地域食文化 による 中心市街地...

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平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業) 経済産業省 中国経済産業局 産業部 流通・サービス産業課 〒730-8531 広島県広島市中区八丁堀6番30号 TEL 082-224-5653 (委託先 株式会社 成 研) ※無許可の転載、掲載を禁じます。 地域 文化 による 中心 性化 事例集 中国経済産業局

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Page 1: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業

(地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

経済産業省 中国経済産業局 産業部 流通・サービス産業課

〒730-8531 広島県広島市中区八丁堀6番30号

TEL 082-224-5653

(委託先 株式会社 成 研)※無許可の転載、掲載を禁じます。

地域食 文化によ る中心市街地活性化事例集

中国経済産業局

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2004年4月に浅間大社近くの「お宮横丁」(飲食

店、土産品店8店の集積)に「アンテナショップ」を出

店した。年間10~20万人来店。

2004年に「富士宮やきそば」「富士宮やきそば

学会」で商標を登録し、管理は、現在は、会の管理運

営会社のプロシューマーが行っている。

2001年10月に富士宮やきそばアカデミー開校

し、市民に富士宮やきそばの正しい料理の仕方や歴史

を学ぶ研修制度を開始した。

2007年2月に大手食品メーカーから「富士宮や

きそば」カップ麺が発売された。

事例1 「富士宮やきそば学会」話題づくりとマスコミ活用による情報発信でブランド確立、中心市街地活性化を推進

【団体プロフィール】

Ⅰ.事例紹介

Ⅰ.事例紹介

Ⅱ.地域食文化による中心市街地活性化の成功 7 つのポイント

Ⅲ.事例マップ

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

富士宮やきそば学会

静岡県富士宮市宮町4番23号 (お宮横丁内 )

会長 渡邉英彦

2000年11月

「富士宮やきそば」を通じ、食による元気なまちづくりを推進すること

2009年に㈱プロシューマーを設立、会の運営・管理を行う。

富士宮やきそば

既存活用型

富士宮市の人口  121,779人 (国勢調査2005年 )

門前町 (富士山信仰の浅間大社が中心市街地に立地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

富士宮市の中心市街地が空洞化し衰退したため、現

在の富士宮やきそば学会の会長である渡邉氏がリー

ダーとなり、一般の市民有志一同がワークショップを実

施。その後、富士宮市には古くから他県にはない特徴

のある「やきそば」があることに注目、「富士宮やきそ

2000年11月から学会メンバーを「やきそばG

麺」と名乗り、市内のやきそば店の調査を開始し、マ

スコミにPR 。2001年4月にその結果をもとに「やき

そばマップ」(現在のマップには約150店掲載)と「の

ぼり旗」を作成しPR 活動を開始。

2002年に富士宮市のイベントに参加した「横手

焼きそば」「太田焼きそば」と「三国同麺協定」を締

結し、3市においてネットワークを生かしたまちづくり

を推進。これが、マスコミで取り上げられ、それを機に

「三国同麺シリーズ」として、全国のコンビニで販売さ

れた。また、同年、「天下分け麺の戦い」(富士宮やき

そばVS 小倉焼うどん)などユニークなネーミングのイ

ベントや、やきそば焼き手の出張サービスを行う「ミッ

ション麺ポッシブル」等を実施。2006年、2007

年にB級ご当地グルメで街おこし団体連絡協議会(愛

Bリーグ)主催のB-1グランプリで連続グランプリ

受賞。

ば」を通じ、食による元気なまちづくりを目指しまちお

こしを始めた。2000 年11月に富士宮やきそば学会(市

民団体)設立。やきそば関連業者でない市民 13 名で

スタートした。

■マップ等の作成 ■アンテナショップ出店

■商標登録

■研修制度の創設

■大手食品メーカーからの商品販売

■イベント活動

目 次

事例

1

事例

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P 34

富士宮やきそば学会話題づくりとマスコミ活用による情報発信でブランド確立、中心市街地活性化を推進

日本ぜんざい学会門前町商店街の空き店舗を活用し当地発祥の歴史的メニューの提供による活性化

浜松餃子学会中心市街地での話題性のある地域伝統食のイベントを創設、開催による活性化の推進

いなり寿司で豊川市をもりあげ隊地元行政、商工団体、事業者等が連携したご当地グルメによる地域活性化を推進

佐世保バーガー事業協同組合市民に愛されたご当地グルメのブランドを守り、地域振興を推進

みなさまの縁をとりもつ隊若手市職員が市民団体を作り,熱意と行動力でご当地グルメによるまちづくりを推進

津山ホルモンうどん研究会市職員、市民有志が一体となった計画的、継続的なご当地グルメによる地域活性化

三浦中華料理研究会地元飲食店が中心となり新メニュー開発、地元内外の顧客開拓で地域活性化推進

厚木シロコロ・ホルモン探検隊注目度の高いイベント出店効果で広域集客を図り、食によるまちづくりを推進

奥美濃カレー協同組合地元飲食店組合が地域食材を活用し、国民食「カレー」による地域活性化を推進

事例から判明した地域食文化による中心市街地活性化の成功のポイント

各事例を全国マップで紹介

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そして、2009年に運営体制の強化のため、㈱

プロシューマーを設立し、会の管理、運営を行ってい

る。㈱プロシューマーでは、渡邉氏を中心に十数名の

パートの社員の方が活動している。

⑪店が焼く店、客が焼く店あり(初心者は焼いて

もらうが良)

⑫皿に盛って出す店、熱い鉄板上から直接食べる

店あり

3.ご当地グルメ (富士宮やきそば)の特徴

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

富士宮やきそば12か条

4.運営体制

昔からある富士宮独特の蒸したままの麺と肉かすのこく、魚粉の風味が富士宮やきそばの特徴で、戦後の復興期当

時から市内のやきそば店などで出され、市民に親しまれたものである。

会長の渡邉氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

これまでの10年間実施した「富士宮やきそば」による中心市街地活性化から、第2ステージとして、やきそば以外の

富士宮の物産を活用した富士宮市自体の活性化に取り組みたい。

富士宮やきそば学会は、市民団体として2000年

11月に設立されたが、2004年9月に商標を既存の

NPO法 人(トップランナーふじのみや本舗)で登録した

ことに伴い、その後はNPO法 人として活動した。

①富士宮流やきそば蒸し麺を使用

②炒め油にラードを用いる

③隠し味にラードを絞った後の「肉かす」を使用

④ふりかけはイワシの「削り粉」

⑤歯ごたえのよい地元産キャベツ

⑥ソースの味に店のこだわりあり

⑦トッピングは、多種多様

⑧添えものは、紅ショウガが多い

⑨富士山のおいしい湧水を用いる

⑩大きくて厚い鉄板で、火力を強くして焼くから

おいしい

富士宮やきそば学会会長 渡邉英彦 氏

( 150店掲載 B 3 サイズ両面 )

「富士宮やきそばマップ」

( ※認定制度ではないが、「富士宮やきそば」、「富士宮やきそば学会」の名称で販売する場合は手続きが必要。)

㈱プロシューマーの社員の方 (アンテナショップにて)

( 市内観光のランドマークである「お宮横丁」に入店。)

「アンテナショップ」

の製造量、キャベツや肉かすなどの関連食材の使用

量が増加した。富士宮やきそば学会と富士宮商工会

議所の調査では2001年から2006年までの6年

間で217億円の経済効果が発生したとしている。

調査を行ったり、「三国同麺協定」「天下分け麺の戦

い」と銘打ったユニークなイベントを開催するなど、面

白おかしく自由な発想で話題性のある活動を行ってい

ること。

③マスコミを活用した継続的な情報発信

その話題性ある活動を継続的にマスコミに提供し

続け、全国にパブリシティとして情報発信し、知名度

の向上を図り、富士宮やきそばのブランドを確立した

こと。

④企業化による運営体制の確立

通常の市民団体など任意団体では、運営のための

人員確保、人件費確保などが課題となるが、富士宮や

きそば学会では、運営、管理のため企業化し株式会社

を設立して必要な資金を確保し、必要な人員を常時雇

用できる運営体制を確立していること。

5.活動の成果と成功要因

富士宮やきそば学会の活動により、富士宮やきそば

の知名度が上がり、県内はもとより近県からやきそば

を食べにやってくる観光客が増加し、中心部でのにぎ

わいが創出されたほか、市内のやきそば店の売上や麺

富士宮やきそば学会の活動の成功要因としては以

下のようなことが考えられる。

①カリスマ的リーダーの存在

富士宮やきそば学会では、設立メンバーも加わって

いたワークショップなどのまちづくり活動を推進し、

以前からまちづくり活動のリーダーとして活躍してい

た会長の渡邉氏が他のメンバーと連携し、ユニークな

アイディアで活動を盛り上げ、富士宮やきそばの知名

度アップ、ブランド化、経済効果の波及、組織体制づ

くりなど活動の成果をあげており、富士宮やきそば学

会の活動実績において渡邉氏のカリスマ的リーダーと

しての存在が大きい。

②自由な発想で話題性のある活動

やきそば関連業者でない市民である当学会のメン

バーを「やきそばG 麺」と称して、市内のやきそば店の

(1)活動の成果

(2)成功要因

本件に限らず、まちづくり活動では、組織ありきでなく、まず人ありきで、活動したい人が集ま

り、まず自らが動き出すこと。また、強力に動き、率先するリーダー的人材も必要。

各地には、必ず素晴らしい昔からの地域資源があるので、素材となる資源を探し出し、

活用すること。

話題づくりを行い、マスコミを活用しパブリシティによる情報発信を継続的にし続けること。

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施している。

地元、近県、全国規模の食のイベント出店してい

る。主なものは、「島根ふるさとフェア2008」(広島

市内)、「春のB SS まつり」(松江市内)、出雲ブランド

“食の祭典”2008(出雲市内)などのほか、2010

年9月にB級ご当地グルメで街おこし団体連絡協議

会(愛Bリーグ)が主催するB-1グランプリ(厚木市

内)に出店した。なお、会が自ら主催するイベントはな

い。

「日本ぜんざい学会」の商標を会長の田邊氏個人

で登録。

レトルトぜんざい、ストラップなどを作成販売。

出雲観光協会と連携し、「103 1(ぜんざい)」の語呂

合わせで10月31日を「出雲ぜんざいの日」として日

本記念協会に申請し、2007年4月に記念日として

登録され、これを契機に、「出雲ぜんざい」をブランド

として広める活動を開始。

2010年に「ぜんざいマップ」を作成し、会のホー

ムページからも入手できる。そのほか、「のぼり」「エ

プロン」「学会公認シール」などを作成、マスコミへの

情報発信などPR 活動を展開。

2007年10月に、出雲市大社町の商店街(神門通

り)の空き店舗(元は雑貨店)を借りて、日本ぜんざい学

会の壱号店をオープンした。店舗の規模は、厨房と客

席(12席)を合わせ6坪、店員2名。不定休。来店客

は年間2万人。なお、店舗運営は会長の田邊氏が実

事例2 「日本ぜんざい学会」門前町商店街の空き店舗を活用し当地発祥の歴史的メニューの提供による活性化

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

日本ぜんざい学会

島根県出雲市大社町修理免735-5(出雲観光協会事務局内 )

