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東日本大震災で発生した廃棄物 北海道大学大学院工学研究院 環境創生工学部門 廃棄物処分研究室 松藤敏彦・東條安匡 シンポジウム 「東日本大震災の災害廃棄物の処理処分」 廃棄物資源循環学会埋立処理処分研究部会

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Page 1: 東日本大震災で発生した廃棄物 · 東日本大震災で発生した廃棄物 北海道大学大学院工学研究院 環境創生工学部門 廃棄物処分研究室

東日本大震災で発生した廃棄物

北海道大学大学院工学研究院

環境創生工学部門

廃棄物処分研究室

松藤敏彦・東條安匡

シンポジウム「東日本大震災の災害廃棄物の処理処分」廃棄物資源循環学会埋立処理処分研究部会

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2010年廃棄物資源循環学会(金沢)

「災害廃棄物」セッション

1. 災害廃棄物の仮置き場の設置についての課題とその対応(株)環境地質 ○大野博之  東京大学 登坂博行 (財)日本環境衛生センター 八村智明、宮原哲

也  京都大学 陳友晴  香川大学 山中稔

2. 首都直下地震における震災廃棄物輸送による環境影響評価(株)熊谷組 ○永田尚人  京都大学 平山修久  彩交通計画(株) 岡村寛明

(株)パスコ 糠塚昌文  関西大学 河田惠昭

3. 水害被災家屋からの水害廃棄物排出過程調査研究名城大学 ○岡山朋子  (株)ピーアイ物流企画 伊藤秀行  京都大学 平山修久

4. 首都圏大規模水害における水害廃棄物発生量推定手法京都大学 ○平山修久  九州大学 島岡隆行  岡山大学 藤原健史

名城大学 岡山朋子  関西大学 河田惠昭

5. 水害廃棄物の排出過程モデルと収集シミュレーション岡山大学 ○千崎佑華  岡山大学 藤原健史  京都大学 平山修久

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津波廃棄物の特徴

家財ごみ

家屋ごみ (写真は神戸)

津波浸水ごみ(家財中心)

地震廃棄物(山ごみ) 津波廃棄物(海ごみ)塩水をかぶっている

津波倒壊ごみ(家屋中心)

その他 避難ごみ 水産物 ヘドロ 船舶・自動車 コンがら 生木

(写真は,学会作成マニュアルより引用)(火災にあったものもある) 3

+堆積物

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公有水面埋立

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平成20年3月25日姫路市「エコパークあぼし」建設現場で爆発  (3月27日竣工予定)作業員9人が重軽傷

バーナーが何らかのガスに引火?

地表3mの深さに下水汚泥メタンガスが発生した。廃棄物埋立地ではない。公有水面法に基づく埋立造成である。

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過去の災害と発生廃棄物

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名称阪神・淡路大震災

新潟中越地震

能登半島地震

新潟県中越沖地震

発生年月日平成7年1/17

平成16年10/23

平成19年3/25

平成19年7/16

死者・行方不明(人) 6437 68 1 11

負傷者(人) 43,792 4,805 341 2,343

災害廃棄物量(万t) 1,980 50 44 36

県の廃棄物量(万t) 251 112 50 112

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今回の発生量はどのくらいか

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全壊 61.2トン/世帯半壊  全壊の1/2床上浸水  4.6トン/世帯床下浸水  0.62トン/世帯

木造住宅 0.50~0.70トン/m2100m2の住宅で60トン3人家族の80年分に相当

2003年7月26日の宮城県北部地震

 旧南郷町  ほぼ全家屋が被害(その32%が全半壊)  災害廃棄物量は通常の18年分

環境省推定は2490万トン  阪神大震災の1.7倍  一般廃棄物量の半分にあたる

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基本的なフロー

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被災地域

からの排出仮置き場

一次

集積所

二次

集積所分別 分別分別

破砕

焼却 埋立

リサイクル

重機 装置

生活場所

から近い

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撤去前の現場堆積(岩手県山田町4/23)

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まず撤去が必要

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がれき撤去率

0102030405060708090

100

6月10日 7月7日 8月30日

環境省 朝日新聞 環境省

がれ

き撤

去率

[%]

岩手県

宮城県

福島県

94%87%

43%

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3か月 4か月 半年

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可燃物(特に木材)の処理

10処理の基本フロー

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組成分析(4/22岩手県野田村)

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10トントラック 1台分

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すべて手作業大型物選別後

ふるい分け

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重量組成割合

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木(大)

33%

木(小)

20%金属

6%

ロープ

0%

配管

1%

布団

2%

12%

グラス

ウール1%

壁材

4%

石こうボード

4%

1%

コンがら

4%

未分類

1%ふるい下

11%

大型の木は33% →重機で抜き出して  リサイクル可

しかし,対象としたのは解体ごみ(後期のごみ)

