しょうがの需給動向 - alic野菜 29 2016.6...

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今月の野菜 野菜情報 2016.6 24 しょうがは、薬用や香辛料として世界中で 利用されている。原産地は熱帯アジアといわ れ、日本へは3世紀以前に中国から伝わった とされる。アジアでは、調理用の香辛野菜と して炒め物や煮物の香りづけに使われるほ か、薬味などに利用されている。欧米では、 ジンジャークッキーやジンジャーエールな ど、加工原料として使われている。 しょうがは、塊茎の大きさの違いによっ て、大しょうが、中しょうが、小しょうがに 分類され、また栽培・収穫方法によって、根 しょうが、葉しょうが、矢しょうがに大別さ れる。根しょうがは、地下の塊茎部分を食用 とするもので、収穫直後の白く軟らかいもの を新しょうが、2カ月以上貯蔵したものをひ ねしょうがという。葉しょうがは、小指ほど になった根茎を葉とともに収穫したものであ る。みそを付けて食べたり、甘酢漬けにする のが一般的で、「谷中しょうが」もその一種 である。矢しょうがは、遮光されたところで 軟化栽培したもので、出荷前に太陽に当てて 茎元を紅色にする。辛みが穏やかで軟らかく、 焼き魚の付け合わせなどに使われる。 しょうがの需給動向 調査情報部 しょうが(高知産) しょうが(熊本産) 資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」 注: 図中の番号は収穫量の多い順番、期間は主な出荷 期間を表している。 ③千葉県 6月~7月(葉しょうが) ⑦岡山県 周年 ①高知県 周年 ②熊本県 周年 ④鹿児島県 11月(根しょうが) ⑤和歌山県 5月中旬~9月 (新しょうが) ⑥宮崎県 周年 主要産地

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Page 1: しょうがの需給動向 - alic野菜 29 2016.6 平成27年の輸出量を見ると、生鮮しょう がが12.9トン、その他調製しょうがが18.3 トンとなっている。27年に生鮮しょうがが

今月の野菜

野菜情報 2016.624

しょうがは、薬用や香辛料として世界中で利用されている。原産地は熱帯アジアといわれ、日本へは3世紀以前に中国から伝わったとされる。アジアでは、調理用の香辛野菜として炒め物や煮物の香りづけに使われるほか、薬味などに利用されている。欧米では、ジンジャークッキーやジンジャーエールなど、加工原料として使われている。しょうがは、塊茎の大きさの違いによって、大しょうが、中しょうが、小しょうがに分類され、また栽培・収穫方法によって、根しょうが、葉しょうが、矢しょうがに大別さ

れる。根しょうがは、地下の塊茎部分を食用とするもので、収穫直後の白く軟らかいものを新しょうが、2カ月以上貯蔵したものをひねしょうがという。葉しょうがは、小指ほどになった根茎を葉とともに収穫したものである。みそを付けて食べたり、甘酢漬けにするのが一般的で、「谷中しょうが」もその一種である。矢しょうがは、遮光されたところで軟化栽培したもので、出荷前に太陽に当てて茎元を紅色にする。辛みが穏やかで軟らかく、焼き魚の付け合わせなどに使われる。

しょうがの需給動向    調査情報部

しょうが(高知産)

しょうが(熊本産)

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」 注:�図中の番号は収穫量の多い順番、期間は主な出荷

期間を表している。

③千葉県6月~7月(葉しょうが)

⑦岡山県周年

①高知県周年

②熊本県周年

④鹿児島県11月(根しょうが)

⑤和歌山県5月中旬~9月(新しょうが)

⑥宮崎県周年

主要産地

Page 2: しょうがの需給動向 - alic野菜 29 2016.6 平成27年の輸出量を見ると、生鮮しょう がが12.9トン、その他調製しょうがが18.3 トンとなっている。27年に生鮮しょうがが

野菜情報 2016.625

平成26年の作付面積は、1870ヘクタール(前年比96.9%)と、前年より減少傾向で推移している。上位5県では、◦高知県� 462ヘクタール(同100.0%)◦千葉県� 320ヘクタール(同 97.9%)◦熊本県� 177ヘクタール(同 92.2%)◦鹿児島県� 134ヘクタール(同109.8%)◦宮崎県� 89ヘクタール(同 78.1%)となっている。