会長 田邊達也

2007年2月

「ぜんざい」文化の探求と「ぜんざい」活用によるまちづくり

任意団体。出雲観光協会との連携体制。

出雲ぜんざい

既存活用型 (復活型 )

出雲市の人口  146,307人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  門前町 (当団体が関係する地区に出雲大社が立地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

近年の車社会の到来などにより出雲市内大社町の

出雲大社が立地する門前町の地域 (神門通り)の衰退

が顕著となり、その活性化対策として、当時観光協会

の副会長で以前からまちづくり活動に積極的に携わっ

ていた田邊氏が中心となって、出雲市が発祥の地である

「ぜんざい」を活用し、門前町地域 (神門通り)の活性

化を図るため、2007年2月「日本ぜんざい学会」を

設立した。なお、現在の会員数は、40名 (法人、団

体含む )である。 3.ご当地グルメ (出雲ぜんざい)の特徴

出雲ぜんざいとは

4.運営体制

ぜんざいが、出雲地方の神在祭(かみありさい)という神事の際、振る舞われた「神在(じんざい) 餅」に起因し、その

「じんざい」が出雲弁(ずーずー弁)でなまって「ぜんざい」となり京都に伝わったといわれる古事(江戸初期の文献「祇

園物語」など)にもとづき、「ぜんざい」を復活させ活用している。

日本ぜんざい学会は、市民団体として2007年2月に設立

され、会長の田邊氏が中心となり、出雲観光協会の誘致開発

マネージャー早川氏の2名で積極的な活動を展開している。

会の事務所は、出雲観光協会事務局内にあり、運営について

は、観光協会との連携体制により行われている。

「出雲ぜんざい」は、奥出雲産など希少な出雲産の大納言小豆

を使ったぜんざいに、腰の強い紅白の白玉団子が入っている。

ふっくらとした小豆は豆粒の存在感があり、汁はのど越しのよ

い甘さが特徴。

<「ぜんざいマップ」 (A 面 )>

<「日本ぜんざい学会壱号店」 正面、店内、地図>

会長 田邊達也氏( 右)

観光協会 早川正樹氏( 左)

<「ぜんざいマップ」 (B 面 )>

■「出雲ぜんざいの日」の記念日登録

■イベント活動

■商標登録

■関連商品の開発販売

■マップ等の作成

■壱号店オープン

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「ちゃお」。浜松餃子学会設立当時からのキャラク

ターで、2007年「第2回浜松餃子まつり」の際、一

般公募により決定。餃子の中国名「ちゃおず」、挨拶

の「ちゃお」、「食べちゃお」等が由来。

「浜松餃子学会」と「ちゃお(マスコットキャラク

ター)を商標登録している。

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

会長の渡邉氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

2011年春をめざし体制の強化のため組織を一新し、第2期の日本ぜんざい学会として、更なるまちづくり活動に

取り組みたい。なお、会として新規出店の予定はない。

として、県内や近県の食のイベントへの参加や全国規

模のイベントへの参加により、広く「出雲ぜんざい」が

認知され始め、今後の展開の基礎づくりに貢献できた

ことがある。

②実際店舗、情報発信基地としての壱号店

「出雲ぜんざい」は、半ば開発型の商品であるた

め、これまですぐわかるような形で「出雲ぜんざい」を

提供する店はなく、顧客がマスコミ報道やイベントな

どで「出雲ぜんざい」を知り、実際に食べたいと思って

も、食べることができなかったが、観光客を集客しや

すい門前の商店街に、「壱号店」を出店し、実際に利

用できる店舗を出店したことで名実ともに、「出雲ぜ

んざい」を提供することができたこと、また、「出雲ぜ

んざい」に関する情報発信基地としての機能や、顧客

ニーズの把握などアンテナショップ機能も持つことが

できたことなどが成功要因の1つとなっている。

5.活動の成果と成功要因

活動の成果としては、出雲大社に訪れた観光客を

「壱号店」に吸引し、商店街(神門通り)において壱号

店周辺でのにぎわい創出や近隣の観光客向け店舗の

利用、商店街での観光客を対象とした店舗の増加な

ど一定の活性化が図られたこと。また、間接的な効果

日本ぜんざい学会の活動の成功要因としては以下

のようなことが考えられる。

①積極的にけん引するキーパーソンの存在

日本ぜんざい学会では、観光協会の副会長で、まち

づくり活動に取り組んでいた会長の田邊氏が中心と

なり設立され、観光業での業務実績を有する出雲観

光協会マネージャー早川氏の2名で積極的な活動を

展開している。活動の節目となる事柄、例えば、ぜんざ

いの発祥の研究、利用できる店舗、情報発信基地とし

て壱号店の出店や類似品対策等のための商標の取得

などは、会長の田邊氏が個人的な負担も負いながら

率先して行っている。また、早川氏についても、経歴を

活かし会長を補佐し、活動に積極的に取り組んだこと

など、活動を積極的にけん引するこれらキーパーソン

の存在が大きかったこと。

(1)活動の成果

(2)成功要因

ボランティア活動で無いものは、「人」と「金」だが、有るものは顧客への「責任」で、この「責任」

を果たすためには、継続して活動できる仕組みが必要である。そのために、例えば、会社のよう

に企業化して収益を確保し、常時必要な人員を雇用できる体制づくりが必要である。

活動の目的は、特定の事業者や団体の利益のために商品を売るのではなく、まちづくりのため

に商品を売るということを徹底すること。活動目的は、商品を売るのではなく、まちを売ること。

活動は、市民団体など資金的に余裕のない状態で始めることが多いと思われるが、マスコミを

活用したパブリシティによる情報発信が非常に効果的なので、マスコミ対応を心がけること。

事例3 「浜松餃子学会」中心市街地で話題性のある地域伝統食のイベント創設・開催による活性化の推進

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

浜松餃子学会

静岡県浜松市東区中田町 593 (有限会社コスモ・ファンシー内 )

会長 齋藤公誉

2005年7月

浜松餃子の振興・普及を通じ、浜松市の魅力を全国に発信し、まちおこしを行う。

任意団体。運営管理についてはプロモーションはままつ株式会社が実施。

浜松餃子

既存活用型

浜松市の人口  804,032人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  城下町 (ターミナルを中心とした繁華街が中心市街地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

浜松市では、近年、大型店の郊外進出等により、中

心市街地の衰退が進んでいたが、200 5 年 7月、浜松

市の平成の大合併の合併祭(カウントダウン)で行った

餃子イベントをきっかけに、浜松市民が如何に餃子を

愛しているかを認識し、餃子を使ったまちおこしを決意

した。200 5 年 7月に、現会長の齋藤氏を含む様々な

職業のメンバー 8 名で一人 5 万円づつ出資して浜松餃

子学会を設立し、市民に愛されてきた浜松餃子を活用

したまちづくり、まちおこしの活動を開始した。現在の

学会メンバーは11名。

■マップ等の作成

■マスコットキャラクター

■商標登録

■イベント活動

開催時期 イベント名 備考

2006年9月 第1回浜松餃子まつり 来場者15 ,000人

20 07年9月 第2回浜松餃子まつり 来場者60 ,000人

20 09年8月 第3回浜松餃子まつり 来場者12 ,000人

2010年10月 全国餃子サミット関係者のみ。

話題提供で開催

2010年10月 浜松餃子まつり2010 来場者10 2,000人

<浜松餃子学会が主催するイベント>

2005年に浜松市内の餃子販売店の情報をまと

めた「浜松餃子マップ」を発行。お店を無料掲載。毎

年1回必ず発行。現在の掲載店は168店。その他、の

ぼりなどの販促物を作成。

浜松餃子学会が主催するイベントとしては、

2006年「第1回浜松餃子まつり」、2007年「第

2回浜松餃子まつり」、2009年「第3回浜松餃子

まつり」、2010年「全国餃子サミット」、「浜松餃子

まつり2010」を市内の中心市街地で開催し、「浜

松餃子まつり2010」では102,000人の来場者

があり、浜松餃子のP Rや中心市街地への集客、にぎ

わい創出ができた。全国イベントでは、B級ご当地グ

ルメで街おこし団体連絡協議会(愛Bリーグ)主催の

B-1グランプリに参加している。

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3.ご当地グルメ (浜松餃子)の特徴

浜松餃子とは

4.運営体制

浜松の餃子は、戦前から中華料理店で出され、市民に親しまれてきたが、多くは他地域の餃子とほぼ同じように、

戦後、中国方面からの復員兵達が、中国での食体験を基に浜松の食材を生かした焼き餃子を屋台で販売し、広まった

ようである。

浜松餃子学会は市民団体として、8名で2005年7月に設立され、

任意団体の組織形態で運営されている。学会の事務所は、会長の齋藤

氏が社長を務める会社内に設置されている。現在の学会メンバーは

11名。浜松餃子学会活動資金の管理と益々大きくなる活動資金調達

のため「プロモーションはままつ株式会社」(資本金902,000円)を設立

した。

また、まちづくり、まちおこしの活動展開のため地元行政との連携体

制を重視している。

浜松餃子を一言で表す定義は浜松の恵まれた食材を使用し、『浜

松市内で製造されている事』。

浜松で作られていることが重要で、それが特徴に結びついている。

①キャベツを中心にしてあっさり味でありながら、タマネギで甘みを補

い、豚肉のコクを併せ持つ。

②粒の多さは中くらい。皮の厚みも中くらい。

③口をリセットするモヤシを添えるのも浜松流。

「浜松餃子マップ」

浜松餃子学会会長 齋藤公誉氏

「浜松餃子まつり2010」

円型焼き

 「マスコットキャラクターのちゃお」

( 201 0 年版 168 店掲載  約39 .5×4 2㎝ 両面 )

