医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がich e2e...

29
医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視計画作成 に関する自主ガイダンス 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 医薬品評価委員会タスクフォース 発行 医薬出版センター

Upload: others

Post on 14-Aug-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視計画作成 に関する自主ガイダンス

日本製薬工業協会 医薬品評価委員会

医薬品評価委員会タスクフォース 発行 医薬出版センター

Page 2: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

1

目次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第 1 部 安全性検討事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

1.1. 非臨床・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

1.1.1. 臨床データでは確認できていない非臨床安全性所見・・・・・・・・・・・・・・2

1.1.2. 特別な集団に使用される場合の非臨床試験の追加データの必要性・・・・・・・・3

1.2. 臨床・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

1.2.1. ヒト安全性データベースの限界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

1.3. 承認の段階で検討から除外された集団・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

1.4. 市販後の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

1.4.1. 予測される承認後使用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

1.4.2. 実際の承認後使用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

1.4.3. 規制当局による措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

1.5. 有害事象/副作用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

1.5.1. 新たに特定された安全性検討事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

1.5.2. 重要な特定されたリスクおよび潜在的なリスクの詳細

(新たに特定されたものを含む)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

1.6. 他の医薬品、食品および他の物質との特定された相互作用および潜在的相互作用・・・10

1.7. 目標適応症および重要なリスクの疫学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

1.7.1. 目標適応症の発生率、有病率、死亡率および人口統計的分析結果・・・・・・・11

1.7.2. 目標適応症の母集団における重要な合併疾患・・・・・・・・・・・・・・・・11

1.7.3. 目標適応症の母集団における特定された、あるいは潜在的なリスクの疫学データ

(薬剤非曝露時)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

1.8. 薬効群共通のリスク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

1.9. 追加要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

1.9.1. 過量投与の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

1.9.2. 生物由来製品など原材料に由来する感染の可能性・・・・・・・・・・・・・・13

1.9.3. 違法な目的のための使用の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

1.9.4. 承認適応外使用の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

1.9.5. 小児への承認適応外使用の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

1.10. 要約-現行の安全性に関する懸案事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

第 2 部 医薬品安全性監視計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

2.1. 通常の医薬品安全性監視・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

2.2. 安全性の課題と医薬品安全性監視計画の要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

2.3. 特定の安全性の課題に対する詳細な行動計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

Page 3: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

2

2.4. 医薬品安全性監視計画の一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

2.5. 予定を含む未完了の監視活動の要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

第 3 部 医薬品安全性監視の方法を選択するためのガイドライン・・・・・・・・・・・・17

3.1. 概論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

3.2. 各論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

3.2.1. 重要な特定されたリスク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

3.2.2. 重要な潜在的リスク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

3.2.3. 重要な不足情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

参考・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

Page 4: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 1 -

はじめに

新薬の医療現場への迅速な提供という観点からブリッジング、多地域同時開発による承認の取

得が増加し、日本人での臨床成績は比較的少数で承認される薬剤も増加している。

市販後にどのような安全性監視を行うかについてその計画作成を支援する目的で、平成 17 年 9

月 16 日付で「医薬品安全性監視の計画について」(ICH E2E)が通知された。この中で治験を中

心とした承認申請時までの成績から安全性検討事項を特定し、課題に対応する調査・試験の実施

計画を盛り込むことにより製造販売後調査等基本計画書の充実を図ること、また、製造販売後調

査等基本計画書の案が作成されている場合は、CTD の第1部に添付することも求めている。

しかし、ICH E2E 通知は発出されたが、開発時の非臨床および臨床の成績の評価方法、ならび

に安全性検討事項に含めるべき重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスク、および重要な不

足情報を特定する方法については十分には理解されていない。また、どのような場合にこれら重

要な安全性検討事項(課題)に対して調査・試験の実施が必要か、実施する場合どのような調査・

試験を計画するかという具体的な対応についても、いまだ手探り状態にある。

そこで実際の業務を行うにあたっての考え方、手順を明確にすることは意義深いことと考え、

企業が ICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

ランスプラン)を作成するための指針を自主ガイダンスとして示すこととした。

まず、安全性検討事項を特定する方法としては、PMS 部会 TF-4 より提供された欧州連合(EU)

で実装されているリスクマネジメントプラン(RMP)のテンプレート(日本語翻訳版)を参考と

した。安全性検討事項を検討するためには、多くの図表が必要であるが、既存の CTD に含まれる

内容がほとんどであり、特に、このために資料を作成する必要性は少ないことがわかった。系統

立てて安全性検討事項を特定する良い方法と思われることから、これを基とした。

個々の重要な安全性検討事項は、それぞれ医薬品安全性監視計画およびリスク最小化策により

対応すべきである。本ガイダンスでは、特別な懸念がない薬剤では、自発報告を含む通常の安全

性監視活動で十分であること、ならびに重要な安全性検討事項については、それぞれに実施計画

を立てることが必要であることを明示した。医薬品安全性監視計画に関してはこれまでのような

使用成績調査による対応だけでなく、薬剤疫学的手法を用いた調査・試験の方法の必要性を示し、

それらの適用方法について述べる。

一方、添付文書への記載、医療関係者および患者さんへの情報提供などのリスク最小化策は、

目的に応じてその手段は様々であり、羅列的に示すことは出来るが一般論で示すのは難しいこと

から、本ガイダンスには取り上げていない。

本ガイダンスを参考にして、医薬品安全性監視計画を作成すること、また本ガイダンスには含

めていないが、必要に応じて市販後に行う安全対策を策定しておくことは、新薬の円滑な市場導

入に役立つだけでなく、当局からの照会事項等の対応にも役立ち、申請から承認までの時間を短

縮するためにも有用と考えられる。

Page 5: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 2 -

第1部 安全性検討事項

安全性検討事項を特定する方法として、EU で実装されている RMP のテンプレートを参考に安

全性検討事項を特定する方法について示す。各項目を作成し、その内容を検討することにより、

安全性検討事項が特定されることになる。なお、提示した項目について全て作成することが目的

ではなく、安全性検討事項を網羅的に検討し、課題を特定するための手段であることを理解して

利用していただきたい。

1.1.非臨床

1.1.1. 臨床データでは確認できていない非臨床安全性所見 非臨床の安全性所見について、ヒトで用いる場合に問題となりうる所見を要約する。安全

性に関する非臨床試験における所見は CTD2.6 に要約されている。これらの所見の中で、人

において安全性上問題となりうる所見を取り上げるが、それらが臨床試験によって評価され、

安全性に関わる問題として述べられているか、人においては問題とする必要がないことが知

られている場合には、ここに記載する必要はない。臨床において十分なデータがなく、人に

おいてさらに評価する必要があると認められる所見である場合には、重要な不足情報あるい

は重要な潜在的リスクとして取り上げられることになろう。所見を考察する観点の例、およ

び安全性について懸念される所見の記載例を以下に示す。なお、CTD2.6 に記載される内容を

巻末の参考 A1 に示した。 考察対象となる安全性の例 ・毒性(反復投与毒性、生殖/発生毒性、腎毒性、肝毒性、遺伝毒性、がん原性等) ・安全性薬理(QT/QTc 延長を含む心血管系、神経系等) ・薬物相互作用 ・その他毒性に関係する情報あるいはデータ