26年の出荷量は、3万9100トン(前年比101.3%)と、前年より微増した。上位5県では、◦高知県� 16100トン(同101.9%)◦熊本県� 4460トン(同105.4%)◦鹿児島県� 3120トン(同113.9%)◦和歌山県� 2730トン(同 98.6%)◦宮崎県� 2510トン(同 81.0%)となっている。

10アール当たりの収量は、和歌山県の7.13トンが最も多く、次いで高知県の4.37トン、岡山県の3.42トンと続いている。全国平均(単純平均)は2.65トンとなっている。

作付面積・出荷量・単収の推移

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500

1,000

1,500

2,000

2,500

平成19 20 21 22 23 24 25 26

(ヘクタール)

その他

宮崎

鹿児島

熊本

千葉

高知

(年)

作付面積の推移

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」

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20

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平成19 20 21 22 23 24 25 26

(千トン)

その他

宮崎

和歌山

鹿児島

熊本

高知

(年)

出荷量の推移

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」

7.13

4.37

3.42 3.25 3.11

2.55

1.11

2.65

0

1

2

3

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5

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7

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和歌山 高知 岡山 熊本 宮崎 鹿児島 千葉 全国

(トン /10a)平成26年の単収

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」

Page 3: しょうがの需給動向 - alic野菜 29 2016.6 平成27年の輸出量を見ると、生鮮しょう がが12.9トン、その他調製しょうがが18.3 トンとなっている。27年に生鮮しょうがが

野菜情報 2016.626

出荷量の多くを占めるのは大しょうがであり、多くの県で作付けされている品種の「土佐一」(土佐1号)も大しょうがの一種である。生産性や貯蔵性に優れる品種を育成した

り、優良系統を選別することにより、品質や収穫量の向上を目指す産地が多い。土佐一は、そうした育成や選別のもととなるケースが多い品種でもある。

東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成26年)を見ると、1年を通して、高知産が5割前後を占め、中国産も周年入荷している。

また、6月から9月は、和歌山産の入荷も多く、大部分が新しょうがとなっている。

作付けされている主な品種等

(55) (52)(57)

(63)

(66)

(63)

(51)(48)

(50)(47) (50) (44)

(36) (38)

(35)

(29)

(25)

(18)

(20)

(23)

(28)

(37)(41)

(44)

(5)(5)

(3)(3)

(3)(3)

(12)

(19)

(19)

(14)

(6)(6)(4) (9)

(4)(4)

(4)(4)

(5)(5)

(9)(5)

(8)

(8)

(6)

(7) (6)

(6)

(5)

(5) (5)(3)

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:平成26年東京都中央卸売市場年報) 注:( )内の数値は、月別入荷量全体に占める割合(%)である。

平成26年 しょうが(根しょうが)の月別入荷実績(東京都中央卸売市場計)

資料:農畜産業振興機構の関係者聞き取りによる。

都道府県名 主 な 品 種高 知 県 土佐一熊 本 県 土佐一鹿 児 島 県 土佐一和 歌 山 県 土佐一、八郎、新八郎宮 崎 県 土佐一

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

Page 4: しょうがの需給動向 - alic野菜 29 2016.6 平成27年の輸出量を見ると、生鮮しょう がが12.9トン、その他調製しょうがが18.3 トンとなっている。27年に生鮮しょうがが

野菜情報 2016.627

大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成26年)を見ると、1年を通して高知産が大きなウェイトを占めている。6月から8月の

入荷は和歌山産がトップであり、東京都と同様にその大部分は新しょうがである。

東京都中央卸売市場の価格(平成27年)は、1キログラム当たり578〜744円(年平均633円)の幅で推移している。1年を通し

て比較的安定しているが、27年は前年および前々年を上回る価格となっている。

0

100

200

300

400

500

600

700

800

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

(円/kg)

平成25年

平成26年

平成27年

(月)

(66) (68) (71) (73)(52)

(69) (66)

(53)

(57) (68) (72) (74)

(24) (24)(22) (21)

(33)

(24)(26)

(34)

(21) (20) (22)(20)

(8) (7)(6) (5)

(12)

(5) (6)

(9)

(17)(4) (5)

(5)(2) (1)(1) (1)

(3)

(2) (2)

(4)

(5) (8) (1) (1)

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300

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400

450

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:東京都中央卸売市場「市場月報」) 注:外国産も含む。

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:平成26年大阪市・大阪府中央卸売市場年報) 注:( )内の数値は、月別入荷量全体に占める割合(%)である。