◇キャベツ・・

◇玉ねぎ・・・

◇豚肉・・・・・

浜松市や隣の愛知県で豊富に生産されている。

浜松は古くから玉ねぎの産地。   

浜松では昔から養豚業が盛んで豚肉が餃子の材料に

使われてきた。

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

会長の齋藤氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

今後取り組みたいこととして、増員については、広く一般から構成メンバーを募集する予定である。次に、「次世代の

育成」として、当学会でこれからを担う幼稚園から大学生までに、まちづくり、まちおこしを学んでもらう場をつくり次

世代の育成に取り組みたい。そのほか、観光バスも発着できる浜松餃子の集客核、情報発信基地として、市内に 「アン

テナショップ」を整備したい。

の中心市街地に10万人を超える来場者を集客し、中

心市街地での賑わい創出や、全国への浜松餃子の情

報発信ができ、今後のまちづくり、まちおこしの基礎

作りに貢献している。

いて、テレビ、ラジオなどのマスコミによるパブリシ

ティ(報道)を活用し、無料の情報発信により効果的な

PR 活動できたこと。

③設立メンバーの熱意、スキル

浜松餃子学会は、現会長の齋藤氏と共に、まちづく

り、まちおこしに対する強い熱意を持った8名の様々

な業種(印刷、流通、教育など)のメンバーが集まり市

民団体として設立され、予算や法的業務義務での制

約はないが、活動面では課題が多い市民団体におい

て、各メンバーの得意分野のスキルを活かし、自由な

発想で、意欲的に取り組むことができたこと。

5.活動の成果と成功要因

浜松餃子学会の活動の成果としては、浜松餃子学

会が主催し、5年間にわたり、市民に古くから食され、

浜松の市民食であった焼き餃子を活用した話題性の

高いイベント(浜松餃子まつり、全国餃子サミットな

ど)を企画、開催したことにより、空洞化が進む市内

浜松餃子学会の活動の成功要因としては以下のよ

うなことが考えられる。

①市民食である餃子の活用

浜松餃子学会では、食によるまちおこしの素材とし

て、古くから浜松市民に愛され食されてきた市民食で

あり、浜松の恵まれた食材で安定的に提供できる「焼

き餃子」を選び、市民等を対象とした食のイベントを

開催しているが、そのイベントについては、市民の共

感を呼び、市民に受け入れられ、意欲的なイベント参

加を得ており、活動成果の要因として、浜松市の市民

食である焼き餃子の活用が大きいこと。

②マスコミなどパブリシティの活用

浜松餃子学会が企画、開催するイベントのP Rにつ

(1)活動の成果

(2)成功要因

活動内容が、団体メンバー自体が楽しんで、興味を持ち、意欲的に取り組めるものであること。

また、当初から(公的な)予算や外部からの資金を当てにせず、先ず自らが努力すること。

食の素材、メニューは地元で古くから愛されているものを選ぶこと。

活動を継続できるための組織体制を構築すること。そのためには、人件費、活動経費など必要

経費を賄える資金体制を備えた会社組織の検討も必要。

Page 7: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

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事例4 「いなり寿司で豊川市をもりあげ隊」地元行政、商工団体、事業者等が連携したご当地グルメによる地域活性化を推進

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

いなり寿司で豊川市をもりあげ隊

愛知県豊川市諏訪一丁目1 番地 (豊川市役所内 )

隊長 笠原盛泰

2009年7月

「豊川いなり寿司」を地域のブランドとして、食によるまちづくりを推進すること

任意団体。豊川市観光協会が事務局を行う。

豊川いなり寿司

既存活用型

豊川市の人口  181,444人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  門前町 (三大稲荷の 1つである豊川稲荷が中心市街地に立地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

2003年年度の豊川商工会議所による豊川鮓商

組合いなり部のいなり寿司販売から始まり、2007年

の山脇市長就任の際に「いなり寿司の地域ブランド化」

が、マニフェストに記載されたことにより大きく動き出

し、2009年7月に市・商工会議所・観光協会・JA ひま

わり・事業者が中心になって、豊川いなり寿司を活用し、

まちづくりや地域経済の活性化を推進することを目的

に「いなり寿司で豊川市をもりあげ隊」が設立された。

 なお、各メンバーは、ボランティアで活動し、会費は特

に設けていない。

■マップ等の作成

■豊川いなり寿司マイスター

■イメージキャラクター

■イベント活動

市内60件のイベントに参加した。なお、活動費にあ

てるため「いなり税」の名称で、当隊の活動として市

内イベント等に参加した事業者から各店のイベント売

上げの10%の支払いを受けている。全国イベントでは

愛Bリーグ主催のB-1グランプリに参加し6位入賞

した。

豊川いなり寿司の定義づけについては「人」を中心

にすることとし、「豊川いなり寿司マイスターの認定

制度が設けられた。認定店にはのぼりや認定証が提

示される。(2010年3月現在22店)

「いなりん」。(社)穂の国青年会議所が2009年

に豊川いなり寿司イメージキャラクターとして一般公

募し、着ぐるみ化したキャラを使用している。

「豊川いなり寿司図鑑」(2010年3月作成。豊川

市内85店掲載)、「いなり寿司食べ歩きマップ」(豊川

稲荷周辺)などを作成し、これらは、当隊のホームペー

ジからも入手できるようになっている。そのほか、豊川

いなり寿司マイスター認定店が提示する「のぼり旗」

「認定証」などを作成しPR 活動を実施している。

毎月17日は「いいな、いなり寿司の日」として平日

の17日はとして市役所1階ロビーでいなり寿司大集

合の販売を実施。

当隊の主催イベントとして、2009年、2010年

の各11月に「豊川いなり寿司フェスタ」を市内の中心

市街地で開催し、2010年の「豊川いなり寿司フェ

スタ」では、豊川稲荷の境内で実施したこともあり

2万人の来場者で賑わった。そのほか、2010年は、

3.ご当地グルメ (豊川いなり寿司) の特徴

豊川いなり寿司 こだわり5か条

4.運営体制

日本三大稲荷の一つである豊川稲荷の門前町として栄えた豊川市では、古くから「いなり寿司」が販売されてお

り、参拝客に親しまれてきた。また、「いなり寿司」は、名古屋と並んで豊川稲荷の門前町も発祥の地の一つとして伝

えられており、豊川市には、大変、ゆかりのある食べ物であり、豊川市内では80店舗以上で「いなり寿司」が製造・販

売されている。

いなり寿司で豊川市をもりあげ隊は、市・商工会議所・観光協会・JA

ひまわり・事業者が中心となり、2009年に設立された任意団体であ

り、運営については、各メンバーのボランティア活動で行われている。な

お、事務局は豊川市観光協会に置かれている。

いなり寿司で豊川市をもりあげ隊には、「研究部会」、「広告部会」、

「事業部会」が設けられ、おいしいいなり寿司の研究・発表・公共施設

やイベント等での販売機会の提供、ブランド化のデザイン、統一されたデ

ザインの作成・浸透・広告宣伝・マスコミ対応などの支援を行うこととし

ている。

 イメージする目標は、参加100店・売上10億である。

①豊川市内のお店で製造・販売している。

②味いろいろ、工夫いろいろを信条とする。(種類が豊富)

③マイスター認定制度を設け、安心安全に心がけている。

④食べ比べ選手権を開催し、お店同士切磋琢磨している。

⑤それぞれのお店で、おもてなしの心を込めて作っている。

(いなり寿司で豊川市をもりあげ隊 パンフレットより)

「豊川いなり寿司図鑑」

副隊長 平賀 菜由美 氏

「第2回豊川いなり寿司フェスタ」

わさびいなり (20 10 年B1グランプリ出品)

キャラクター「いなりん」

(2010年3月作成。豊川市内85店掲載)

(2010年11 月 豊川稲荷境内で開催)

( 推進部隊長兼宣伝部隊長、豊川市観光協会事務局長)

Page 8: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

12 13

佐世保バーガー事業協同組合の設立前、2001年

から行政関係や(財)佐世保観光コンベンション協会

(2003年設立)により、「佐世保バーガーマップ」

が作られ増刷されている。現在のマップが終了後、組

合オリジナルマップを作成予定。

  

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

副会長の平賀氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

設立3年目となり、組織体制の強化を図っていかなければならず、事業者の自立や地域団体商標取得も視野に入

れ、協同組合の設立などを検討している。

の組織変更、規模拡大の事例もあり、中心市街地で

の商業活性化が図られた。また、イベント参加やマス

コミでの報道によりさらなる「豊川いなり寿司」や豊

川市の知名度の向上が図られ、地域のブランド化の

推進に向けた活動を行うことができた。

②行政・商工団体・事業者等の一体的取組  

いなり寿司で豊川市をもりあげ隊では、地域の行

政、商工会議所、観光協会、JA、事業者など地域の関

係する機関等が連携し、事務局についても関係機関

である観光協会に設置されるなど組織づくりや事業

運営について関係機関や関係者の一体的な取り組み

が行なわれていること。

5.活動の成果と成功要因

活動の成果としては、当隊が主催し中心市街地で

実施した「豊川いなり寿司フェスタ」や市内や県外の

イベントへの参加を通じ、中心市街地への集客や賑

わい創出、販売店の売上増加のほか、少数ではあるが

中心市街地への店舗移転、個人商店から会社組織へ

いなり寿司で豊川市をもりあげ隊の活動の成功要

因としては以下のようなことが考えられる。

①歴史的地域食の活用

いなり寿司で豊川市をもりあげ隊では、食の素材と

して、歴史的に由緒があり古くから地域で製造販売さ

れ、地域に親しまれてきた「豊川いなり寿司」を選び、

活動を展開しているが、豊川市民や観光客に受け入れ

られ集客効果をあげており、既存型商品で歴史的な

地域食である「豊川いなり寿司」を食の素材として活

用したことが大きな成功要因の1つである。

(1)活動の成果

(2)成功要因

自らの負担で、身銭を切って活動すること。補助金ありきではダメ。資金は自分たちでつくるこ

と。まず、身の丈サイズの活動でお金を使わないで時間をかけて汗をかくこと。

PR 効果、信用力の向上にはマスコミの活用が欠かせないので、テレビ、新聞などのマスコミに取

り上げられるような面白い活動内容にすること。

特定のグループや団体の活動でなく、市民など地域を巻き込んだ活動になるようにすること。

事例5 「佐世保バーガー事業協同組合」市民に愛されたご当地グルメのブランドを守り、地域振興を推進

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

佐世保バーガー事業協同組合

長崎市佐世保市元町 3-9

理事長 小倉 豊

2010年11月

「佐世保バーガー」のこだわり、ブランドの保護、観光振興。

当事業協同組合と( 財) 佐世保観光コンベンション協会が連携して活動運営。

佐世保バーガー

既存活用型

佐世保市の人口 269,574人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  港町、基地の町 (古くからの港町、米海軍の基地が立地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