表 1.1. 安全性に関する所見の記載様式の例

安全性の懸念される所見(非臨床試験から) ヒトで懸念される問題点

反復毒性 生殖毒性 当該製品が出産可能な年齢の女性に使用され

ることが意図されているならば、重要な知見

(否定的な結果を含む)の要約を常に含める

べきである。

発生毒性

Page 6: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 3 -

1.1.2. 特別な集団に使用される場合の非臨床試験の追加データの必要性

当該医薬品が特別な集団にも使用される場合は、その点に特化した非臨床データの要否に

ついて検討する。

1.2. 臨床

承認申請に用いた全ての臨床試験(海外の臨床試験も含む)、製造販売後調査、疫学研究、

およびそれら以外の市販後の薬剤投与に関する情報(市場調査等)をここに要約する。また、

本情報を更新する場合においては、最後の作成以後収集された情報があればそれらを含めて

更新する。

1.2.1. ヒト安全性データベースの限界

上市後の製品の安全性を予測する上でのデータの限界(臨床試験の被験者総数および選択

除外基準から想定される限界)が何かを明確に記述する。特に使用対象とされる集団、ある

いは使用対象となることが想定されている集団を明確にすることが必要である。 安全性データベースの限界を評価するため、試験に参加した被験者数および総曝露時間(例

えば患者-投与時間)を記載する。全ての試験を対象として、組み入れられた全ての被験者を

年齢、性などの適切なカテゴリーや試験の種類、用量、適応症、治療期間などにより、層別

する。 なお、初回の申請時点で既に本薬が外国で上市されている場合には、海外で市販後に実施

された臨床試験、製造販売後調査、疫学研究、および市場調査により推定される曝露量があ

ればそれらも含める。また、適応追加の申請時点では既適応症に関して海外で得られている

すべての臨床試験、製造販売後調査、疫学研究、および市場調査等により推定される曝露量

なども含める。 以下の表 1.2~1.6 で提示された対象の層別はあくまで例示であり、この表は製品の特徴に

合わせて作成すること。

承認申請に用いた臨床試験での曝露

臨床試験の対象患者の要約は、CTD2.7.3.3.1 に示される。各試験の組み入れ基準と、実際

に組み入れられた患者集団の概要を示し、上市後の適応患者集団との乖離を明らかにする。

曝露情報は、CTD 2.7.4.1.2 に記載されている。総曝露を要約した表を作成するとともに、適

応症ごとに作成する。無作為化および/または盲検化された試験での集団について、ならびに

すべての試験での集団(長期試験を含む)ごとに表を作成すること。

Page 7: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 4 -

(1) 投与量、投与期間および投与方法 各条件の下での試験に組み入れられた患者数と投与期間および総曝露量を、時間(たとえ

ば人-時間)、投与量別あるいは投与方法別の患者数と曝露の程度で示す。固定用量の試験で

は、投与期間を示すだけでよいであろう。他方、投与量変更試験あるいは漸増試験等では、

投与量情報として総投与量、最大 1 日投与量、平均 1 日投与量などの情報を含めて曝露の程

度を考察する必要があるだろう。また用時服用、頓服、抗癌剤のような投与においては、人-時間は有意義ではなく、投与回数、サイクル数等適切な分母情報を提供しなければならない。 表 1.2. 総曝露量ごとの曝露人数 適応症 (またはすべて) 曝露の時間 例数 人-時間注) 1 ヶ月までの集積 3 ヶ月までの集積 6 ヶ月までの集積 12 ヶ月までの集積 注 1)投与量が一定量である場合には、総曝露量を投与期間等、適切な指標で置き換えても

よい。 注 2)人-時間:各人の投与期間を足し合わせたものが観察集団の曝露に関する人-時間である。

例えば 10 人を 6 ヶ月間投与した場合は、60 人-月、または 5 人-年である。 表 1.3. 用量ごとの曝露状況 適応症 (または すべて) 曝露量 例数 人-時間 用量レベル 1 用量レベル 2 注)非経口投与については、1、2、3 回それ以上の反復投与等の投与回数を検討すること。 (2) 対象集団別の曝露人数

組み入れられた全被験者を性、年齢、人種、民族または国等で層別して示すとともに、特

別な集団(妊婦、小児、高齢者、腎機能障害、肝機能障害、心機能障害、遺伝子多型の型別

等)を抽出し、これらの集団ごとの曝露情報を示すことによって、情報が不足している特別

な集団や投与条件等を明らかにする。

Page 8: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 5 -

表 1.4. 年齢群と性別ごと 適応症 (または すべて) 年齢群 例数 人-時間 男性 女性 男性 女性 年齢群 1 年齢群 2 注)特に小児と高齢者については明確に述べること。 表 1.5. 人種、民族または国ごとの曝露状況 適応症 (または すべて) 例数 人-時間 日本人 白人 表 1.6. 特別な集団の曝露状況 適応症 (または すべて) 例数 人-時間 妊婦 授乳婦 腎機能障害 肝機能障害 心機能障害 遺伝子多型をもつ副集団 (3) 投与経路、剤形別の曝露状況

投与経路や剤形別の曝露状況があればそれらを同様の形式で示す。ここでは投与方法に合わ

せた情報の提供を考慮すべきである

製造販売後調査(疫学研究を含む)での曝露

安全性監視計画を更新する場合および我が国における適応症拡大時に安全性監視計画を作成す

る場合には、使用成績調査や特定使用成績調査等のこれまで実施している情報を含む。さらに当

該医薬品が既にどこかの国で販売されておれば、様々な観察研究が実施されていることが多い。

種々のデータベースや研究報告、研究登録データベースからの情報をもとに情報源別に要約する

必要がある。

可能であれば年齢、適応症、用量、治療期間等、関係する変数で情報を層別しておく。

Page 9: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 6 -

下表の研究の型とは、特定使用成績調査、コホート研究または症例対照研究などが該当する。

表 1.7.製造販売後調査および疫学研究における曝露情況

研究番号 研究の型 研究の対象

集団 期間(研究

期間) 研究対象者

数注)

