714 19.9

第 意先 要管理先 2,111 22.8 590 27.9 1,503 28.2 474 31.5二 破綻懸念先 1,683 10.0 335 19.9 1,771 11.0 452 25.5地 実質破綻先 89 0.8 21 23.6 121 1.2 32 26.4銀 破綻先 69 1.0 15 21.7 41 0.9 18 43.9

 小計 13,709 8.9 2,784 22.7 13,174 9.9 2,690 22.3要注 その他注意先 18,151 8.7 3,773 20.8 21,887 11.2 4,207 19.2

信 意先 要管理先 5,668 18.4 2,075 36.6 3,868 24.0 1,395 36.1用 破綻懸念先 4,247 9.5 1,067 25.1 5,118 12.7 1,005 19.6金 実質破綻先 309 0.8 87 28.2 279 0.8 68 24.4庫 破綻先 42 0.2 14 33.3 34 0.2 15 44.1

 小計 31,030 8.3 7,016 24.7 33,537 10.4 6,690 21.5

注)業態毎の経営改善支援取組み先数αの小計は、正常先も含むので、表中の項目だけの合計と合わない。

出所)各協会発表より作成。

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経営改善支援は取引先の経営状態を立て直そうというものであるが、弱点を補強すると

いう意味では対象は経営の悪化した企業とは限らない。実際に、05年4月~07年3月期で

は3業態の経営改善支援取組み総数のうち債務者区分で正常先に分類される先が7.6%

(5,341先)も含まれていた。ここでは、経営改善支援の効果という面に焦点をあてるため

に正常先を除外している。したがって、経営改善取組み先数αの小計は正常先をも含むの

で、表中の項目だけの合計とはならない。

次に、経営改善取組み比率は、債務者区分で要注意先以下のそれぞれの区分においては

各区分の期初債務者数に対する経営改善支援取組み先数の比率であり、小計の比率は正常

先を除いた取組み比率としている。

また、ランクアップ比率も小計の段だけは正常先を除いた比率である。

なお、期初債務者数は、すでに指摘したように、企業及び個人事業者を含むが、個人ロ

ーンだけの先を含まず、事業性資金の融資先のみを対象としている。

経営改善支援活動はリレバンにおいて中小企業者のバックアップを行うという意味で重

要な位置づけを与えられていると考えられるが、取組み比率をみると地域銀行においては

4年間でいずれも10%を下回っている。つまり、債務者区分で要注意以下の先のうち経営

改善支援活動が行われたのはその1割にも達していないというわけである。

これは、経営改善支援が、債務者区分が悪化した場合自動的に行われるという性格のも

のではなく、一定の期間が必要であること、取組みを行う金融機関側にも対応する人員の

配置、体制の整備が必要であること、そしてなにより対象先の企業・事業者の合意と取組

みに対する決意が必要なことなどの理由から、このような比率に止まっているといえる。

経営改善支援の成果をどの指標で計るのかは難しいが、金融機関側の不良債権対応とい

う面も合わせて考えると、債務者区分のランクアップに至れば成功といえよう。そのラン

クアップ比率は、4年間をみると、地域銀行で22~23%台とほぼ変わらず、一定の水準を

維持しているといえる。

地域銀行では2業態合わせて取組み比率がはじめの2年間の9.4%から次の2年間に