佐世保バーガーは、戦後進駐してきた米海軍から直

接レシピを教わり、その後広く市内で製造販売される

ようになったものたが、2001年にはじめて佐世保のハ

ンバーガー店を網羅した「ハンバーガーマップ」が作ら

れ、その後、マップの増刷、マスコミでの報道などで

徐々に知名度が高まっていった。しかし、類似品が多

くなったので、2010 年10月、佐世保バーガーのブラン

ド保護、地域団体商標取得、佐世保市の観光振興な

どを目的に佐世保市内の佐世保バーガー店 33 店が集

まり、佐世保バーガー事業協同組合が設立された。

■マップ等の作成 ■マスコットキャラクター

■商標登録

年度 部数

20 01年 5,000

20 02年 35,000

20 03年 100 ,000

20 04年 220 ,000

20 05年 250 ,000

2006年 250 ,000

<マップ増刷状況 2001~2005年>

(資料:(財)佐世保観光コンベンション協会)

組合設立前から、 (財)佐世保観光コンベンション協

会と連携し200 4年「ハンバーガーフェスティバル」(市

内中心市街地で開催。推定来場者2万人)への出店の

ほか、百貨店の物産展等への出店、毎年11月中旬~

12月下旬に佐世保市内の中心商店街で開催される大

型イベント「きらきらフェスティバル」(推定来場者1カ

月間で50万人) への出店など。20 07年には期間限定

商品共同キャンペーン(クリスマスバーガー)を実施。

商品力やブランド価値の保護により、ブームでなく、

本物として定着させ観光振興や地域活性化に資する

ことを目的に2006年、「佐世保バーガー認定制度」を

設置。原則、事業者等が申請し、認定委員会がコンセ

プト、独自性、地域性等の認定基準で認定。

(2011年1月33店認定)

Page 9: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

14 15

( 財) 佐世保観光コンベンション協会佐世保バーガー事業協同組合

3.ご当地グルメ (佐世保バーガー) の特徴

佐世保バーガーの定義

4.運営体制

佐世保バーガーは、昭和25 年頃、佐世保に駐屯していた米海軍が、地元の人々にレシピを伝えたことが始まりと

言われている。当時は外国人バー街などでアメリカ人向けに売られていたが、日本人の口に合うよう佐世保流にアレ

ンジされ、現在の佐世保バーガーができた。今では、店ごとに趣向を凝らしたハンバーガーが市民の味として定着し

ている。「飲んだシメ」はラーメンでなくハンバーガーなど。

佐世保バーガー事業協同組合は、佐世保市で

3年以上の販売実績を持ち、冷凍品販売だけでは

ない19業者34店舗が結集し、2010年10月

に設立され、事務所は市内中心部に設置されてい

る。

なお、活動については、これまで「佐世保バー

ガー」の発展、振興の活動をしてきた(財)佐世保

観光コンベンション協会と連携し推進していくこ

ととしている。

佐世保バーガーとは、

①徹底的に手づくりで、

②地元食材を使った各店こだわりの

③メイドイン佐世保のハンバーガー

(文、写真:佐世保ハンバーガーマップより)

「佐世保バーガーマップ」

課長 口木史香 氏理事 川原道明 氏

「佐世保バーガーフェステイバル」と 「キャラクター」

佐世保バーガーボーイ  させぼのボコちゃん

( バラエティーが豊富。写真は一例。スペシャルバーガー(左)とチーズベーコンバーガー( 右))

(上記は折り畳んだ状態 34店掲載) (© やなせたかし・SA SEBO )

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

佐世保バーガー事業協同組合理事の川原氏と( 財) 佐世保観光コンベンション協会課長の口木氏にお尋ねしたと

ころ、次のような回答があった。

一過性のブームで終わらせないように、佐世保バーガー事業協同組合理事と( 財) 佐世保観光コンベンション協会

が連携し、PR 、プロモーション、地域プランド化の推進に取り組みたい。

②マスコミで取り上げられたこと

佐世保バーガーのPR につては、バーガーマップの

作成から始まり、イベント参加など地道な活動を展開

してきたが、知名度の向上に大きく貢献したのは、報

道、テレビドラマに登場(NH Kの 連続ドラマてるてる

家族)などマスコミに取り上げられたことであり、マス

コミによる情報発信は大きな成功要因の1つとなって

いる。

5.活動の成果と成功要因

バーガーマップの作成やイベント参加、マスコミに

取り上げられたことなどほか、近年のご当地グルメ

ブーム、高級ハンバーガーのブームを背景に、中心市

街地を含む市内でのハンバーガー店舗数の増加(8年

間で約3倍)、佐世保バーガーの売上数の増加(3年で6

倍)、それに伴う店員の増加が顕著となり、県外来店客

も増加し、商業活性化が図られた。

佐世保バーガーの活動の成功要因としては以下の

ようなことが考えられる。

①市民に親しまれ佐世保の食文化の活用

佐世保バーガーは、戦後進駐してきた米海軍から直

接レシピを教わり、その後広く市内で製造販売される

ようになり、市民にも広く親しまれ地域食文化として

根付いており、先ず市民に受け入れられやすく、また、

観光客についても、佐世保は基地の町→アメリカ文

化→ハンバーガーがおいしいといったイメージを持ち

やすく、佐世保バーガーを活用したことが成功につな

がっている。

(1)活動の成果

(2)成功要因

活性化のためのご当地グルメは、市民に親しまれ、地域に根付き浸透した「本物」であること。

マスコミに取り上げられること。報道というパブリシティのほか、縁があって、ドラマの舞台、バラ

エティ番組などに取り上げられると、大変効果的にPR 、知名度向上を図ることができる。

年度 店舗数

20 01年 12店舗

20 02年 12店舗

20 03年 14店舗

20 04年 20店舗

20 05年 22店舗

2006年 25店舗

20 08年 32店舗

20 09年 34店舗

年度 売上数

20 01年 30万個

20 04年 180万個

<市内ハンバーガー店舗数(専門店)>

<市内の佐世保バーガー売上数(推定)>

(資料:(財)佐世保観光コンベンション協会)

Page 10: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

16 17

みなさまの縁をとりもつ隊は市役所職員有志10名で結

成されたボランティア団体であるが、現在は25名となっ

た。平均年齢は29歳。毎週水曜日夕方、業務終了後、6

時30分から隊のミーティングなどの活動が行われてい

る。

事例6 「みなさまの縁をとりもつ隊」若手市職員が市民団体を作り,熱意と行動力でご当地グルメによるまちづくりを推進

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

みなさまの縁をとりもつ隊

山梨県甲府市千塚 1-8-15

代表 土橋克己  隊長 山本和弘

2008年 6 月

「甲府鳥もつ煮」を活用し、食によるまちづくりを推進

任意団体 ( 市民団体 )

甲府鳥もつ煮

既存活用型

甲府市の人口  199,749人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  城下町 (首都圏近郊の中規模都市、県庁所在地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

甲府市の中心市街地が空洞化し衰退が顕著となっ

たため、他の都市の例( 宇都宮市で市の職員のアイデ

アで餃子のまちおこしが成功した例) などに感化され、

2008年6月、「鳥もつ煮で甲府を元気に!」を合言葉

に、土橋氏、山本氏ら10名の30 歳代の甲府市職員有

志が立ち上がり、既存の行政組織ではない「みなさまの

縁をとりもつ隊」という任意団体(市民団体) を設立し

た。現在の隊員は25名。

3.ご当地グルメ (甲府鳥もつ煮) の特徴

甲府鳥もつ煮

4.運営体制

戦後の昭和25 年頃に、「鳥のもつ」が捨てられていてもったいない。なにか安くて美味しいものができないものか。

と甲府市内の蕎麦屋で生まれ、その後、蕎麦屋をはじめとする飲食店に広がっていき、今では、「ほうとう」、「煮貝」と

並ぶ甲府独自の食文化となっている。

◇砂肝のコリコリ感、しこしこしたハツ、レバーのやわらかさ、

ぷちっとした感触のきんかん(産まれる前の卵)を、

◇甘く濃厚な醤油だれで、

◇短時間強火で照り煮(「照り」が命)した

◇甲府の郷土料理。

代表 土橋克己 氏 (左)

隊長 山本和弘 氏 (右)

「甲府鳥もつ煮」マップ

「甲府大好きまつり(甲府市内)」 (2008年8月 設立2 か月目の参加) 「キャララクター」

(「とりもっちゃん」と「えん丸くん」)

( 中心市街版 16 店掲載 A 4 両面)