人-時間(適切

であれば)

研究 1 研究 2 注)群ごと、あるいは対象患者群と対照群に分けて記載する。

市販後(製造販売後調査、疫学研究を除く)での曝露

上記のような市販後での使用患者数が明確な情報以外に、可能であれば市場調査を基に、

より一層正確に薬剤使用を分類して提示する。例えば、PSUR(定期的安全性最新報告)で

算出している使用患者数が参考になる。この場合、長期にわたり使用される薬剤では人-時間

を用いるのが適切と思われる。使用が明確に限定されている場合や、抗生物質のように1コ

ースごとの包装サイズで利用が定められている場合は、販売包装単位数で計算するのがよい。

可能であれば年齢、適応症、用量、治療期間等、関係する変数で情報を層別しておく。

1.3. 承認の段階で検討から除外された集団

前節で示された対象集団のうち、臨床試験から除外されている患者、曝露の小さい患者集

団を特定するために、各々の主要な試験および参考とした試験について試験の選択基準と除

外基準を記載する。対象集団に含めない患者の条件を除外基準と選択基準のいずれに記載し

たかは試験計画書に依存するので、双方を合わせて、試験対象とならなかった集団を特定す

る。これらの集団で、臨床現場で使用される可能性のある患者集団を特定することも必要で

ある。安全性の問題で試験の対象から除外されている患者の条件が禁忌とされなかった場合、

何らかの対応の要否を十分検討しておかなければならない。上市後の医療環境に相違が生じ

ることも留意すべきである。

表 1.8.承認までの臨床試験で対象とされた集団の規定条件

試験番号 試験における本製品

への曝露患者数 年齢範囲 選択基準、除外基準

<検討が必要な集団の例示> ・小児 ・高齢者 ・妊婦あるいは授乳婦

Page 10: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 7 -

・肝、腎、心機能障害等、関連ある疾患を合併している患者 ・臨床試験の被験者とは重症度が異なる患者 ・既知かつ関連のある遺伝子多型を有する特定の部分集団 ・人種あるいは民族的背景が異なる患者

1.4. 市販後の状況

予測された上市後の使用状況を記載する。また販売開始後に安全性検討事項を更新する場

合には、予測した使用状況と市販後の実際の使用状況との差異を確認するとともに、新たに

特定された安全性検討事項があれば記載する。さらに各国の規制当局によってとられた措置

を記載する。

1.4.1. 予測される承認後使用状況

予測される薬剤の使用状況、長期にわたる薬剤使用集団の推定、および、治療あるいは市

場における位置付けの詳細を記載すること。

1.4.2. 実際の承認後使用状況

適応外使用を含め予測した使用状況と実際の使用状況の相違について具体的に記載する。

1.4.3. 規制当局による措置

安全性監視計画、あるいはリスク最小化策を更新する場合のみ、時系列で規制当局がとっ

た措置(全世界の一覧)を記載する。CTD 2.5.5 に記載されている。

表 1.9.規制当局により取られた措置

安全性検討事項 国 措置 日付 安全性検討事項 1 国 1 措置 1 日付 1 国 2 等 措置 2 等 日付 2 等 安全性検討事項 2 等 国 1 等

1.5. 有害事象/副作用

重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスクおよび重要な不足情報としての有害事象/

副作用を記載すること。また市販後に新たに特定された安全性検討事項がある場合には追加

する。

Page 11: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 8 -

1.5.1. 新たに特定された安全性検討事項

市販後に新たに特定された安全性の懸念がある場合には以下の内容にしたがって、要約す

る。承認申請時に既に外国で市販されている場合、世界における市販後使用経験により新た

に明らかになった安全性上の問題があれば、それは CTD 2.5.5 に記載されているので、これ

を参照する。

表 1.10. 新たに特定された安全性検討事項

安全性検討事項 1

詳細:

情報源:

製品の表示に対する影響:

新たな医薬品安全性監視計画は予定されているか? はい/いいえ

新たなリスク最小化策の計画は予定されているか? はい/いいえ

安全性検討事項 2 等

1.5.2. 重要な特定されたリスクおよび重要な潜在的リスクの詳細(新たに特定された

ものを含む)

リスクデータの提示について 発現頻度の高い有害事象については、種々の因子で層別し、部分集団の結果を記載する。

医薬品安全性監視計画で必要とされる情報は、対象集団の大きさ、有害事象発現者数、発現

割合あるいは発現率である。また、多数の部分集団にわたって信頼区間を数字で示したとし

ても、理解しづらいため、適切なグラフ(例えば、行に部分集団をとり、その横に当該部分

集団における信頼区間を示す)にするなど工夫することが望ましい。 <頻度の提示例>

発現割合(分母は調査対象となった総患者数、分子はそのなかで有害事象を発生し

た患者数とする) 発現率(分母は調査対象となった全患者の総投与時間、分子は各患者の観察期間内

での発生頻度の総和とする) 信頼区間

安全対策上重要と判断した有害事象を特定し、データの情報源を考慮した上でそれらの頻

度を記載する。既に上市されている医薬品において自発報告として報告された副作用を分子

として、販売データを分母として算出した場合は真の発現頻度を過小評価する可能性が非常

に高い。重要な潜在的リスクについて正確な発現頻度が求められる場合は、患者数と有害事

象が出現した患者数の両方がともに判明している臨床試験、疫学研究等に基づいて算出すべ

きであるが、ごくまれにしか発生しないような有害事象については自発報告の報告副作用数

Page 12: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 9 -

と推定使用患者数または推定曝露量(人-時間)で記載することになる。その際には推定曝

露量の算出根拠を明示しておくことが重要である。出荷数量を用いる場合には次のような算

定根拠を示す。 <分母の提示例> 患者数あるいは患者-時間、治療コース数、処方数等 いずれが使用されているかを明確に記載する。 重要な特定されたリスクについては、プラセボあるいは背景発現率との差(リスク差)と

相対頻度(リスク比)を記載する。 特定された最も重要なリスクおよび重要な潜在的リスクについて、エビデンスの強さ、これを

支持する蓋然性、エビデンスの性質および公衆衛生に及ぼす影響、罹患率および死亡例等、考え

うる問題点を具体的に記載する。こうすることで安全性の懸念の潜在的な重要性を評価しやすく

なる。 以上を考慮して以下の表を完成させる。

表 1.11.重要な特定されたリスクの要約

特定されたリスク MedDRA 基本語

重篤性/転帰 転帰の分布を表にすること。例:死亡%、回復%/治療の有無/後

遺症の有無、未回復%、入院% 等 重症度およびリスクの

性質 可能な場合、重症度のグレードを表にする

頻度(発現割合ないしは

発現率とその 95%信頼

区間)