8.6%へと若干の低下をみせたが、経営改善支援の取組みが対象債務者数の1割以下に止ま

り続けていることが信用金庫の取組み実績の推移とは異なる点である。

とくに成果をあげているといえるのは、地方銀行において要管理先に区分されている債

務者であり、5分の1以上の対象先に対し経営改善支援が行われ、しかも4年間継続して

その3分の1以上がランクアップを果たしている。また、第二地銀においても要管理先の債

務者が も取組み比率、ランクアップ率が高く、しかもその比率はともに後半の2年間で

上昇している。信用金庫の場合にも要管理先債務者で高い取組み比率、ランクアップ比率

をみせており、この区分の債務者にとって経営改善支援活動は効果を果たしているといえ

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よう。

それは、経営悪化の程度がまだ軽微に止まり、改善の余地が残されている場合に、金融

機関の経営改善活動が有効であるという意味ともとれる。実質破綻先、破綻先においても

ランクアップに成功している例があることがこの表からもわかるし、ランクアップ比率も

一定の高さに達している。しかし、そもそも取組み比率をみてわかるように、このランク

の先には経営改善支援はほとんど行われておらず、むしろ経営改善支援の対象となってい

るのは何らかの改善余地を見出しうる極めてまれなケースに過ぎないといえる。

従来の成果の荒い要約になるが、経営改善支援活動は要注意先のレベルの債務者に対し

て行う場合に効果が期待できる手法であり、実質破綻先・破綻先に区分される債務者の場

合には特別の事情がない限り成果を得ることが困難である。破綻懸念先に区分される債務

者の場合には、対象先の決意と合意が重要であり、成果を得られる割合が落ちることを覚

悟して経営改善支援を行わねばならない。

次に、経営改善支援の取組みに関して個別行の実績をみてみよう。

重点強化期間の2年間(05年4月~07年3月)における経営改善支援実績を、2業態合

わせた平均でみると経営改善支援取組み比率は8.6%、ランクアップ比率は22.4%である。

そこで両比率とも平均を上回っている地域銀行は17行あり、それらをランクアップ比率の

高い順に並べると表6の通りである(なお、公表データより両比率とも算出可能な地域銀

行は110行中94行であった)。

この17行を先に中小企業者向け貸出比率と消費者貸出比率とを用いて仕訳した5つのタ

イプで分類すると、タイプ2が4行、タイプ3が3行、タイプ4が3行、タイプ5が7行

となる。タイプ5が多いとはいうものの、各タイプに分散しているとみることができる。

経営改善支援の取組み比率が高く、しかもランクアップ比率が高い地域銀行とは、中小

企業融資に特化している地域銀行かといえば必ずしもそう単純にいえないということであ

る。中小企業者向け貸出比率(3年平均)が60%以上と高いウエイトを占めている地域銀

行も含まれているが、30%台という銀行もあり、中小企業融資特化型であるから経営改善

支援の取組みにも力がはいっているとは必ずしもいえない。

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表6 経営改善支援実績の高い地域銀行(05年4月~07年3月、単位:%)

行名ランク

アップ比率経営改善取組比率

武蔵野銀行 44.4 21.52福邦銀行 40.7 9.21北都銀行 34.8 17.53山形銀行 34.4 10.00愛媛銀行 33.9 28.30清水銀行 32.3 8.93第四銀行 31.1 9.87