要したが、入賞よる反響が大きく、知名度が向上し、

地元客、観光客が増加した。

「のぼり旗」について、商標登録している。キャラク

ターについては申請中である。

知名度の向上、イメージアップのため、当隊のマス

コット、ゆるキャラとして「とりもっちゃん」と「えん丸

くん」を作成し、イベントでの着ぐるみ、お店でのPR

等に活用している。

キャラクターのデザインは隊員が行い、ネーミング

は公募(77 3通の応募)し決定した。 

「甲府鳥もつ煮」のブランド保護、品質の維持のた

め、認定制度の創設を検討している。

鳥もつ煮の取り扱い店の調査のほか、「甲府鳥も

つ煮」マップを「中心市街地版」(16店掲載)と「広域

版」(48店掲載。2010年9月のB-1グランプリ出店

後作成)の2種類を作成し、PR 活動をしている。

 みなさまの縁をとりもつ隊が出店した主なイベ

ントは、当隊が初めて出店した「甲府大好きまつり」

(2008年8月)、続いて、県外初のイベント出店とな

る「富士山B級ご当地グルメ大集合」(2009年10

月)、その他、遠方では「おかやまB 級グルメフェスタ

in津山」(2010年3月)への出店などがあり、計40以

上のイベントに勢力的に出店した。また、「甲府鳥もつ

煮」の知名度向上に大きく役立ったものは、全国イベ

ントである愛Bリーグ主催のB-1グランプリ(B級ご

当地グルメの全国大会)に参加し、グランプリ入賞した

ことである。参加に向け準備、調整など多くの労力を

■マップ等の作成

■商標登録

■イメージキャラクター

■その地

■イベント活動

Page 11: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

18 19

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

代表の土橋氏、隊長の山本氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

ブームでなく定着化のため、知名度向上などまちづくりのためになるイベントに今後も積極的に参加したい。また、

組織体制の強化等のため、2011年3月を目途に、NP O 化 を予定している。

ほか、鳥もつ煮を提供する蕎麦屋の売上の増加(3~

5倍)や、中心市街地の通行量の増加があり、2010

年11月の通行量調査では全体として前年の15.4%

増となり、「鳥もつ煮マップ」に掲載された店舗が周

辺に点在する「かすがもーる」では36%の増加する

など、にぎわい創出、商業活性化が図られた。

②目立たなかった地域食を活用 

古くから地元で食されていたが、あまり目立たないも

のであった「鳥もつ煮」の地域資源としての価値や、ま

ちづくりでの活用の可能性を見抜き、関係事業者の協

力を得てイベント出店用に調理方法を工夫したこと。

③効果的なイベント参加、PR 、情報発信、

「甲府鳥もつ煮」の活用には、まず、知名度の向上

対策が必要で、マスコミの活用のほか、可能な限り地

元や地元外のイベントに出店しPR 活動を行ったが、

知名度向上に大きく役立ったのは、全国イベント(B-

1グランプリ)に参加し好成績(1位入賞)を収めたこと

である。マスコミ報道により、イベント後、短期間で知

名度が向上し、地元客、観光客が増加した。これらの

取り組みには非常に多くの労力を要するが、知名度向

上には大いに効果があるものであり、計画的に活動の

節目として実行し、効果的なP R活 動ができたことが

成功要因の一つとなっている。

5.活動の成果と成功要因

成果としては、マップ作成や店舗ののぼり等P R活動

をしていたことに加え、イベント参加による成果が大きく、

2010年9月に開催されたご当地グルメの全国大会で

あるB1グランプリで優勝したことにより、知名度が一気に

広まった。そのため、観光案内書の利用者が1.4倍と

なり、「甲府とりもつ煮」を目的にした観光客が増加した

当隊の活動の成功要因としては以下のようなことが

考えられる。

①若手市職員有志の熱意と行動力

当隊は、10名の若い市職員有志がまちおこしに対

する強い信念と熱意を持ち、既存の行政組織の枠に

とらわれない任意団体(市民団体)として設立された。

活動当初は赤字になることもあり、隊員同士の個人負

担となることも多かったが、隊の活動ミーティングで

は、「できるかもしれない」というような言い方を心が

けるなど、前向きに思考し活動している。また、活動に

は鳥もつ煮を扱う蕎麦屋など地元関係事業者の協力

が必要であるが、当隊の活動に共感した地元事業者

の中から強力な賛同者(鳥もつ煮の工夫にも携わった

店主)を得て、関係事業者とのネットワークを構築でき

たことも特徴である。このように、前向きに、強い信

念と熱意を持ちづけ活動していることが、活動の成功

要因の一つとなっている。

(1)活動の成果

(2)成功要因

メニューを「本物」にすること。当隊では、イベント出店の際は、地元の料理職人の方の協力を得

てできる限り店と同じ方法で調理した。

マスコミの活用、可能な範囲で有効なイベント等への積極的な参加。「知らないのは無いと同

じ」であり、知名度向上等のPR 活動にはマスコミの活用や注目イベント等への参加が必要。

事例7 「津山ホルモンうどん研究会」市職員、市民有志が一体となった計画的、継続的なご当地グルメによる地域活性化

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

津山ホルモンうどん研究会

岡山県津山市井口 21-1

代表 鈴木康正

2005 年 4 月

「津山ホルモンうどん」の情報発信、P Rを通じ津山のまちづくり、活性化を推進

任意団体。事務局は「つやまNPO支援センター」内に設置

津山ホルモンうどん

既存活用型

津山市の人口  100,569人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  城下町 (中山間地の中規模都市 )  

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

2005年10月に津山市で開催された岡山国体柔

道競技会に訪れた選手のもてなし料理として、以前か

ら津山市に食堂や焼き肉店などで提供され、地域限定

の食文化であった「津山ホルモンうどん」を紹介するた

め、2005年4月に国体担当だった市職員と市民有志

計4名で「津山ホルモンうどん研究会」が設立された。

現在の会員は、市職員、団体職員、会社員、自営業者

など70名。

ルメフェスタin津山」(50団体出店。)を主催者の一員

として開催し、2日間で15万人の来場者があった。イベ

ント出店については、研究会メンバーがボランティア

で出向き、自ら調理もする。味付けも地元で長年愛さ

れている市販のタレをベースに独自で工夫している。

なお、行政や他からの資金援助は受けておらず、出店

費用などは売上で賄うため、活動当初は赤字の場合

は研究会のメンバー負担となることも多かった。

イメージキャラクターとして、「てっちゃん」「せんま

い君」「はちのす大将」などを作成し、PR 活用、マップ

等への掲載をしている。なお、現在、ロゴとともに津

山ホルモンうどんの商標登録を完了した。

B-1グランプリ3位入賞後、商品開発依頼が殺到

したが、認定商品の売価の1%を当研究会が協力費と

して受け取り、それを津山市に「まちづくり協力金」と

して寄付している。

2007年10月から津山市全域のホルモンうどん

の食べ歩きを実施し、2008年3月に「津山ホルモ

ンうどん地図」を4万5千部作成し、毎年改訂をしな

がら、翌年2009年3月に10万部、2010年3月

に17万部作製した。そのほか、協力店(業界関係者で

ホルモンうどんの調理方法について一定の基準を満

たす店)に掲載する「のぼり旗」などを作成しPR 活動

を実施している。

イベントの出店依頼は各地からあり、多くのイベント

に出店しているが、県外での主なものは、2009年

「神奈川フードバトルin厚木」(来場者数13万5千人)、

「B級グルメスタジアム」(静岡県、来場者数16万5千

人)に出店し、2009年、2010年には愛Bリーグ

主催のB-1グランプリに参加し好成績(09年3位、

10年4位)を収め、知名度の向上、観光客等の増加

に効果を上げた。地元では2010年「おかやまB級グ

■マップ等の作成

■イベント活動

■イメージキャラクター

■その他

Page 12: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

20 21

( 津山市観光振興課長)

3.ご当地グルメ (津山ホルモンうどん) の特徴

津山ホルモンうどんとは

4.運営体制

津山市内約50 店舗の鉄板焼店等で提供されている牛ホルモン(内臓肉)入り焼うどん。津山地域は和牛の産地

で、50 年以上前から焼肉店や鉄板焼店を中心に人気を博してきたメニュー。味付けは、醤油や味噌などをベースに

して各店が独自にブレンドした自家製だれを使用しており、食べ歩きをすることで店ごとの味の違いを楽しむことが

できる。ビールとの相性もよい。

津山ホルモンうどん研究会は、市職員、団体職

員、会社員、自営業者など70名からなる任意団

体であり、事務局はつやまNPO支援センターに

設置され津山市役所観光振興課の職員が事務局

を補佐している。行政や他からの資金支援はなく

当研究会メンバーがボランティアでイベント出店

を行い、活動資金を捻出している。

①津山食肉処理センターで加工または地域内の精肉店等から仕入

れた国産牛のミックスホルモン(小腸、大腸、ミノ、ハツ、センマ

イなどの混合)を使用し、1人前に概ね80g以上入れること。

②基本的に味噌、醤油系のたれで味付けすること(補助的にソース

などを使うことは可)。

③大型鉄板で調理し、焼きうどんとして提供すること(煮る場合は

「煮込みホルモンうどん」又は「ホルモンうどん鍋」などと表記

すること)。

(津山ホルモンうどん研究会協力店の認定基準より)

「津山ホルモンうどん地図」 「B-1グランプリin厚木(2010年9月)」

代表 鈴木 康正 氏副代表 小坂田 裕造 氏

「キャラクター」と「ロゴ」

(2010年3月作成。33店掲載)

約4 6×51㎝ 両面

( 活動はメンバーがボランディアで行う)

キャラクターは左から、

てっちゃん、はちのす大将、

せんまい君

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

代表の鈴木氏、副代表の小坂田氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

津山ホルモンうどんの定着化対策として効果的なイベントへの出店を継続したい。そして、津山ホルモンうどんの

成功で一点突破し、津山市を含む地域一帯で市町村の枠を超え連携して、観光振興、地域活性化に水平展開したい。

間売り上げは1億9千万円で県外からの来店客は3割

であった。また、これをもとに専門機関等が試算した

全体の経済効果は、店舗売上、材料等関連売上、観

光関係等あわせて県内で8億円であり、中心市街地

を含む津山市において津山ホルモンうどんの取り組

みの効果がうかがわれる。

②計画的で継続的な取り組み

ご当地グルメによるまちおこしで重要なことは、

まず、そのメニューの知名度を上げることであるが、

そのために、当研究会では、マップ、のぼり旗等の販

促ツールの作成、マスコミ(パブリシティ)活用、地元、

近県のほか注目度の高い全国的なイベントへの出店、

好成績の達成など試行錯誤を繰り返しながらも着々

と実行しており、この計画的、継続的な取り組みが成

功要因の一つである。

5.活動の成果と成功要因

活動の成果としては、当研究会のイベント出店やマ

スコミ活用などの活動により2008年~2009年

にかけて津山市への観光客は12.5%増加し、ホル

モンうどん店への来店客も増加し、中心市街地でのに

ぎわいが創出された。当研究会が2009年3月~5

月に実施した観光客アンケートでは、年間延べ33万

人が津山市内のホルモンうどん店を利用しており、年

当研究会の活動の成功要因としては以下のようなこ

とが考えられる。

①市職員、市民有志等メンバーの強い熱意

「ホルモンうどん」の活用の発端は、市が国体選手

のもてなし料理としての活用しようとしたであるが、機

転を利かせ国体での対応にとどまらず、まちおこしの

チャンスととらえ、市職員、観光協会、地元まちづくり

の関係者、その他市民の有志が集まり、現在70名の

メンバーがボランティア活動として熱意をもって取り

組んでいることが成功要因の一つである。

(1)活動の成果

(2)成功要因

食によるまちづくりには、自らの地域に誇りと愛着を持つとともに、食に対する探究心や衛生管

理、食材へのこだわり、調理技術など、それぞれの役割を担う人の存在が不可欠である。

限られた人員で効果的な知名度向上の方法を検討すること。一般的であるがマップ作成、マスコ

ミ活用、イベント出店、特に注目度の高い全国イベントへの出店等が考えられる。

活動そのものや推進団体、推進者が、市民、地域の理解等を得ていること。地域活性化、

まちづくり活動には市民、地域の理解、協力、支持がなければ進まない。また、行政の補助金に

頼らない。

Page 13: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

22 23

「三浦中華料理研究会」は地元の飲食店の有志を中

心に8事業者で設立され任意団体で、事務局は三浦市観

光協会内に設置されている。

現在は、飲食店8店、製麺業者1社の9事業者で構

成。会員メンバーが役割分担で、スクラムを組んでボラン

ティアで活動している。

また、地元商店街との大規模な共同イベント等の活動

はないが、会員メンバーが地元商店街の役員を兼ねるな

ど地元商店街との連携関係はよい。

事例8 「三浦中華料理研究会」地元飲食店が中心となり新メニュー開発、地元内外の顧客開拓で地域活性化推進

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

三浦中華料理研究会

神奈川県三浦市南下浦町上宮田 1450-4 (三浦市観光協会内 )