プラセボまたは対照薬に対する相対発現割合(リスク比)と発現率

の差(リスク差)と集団における発生率を記載する: 1. 無作為化盲検試験の全対象患者集団のみ 2. 全ての臨床試験の対象患者集団(非盲検継続試験を含む) 3. 適応症ごとに示した薬剤疫学研究の結果 集団間で明確な差がある場合には層別した提示が必要である

背景発現率あるいは有

病率 適応集団における背景発現率あるいは有病率

リスク集団あるいはリ

スク因子 投与量、投与期間などの発現に関連する因子あるいは見出されたリ

スク因子を記載する。 推定機序 記載する 予防の可能性 副作用の予測・予防可能性に関するデータを記載する

可能性のある安全性に

関する公衆衛生への影

可能であれば、以下の例を用いて記述または列挙する。例:NNH(何人治療することで1人に害(副作用)が生じるか)および/ま

たは影響を受ける患者数、入院した患者数、予測される集団での使

用における死亡者数

根拠の情報源

CTDまたはCTDに添付するデータの中でこれらの記述の基となっ

たデータあるいはそれを補足ないし補強するデータを特定し、参照

すること。CTD 以外の製造販売後臨床試験、安全性研究、薬剤疫

学的研究、PSUR、他の安全性報告 等 規制当局がとった措置 国、措置の種類

Page 13: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 10 -

有害事象発現時間、持続時間などのような事象発生までの時間が重要である場合には、結果に

依存した観察の打ち切りの影響を適切に説明できるような生存期間解析法を用いて要約する1)、2)。

たとえば投与中止の原因となる複数の副作用や治療の結果が存在する状況では(例:長期投与後

に発現する錐体外路症状による中止と体重増加による中止など)競合関係にある副作用を特定す

るとともに、各副作用の経時的な発生率を累積発生率関数(cumulative incidence function)に

より視覚的に容易に比較できるようになる場合がある。

1.6. 他の医薬品、食品および他の物質との特定された相互作用および潜在的相互作用

CTD 2.5.3 項、2.6.4.項および 2.7.2 項にて薬物相互作用を記述しているので、これらを参

照する。市販後の使用状態での薬物相互作用の情報は薬剤疫学研究の研究報告等も含めて調

査し報告する。

相互作用を支持するエビデンスおよび推定される作用機序を要約し、さまざまな適応症や

さまざまな患者集団に対する潜在的な健康上のリスクについて検討する。 表 1.12.他の医薬品、食品および他の物質との特定された相互作用および潜在的相互作用 相互作用の相手薬(食品含む) 相互作用の影響 (適切な場合、

MedDRA用語を含む)

情報源(エビデンス) 想定される作用機序 可能性のある潜在的健康上のリスク 考察

1.7. 目標適応症および重要なリスクの疫学

目標適応症の疫学を記述し考察する。目標適応症の発現率、有病率、死亡率および関連す

る合併症に関するそれらの情報を含めて疫学的な考察を行い、可能であれば年齢、性、人種

あるいは民族的背景により層別し、さらに地域間の疫学上の相違も検討する。通常、CTD 2.5.1項「製品開発の根拠」で、疾患の疫学や病態の特徴が記載されている。また、特に海外デー

タを承認申請で活用する場合には、一般に、海外データを日本人患者集団に外挿可能とする

根拠として、疾患の疫学的特徴、治療方法、合併症やリスク因子、有害事象発現状況等につ

いて民族間比較し CTD2.5.1 に記載されている。 安全性監視計画が必要となる可能性のある重要な有害事象に関しては、目標適応症の患者

集団でこれらの事象の発現率(背景罹患率)を再検討することが望ましい。可能ならこれら

事象のリスク因子についての情報を含めることも有用である。 例:前立腺がんの治療薬:適応集団は 50 歳以上の男性が主であり、心筋梗塞のリスクが高

い集団である。当該医薬品が心筋梗塞を発現させる可能性が疑われる場合は、前立腺がんの

Page 14: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 11 -

患者集団で、あるいはその医薬品を投与されていない同年齢の男性の集団で、心筋梗塞がど

れ位発現するかを予測しておくことは有用である。

1.7.1. 目標適応症の発生率、有病率、死亡率および人口統計的分析結果

目標適応症の発現率、有病率、死亡率を示し、さらに年齢、性、人種あるいは民族的背景

により層別した部分集団ごとにそれらの情報を示す。もし、地域間で発生率等が異なるなら

ばそれらの相違についても記載する。

表1.13.目標適応症の発生率、有病率、死亡率等

適応症/適応症の母集団 適応症の発生率 特定の国間での偏りが知られている場合は記載する 適応症の有病率 適応症の死亡率 潜在的健康上のリスク 特定の国間での偏りが知られている場合は記載する 適応症の人口統計的分析結果 年齢性別分布を記載

1.7.2. 目標適応症の母集団における重要な合併疾患

目標適応症を有する患者集団において、当該薬剤を服用していない状況下でどのような合

併症がどれくらい発生しているのかを明らかにすることは、当該薬剤が当該合併症の発生率

をどれくらい上昇させるかを評価する上で重要である。本項には、疾患の疫学情報に基づき

非曝露下での発生状況を記載する。

表1.14.適応症の母集団における重要な合併疾患の発生状況

目標適応症/目標適応症の母

集団(1) 目標適応症の母集団における重要な合併疾患一覧を

記載

それぞれの重要な合併疾患について、目標適応症の母

集団における発生率、有病率および死亡率を記載す

る。また、当該合併症で使用される主な併用薬も記載

する。

目標適応症/目標適応症の母

集団(2)

Page 15: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 12 -

1.7.3. 目標適応症の母集団における特定された、あるいは潜在的なリスクの疫学デー

タ(薬剤非曝露時)

目標適応症を有する患者集団において、当該薬剤を服用していない状況下で当該有害事象

がどれくらい発生しているのかを明らかにすることは、当該薬剤による発生率の上昇の大き

さを評価する上で重要である。本項には、疾患の疫学情報に基づき非曝露下での発生状況を

記載する。

表1.15.特定された、あるいは潜在的なリスクの目標母集団における本薬剤非曝露時での

発生状況

特性されたリスク、或いは潜在的なリスク 疾患(当該有害事象)の発生率 疾患の有病率 疾患の死亡率

1.8. 薬効群共通のリスク

薬効群に共通していると考えられるリスクを特定する。これらが当該薬での安全性の懸念

事項にはならないと考える場合は、その判断が正当であることを示すべきである。CTD1.7に同種同効品一覧表が示されている。巻末の参考A2を参照されたい。

表1.16.薬効群に共通なリスクの他の薬剤との比較 リスク 当該医薬品の臨

床試験における

頻度

同じ薬効群での他の医薬品での

頻度 (情報源/雑誌、参考文献)