八千代銀行 29.4 19.69阿波銀行 28.1 16.35殖産銀行 27.2 13.70岩手銀行 26.9 21.50

神奈川銀行 26.7 9.78北洋銀行 25.4 38.23徳島銀行 25.3 10.80伊予銀行 25.0 15.77

千葉興業銀行 23.8 23.94沖縄海邦銀行 22.5 16.05

出所)各行「地域密着型金融推進計画の進捗状況」より作成。

なお、中小企業者向け貸出比率が60%を超えていた中小企業融資特化型のタイプ2の地

域銀行の中で、東京都民銀行、東北銀行、親和銀行、熊本ファミリー銀行はいずれも経営

改善支援取組み比率は8.7%を超えているが、ランクアップ比率が平均より低くなっていた。

福岡中央銀行の場合は、取組み比率自身が7.3%と低く、中小企業融資特化型であるが、経

営改善支援への取組みは遅れているといわざるをえない。

中小企業融資特化型銀行のうち経営改善支援の取組み比率が平均より高い銀行の中でも

ランクアップという成果をあげることができるかどうかについては、分かれている。

なお、取組み比率とランクアップ比率を掛け合わせ、要注意先以下の債務者全体に対す

るランクアップ実効比率を求めることができるが、それでいえば武蔵野銀行、愛媛銀行、

北洋銀行の3行が9%台と他を引き離した高い実績を有している。

武蔵野銀行は、中小企業者向け貸出比率が47.9%、消費者ローン比率が36.6%とタイプ

3に属するが、消費者ローン比率において上位13位に入る高さを示しており、消費者向け

業務に力を入れていると同時に中小企業者向け業務の分野では経営改善支援に注力してお

り、両面に実績を残している。また、北洋銀行の場合、中小企業者向け貸出比率38.2%、

消費者ローン比率32.1%とタイプ3に分類されるが、とくに中小企業者向け貸出比率はタ

イプ1、住宅ローン特化型3行に次いで低い水準であり、その中で高い経営改善実績を達

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成している。

このように、高い実績を上げている地域銀行がある一方で、全体としては経営改善支援

の取組みが必ずしも地域銀行で本格的に評価しうる段階にまで達していないと考えられる

一つの原因は、複数の地方銀行大手行で取組み比率が極めて低いことにあらわれている。

静岡銀行の取組み比率はわずか2.2%に過ぎず、西日本シティ銀行で2.5%、 大手の横浜

銀行、千葉銀行でともに4%強、その他、北陸銀行、常陽銀行も6%以下の水準である。

取引先企業の経営相談・支援機能の強化の面では、ビジネスマッチングがすでにみたよ

うに一定の成果を収めているのに対し、経営改善支援は一部に成果をあげているものの、

まだ本格化していないといわざるをえない段階といえよう。

(5)担保・保証に過度に依存しない融資の推進

第4の担保・保証に過度に依存しない融資の推進に関する取組みで成果をあげていると

いえるのがスコアリングモデルを活用した商品による融資である。スコアリング活用融資

は、リレバンが導入された 初の1年である2003年度と06年度を比較してみると、件数で

約1.6倍、金額で約2.2倍へと拡大している。

すでに触れたように債務者数で地域銀行と信用金庫が近い水準であるのに対し、スコア

リングモデルによる融資実績では、地域銀行は件数・金額ともに信用金庫の2.8倍の実績を

有しており、地域銀行の融資実績は06年度には全体のうち、件数で69%、金額で73%を占

めている。

1件あたりの平均金額を比較すると、地域銀行1,150万円に対し、信用金庫は1,160万円

とほとんど変わらない水準である。このことから、スコアリングモデルで求めている財務

条件などはほとんど同じでありながら、その条件を満たす資金需要者が地域銀行において

より多いという、債務者の質的な違いが反映されていると考えられる。

また、担保・保証に過度に依存しない融資の推進で、金額面で大きな効果をあげている

といえるのがシンジケートローンへの参画である。06年度に全体で2兆8000億円を越える

水準にまで達しているが、融資団の一員としての参加が多く、アレンジャーとして組成に

携わっているのはそれに対し6,700億円に過ぎない。

とくに、シンジケートローンに関してはアレンジャー・融資団合計で、地域銀行が件数

の87%、金額の95%を占めており、リレバンの分野において信用金庫と大きな差をみせて

いる。とくに、埼玉りそな銀行を含まない地方銀行64行で、件数の63%、金額の78%を占

めており、リレバンにおいてシンジケートローンは、地方銀行の取引先が中心層である。

さらに、私募債の引受けに関しても、06年度では地域銀行が件数で95%、金額で96%と、

地域銀行がほとんどを取組んでいるが、さらにそのうち、地方銀行64行が件数で73%、金

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額で79%と、中心的役割を果たしている。

以上の分野においては地域銀行、とくに地方銀行がリレバンの取組みの中で中心的な役

割を果たしている。

それに対し、同じく担保・保証に過度に依存しない融資の推進に関する取組みでも、動

産、債権譲渡担保融資をみると、06年で、地方銀行は件数で23%、金額で42%を占めてい

るが圧倒的というシェアではない。地方銀行の場合、1件当たり平均融資額は2,000万円で

ある。むしろ、信用金庫が件数で約50%、金額で32%を占め、1件当たり平均700万円強と

いう小口の融資で信用金庫が多数の取組み実績を持っている。

4.地域銀行の規模と経営効率