卸売価格の月別推移(しょうが)

平成26年 しょうがの月別入荷実績(大阪中央卸売市場計)

東京都中央卸売市場における価格の推移

Page 5: しょうがの需給動向 - alic野菜 29 2016.6 平成27年の輸出量を見ると、生鮮しょう がが12.9トン、その他調製しょうがが18.3 トンとなっている。27年に生鮮しょうがが

野菜情報 2016.628

平成27年の輸入量を見ると、生鮮しょうがは1万9820トンであり、塩蔵しょうがが1万3731トン、酢調製しょうがが1万6842トン、その他調製しょうがが2万6802トン、乾燥しょうがが555トンとなっている。塩蔵や酢調製などの加工ものは、ガリや紅しょうがなどに利用される。また輸入先を見ると、塩蔵しょうがはタイと中国が多く、それ以外は中国が大半を占めている。

輸入量の推移

国別輸入量

中国22,58585.1%

タイ1,8146.8%

インドネシア1,4215.4%

ベトナム5652.1%

その他1690.6%

合計 26,555 トン中国18,72794.5%

タイ8504.3%

インドネシア2211.1%

その他230.1%

合計 19,820 トン

平成27年しょうが(生鮮)

平成20年しょうが(生鮮)

タイ20,99570.1%

中国8,86229.6%

ベトナム900.3%

合計 29,947トンタイ9,20967.1%

中国4,48132.6%

インドネシア230.2%

ベトナム190.1%

合計13,731トン

平成27年しょうが(塩蔵)

平成20年しょうが(塩蔵)

中国11,03092.5%

ベトナム5074.3%

タイ3913.3%

合計 11,928トン中国16,50298.0%

ベトナム2711.6%

タイ610.4%

パキスタン70.0%

合計16,842トン

平成27年しょうが(酢調製)

平成20年しょうが(酢調製)

0

20

40

60

80

100

120

平成 20 21 22 23 24 25 26 27

(千トン)

(年)

生鮮 塩蔵 酢調製 その他調製 乾燥

資料�:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)

しょうがの輸入量の推移

Page 6: しょうがの需給動向 - alic野菜 29 2016.6 平成27年の輸出量を見ると、生鮮しょう がが12.9トン、その他調製しょうがが18.3 トンとなっている。27年に生鮮しょうがが

野菜情報 2016.629

平成27年の輸出量を見ると、生鮮しょうがが12.9トン、その他調製しょうがが18.3トンとなっている。27年に生鮮しょうがが増加したのは、前年までなかったフィリピンへの輸出が10.7トンあったためである。主な輸出先は、フィリピン、香港、米国、インドなどである。

しょうがの供給量(収穫量+輸入量)を見ると、近年は13万〜15万トンと、比較的安定した推移となっている。さまざまな料理に使えるしょうがは、買い置きしておきたい野菜として家庭の中に定着し、ガリや紅しょうがなど加工・業務用としても安定した需要を持つ。しょうがに含まれる香り成分や辛み成分は、さまざまな機能性を発揮する。中でも「ジ

ンゲロール」と呼ばれる辛み成分は、ポリフェノールの一種で強い抗酸化作用を持ち、がんや動脈硬化、老化などの予防効果があるといわれている。また、さまざまな薬効作用や強い殺菌作用があることに加え、消化吸収を助けたり、体を温めたり、発汗作用を高める働きもある。多くの効用を持つしょうがを、普段の食事に上手に取り入れたいものである。

消費の動向

0

20

40

60

80

100

120

140

160

平成20 21 22 23 24 25 26

(千トン)

(年)

収穫量 輸入量

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」、農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)

しょうがの供給量(収穫量+輸入量)の推移

資料�:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)

中国20,35368.0%

タイ6,59122.0%

台湾2,6859.0%

インド1290.4%

その他1590.5%

合計 29,917 トン中国22,25383.0%

タイ2,3628.8%

台湾1,6896.3%

ベトナム3821.4%

その他1170.4%

合計 26,802 トン

平成27年しょうが(その他調製)

平成20年しょうが(その他調製)

輸出量の推移

05101520253035

平成24 25 26 27

(トン)

(年)

生鮮 その他調製

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)

しょうがの輸出量の推移(生鮮+その他調製)