考察・所見

リスク1 薬剤A 薬剤B 薬剤C (副作用のレビュー:BMJ 2008: 5; 214-217)

リスク2 1.9. 追加要件 これまでは通常の使用状態のもとでの安全性の懸念を扱っていた。本節ではさらに特別な

条件の下での安全性に関わる事項を記載する。CTD 2.5.5 安全性の概括評価では、過量投与

に対する反応、依存性、反跳現象、乱用を誘発する可能性または、それらのデータの欠如に

ついて記載されている。

Page 16: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 13 -

1.9.1. 過量投与の可能性 特別な事例では、特別な注意を払うものとする。例えば治療域が狭い医薬品、毒性の顕著

な医薬品、および/または目標集団での過量投与のリスクが高い医薬品など。

1.9.2. 生物由来製品など原材料に由来する感染の可能性 可能性がある場合には、病原体の伝播の可能性について検討するものとする。

1.9.3. 違法な目的のための使用の可能性 違法な目的による使用の可能性を検討する。必要に応じてこれを制限する方法、例えば剤

形の着色および/あるいは着香、包装サイズの限定および販売規制などをリスク最小化策の

必要性の評価として検討する。

1.9.4. 承認適応外使用の可能性 特に当該薬剤の適用がある疾患領域の集団の一部に限定されている場合や、安全性上の理

由から禁忌となる条件が規定さている場合が該当する。他の疾患領域での使用に関しても、

適応外使用の可能性を検討する。

1.9.5. 小児への承認適応外使用の可能性 小児科領域において疾患や障害の治療あるいは予防のために使用される場合は、適応外使

用の可能性について検討する。

1.10. 要約 – 現行の安全性に関する懸案事項 安全性検討事項の最後に、以下の項目について要約を記載する。 表1.17.重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスク、および重要な不足情報一覧 重要な特定されたリスク 一覧 重要な潜在的リスク 一覧 重要な不足情報 一覧

Page 17: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 14 -

第 2 部. 医薬品安全性監視計画

医薬品安全性監視計画は安全性上の懸念事項を同定し明らかにするための行動を対象とす

るが、リスクを軽減あるいは防止するための行動は対象とすべきではない。

2.1. 通常の医薬品安全性監視

通常の医薬品安全性監視の実行について簡潔にまとめる。安全性の懸念が生じていない医

薬品に関しては、承認後の安全性監視としては日常的な安全性監視活動で十分である。なお、

各企業で独自に定められている安全性情報の収集体制(あらかじめ詳細調査を行うことを定

めている有害事象リスト等)があれば記載しておく。

2.2. 安全性の課題と医薬品安全性監視計画の要約

安全性の懸念事項ごとに計画された医薬品安全性監視計画の一覧表を提示する。また、本

監視計画の更新時には、新しく得られた結果を含める。通常の医薬品安全性監視以外の行動

を計画しない場合には、その理由を示す。 日常的な安全性監視では不十分である状況とは、例えばある医薬品が適応となる患者集団

においてかなりの背景発現率があり、薬剤によるシグナルと区別がつかないような場合があ

る。追加の安全性監視活動に関しては、事前に行政当局と相談する。 表 2.1 安全性の課題に関する行動計画一覧

安全性の課題 計画された行動

重要な特定されたリスク (列記する) 重要な潜在的リスク (列記する) 重要な不足情報 (列記する)

2.3. 特定の安全性の課題に対する詳細な実施計画

重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスクおよび重要な不足情報それぞれに対し、次

のことを記載する。各課題に対応する実施計画の選択については、第3部「医薬品安全性監

視の方法を選択するためのガイドライン」を参照する。

Page 18: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 15 -

表 2.2 安全性の課題に関する実施計画の詳細

安全性の課題 実施計画案 実施計画案の目的 実施計画案の理論的根拠 実施した結果に基づき採択される可能性がある更なる

措置およびそれら措置を開始する決定基準を詳述する。

評価、報告の予定時期およびそれを設定した理由 実施計画書の表題(実施計画書全文を添付する。)

正式な研究については、すべて実施計画(案)を作成する。臨床試験であれば安全性の懸

念に関するモニタリングの詳細、すなわち試験中止についての規定、安全性モニタリング諮

問委員会への情報提供、中間解析の実施時期を記載する。

2.4. 医薬品安全性監視計画の一覧

進行中のおよび実施を計画している研究について、実施状況ならびに報告書作成予定を一

覧表で作成する。

表 2.3. 進行中および計画している調査・研究の結果報告書作成予定日

研究名 版数 実施状況 中間データ纏め 予定日

結果報告書作成予定日

2.5. 予定を含む未完了の監視活動の要約

実施中あるいは計画中の行動を節目およびスケジュールと共に記載する。 表 2.4. 実施中および計画中の調査研究の節目となる期日等 調査等 節目となる症例数/目標

症例数 節目となる期日/終了

予定期日 研究の進行状況

節目を定める理由としては、1つの監視計画(例えば前向きコホート研究)により、複数

の安全性検討事項を検討することが可能であるからである。節目を設定する際には、以下を

考慮すべきである。

Page 19: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 16 -

・所定の信頼性レベルで事前に定義された頻度の有害事象が検出できるのはいつか。頻度の

設定は、患者や公衆衛生のリスクの許容レベルを反映するように選択するものとする。 ・有害事象の発現に影響するリスク因子を十分な正確さで評価できるのはいつか。 ・進行中あるいは提案された安全性研究の結果が利用できるのはいつか。 ・リスク最小化策の対象とされているリスクの重篤性と重要性の評価時期はいつか。リスクが非