地域銀行においてリレバンは、直接融資に結びつくものからそうでないものまで、様々

な取組みを要求するものであり、銀行内での体制作りや関連業務などによって経費効率を

高める要因とも考えられる。そこで、ここでは、地域銀行における規模と経費効率の関連

について検討しよう。

経費効率はコア業務粗利益ベースのOHRの高さにあらわれ、OHRが高いほど経費効

率が悪く、OHRが低いほど経費効率が良いことをあらわす。リレバン導入以後のOHR

についてみるため、03年度(04年3月期)から06年度(07年3月期)決算までの4期分の

OHR数値の平均をとる。

資産規模は、経費に対応する資産の平均残高をベースにするという意味で、03年3月期

残高から07年3月期残高までの5期分の数値の平均をとる。

なお、07年3月期決算を行った埼玉りそな銀行を含む111行についてみているが、合併銀

行の場合には合併前の各行の数値を合計し、修正している。

図4は、縦軸にOHR、横軸に資産規模をとり、111行の分布をみたものである。

地域銀行全体でみた場合、回帰線は右下がりの形状を示し、資産規模が大きくなるほど

経費効率が良くなり、資産規模が小さいほど経費効率が悪くなる関係がみてとれる(被説

明変数をOHR、説明変数を資産規模とする単回帰では、1次式の場合も2次の多項式の

場合もともに決定係数が0.3786と同じ値となる)。その中でも、業態別に分けた場合、地方

銀行(埼玉りそな銀行を含む65行ベース、決定係数0.4633)の方が第二地銀(決定係数

0.2928)より、その傾向がより鮮明にあらわれている。

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出所)各行、決算短信及び決算説明資料より作成。

地域銀行111行の資産規模の平均は2兆5500億円になるが、中央値は1兆9900億円である。

2兆円で境界線を引くと2兆円以上が55行、2兆円未満が56行となる。地域銀行における

規模による格差をみようとするならば、資産規模2兆円の境界線に意味が見出せそうであ

る。

そこで111行を資産規模2兆円以上と2兆円未満とに分けた場合、2兆円以上の地域銀行で

は規模が大きくなるにしたがって経費効率が上昇するという関係をみてとることができる

が(図5)、2兆円未満の地域銀行では、図6から一見してわかるように、両者の間に関係

を認めることが難しい。

このことから、地域銀行において規模の効果が働くことによって経費効率が上昇すると

いう関係があらわれているとはいうものの、それはある一定の規模以上の場合に限り言え

ることで、小規模地域銀行においては各行の経費効率の高さは規模の効果以外の要因で説

明されねばならないといえよう。

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出所)図4に同じ。

出所)図4に同じ。

おわりに

地方銀行・第二地銀においては組織上の異動が多く、業態という区分の意味があらため

て問い直されねばならない状況といえることから、本稿では地域銀行という括りを基本と

しながら、リレバン以後の4年間の業務展開と収益構造の特徴を検討した。一方で、協同

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組織金融機関である信用金庫の場合、業態という括りがまだ十分有効であるといえよう。

そもそも株式会社ではなく協同組織金融機関であることから、他業態金融機関の系列下に

入ることもなく、Face to Faceの統一スローガンのもと共通した価値観と利便性を訴える

ことができるという点で、業態としてのまとまりはよいといえよう。

また、中央組織の有無もポイントとなる。地域銀行の場合、業界団体である地銀協、第

二地銀協とは別に、手形交換業務をはじめ銀行業の共通インフラともいうべき決済システ

ムの業務推進主体として各地に銀行協会があり、全国組織として全国銀行協会が機能して

いる。全国銀行協会は決済システムのインフラ整備の他にも調査・研究、政策提言、情報

発信等の業務を行っているが、これはあくまで協会組織であって、中央組織ではない。

中央組織となれば、それ自身が金融機関としての業務を果たし、自らの調達・運用と同

時に、各単位組織と中央組織との間の資金のやり取りが発生する。

信用金庫業界の場合には、信金中金がそれに当たるが、各単位信金から中央組織である

信金中金への預け金が07年6月末で19兆円に上っている。これは預金・積金113兆円に対し

16.8%に相当する金額であり、信用金庫に重要な資金運用先を提供している。

また、アジア業務室は個別信金のアジア関連海外業務のバックアップを行い、さらに中

小企業信用リスクデータベース(SDB)の提供で信用金庫にスコアリングモデル活用の

インフラを提供したり、独自の業務によって単位信金とのコラボレーションで、単位信金

を直接強化する機能を果たしている。

リレバンの取組みにおいては、債務者企業の特性から、地域銀行が中心的に手がけてい

るものがある一方、信用金庫が多く手がけている取組みもあった。地域銀行においては、

融資業務を中心とした業務構成および収益構造は基本的に変わっていないものの、多様な

取組みを通じて中小企業金融の「質的」な強化に努めているが、その取組みには濃淡があ

らわれている。それは、リレバンが対象とする中小企業者の層が一様ではなく、地域銀行

と信用金庫で差があることに基づいている。そのため、強化すべきポイントも地域銀行と

信用金庫とでは同じポイントとはならず、顧客層の特性に応じた取組みの強化に焦点を絞

らなければならないといえよう。