会長 石渡道雄

2007年3月

「三崎まぐろラーメン」を活用した、食によるまちづくりの推進

任意団体

三崎まぐろラーメン

開発型

三浦市の人口 49,861人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  漁港の町 (三崎港が市内中心部に隣接 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

首都圏で開催された産業展で食材としてまぐろの

カブトスープを見つけたことを契機に、当地(三浦市三

崎)が古くから日本有数のまぐろの水揚げ漁港で、また、

50年前には大衆中華料理店が「マグロラーメン」を提

供したことに着目し、再度、まぐろのカブトスープを使用

した「三崎まぐろラーメン」を開発して、まちおこしに取

り組む機運がたまり、2007年3月、飲食店7店と製

麺業者1社による「三浦中華料理研究会」が設立され

た。現在は、飲食店8店、製麺業者1社となった。

3.ご当地グルメ (三崎まぐろラーメン) の特徴

三崎まぐろラーメンとは

4.運営体制

日本有数のまぐろの水揚げ漁港である三浦市三崎において、50年前に大衆中華料理店で作られ「まぐろラーメ

ン」を復活させ、新たにまぐろのスープを使った「三崎まぐろラーメン」を開発。まぐろのまち三浦市三崎のまぐろの兜

焼き、まぐろのしゃぶしゃぶ、寿司・刺身につぐ、第3のグルメ。

第一条 スープに「まぐろでとったダシ」を投入する。

第二条 トッピングにまぐろを使用する。

まぐろの漬け、まぐろのそぼろ、まぐろのスペアリブなど

第三条 現状維持はご法度。日々まぐろラーメンレベル

を進化させなければならない。

(三浦中華料理研究会HP より)

( 会員 溝川良介 氏( 左)  副会長 溝川利則 氏( 中央)  広報・総務 宮田英一 氏( 右) )

(「三崎まぐろラーメン」はバラエティが豊富。右記は一例。)

「スタンプカード」 ( 活動開始当時作成。名刺サイズ) 「マップ (A4 サイズ)」

地元イベント会場の「うらり」 (産直センター)

知名度が高まった。また、地元に根付かせるため「親

子料理教室の開催」、「バザー参加」などに取り組ん

でいる。

地元外普及の活動としては、全国規模の大型イベン

トとしてB-1グランプリ(B級ご当地グルメの全国大

会)に参加し5位入賞でき、知名度の向上に大きく貢

献した。全国規模の大会で評価を受け、マスコミなど

でも取り上げられることにより外部評価、権威づけが

でき、地元と地元外の両方の知名度や支持が高まっ

た。

現在、「三崎まぐろラーメン」の名称を商標申請中。

イメージキャラクターは特にない。

アンテナショップは、一極集中化を招き、街中回遊

をさまたげるので予定はない。

当初は、商品メニューの進化が早く、変更があり、

かつ、街中を食べ歩きして欲しいとの思いから、マップ

やチラシは作成せず、携帯性の良い、名刺サイズのス

タンプカードを作成した。また、そのほか、のぼり旗の

作成、ラーメン雑誌の取材、掲載やホームページによ

る情報発信などのPR 活動を開始した。なお、現在は

チラシ風のマップを作成している。

「三崎まぐろラーメン」のような開発型メニューで

は、地元や地元外とも知名度がなく、地元普及と地元

外普及の両方の活動に取り組んだ。

地元普及の活動としては、20 07年に当地の産直セ

ンター(うらり)で商品発表会(マスコミ発表)したほ

か、毎年、当地で開催される「三崎港町まつり& 三

浦半島物産展」に出店するなどしたが、当地は東

京、横浜に近く、TV キー局等のマスコミの取材も多く

■マップ等の作成

■商標登録

■その地

■イベント活動

Page 14: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

24 25

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

代表の土橋氏、隊長の山本氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

まちづくり活動として、特定の関係者の活動ではなく市民参加による組織体制づくりを進めている。商標登録につ

いては、「三崎まぐろラーメン」の名称について申請中。

心繁華街の一つである当地区に観光客を含む人出が

1.5倍程度になり、にぎわす創出、商業の活性化を図

ることができた。

②開発型メニューの普及戦力

 (地元普及と地元外普及)の工夫

「三崎まぐろラーメン」のような開発型メニューで

は、地元や地元外とも知名度がなく、地元普及と地元

外普及の両方の活動が必要となる。当研究会でもそ

のことに十分留意し、前述のとおり両方に取り組んだ

が、地元外普及の活動として全国規模の大型イベント

に参加し5位入賞して、それがマスコミで報道される

ことにより外部評価、権威づけができ、ひいては地元

と地元外の両方の知名度や支持が高めることができ

た。このように、当地のメニューの特徴、タイプ等を

分析し、地元内、地元外のターゲット区分や販促方法

の決定など活動内容を検討して、計画的に実施したこ

と成功要因の一つとなっている。

5.活動の成果と成功要因

地元普及や地元外普及の活動を行った結果、特に全

国イベントで評価を受けたことによりマスコミ報道など

で、知名度が向上し、店舗では行列ができ、市内の中

当研究会の活動の成功要因としては以下のようなこ

とが考えられる。

①マスコミ活用による情報発信

当地は、テレビ、ラジオ、新聞などのキー局や本社

がある東京、横浜に近く全国網のマスコミの取材を受

けやすいことを活かし、活動の事前、事後に必ずマス

コミへの連絡、P Rを実施したため、取り上げられるこ

とも多く、限られた労力で効果的に知名度の向上を図

ることができたこと。

(1)活動の成果

(2)成功要因

開発型メニューの場合は、地元や地元外とも知名度がなく、地元普及と地元外普及の両方の

活動が必要。全国イベントに出店、一定の評価を得ることは地元普及にも有効。

マスコミの活用が不可欠。マスコミへの話題提供を怠らぬこと。

商品、メニューにはブームがあり、ブームを終わらせない定着化対策が必要。

一般的に、1メニューについては3年間程度でブームが終わる場合が多い。

特定のグループや団体の活動でなく、市民など地域を巻き込んだ活動になるようにすること。

事例9 「厚木シロコロ・ホルモン探検隊」注目度の高いイベント出店効果で広域集客を図り、食によるまちづくりを推進

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

厚木シロコロ・ホルモン探検隊

神奈川県厚木市栄町 2-10-6 (有 )小野塚商店内

隊長 中村昭夫

2005年1月

「厚木シロコロ・ホルモン」を活用した食によるまちづくりを推進すること

任意団体。運営・管理は一般社団法人あつぎ街おこし応援団が行う。

厚木シロコロ・ホルモン

既存活用型

厚木市の人口  222,403人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  東京・横浜の衛星都市 (東京、横浜への通勤圏に立地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

2005年1月の厚木市商店街連合会・街づくり

推進プロジェクト・チームで中村氏がチーム代表に

なり、「食を通じての街づくり」の方針が決定し、準備

を重ね、2007年2月に飲食業以外12名で「厚木シ

ロコロ・ホルモン探検隊」が設立された。なお、厚木

シロコロ・ホルモン探検隊は事業名であり、「隊員」の

数は取り組む活動により異なる。現在は、隊員は30

名程度。

また、活動継続、運営強化のため2010年2月に一

般社団法人あつぎ街おこし応援団を設立し、同社団が

当隊の活動の運営管理をおこなっている。

2007年5月に当隊の活動のブログ、HP を開設し

その中で、利用できる店舗紹介などのマップを公開し

ている。そのほか、「ストラップ」「スナック菓子」「せ

んべい」「あられ」「ふりかけ」「豆菓子」や認定店が

掲げる「のぼり旗」「ステッカー」「認定証」などの販

促物を随時作成しPR 活動を行っている。

イベント出店としては、2007年から毎年、全国イ

ベント(B-1グランプリ)に出店し、好成績(2008年

第1位入賞など)を収め、知名度の向上を図っているほ

か、全国イベントに連動して開催されるイベント「神奈

川フードバトルin厚木大会」などに出店し、大規模イベ

ントへの出店による知名度向上活動が効果を上げてい

る。また、イベントの出店告知、結果報告、その他活動

PR についてはマスコミを活用し効果を上げている。

2008年6月に厚木シロコロ・ホルモン、シロコロ・

ホルモン、シロコロについて商標登録した。

商標登録については、今後も進めていく。

2010年4月に類似品対策として認定店・推奨店

制度を制定した。認定については、公募し、当隊で審

査する。認定基準は、

①厚木市内の店舗であること。

②神奈川食肉センターから出荷している豚の大腸で

筒状のものを使用していること。

③厚木市の街おこしに賛同できること(取材対応等も

含む)。認定店、推奨店の年会費15000円。「認定店」

とは、厚木シロコロ・ホルモンが食べられる店舗。「推

奨店」とは厚木シロコロ・ホルモンの雑貨、菓子等の

グッズの販売店。

■マップ等の作成 ■商標登録

■イベント活動

■認定制度

Page 15: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

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3.ご当地グルメ (厚木シロコロ・ホルモン) の特徴

厚木シロコロ・ホルモンとは 

4.運営体制

厚木市では昭和20 年ごろから養豚業が盛んになり、市内に豚肉の処理場が開設され新鮮な豚肉並びに内臓の流通

が豊富かつ容易であった。そのため、市内には豚ホルモン燐の店もたくさんできるようになった。こうした歴史背景もあ

り、現在でも厚木市には美味しい豚ホルモン焼を提供する店が多い。また、現在でも1日に約2000頭の豚肉を処理で

きる㈱神奈川食肉センターが市内にあり、豚の腸などいわゆるホルモンが食材として提供されている。厚木シロコロ・ホ

ルモンは、古くからの地域資源を活用したご当地グルメである。シロコロ・ホルモンのシロとは、豚の大腸のこと。

「厚木シロコロ・ホルモン探検隊」は、2007年2月に

飲食業以外12名で設立されたが、厚木シロコロ・ホルモン

探検隊は事業名であり、「隊員」の数は取り組む活動によ

り異なる。2010年2月に活動継続、運営強化のため、隊

長の中村氏と副隊長の小野塚氏2名で一般社団法人あつ

ぎ街おこし応援団を設立し、同社団が当隊の運営・事務を

行っている。

なお、組織化に当たり一般社団を選択したのは、まちづく

り活動を推進でき、必要資金を事業活動で賄うことができ

ること、設立の難易度などの観点からである。

①豚ホルモンは地元厚木の食肉センターで処理される生大腸

のみを使用している。

②午前中に処理したホルモンを手作業で丁寧に時間をかけて

水洗いする。(この作業をおこたると食感の悪い臭みのある

ホルモンになってしまう。)