常に重篤な場合は、リスク最小化策の効果について、より早期かつ頻繁に評価する必要がある。

Page 20: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 17 -

第 3 部.医薬品安全性監視の方法を選択するためのガイドライン

医薬品安全性監視計画は、医薬品に関わる情報の集積に応じて随時更新されるものであるが、

ここでは、医薬品の申請段階から発売までの間に作成される医薬品安全性監視計画を中心に述べ

る。

3.1. 概論

医薬品の安全性監視は、医薬品の安全性に関する情報の集積レベルに応じて、調査の目的が異

なり、その目的に対応した適切な調査方法が選択される必要がある。そのため医薬品の監視計画

を立案するためには、医薬品に対する情報の集積レベルに応じて、その目的を「シグナルの検出」、

「シグナルの補強」、「シグナルの検証」の 3 つの段階に分けて考えることが一般的である 3)。こ

の情報の集積レベル、調査の目的、調査方法の関連を概念図として以下に示した。「シグナルの検

出」は、可能性のある未知な有害作用をスクリーニングし、シグナルと薬剤の因果関係の仮説を

形成することである。「シグナルの補強」は、検出されたシグナルと薬剤の因果関係の仮説につい

て、決定的な証拠とはならないが、今後より決定的な研究を実施すべきか否かを決定するために、

仮説への支持あるいは反証を提供することである。「シグナルの検証」は、その仮説を詳細に評価

し仮説を検証することである。安全性研究の中で、シグナルの補強の段階を踏むかどうかは、リ

スクの重要性、研究の規模などの要因により変わり、シグナルの検出の後、直接シグナルの検証

を意図する研究を立案する場合もある。

重要な潜在的リスクや重要な不足情報がある医薬品においては、調査目的は情報の収集による

安全性のシグナルの検出であり、調査方法は、自発報告や、自発報告の集積の精査が主となるが、

重要な不足情報については、コホート研究も行われる。

重要な特定されたリスクが存在する場合には、調査目的はそのリスクと医薬品のベネフィット

のバランスの確認のためのシグナルの補強・検証であり、調査方法はケース・コントロール研究

調査目的

シグナルの補強 シグナルの検出 シグナルの検証

重要な不足情報

ル 重要な潜在的リスク 重要な特定されたリスク

ケース シリーズ

ケース レポート

調査方法

横断研究 ケース・コントロール研究

コホート研究 無作為化臨床試験

Page 21: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 18 -

やコホート研究などの疫学研究手法を用いた観察研究が選択される。

また検出されたシグナルの補強、検証のために観察研究を計画する場合は研究実施計画書(プ

ロトコール)の作成が必要である。プロトコールには

- 調査目的

- 過去の文献やこれまでの調査のレビュー結果

- 調査方法の詳細

- 調査対象疾患

- 研究対象として特定の有害事象を発症している患者の定義(必要に応じて対照の定義)

- 対象の抽出方法

- データソース

- 調査例数と統計的例数設計の根拠

- データ収集方法、データマネージメント、データ解析の方法

などが記載される必要がある。

プロトコール作成にあたっては、くすりの適正使用協議会作成の「市販後安全性研究のガイドラ

イン第 2 版」(平成 18 年 9 月)4)や International Society of Pharmacoepidemiology が作成した

Guidelines for good pharmacoepidemiology practices 2nd Edition5)等を参照すること。

3.2. 各論

3.2.1. 重要な特定されたリスク

市販後は、その医薬品が市販に耐えうるかどうかの確認のために、医薬品のベネフィットとリ

スクのバランスを検討する必要がある。そのためにはリスクの大きさの推定が必要であり、治験

中に認められた重要な有害事象の市場での実際の発現頻度、危険因子を確認することを目的に調

査を行うこととなる。また特定されたリスクに対してのリスク最小化策が市販後に機能している

かについて、直接のアウトカム(当該有害事象の発生の状況)を把握し、対策の評価を行うこと

も必要である。

この段階で有用な研究方法として以下の方法が挙げられる:

− コホート研究

− ケース・コントロール研究(Nested case-control study、Case-cohort study または Case

cross-over study など)

− 無作為化臨床試験(PROBE 法、Large Simple Safety Study なども含む)

研究目的が相対リスク(既存治療法と比較して特定の有害事象の発現頻度が相対的に高いのか

低いのか)を知ることであれば、対照群を持った観察研究の立案が必要である。背景発現率が高

い有害事象に関する安全性研究に適している。背景発現率の高いリスクでは、対象となる薬剤と

の因果関係が不明確になりがちなため、対照群をもった観察研究によるリスクの確認が必要とな

Page 22: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 19 -

る。

特に医薬品の発売当初はその医薬品に関わる安全性情報が蓄積されていないので、前向きコホ

ート研究が必要となる。特定使用成績調査として、対照群をもったコホート研究としての実施が

可能である。

今後、患者カルテ、レセプト申請などが自動蓄積されるデータベースの二次利用が可能となれ

ば、それらのデータベース内で、前向きコホート研究を実施することも可能である。自動蓄積デ

ータベースを用いた観察研究で特に有効と考えられる研究デザインは

• コホート研究

• ネスティド・ケース・コントロール研究(Nested case-control study)

• ケース・コホート研究(Case-cohort study)