被災域での重機作業によって,破砕されて回収率は低くなる

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宮古における組成分析

144/23宮古出崎埠頭

選別は難しそうだ

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処理フローの例混合状態の震災廃棄物

プラスチック類

大型可燃物

混合物

破砕機

風力・機械選別

金属くず

コンクリート

木くず

重機による粗選別

破砕機

手選別

手選別

プラスチック

可燃物

不燃物

原木

チップ

砕石

スクラップ非鉄金属

破砕機

破砕機

比重差選別

風力選別

風力選別

RPF原料

焼却

建設資材,埋戻材

管理型処分場

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岩手県の災害廃棄物発生量と性状岩手県災害廃棄物処理詳細計画(平成23年8月30日)より

発生量の推計仮置場への搬入が完了している市町村   仮置場の測量により

完了していない市町村   測量と搬入率より

釜石・大船渡   市町村提供データ

災害廃棄物を調査し,9種類に分類

木くず紙くず繊維くずプラスチック堆積物コンクリートがら金属くずわら(畳)その他(漁具等)

柱材・角材可燃系混合物不燃系混合物コンクリートがら金属くずわら(畳)その他(漁具等)

処理に合わせ7種類に整理

柱材・角材517,300t11.9%

可燃系混合物1,025,000t23.5%

不燃系混合物1,139,800t26.2%

コンクリートがら890,700t20.5%

金属くず690,700t15.9%

畳9,500t0.2%

その他77,300t1.8%

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岩手県の処理・処分先岩手県災害廃棄物処理詳細計画(平成23年8月30日)より

処理量(t/日)

可燃物柱材・角材 不燃物

施設名処理量(t/日)

施設名処理量(t/日)

施設名

78沿岸被災市町村0沿岸被災市町村

110他市町村(10機関)

400太平洋セメント600太平洋セメント

20三菱マテリアル

3岩手第2クリーンセンター 126岩手クリーンセンター

60県内2社

県内既存施設

広域処理その他200仮設焼却炉

41広域処理104広域処理650

計 1052 630710

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埋立処分

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堆積汚泥(ヘドロ)

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有機物を含み,粒度が小さい放置しておくと腐敗による悪臭,乾燥による粉じん飛散

現場では, マスク,ゴーグル着用 消石灰による消毒(アンモニア発生の可能性あり) セメント系固化剤を混合し,団粒化

石巻 3/30

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仮置き場の堆積汚泥

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4/22久慈市夏井

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1. 津波浸水図から500 メートルメッシュ上で津波浸水範囲を同定.2. 津波堆積物の堆積深さ測定結果から,平均堆積深さ2.5~

4cmと設定

3. メッシュ内は平均堆積深さの津波堆積物が堆積するものとして,単位メッシュあたりの堆積物体積を推定

4. 推定体積に対して重量換算(密度ρ)を行い堆積物を推定

都道府県 体積(104 m3)青森県 63.9 – 102.2岩手県 292.2 – 467.5宮城県 515.9 – 825.5福島県 157.4 – 251.8茨城県 109.9 – 176.0千葉県 59.9 – 95.8合計 1199.2 – 1918.8

被災6県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉)で約1,300~2,800 万トンと推計

津波堆積物(泥)発生量推定

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混入する有害物

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灯油,ガソリン高圧ガスボンベ消火器,感染性廃棄物 など

PCB含有トランス・コンデンサ

アスベスト(建材,船舶)  →混合状態での識別困難 

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施設情報(国立環境研究所)

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(施設)1) PRTR届出施設2) ガソリンスタンド(PRTR届出対象)3) 下水処理場(PRTR届出対象)4) 大規模病院5) 産業廃棄物処理・処分施設

(情報)1~3) 施設位置,業種,取扱物質,排出量4) 施設位置のみ5) 施設位置,処理処分方法(焼却等),廃棄物種

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津波堆積物処理指針(環境省7/13)

津波堆積物のある場所

近傍に有害物質取扱施設?

目視・臭気での確認

【中間処理】 必要なし【有効利用.処分】・埋め戻し材、盛土材等,土木資材としての利用

・最終処分が困難な場合は海洋投入処分

【その他】・撤去を行わないことも検討可能

【中間処理】・津波堆積物と木くず・コンクリートくず等の分別

【有効利用・処分】・埋め戻し材、盛土材等の土木資材等

・セメント原料化・舗装用ブロック等の原料化・最終処分が困難な場合は、海洋投入処分

【中間処理】・津波堆積物と木くず・コンクリートくず等の分別

・洗浄等による浄化,不溶化・無害化処理,熱処理(焼却・溶融等)

【有効利用・処分】・埋め戻し材、盛土材等の土木資材等としての利用

・セメント原料化・舗装用ブロック等の原料化・一般廃棄物最終処分場への最終処分

現地スクリーニング化学分析

仮置場

現場

なし あり(被災大)

あり問題有り

問題なし問題なし

問題有り

基準不適合

基準適合

混入有り

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本日の進め方

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選別・処理 有害物質

取扱施設

災害廃棄物 津波堆積物

土木資材

埋め戻し材 安定型 管理型

リサイクル

中間処理(2)海面処分場の法

的整理

(3)過去の災害にお

ける海面処分

(4)海面処分の技術的側面・

処分量算定

(それぞれ20分以内)

以上の情報をもとにしてディスカッション(60分)