③各店自慢の味噌だれに漬け込み網焼きでじっくりコロコロ

に焼き上げる。

認定店のぼり旗 「認定証」

隊長 中村昭夫 氏( 右) 副隊長 小野塚徳博 氏( 左)

「2010年第5回B-1グランプリ厚木大会出店」

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

隊長の中村氏、副隊長の小野塚氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

現在の活動の成果を踏まえ、今後とも、食文化を通じた街づくりを推進していきたい。

リin厚木(来場者43万5千人)やその関連イベントの

第3回神奈川フードバトルin厚木大会(来場者数11万

人)は、いずれも市内中心市街地の公園で開催されて

おリ、来場者も多く、また、交通手段を公共交通機関

によることとしたため、市中心市街地の核である本厚

木駅を経由して来場するケースも多く、中心市街地の

にぎわい創出が図られた。

②注目度の高いイベント出店中心の効果

当隊の活動は、主に注目度の高い全国イベントに出

店し評価をうけることにより、知名度を上げ、広域に

集客を図ることで地元の集客も促し、まちづくりの推

進を図ることに軸足を置き、計画的、組織的な取り組

みの結果、成果をあげている。したがって、当隊では、

当初から広域集客を視野に入れた注目度の高い全国

イベントへの出店活動が成功要因の1つとなってい

る。

5.活動の成果と成功要因

活動の成果としては、全国的な注目イベントへの出

店、高評価による中心市街地でのにぎわい創出効果

がある。2007年、2008年の県外での全国イベン

ト(B-1グランプリ)出店し、好成績を収め、知名度が向

上したことにより、厚木市への観光客や店舗の客数

が増加した。また、2010年に当市で開催され、当隊

もその運営に関与し、出店もした第5回B-1グランプ

活動の成功要因としては以下のようなことが考えら

れる。

①積極的にけん引するキーパーソンの存在

当隊の活動においては、隊長の中村氏や副隊長の

小野塚氏など、隊の設立以来、常に活動の方針や運営

について考え、組織強化のための一般社団に設立も

両者が中心となり実施しているなど、活動を積極的に

けん引するキーパーソンが存在したことが成功要因の

1つである。また、組織体制づくりについて、2者の

両輪体制は不可欠であり、当隊では、それが実現して

いる。

(1)活動の成果

(2)成功要因

PR 効果、情報発信力の強化のためにマスコミの活用が不可欠。また、顧客の満足がニュースと

なりマスコミが取り上げるので、顧客満足が得られるようなメニュー開発、イベント出店等、活動

内容にすること。

活動内容が面白く、それをやる気のある人がやること。また、予算有りきでなく自分たちで

努力すること。

Page 16: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

28 29

奥美濃カレー協同組合は、「奥美濃カレープロジェクト」の推

進体制を独立させるため、2009年4月に当時の25事業者

で設立され、現在、組合員は24事業者となっている。

事務局は、組合員の事業所内に設置され、2名体制で活動

の運営、事務を行っている。

事例10 「奥美濃カレー協同組合」地元飲食店組合が地域食材を活用し、国民食「カレー」による地域活性化を推進

【団体プロフィール】

名 称

所 在 地

代 表 者

設 立 時 期

事 業 目 的

運 営 形 態

ご当地グルメ名

商 品 タ イ プ

参 考 デ ー タ

奥美濃カレー協同組合

岐阜県郡上市白鳥町為真 232

理事長 滝下一德 

2009年 4 月

「奥美濃カレー」の活用による食のまちづくりの推進

協同組合

奥美濃カレー

開発用

郡上市の人口  47,495人 (国勢調査2005年 )

都市のタイプ  山岳地の観光地 (郡上八幡や白山信仰の地 )

1.活動開始の経緯(団体設立の経緯)

2.活動内容

東海北陸自動車道の開通により郡上市が観光の通

過点となり、市内での飲食客が減少したため、2004

年に地元の商工会の会長が中心となり、郡上市内の事

業者に呼びかけ、地元食材を活用し、誰もが好きな国

民食で、かつ、飲食業者にとっても新たな設備投資が不

要で参加しやすい 「カレー」をテーマとした地域活性

化プロジェクトが結成され活動が開始された。そして、

2009年4月、推進体制を独立させるため、飲食店31

店が集まり「奥美濃カレー協同組合」が設立された。組

合員は、「奥美濃カレー」の認定店であり、現在は24店

舗となっている。

3.ご当地グルメ (奥美濃カレー) の特徴

奥美濃カレーとは

4.運営体制

「奥美濃カレー」は、「奥美濃」地域に根ざした食材を活用し、お客様に喜んでいただくために愛情を込めて創意工

夫をして作られているカレーで、ご当地カレーの統一感を醸成するため、地域の味である「郡上地域で製造されるご

当地味噌」を隠し味等に使用することが最低の統一条件となっている。

食材として、飛騨牛や奥美濃古地鶏、美濃健豚などの

ブランド食材、猪、鹿など奥美濃のジビエ(狩猟による鳥

獣肉)、全国的に有名なトマトや大根、とうもろこし、ほう

れん草、まめ、きのこ、かぼちゃ、長良川の鮎などを使用

し、バリエーション豊富であることが特徴。郡上市内の認

定事業者24店舗で64商品ある。

<奥美濃カレーの認定基準>           

①郡上市内の組合員の店舗で提供されること。    

②当地の味噌を隠し味に使用していること。

 

組合長 滝下一德 氏 (左)

事務局長 瀬木大輔 氏 (右)

バリエーションが豊富。

上記は一例 「奥美濃ツインカレー」

「奥 「美濃カレーマップ 認定店ののぼり旗」( 認定店24店掲載。A2 サイズ両面)

「全国イベントへの出店」 (B-1グランプリin厚木)  キャラクター「C ちゃん」

( 市内の中学生対象の公募で選定)

フェスティバルなど)、百貨店の催事、注目度の高い全

国イベントに出店した。なお、地元外のイベントには、

大小合わせ年間20~30件程度出店している。

イメージキャラクターとして「Cちゃん」を作成。「C

ちゃん」の名称は、2007年9月に市内の中学生を

対象に公募し441通の中から選定して、地域での認

知、支持も図っている。

組合では、2010年から、毎月6日をカレーの日と

して決め、PR 活動を行っている。

 