である。

また、薬剤の投薬が時間により変化(頓服薬など)して、投薬による影響が比較的短期である

と想定できる場合には、研究の対象とする有害事象が発現した患者だけを研究対象とするケー

ス・クロスオーバー研究(Case cross-over study)の利用も考えられる。ケース・クロスオーバ

ー研究は、当該医薬品への曝露に関わらず、対象とする有害事象が発現した患者だけを報告して

もらう契約を医療機関と結べば研究は可能である。

無作為化臨床試験は 1/2,000~3,000 のような低頻度の有害事象の確認には向いていない(例外

的にワクチンなどのメガトライアルで1/10,000の頻度の有害事象の発現を検討しているケースは

ある)。また、重要な有害事象で死亡にいたるような場合には、無作為化臨床試験は倫理的な問題

となることもある。しかし、喘息薬と喘息死などのように疾患による死亡なのか、薬剤による死

亡なのか区別がつきにくい場合には、観察研究でそれを区別することは難しいので、無作為化臨

床試験に頼らざるをえないこともある。Endpoint を盲検化する PROBE 法 (Prospective,

Randomized, Open labeled, Blinded Endpoints Study)を用いた試験デザインはこの分野で広く使

われている。また欧米では、Large Simple Trial または Large Simple Safety Study(LSSS)が実

施された事例もある。LSSS は、無作為割付の手法を使った疫学研究というべきものであり、現

在のわが国の規制下では実施は難しいが、今後の規制当局の理解、企業の姿勢によっては LSSS

も市販後の安全性検証の 1 つの選択肢となることを期待したい。

現状の使用成績調査は、対照群のない前向きコホート調査に相当する。その目的から積極的サ

ベーランスとして実施するのであれば、事前登録の形態をとるべきである。そうすることで、重

要な特定されたリスクの市場での頻度の確認にとどまらず、重要な潜在的リスクのシグナル検出

を含めた広範な目的をもった安全性研究となる。

これらの観察研究デザインの詳細は「ファーマコビジランスプラン解説書」(平成 19 年 7 月 製

薬協 医薬品評価委員会 統計・DM 部会資料)6)、くすりの適正使用協議会作成の「市販後安全性

研究のガイドライン第 2 版」(平成 18 年 9 月)4)や教科書を参照のこと。

Page 23: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 20 -

3.2.2. 重要な潜在的リスク

治験中には検出されなかったが、類似薬では認められているなどの、発現の可能性のある重要

な有害事象は検出を目的に調査を行う必要がある。

重要な潜在的リスクの検出に主要な役割を果たすのは、自発報告である。わが国で行われてい

る市販直後調査は自発報告の収集強化であり、医薬品の使用経験が少ない段階で医療現場へ適正

使用に関する注意喚起を行うとともに自発報告を収集強化することにより、重要な潜在的リスク

のシグナル検出を早期に行うものである。

自発報告や症例集積検討データの精査により重要なリスクの存在が「重要な特定されたリスク」

となれば、適切なリスク最小化策を早急に実施・徹底することが必要となる。しかしながら発生

がまれであり、正確なリスクの大きさの推定ができないことも多く、自発報告の集積の精査でも

判断が難しい場合もある。例えば、背景発現率の低いリスク(Stevens-Johnson 症候群,劇症肝

炎など)については、観察研究の結果を待つまでもなく、自発報告を唯一の情報源として医薬品

のリスクを最小限に抑える行動をとることが重要である。1999 年から 2001 年までに欧米で有害

事象が原因で市場撤退した 11 の薬剤のうち、8 薬剤は自発報告が主たる情報源として撤退を決定

している 7)という事実は、自発報告とその内容の精査の重要性を改めて認識させるものである。

3.2.3. 重要な不足情報

承認の段階では十分に検討されなかった特定の集団に関するリスクを確認する。代表的な方法

として以下が挙げられる:

− コホート研究(特定使用成績調査も含む)

− 自発報告(市販直後調査を含む),症例集積検討

特に医薬品の発売当初はその医薬品に関わる安全性情報が蓄積さていないので、前向きコホー

ト研究が必要となる。現状の「特定使用成績調査」はこれに対応する。また、自動蓄積されるデ

ータベースが存在すれば、それらのデータベースを用いて、コホート研究を実施することも可能

である。

また、使用上の注意などで使用が制限されるような、リスク最小化策による措置がとられ、自

動蓄積データベースでも研究の対象となる患者集団を形成することが出来ない場合(たとえば妊

婦)は、自発報告や症例集積検討によるデータの収集となる。

重要な潜在的リスク,重要な不足情報の検討により新たなリスクが検出された場合は,検出さ

れたリスクとベネフィットの関係が検討される。リスクの存在にもかかわらずベネフィットの方

が大きいと判断された場合には、そのリスク・ベネフィットのバランスの確認のために,観察研

究によりリスクの大きさや危険因子の推定が行われる。

わが国ではこれまで、GPSP 省令と GVP 省令に基づいて各種製造販売後調査、自発報告の収集・

評価を行っている。一方、海外では、この分野に診療記録や処方情報などをデータベース化した

Page 24: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 21 -

大規模自動医療データベースが情報源として積極的に利用されている。例えば英国の診療記録デ

ータベース、米国の各保険医療データベース、カナダ・北欧等の地域住民レジストリー、台湾,

韓国の診療報酬データベースなどで、各国で多目的医療データベースの整備・利用が進み、これ

らを利用した大規模な(薬剤)疫学研究が産官学を問わず広く行われている。また、米国では Health

Insurance Portability and Accountability Act (医療保険の携行性と責任に関する法律) など個人情

報を保護しつつ公衆衛生目的でデータを二次利用できるよう、法整備も進んでいる。しかし、日

本はデータベースを利用した大規模疫学研究は遅れをとっているのが現状である。検出された安

全上の懸念事項を確認し医薬品の適正使用を確立するために、製薬業界としても医薬品の処方情

報、診療情報、診療報酬情報、および健康診断データによる健常人情報も含む大規模自動医療デ

ータベースの整備、そのデータベースを利用した疫学研究の実施とその結果の利用による適正使

用の推進体制が整備されていくことを期待したい。

おわりに このタスクフォースは、PMS 部会、統計・DM 部会、臨床評価部会からの委員の参加を得て、

CTD を参照してどのように安全性検討事項を特定し、それに対応してどのような手法で安全性監

視を実施するかを製薬協の自主ガイダンスとしてまとめた。皆様がこのガイダンスをもとにして

科学的な検討による課題の特定と対応が図られることを期待する。

なお、既に EU においては新薬申請時に RMP の提出が義務化されており、アメリカにおいても

「リスク評価と緩和計画」(REMS : Risk Evaluation and Mitigation Strategy)として法制化され、

承認申請後、FDA が必要と判断した場合 REMS の作成指示(120 日以内)がある。その第一弾と

して、FDA は本年 3 月 27 日に既に市販されている 16 製品に対して「リスク評価と緩和計画」の

提出を求めている。

日本においても、製造販売後調査等基本計画書の案ができていれば CTD に添付し、遅くとも販

売の1ヶ月前迄に製造販売後調査等基本計画書の提出が義務づけられている。ところが現在の製

造販売後調査等基本計画書の記載項目は、ICH E2E に合致していない。課題から対応方法に至る

までの説明の記載が基本計画書には求められておらず、ICH E2E の検討内容の盛り込み方が難し

い状態にある。現在 PMS 部会では、製造販売後調査等基本計画書に置き換わる計画書の書式を検

討中であり、今後の PMS 部会での更なる検討と具体化を期待している。

Page 25: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 22 -

参考資料

1) 丹後俊郎,上坂浩之編 臨床試験ハンドブック(第29章),朝倉書店,2006

2) 中村剛 Cox 比例ハザードモデル 朝倉書店,2001

3) Strom B. L.: Chapter 24 - How should one perform pharmacoepidemiology study? Choosing among

the available alternatives. Pharmacoepidemiology 4th edition. John Wiley & Sons: New york, NY,

2005.(Pharmacoepidemiology の第 2 版の日本語訳は、清水,楠,藤田,野嶋らにより「薬剤

疫学」として篠原出版より 1995 年に出版)

4) くすりの適正使用協議会:市販後安全性観察研究に関するガイドライン 改訂第二版 2006.

http://www.rad-ar.or.jp/01/07_publication/guideline2/radar-guideline2.pdf

5) Guidelines for good pharmacoepidemiology practices (GPP), Pharmacoepidemiol. Drug Safety 2008;

17: 200-208

6) 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 統計・DM 部会:ファーマコビジランスプラン解説書