そのほか、限定販売でコンビニエンスストアーでの「

奥美濃カレー弁当」の販売を行っている。

「奥美濃カレーマップ」や認定店が掲げる「のぼり

旗」、「奥美濃カレーTシャツ」などを作成し、P R活動

を行っている。

「奥美濃カレー」は、市内での飲食客の増加を目的

に、当地の恵まれた地域食材を活用し、新たに開発さ

れためメューで、その開発については、専門家を講師

に招き、カレーづくりの研鑽を重ね行った。「奥美濃

カレー」は、開発型であるため、「奥美濃カレープロ

ジェクト」が作られた頃から、地元や地元外での知名

度の向上が必要であり、そのため雑誌、新聞、TV など

マスコミ活用はもとより、地元開催のカレーコンテス

ト(道の駅、パーキングエリアで開催)や大規模な食の

イベント「食の祭典in郡上」などへ出店するとともに、

地元外の各地のカレー関係のイベント(横須賀カレー

■マップ等の作成

■イメージキャラクター

■カレーの日制定

■その地

■イベント活動

Page 17: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

30 31

6.B 級ご当地グルメによるまちづくりのために必要なこと

7.今後の予定

理事長の滝下氏、事務局長の瀬木氏にお尋ねしたところ、次のような回答があった。

①地元農協の協力の下、農家と契約し奥美濃カレー用の野菜を栽培、地産地消、安心安全な厳選食材を使用し、魅力

の向上を図る。また、組合での直接仕入のメリットを組合員に還元する。

②郡上市への飲食客向けイベントを企画実施する。

③他地域のご当地料理でまちおこしをしている団体組織と連携してPRする。

④郡上市内の加盟店募集とメニュー指導、新商品の開発研究を継続する。

⑤郡上内外のイベントに積極的に参加し、広くPR活動を実施する。

⑥郡上八幡市街地にアンテナショップを出店し、観光客等の利用を促進する。

⑦奥美濃カレーオリジナル商品(レトルト等)を開発し、サービスエリア、土産屋、各店舗で販売し、組合の財源確保に努める。

の出店などによる知名度の向上により、奥美濃カレー

を目的とした県外客の増加した。

③積極的なP R活 動の継続実施

「奥美濃カレー」は、これまで地元になく、かつ、家

庭の味として家庭で親しまれていた「カレー」を地域

の食材を活用し、新規に開発しているため、地元での

知名度向上のほか、地元外での知名度の向上が必要

であり、そのため、雑誌の記事紹介、新聞、TV などの

報道等によるマスコミ活用のほか、地元や地元外のイ

ベント(年間20~30件)のほか、注目度の高い全国

イベントへの出店を今日に至るまで継続し、そのこと

が、知名度の向上、郡上市への県外客集客の効果を

もたらしている。したがって、これらマスコミ活用やイ

ベント出店等PR活動 の積極的、継続的な実施が成功

要因の1つとなっている。

5.活動の成果と成功要因

活動の成果としては、雑誌の記事紹介や新聞、テレ

ビなどの報道等のほか、注目度の高い全国イベントへ

活動の成功要因としては以下のようなことが考えら

れる。

①組合設立による継続的推進体制の構築

当組合は、公的な地域活性化事業としてつくられた

「プロジェクト」(任意団体)が予算縮小に伴い独立す

るため設立されたものであり、現在、組合運営につい

て、組合員の負担の改善、経済的な安定など課題はあ

るものの、法人格を有し経済的、対外的に独立した組

織として、継続的な活動がなされている。したがって、

活動継続のため、活動の中心である飲食店により組

合を設立できたことが成功要因の一つとなっている。

②推進役のリーダーの存在

プロジェクトでは、商工会会長、組合設立後は初代

理事長、現在の理事長と活動の推進に当たり、強力な

推進役としてのリーダーの存在があり、これが成功要

因の一つとなっている。

(1)活動の成果

(2)成功要因

マスコミ活用、イベント出店などPR 活動を継続すること。

地域から認知、指示を受けていること。市民など地域を巻き込んだ活動になるようにすること。

まちづくりに熱意を持って活動するキーパーソン、メンバーがいること。

Ⅱ .地域食文化による中心市街地活性化の成功7 つ のポイント

 本書で紹介した事例から、地域食文化(注)による中心市街地活性化の成功のポイントとして、

次のような特徴があることが分かった。

(注)本書における「地域食文化」とは、B級ご当地グルメに限らず、地元住民になじみのある料理や食品(調理法又は

加工方法が地元住民になじみのあるもの、又は素材が地元住民になじみのあるもの)による食文化をいう。

本書で紹介した事例に共通することとして、活動目的が、関係者のみに限定した単なる地域食の販売ではなく、

「まちおこし、地域活性化」として、地域食で当地の知名度を上げ、地元客、観光客の集客を図り、地域、まち全体

として活性化を図ること、つまり、「地域食を売るのではなく、まちを売る」といことが目的となっており、そのこと

が、地域住民の幅広い動員や活動メンバーの増員につながっている。したがって、活動の出発点として、活動の目

的が「まちおこし、地域活性化であること」ということについて十分に理解し共有することがその後の活動拡大に

つなげるために重要である。

活動については、どの事例においても、リーダーまたは、補佐役・サブリーダーとして、常に活動の方針や運営を

考え、活動を積極的にけん引するキーパーソンの存在が大きく、このことが成功のポイントの一つとなっている。

特に、市民団体などボランティア活動においては、意欲や熱意の維持、コンセンサスの形成が重要であり、積極

的にけん引するリーダー、キーパーソンは不可欠である。

活動について、市役所などの行政機関や観光協会などの関係機関、団体と連携し、人的な連携、支援を図り、

効率的な事業の実施や活動の拡大、活動団体の事務業務の補助など活動団体だけでは不足する部分を補完し

ている例が多く、これも成功のポイントの一つとなっている。

活動団体の設立の経緯をみると比較的、規則、義務、規制などにとらわれないボランティア団体から始まって

おり、その強みを活かし、駄洒落の効いたイベントや商品のネーミングなど自由な発想や企画で、団体メンバー自

身が楽しみながら活動をしている。そして、それが顧客やマスコミからも評価を受け、成果が上がり、団体メンバー

の意欲や熱意を高めることもつながっている。したがって、活動においては、既存の組織体制や方法にとらわれ

ず、自由な発想や企画で活動することが必要である。

 また、活動の状況をみると、活動に参加したいメンバーが集まり、自由にアイデアを出し合い、実施したいこと

をできるところから取り組んでおり、先ず行動することが必要である。

団体メンバーが楽しみながら取り組める

活動内容で、先ず行動

地元行政との連携

積極的にけん引するリーダー、キーパーソンの存在

まちおこし、地域活性化の理念・目的の確立と共有

4

3

2

1

Page 18: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

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○「地域食を売るのではなく、まちを売る」

○仲間集め、組織作り

○地域行政、関係機関との連携体制構築

○地域食の発掘

○マップその他販促ツールの作成・活用

○イベント活動の実施

○マスコミ活用によるPR活動

○マスコット、イメージキャラクターの作成

○商標登録・認定制度

○その他(地域食の日の制定など)

○推進体制の構築 (法人化など)

地域食は、地域の文化や伝統が育んだ手軽な食べ物やメニューとして、地域で古くから愛されてきたものであ

り、そのため、地域住民に受け入れられやすく、地域外からも共感され幅広く集客でき、集客ツールとして優れた

ものである。したがって、地域食を活用したまちおこしや中心市街地の活性化を行う場合は、新規に開発する場

合であっても、先ず、地域で古くから愛され、その料理にまつわる物語や歴史的背景などを持ち支持されている食

材、料理メニューを発掘することが基本的に重要である。

<マップその他販促ツールの作成・活用>

本書で紹介したすべての事例において、まず、PR活動のための「店舗マップ」を作成し配布している。携帯性の

良いものや開設したホームページで便利に使用でき、ダウンロードして入手できるようなっているものもある。ま

た、マップ作成に合わせ、「のぼり旗」「ステッカー」のほか、事例によっては、「Tシャツ」「ストラップ」など関連商品

の開発販売も行い、成果を上げている。これらマップその他販促ツールについては、地域食の販売に限らず基本

的に必要なものであり、活動の成果を上げるためにはまず準備しなければならないことがわかる。なお、類似品

対策のため商標登録が必要である。

<マスコミの活用>

地域食のPR について、資金力に乏しいボランティア団体では、通常の有料の広告宣伝、チラシ、ポスターなど

の方法では、高額の費用が必要となり、実施することが困難である。そのため、テレビ、新聞、雑誌などマスコミに

活動情報を提供し、報道等として取り上げてもらい、PR 効果をあげており、マスコミの活用が重要な成功のポイ

ントの一つとなっている。

<計画的、継続的なPR活動の実施>

地域食を活用し中心市街地に集客して商業の活性化を図るためには、まず、当該地域食の知名度を上げるこ

とが必要であり、そのために地元普及のほか地元外普及のため、マスコミへの活動情報の提供や地元や地元外

での食のイベントに出店するなどのPR活動を計画的に、継続し続けなければならない。この点は、地域に縁が

あり、地域食材を使用しているメニュー等の場合のみならず、新規に考案された開発型のメニューの場合には特

に重要である。今回の事例では、マスコミの活用を図りながら、計画的に地元や地元外で、知名度の向上を図るた

め、小規模イベントから注目度が高い大規模イベントに数多く出店し、成果を出している例が多く、計画的、継続

的なPR活動の実施が成功のポイントの一つとなっている。また、本書で紹介した事例では、地域食を地域に浸

透させ、普及を図るためには、毎月○○日は、「○○の日」など当地の地域食の日を定め、PRし効果を上げている

事例もあり、取り組みが期待される。

そのほか、中心市街地活性化の観点からは、中心市街地でのイベント開催による集客、マップによる中心市街

地への誘導などが特に重要であるが、本書で紹介した事例では、既存店への影響がなく、街なか回遊を妨げない

場合は、中心市街地内に集客拠点、情報発信基地として「アンテナショップ」や商店街の空き店舗を活用した「団

体の店舗」を設置している事例もあり、これらも効果をあげている。

目的は、特定の関係者のために「地域食を売る」のではなく、まちづくりのため、

「地域食」で当地の知名度を上げ「まちを売る」ことを理解・徹底させる。

活動目的に賛同した参加意欲のある有志で従来の枠にとらわれず、仲間集め、

組織作り( 任意団体の設立など) を行う。

市役所、観光協会などの行政や関係機関と人的に連携し活動基盤の強化を図

る。

地域に愛され浸透、支持される食べ物やメニューを発掘し、地域食として活用

する。

PR活動のため「店舗マップ」「のぼり旗」「ステッカー」「グッズ等」を作成する。

知名度向上のため、計画的、継続的に、地元、地元外での小規模イベントから注

目度が高い大規模イベントに数多く出店し、PR活動を展開する。

マスコミに取り上げられるよう活動の事前、事後情報のほか、常時、活動情報を

提供し、マスコミを活用した効率的なP R 活動を行う。

活用する地域食の浸透や普及P R を図るため、地域の市民公募などにより市民

参加でのマスコット、イメージキャラクターを作成する。

類似品対策のため、団体名、商品名、ロゴ、マーク、キャラクター等について、商

標登録を行う。また、品質の管理のため必要に応じ認定制度も検討する。

浸透、普及のため、毎月○○日は、「○○の日」と定め、PRする。

継続的な活動や推進体制の強化を図るため、「一般社団法人」「NPO」「協同

組合」「株式会社」などを設立(法人化)し、管理運営業務を移行する。

ボランティア団体では、任意団体であるため意識や意欲が高く、活動が好調な時期はよいが、興味の低下や、

団体メンバーの本業の繁忙期や団体活動の低迷期には活動が弱まる傾向がある。そのため、事業の経緯、取り

組み内容や進め方に応じ、組織を企業化( 法人化)して、常時活動する人員の人件費も確保できる収益体制にす

るとともに、行動力の強化など推進体制の確立を図ることが必要となる。本書で紹介した事例においても、企業

化(法人化)を行い推進体制の構築を図り、活動を拡大している事例が多い。

地域に愛され浸透、支持される食べ物や

メニューを発掘し、地域食として活用

マップ等の作成、マスコミ活用、

計画的、継続的な活動の実施

推進体制の構築

5

6

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前述の成功のポイントをフローチャートで示すと以下のとおりである。

<フローチャート>

組織作り

活動内容の検討と実施

活動目標・理念確立

推進体制の強化

ステ

2

ステ

3

ステ

1

ステ

4

Page 19: 地域食文化 による 中心市街地 活性化平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業 (地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)

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Ⅲ.事例マップ

厚木シロコロ・ホルモン探検隊

厚木シロコロ・ホルモン

津山ホルモンうどん研究会

津山ホルモンうどん

奥美濃カレー協同組合

奥美濃カレー

みなさまの縁をとりもつ隊

甲府鳥もつ煮

富士宮やきそば学会

富士宮やきそば

三浦中華料理研究会

三崎まぐろラーメン

日本ぜんざい学会

出雲ぜんざい

浜松餃子学会

浜松餃子いなり寿司で豊川市をもりあげ隊

豊川いなり寿司佐世保バーガー事業協同組合

佐世保バーガー

神奈川県

岡山県

岐阜県

山梨県

静岡県

神奈川県

島根県

静岡県愛知県長崎県