平成 19 年 7 月

7) Clarke A., Deeks J.J., Shakir A.A.W.: An Assessment of the Publicly Disseminated Evidence of Safety Used in Decisions to Withdraw Medicinal Products from the UK and US Markets. Drug Safety 2006; 29 (2): 175-181

上記以外にも以下も参照されたい。 8) Guideline on Risk Management Systems for Medical Products for Human use. Committee for

Medicinal Products for Human Use.2008 June 10 [on line]. Available from URL

http://www.emea.europa.eu/pdfs/human/euleg/9626805en.pdf

9) 茨田享子, 古川綾, 石田小津枝 他 欧州ヒト用医薬品委員会(CHMP)Doc

Ref.EMEA/CHMP/96268/2005「ヒト用医薬品のためのリスクマネジメントシステムに関するガ

イドラインの翻訳について」臨床評価;2007,34 (2): 345-374

10) Annex C.: Template for EU Risk Management Plan (EU-RMP) Committee for Medicinal Products for

Human Use. 2008 June 10 [on line]. Available from URL

http://www.emea.europa.eu/pdfs/human/euleg/19263206en.pdf

Page 26: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 23 -

参考

安全性監視計画作成の基となる承認申請までに得られている安全性にかかわる情報は CTDのいくつかのモジュールに記載されている。これらの情報の記載されている箇所の構成を以

下に示しました。 A1. 非臨床における所見に関連する事項に関する CTD 2.3 の構成 2.6.2.4 安全性薬理試験 安全性薬理試験は本項で要約し、評価すること。 副次的薬理試験の成績がヒトで起こり得る副作用を予測または評価できる場合には、副次的薬理試験と安全性薬理試験を併せて考察すること。 2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験 薬力学的薬物相互作用試験が実施されている場合は、本項で簡潔に要約すること。 2.6.2.6 考察および結論 薬理学的評価を考察し、また生じた問題の意義を論じること。 2.6.2.4 薬物動態学的薬物相互作用 非臨床の薬物動態学的薬物相互作用試験(in vitroおよびin vivo)が実施されている場合は、本項で簡潔に要約すること。理由:小文字イタリックの表現2.3.4.8 その他の薬物動態試験 病態(腎障害等)モデルを用いた試験が実施されている場合は、本項で要約すること。 2.6.2.6 考察および結論 本項では、薬物動態学的評価を考察し、また生じた問題の意義を論じること。 2.6.6 毒性試験の概要文 毒性試験概要文の配列は以下に従うこと。 ・ まとめ ・ 単回投与毒性試験 ・ 反復投与毒性試験 ・ 遺伝毒性試験 ・ がん原性試験 ・ 生殖発生毒性試験 ・ 新生児を用いた試験 ・ 局所刺激性試験 ・ その他の毒性試験 ・ 考察および結論 ・ 図表(本文末尾または本文中) 2.6.6.1 まとめ 毒性試験で得られた主な所見は、数頁( 通常6頁)以内に簡潔に要約すること。 2.6.6.9 考察および結論 本項では、毒性評価を行い、得られた毒性所見の意義について考察すること。 毒性の発現時期、程度(強さ)ならびに持続期間、用量依存性ならびに可逆性の程度(または非可逆性)および種差または性差について評価し、重要な特徴について、特に以下の点に関して考察すること。 ・ 薬理作用 ・ 毒性変化 ・ 死亡原因 ・ 病理所見 ・ 遺伝毒性:化合物の化学構造、作用機序および既知の遺伝毒性を示す物質との関連 ・ 化合物の化学構造と関連したがん原性、既知のがん原性を示す物質との関連、遺伝毒性および曝露データ ・ ヒトに対する発がんリスク:疫学的データが入手できる場合には、それらを考慮すること。

Page 27: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 24 -

・ 受胎能、胚胎児発生、出生前および出生後の毒性 ・ 新生児への影響 ・ 妊娠前ならびに妊娠期間および授乳期間ならびに出生児の発達期間中投与による影響 ・ 局所刺激性 ・ その他の毒性試験:特別な問題を解明するための試験 動物からヒトへのデータの外挿は、以下の項目に関連付けて考察すること。 ・ 動物種 ・ 動物数 ・ 投与経路 ・ 投与量 ・ 投与または試験期間 ・毒性試験に用いた動物種における無毒性量(NOAEL)および毒性量での全身曝露とヒトにおける最高臨床推奨用量での曝露と関連付け。 ・ 非臨床試験で認められた被験物質の作用とヒトで予測されたまたは認められた作用と関連付け。

A2. CTD1.7の同種同効品一覧表に関する記載内容 (1)臨床試験における対照薬を含め、適応症・効果、用法・用量、化学構造、薬理作用か

らみて類似しているものを選択する。 (2)選択した同種同効品について、できるだけ最新の添付文書等を用い、一覧表(一般的

名称、販売名、会社名、承認年月日、規制区分、化学構造式、剤型・含量、効能・効果、用法・用量、使用上の注意、参照した添付文書の作成年月日等)とする。

(3)再審査・再評価の終了しているものは、再審査・再評価年月日を記載する。 (4)表の作成に当たっては、比較試験で対照薬として使用した薬剤は原則として申請する

薬剤の次に列記し、備考欄に対照薬と記載する。類薬が複数の場合には、その中で最新承認のものから順に記載する。

Page 28: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 25 -

安全性監視計画作成のための自主ガイダンス 資料作成者 委員会タスクフォース:開発から一貫した製造販売後研究のあり方タスクフォース 医薬品評価委員会 委員長 中島 和彦 第一三共株式会社 PMS部会 西 利道 大鵬薬品工業株式会社 高橋 春男 エーザイ株式会社 上野 茂樹 武田薬品工業株式会社 丸井 裕子 中外製薬株式会社 古閑 晃 日本イーライリリー株式会社 市川 高義 田辺製薬株式会社(~平成 19 年 9 月) 臨床評価部会 高見 和夫 中外製薬株式会社 木下 隆之 科研製薬株式会社 統計・DM部会 鍵村 達夫 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 上坂 浩之 日本イーライリリー株式会社

Page 29: 医薬品の安全性検討事項ならびに 医薬品安全性監視 …...企業がICH E2E 通知を踏まえた安全性検討事項ならびに医薬品安全性監視計画(ファーマコビジ

- 26 -

安全性監視計画作成のための自主ガイダンス 平成 20 年 9 月発行

編集/医薬品評価委員会 発行/医薬出版センター 103-0023 東京都中央区日本橋本町 3-4-1(トリイ日本橋ビル) TEL 03-3241-3758 FAX 03-3241-0520 2008 医薬出版センター

本書の内容を無断で複写・転載することを禁

じます